人民新報 ・ 第1397統合490(2021年5月15日)
  
                  目次

● 
戦争への道を進む菅政権

     段階を画す日米共同声明

● 5・3憲法大行動2021  とりもどそう!民主主義、立憲主義 平和といのちと人権を!

     改憲・菅自民党政治を終りにしよう

● デジタル庁関連法の強行成立を許さない

● 不当弾圧はね返そう 検証シンポジウム

     関西生コン事件のこれからを考える

● 非人道的な入管法の改悪に反対しよう

● 重要土地等調査規制法案は現代の治安維持法

● 第92回日比谷メーデー

● せんりゅう

● 複眼単眼  /  「お化け」におびえた 立憲民主党





戦争への道を進む菅政権

     
段階を画す日米共同声明

 いま、日本は安倍・菅とつづく反動政権により、新型コロナウイルス感染症蔓延は悲惨な状況を迎えている。コロナ対策が破綻している菅政権は追い詰められている。4月25日の衆院北海道2区補選、参院長野補選・広島再選挙では、市民と野党の共闘の強化に向けた地道な努力が実り、自民党は三選挙全敗となった。しかし、菅は、人びとの命と暮らしを最優先するのではなく、いまだにオリンピックの強行をあきらめていない。そして、自民党政調会長下村博文の「今回のコロナを、ピンチをチャンスとして捉えるべきだ」という憲法記念日改憲派集会での発言にみられるように、コロナ惨事の拡大を喜ぶような姿勢が菅内閣の本性だ。5月11日には、デジタル庁法など六法案を参議院で強行可決・させた。つづいて改正改憲手続法も強引に成立させようとしている。
 戦争する国づくり、その基軸は日米軍事同盟の強化だ。アメリカの世界覇権支配の維持を目的とする日米安保体制、その中で自らの影響力強化を狙うのが自民党政治の伝統である。この構造こそが、日本そしてアジアの緊張・戦争危機の基礎にあり、菅はそれを一段と危険な段階にエスカレートさせた。
 4月16日、訪米した菅は、バイデンとの間で、日米首脳共同宣言「新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ」を発表した。それは「自由で開かれたルールに基づく国際秩序への挑戦に対抗」、「菅総理とバイデン大統領は、インド太平洋地域及び世界の平和と繁栄に対する中国の行動の影響について意見交換するとともに、経済的なもの及び他の方法による威圧の行使を含む、ルールに基づく国際秩序に合致しない中国の行動について懸念を共有した」として中国に共同して対処するといことが基調となっている。東シナ海、南シナ海、香港及び新疆ウイグル自治区そして、「日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と「台湾」をあえて明記した。
 マスコミは、日米共同声明で、台湾の名があがったのは、1969年の佐藤ニクソン会談以来のことだと報じた。だが、単に過去の表現が復活したというわけではない。その間には、1972年のニクソン訪中、日中国交正常化、1979年の米中国交関係の樹立という歴史的変化が介在する。1972年2月28日の上海コミュニケ(ニクソン米大統領の訪中に関する米中共同声明)は、「中国政府は、『一つの中国、一つの台湾』、『一つの中国、二つの政府』、『二つの中国』及び『台湾独立』を作り上げることを目的とし、あるいは『台湾の地位は未確定である』と唱えるいかなる活動にも断固として反対する。米国側は次のように表明した。米国は、台湾海峡の両側のすべての中国人が、中国はただ一つであり、台湾は中国の一部分であると主張していることを認識している。米国政府は、この立場に異論をとなえない」とした。1972年9月29日の「日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明」は「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」とした。ポツダム宣言第八項「カイロ宣言ノ條項ハ履行セラルベク又日本國ノ主權ハ本州、北海道、九州及四國竝ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」とする。
 70年代以降、さまざまな曲折はありながら、米中、日中関係は基本的には安定した経過をたどってきた。しかし、米国の相対的地位の低下と中国の躍進は、米政権の政策を大きく転換させることになった。トランプ前政権の国務長官だったポンペイオは、ニクソン以来の歴代政権による中国の発展を後押しし民主化を促す「関与政策」の対中政策は失敗と位置付け中国との対抗を強調したが、バイデン政権もそれを継承した。歴代のアメリカ政権の目論見としては、中国がソ連のように完全に資本主義化し、同時にアメリカの風下に立つような体制の転換、中国流にいえば「和平演変」をもくろんだのだがそれは失敗した。こうした局面において、アメリカの対中強硬策への軌道修正、反中国包囲網の形成となり、米中関係の緊張は一気につよまってきた。
 台湾は現在の米中対決での最大の焦点である。米中共同声明でみられるように日本が台湾にコミットするとなれば、戦争法制下において、周辺事態(日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合)ないし、存立危機事態(我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態)となり集団的自衛権の発動となるとされる。そもそも、存立危機事態の「我が国と密接な関係にある他国」が台湾であるとするなら、日中共同声明の規定に反する。周辺事態で、「日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合」に集団的自衛権を行使し参戦国化するのであれば、日本の平和と安全はいっそう危険にさらされる。台湾には米軍基地はない。米中に戦争の危機が訪れ、自衛隊の対中集団的自衛権行使ということになれば、対中攻撃は日本の米軍基地、自衛隊基地から行われる。
 本土から遠い海上での米中海軍の戦闘に、日本が支援するなどという説明がされることもあるが、戦場は日本全域に及ぶことは明らかだ。
 菅政権の日米共同路線の危険性を暴露・反対し、幅広い反戦平和・改憲阻止の運動を作り出そう。
 総がかり行動、市民と野党の共闘を前進させよう。
 4月国政選挙補選・再選挙の勝利を基礎に総選挙での勝利を実現しよう。
 戦争への道をつきすすむコロナ無策の菅内閣を打倒しよう。


5・3憲法大行動2021  とりもどそう!民主主義、立憲主義 平和といのちと人権を!

     改憲・菅自民党政治を終りにしよう

 憲法施行74年の5月3日の憲法記念日には、菅政権の改憲策動に抗して全国各地で集会など様々な取り組みが行われた。

 東京では、国会議事堂正門前をメインステージに、オンライン中継もおこないながら、「5・3憲法大行動2021 とりもどそう!民主主義、立憲主義 平和といのちと人権を!」(主催―平和といのちと人権を!5・3憲法集会実行委員会、共催―戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会、安倍9条改憲NO!全国市民アクション)が開かれた。
 13時半に集会開始。
 はじめに主催者を代表して、九条の会事務局長の小森陽一さんがあいさつ。いまかつてない緊迫した状況の中で憲法施行日を迎えている。安倍政権の改憲政治を受け継いだ菅政権は、連休明けにも国民投票法の改悪案の採決を狙っている。菅政権の無策によって新型コロナ感染は拡大するばかりだ。すでに大都市では医療体制は崩壊しつつある。多くの人が働く場を失い貧困が拡大している。とりわけ女性たちにしわ寄せがいっている。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならないと規定した憲法25条に菅政権の政治は違反していることは明らかだ。わたしたちは改めて25条、そして男女平等を規定した24条を政治の場で実現していくことを主張していかなければならない。度重なる補償のない緊急事態宣言の中でおおくの事業者が経営困難に陥り大切な財産を失わされている。憲法29条の財産権をおかしてはならないということを菅政権は踏みにじっていると批判しなければならない。コロナ無策などは安倍政権から始まったが、菅は官房長官という重い責任を負っている。いま多くの人は個人の尊厳すら奪われるという状況にある。これは憲法13条に真っ向から違反する政治のあり方だ。生命・自由および幸福追求の権利が私たち一人ひとりにある。基本的人権を無視した菅政権はアメリカ政府に対しては、とことん従順だ。いそいそと訪米した菅首相は、強固な日米同盟をインド太平洋地域、世界へ広げようとして、台湾有事での協力、辺野古、馬毛島の基地建設などを約束した。沖縄戦死者の遺骨の入った土を基地建設に使うなど断じて許すことはできない。アメリカへの一層の従属に大きく舵を切ったのは2015年、安倍政権の戦争法の時だった。いまこうして多くの人たちが党派を超えて運動ができているのはこの時の経験をもとにしている。市民連合が結成され、2017年の安倍改憲NO!全国市民アクションには九条の会も参加した。こうした市民と野党の統一が4月25日の選挙で大きな勝利を収めることになった。いま、わたしたち憲法を守り生かそうとする側から政治を変える段階に入ってきている。ともに頑張っていこう。
 つづいてゲストスピーチの雨宮処凛さん(作家、活動家)―憲法を使うことで活動を行ってきた。いま生活困窮者のためのおとな食堂にも取り組んでいる。貧困問題に取り組む団体「新型コロナ災害緊急アクション」が4月に相談を受け付けるメールフォームを立ち上げたが、連日、アパート追い出された、何日もなにも食べていない、路上生活しかない、自殺をしようと思ったが死にきれなかったなどの切実な声が届いている。2008年の『年越し派遣村』にくらべても女性の相談が激増している。そのうち国が救済するようになると思ったが全くそうなっていない。生活保護は自民党のバッシングによって増えないで、自殺が増えている。
 立憲野党からのあいさつ。枝野幸男立憲民主党代表(衆議院議員)― 私たちは、74年間、この日本国憲法を土台とした中で、平和で豊かな社会をつくり上げて来た。しかし、この1年ほど、日本社会は大変危機的な状況に追い込まれている。感染症そのもので命を失われた方が1万人を超えた。先進国であったはずの日本で、とても信じられないようなことが起こっている。日本国憲法第25条は、「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とあるが、この義務を日本の政治は果たしていない。この憲法第25条の趣旨に基づいた政治を取り戻して行くということが、われわれに課されている大きな役割だ。日本国憲法に緊急事態条項がないことをもって、必要な感染拡大防止策がとれていないのだという暴論を吐く人が残念ながら少なからずいるが、日本国憲法でも感染防止のために必要な私権の制限は 公共の福祉にかなうものとして認められている。必要な対策が打てていないのは、政府が事態を根拠なく、楽観論に基づき、そして命や暮らしを守るということを優先にしない、その政策判断、政治判断が感染症対策に不十分な結果をもたらしている。そのことを、全く関係ない憲法のせいに押し付けているのだ。「この憲法が国民に保障する自由及び権利は国民の不断の努力によってこれを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」と憲法第12条にあるが、今、日本の足元では、この憲法に定める自由や権利が脅かされている。それを守っていくためには、皆さんの不断の努力が今こそ必要な時だと思っている。憲法は国民のもの、国民が私たちも含めた公の権力に対して命令をするものであり、その主体である多くの国民の皆さんがこの日本国憲法が保障する自由と権利を保持するために、更なる不断の努力を共に進めていただきますよう、お願いしたい。
 共産党の志位和夫委員長(衆議院議員)― 2年連続、コロナ危機のもとでの憲法記念日となった。深刻な感染拡大が起こり、各地で医療崩壊が始まっている。これは憲法に問題があるのではなく、憲法を順守した対策を怠ってきた政治の責任であり、菅政権による人災である。憲法25条は、国民の「生存権」を保障し、国に対して、「社会保障と公衆衛生の増進」を義務づけているが、人口当たりのPCR検査数は世界144位、ワクチン接種数は世界118位、保健所は90年代以降半分になってしまった。政府は、憲法25条を順守して国民の命を守る責任を果たせと強く求めていこう。菅政権は、コロナに乗じて憲法を変える企てを進めている。連休明けの6日にも、衆院憲法審査会で、国民投票法改定案の採決を強行しようとしている。この狙いは「憲法改定にむけた「地ならし」だ。自民党が狙う「憲法改正」は、自衛隊を明記する9条改定、緊急事態条項の創設などであり、戦争国家つくり、独裁国家つくりだ。いま変えるべきは憲法ではなく、菅自公政権であり、憲法違反の安保法制・戦争法を廃止して、立憲主義を回復することは、いよいよ急務となっている。
 社会民主党の福島みずほ党首(参議院議員)―日本国憲法ができて、女性は選挙権と被選挙権をようやく持つことができた。憲法24条ができて、民法の親族編・相続編が大改正になって「妻は無能力者である」なんて言う民法が廃止をされた。憲法があって基本的人権、平和主義、そして国民主権が生かされてきたの74年間をさらにさらに充実したものに国民の力によってしていこう。生きたいけれども生きられない、死にたくないけど死んでしまう、地面の底が抜けるような暮らしをしてる人たちにたくさん会ってきた。憲法25条が保障する健康で文化的な最低限度の生活は全く保証されていない。憲法13条が保障する個人の尊重と、そして幸福追求権保障されていない。労働基本権も守られていない。学者を拒否した学術会議の問題は、まさに憲法23条の学問の自由を政府が踏みにじるものであり、報道の自由・表現の自由を侵害する憲法21条を守らない、憲法24条が活かされない選択的夫婦別姓すら認めない菅政権・自民党には退陣してもらおう。自民党によって作られた戦争法案と関連法・秘密保護法・共謀罪たくさんの違憲の立法の廃止をみんなの力でやっていこう。自民党は四つの項目をあげていて、一つ目が9条変えて自衛隊を明記する、これは戦争するこんな国を認める憲法改悪だ。新型コロナ蔓延のドサクサを利用して緊急事態条項を言うのは盗人猛々しいと言わざるを得ない。基本的人権を踏みにじり平和主義を破壊する自民党の憲法改悪案を国民の力で終わらせていこう。憲法改悪ではなく、国民投票法の改正ではなく、一緒に一緒に憲法を生かしていくそのことにこそ全力を尽くしていこう。主権者が真の意味で主権者になり立憲主義を取り戻すべく頑張っていこう。
 会派「沖縄の風」の伊波洋一幹事長(参議院議員)―今日は普天間飛行場が見える宜野湾市嘉数高台公園から発言している。わたしが生まれ育った地域だ。1945年4月1日沖縄に上陸した米軍は南北に分かれて進攻した。沖縄戦最大の激戦となった嘉数高地に入り、双方に多数の死傷者が出た。沖縄にとって4月9日は特別な日だ。その日、32軍は「沖縄語を以て談話しある者は間諜とみなし処分す」という命令を出した。日本軍は自らを守るため住民をスパイ視し、戦争中の悲劇の原因ともなった。嘉数高地の戦闘は、日本軍が撤退する4月24日まで続いた。戦後、戦死者の遺骨は地元の住民が収集し、川沿いの谷に埋葬された。二度の沖縄戦のような戦争は起こしてはならない。沖縄戦のあと長期にわたる米軍占領があり、沖縄の人びとはそれと闘い続けた。しかし米軍犯罪は途絶えることなく続いている。沖縄返還から50年、沖縄を苦しめているのが日本政府に変わったことだ。沖縄全島で戦争準備が進められている。この沖縄が平和となるように憲法が生きるようにしたいきたい。
 れいわ新選組(山本太郎氏)からのメッセージが読み上げられた。
 ゲスト発言は、元日本学術会議会員羽場久美子さん(神奈川大学教授。)―なにより大切なのは、命、原発の再稼働の問題、人権とくに弱者の人権ということだ。それが憲法をいかすことだ。
 日本体育大学教授の清水雅彦さん―国家権力は暴走する。それを規制するものが憲法だ。安倍や菅はその規制をゆるめるものとして改憲をやろうとしている。
 前法政大学学長の田中優子さん―自民党の本当の狙いは自民党改憲草案にある。現行憲法は自民党の改憲草案を比較するとわかることが多い。憲法は主権者を国民にしているが、自民党案では天皇となる。憲法の改正ではなく全く新しい国を作ろうということだ。
 市民連合共同代表の山口二郎さん(法政大学教授)―戦争法制反対の2015年の共闘とその後、とくに今回4月の3つの国政選挙では大きな力を発揮した。総選挙ではいっそう市民と野党の共闘を強めていこう。
 菱山南帆子さんは主催者を代表して今後の行動として、改憲手続法抗議行動、デジタル庁法反対行動、ウィメンズアクションや19日行動などを提起した。

 5・3憲法集会に対して警察は不当な弾圧をおこなった。集会の参加者が「公務執行妨害」をおこなったなどとして不当に逮捕され、勾留された。断じて許されることではない。総がかり行動実行委員会は、「『5・3憲法大行動』参加者への不当な弾圧に抗議する」(7面に掲載)で不当逮捕に厳重な抗議をアピールした。

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総がかり行動実行委員会の声明 「5・3憲法大行動」参加者への不当な弾圧に抗議する


 5月3日に開催された「2021平和といのちと人権を!5・3憲法大行動」の参加者が、本集会に赴く途上、不当に逮捕され、現在も当局による勾留が続いている。警察による過剰な交通規制の中で起こった事案を「公務執行妨害」などとするものであるが、意図的に機動隊員を押したわけではなく、およそ公務執行妨害罪が認められるものではない。
 然るに当局は、翌日5月4日早朝、6人の捜査員をして参加者の自宅を家宅捜索させ、パスポートまで押収していった。更に5月5日には、裁判所に勾留請求し、10日間の勾留を決定させた。
 事案は偶発的な出来事であり、計画性、組織性もなく、いわゆる「罪証隠滅」のおそれや、「逃亡」のおそれも全くないにもかかわらず、裁判所が具体的に吟味することもなく、漫然とこれを認め、勾留を決定したことは不当であり、強く抗議する。
 5月6日には東京地方裁判所に、勾留決定の取り消しを求める準抗告の申し立てがなされたが、これについても前記「証拠隠滅の恐れ」、「逃亡の恐れ」を具体的に検討することなく、不当に却下した。
 当局が、勾留を続ける根拠がないままに、不当に集会参加者の勾留を継続することは、許されるものではない。
 本集会の主催者として、当局に対し、参加者の速やかな釈放をつよく要求する。         以 上


デジタル庁関連法の強行成立を許さない

 デジタル庁を9月1日に新設する「デジタル庁設置法案」デジタル関連法案は4月6日の衆院本会議で、それぞれ自民、公明両党などの賛成多数で可決し、参院に送られた(5月11日、参院本会議で与党などの賛成で強行成立させられた)。

 これらの法案は、官邸と財界の利便性増進のため国政が個人情報を集積し、企業等に開放して「利活用」しやすい仕組みにするものであり、プライバシー権の侵害・地方自治の侵害をすすめ国民縮背番号制と個人情報の一元的管理を狙うものだ。

 すでに現在でも、防衛省が保有する横田基地訴訟原告団の個人情報が個人が特定できないよう加工して民間が利用できるように提供する対象とされるなど、行政機関による個人情報保護法を無視する行為が横行している。

 共謀罪NO!実行委員会、「秘密保護法」廃止へ!実行委員会、NO!デジタル庁、許すな!憲法改悪・市民連絡会、デジタル改革関連法案反対連絡会の呼びかけによる市民団体共同声明「基地訴訟原告団の個人情報の民間への提供策動許さない! 市民のプライバシー、個人情報を侵害するデジタル監視6法案の制定に反対します」(5月5日)には日々多くの賛同が寄せられた。

 5月6日、衆議院第2議員会館前で、共謀罪廃止!秘密保護法廃止!NO!デジタル庁「12・6/4・6を忘れない6日行動」が、共謀罪NO!実行委員会、「秘密保護法」廃止へ!実行委員会、NO!デジタル庁の共催、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会の協賛で開かれた。

 国会前集会につづいて、衆議院第2議員会館多目的会議室で、院内集会が開かれ、専修大学教授の山田健太さんが「個人情報<利活用>の課題 デジタル関連法で何が変わるのか」と題して講演した。法案の狙いは、IT国家基本戦略の見直しであり、横串のような形で権限集中させるデジタル庁の設置である。そこでは個人情報保護法制度の全面改訂と一本化、国と地方の個人情報保護制度の標準化、マイナンバー制度の整備強化(マイナンバーカード義務化)の実現だ。これは、個人情報の国家集中管理の強化すなわち監視社会化につながるのではないだろうか。
 これまでのプライバシーの権利の発達過程は、@第1世代・19世紀(1890年代〜)「私生活秘匿権=放っておいてもらう権利 人格権派生の消極的権利」、A第2世代・20世紀(1970年代〜)「自己情報コントロール権=自分で管理する権利 国家権力への対抗も想定した自己決定権」、コンピュータによる情報管理も視野、B第3世代・21世紀(2000年代〜)「自己情報監視請求権=社会にシステム監視を求める権利」忘れさせる権利(消去権)、を経過しきたが、その逆転が行われようとしている。
今回のデジタル庁法案などの問題性はまず「デジタル化の罠」ということだ。バラ色社会の到来がいわれ、財布にたくさんあるカードが1枚まとまり、スマホですべて行政手続が60秒でできれば、すなわち情報の集約化=一元化(法を統一)と標準化(地方を国と一緒に)ができれば、確かに便利であろう。だが、それは市民のためではなく国や大企業のためだということを見ておかなければならない。漏れたら甚大な被害を受けるのは市民であり、たとえ漏れなくても無駄な投資だ。
もともと個人情報保護法は、利活用のためのルールで、情報を持ってる者を縛る制度である。日本の制度は情報の「主体」である市民には権利ない。そのうえ今回の法案は、その縛りを緩めるものだ。市民への権利を付与・強化しなくてはならないが、現実はどんどんバランスが崩れてきている。
 デジタル社会化は、膨大な情報の巨大なシステム構築で、国策で進めるものは後戻りできない。だが、情報漏洩はあちこちで起きている。そのリスクを最小化することが必要であり、せめて分散管理・再委託(下請け)の抑制しかない。にもかかわらず、進行しているのは莫大なIT投融資、新規システム発注、際限なき委託である。
 いま、ぜひとも必要なのは、見える化とチェックである。デジタル化の前提はすくなくとも情報公開・文書管理の徹底、自己情報コントロール権の権利化(明文化)、監視制度の確立が必要だということだ。にもかかわらず公務員無謬性論を前提とする国に優しいチェック制度となっている。
 現在、公安警察の権限が拡大している。特定秘密保護法の隠れた主な対象は捜査情報だ。ヤジ取り締まり、沖縄での抗議活動の徹底妨害などは秘密とされる。そして、機微情報の国への吸い上げ、内閣情報調査室への集中は、市民監視の強化であり、デジタル庁による集約化や新・土地規制法による思想調査が強められる。本来、行政を監視すべきものが、逆に行政に監視・管理される状況となっている。
マイナンバーカードについていえば、そこに集約するのは、健康保険証、自動車運転免許証、図書館利用証、そして収入(借金)、健康状態(服用薬)、前科前歴(車の違反)、学業成績、介護・生活保護情報、土地売買の履歴、生体情報(顔認証・指紋)、思想信条(原発や基地への賛否)が、現在予定されている。これらに民間情報も付加され、しかも持ってないと不利益あつかいをうけ、事実上の義務付けとなる。
 いま政府のやっているのは、開き直りと誤魔化しであり、コロナ対応の無策を国民の努力不足にしている。どさくさに紛れて利権の巣窟もいえるIT関連へのバラマキ施策が行われている。「やってる感」は十分だが、裏では徹底した権利の剥奪が進められ、個人情報保護制度は完全に骨抜きにされようとしている。
 まさにこの法案は、市民を馬鹿に市民社会を壊す法案だ。


不当弾圧はね返そう検証シンポジウム

     
関西生コン事件のこれからを考える

 「第2回検証シンポジウム 関西生コン事件のこれからを考える」が開かれた。 4月17日は、東京・連合会館で開催されたが、翌18日の大阪では急速に蔓延する新型コロナ感染のためネット配信形式で行われた。

 大阪シンポでは、はじめに、「関西地区生コン支部への不当弾圧に対する闘いを支援する会」共同代表の佐高信さんがあいさつ。大阪も東京もコロナで大変なことになっている。両方の知事がよろしくないという共通点がある。まず475兆円という数字をあげたい。日本の企業の現在の内部留保だ。労働者に還元していない金だ。コロナ禍のなかでも増えた。これは労働組合が頑張っていないということの証でもある。法人税も下げられている。きちんと労働組合は闘うべきだ。そのなかで関西生コンはあるべき闘いをしているということをシンポジウムの中で明らかにしていきたい。
 つづいて、全日本建設運輸連帯労働組合中央本部の小谷野毅書記長が事件の概要と現状について報告。全日建関西地区生コン支部に対する弾圧は、「関西生コン事件についての労働法学会有志声明」が「労働組合運動を理由とする刑事事件としては、戦後最大規模」といっている。まさにそれが実態だ。この事件は三つの要素から成り立っている。第一には、大阪生コンクリート協同組合という業者団体による大規模な不当労働行為事件ということ。組合との団体交渉を拒否をして、日々雇用400人以上の労働者の就労を拒絶し、事実上の解雇状態においていること。さらには正社員運転手についても組合活動を理由として懲戒解雇を連発するという業界による組合つぶしということだ。二つ目は、刑事弾圧だ。滋賀県警、大阪府警、京都府警、和歌山県警の四つの府県警が弾圧をしかけてきた。2018年7月にから翌年11月までかけて18回にわたり組合員、業者が次々と逮捕され、のべ71人が起訴された。三つめはこの事件の大きな特徴であるフェイクニュースで、大阪生コンクリート協同組合はヘイトスピーチなどを生業(なりわい)とする札付きのレイシスト集団を30人近く雇い入れて、組合事務所を襲撃したり、街頭で組合を誹謗中傷する行動を繰り返す、またユーチューブなどを使っての大量のデマ宣伝を繰り返してきた。以上のような三つ混然一体となってが事件の特徴だ。
 次に現状についてだが、去年5〜6月にかけて、640日以上も拘留された武委員長、湯川副委員長が保釈された。他の保釈された組合員も、裁判所から組合事務所に立ち入ってはならない、組合員相互に接触してもだめ、電話やメールもだめとされ、事実上組合活動禁止の状態の保釈条件をつけられている。現在その多くが緩和されてきてはいるが、まだすべてではない。
刑事裁判の現状は、いま四つが審理されている。大阪のストライキ事件、これは二つに分けられている。京都地裁で三つの事件、和歌山地裁で一つ、滋賀の大津地裁ではコンプライアンス活動などが威力業務妨害とされた事件がある。いずれも長期の裁判となっている。昨年11月から三つの地裁判決が出されたが、いずれも組合員を懲役刑に付するような重い有罪判決となっている。労働委員会事件では、組合側は不当労働行為について20件近い救済申し立てを起こし、このうち12件に命令や決定が出されている。そのうち10件が労働組合の勝利命令だ。しかし命令の内容には不十分なものが多い。これについては中央労働委員会でさらにほりさげた原状回復の命令をとりにいきたい。一連の事件の中で起きた組合員の長期拘留や組合活動禁止の保釈条件などに対して国つまり裁判所と検察、そして府県警察について京都府、滋賀県、和歌山県に対して国家賠償請求訴訟を東京地裁に提起しているが、審議が滞っている。それは、府県側が東京でなく関西の裁判所でやれと言っているからだが、われわれは関西の裁判所が信頼できないから東京地裁に提訴しているのである。今年2月には、最終的に東京高裁はこの裁判は東京でやると決めた。6、7月には本格的に裁判が進むことになった。関西では、ゼネコンの収奪に反対する関生支部の政策などで生コン価格は値戻し押してきた。私たちはこうした生コン価格値上げの原資を労働者に還元したい。いま正社員3割、非正規7割というのが大阪の現状だ。日々雇用労働者の賃金を上げ、そして日々雇用労働者5割、7割と正社員化し、将来的には完全に正社員化していきたい。春闘の中で、業界側と約束してきたが、関生弾圧の中で、反故にされている。そして、大幅な賃下げと年間休日の削減が行われている。労働基本権を守り抜くことが労働組合の存在意義だ。労働条件の劣化をばねとしてさらに闘いを強めていきたい。
 弁護団からの報告にうつり、大阪ストライキ第一次・第二次事件の一審判決について宮里邦雄弁護士が報告。加茂生コン第1事件の一審判決について吉田美喜夫立命館大学名誉教授が報告。
ついで大阪府労働委員会・中央労働委員会事件の現状と問題点について久堀文弁護士が報告―大阪生コンクリート協同組合の顧問弁護団は、元大阪地検検事正や特捜部長、刑事部長、大阪弁護士会会長、副会長などが名を連ねている。中労委において会社側代理人が主張しているのは、関生支部を「かねてより多くの生コン製造会社やその輸送会社等を標的にし、組織的に、違法な業務妨害行為や街宣活動活動等をくりかえし、その『圧力』を背景にした恐喝行為により巨額の経済的利益を得てきた反社会的集団」と定義づけ、過去に締結され協定書等も関生支部の「圧力」を背景にして結ばれたものであるから、「違法行為により実現された利益は法的保護に値しない」などと主張している。
 パネル討論は、海渡雄一弁護士(支援する会共同代表)のコーディネートで、全国ユニオン会長の鈴木剛さん、評論家の佐高信さん、ジャーナリストの竹信三恵子さんが、関生事件のもつ意味、そしてこの闘いを勝利させるためにいかに運動を展開していくかなどについて発言した。


非人道的な入管法の改悪に反対しよう

 現行の出入国管理体制に問題が多いことは明らかだ。日本の難民認定率が国際的にも低いことは有名だ。日本に対しては、かねてから移民、在日外国人の人権・処遇について国際的な批判が寄せられている。外に対しては、自由、民主主義、基本的人権、法の支配を声高に主張する日本政府はまさに恥を知るべきだろう。
 4月5日には日本も理事を務める国連人権理事会が任命する独立した専門家である特別報告者4名(移民の人権に関する特別報告者フェリペ・ゴンサレス・モラレス、恣意的拘禁作業部会のエリナ・シュタイナーテ副委員長、宗教と信条の自由に関する特別報告者アフメド・シャヒード、拷問等に関する特別報告者ニルス・メルツァー)の連名の共同書簡は、日本にたいして「移民の人権保護に関し国際的な人権基準を満たさないように見える」と指摘した。
 出入国管理法の改正について、上川陽子法相は「送還を忌避する者が後を絶たず、収容などが長期化する要因にもなっている。退去強制手続きを適切、実効的なものにするのは喫緊の課題だ」と強調し、政府与党は早期成立を狙っている。 そもそも現行入管法体制をより良いするためのものにするということで始められた入管法改正がなんと管理強化、強制退去の簡略化へと捻じ曲げられている。政府案は問題の解決どころか、「難民認定手続き中は送還しない」という規定に例外が設けられること、退去命令違反者が刑事罰の対象となること、監理制度の適用基準のあいまいさなどに対して、対象になる外国人に対して不利益や重大な人権侵害を引き起こすなどの懸念がある。
 「移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)は、入管法改悪に対する抗議声明(4月3日)で「送還忌避・長期収容という問題の解決にあたっては、『帰れない事情』のある外国人に、難民認定や在留特別許可を認めることおよび無期限収容の制度を根本的に改善することが唯一の解決策です。またそれは、日本が、人権にもとづく移民・難民受け入れ国として確立する一歩ともなるはずです」と指摘した。移住連は、法案審議がある期間の法務委員会の開催日に国会前で緊急アクションとして座り込みに取り組んだ。俳優の小泉今日子さんやタレントのラサール石井さんなどが反対運動に支持を表明するなどいま外国人の収容や送還のルールを見直す出入国管理法改正案について反対の声が広がっている。
 必要なのは、難民認定率を上げること、在留資格を与えるべき人に与えること、収容の絶対的上限を設け、収容の可否や期間を司法審査に委ねるなどによって長期拘留などという非人道的な入管行政を改善していくしかない。


重要土地等調査規制法案は現代の治安維持法

 菅内閣は、「重要土地等調査規制法案」を閣議決定し、国会に提出し、強引な審議を進めている。これは、「安全保障上の観点から」米軍や自衛隊の基地、海上保安庁の施設、原子力発電所の周囲おおむね1キロや国境にある離島を「注視区域」とし、とくに司令部を置く基地など特に重要とみなすものを「特別注視区域」として、その区域内に一定の面積以上の土地・建物の売買に所有者や賃借人の氏名・国籍・利用目的などの事前届を義務付けている。首相は、重要施設の「機能を阻害」すると認めるとき、その土地の利用の中止を勧告・命令でき、違反の場合には「2年以下もしくは200万円以下の罰金」を科すとする。
 「安全保障の観点」は政府が恣意的に決めるものであり、また調査実施機関も具体的な調査手続きなどもきめられておらず、警察、自衛隊、公安調査庁が行うことになる。そして調査の範囲は、不動産登記簿や住民基本台帳にとどまることなく、プライバシー権や思想・良心の自由などは無視され、思想信条や所属団体、職歴、家族・交友関係、海外渡航歴に拡大する。全国とりわけ、米軍基地の密集する沖縄は、多くの土地が規制対象、多くの住民が監視対象とされる。政府は、国の調査・監視対象となる不安を広げ、反基地・反原発などの政府に批判的な声を上げるのを萎縮させることも狙っている。
 まさに新たな治安立法であり、現代の治安維持法であり、自民党政権の戦争する国づくりの一環としてある。
 反対する動きは、政党、市民団体、労働組合などでさまざまに行われている。立憲野党が国会で反対の論陣を張っている。共謀罪NO!実行委員会、秘密保護法廃止へ!実行委員会、武器取引反対ネットワーク(NAJAT)、日本国際ボランティアセンター、日本消費者連盟など法案に反対する市民団体によって、重要土地調査規制法案に関する緊急声明「憲法と国際人権規約に反する『重要土地調査規制法案』の撤回を求めます」が発表され、賛同署名が拡大している。緊急声明は、「この法案は、憲法改悪の『緊急事態条項』を先取りする形で市民の監視と権利制限を日常化、常態化させる法律なのです。そのような意味で、この法律は、戦前の社会を物言えない社会に変えた軍機保護法・国防保安法とセットで基地周辺における写真撮影や写生まで厳罰の対象とした要塞地帯法の拡大版の再来だといえるでしょう。この法律が成立すれば、市民と市民団体の活動に対する萎縮は限りない連鎖を生み、戦前のように、日本社会を沈黙の支配する社会へと国が変えてしまうことが再現されることすら予想されます。安保関連施設を厚いベールで隠し、一切の批判を封じることから、戦争に向かう政策を補強する戦争関連法の一環であると言わざるをえません。このような法案は決して成立させてはなりません。私たちは政府に対して、日本国憲法と国際人権規約に真っ向から反する、問題の多いこの人権侵害法案を撤回するよう求めます」と法案撤回を訴えている。


第92回日比谷メーデー

    
 集会終了後には新橋でアピール行動を展開

 5月1日、「福島原発事故を忘れない!原発ゼロ社会・復興の実現を!」「コロナ解雇を許すな!雇用継続と休業・生活補償の充実を!」「なくせ貧困・格差・差別、8時間働けば暮らせる社会を!」「9条改憲反対!辺野古新基地建設阻止!菅政権は退陣を!」をスローガンに第92回日比谷メーデーがひらかれた。
 コロナ禍がおさまらない状況での縮小した形式だったが、今年は日比谷野外音楽堂を式典会場として開催された。

 集会終了して、新橋駅SL広場で街頭アピール行動・スタンディングを実施した。


今こそ市民が声をあげるとき 憲法9条破壊の新たな段階に立ちむかおう

                              2021・5・3 九条の会


戦争への痛切な反省の上にたって1946年11月に公布された日本国憲法は、この5月3日で施行74年を迎えました。前文で「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのない」ようにと決意して9条を定めたこの憲法を敵視し、改憲策動を続けてきた安倍晋三政権は、昨年退陣しましたが、後を継いだ菅義偉政権も憲法破壊の政治を一層進めようとしています。
 バイデン米政権発足後初となる4月16日の日米首脳会談での共同声明は、日米同盟を「インド太平洋地域、そして世界全体の平和と安全の礎」であるとし、両国の軍事同盟が広大な地域を対象とすると宣言しました。とりわけ重大なのは、声明が「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調」して、台湾有事に際しての米軍の軍事行動に対し武力行使を含めた日本の加担を約束したことです。声明は中国との軍事対決を念頭に、日本の防衛力の増強、辺野古や馬毛島での基地建設の推進をも盛り込んでいます。日米軍事同盟強化と憲法9条破壊は新たな段階に入りました。
 声明は、こうした軍事同盟の強化を、中国による東シナ海や南シナ海での覇権的行動の抑止を理由にしています。しかし、これに、日米軍事同盟の強化で対抗することは、米中の軍事的緊張を高め、日本を巻き込んだ戦争の危険を呼び込むものです。憲法9条の精神のもと、国際法に基づく道理を尽くした平和的な外交交渉で問題打開の道を拓くべきです。
 今まさに、日本国憲法の価値を再認識すべき時です。全世界の人々がコロナ禍で苦しむ中、軍備の拡大や戦争に明け暮れていることは許されません。憲法前文の「全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有する」との理念は、コロナ禍に苛まれる人々の命とくらしを守る政治を実現する上で大切な柱です。
 九条の会も加わる「安倍9条改憲NO! 全国市民アクション」の運動や市民と野党の共同した取り組みは、安倍前首相率いる9条改憲を阻止してきました。2019年の参院選では改憲派による3分の2の議席の獲得を許さず、2018年に自民党改憲推進本部が作成した改憲案の国会での提示や議論も押しとどめ、安倍政権を退陣に追い込みました。憲法施行後間もなくから始まった明文改憲の企てを、二度と侵略と暗黒の政治を許さないとの固い決意のもとに、国民は74年にわたって阻止し続けています。
 ところが、菅政権は、一方で改憲案の国会での審議をすすめながら、「敵基地攻撃能力」の保有、日米共同声明により、憲法破壊を実質的に押し進めています。
 今こそ、改めて、市民が声をあげるときです。菅改憲NO!の声を、地域草の根から、あげましょう。コロナ禍の中、工夫を凝らしてさまざまに行動を広げ、改憲発議阻止の署名を集めましょう。野党共闘が成果を上げています。市民の力で、来る総選挙では改憲反対勢力を大きくし改憲を断念に追い込みましょう。


せんりゅう

   バイデンに言われる儘にあっち向いてホイ

        自粛自粛だけどオリパラ自粛せぬ

   ゴーンよりいい顔にみえバッハ来日

        飴玉のように五輪しゃぶってる


   希望ある友よコロナでさようなら
   
               
                    ゝ 史
2021年5月


複眼単眼

    
 「お化け」におびえた 立憲民主党

 5月6日、衆院憲法審査会は開会が大幅に遅れて始まった。「採決やめろ!」「採決反対!」。コロナ禍の最中にもかかわらず、「立ち見」まででた傍聴席からは次々に怒りの声があがり、議場の窓からは外で500名を結集して集会を開いている仲間たちの声が聞こえてきた。
 憲法改正手続法(国民投票法)修正案は賛成委員の起立によって採決された。憲法調査会以来、20年以上にわたってこの憲法に関する国会の委員会の審議を傍聴してきたが、この日の傍聴席の事態はきわめて「異例」なことで、市民の大きな怒りが表明された一幕だった。
 自民・公明などが国会に提出した改憲手続法の改正案(公選法並びの7項目改正案)は、立憲民主党が提案したテレビ・コマーシャル規制や外国人寄付規制などの事項について法律施行後3年をめどに検討を加え、必要な措置を講ずることを附則に明記するという修正を加えて、衆院憲法審査会で修正可決された。
 2018年6月、安倍晋三政権下で国会に提出された改正案は、その後、野党や日本弁護士会、学者や市民運動など国会内外の批判が高まる中、国会審議は難航し、異例ともいえる合計9つの国会を経て、ようやく衆院で採決された。改正案の提案者の自公維各党は、この第204回国会(21年1月18日〜6月16日)で可決成立しなければ、衆院の解散か任期末が目前に迫っており、廃案になるところまで追い込まれていた。立憲の修正案の「丸呑み」はその危機感の表れだった。
可決された修正案によって、この間指摘されてきた同法の持つ重大な欠陥がカバーされるには程遠く、また、附則に規定された事項の審議の実行も今後の国会運営でどこまで保障されるのか、あいまいだ。
 同法案の憲法審査会での議論は計8国会にわたって継続審議になってきた。その理由は大別して2つある。
第1は、自らの在任中に憲法改定を実現したいという野望から、安倍晋三首相(当時)が繰り返し憲法第99条の憲法遵守義務や憲法の3権分立原則に違反して改憲強行発言を繰り返し、国会審議に介入したことだ。安倍氏の発言と行動はしばしば問題となって憲法審査会が開催されない状態が生じた。この責任は第一義的に安倍首相(当時)と与党にある。
 見逃せないことは、安倍政権を引き継ぐとして登場した菅義偉首相が、2021年5月3日の憲法記念日の改憲派の集会にビデオメッセージで「時代にそぐわない部分、不足している部分は改正すべき」といい、緊急事態条項や自衛隊の明記など自民党の改憲4項目を示し、「改憲手続法を改憲論議の第一歩として成立を目指すべき」と、安倍氏と瓜二つの改憲論を主張したことだ。
 この集会で自民党の下村博文政調会長が「いま(コロナ禍の)国難だが、ピンチをチャンス(憲法に緊急事態条項を加える)に変えるように政治が動かねばならない」などと述べたことも言語道断だ。
 第2に、2007年5月、参議院本会議で可決された改憲手続法が18項目にわたる附帯決議がついたものであることは、この法律に多くの問題点が含まれていることの表れであるとともに、審議が十分尽くされないまま法律が成立したことの表れでもあり、欠陥立法であったことだ。
にもかかわらず、この間、国民民主党が自公維改正案への賛意を表明し、憲法審査会の中では共産党と立憲民主のみが7項目改正案に反対している国会の構図がつくられ、あわせてこのところ、一部メディアからは「憲法改正支持、56%」(直近の読売調査)などという世論調査がながされた。立憲内からは「議論から逃げていれば、支持者に批判されかねない」という危惧が出た。
実はこれは大いなる誤解、あるいはトラウマだった。自民党が最も重視する「憲法9条」については読売では「改正」が37%に過ぎず、現状維持か反対は56%、朝日では改正賛成45%、反対44%で、9条改正賛成は30%、反対は61%だ。
 残念ながら立憲民主の執行部は「改憲世論」という「お化け」におびえて、妥協に応じたといってよいのではないか。(T)