人民新報 ・ 第1398統合491(2021年6月15日)
  
                  目次

● 菅内閣こそ諸悪の根源

     欠陥・改正改憲手続法はただちに抜本的見直しを
     オリンピック・パラリンピック強行開催に反対する
     菅内閣を倒せ

● コロナ禍に乗じた改憲を許すな!

     市民と法律家のオンライン緊急集会(6・1)

● 国家主導のデジタル社会・許すな!

     スーパーシティからデジタル庁にいたる道

● 韓国サンケン労組を支援する会の正当な活動への弾圧に反撃を

● 育鵬社・明成社・自由社の教科書を採用するな

     戦争する国づくり教育に反対の声を!

● いかにして弾圧を粉砕するか考

● せんりゅう

● 複眼単眼  /  東京五輪、尾身の乱

● 夏季カンパの訴え 





菅内閣こそ諸悪の根源


     欠陥・改正改憲手続法はただちに抜本的見直しを  オリンピック・パラリンピック強行開催に反対する  菅内閣を倒せ

 6月11日、改憲手続法(憲法改正手続きを定める改正国民投票法・2018年提出)が、参院本会議で自民、公明、維新と立憲民主、国民民主各党などの賛成多数で可決、成立した。
 2018年6月に衆議院に提出されたこの法案は、改憲機運が下火になったのを危惧した安倍晋三前首相が9条に自衛隊を明記するなどの改憲を進めるため、憲法審査会で論議をつづけさせ、改憲機運を持続させる意図をもって出されたものだ。だが、粘り強い改憲反対の声の広がりでこの間、継続審議となってきた。
 安倍政権を継承する首相菅義偉は、今年の憲法記念日の改憲派ウェブ会合に送ったビデオメッセージで、改正改憲手続き法案について「憲法改正の議論を進める最初の一歩として、まずは成立を目指していかねばならない」と述べた。また同会合に出席した自民党の下村博文政調会長は、コロナ禍の状況で憲法に緊急事態条項を入れることについて「いま国難だが、ピンチをチャンスに変えるように政治が動かねばならない」とふざけた発言している。
 改憲メディアの中心にある読売新聞の社説「改正国民投票法 憲法論議に本腰を入れる時だ」(6月12日)は「国の最高法規はどうあるべきか。本格的な憲法論議に向けて、小さなハードルをようやく乗り越えたと言えよう。…中国の拡張主義的行動など、日本の安全保障環境は大きく変化している。新型コロナウイルス流行を機に、現行憲法に緊急事態条項がなく、危機への備えが十分でないことも浮き彫りになった。非常時において、国家の安全や国民の生命・財産を守るため、どのような措置を講じるのか。多角的に論じねばならない。…憲法改正の論議では、まず立法府が課題を直視し、論点を掘り下げることが大切である。衆参両院の審査会で熟議を重ねて憲法改正原案をまとめるとともに、改正の必要性や意義について、国民に丁寧に説明してほしい」と積極的に評価した。
 「改憲発議への環境が整った」と自民党など改憲派は主張するが、事実はまったくそうはなっていない。改正法には、CM規制、最低投票率、公務員の運動の不当な制限など重大な欠陥がある。なにより、テレビ・ラジオのスポットCMやインターネット広告が野放しであり、資金力がある政党はふんだんにメディアを買い占めることができることになる。また最低得票率の規定がないことは、多くの人の意思を無視して国の基本的ありかたがきめられてしまうという極めて非民主的なものである。この2点については、CM規制、最低投票率ともに、制定時の付帯決議で「施行までに必要な検討を加える」とされていたが、議論は進んでいない。まだまだ論議は続くことになるのは当然のことだ。
 改憲手続法はまったくの欠陥法であり、抜本的見直しが必要であり、自民党の4項目改憲は絶対に阻止しなければならない。新型コロナ対策で失政をつづけ、オリンピック・パラリンピック強行開催、不要不急の改憲策動、そして戦争する国づくりにまい進する菅反動内閣は、当然にも支持率を低下させている。オリンピック強行開催反対し、改憲阻止の運動を一段と強め、市民と野党の強固な共闘をすすめ総選挙に勝利して、菅内閣を打倒しよう。


コロナ禍に乗じた改憲を許すな!

     
市民と法律家のオンライン緊急集会(6・1)

 6月1日、改憲問題対策法律家6団体連絡会(社会文化法律センター、自由法曹団 青年法律家協会弁護士学者合同部会、日本国際法律家協会、日本反核法律家協会、日本民主法律家協会)と戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会による「コロナ禍に乗じた改憲を許すな!市民と法律家のオンライン緊急集会〜改憲の第一歩 改憲手続法(国民投票法)改正案を廃案に〜」が開かれた。

 はじめに主催者を代表して6団体連絡会事務局長の大江京子弁護士があいさつ。この集会では今なにが問題かを三つの観点からあきらかにしていきたい。一つは改憲のための国民投票が論議されているが、これは普通の選挙の投票とは違う。選挙は憲法に従って政党・候補者を選ぶことだ、もし選ばれた人が公約を守らず、あるいは憲法違反の悪政を行えば国民は、次の選挙で落とすことができる。これに反して憲法改正国民投票はこの憲法自体を変えてしまう、国の仕組みや人間の自由を一発勝負で根本的に変えるかもしれないものだ。主権者を国民から天皇へ、権力分立をやめて首相に独裁的権限を集中させようとする、平和主義をやめてアメリカあるいはイスラエルのように戦争する国にするとか国のあり方を一八〇度変えることができる。憲法は一度変えてしまえば半永久的なものとなり選挙のように選びなおすことはできないものだ。だから憲法改正国民投票の権利は一人でもおおくの人が平等に保証されるものでなければならない。すべての国民に憲法改正についての正しい知識と情報が与えられなければならない。権力のある政党が金で票を買うようなことがあってはならない。権力にあるものがデマやビッグデータを活用できる仕組みであってはならない。今参院で審議されている改憲手続法改正案はこのよううなあってはならないことがおきる欠陥法案だ。二つ目は、いま改憲論議などをしている場合か、ということ。いま国民の多くは憲法改正を望んでいない。政府が取り組むべきことは新型コロナ対策だ。三つ目の問題は、コロナ禍のなかで、安倍政権の継承者である菅政権は戦争する国づくりの総仕上げをしようとしていることだ。このような課題について、これからリレートークを行っていきたい。

 日弁連憲法対策副本部長の伊藤真弁護士が、「不公正・不公平な改憲手続法の根本問題」と題して報告。現在審議されている改憲手続法の7項目改正案は、2016年公職選挙法改正の7項目(@「選挙人名簿の閲覧制度」への一本化、A「出国時申請制度」の創設、B「共通投票所制度」の創設、C「期日前投票」の事由追加・弾力化、D「洋上投票」の対象拡大、E「繰延投票」の期日の告示期限見直し、F投票所へ入場可能な子供の範囲拡大)を憲法改正の場合にも適用できるようにするためのものだ。しかし改憲手続きの根本的な問題は解決されていない。このままでは看過できない重大なこととなる。日弁連は、有料広告規制や最低投票率などについて2009年からたびたび意見書、会長声明などを発表してきている。現在の国会の論議にははっきりと反対していかなければならず、あらためてその抜本的な改正を求めていかなければならない。いま、コロナ状況下で国民には犠牲を強要しながらオリンピックを強行しようとすることなど、憲法改正以外に問題は山積しているのに、一部の政治家は積極的に改憲を進めようとしている。憲法改正は憲法制定権者である国民がどうしても必要だという意思をもって、その改憲意思を国会が受け止めて、国会で発議され、十分議論されて進められるべきものでなければならない。しかし、一部の為政者のための改憲となっている。憲法は為政者を縛るものでなければならないが、逆になっている。為政者の改憲は、なにより彼らが今までより自由な権力行使を行おうとするものだ。それは同時に国民に不自由を強いることである。安倍首相がいい、菅首相が継承している改憲四項目を見てもそれがよくわかる。その最たるものが緊急事態条項だ。十分な補償を伴う私権の制限は現行憲法でも可能であるのに、にもかかわらず改憲を主張するのは、現行憲法ではできない。たとえば保証なしの一方的な私権制限を可能にしよう、そんな魂胆が透けてみえる。自衛隊の憲法9条への明記は集団的自衛権行使をはじめ海外での戦争への自衛隊参加の違憲訴訟などを封じ込めるものだ。選挙制度についても人口比例選挙の否定など一票の格差を違憲としない、裁判でも争えないように、投票権の不平等を憲法上許容させる。教育に関しても国が教育内容にいっそう介入できるように、そんな改憲を目指す。これらの自民党改憲項目は、国民市民の人権を制限し、平和から遠のき、民主主義を後退させるもので、立憲主義を無視する改憲は有害だ。国民投票は通常選挙とはまったくちがう。第一には投票結果がそのまま国の形をかえてしまう。第二にはどんな結果でも国民の意思の表明だということで制度化されてしまう。国民主権の名のもとに人権侵害がおこってしまう。第三には憲法は本来少数者を守るものなのに、多数者意思で変更するというジレンマをもともともっているのであり、よりいっそう慎重に国民的論議がなされるよう配慮されなければならないものだ。

 ジャーナリストの半田滋さんは、「敵基地攻撃論と日米軍事一体化〜踏み越える専守防衛」と題して報告。日本政府は従来保有できない兵器として、ICBM、長距離戦略爆撃機、攻撃型空母を上げてきたが、2018年の防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画で、相手ミサイルの射程外からの攻撃を可能とするスタンドオフ防衛能力がみとめられた。しかし島嶼防衛用高速滑空弾、事実上の大陸間弾道弾スタンドオフ機能のある長距離ミサイルの導入、護衛艦「いずも」の空母化などは、従来保有できない兵器としての制限を踏み越えるものだ。また、2016年8月に安倍首相が、「自由で開かれたインド太平洋」構想をうちだし、インド洋という日本防衛とはほとんど関係のない海域で中国の潜水艦をやっつける訓練をはじめている。

 ひきつづいて、自由法曹団の田中隆さん(7項目改正案の問題点・改正案は安倍菅改憲発議の突破口)、東海大学の永山茂樹さん(コロナと緊急事態条項創設改憲論・自民党4項目改憲案の問題)、京都の臨床医である吉中丈志さん(コロナと医療・医師の立場から)、「反貧困」事務局長の瀬戸大作さん(コロナ禍と貧困)、女性のための女性相談会実行委員の松元千枝さん(コロナ禍と女性)、沖縄平和運動事務局長の岸本喬さん(沖縄からの報告・辺野古埋め立て・重要土地規制法案)、日弁連秘密保護法対策本部副本部長海渡雄一さん(デジタル監視法と重要土地規正法案)が報告を行った。

 最後の閉会のあいさつは、総がかり行動実行委員会共同代表の高田健さん。―この通常国会はコロナ禍のもとでの国会だったが、菅政権はこの対策に失敗し、感染を拡大させたばかりか、解散・総選挙ねらいの党利党略でオリンピック・パラリンピックの強行実施にひたはしり、人々の命を重大な危険にさらそうとしている。コロナ禍に隠れるように、デジタル監視法、重要土地利用規制法案などを強行し、失敗したが入管法の改悪もねらい、超党派の合意によるLGBT法をつぶし、改憲手続法の強行も狙っている。菅自公政権を倒す以外にない。菅政権は野党の分断によって生き延びようとしている。市民と野党の共同を堅持し、強化して、次の総選挙で勝利しよう。


日本弁護士連合会・重要土地等調査規制法案に反対する荒中(あら ただし)会長声明

 「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案」(重要土地等調査規制法案。以下「本法案」という。)は、本年6月1日の衆議院本会議で可決され、今後、参議院で審議される。

 本法案では、内閣総理大臣は、閣議決定した基本方針に基づき、重要施設の敷地の周囲おおむね1000メートルや国境離島等の区域内に「注視区域」や「特別注視区域」を指定することができ、そして、その区域内にある土地及び建物(以下「土地等」という。)の利用に関し、調査や規制をすることができることとなっている。
 しかしながら、本法案には、次のとおり重大な問題がある。
 第一に、本法案における「重要施設」の中には、自衛隊等の施設以外に生活関連施設が含まれているが、その指定は政令に委ねられている。しかも、生活関連施設として指定されるためには、当該施設の「機能を阻害する行為が行われた場合に国民の生命、身体又は財産に重大な被害が生ずるおそれがあると認められる」ことが必要とされているが、この要件自体が曖昧であり、恣意的な解釈による広範な指定がなされるおそれがある。
 第二に、本法案では、地方公共団体の長等に対し、注視区域内の土地等の利用者等に関する情報の提供を求めることができるとされているが、その範囲も政令に委ねられている。そのため、政府は、注視区域内の土地等の利用者等の思想・良心や表現行為に関わる情報も含めて、広範な個人情報を、本人の知らないうちに取得することが可能となり、思想・良心の自由、表現の自由、プライバシー権などを侵害する危険性がある。
 第三に、本法案では、注視区域内の土地等の利用者等に対して、当該土地等の利用に関し報告又は資料の提出を求めることができ、それを拒否した場合には、罰金を科すことができるとされている。そこでは、求められる報告又は資料に関して何の制限もないことから、思想・良心を探知されるおそれのある事項も含まれ得る。このような事項に関して、刑罰の威嚇の下に、注視区域内の土地等の利用者等に対して、報告又は資料提出義務を課すことは、思想・良心の自由、表現の自由、プライバシー権などを侵害する危険性がある。
 第四に、本法案では、内閣総理大臣が、注視区域内の土地等の利用者が自らの土地等を、重要施設等の「機能を阻害する行為」に供し又は供する明らかなおそれがあると認めるときに、刑罰の威嚇の下、勧告及び命令により当該土地等の利用を制限することができるとされている。しかし、「機能を阻害する行為」や「供する明らかなおそれ」というような曖昧な要件の下で利用を制限することは、注視区域内の土地等の利用者の財産権を侵害する危険性がある。
 第五に、本法案では、特別注視区域内の一定面積以上の土地等の売買等契約について、内閣総理大臣への届出を義務付け、違反には刑罰を科すものとされているが、これも過度の規制による財産権の侵害につながるおそれがある。
 このように、本法案は、思想・良心の自由、表現の自由、プライバシー権、財産権などの人権を侵害し、個人の尊厳を脅かす危険性を有するとともに、曖昧な要件の下で刑罰を科すことから罪刑法定主義に反するおそれがあるものである。
 なお、本法案は、自衛隊や米軍基地等の周辺の土地を外国資本が取得してその機能を阻害すること等の防止を目的とするとされているが、これまで、そのような土地取得等により重要施設の機能が阻害された事実がないことは政府も認めており、そもそも立法事実の存在について疑問がある。
 よって、当連合会は、法の支配の徹底と基本的人権の尊重を求める立場から、不明確な文言や政令への広範な委任により基本的人権を侵害するおそれが極めて大きい本法案について、反対する。

2021年(令和3年)6月2日


国家主導のデジタル社会・許すな!

      スーパーシティからデジタル庁にいたる道


 6月7日、衆議院第二議員会館前で、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会、共謀罪NO!実行委員会、「秘密保護法」廃止へ!実行委員会、NO!デジタル庁の共催で、「共謀罪廃止!秘密保護法廃止!デジタル庁NO!重要土地調査法案反対!」国会前行動が行われ、その後には院内集会が開かれた。

デジタル社会形成基本法

 デジタル庁の創設や個人情報保護法改正を盛り込んだ「デジタル改革関連法」(「デジタル社会形成基本法」「デジタル庁設置法」「デジタル社会の形成を図るための関連法律の整備に関する法律」「公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律」「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律」「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」)は5月12日、参院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。
 この問題点だらけの危険な法律は、その内実が広く知られる前に拙速・強引な国会運営で成立させられた。 だが、問題点は山積みであり、闘いはこれからだ。
 問題点の一つは国と地方自治体との関係だ。国は自治体への支配を強めようとしている。関連法の軸となる「デジタル社会形成基本法」の第29条「(国民による国及び地方公共団体が保有する情報の活用)デジタル社会の形成に関する施策の策定に当たっては、公共サービスにおける国民の利便性の向上を図るとともに、行政運営の簡素化、効率化及び透明性の向上に資するため、行政の内外の知見を集約し、及び活用しつつ、国及び地方公共団体の情報システムの共同化又は集約の推進(全ての地方公共団体が官民データ活用推進基本法第二条第四項に規定するクラウド・コンピューティング・サービス関連技術に係るサービスを利用することができるようにするための国による環境の整備を含む)、個人番号の利用の範囲の拡大その他の国及び地方公共団体における高度情報通信ネットワークの利用及び情報通信技術を用いた情報の活用を積極的に推進するために必要な措置が講じられなければならない」とあるが、政府主導による国家主義体制づくりが明記された。

「スーパーシティー」

 デジタル社会づくりのための「スマートシティー」は、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメントの高度化により、都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける、持続可能な都市や地域であり、Society 5.0の先行的な実現の場とされる。これを日本政府は、「スーパーシティー」というが、2020年5月27日、改正国家特区戦略法が参議院本会議で可決され、スーパーシティ実現への取り組みが本格的に始動し、内閣府は2020年12月から全国の自治体からの公募を受け付け、今年の4月16日の締め切りまでに、以下の31の自治体がスーパーシティーに応募した。北海道更別村、岩手県矢巾町、宮城県仙台市、秋田県仙北市、福島県会津若松市、茨城県つくば市、群馬県前橋市、神奈川県鎌倉市、神奈川県小田原市、石川県加賀市、長野県松本市、長野県茅野市、静岡県浜松市、愛知県・常滑市共同、愛知県大府市、愛知県幸田町、三重県多気町等6町共同、京都府・精華町・木津川市・京田辺市共同、大阪府・大阪市共同、大阪府河内長野市、兵庫県養父市、和歌山県・すさみ町共同、岡山県吉備中央町、広島県東広島市、広島県神石高原町、山口県山口市、香川県高松市、福岡県北九州市、熊本県・人吉市共同、宮崎県延岡市、沖縄県石垣市。

デジタル庁・その狙い

 7日の院内集会では、PARC(NPO法人アジア太平洋資料センター)の内田聖子さんが「スーパーシティからデジタル庁にいたる道」と題して話した。日本では森喜朗政権の2000年に「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」(IT基本法)が作られ、「5年以内に世界最先端のIT国家を目指す」とした。しかしこの構想は全く失敗し、いま日本はIT後進国といわれている。いつの間にか米中などに大きく立ち遅れてしまっている。そして、政府はいまも最先端のIT国家をめざすとおなじようなことを言っている。
 2014年には、第二次安倍政権の下では、地方創生をいい、連携中枢都市園およびコンパクトシティーづくりに力点をおいた。2018年10月には、竹中平蔵を議長とするスーパーシティー構想の実現に向けた有識者懇談会が設置され、2019年5月には当時の菅官房長主導でデジタルファースト法が成立、翌6月にはスマートシティーを見据えた社会インフラの整備等のIT新戦略を制定した。2018年7月、総務省の「自治体戦略2040構想」研究会は、自治体行政の「標準化・共通化」を強調し、自治体職員の減少を前提にIT化・AI活用でサービス提供、民間企業へのアウトソーシング促進をうちだした。
 スーパーシティーに応募した自治体の具体例をあげてみよう。大阪府・市は万博会場の夢洲に計画しているが、その総面積は約390ヘクタールで、そこに空飛ぶ車、自動運転による移動支援、ドローンによる配送、顔認証技術を利用したチケットレスサービスなどを展開する。2025年大阪・関西万博で実証実験して夢洲で実施に移す方針だが、「空飛ぶ車はいらないから、障がい者も歩けるバリアフリーの道をつくって」などという大阪市民の声がある。群馬県前橋市では、官民ビックデータの活用による「超スマート自治体」をめざすとして、マイナンバーカードやスマホの本人確認などを組み合わせて市独自のIDを創設、遠隔診療やオンライン授業、キャッシュレス決済、行政手続のオンライン化する。すでに路線バスの自動運転の実証実験を実施中である。
 しかし、こうした動きは憲法で保障されている地方自治が損なわれないだろうか。地方公共団体情報システムの標準化では、地方自治体でシステム標準化の対象となる17業務は、住民基本台帳、選挙人名簿管理、固定資産税、個人住民税、法人住民税、軽自動車税、国民健康保険、国民年金、障害者福祉、後期高齢者医療、介護保険、児童手当、生活保護、健康管理、就学、児童扶養手当、子ども・子育て支援であり、これらを基礎として、国との一体化を図るのを狙っている。
 総務省の「スマート自治体研究会報告書 〜Society 5.0時代の地方」によると、紙から電子へ、行政アプリケーションを自前調達式からサービス利用式へ、自治体も、守りの分野から攻めの分野へ、を実現する「スマート自治体」をつくり、「人口減少が深刻化しても、自治体が持続可能な形で行政サービスを提供し続け、住民福祉の水準を維持」「職員を事務作業から解放」「ベテラン職員の経験をAI等に蓄積・代替して、団体の規模・能力や職員の経験年数に関わらず、ミスなく事務処理を行う」ことを目指すとする。
 各自治体が独自の判断で行っている事務にはつぎのようなものがある(住民税について独自の基準での減免。母子保健法に基づき妊娠届出書でのアンケート。国民健康保険、介護保険料・利用料を独自基準で免除。災害被災者の料金負担を免除。納期区分を独自に設けること。子ども、障害者、高齢者への医療費の無料化。国民健康保険料の自治体による法定外繰り入れ等々)。だが地方自治体がおこなう独自の取り組みは統一システムの導入で制限される懸念がある。またシステムの標準化で、業務のフローや方法まで支配されるなどおそれもある。国と自治体の関係を見てきたが、これは国と個人との関係を見る上でも参考になるだろう。
 では、私たちはデジタル社会・デジタル経済にどう向き合うべきなのか。権利の課題として、プライバシーの侵害、個人情報の同意なき商業利用、セキュリティ上の懸念、監視、暴力と犯罪、労働者の権利保護がある。社会の課題として、デジタルが価値観や文化、コミュニティの関係性に与える影響、例えばフェイクニュース、伝統的な知識体系の破壊等がある。環境の課題として、膨大なエネルギーを要するスーパーコンピューター、メガサーバー、鉱物資源の採掘を含むクラウド・ストレージがあげられる。平等性の課題として、巨大IT・プラットフォーマー企業による市場独占、デジタル・デバイド、富の独占、自然の収奪がある。ガバナンスの課題として、国際・政府・自治体による規制・ルール、透明性の確保、AI等への倫理規範、「技術の民主化・公共化」がある。
 まさにデータは人権であり、データ主権を確立しなければならない。デジタル技術は自治と民主主義のツールに過ぎないということを認識しなければならない。


韓国サンケン労組を支援する会の正当な活動への弾圧に反撃を

 サンケン電気は、一方的にLED照明などを生産していた100%子会社韓国サンケンの解散と労働者全員の解雇を発表した。そのいっぽうで、別会社での経営をおこなおうとしている。 不当な攻撃に労組は闘いを続けている。地元の慶南道知事や昌原市長も解決を求める書簡を送り、また韓国国会議員連名による「韓国サンケン廃業中断と韓国人労働者保護のための共同書簡」が、日本サンケン電気本社、日本の厚労省・経産省宛てに出されるなどしている。
 日本でも韓国サンケン労組を支援する会が結成され、定期的に本社への抗議行動を展開してきた。ところが、5月10日、警察は、プラカードを持って会社の正門前に立って抗議・要請行動を行っていた韓国サンケン労組を支援する会の尾澤孝司さんを「威力業務妨害」だとか「暴力行為」だとかのとんでもない口実をでっちあげて逮捕し、5月21日には、被逮捕者の自宅と「サンケン労組を支援する会」の連絡先となっている中小労組政策ネット事務所に家宅捜索を行い、5月31日にはなんと起訴までしたのである。正当な労組活動への不当な弾圧であり断じて許すことはできない。国内外から労組、市民からの抗議の声があがっている。

 5月28日には韓国国会議員41名が連名で、さいたま地方検察庁に「韓国サンケン廃業撤回のため日韓市民連帯を率いてきた尾沢孝司さんの釈放を求める大韓民国国会議員嘆願書」を送った。
 韓国の労組ナショナルセンター全国民主労働組合総連盟(民主労総)が抗議声明「日本サンケン電気の不法偽装廃業に反対して闘う労働者に連帯する市民活動家の連行―韓国の労働者と日本民衆の連帯を断ち切ることを目的とした日本警察の挙動に怒りを禁じえず、逮捕された活動家を直ちに釈放せよ」を出した―韓国労働者の闘いを伝え聞いた日本の志ある市民が自発的に韓国サンケン労働者と連帯するための会を立ち上げ、日本国内で様々な連帯活動を行い一定部分の成果を上げてきた。このような状況のもとで5月10日、サンケン電気本社所在の埼玉県で行われた日本警察による市民活動家の連行はその意図が明白である。…労働者の国境を超えた連帯闘争。グローバルに行われる資本の収奪に抵抗し勝利する道は、国境を超えた連帯と闘いの組織に他ならない。日本の資本が国境を超え韓国労働者への搾取、収奪に真っ向から闘う力はここにあった。同じように韓国の資本が他国に出かけて韓国で行えない不当な問題に抗して闘う労働者と共に私たちが連帯して闘う理由でもある。逮捕された「韓国サンケン労組を支援する会」の活動家は直ちに釈放されるべきだ。日本政府と警察は、サンケン電気の不義な行為を判断し処罰ができない、処罰しないとしても、市民の自発的な連帯行動に対する妨害や弾圧を行うべきではない。助けられなくても邪魔建てをするようなことはあってはならない。さらに、大韓民国政府にも要求する。最近問題となっている投機ファンド資本MBKなど、韓国に進出してうまい汁だけを吸い上げて撤収する「食い逃げ資本」に対し、実質的に規制する法と制度が整備されるべきだ。一体いつまでこの地の労働者の血と汗を吸う外国資本の食い逃げを許すつもりなのか。これは主権の問題でもあり、国家の自尊心の問題でもある。速やかな勇断と実行を行え。―


育鵬社・明成社・自由社の教科書を採用するな

     
 戦争する国づくり教育に反対の声を!

 今年は公立高校教科書採択の年だ。戦争する国づくりには、学校教育を国家主義的なものに再編させ、右翼的に歴史を修正させることが必要不可欠とされる。
 安倍・菅政権の下で教育の反動的再編が強引に進められている。とりわけ右派的な観点に立った育鵬社・明成社・自由社などの教科書を多くの学校に採用させるため、地元活動右派勢力を動員しての強要が展開されている。
 だが市民・教職員らの粘り強い反対で、保守的とされる育鵬社の教科書が全国的に激減するなどそうした教科書の採用は一時の勢いは減退している。だが、右派勢力は諦めていない。
 この間、文科省が最も統制を強めたのが「北方領土」、「竹島」、「尖閣諸島」に関する領土記述である。「歴史総合」でも「慰安婦」問題で国家による戦時性暴力としての視点は大きく後退している。とりわけ、日本社会の右傾化をもくろむ維新の会・松井市長の大阪市は、市教委の頭越しに「原則オンライン」方針をうちだすなど、教育反動化の先兵的役割を果たしている。大阪府教委は独自の「検定教科書の調査」で、「従軍慰安婦」「強制連行」「連行」「強制労働」記述への介入しようとしている。こうした二重検定を許してはならない。
 5月12日には、日本維新の会の藤田文武衆議院議員(大阪12区)の国会質問に対して文科省統括審議官は「今年度の教科書検定より、『いわゆる従軍慰安婦』との表現を含め政府の統一見解を踏まえた検定を行っていきたい」と答え、萩生田光一文科相は「今回の閣議決定で、今後記述がなくなっていくだろうと期待しているし、そうあるべきだ」「作り話がもとで世界が誤解し、学校の教科書にも登場する事態になったことは極めて残念だ」と述べた。

 6月5日、「戦争教科書」はいらない!大阪連絡会による「2021年高校教科書採択 全国集会 新教科『公共』『歴史総合』『地理総合』って?」オンライン集会が開かれた。
 第1部の「高校新教科『公共』『歴史総合』『地理総合』教科書の検討」では、子どもたちに渡すな!あぶない教科書大阪の会から「高校教科書・中学校自由社教科書の検討、育鵬社公民写真問題のその後」と題して報告が行われた。子どもたちに渡すな!あぶない教科書大阪の会は、府立高等学校社会科教員にたいして「明成社の執筆者には『改憲』を強く唱える日本会議(日本最大の右翼団体)と関係の深い学者が多く、筆頭執筆者の伊藤隆氏は育鵬社教科書の執筆者でもあります。明成社の最大の特徴は、不都合なことは書かず、都合の良いことだけを書いて、生徒に『日本はすばらしい国』と思わせ、『愛国心』を刷り込もうとするところにあります」「明成社の『歴史総合』教科書は採択しないでください」「明成社ではなく、『人権・平和・共生』を大切にしたより良い教科書を選んでくださいますよう、よろしくお願いいたします」という手紙を出した。
 明成社のとりわけ問題があると思われる箇所は、@外国人の口を借りて日本のすばらしさを教える、A日本は戦争捕虜を大切にした国だと印象づける、B関東大震災で起きた朝鮮人・中国人の虐殺は書かない、C太平洋戦争を『アジアの植民地解放の戦争』だったと印象づける、などで、保守派の歴史認識をもっとも反映しているのが明成社の「歴史総合」だ。
 また中学の自由社と育鵬社の歴史教科書は似ていて、どちらも「日本はすごい国」と強調して偏った「愛国心」を刷り込むだけでなく、過去の侵略戦争を正当化している。自由社の教科書は育鵬社のものをもっと濃くしたような内容となっていて、日本を「すごい国」と印象付けるために、都合の悪いことは書かないのが最大の特徴であり、神話の扱いが突出して大きく、「神々の系図」まで掲載する。神話の神武天皇が天皇の始まりであるかのように記述し、生徒に神話と史実を混同させるようなものだ。日露戦争で日本が勝利したことに、ネルーが勇気づけられたと記述しているが、しかし、ネルーはその後の韓国併合によって、「日本も西欧列強と同じだ」と語ったことについては書かない。日中戦争の初期に、日本軍が南京で多くの中国人を殺害したことは書かず、通州で日本人が殺害されたことだけを書いている。しかし、南京虐殺は世界中で広く認識された事件だ。こんな教え方では、国際社会で生きる主権者を育てることはできない。また、明治初期の「琉球処分」を「一種の『奴隷解放』だった」と美化して記述する。武力を使って一方的に日本の領土に組み込みながら、沖縄を差別的に扱ってきたことは書かず、沖縄の発展が遅れたのはあたかも沖縄住民のせいであるかのように印象づけている。「人権侵害」としてすでに廃止された「北海道旧土人保護法」を、明治政府がアイヌを保護するための法律だったと記述し、アイヌ文化を破壊し、アイヌの土地を奪ったことを、すべてアイヌの慣習のせいであったかのように書いている。また「創氏改名」は強制ではなかったと強調し、もともと「創氏改名」は、皇民化のために日本が植民地朝鮮に日本式の家族制度を持ち込んだもので、改名しない朝鮮人には様々な不利益・差別があり、事実上の強制であったことには触れない。
 育鵬社の歴史教科書は、日本の歴史を天皇の統治の歴史として記述する皇国史観であり、神道を日本固有の宗教と記述し、天皇との結びつきを強調する。日本をすばらしい文化を持った国と過度に礼賛する日本すごい史観、日本中心主義史観である。エジプトのクフ王のピラミッドや秦の始皇帝陵と比べ、日本も「高度な土木技術をもっていた」と仁徳天皇陵といわれた大仙古墳のすごさ(面積)を強調する。しかしクフ王のピラミッドは大仙古墳より約3000年も前、始皇帝陵は約2200年前に作られ、両者とも高度な石組みの建造物だ。5世紀に作られた大仙古墳は、土を積み上げる技術しかなかったので底面積を大きくした建造物だ。時代も技術も違うものを比べて、面積の大きさだけで自慢するのは歴史学の非常識である。
 根拠のない「日本すごい」教育は、子どもたちに偏った優越感を植えつけるだけ。国際社会では通用しない。
 そして、日本の侵略戦争・植民地支配を正当化し、加害の記述がほとんどなく、戦争を美しく描いている。韓国併合では、「韓国併合後の朝鮮の変化」の表で米の生産量が増え、学校も増え生活が良くなったとイメージさせる。しかし増えた米は日本に持って行かれ、朝鮮の歴史や朝鮮語の授業が禁止されていったことには触れない。日中戦争の南京虐殺については、日本軍が与えた被害の実態を具体的に書かず、「犠牲者 数には様々な見解がある」と数の問題にずらしている。女性をあくまでも「男性を支える存在」として記述し、女性の活躍を取り上げているように見せて、その実、性別役割分業を前提する女性差別の観点で書かれている。

 つづいて、 高校教育現場と全国各地からの報告が行われた。

 最後に方針提起がおこなわれた。
 高校教科書・明成社版を採択しないように求める、中学校歴史教科書採択に関して、自由社と育鵬社を採択しないように求める、市町村教育委員会に声を届け、教科書展示会に行き、採択をしないように求める意見を書く。採択の教育委員会議を傍聴する。また、政府答弁書を基にした教科書採択への介入に警戒を訴えていく。


改憲手続法参議院憲法審査会参考人質疑報告集会

 菅内閣は、コロナウイルス感染者が増える中で、この深厚な事態のどさくさ紛れに、安倍を継承した改憲策動を一段と強めている。

 6月2日、参院憲法審査会で改憲手続法(国民投票法)改正案に関する参考人質疑を行った。与党推薦の上田健介近畿大教授、日本維新の会推薦の浅野善治大東文化大教授、立憲推薦の飯島滋明名古屋学院大教授、共産党推薦の福田護弁護士が発言した。与党推薦の上田教授が、改正案をめぐる国会での議論について「熟議にはなっていないのではないか」述べるなど、参考人四人すべてがさらなる論議が必要だと述べた。

 参議院憲法審査会参考人質疑の終了後、国会そばの星陵会館で、「改憲手続法の参議院憲法審査会参考人質疑報告集会」(主催:戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会、9条改悪NO!全国市民アクション)が開かれた。参考人質疑に参加した福田護弁護士と飯島滋明名古屋学院大学教授が報告。CM規制、最低投票率、国民投票運動など、重要な問題が残されたままであり、そうしたものを積み残したままで憲法を変えるというのは暴挙だと指摘した。
 立憲野党や市民運動団体からの発言がつづき、与党などの強行を許さず、最後まで闘い抜こうとの決意を固めた。


いかにして弾圧を粉砕するか考

 関生支部(全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部)にたいする弾圧がつづいている。
 昨年10月から大阪、京都地裁における冤罪事件が連続して起こっている。早くも関生支部部委員長の武健一さんへの大阪地裁判決が7月13日に出されることになっている。
 また滋賀と和歌山各地裁においても公判が重ねられている。
 この間の特徴は、大阪広域生コンクリート協同組合(大阪広域協組)をはじめとする各県からの会社側の傍聴券取りの動員が運動側を大きく上回っていることだ。運動側の本気の取り組みは公判への取り組みだけではないが、もっと深くひろく闘う体制を作っていかなければならない。
 この連続した冤罪は、広域協と右翼、そして警察・検察・裁判所によって作り上げられている。
 こうしたことによって労働法の破壊のみならず、憲法をも改造して実質無法化状態が全国に広げられていることだ。その魔手は労働組合から市民運動そして政党へと延びていくのは自明である。そのことを知るためにも曇りなき眼で、この事件を知る必要がある。

 本紙前号でも「関西地区生コン支部への不当弾圧に対する闘いを支援する会」による「第2回検証シンポジウム 関西生コン事件のこれからを考える」が紹介されたが、そのシンポジウムをさらに肉付けした本が出た。
 「旬報社」の「挑戦を受ける労働基本権保障――一審判決(大阪・京都)にみる産業別労働運動の無知・無理解 (検証・関西生コン事件1)」(800円)だ。主な内容は、連帯ユニオン小谷野毅書記長による事件の概要、熊沢誠甲南大学名誉教授「まともな労働組合の受難―全日本建設運輸連帯労組関生支部刑事訴追裁判鑑定意見書」、吉田美喜夫立命館大学法学部名誉教授『関西生コン事件』と労働法理―『加茂生コン事件』を中心として」、宮里邦雄弁護士「大阪ストライキ事件判決批判――産業別労働組合についての無知・無理解」などだ。労働問題を暴力事件に仕立て上げてゆく冤罪のプロセスが白日の下にさらされて、手に取るように特高警察の戦前同様の狙いが鮮明に浮かび上がってくる。今後も、裁判や労働委員会に提出された研究者の鑑定意見書などを収録した『検証・「関西生コン事件」』を随時発刊するという。
 通読をお勧めする。(河田良治)


せんりゅう

  五輪とかけて国体ととく 特攻精神

       いのちより五輪を守るスガ自民

  自粛自己責要請あぁバンザイ
  
       原発もかの満州もあぁ国策

  五輪天皇が如しスガ政治

       慰安像よりリコール偽造のインパクト    
               
                 ゝ 史
2021年6月


複眼単眼

     東京五輪、尾身の乱

第204国会が終わろうとしている。菅政権にとっては間近に迫った総選挙での自公与党の勝利のためには、コロナ禍におけるワクチン接種の拡大と東京五輪開催の一大キャンペーンが不可欠だ。
しかし、この五輪があとひと月半に迫っても、見通しが立たない。強行突破を謀る菅政権と、政府の「新型コロナウィルス感染症対策分科会」の尾身会長の軋轢が、ここにきて表面化してきた。
安倍・菅政権は党利党略から東京五輪の開催に固執し、その成功をもって総選挙での延命と支持の拡大につなげる戦略だ。そのために「原発はアンダーコントロール」といい、そのキャッチフレーズも「東日本大震災からの復興五輪」「人類がコロナに打ち勝った証としての五輪」「安心安全な五輪」などところころ変えながら、東京五輪開催に突き進んできた。最近では「五輪は人類平和と団結の祭典」などという陳腐なスローガンまで引っ張り出す始末。
この結果、人々はさらに重大な危機に陥れられようとしている。各種の世論調査によっても、世論と政府の乖離は甚だしいものがある。多数の人びとが東京五輪の中止か延期を要求している。
この東京五輪開催の強行突破を謀る菅政権の暴挙に対して、緊急事態宣言が再延長された6月はじめ頃から、見るに見かねた「分科会」の尾身会長は、公然と批判を展開し始めた。
「今の状態で(五輪)大会をやるのは、普通は考えられない。やるになら(主催者として)何のためにやるのははっきりと明言することが重要だ」「スタジアム内の感染症対策だけを議論しても意味がない」などと繰り返し政府の対策の不十分さを指摘し、事実上の開催中止論を展開している。
これ驚いた丸川五輪相は「全く別の地平から出てきた言葉をそのまま言っても、なかなか通じづらい」等と頭ごなしに批判し、田村厚労相は近く尾身氏が提出を予定しているという「専門家としての見解の提言」に対しても「自主的な研究の成果の発表」だなどと揶揄し、あくまで「参考資料」として取り扱うことを表明した。
 この応答のあまりのひどさに、田村厚生労働相は、後日、修正を迫られ、「言葉の使い方をあらためる。参考になるものはしっかりと取り入れると言いたかった」と釈明に追われた。
 従来、「分科会」会長の尾身氏が果たしてきた役割は、政府のコロナ感染症対策の助言者として担ぎ出した専門家の代表だ。尾身氏は政府の緊急事態宣言の発表の記者会見などには必ず同席し、政府の説明を補佐してきた。安倍・菅両首相とも事態をまともに説明できず、官僚の書いたメモを棒読みする中で、政府の政策を擁護し、ほとんど「御用学者」の役割を果たしてきた。
その姿は見ていてあまりいい気がしなかった。
その尾身氏にしても、もはや我慢がならないところに至ったのだ。尾身氏が近く公表するという「提言」がどのようなものとなるかは知らない。政府は尾身氏に対して「感染症対策担当の分をわきまえろ。五輪に口を出すな」といわんばかりだ。
しかし、いずれにしても、東京五輪の強行突破は、しばしば「15年戦争」当時のインパール作戦に例えられるほど無謀であり、悲惨な結果を招くに違いないことは目に見えている。
 この1年半余り、安倍・菅自公政権は直面するコロナの危機にまともに対応できず、この政権の下で日本社会は1万3千人をこえる人命を失い、罹患者数は76万人になろうとしている。コロナ感染症対策で政府は後手、後手を重ね、医療体制の拡充でも、PCR検査など感染実態の把握の面でも、ワクチン確保と接種でも、先進的な諸外国とくらべても、まともな対応ができていない。
 政治の責任は重大だ。
 いまからでも引き返すことはできる。政府は東京五輪中止の決断をせよ。 (T)


夏季カンパの訴え  労働者社会主義同盟中央委員会

 安倍の投げだしのあとを受けた菅内閣は安倍政権の改憲反動体質を受け継ぐとともに、よりいっそうのでたらめな政権運営で日本社会の混乱・衰退を加速させています。菅内閣の本質は、深刻化するコロナ禍の下でのオリンピック・パラリンピックを強行開催し、その「成果」を背景に、総選挙に勝利したいという党利党略私利私欲のために、人びとの生命・健康・生活を危険にさらしてもなんの痛みも感じないというところに集中的に表れています。本国会では、デジタル庁関連諸法、改正改憲手続法などの悪法を強引に成立させました。外政面では、中国敵視の日米軍事同盟の強化、軍備増強を進めています。 この政権は極めて危険です。総選挙で、市民と野党の共闘を強化拡大して勝利し、一日も早く打倒しなければなりません。
 労働者・人民の力を強化し、団結を広げ、総がかりで政治変革の流れを加速させましょう。
 われわれは、いっそう奮闘する決意です。
 みなさんに、夏季カンパを訴えます。