人民新報 ・ 第1403号統合496号(2021年11月15日)
  
                  目次

● 総選挙の総括をしっかりおこない
        市民と野党の共闘をいっそう強め
              岸田政権と対決し打倒しよう


             第49回衆議院議員総選挙に関する声明(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)

             2021衆院選「声明」 − 憲法改悪に反対し、市民と立憲野党の共同で政治を変えよう(憲法9条を壊すな!実行委員会)

● 東京総行動(けんり総行動実行委)

        働く権利  働く者の権利  人間としての権利の実現

● 日本労働弁護団―「解雇の金銭解決制度」導入に反対する声明

● さようなら原発

        原発汚染水海洋放出反対・原発再稼働許すな!

● 11・3憲法大行動

● 東電刑事訴訟控訴審が始る

        東電旧経営陣は刑事責任をとれ

● 日米両政府の裁判介入は明白

        砂川事件裁判国家賠償等請求訴訟第6回口頭弁論

● 核兵器禁止条約を批准せよ

        岸田首相の「核軍縮」はマヤカシ

● ウィシュマさんの遺族が入管局長らを殺人容疑で告訴

● せんりゅう

● 複眼単眼 / 衆院選、保阪正康さんの危機感





総選挙の総括をしっかりおこない
      市民と野党の共闘をいっそう強め
            岸田政権と対決し打倒しよう


 衆院総選挙では、野党共闘は小選挙区で自民党に競り勝つという成果を上げたが、自民党は議席を減らしたものの安定多数を獲得して政権を維持した。与党とその補完勢力である「維新の会」を合わせて、改憲発議の必要条件である3分の2を超えた。残念な結果だが、日本社会が抱える矛盾が顕在化するのはこれからだ。すでにはじまった新型コロナウイルスの再度の蔓延、社会的格差拡大と貧困化、環境問題諸問題が深刻化する。自民党や維新の会などは、軍事力強化など平和や憲法を破壊する動きを強め近隣諸国との緊張は激化する。人びとの不満は蓄積される。こうした人びとの生活と権利、平和を脅かしている政治社会構造の根源は自民党政治であることを粘り強く暴露し、それに代わるビジョンと政策づくりを着実に進展させていこう。ひきつづいて市民と立憲野党の共闘を強化して、来年7月の参議院議員選挙に勝利し、安倍・菅・岸田とつづく自民党政治を変えていかなければならない。
 11月10日、総選挙の結果を受けた特別国会で岸田文雄は第101代内閣総理大臣に指名された。その日の記者会見で、岸田は「新型コロナ対応は引き続き最優先の課題」とし、経済政策では持論の「新しい資本主義」を起動させると述べた。経済成長ではデジタル田園都市国家構想、経済安全保障では人工知能、量子などの分野で研究開発を複数年度にわたって支援する基金創設、サプライチェーンの強靱化や基幹インフラの信頼性確保を進めるという。目玉の分配政策では、「給与を引き上げた企業を支援する賃上げ税制について、控除率の大胆な引上げなど制度を抜本的に強化し、賃上げを後押しいたします。月内に行う、次回の新しい資本主義実現会議において、来年の春闘に向け、賃上げの議論をスタートさせます。私が労使の代表と向き合い、賃上げを促してまいります」と見えを切った。しかし現実は酷いものだ。9月29日に公表された国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査結果」によると、2020年の日本の平均給与は433万円となり、前年比0・8%の減少となっている。平均給与は2019年が436万円、2018年が441万円だった。菅も、賃金を上げる政策を強調したが、数字はそれらの政策がまったく効果を上げなかったことを示している。しかも労働者の中でも、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の較差は広がっている。
 一方で、9月1日財務省の法人企業統計では、金融・保険業を除く企業の2020年度末の「内部留保」は484兆3648億円(前年度末比2・0%増)で、2012年度以来、9年連続で過去最高更新だ。また家計金融資産は2021年3月末には1、946兆円となった。2020年3月末に1、816兆円であり、コロナ禍のなかで前年比7・1%増である。この現実は、資本による労働者の搾取と儲かればもうかるほど良いというこの資本主義社会の時代の本質からくる。そうした既得権益者の利益を守るのが政府だ。資本は、賃上げを望まない。そうすればそれだけ儲けが少なくなり、企業競争から脱落するからだ。岸田は歴代自民党政権と同様、この現実をかえられないし、そもそも貪欲な資本家、大金持ちなどは彼らの支持基盤だ。
 外交・安全保障面では、「日米同盟の更なる強化」「自由で開かれたインド太平洋の実現」「普遍的価値を共有するパートナーとの関係強化」であり、「中国やロシアとの関係では、主張すべきは主張し、毅然とした外交」を進めるという。アメリカの支持のもとに、自国の利益を確保・拡張しようというものだ。これが安倍路線といかなる関係を持つのかが注目されるが、とりわけ焦点となるのが日中友好議員連盟会長だった林芳正の外相任命である。林の父である林義郎(宮澤改造内閣の大蔵大臣)は日中友好会館会長を務めたこともあった。林は「普遍的価値を守り抜く覚悟、日本の平和と安定を守り抜く覚悟、人類に貢献し国際社会を主導する覚悟、この3つの覚悟を持って外交を展開していきたい」と述べているが、右派メディアは岸田内閣の対中強硬策は掛け声だけだと牽制している。その一方で人権問題担当の総理大臣補佐官に中谷元防衛相が起用されている。
 日本の対中政策は、実際には米国の対中政策の従属変数でしかない。いま、バイデン大統領の対中政策は台湾政策と地球環境問題・貿易問題のなかで揺れている。岸田外交は、米中関係で大きく影響されることになるだろうが、なによりこの日本での民衆の反改憲・平和の闘いが重要である。
 12月初旬にも予定されている臨時国会での論戦、そしてさまざまな大衆行動の展開で、世論を盛り上げていこう。改憲阻止、軍備拡張反対、格差是正の闘いを強化していこう。

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第49回衆議院議員総選挙に関する声明


 10月31日に行われた衆議院議員総選挙は、自由民主党は議席を減らしたものの単独過半数を維持し、自民党と立憲民主党の減少分を日本維新の会が吸収するという結果に終わった。

 市民連合は、立憲野党に「市民と野党の共闘」、「野党共闘体制の確立」を求めて取り組んできた。立憲野党は289の小選挙区の4分の3で候補者を一本化し、一騎打ちの構図を作った。各地で野党候補の勝利のために奮闘した市民の方々には深い敬意と感謝を表明したい。多くの選挙区で野党候補が僅差の敗北を喫したことは極めて残念である。接戦の選挙区が多かったことは、野党と市民の協力に一定の効果があったことを意味していると思われる。しかし、野党と市民連合の政策が、今の政治に様々な疑問を感じている無党派層の理解や共感を得られなかったことを、反省しなければならない。

 この選挙の反省をもとに、日常的な政策実現の取り組みと合わせて、来年の参議院選挙を戦う体制を再構築しなければならない。市民連合としては、今後とも自民党に代わる選択肢を創出するよう、努力を続けていきたい。

2021年11月1日

        安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合

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憲法9条を壊すな!実行委員会2021衆院選「声明」 − 憲法改悪に反対し、市民と立憲野党の共同で政治を変えよう

 衆議院総選挙が終わりました。
 この総選挙は安倍・菅9年の悪政を隠蔽するため、自民党の看板をすげ替えた岸田新政権が、臨時国会で予算委員会も開かないなど政策論争の機会すら与えないという超短期間で、党利党略の奇襲攻撃を仕掛た異例の総選挙になりました。その中で直前の自民党総裁選のメディアジャック状況と比較しても総選挙の報道があまりにも消極的だったことは選挙の公平・公正の保障からみて重大な汚点を残したと言えます。
この総選挙で立憲野党4党と市民連合は6本20項目の政策合意を結び、全国の小選挙区の4分の3で候補者を1本化し、62の選挙区で自公勢力に競り勝ちました。何人もの閣僚や与党の重鎮を落選させました。あと1歩のところに迫って、惜敗した選挙区も30数か所もありました。
 しかし、自民党は議席を減らしたものの、単独過半数を獲得して政権を維持し、与党とその補完勢力である「維新の会」を合わせて、改憲発議の必要条件である3分の2を超えました。これは政治の変革をめざして奮闘してきた私たちにとって、大きな痛恨事です。
 立憲民主党や日本共産党が議席を減らしたことで、マスコミや与党などから「野党共闘効果の疑念」や「共闘の再検討」なるキャンペーンが繰り広げられています。敗北の原因を明らかにするためには「共闘」がどのような質をもって展開されたかの総括と反省は必要です。私たちは全国の勝利の経験に学びながら、合わせてその作業に真剣に取り組まなくてはなりません。
 しかしながら、もし与党や一部のマスコミがいうように野党が共闘せず、ばらばらで小選挙区選挙を闘ったら、小選挙区の62箇所の勝利すらあり得ませんでした。小選挙区比例代表並立制というこの悪法の下で、野党と市民が日本の悪政を変える闘いを挑む方法は、選択肢を鮮明にしながら、立憲野党の候補者の一本化を進めること以外にあり得ないと思います。いま必要なことは共闘を崩すのではなく、この努力の一層の強化ではないでしょうか。
 新型コロナの第6波の危機が語られ、人々のいのちとくらしが危機にさらされている今日、安倍・菅9年の悪政を継承し、「改憲」と「敵基地攻撃能力の保有」や「防衛費の対GDP比2%以上」など東アジアの平和に逆行して緊張激化の道をすすめる岸田政権の危険な企てに、私たちは全力で対決していかなくてはならないと思います。
 総選挙で立憲野党が掲げた、憲法にもとづく政治の回復、科学的知見に基づく新型コロナウィルス対策の強化、格差と貧困の是正、ジェンダー視点に基づいた自由で公平な社会の実現、権力の私物化を許さず、公平で透明な行政、などの政策にもとづく日常の運動を強め、全国各地で市民運動の基盤を広げていく必要があります。
 わたしたちはゆるがずに市民と立憲野党の共闘を強化し、来年7月に迫った参議院議員選挙で勝ち抜き、政治を変え、改憲とアジアの緊張激化を進める与党の路線を転換させましょう。
 確信と希望をもって、共に前進しましょう。

2021・11・9

        憲法9条を壊すな!実行委員会


東京総行動(けんり総行動実行委)

     働く権利  働く者の権利  人間としての権利の実現


 「東京総行動」は、1972年の東京地評主催の「反合理化東京総行動」からはじまり、大衆的な直接行動として戦後の労働運動史に輝かしい闘いの足跡を残してきた。
 
 10月29日、178回目の東京総行動(主催・けんり総行動実行委員会)が取り組まれ、総務省前の集会からスタートした。けんり総行動実行委員会代表の東京全労協大森進議長が主催者を代表して、統一行動の東京総行動として、資本からの攻撃に対して闘い勝利を勝ち取るために、団結を強化していこう と述べた。厚生労働省(薬害救済・カルテがないC型肝炎訴訟原告団、C型肝炎患者をサポートする会)、上智大学(不当解雇・上智大学のクッキ・チュー先生を支える会、全国一般労働組合東京南部)、日本製鉄(戦後補償・日本製鉄元徴用工裁判を支援する会)、JAL本社(解雇・JAL不当解雇撤回争議団)、シグマテック(偽装請負解雇・なかまユニオン)、サンケン電気(企業閉鎖全員解雇・韓国サンケン労組を支援する会)、三井不動産(アスベスト被害、不当労働行為・東京労組、日本エタニットパイプ分会)、ニチアス(アスベスト被害、団交拒否・全造船ニチアス 退職者分会、アスベスト産業分会)、東京都庁(学園再建・全国一般千代田学園労組、解雇・文京七中分会)、トヨタ 東京本社(解雇・団交拒否、全造船関東地協・フィリピントヨタ労組)のコースで闘われた。
 コースの途中、南池袋のサンケン電気本社前で抗議行動が行われた。サンケン本社が韓国サンケンの廃業をネット上で公表してから1年、韓国サンケン労組の闘いが続いている。サンケンはLG電子と別会社を作っていて、偽装解散そのものだ。5月10日、定例月曜行動に参加していた韓国サンケン労組を支援する会の尾澤孝司さんは、不当にも新座警察署に逮捕され、「暴行」と「威力業務妨害」で起訴された。まったくのデッチアゲ事件だ。尾澤さんは元気に闘っている。「尾澤孝司さんの早期釈放を求める署名」運動が行われている。
 午前の最後は天王洲アイルのJAL本社前行動。日本航空は、2010年12月31日、パイロット81名、客室乗務員84名の整理解雇が強行した。JALは、その後10年余、パイロット386名、客乗職6205名が採用しているが、闘いの中で一年契約の地上職員として乗員4名、客乗1名が採用されただけであり、組合活動家の狙い撃ちだったという資本の黒い意図は明白だ。

 東京総行動のメインスローガンである働く権利、働く者の権利、人間としての権利の実現のため、団結してすべての争議に勝利しよう。


日本労働弁護団―「解雇の金銭解決制度」導入に反対する声明

 厚労省の解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会は、10月26日の第15回会議で、「解雇無効時の金銭救済制度の検討に関する議論の整理」を行った。解雇無効時の金銭救済制度というが、実際には、不当・不法とされた解雇を金を払っただけで「解決」するということである。 
 10月21日、日本労働弁護団は、「『解雇の金銭解決制度』導入に反対する声明」を発表した。―厚生労働省内に設置された「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」が、いわゆる「解雇の金銭解決制度」について議論の取りまとめの段階に至っていること、政府が2921年6月18日に公表した「成長戦略フォローアップ」で、「労働移動の円滑化」という項目において、「解雇無効時の金銭救済制度について、2021年度中を目途に、法技術的な論点についての専門的な検討の取りまとめを行い、その結果も踏まえて、労働政策審議会の最終的な結論を得て、所要の制度的措置を講ずる」とされていることからすると、2022年3月までに、論点検討会の議論の取りまとめが行われることが予想されるとして、今後、「新たな制度の導入が、実務の運用に悪影響を与えるおそれがあること」「『解雇の金銭解決制度』がリストラを誘発する」と指摘した。そのことは、「制度導入により、使用者側に裁判外でも『この労働者は、これくらい払えば、たとえ解雇が無効となったとしても会社から追い出すことができる』という悪しき相場感覚を持たせることになってしまう。論点検討会の資料においても、解消金の上下限を設ける理由として先に引用した通り『労働者保護及び予見可能性を図る観点』が理由として挙げられているが、『予見可能性』は、使用者の経済的負担の『予測』をももたらすのである。論点検討会には、『解雇無効時の金銭救済制度』という名称がつけられていることからしても、政府は、現在論点検討会で議論されている制度がいかにも労働者の『救済』のためにあるかのように見せかけているが、使用者にリストラ時に相場感があると誤解をさせ、無用なリストラを誘発するのである」と危険性を強調し、「求められるのは雇用の安定」であり、「日本労働弁護団は、解雇の金銭解決制度の導入に強く反対するとともに、労政審において同制度に関する議論を進めないことを求める」と主張している。
 資本のための労働法制の改悪に反対し、労働者の生活と権利を守るために闘おう。


さようなら原発

     原発汚染水海洋放出反対・原発再稼働許すな!


 10月23日、全電通労働会館ホールで、「さようなら原発」一千万署名 市民の会主催の「さようなら原発 オンライン集会+シンポジウム」が開かれた。
 主催者あいさつを呼びかけ人の鎌田慧さん(ルポライター)が行い、来年3月には屋外での大集会を実現しようと述べた。
 つづいての「福島課題」では、武藤類子さん(福島原発告訴団団長)が東電刑事裁判控訴審について、熊本美彌子さん(避難の共同センター世話人)が避難者問題について報告した。
 松久保肇さん(NPO法人原子力資料情報室)は、「『脱原発日本』のロードマップ」と題して報告。昨日10月22日に第6次エネルギー基本計画が閣議決定された。ここでは、可能な限り原発依存度を低減するといっているが依存体質は変わっていないし、また2年程度後には福島第一原子力発電所において海洋放出を行うなどとしている。原発は稼働是非に拘らず維持費が必要だ。電力会社は、原発に、2011年以降、少なくとも20兆円を投じてきた。電力会社には原発撤退を決められない。だが原発には、稼働の是非を問わず、維持費がかかっており、特に動いていない原発を抱えた電力会社の経営の重荷になっている。いつ再稼働するとも知れない原発が多数存在し、再エネ導入拡大の足手まといとなっている。
 原発設備容量は2030年度まではあまり変化しないものの、2030年代に原発は40年稼働となり、2050年代に60年稼働で急減する。原発に資金を投じ続けた大手電力は、他電源に投資しにくい。なぜなら将来、原発を再稼働させたときに、過剰な電源投資となり、資金回収見込みが立たなくなるためだ。
 日本の電源は老朽化している。2030年には石炭が約3割、LNGが約5割、石油では約9割が運転開始から40年を超過する。再生ネルギーへのシフトは待ったなしだ。脱炭素には、火力発電所の新設ではなく、再エネヘの投資が必要だが、原発によって、再エネ投資が抑制される可能性がある。
 だが、年積算の電力需要だけで考えれば脱原発は今でも可能である。OCCTO(電力広域的運営推進機関)の供給計画によれば年間需要で見た場合、原子力がなくとも年間需要電力量はほぼ満たすことが可能だ。ただしピーク時など時点時点で見た場合の対応は必要であろう。
 これまで原発の稼働では、運転期間13ヶ月、定期検査期間3ヶ月のサイクルで、定期検査時に集中して資金・労働力が投じられていた。今後、原発の廃止措置は約30年の長期プロジェクト。第一段階での仕事はあまり多<ないと想定されるが、その後は複数年に渡る仕事が増加していくと考えられる。廃炉で、地域の社会・経済構造は大きく変化する。原発立地地域の原発廃炉後の将来ビジョンを描くためにも、脱原発が必要だ。原発ゼロを前提にした、事業者・自治体・住民が議論する場、それを国が支援する体制が必要だろう。
 環境団体「Fridays For Future Nasu」(未来のための金曜日・那須)の元メンバーで東北大学生の益子実香さんは気候危機と原発問題について報告した。
 大石光伸さん(原発運転差し止め訴訟原告団共同代表)が、東海第二原発裁判について報告。3月に水戸地方裁判所は、日本原子力発電株式会社に対し、東海第二原発原子炉を運転しないよう命じる判決を言い渡した。しかし、原電は東京高裁に控訴した。控訴理由は、@一審地裁判決は事故発生の蓋然性を認めないでおきながら避難計画が欠けるだけでの差止判断は、差止請求の要件を充足しておらず矛盾している、A避難計画・緊急時対応は検討途上であり一審判決は判断時期を見誤った判断だ、という。住民側は、@福島第一原発事故を教訓にした法改正(計5層の「深層防護」の1〜5層すべてが必要)、A第1〜4層に事故発生の蓋然性がある、B第5層避難計画策定はもともと無理、C被害は30km圏に留まらず首都圏広範に及ぶと主張・立証を行っていく。
 東海第二原発は首都原発である。年明けから控訴審が始まるので、多くの人での東京高裁への傍聴行動を行っていきたい。原子力村と岸田政権の関係は深い。首相政務秘書官の嶋田隆は経産省出身の原子力推進派だ。それに甘利明党幹事長、高市早苗党政調会長、山際大四郎経済再生担当大臣などが原子力村と関係が深い。政府は、「早く避難計画を作れ!」と地元自治体へ政治圧力をかけており、2022年秋にも、原電は使用前検査名目の「燃料装荷・起動」で、なし崩し的に再稼働を強行しようとしている。2022年の山場に向け闘いを準備していかなければならない。
 「福島・汚染水海洋放出の問題点と課題」のテーマでは、いわき市議で「これ以上海を汚すな!市民連合」共同代表の佐藤和良さんが、「問題だらけ!トリチウム汚染水の海洋放出」〜放射能を垂れ流しながら原発・再処理工場を運転するのはなぜか〜」と題して、汚染水の海洋放出で問題を解決させようというのは問題だと述べた。
 元原発技術者の後藤政志さんは、トリウムの毒性に関して諸説あり、毒性に関する充分な知見が確立されていないとして次のように述べた。科学的に安全が証明できていない時に毒性のある液体を海に流す行為は、水俣病と同じことになる。科学的に未解明な場合には、「予防原則」に立って安全側に立って物事を進める責任がある。デブリの取り出し計画は当面凍結し、長期隔離保管に移行する。大型貯蔵タンクあるいはモルタル固化施設にすれば、汚染水の海洋放出は不要だ。デブリの空冷化を図ることで汚染水の発生を止める。地下水の流入を防ぎデブリに接触させない。事故原因も不明確なまま、新規性基準は福島事故を踏まえていない。福島事故の恐怖と不安、そして今も続く放射能の危険性を忘れてはならない。


11・3憲法大行動

 日本国憲法の公布日11月3日、東京では、国会議事堂正門前で、「平和といのちと人権を!11・3憲法大行動〜憲法公布75年 ともに時代を切り拓こう!〜』が開かれた。
 主催者を代表して、高田健さんがあいさつ。衆議院総選挙では、立憲野党と市民連合は政策合意を結び、62の選挙区で自公勢力に競り勝った。しかし、自民党は単独過半数を維持し、与党と「維新の会」を合わせて、改憲に必要な条件である3分の2のラインを超えた。来年の参議院議員選挙で勝ち抜き、政治を変え、改憲とアジアの緊張激化を進める与党の路線を転換しなくてはならない。
 集会では立憲野党からの発言が行われた。
 立憲民主党・近藤昭一衆院議員―選挙は残念な結果になったが、野党共闘・候補者一本化の成果は大きかった。人々の生活をないがしろにしているのが自民党政権だ。憲法を守り生かしていくことが大事だ。共産党・田村智子参院議員―アジアでの戦争を起こさせてはならない。日本国憲法が花開く新しい時代を切り開こう。社会民主党・福島瑞穂参院議員―憲法は日本人300万人、アジア人2000万人の犠牲の上に生まれた。米中の対立を武力・戦争で解決させてはいけない。日本参戦を許してはならない。
 様々な課題についてのスピーチ。「憲法の今」について武蔵野美術大学教授の志田陽子さん―いまさまざまの憲法をないがしろにする事態が進行している。改憲の手続きについて本来権利を持っている国民の意思を問わないままで進められている。国会では、憲法53条で「いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」と定めているのに開かれないままだ。「ジェンダーの課題」についてジャーナリストの松元千枝さん―働く女性の自殺率の白書が発表されたが、女性たちの生活の不安定さがコロナ禍のような状況の中で女性たちの孤立・孤独がいっそう深刻化していることをしました。憲法25条などはほとんど生かされていない。
「コロナ禍がもたらした貧国・格差」について、東京大学大学院教授の本田由紀さん―安倍・菅政権は、検査・隔離・治療というあたりまえのコロナ対策に失敗してオリンピックの強行などだ。それらの打撃は一番つらい人に押し寄せている。
 安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合の広渡清吾さん(東京大学名誉教授)が訴え。来年夏の参院選に勝利し、ひきつづいて政権交代をめざして活動していこう。 
 行動提起と閉会挨拶は、憲法を守り・いかす共同センターの岸本啓介さんが行った。


東電刑事訴訟控訴審が始る

     
東電旧経営陣は刑事責任をとれ

 11月2日、東京高裁で東電刑事訴訟控訴審がはじまった。東京地裁は2019年9月、福島原発事故を起こし原発事故による避難で福島県大熊町の双葉病院の入院患者44人を死亡させたなどとして業務上過失致死傷の罪で強制起訴(2016年2月)された東電旧経営陣の勝俣恒久元会長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長3被告に対する訴訟で「巨大な津波の発生を予測できる可能性があったとは認められない」などとして全員に無罪を言い渡したが、検察官役指定弁護士が控訴し、控訴審初公判が開かれた。彼らに責任なくして誰が原発事故の責任をとるのかということだ。
 東京高裁前での行動では、ヒューマン・ディスタンス・チェーンやリレートークが行われ、福島原発告訴団長・福島原発刑事訴訟支援団副団長武藤類子さんが告訴人を代表して、事故の責任者に必ず責任を取らせようと述べた。
 法廷では、検察官役の指定弁護士が、控訴趣意書を読み上げたが、その控訴の趣旨は、「被告人らが業務上過失致死傷の罪に問われるべきであることは,明白である。それにもかかわらず,被告人らに無罪の判決を言い渡した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるから,原判決は破棄されるべきである(刑事訴訟法382条)」ということであり、東京地裁判決は、国の地震予測である長期評価の信頼性を否定し、「原発の運転を止める義務を課すほどの予見可能性はなかった」としているが、長期評価は科学的信頼性は十分認められる国の唯一の公式見解である。また裁判官が現場に赴き、津波の状況を五官の作用で直接確認することが必要不可欠と現場検証の実施を行うべきであり、また、原子炉の安全性に関する社会通念への理解が誤っていること、経営陣の責任を福島第1原発の運転上の責任だけに限定して事故の予見可能性に対する責任を無視していることなどをあげた。 そして指定弁護士は、政府の地震調査本部の長期評価の策定に関わった専門家らの証人尋問も求めた。
 これに対して、旧東電経営陣の弁護側は「長期評価が国の公式見解だからといって、信頼性があると決め付けることはできない」と反論した。
 政府がまとめた地震の規模や切迫度に関する予測「長期評価」の信頼性が再び争点となったが、その理解のためには専門家らの証人尋問、そして裁判所は現場を知らなくては公正な審理はできないのは当たり前だ。福島原発刑事訴訟支援団の海渡雄一弁護士は、控訴審の最大のポイントは、裁判官が現地に行くかどうかだと述べているが、東京地裁で争われている東電株主代表訴訟では、10月29日、初めて裁判官が第1原発の敷地内に入り、現地進行協議を行っている。
 裁判は今回で打ち切られるとも危惧されていたが、次回期日は2021年2月9日に行われ高裁が証拠の採否を決定する見通しとなった。この期間に十分な調査を行い、東電旧経営陣の責任を明らかにしていこう。 政府の原発再稼働・推進政策に反対する大きな声をあげていこう。


日米両政府の裁判介入は明白

     砂川事件裁判国家賠償等請求訴訟第6回口頭弁論


 11月1日、東京地裁で、砂川事件裁判国家賠償等請求訴訟第6回口頭弁論が開かれた。口頭弁論のあと弁護士会館で報告会が開かれ、原告代理人の弁護士からの報告があり、原告の坂田和子さん、土屋源太郎さんが発言し、新たな証拠も開示させ、かならず勝利する決意が述べた(次回期日は来年3月7日)。

砂川事件のもつ意味

 1957年7月8日、東京都北多摩郡砂川町(現・立川市)付近にあった在日米軍立川飛行場の拡張を巡る闘争において特別調達庁東京調達局が強制測量をした際に、基地拡張に反対するデモ隊の一部が、アメリカ軍基地内に数メートル立ち入ったとして、デモ隊のうち7名が安全保障条約第三条に基く行政協定(現在の地位協定)違反で起訴された。だが、59年3月30日に東京地裁(伊達秋雄裁判長)は、「駐留米軍は憲法9条違反」として被告人7人全員を無罪にした。これに驚愕した日米両政府は、当時の駐日大使ダグラス・マッカーサー2世が、藤山愛一郎外相に最高裁への跳躍上告を促すなど外交圧力をかけた。日米政府の意を受けた最高裁(田中耕太郎長官)は、59年12月16日、最高裁大法廷(裁判長田中耕太郎最高裁長官)は「日米安全保障条約のように高度な政治性をもつ条約については、一見してきわめて明白に違憲無効と認められない限り、その内容について違憲かどうかの法的判断を下すことはできない」として原判決を破棄し地裁に差し戻した。1960年1月19日の日米安保条約(新安保条約)調印の直前のことだ。新安保条約のための最高裁判決強行だということは明白だ。
しかしこれらのことは当時全く秘密にされていた。
 そして、1961年(昭和36年)3月27日、東京地裁(岸盛一裁判長)は有罪判決(罰金2、000円)を言い渡した。その後、控訴審が闘われたが、1962年2月15日、東京高裁、被告人らの控訴棄却、1963年12月25日、最高裁は上告を棄却した。
 しかし、2008年米国立公文書館で、機密指定が解除されていた砂川件関係の電報類十数通が国際問題研究家新原昭治氏によって発見され、そのなかに59年4月のマッカーサー大使発本国宛電報で田中裁判長がプライベートにマッカーサー大使と会い、砂川事件裁判の大法廷における審理の見通しを述べたとの記載があるなど最高裁判決の裏側がわかってきた。それにつづいて、ジャーナリスト末浪靖司氏や元山梨学院大学教授布川玲子氏などの努力で次々と新証拠が発掘されることになった。
 2014年6月17日、東京地方裁判所に砂川事件の「免訴判決」を求める再審請求(土屋源太郎、椎野徳蔵、武藤軍一郎及び亡坂田茂の子坂田和子)が行われてきたが、東京地裁、東京高裁、最高裁は再審請求棄却決定、抗告棄却、特別抗告棄却を行ってきた。
 今回の砂川事件裁判国家賠償等請求訴訟は、2019年3月19日に提訴されたものだ。

日米両政府の陰謀は明白

 最高裁裁長官(大法廷裁判長)田中耕太郎が米側に伝えた裁判情報(砂川事件再審請求弁護団作成資料)は、次のようなものだった。 1959月4月24日付電報では、@本事件が他の事件に優先して審理されることとなるという予測的事実、A審理の開始から判決言陵までに少なくとも数カ月かかるという予測的事実。 同年8月3日付書簡では、B砂川事件の判決が12月になるという予測的事実、C弁護団が裁判所の結審を遅らせるべくあらゆる可能な法的手段を試みているという事実、D争点を事実問題ではなく法的問題に閉じ込める決心しているという姿勢・考え、E口頭弁論を9月初旬に始まる1週につき2回、いずれも午前と午後に開廷することによりおよそ3週間で終わらせるという姿勢・考え、及び口頭弁論は3週間で終わるという予測的事実、F口頭弁論終結後に14人の同僚裁判官たちの多くがそれぞれの見解を長々と論じたがることによって、判決言い渡しまでの期間が長引くという問題が生じるという予測的事実、G結審後の評議では実質的に全員一致の判決が下されることを希望しているという姿勢・考え、H判決は世論を「乱す」少数意見が回避されることを希望するという姿勢・考え。
 同年11月5日付書簡では、R現時点で判決言渡時期は未定であるという事実、判決は来年の初めまでには出したいという姿勢・考え、J15人の裁判官がこの事件に取り組むさいの共通の土俵を確立したいという姿勢・考え、またこのことが最も重要な問題であるという考え、K裁判官全員が一致して、適切で、現実的な、合意された基本的規準に基づいて事件に取り組むことが重要であるという姿勢・考え、L裁判官たちが考えている論点は三つあるという事実、一つ目は「手続上」の論点で、第一審の東京地裁には、合衆国軍隊駐留の合憲性について裁定する権限がなく、不法侵入事件という固有の争点を逸脱しているのではないかと考えている裁判官がいるという事実、二つ目は「法律上」の論点で、米軍駐留により提起されている法律問題に取り組むべきであると考えている裁判官がいるという事実、三つ目は「憲法上」の論点で、日本国憲法の下で、条約は憲法より優位にあるかどうかという憲法上の問題に取り組むべきであると考えている裁判官がいるという事実、M評議において一審の判決は支持されていないという事実、一審判決は覆されるであろうという予測的事実、N裁判官15人のうちできるだけ多くの多数によって憲法上の論点について裁定させることが重要であるという姿勢・考え、及び憲法問題に一審が判決を下すのはまったく間違っているという考え。

 以上、見てわかることは、砂川事件最高裁判決が、まったく裁判の名に値しないものである。
 当時の最高裁が米国と日本の政府の指示に忠実に従って違法行為を行った姿が明らかになる。


核兵器禁止条約を批准せよ

    
 岸田首相の「核軍縮」はマヤカシ

 岸田文雄首相の選挙区は、原爆ドームや平和記念公園のある広島1区で、「核軍縮は私の政治家としてのライフワーク」だといい、2020年10月出版の著書『核兵器のない世界へ 勇気ある平和国家の志』(日経BP)もある。
 「岸田文雄 公式サイト」には、第9回包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進会議(2015年9月29日、ニューヨークの国連本部、当時外相の岸田とイドリソフ・カザフスタン外相の共同議長)では岸田がイニシャチヴ発揮したとして次の文章が載っている。「共同議長としてのステートメントの中で、発効要件国を中心に未署名・未批准国への政治的働きかけの促進核実験検知のための国際監視制度の構築の促進核兵器使用の惨禍を市民社会に一層広めていくことの促進という『3つの促進』を呼びかけました。…唯一の被爆国である日本と核の危険性を知るカザフスタン、両国のリーダーシップによって、CDBTの早期発効、核兵器のない世界の実現に向けて、強いメッセージが発信されました。私は,核の脅威を知る立場からイドソリフ外相と共に核兵器使用の実相を発信し,世界が核軍縮の原点を見失うことのないよう導いていきたいと思います。そして全人類の問題として,核兵器のない世界の実現のために各国の一層の真摯な協力を求めます。」だが現実には、日本政府は、アメリカの核の傘の下で在日米軍の核兵器持ち込みについても実質的不問の状態にある。「核兵器のない世界の実現」とは逆行する政策だ。しかし、いま確実に核兵器開発・増強競争がはじまっている。核戦争の脅威は高まっているのである。この状況に世界は反応している。核兵器禁止条約の発効がその一番の例だ。
 歴史あるアメリカの人口3万人以上の都市の公式の無党派組織である米国市長会議は、「核兵器禁止条約を歓迎し、核戦争防止及び核兵器廃絶に向けた即時行動を求める決議」を採択した(提案者・コロンビア市長、ピッツバーグ市長など)。―「2021年1月22日、核兵器禁止条約(TPNW)が発効した。これは、条約の批准国に対し、核兵器の開発、取得、保有、使用及び使用の威嚇等を禁止するものである。TPNWが大多数の非核保有国による核兵器の全面否定の意思表明そのものである一方、米国、他8か国の核保有国及び米国の核の傘の下にあるほぼ全ての同盟国は条約の交渉の場をボイコットし、なおも条約に批准していない」として、「全米市長会議は、米国政府に対し、TPNWへの反対を撤回するよう検討し、TPNWの歓迎を核兵器廃絶の実現と核兵器のない世界の永久維持を目的とした合意形成への前向きなステップとするよう呼び掛ける。また、全米市長会議は、2021年6月16日に米露のバイデン・プーチン両大統領が発表し、その中で『核戦争に勝者はなく、決して起こしてはならないという原則を再確認する』と表明した共同声明を歓迎する。バイデン政権に対しては、ロシアや中国との外交努力を加速させることにより核兵器をめぐる緊張を緩和し、TPNWの成立に何十年も先立ち締結した国際法上の定めに従い、核兵器廃絶に向けた核保有国間の検証可能な合意を積極的に追求することを要請する。また、全米市長会議は、バイデン政権に対し、国際法が米国に課す核兵器の不使用と廃絶の義務を誠実に果たすことを今後『核態勢の見直し』に盛り込むよう求める。また、全米市長会議は、大統領及び連邦議会に対し、米国の全核軍備を近代化及び強化させる計画を中止し、現在核兵器や不当な軍事費に割り当てられている財源を、数十年にもわたって蔑ろにしてきたインフラ整備、貧困問題、日々悪化する気候危機や格差の拡大への対応に再配分することを要請する。また、全米市長会議は、大統領及び連邦議会に対し、軍備管理軍縮局を再設立することにより、連邦政府の優先事項として軍備管理及び軍縮に一層精力的に取り組むことを呼び掛ける。また、全米市長会議は、10、000都市加盟という平和首長会議の目標達成を支援し、全米市長会議の全メンバーに対し平和首長会議への加盟を要請する。」米国でも核兵器廃絶に向かって大きな一歩が踏み出された。
 岸田のえせ「核軍縮」は通用しない。日本は核兵器禁止条約を早期に批准せよ。
 核軍拡競争・核戦争を阻止しよう。


ウィシュマさんの遺族が入管局長らを殺人容疑で告訴

 日本政府の人権無視とりわけ、第三世界の人びとに対する蔑視は根強い。かつての侵略戦争・植民地支配の反省もないままの対応がこうした事態を生み出している。
 現在、日本は少子高齢社会となり、外国人労働力を抜きには経済を支えられない。だが、政府・経済界は、当然の権利を持つ外国人労働者に働きに来てもらうのではなく、欺瞞的な技能実習生制度で低賃金と過酷な労働条件の下、使い捨て労働力として酷使している。
 3月、名古屋出入国在留管理局で、昨年8月から入管に収容されていたスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが収容中に亡くなったが、日本の外国人に対する非人道的対応の象徴的事件であった。
 2007年からでもすでに17人が入管施設内で亡くなっているが、起訴されたことはない。しかし、ウィシュマさんの事件では、遺族や支援者の運動が強力に行われた。
 11月9日、ウィシュマさんの妹ポールニマさんらが当時の名古屋入管局長や次長ら7人以上の職員に対する殺人容疑の告訴状を名古屋地検に提出した。それは、「飢餓状態」を示唆するウィシュマさんの尿検査の結果が出た後でも、なんらの治療もせず、「『被害者が死んでも構わない』という未必の故意があった」としている。
 「人権なき移民国家」という日本の現状を打ち破り、日本に暮らす移民・移民ルーツをもつ人びとの権利と尊厳が保障される法制度が早急に確立されなければならない。


せんりゅう

     ハトの顔やめてタカ面化け首相

         環境はどうした壊す岸田節

     新しい資本主義です新型搾取

         成長の搾取求めて新政権

     きく耳は鳴門の渦か右へまき

         USA-Nippn州の自民党

     我が国はアベ症候群で疲弊
               
                 ゝ 史

2021年11月


複眼単眼

     
衆院選、保阪正康さんの危機感

 著名なノンフィクション作家の保阪正康さんの朝日新聞のインタビュー(11月5日)に注目した。「2021衆院選 哲理なき現状維持」と題する長文の記事だ。
 保阪さんは冒頭、今回の選挙の結果を次の3点に集約した。
 @国民は現状維持を求めた。政策論争に欠けた哲理なき現状維持だった。
 A自民党に近い政党が伸びた。改憲勢力が3分の2を獲った。
 B立法府の無力化が進む。戦前にも似る行政の独裁だ。
記事には大きな「中見出し」が2つついている。
 「ないがしろの憲法 無力化する立法府 戦後は終わるのか」
 「戦争した社会は現代とも地続き 危うい行政独裁」と。
 保阪さんは岸田文雄首相の違憲の「敵基地攻撃能力の保有」「軍事費の増大」の主張が極めて危険な「地続きの戦前」への「逆戻り」だと指摘する。
 これらの指摘は「昭和史」の深い知見を基礎に語られており、保阪さんの面目躍如だ。
 保阪さんが指摘するように、自民党は今回、臨時国会での与野党の議論を回避し、国会で総選挙の政策的対立を明らかにせず、自民党総裁選での大騒ぎと、新政権誕生の「ご祝儀相場」に頼って、きわめて短期間のうちに総選挙に突入した。まさに選択肢があいまいにされた「哲理なき」総選挙にしてしまった。
 岸田氏は第2次安倍政権以来、安倍晋三元首相が作り出した「官邸独裁」「行背英私物化」情況に依存して、この支援を受けて自民党総裁選で総裁の椅子を手に入れた。
 しかしその代償は実に大きいものがある。
 保阪さんが「戦前との地つづき」と指摘する岸田自民党の総選挙での言辞は、岸田氏が会長を務める「自民党宏池会」の変質そのものだった。岸田首相は「Hanada」という右翼雑誌のなかで、かつて安倍と対立して自らを「護憲派」と規定したことを追及され、あわてて撤回するという見苦しいあがきまでやった。
 岸田宏池会は安倍に屈して、自民党内保守リベラルといわれてきた伝統を投げ捨てた。いわば「ハト派」から「タカ派」に転向することで、安倍の支持を獲得し、総裁選の決選投票で勝利した。
 この岸田自民党は総選挙の公約で、改憲を促進し、日米軍事同盟と中国包囲網を強化するため、「敵基地攻撃能力の保有」や「防衛費の対GDP比2%以上」を広言するにいたった。
 こういう首相の椅子欲しさによる哲理なき主張がこの国をどこに導くのか。
 保阪さんは「敵を想定しその敵地を侵攻するという狂気は、一度始めると際限がなくなるのです。そうした魔性を分析しぬいていれば敵基地攻撃論などという考えがでてくるはずはありません」「現在の政治でもっとも問われていることは、どうしたら憲法を……いかすことができるか、だと思います」と指摘している。
 有権者の多くが望んだ「現状維持」は、岸田政権によってとてつもない「現状打破」へと進められようとしている。
 目下、この改憲勢力が企てていることは「野党共闘」つぶしだ。この岸田政権の改憲と軍事力強化の道に立ちはだかり、阻止を企てる「野党共同」をつぶすことこそ、彼らにとって喫緊の課題だ。
 おのおのがた、断じてそうはさせまいぞ。 (T)