人民新報 ・ 第1404号統合497号(2021年12月15日)
  
                  目次

● 岸田政権の危険な政治方針

          米中戦争の最前線になるな

● 辺野古新基地建設阻止へ

          玉城沖縄県知事の「不承認」を支持する運動を全国に広げよう

● 新たな「憲法改悪を許さない全国署名」に取り組み、成功させよう


● 8時間働けば生活できる賃上げを獲得しよう!

          22けんり春闘 スタート


● 米中対抗と台湾  シンポジウム「ポスト・コロナのグローバル・ガバナンス」

          情報通信力こそ分岐点

          ガラパゴス化する日本

          東アジア国際複合輸送

          台湾海峡危機のシナリオ

          米中関係の現在と今後

● 東リ偽装請負・LIA労組職場排除

          大阪高裁で逆転勝利判決!

● 核兵器禁止条約へモンゴルも加入

● 日本労働弁護団  「コロナ禍の今こそジェンダー平等の実現を求める総会決議」

● 12・6臨時国会開会日行動

          憲法改悪反対!辺野古新基地建設反対!敵基地攻撃能力保有反対!いのちと暮らしと営業をまもれ!

● せんりゅう

● 複眼単眼  /  改憲の火付け役維新の会の妄想

● 冬季カンパのお願い  労働者社会主義同盟央委員会






岸田政権の危険な政治方針

      
米中戦争の最前線になるな

 12月6日、臨時国会が召集され、岸田文雄首相が所信表明演説を行った。「若者も、高齢者も、障害のある方も、男性も、女性も、全ての人が生きがいを感じられる、多様性が尊重される社会を目指します」というが、その実態は安倍・菅政権同様の人びとの暮らしにも平和にも危険の度合いを強めるものだ。「1980年代以降、世界の主流となった、市場や競争に任せれば、全てがうまくいく、という新自由主義的な考えは、世界経済の成長の原動力となった反面、多くの弊害も生みました。市場に依存し過ぎたことで、格差や貧困が拡大し、また、自然に負荷をかけ過ぎたことで、気候変動問題が深刻化しました」として、「新しい資本主義」を看板として打ち出している。だが資本主義の下では、こうした事態を解決されることはない。自民党支持勢力の資本家・企業が反対するからだ。「我が国としても、成長も、分配も実現する『新しい資本主義』を具体化します。世界、そして時代が直面する挑戦を先導していきます」「日本ならできる、いや、日本だからできる」という言葉がむなしく響く。世界と日本の資本主義は、今後も格差・貧困、環境問題を解決することはできない。新型コロナ対策で、「大事なのは、最悪の事態を想定することです」と述べたが、コロナだけでなく最悪の事態の到来はいたるところで危惧されている。
 そして、「外交・安全保障」では、岸田はできるだけ早期に訪米して、バイデン大統領と会談し、インド太平洋地域、そして、国際社会の平和と繁栄の基盤である日米同盟の抑止力・対処力を一層強化し、さらに、ASEANや欧州などの同志国と連携し、日米豪印も活用しながら、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた協力を深めるという。そして「岸田内閣が重視する、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値やルールに基づく国際秩序の維持・強化について、国際的な人権問題への対処を含め、しっかりと取り組む覚悟です」とする。だが、そもそも外交に価値観なるものを持ちこみ、同盟国やら同志国などというのは、分断を前提にし、他国の体制変革を前提とするものであり、それらの国々を前もって敵視する以外のなにものでもない。そのために、沖縄をはじめ多くの人びとの反対を圧殺して辺野古新基地建設の強行、自衛隊の南西諸島配備、防衛費の飛躍的な増加、そして「敵基地攻撃能力」までも所信表明演説にいれた。
 菅前政権は、今年の4月の日米首脳共同声明で、台湾条項をいれた。これは、1972年の日中国交正常化時の日中共同声明以降の日中関係を否定し、国交正常化以前の状態とくに1969年11月のニクソン・佐藤による共同声明の段階に戻すものと言える。岸田の訪米は、米中対決の激化進行の中で日本を対中戦略・戦争の最前線にいっそう押し出すものになる可能性が高い。こうした政策は、崩壊しつつあるアメリカの世界覇権の維持支援のために日本と近隣アジア諸国に悲惨な結果をもたらすものとなろう。こうした危険な道を掃き清めるためのものが「憲法改正」である。憲法改正に「まず重要なことは、国会での議論です。与野党の枠を超え、国会において、積極的な議論が行われることを心から期待します」として、自公与党だけでなく維新の会などの改憲派を巻き込んで国会内の改憲連合を結成して改憲機運づくりを狙っている。また「国民理解の更なる深化が大事」だとして、「我々国会議員が、広く国民の議論を喚起していこうではありませんか」とアピールした。自民党は改憲「推進本部」を「実現本部」改組し、国民運動を強化しようとしている。
 岸田政権は、日米軍事同盟の飛躍的強化、かつてない軍備拡張、そして改憲という危険な政策を進めようとしている。だが、日本社会の矛盾の激化、自民党体制の劣化は急速に拡大している。反撃の時だ。自民党政治を終わらせるために、闘いを広げていこう。


辺野古新基地建設阻止へ

     
 玉城沖縄県知事の「不承認」を支持する運動を全国に広げよう

 岸田政権も沖縄・辺野古新基地建設をあきらめず、埋め立て工事を強行しようとしている。辺野古工事は、絶滅危惧TA類(CR)(環境省レッドリスト)のジュゴンが危機にさらされるなど環境破壊をもたらし、そもそも奥の大浦湾にはマヨネーズ並みの軟弱地盤が見つかっていて工事など不可能だ。それにもかかわらず、沖縄米軍基地を強化し、同時に自衛隊の南西諸島増強配備を行おうというのは、米中対決での米軍の先兵としての役割を自らひきうけ、火中にみずから飛び込む危険な政策だ。
 11月25日の記者会見で、沖縄県の玉城デニー知事は沖縄防衛局が提出していた辺野古基地建設のための埋め立て変更承認申請の不承認を発表した。玉城知事は、軟弱地盤の調査が不十分であることや環境保全対策が行われていないことなどを理由にあげ、また、戦没者遺骨等の混じる土砂での埋立は人道上許されないと述べた。
 知事の申請不承認発表を受けて、「止めよう!辺野古埋立て」国会包囲実行委員会は、全国に向けて、沖縄県知事の「不承認」を支持する辺野古ブルーアクション、その第一弾として「不承認」発表から1週間、個人で、団体で、グループで、辺野古の海を象徴するブルーを身に着けての「不承認」支持の意思表示を呼び掛けた。
 12月3日には、「不承認」支持!政府は辺野古新基地建設を断念せよ!をかかげて、首相官邸前と沖縄県庁前での同時行動が行われた。沖縄県庁前は、辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議の主催での県民集会が開かれた。
 東京・首相官邸前では、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会と「止めよう!辺野古埋立て」国会包囲実行委員会による500人による抗議集会が開催され、総がかり行動実行委員会の勝島一博さん、「止めよう!辺野古埋立て」国会包囲実行委員会の木村辰彦さん、参加団体からのアピールがあり、国会からは立憲民主党の山岸一生衆院議員、共産党の井上哲士参院議員、社民党の福島みずほ参議院議員が発言した。 また沖縄からは高里鈴代さん(オール沖縄会議共同代表)のメッセ―ジが紹介された

 12月7日、沖縄県が設計変更を不承認としたことを受け、防衛省沖縄防衛局は対抗措置として、行政不服審査法に基づき、斉藤鉄夫国土交通相に不服審査請求を申し立てた。行政不服審査請求は本来は国民が行政に対する不服を申し立てる制度であるにもかかわらず、安倍・菅政権の防衛省は「身内」である国土交通相らに不当不法な審査請求を繰り返してきた。2018年8月にも同様に沖縄県の埋め立て承認撤回に防衛省沖縄防衛局が国交相に不服審査「沖縄県による辺野古沖の公有水面埋立承認の撤回についての審査請求について」を請求し、翌2019年4月5日に国交相が、県による承認撤回を取り消す裁決をしたことがある。

 闘いは、これからだ。玉城知事の「不承認」を支持し、辺野古新基地建設を阻止していこう。


新たな「憲法改悪を許さない全国署名」に取り組み、成功させよう

 11月24日、9条改憲NO!全国市民アクション、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会が、総選挙後の憲法をめぐるあたらしい情勢に対応するため、新しく「憲法改悪を許さない全国署名」に取り組むため、署名用紙をリニューアルし、さらなる憲法署名の拡大をよびかけた。岸田政権の改憲攻撃を粉砕するため、新しい署名運動を成功させよう。

「憲法改悪を許さない全国署名」
 行き詰まって相次いで政権を投げ出した安倍・菅政権をひきついだ岸田文雄政権は、2021年の総選挙で改憲発議に必要な3分の2の議席を手にいれました。岸田首相は中国や朝鮮を念頭に違憲の「敵基地攻撃能力の保有」をとなえ、歴代政権がかろうじて維持してきた防衛費のGDP1%以内の原則をも放棄して2%以上を主張するなど、米国をはじめ欧米諸国との軍事同盟を強化し、「戦争する国」づくりを進め、アジアの緊張を高めています。しかし、この道の障害になるのが憲法9条など、日本国憲法の理念です。
 改憲派は次の参議院選挙をにらみながら、9条に自衛隊を書き込むこと、緊急事態条項を創設することなどを内容とする自民党改憲4項目案をベースにして、国会の憲法審査会での改憲案づくりを急ごうとしています。
 私たちは国会が改憲の発議をすることを許さず、すべての戦争に反対し、憲法を生かし、平和と民主主義、人権、環境、暮らし・医療・公衆衛生向上などを実現する政治を求めます。
【請願事項】
1、自民党が提唱する憲法9条に自衛隊を書き込むことなど改憲4項目に反対します。
2、憲法を生かし、平和と民主主義、環境、暮らし・医療・公衆衛生などの向上を実現する政治を求めます。

          『9条改憲NO!全国市民アクション』(http://kaikenno.com/)
          『戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会』(http://sogakari.com/)


8時間働けば生活できる賃上げを獲得しよう!

             22けんり春闘 スタート


 12月10日、文京区民センターで、「22けんり春闘・学習集会」がひらかれた。

22春闘方針の提案と確認

 共同代表の平賀雄二郎・民間中小労組懇談会代表が、開会あいさつ。
 つづいて、事務局長の中岡基明・全労協事務局長が議案を提起。けんり春闘全国実行委員会は22春闘を、誰一人取り残されない社会へ!、8時間働けば暮らせる社会へ向けて全力を挙げよう!、8時間働けば生活できる賃上げを獲得しよう!政治を労働者市民の手に取り戻すために闘おう!などの基本スローガンで闘い抜く。岸田政権は「新型コロナから命と暮らしを守る」「新しい資本主義で分厚い中間層を再構築する」とする一方、「毅然とした日本外交を国防力の強化で推進する」と表明した。財界、経済学者を中心に、連合会長も参加して発足させた「新しい資本主義実現会議」は緊急提言を発表し、分配戦略として短時間正社員の導入、勤務時間の分割・シフト制の普及、兼業・副業など安倍―竹中新自由主義路線として批判されてきた方策を繰り返し登場させ、働き方改革の強化を進めようとしている。現在、最も困っている女性や若者、高齢者など社会的弱者を置き去りにしたままである。
 また、国防力の強化や憲法改正にいたっては文字通り安倍政権の対米追従・反中国・北朝鮮包囲政策の継続であり、立憲主義の否定である。
 この間の20年、新自由主義政策によって一部富裕層と大企業は肥大化する一方で、労働者市民は貧困と格差に苦しんできた。とくに社会的に弱い立場に追いやられている非正規雇用労働者や女性労働者、外国籍労働者が直面している困難な状況を救い、経済活動や政治の転換を求め、気候変動による地球環境の破壊を押しとどめて、誰一人とり残されることのない公平公正な社会を実現するのかが問われている。その最先頭を労働組合は担うことを求められている。
 22けんり春闘の中心的な課題は、非正規労働者、外国人労働者、フリーランスで働く労働者の生活改善要求であり、その大きな闘いとして「どこでも誰でも最低賃金を1500円」に引き上げていく最賃闘争に全力を挙げることである。どこでも誰でもとは、雇用形態や性別、国籍、都市か地方かによって差別されることなく、同一価値労働には同一賃金を保障し、健康で文化的な生活を送ることができるために最低必要な賃金の保障ということだ。そのため、各職場での賃上げ闘争を強化しながら、全国一律最低賃金制実現のためナショナルセンターの違いをこえて全国で大きな社会運動を展開していかなければならない。
 総選挙の結果、憲法を守る闘いは、非常に緊張した攻防となっている。来年7月に行われる参院選は大変重要なものとなる。総がかり行動や全国市民アクションとの共同行動、立憲野党の共闘の促進のをすすめて、参院選に勝利し、改憲を阻止しよう。
 春闘の戦術としては、賃金の大幅引き上げのために、職場からの闘いを強めよう。スト権を確立し、スト配置を行おう。
 組織・体制・財政については、共同代表幹事組合(全労協、全港湾、全造船関東地協、中小民間労組懇談会、大阪ユニオンネット)などが提案された。

 春闘方針案は、参加者の拍手で確認された。

コロナ禍での労組の役割

 第二部の学習集会では、ジャーナリストの竹信三恵子さんが、「コロナ禍の非正規労働者、女性、若者の状況と労働組合の役割」と題して講演した。20203月の労働力調査では、女性非正規のみ前年同期比で29万人雇用が減少している。それは今の状況が女性が多数を占める医療、福祉、飲食サービス業などを直撃しているからだ。各種の労働相談では、「客が減って仕事がなくなり休業やシフト減らしで収入が激減した」「感染対策が不備で怖い」などの声が多い。そして、雇用の減少は男性の非正規に波及している。
 そもそも企業は、非正規を「便利に切るための労働力」だとしか考えていない。こうしたことの背景にあるのが、非正規の女性は家計の補助、夫がいるから減収でも困らないだろうという「夫=セーフティネット」論だ。これは全くのあやまりだ。非正規労働者のうち「配偶者あり」は6割弱で、自身が世帯主や単身者である女性は17%と200万人を越えている。しかも、「配偶者あり」でも女性の収入は、正規雇用で家計の4割、非正規で2割となっており、すでに多くの家庭が多就業型になっている。
 いまこそ非正規への社会的保護が必要だ。それには、傷病手当がない国民健康保険の改善、非正規に補償を出さない雇用主への指導強化、ケースワーカー・労働基準監督官の増強とジェンダー教育、「妻付き男性モデル」を標準とする政策の見直し、非正規公務員の短期契約化と低待遇の見直し、非正規・若者・女性の仕事は楽とする偏見の是正などが早急になされなくてはならない。
 この状況で、労働組合は、今後、労働問題優位から生活問題優位への見直し、また気候変動への対応が必要だ。また、日本の産業の衰退に対して、商品化より生きることを大切にして、地域にねざしたグリーンニューディール型の仕事創出にむけて住民との連携が求められるだろう。

 最期に、けんり春闘参加団体の全水道東水労、全国一般東京南部、全統一労組から決意表明が行われ。団結ガンバロウで、22春闘のスタートを意思一致した。


米中対抗と台湾

      
シンポジウム「ポスト・コロナのグローバル・ガバナンス」

 12月2日、参議院議員会館講堂で、国際アジア共同体学会主催のシンポジウム「ポスト・コロナのグローバル・ガバナンスをつくる」が開かれた。
 はじめに、進藤榮一国際アジア共同体学会会長があいさつ。今日、いわゆる中国脅威論なるものが蔓延している。米バイデン大統領は、「民主主義と専制主義の闘い」のために欧米日本を含め西側陣営は、軍事上の同盟関係を強め、中国に反撃すべきだ、という。しかし、これは危険な道だ。こうした「価値観外交」は、外交の意味をはき違えたものだ。外交とは、異質な価値観と利益の共生の上に、初めて成り立つものである。
 シンポジウムでは多くの人が発言した。

情報通信力こそ分岐点

 張林峯ZTE(中興通訊)副総裁は、「ポストコロナと6Gの未来」題して発言。通信は類にとって必須であり、人類はわずかの器官の差が覇者か敗者の分かれ道になったが、ホモサピエンスは通信・コミュニケーションが優れたからこの惑星の覇者になれた。2020年、2021年はコロナが世界で広がったが、実はこの時期は新しい無線通信の幕開けでもある。これまで日本の無線通信はかがやかしい歴史を持ってきたが、5Gでは苦戦している。4Gまでは日本が独走していた。5Gでは、中国は普及が速く、2019年10月から商用化し、2021年で 3億人の5G加入者、103万5G基地局数がある。一方日本は、普及が遅く、2020年で 545万5G加入者、総務省は2024年3月に8万基地局数を目標にしている。もちろん日中は人口の差がありこのままでは比較は難しい。だが日本には凄い強みがある。なにより日本の部品が強い。日本の部品技術を使わないとポストコロナ時代の5Gはない。材料技術の半導体等が必須だが、日本が断然世界トップレベルで独占もある。日本政府も何千億円もかけて5Gを越えて、6Gでの優位を目指している。
未来の6G技術は、テラヘルツ規模の通信、赤外線の近くの周波数、高速大容量、天空地海一体化の死角のない通信、そして視聴触味嗅の五感通信網も出現するだろう。人類がついにテレパシー能力を獲得できるようになるかもしれない。大事なのは「OPEN」で「キョウソウ」ということだ。キョウソウは、「競争」でも「共創」でもある。

ガラパゴス化する日本

 松下和夫・京都大学名誉教授は「COP26後のアジアと日本を巡る課題・ガラパゴス化する日本の気候・産業政策」と題して発言。COP26後の世界は、「脱炭素市場獲得をめぐる脱炭素大競争時代」だ。必要とされるのは、脱炭素化に向けた具体的な経済社会変革の道筋、変革実現の政策手段、そして財源だ。日本は、2050年の脱炭素化された産業と社会の姿をどう描くのかが求められている。日本企業の脱炭素取り組み意識は高いが、TCFD(気候変動情報開示枠組などの参加社数は世界有数だが、電力、鉄鋼、石油、セメントなど炭素集約型産業からの参加はほとんどない。
 なにより問題なのは、日本の革新的技術開発がガラパゴス化していることだ。政府が重点を置く「革新的イノベーション」の多く、実現可能性、商用化時期、経済性、環境影響などはいずれも不確実である。また革新的イノベーションに過度の依存と期待があり、省エネや再生エネなど確立済み技術活用の対策拡大が先送されている。そして、原発・石炭火力温存を前提の革新的技術研究開発への過度の予算配分がある。本格的炭素税の速やかな導入によるカーボン・プライシングによる炭素生産性の向上と収益率の引き上げが同時達成できる。炭素集約的で低収益な事業領域から低炭素だが高収益な事業へ転換できる。だが、エネルギー多消費型の重厚長大産業は、依然として既得権益を擁護しており、脱炭素化の取り組みに立ち遅れ、本格的カーボン・プライシング導入に抵抗している。

東アジア国際複合輸送

 中国物流研究会幹事の福山秀夫さんは、「RCEPと東アジア国際複合輸送共同体の道」と題して発言。国際複合輸送とは、国際複合一貫輸送とも言い、英語ではインターモーダルという。コンテナ輸送において輸送手段を跨いで行う一貫輸送のことである。
 東アジアにおける国際複合一貫輸送(インターモーダル)の具体的形態は、@シベリア・ランドブリッジ(極東航路・シベリア鉄道・欧州)、A中欧班列(北東アジア航路・東南アジア航路・中国鉄道)であり、それと海上輸送(@北東アジア航路、A東南アジア航路、B北米・中南米航路、C欧州・中東航路、Dオセアニア航路)がつながる。いま、コロナ禍における国際コンテナ定期船航路の海上運賃の高騰、航空旅客輸送の激減によるベリー輸送の減少があり、それらの輸送の代替輸送としてのシベリア・ランドブリッジや中欧班列の活用による急成長がある。またRCEPの下での中国・アセアン貿易の成長が予想されている。いまRCEP下での世界を繋ぐ東アジアのサプライチェーンの構築、北東アジアにおける国際高速船ネットワークを活用した中欧班列との接続が求められているということだ。北東アジア国際複合輸送共同体が先行して設立されればこの地域内のサプライチェーンは、強化される。続いて、東アジア国際複合輸送共同体設立により、東アジア域内及び中欧アジア、中東、欧州とのサプライチェーンが強化されるだろう。

台湾海峡危機のシナリオ

 東アジア共同体研究所上級研究員の須川清司さんは「台湾有事と日本の軍事的関与〜封鎖シナリオに基づく考察」と題する報告。アメリカのバイデン大統領や日本の安倍晋三元首相などの発言で台湾有事が焦点化している。だが日本国内で聞こえてくる台湾有事への軍事的関与積極論は、中国をけん制する目的で行われていると言うよりも、国内の聴衆を意識したポピュリスト的な好戦論で、日本が台湾有事に軍事的に関与すればどのような被害を受けるか、結末はどうなるかについての現実的想定は抜きにして、「民主主義を守る」等の綺麗ごとに終始している。「米国と一緒なら勝てる」という安易な思い込みも強い。台湾有事が起きる可能性は、冷静に考えると極めて低い。だが、米中対立の時代を迎えた今日、@米国政府は「一つの中国」政策を言葉の上では維持しながら行動面では漸進的に変更している、A中国共産党指導部は台湾独立という事態に直面すれば武力を行使せざるを得ない、B台湾は米中対立を利用して存在空間の拡大を目指している、C日米の世論及び政治の場でも親台・嫌中論が高まっている等の事情が出てきた。 台湾が将来的に独立志向を強めたり、中国が台湾、米国等の動きに過剰反応したりする結果、台湾有事が絶対に起こらないとも言い切れない。台湾有事シナリオの議論を好戦論者に独占させることは好ましくない。台湾有事への軍事的関与に慎重な立場からも台湾有事における想定を行い、好戦論者とは別の教訓を引き出すべきである。
 ここでは、台湾有事シナリオを考えてみたい。日本の軍事的対応が問題となるのは、「中国対台湾」のみならず、「中国対米国」となる台湾有事だが、米国が軍事介入しなければ、日本が単独で台湾防衛に乗り出すことはない。
 アメリカ国防総省「中国の軍事力・安全保障の進展に関する年次報告書2021」によると中国がとり得る4つの代表的な軍事シナリオとして、@封鎖(海空)、A小規模限定攻撃(政府、軍、経済インフラに対するサイバー攻撃・破壊活動)、B空爆・ミサイル攻撃(空軍基地、レーダーサイト、ミサイル・宇宙施設、通信施設等に対する空爆・ミサイル攻撃)、C台湾侵攻(地上軍の上陸作戦を伴う)をあげている。だがこのシナリオ分析から見えてくることは次のようなことだ。地の利は圧倒的に中国側にあり、米側が十分な兵力を集結させる前に封鎖が始まる可能性は大だ。部隊の運用効率、兵站面でも同様だ。ただし、侵攻シナリオはもちろん、封鎖シナリオであっても中国の試みが成功する保証はない。失敗すれば指導部にとって致命的な打撃になる。米国の方も、アフガニスタンやイラクとは比べ物にならない規模で兵力を集中させる必要がある。台湾有事は双方にとって非常に厄介な事態であることが改めて確認できる。
 台湾有事に米軍が介入する場合、前線・兵力集結拠点としての在日米軍基地、兵站基地としての日本列島の役割が死活的に重要となる。米軍が介入すれば中国は在日米軍基地を攻撃する可能性が極めて高い。「在日米軍基地の使用は認めるが、自衛隊は動かさない」という選択肢は机上の空論にすぎない。
 米中双方がミサイルを持っているため、緊張が段階的に高まるのではなく、一気に交戦状態に突入する可能性も排除されない。日本の法区分で言えば、重要影響事態を経るとは限らない。存立危機事態(集団的自衛権)と武力攻撃事態(個別的自衛権)の時間差は分単位となる可能性が高い。存立危機事態が単独で一定期間成立しうるのは、シナリオのAで米軍が台湾方面に派遣されてから両軍が睨みあいを続けるような場合等に限られよう。
 緒戦段階で米中は衛星・通信網の破壊や指揮命令系統へのサイバー攻撃を試みると考えるのが自然である。その場合、両軍ともに保有する軍事能力を十分に発揮できない状態で戦うことになる。逆に、この段階でどちらかが優位に立てば、戦局の帰趨を大きく左右する。なお、この分野で日本は赤子同然であり、戦局に影響を与える力はない。
 封鎖が成功するか突破されるかは、制海権と制空権をめぐる戦いの結果で決まる。米軍には日本の航空戦力及び海上・潜水艦部隊に対する期待が少なからずある。また、地上発射式中距離ミサイルの配備数等で中国に大きく劣後していることから、自衛隊の地上発射式対艦ミサイルへの期待が米国にはある。
 自衛隊基地等が中国本土から中距離ミサイル等で攻撃を受けた場合、自衛隊に中国のミサイル拠点を叩くための現実的選択肢はない。日本は将来、不十分な敵基地攻撃能力を保有するかもしれないが、結局は米軍に頼らざるを得ない。それは同時に、日米が新たなエスカレーションのはしごを登り、日本列島が更なる攻撃を受けることを意味する。
日本の領域内で中国軍の攻撃目標となるのは、在日米軍基地のほか、自衛隊基地及び部隊の展開地域、兵站に使われる港湾施設等が考えられる。南西諸島が中心となるが、米軍は本州の基地も使うと考えられるため、「本州なら無事」とはならないであろう。戦況が中国不利で推移した場合、中国が攻撃目標を拡大するかもしれないことは当然である。
 米中は双方とも核保有国であり、究極のエスカレーションとして「核の交換」を考慮しないわけにはいかない。
 米国が台湾有事に軍事介入する場合、日本の参戦と協力は不可欠であるため、「巻き込まれのリスク」は非常に大きい。日本が台湾有事における態度を戦略的に曖昧にして、米国・中国・台湾に緊張緩和を促すという展開も考えられないわけではない。
 主要な陸上戦域は日本の領土となり、自衛隊員や日本の民間人の生命も失われる可能性が大きい。それでも米国に白地小切手を渡したり、「台湾の独立や民主主義のために戦う」と息巻いたりするのか? 我々は本当の意味で現実的になる必要がある。

米中関係の現在と今後

 東洋学園大学の朱建栄教授は「持久戦の第二段階に入った米中競争―ガードレールを設置しながら鍔迫り合いはもっと激しくなる」と題して報告。11月15日の米中オンライン首脳会談は、互いに国内と盟友に、「譲歩をしていない」と見せることが必要だったが、実際は「ガードレール」を設置することになった。バイデン大統領は、一つの中国政策の堅持、台湾独立を支持しないと発言し、習近平主席は、忍耐強く、最大の誠意と努力で台湾の平和統一を求めるが、レッドラインが突破されれば、断然たる措置を取ると述べた。今後、それぞれの内政・外交上、台湾をめぐる駆け引きが続くだろうが、現時点では核心的な対立を回避する暗黙の了解のもとで駆け引きが行われており、制御可能ということだ。中国は2030年まで経済規模で米国に追いつくことを最優先目標とし、その上で台湾との平和統一がより現実的とみていて、そのための布石は今後も続くことになる。


東リ偽装請負・LIA労組職場排除

     
 大阪高裁で逆転勝利判決!

 11月4日、大阪高裁前は勝利判決の垂れ幕を掲げた労働者の喜びの声で溢れた。この日、大法廷では裁判官から「これから判決を述べますが騒がないように」と言われたという。傍聴の労働者は「これはてっきり悪い内容だ」と思ったと言うことであった。法廷の外ではしばらくして拍手の音が聞こえてきた。「あっ、これは勝訴だなと」感じられた。
 その後、裁判所の前で恒例の垂れ幕出しが行われ、歓喜に包まれた。
 永い苦しい、だけど諦められないLIA労組となかまユニオンを中心とする支援共闘のたたかいであった。 LIA労組(LIAは派遣会社の名称)の東リ会社の偽装請負と差別直接雇用に対する戦いは神戸地裁敗訴から大阪高裁逆転勝訴判決となった。今後東リ会社側が上告するかどうかの試練はあるがこの大阪高裁での逆転勝訴の意義は重要なものであり全国で非正規で働く労働者、とりわけ偽装請負下で苦闘する派遣労働者にとっては大きな鼓舞、激励となるにちがいない。

東証1部上場の住宅関連メーカー東リ株式会社の伊丹工場(兵庫県)でLIA労組の労働者は長らくその製造上基礎となる過酷な現場で働いてきた。伊丹工場では熟練を要する巾木行程や化成品工程を東リ社員の指揮命令下で永い勤続の労働者で19年から働き続けてきた。LIA労働組合は東リに対し違法行為を是正し、「労働契約申し込み見なし制度」に基づいて直接雇用をするように求めてきた。東リの要請により、請負会社の全従業員が派遣会社シグマテックに移籍する際、直接雇用の承諾の意思を示した5人だけを移籍させないという形で排除してきたのであった。2017年11月に地位確認を求めて提訴した神戸地裁では「請負会社の独立性について」その実態を認定しながら「請け負った業務を自らの業務として東リから独立して処理していた」という真逆の判断をしてきた。

 この神戸地裁の「偽装請負」と直接雇用を認めない判決にくじけることなく、大阪高裁に控訴し裁判闘争が続けられてきた。それに平行して伊丹工場門前での抗議行動や大阪本社への要請行動が粘り強く続けられてきた。そしてこの大阪高裁での逆転勝利判決を迎えたのであった。粘り強い長期の戦いを支えるためにアルバイト体制と支援の体制が構築されていった。この間関西生コン支部への財界、警察、裁判所一体となった攻撃、弾圧がかけられてきた。裁判所への不信がつのる一方で、にも関わらず裁判闘争の意義と重要性が再確認された判決であった。

 この東リ判決とLIA労組の戦いに類似した関西での取り組みが2007年にクボタ恩加島工場で戦われた。ペルー、ブラジル人、中国人と全港湾大阪支部の取り組みであった。当初Y社、O社、S社の移住労働者は各派遣会社より派遣され、クボタの社員の指揮の下で働きながら「請負」と呼ばれていた。一人の労働者の労災問題から徐々に3社の労働者の闘いへと広がり、直接雇用の要求へと発展した。労働委員会や裁判所への提訴へとなっていった。最終的にクボタは期間工への直接雇用を打ち出してきた。更に雇用期間の終了に伴い同意すれば「慰労金」が出るという分断策であった。期間工の内で試験に受かれば正社員の道もあるというおよそ移住労働者の置かれている言語や文化の困難性を全く考慮しない施策であった。経済的な事情もあって「慰労金」に応じざるをえなかった。
 今日的な視座で見た場合でも非正規労働者や移住労働者の置かれている状況は「偽装請負」もふくめてそれ程変わっていない現実がある。そうしたなかでの東リのLIA労組の闘いと大阪高裁の逆転判決の意義は極めて大きい。
 LIA労組の長年にわたる現場での苦闘と職場排除後も生活維持体制を作りながらあきらめずに闘い続けた取り組みは改めて全国の非正規労働者そして労働運動全般を鼓舞激励するものである。(K・K 関西)


核兵器禁止条約へモンゴルも加入

 世界的な政治緊張の高まりは、軍備拡張競争を加速させている。核軍拡も激化しようとしている。核戦争の危機はふたたび激化しようとしている。
 いまこそ核兵器の全面的禁止の運動を広げなければならない。
 2017年7月7日に国際連合総会で採択された画期的な核兵器禁止条約は、2020年10月に発効に必要な50か国の批准に達し、今年1月22日に発効した。来年3月には同条約第1回締約国会議が開かれる。
 12月、モンゴルも核兵器禁止条約へ加入し、批准国数は計57カ国になった。
 12月6日に開かれた第76回国連総会本会議では、核兵器禁止条約発効をしたことを歓迎する決議案を128カ国の賛成、42の反対、棄権16で採択し、署名・批准していない国の早期加盟を呼び掛けた。核兵器国は核軍縮の最良の方法は「国際安全保障環境を考慮に入れた段階的プロセス」だとして反対した。だがそのプロセスがいつ始まるのかは不明である。
 ドイツの新政権(社民党、緑の党、自民党)は、連立合意文書(11月24日)で、来年の核兵器禁止条約締約国会議にオブザーバー参加する方針を表明した。当面はNATOの「核共有」は維持するとしているが、ドイツが核兵器廃絶に動き出せば、NATOの核戦略は不安定化するとして、NATOやアメリカはドイツ新政権をけん制している。だが、核兵器をなくさない限り、核爆発・核戦争の危険はなくならない。銃社会のアメリカの現実からもそれはイメージできるだろう。
 日本も核兵器禁止条約に参加せよ。
 まずは締結国会議にオブザーバーとして参加すべきである。


日本労働弁護団  「コロナ禍の今こそジェンダー平等の実現を求める総会決議」

 (11月13日、日本労働弁護団第65回全国総会は「コロナ禍の今こそジェンダー平等の実現を求める総会決議」を採択した。)

 コロナ禍は、女性、とくに非正規女性の雇用に大きな被害をもたらしている。
「新型コロナウイルスと雇用・暮らしに関するNHK・JILPT共同調査」(以下、「NHK・JILPT共同調査」という)によると、2020年4月1日からの約7か月間に、「解雇・雇止め」、「自発的離職」、「労働時間半減30日以上」、「休業7日以上」のいずれかを経験した人の割合は、女性の4人に1人、非正規女性に至っては3人に1人である。同調査によると、正規で働いていた女性が離職し再就職で非正規に変わった割合は24・3%に上り、男性より約2倍も高い。そのほかにも、労働時間や収入の下落率も女性の方が大きく(JILPTディスカッションペーパー 21―09(周燕飛「コロナショックと女性の雇用危機」)より)、休業した雇用者も男性よりも女性に集中している(JILPT連続調査(5月調査)より)等、コロナ禍による女性労働者への影響は甚大である。
 このようにコロナ禍がとくに女性の雇用に大きな被害をもたらしている原因は、@女性の非正規労働者が多いこと、Aコロナ禍による経済的打撃をとくに受けている飲食・宿泊業、生活・娯楽業などの雇用者は女性の割合が高いこと、B女性の家事育児負担が大きく休校等の影響を受けやすいことにある。女性の家事育児負担が大きいのは社会の構造に問題があるからである。男性正規労働者が家事育児をする時間もないほどの長時間労働を強いられるため、その妻に家事育児が集中しているのである。それが女性の非正規化・低賃金の原因ともなっている。
 これらの問題はコロナ禍以降に生じたものではない。日本の雇用分野におけるジェンダー不平等については、女性差別撤廃委員会、ILO、国連人権規約委員会などの国際機関から繰り返し、深刻な男女間賃金差別や処遇格差を抜本的に改善するよう求められてきたにもかかわらず、政府はその是正に極めて消極的であった。
連綿と続いてきたジェンダー不平等による社会の矛盾が、コロナ禍の今、噴出している。今こそ、問題に真正面から向き合い、その解消に向けた根本的な法施策を行うべきである。
 具体的には、男女雇用機会均等法について、「同一の雇用管理区分」に限定しない性差別の禁止、性差別禁止の対象事項(第6条)の拡大、省令で定める間接差別の対象事項の拡大、ポジティブアクションの義務付け等の抜本的改正を行うべきである。また、職場におけるジェンダーに基づく暴力やハラスメントの撤廃を求めるILO190号条約(仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約)を早期に批准し、職場におけるジェンダーに基づく固定観念や役割分業、ハラスメントを禁止し、企業に防止対策を義務付け、被害者の救済措置を定めた立法措置を講ずべきである。また、より実効的な長時間労働の抑制策、そして非正規雇用の入口規制、賃金格差是正、雇用保険における1週間の所定労働時間が20時間未満の労働者の適用を除外する要件の廃止等が必要である。
 この間、全国労働組合総連合に続き、日本労働組合総連合の会長にも女性が就任した。労働組合の運動により、雇用分野におけるジェンダー不平等の是正が前進することを大いに期待する。また、個々の女性労働者が、コロナ禍での妊婦の休業やシフト制労働者の休業補償等の問題等で声を上げ、制度が改正されるという成果を上げている。日本労働弁護団は、コロナ禍の今こそ、すべての労働者、労働組合と連帯して、ジェンダー平等を実現することを誓い、ここに宣言する。


12・6臨時国会開会日行動

      憲法改悪反対!辺野古新基地建設反対!敵基地攻撃能力保有反対!いのちと暮らしと営業をまもれ!


 12月6日、臨時国会がはじまった。岸田内閣は安倍・菅政権の悪政を継承しての政策の強行を許してはならない。総がかり行動実行委員会・全国市民アクション・共謀罪NO!実行委員会は、議員会館前で、「憲法改悪反対!辺野古新基地建設反対!敵基地攻撃能力保有反対!いのちと暮らしと営業をまもれ!12・6臨時国会開会日行動」を行い、300人が参加した。  国会からは、白眞勲参議院議員(立憲民主党)、福島瑞穂参議院議員(社民党)、井上哲士参議院議員(共産党)、高良鉄美参議院議員(沖縄の風)があいさつした。
 主催者あいさつで憲法共同センターの木下興さんは、改憲派はコロナ危機を口実にして緊急事態条項を突出させて改憲をすすめようとしている、全国から岸田内閣の危険さ批判してさらに大きな運動を作っていこうと述べた。
 小森陽一さん(九条の会)は、自民党は改憲実現本部を設置したが、改憲の目論見を決して許してはならないと述べた。ねりま9区みんなで選挙(ねり9)の小原隆治さんは、市民と野党の共闘をもっともっとうまくやっていくことの必要性を述べた。共謀罪NO!実行委員会の角田富夫さんは、今日12月6日は2013年に秘密保護法が強行採決された日だ、秘密保護法を廃止するための闘いを強めようと述べた。市民連合の福山真劫さんは、市民と野党の共闘路線は間違っていないし、参院選にむけて市民と野党の本格的な共闘体制をつろうと訴えた。
 最期に、戦争をさせない1000人委員会の竹内広人さんが、当面の取り組みなどの行動提起を行った。


せんりゅう

     おやまあ新くそったれ資本主義ですか

        一億総搾取扱き使い改革

     軍産複合経済へとアベ派維新派

        戦争へ戦争へとアベ親分の顔

     死の情報真っ黒けのけの入管
       
         値上げボーナスもない愚痴

     いぬねこに真似て上手な年金暮し

               
                 ゝ 史

2021年12月


複眼単眼

     
 改憲の火付け役維新の会の妄想

 先の総選挙で「日本維新の会」は従来の11議席から41議席へと大幅増を果たした。これに改憲をめざす自公与党の293議席に加えると、改憲派は334議席となり、憲法96条が定める改憲発議要件の3分の2(310議席)を大幅に超えた。
 これに勢いづいた同党の松井一郎代表(大阪市長)は早速、11月2日の定例記者会見で、改憲促進を騒ぎ立てた。
 「国会で来夏の参院選までに憲法改正原案をまとめて改正を発議し、(改憲の)国民投票を参院選の投票と同じ日に実施するべきだ」「投票率も上がるし、大きな選挙のテーマにもなる」とのべた。
 この発言は大幅な議席増という大勝利に舞い上がった松井代表の妄言に他ならない。
 確かに日本国憲法第96条1項には「この承認(筆者注・発議)には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする」とあるから、同日投票は合憲だ。
 しかし、「やってもよい」ことと、「できる」ということには大きな開きがある。
現行の公職選挙法と現行の改憲手続法(国民投票法)を前提にすれば、この2つの「投票法」の同時並行実施はほとんど不可能だ。公職選挙法と国民投票法は、投票の運動のあり方の違いが極めて大きい。端的に言えば禁止や制限の多い「べからず法」的な公選法と、「運動の原則自由の保障」(皮肉なことに私たちはTV・CMやインターネットのCMなどを制限しろと主張しているのだが)を建前にした現行の国民投票法はまったくちがう。例えば戸別訪問の可否、宣伝手段の量などで、この2つの投票運動を同時に実施するのはほとんど不可能に近い。もし実施したら、現場は大混乱だ。
 松井代表は本当にまじめに同日投票を考えたことがあるのだろうか。
 岸田自民党が本格的に改憲論議に入ってくるのは来年1月の通常国会からだろう。
 公明党の北側一雄中央幹事会長は11月11日の記者会見で、「何があっても毎週(憲法審査会を)1回やっていきましょうというのがわれわれの立場だ」と語った。そして立民や共産に対して「(従来は憲法審に)出てこないことが多々あったがそうではなく、政局から離れて静かな環境下で着実に議論しよう」と主張した。
 憲法審査会の論議についての不文律である「静かな環境」は国会が予算委員会などで大論戦をやっている時はふさわしくない。
 国民投票は改憲手続法で「発議」のあと60日から180日の間に行うとされている。だから同日投票のためには遅くとも来年の通常国会の4月末までには改憲原案を作り、国会で発議しなくてはならないことになる。予算委員会のことも考えれば、改憲原案をこの期間に作るなどという乱暴なことははたして可能だろうか。
 まして、今年の通常国会で改憲手続法の成立に立憲民主党の協力をえるために付加された「附則4条問題」がある。
 同条項で改憲手続法は「施行後3年を目途に」、同法の重大な欠陥である有料広告制限、資金規制、インターネット規制などの「検討」と、「必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする」こととされた。投票の公正・公平を保障するうえでは、この内容の検討と改正措置が講じられない限り、国民投票の実施は許されないことから、この審議が優先されなくてはならない。
 これらのいずれの問題を考えても、参院選時に改憲国民投票を行うというのは松井ら改憲派の妄想だ。  (T)


冬季カンパのお願い

      
労働者社会主義同盟央委員会

 岸田内閣は、安倍・菅の政策を引き継いで悪政をすすめようとしています。人びとの生活をないがしろにし、改憲と戦争の道をすすむ日本政治を決して許してはなりません。
 労働運動、市民運動、立憲野党などは自民党政治を終わらせるためにいっそう共闘、連帯をつよめていきましょう。総がかりの運動・市民と野党の共闘の強化で岸田内閣をおいつめましょう。私たちは一段と奮闘する決意です。運動の勝利的な前進のために冬季カンパをお願します。

二〇二一年冬