人民新報 ・ 第1406号統合499号(2022年2月15日)
  
                  目次

● 国家安全保障戦略、防衛計画大綱、中期防の改定でより軍事大国化する日本

       日米同盟強化路線は破滅への道

● 市民連合・第20回全国意見交換会

       政治情勢・政策課題・野党共闘に向けた課題などについて論議

● 最低賃金めぐる状況と22春闘のたたかい


● 9条改憲の流れを絶て!自民党改憲を許さない  改憲問題対策法律家6団体連絡会集会

       「9条改憲の流れを絶て!」自民党改憲を許さないキックオフ集会アピール

● 平和フォーラム主催・建国記念の日を考える集会

       「日中関係!これでいいのか」

● 遺伝子操作の表示もないままひろがるゲノム食品

       集会「遺伝子操作から有機農業を守るために」

● 警察庁サイバー局の創設

       監視国家化を許すな

● せんりゅう

● 複眼単眼  /  自民 改憲めざし地方で対話集会開始






国家安全保障戦略、防衛計画大綱、中期防の改定でより軍事大国化する日本

      
 日米同盟強化路線は破滅への道

 岸田政権は、国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の改定に向けた本格的な議論を開始した。1月下旬に政府は有識者を対象にヒアリングを始めた。岸田は秋ごろには政府としての案を示し年末までに改定するという。
 今年1月17日開会した第208回国会の施政方針演説において岸田は、安保・防衛問題では次のように述べた。「ミサイルの問題や、一方的な現状変更の試みの深刻化、軍事バランスの急速な変化、宇宙、サイバーといった新しい領域や経済安全保障上の課題。これらの現実から目を背けることなく、政府一丸となって、我が国の領土、領海、領空、そして、国民の生命と財産を守り抜」くため「概ね一年をかけて、新たな国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画を策定します。これらのプロセスを通じ、いわゆる『敵基地攻撃能力』を含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討します。先月成立した補正予算と来年度予算を含め、スピード感を持って防衛力を抜本的に強化します」とし、「海上保安庁と自衛隊の連携を含め、海上保安体制を強化」「島嶼防衛力向上などを進め、南西諸島への備えを強化」、辺野古新基地建設をおこなっていくと宣言したのである。同時に、改憲論議を進めるとした。
 昨年4月の日米首脳会談(菅・バイデン)の共同声明は、「日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。日米両国は、香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する」とし、「日本は同盟及び地域の安全保障を一層強化するために自らの防衛力を強化すること」を約束した。
 今年1月の岸田・バイデン日米首脳テレビ会談についての会見についての報告で、岸田は「安全保障については、私から、新たに国家安全保障戦略などを策定し、日本の防衛力を抜本的に強化する決意を表明した」と述べた。また「中国については、かなりの時間をかけてやり取りを行いました。中国をめぐる諸課題について意見交換を行い、東シナ海、南シナ海における一方的な現状変更の試みや、経済的威圧に反対する、そして諸課題について緊密に連携していく、こうしたことで一致いたしました。台湾につきましては、台湾海峡の平和と安定の重要性、これを強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す、こうしたやり取りはありました。これ以上詳細は控えます」とも述べた。岸田が差し控えた「詳細」こそ問題なのだ。岸田は台湾事態を軸に対中軍事力強化をバイデンに約束したのである。
 補正予算案の防衛費の7738億円は補正予算案としては過去最大であり、当初予算と合わせて年度を通した防衛費は6兆1160億円で、国内総生産(GDP)比1・09%になる。今後も、国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の改定などにより軍事費の増大は加速し、米軍事戦略の一翼を担う日本の軍事大国化がすすむ。
 いまアメリカは崩れゆく世界覇権支配を維持するために躍起だ。バイデンの同盟国重視は、トランプ前政権同様の自国利益第一主義は変わらないが、負担を「同盟国」「有志国」なるものに肩代わりさせようという傾向がより強いのである。バイデン政権は2月11日、インド太平洋地域での外交や安全保障、経済政策の指針となる「インド太平洋戦略」を発表したが、「台湾海峡の平和と安定」を維持し、「台湾海峡を含むアメリカや同盟国などへの軍事侵攻を抑止する」ことを明記し、日本や「クアッド」(日米豪印戦略対話)への言及が多いのが特徴だ。同じ11日、クアッド外相会談が、豪メルボルンで開催され、緊迫するウクライナ情勢などが話し合われた。だが、ロシアとの関係が深いインドは他の3国のようにロシア避難には加わらなかった。そもそもクアッドは、AUKUS(オーストラリア 、イギリス 、およびアメリカ合衆国の三国間の軍事同盟)とは違い、インドを巻き込むための緩やかな場であったはずだか、追い詰められたバイデンはAUKUSと同様な米主導の同盟関係のように引き回そうとして軋みを生み出している。クリテンブリンク米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は「ロシアが侵攻した際に断固たる措置を取るように、インド太平洋地域を含めた同盟国・友好国とともに取り組んでいる」と述べたといわれる。日本もロシア批判、ロシア制裁のための液化天然ガス融通を行おうとしている。
 米国の無謀な軍事対決路線に従う日本は、北朝鮮、中国だけでなくロシアとの関係も悪化させることを選んでしまった。日米軍事同盟基軸・強化路線は危険な道だ。
 岸田政権の改憲・軍事大国化政策に断固反対しよう。


市民連合・第20回全国意見交換会

     
 政治情勢・政策課題・野党共闘に向けた課題などについて論議

 安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(「市民連合」)は、2月5日、「第20回市民連合全国意見交換会」(オンライン)を開いた。全国意見交換会は毎月1回開催されているが、今回は参議院選挙にむけた政治情勢と政策課題、各地区の野党共闘に向けた課題などについて報告・論議された。
 市民連合運営委員の長尾詩子さんの開会あいさつにつづいて、事務局から福山真劫さんが経過・情勢と基本認識・協議事項の報告をおこなった。福山さんは連合の状況については次のように報告した―連合は12月16日、中央委員会で、「第49回衆議院選挙の取り組みまとめ」を決定した。連合内の多様な主張を反映して、解りにくい文書となっている。「市民連合」については、言葉として3か所出ている。しかし12月26日毎日新聞の記事、「連合は、共産党や市民連合とは相いれない」、「野党共闘を仲介する市民連合まで標的」とするというような立場ではない。一点目は、「9月8日の市民連合と4党との政策合意」の事実の報告。2点目は、「野党4党と市民連合の政策合意を背景に共産党が前面に出てきた」、3点目は、「各地の市民連合も性質は様々で、地方連合会によっては社会対話の一環として関係づくりを行っているケースもある」としている。また「候補者一本化について」の項では、「そもそも「野党連携」あるいは「野党共闘」という言葉が国政選挙で出てきたのは2016年の第24回参議院選挙が最初である。32の1人区において野党各党の路線はそのままに、安全保障法制の廃止と集団的自衛権の行使を容認する閣議決定の撤回等に限定した形で選挙戦術として組まれた。政権の中間評価を下す参議院選挙ということもあり、当時、連合も候補者調整という戦術については結果的に容認してきた(連合は「野党連携」という表現を使用)。そのうえで、第2次安倍政権から続く一強政治に対峙するため、衆議院の小選挙区でも1対1の構図をつくり出そうという野党の選挙戦術は否定しないし、今回、7割を超える小選挙区で候補者を一本化したことで、相対的・物理的に与党に対する批判の受け皿となった面はあり得る。事実、もう1つの選択肢を示したことが功を奏し、勝利を収めた選挙区も少なくない地域であったと認められる。しかし、政権選択選挙である衆議院選挙において政党が連携する場合には基本政策(主には経済政策、社会保障、外交・安全保障)が大枠で一致していることが極めて重要である。また参議院選挙に向けては、前述のとおり、参議院選挙の選挙区での候補者調整という選挙戦術については連合として結果的に容認してきた。しかし、国政選挙において、その範囲を超えて、基本政策や綱領等で掲げる国のめざす方向が大きく異なる政党同士が連携することや、そのように根本的に整合を欠いた状態で部分的一致を理由に個別の政策協定を締結することは、組合員はもとより多くの有権者の理解を得ることは難しいと思われる。
 1月22日付の朝日新聞は「夏の参院選に向け、労働組合の中央組織・連合が支援する政党を明記せず、共産党と連携する候補者を候補者推薦しないなどとする基本方針案をまとめた」と報道した。この報道が大きく波紋を呼んでいる。しかし、連合の芳野友子会長の出身産別であるJAM(ものづくり産業労働組合)の安河内賢弘会長は、ツイッター等で「これはさすがに誤報です。立憲、国民両党の支援は全く変わっていませんし、野党候補の一本化を真っ向から否定する方針でもありません。そもそも方針決定していません」と述べている。前連合会長の神津里季生さんもかれのブログ「神津里季生の『おやっ?』と思うこと〜労働組合とメディア論」で「噴飯ものの誤報と言わざるを得ません。単なる稚拙さの所産か特定の意図をもってわざと書いたかのいずれしか考えられません」とコメントしている。芳野会長自身も2月3日毎日新聞インタビューに「私が会長に就任してから、連合と共産党との関係について私の発言がよく報道される。しかし前会長の神津李季生氏と同じことしか言っておらず、困惑している部分もある」としている。
 立憲民主党の選挙総括は、「野党連携」の「成果と課題」の項で、まる印で「一定の成果」、「評価できる」、「一本化における一定の成果は前提としつつ、より幅の広い集票につなげていくことが必要である」と提起している。しかし1月24日提起案にあった「参院選について、1人区においては、与党と対峙するための構図をつくるため、可能な限り一本化を進めていく」というところが削除されている。「一本化」は常識の方針であるが、様々な動きの中で見送ったのだと思われる。市民連合は、後述しているが、「自公政権の政策転換・打倒するためには、野党共闘しかない」という方針に確信をもって取り組みを進めていくことが重要である。―
 そして福山さんはこれからの活動として次のように述べた―岸田自公政権は、安倍・菅政権時代の、憲法破壊、権力の私物化と犯罪、米国追従の外交政策、貧困と差別を拡大する新自由主義路線、辺野古基地建設強行、原発推進政策を引き続き進めようとしている。そうした流れに対抗して、市民連合は「市民連合の政策要求」実現めざして、当面通常国会、参議院選挙と続く、与野党対決の政治日程を立憲野党、労働団体、市民団体、市民と連携し、連帯の輪を大きく拡大して取り組んでいく。通常国会における取組みとして、憲法審査会の動き、2022年度予算案、ジエンダー課題、沖縄をめぐる課題、コロナ対策、貧困格差課題、核軍縮・核兵器禁止条約関連課題、権力の私物化糾弾課題など、総がかり行動実行委員会、その他市民団体、労働団体、立憲野党と連携して取り組む。そして、7月10日に投開票が行われる予定の参議院選挙について、市民と野党の共闘、野党共闘体制の形成し、改憲勢力の3分の2割れ、改選議席数の過半数、参議院過半数の目標をめざして取り組む。当面、@候補者の立候補状況等の実態把握を行う。A政党への要請・協議を行う(テーマは国会対応と参議院選挙関連課題について 中央、各県、関係議員等)。B政策合意等の在り方について、情勢も見ながら協議を行う。C候補者一本化の取り組みを支援する。D選挙協力体制の準備をする、などを行う。
 各地からの意見交換では、はじめに町田市民連合から2月20日投票の町田市長選について報告があり、宮城、山形、福島、東京、神奈川、静岡、愛知、岐阜、兵庫、岡山、徳島、高知などからの発言が続いた。
 運営委員の中野晃一さんがコメント―この参院選で改憲派が勝利すると3年間は国政選挙はなく、この「黄金の三年間」といわれる時期は改憲派にとって極めて有利となる。この野党共闘は私たちの声を国政に届けてほしいということで、働く者の利益になることであり、労働組合も野党共闘に努力すべきだ。
 各地からの報告を受けて福山さんは、第一に市民と野党の共闘の弱さを克服し、生活者の苦しさに手を差し伸べていく日常活動の強化などにむけて市民連合の活動を強化し、第二に参院選勝利に向けては野党共闘しかない、一人区の統一候補を実現するしかない、立憲、国民、れいわや連合も大義に立ってほしい、今後は政策合意の内容や工程についても考えていかなければならない、と述べた。
 最後に、市民連合よびかけ人の広渡清吾さんが、アベノミクス以来の政策は一億層貧困化だといえる、市民連合は政権交代運動でもあると考えているが、まず改憲を阻止することで、次の参院選も二つの課題を持つものだ、と集会をしめくくった。


最低賃金めぐる状況と22春闘のたたかい

 最賃大幅引き上げキャンペーン委員会と全労協は1月26日、厚労省前で集会を行った。この日に第62回中央最低賃金審議会と審議会の終了後に第2回目安制度の在り方に関する全員協議会(目安全協)が開催されたからである。しかし、この二つの会議は当日の朝に厚労省のHPでコロナ禍を理由にオンラインの開催になったことがわかった。さらに、第2回目安全協の議事次第で「目安制度の在り方に関する全員協議会の今後の進め方(案)」が明らかになった。その内容は、昨年5月の第1回目安全協において「令和3年度中メドに取りまとめを実施することについて合意」していたにもかかわらず、この日の第2回目安全協で今後の進め方及び検討事項として「令和4年度中目途に取りまとめを実施することとしてはどうか」と提案されていたのである。
 目安制度は概ね5年ごとに見直すとされており、今年度がその年にあたり、昨年5月の目安全協から議論がはじまる予定であった。本来なら、2017年3月に取りまとめの報告がされた@目安制度の意義、Aランク区分に在り方、B目安審議の在り方、C参考資料の在り方の4課題について協議し、「取りまとめ」が行わなければならなかった。
 結局、目安全協は検討課題として提案された「令和4年度目途に取りまとめ」に「合意」した。「取りまとめ」の1年延期はただ単に時期が1年延びたというだけはなく、コロナ禍で格差の拡大と貧困がさらに広まり、不安定雇用と低賃金で働く労働者の困窮が深刻化している状況で極めて重要な問題である。延期の理由は昨年度最賃改定の総括が終わっていないからだという。21年度目安は使用者側委員が目安小委員会の結論を本審に報告することについて採択を求め、抗議するという異例の事態となったことに対して、「合意に至るまで議論ができなかった」ことに対する総括が必要で、その総括に時間がかかり、目安全協の開催が遅れたからだという。結果、1月26日の中央最賃審議会で「十分な審議を尽くす」ことを確認し、その後の第2回目安全協で令和4年度中目途の取りまとめに合意した。中央最低賃金審議会と目安全協に課せられている任務と責任の重大性を顧みない態度にはあきれるほかない。厚労省前の集会は怒りの抗議集会となったことは言うまでもない。
 年明け早々から最低賃金1500円と全国一律を求める最賃のたたかいは開始されている。3年目に入った新型コロナウイルス感染拡大は非正規労働者や女性労働者たちを直撃している。年末年始に行われたコロナ被害相談村と女性による女性のための相談会には前年を上回る相談者が訪れた。最低賃金近傍の労働者は約3割も及ぶ。原油価格高騰の影響等から消費者物価の値上がりが社会的弱者の生活の困難さに追い打ちをかけている。
 全労連・国民春闘共闘会議は2月10日、衆院第1議員会館で最賃院内学習会と最賃運動交流会を開催した。学習会には自民党、立憲民主党、日本共産党、国民民主党、社民党、れいわ新選組から約30人の国会議員(秘書を含む)が参加し、昨年衆議院選挙における各政党の最低賃金の選挙公約が示すように最賃問題に対する関心の高さを見ることができた。全労連・国民春闘会議は22春闘期における最賃運動を2月〜3月、4月〜7月の二つに分け、請願署名や各地でのキックオフ集会の開催、ケア労働者の賃上げアクション、第五次に及ぶ最賃デーのとりくみ等を具体的展開していく方針としている。下町ユニオン、生協労連、全国一般全国協、郵政ユニオンを連絡先とするナショナルセンターの枠を超えた最低賃金大幅引き上げキャンペーン委員会は2月7日に厚労省への申し入れ行動と全国交流集会をオンラインで開催した。今後も各地の草根ネットワークを作り、最賃運動を盛り上げていこうとしている。
 1990年から日本の実質賃金はほとんど上がっていない。また、非正規雇用は急増し、約4割を占める。その一方で企業の内部留保は拡大し、484兆円にもなる。昨年の最賃28円引き上げで到底納得はできない。大幅賃上げによる底上げと最賃1500円を勝ちとっていくことは22春闘の最重要課題である。岸田政権と連合一体となった官製春闘を許さないたたかいが求められている。


9条改憲の流れを絶て!自民党改憲を許さない

      
改憲問題対策法律家6団体連絡会集会

 2月3日 改憲問題対策法律家6団体連絡会の主催で、「9条改憲の流れを絶て!自民党改憲を許さないキックオフ集会」がオンラインで開催された(共催は戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会)。
 大江京子事務局長が主催者あいさつで、岸田政権はコロナ感染の拡大に歯止めがかけられないにもかかわらず、改憲論議を進めようとしている、いま必要なのは改憲ではない、と述べた。
 メイン講演は、愛敬浩二さん(早稲田大学法学学術院教授)の「改憲論議の作法と9条擁護の理由―いまこそ憲法が生きる政治を― 」。自民党は日本国憲法の正統性・正当性を受け入れていないが、 国民の多くは日本国憲法を受け入れた。いまの改憲派の議論は改憲の中身を問わずに改憲自体の意義を強調している。かれらは、押しつけ憲法論、憲法化石論、改憲タブー論などを言っている。憲法学者の樋口陽一さんは「改憲論をめぐる争いは、その社会のその時点での最高の政治的選択なのです。どんな人たちが何をしたくてそれぞれの主張をしているのかを見きわめたうえで、賛否を決めるべき課題なのです」と述べている。憲法論議と改憲論議の区別をはっきりさせなければならない。憲法論議とは、主権者である国民が、個人・国家・社会のあり方を原理的に熟議し、必要があれば、憲法改正を政党等に働きかけることである。改憲論議とは、具体的な憲法改正を実現するため、憲法改正手続を発動させるための政治論議だ。そして、実際に憲法改正の提案をできるのは国会両院で「3分の2」議席を獲得している政権与党である。憲法改正の提案の仕方というものは、現行憲法の○○条に、○○という問題があり、結果として、政府が○○をできないのは問題(不便)なので、○○という内容の条文に変更すれば、○○という効果の発生が期待できるということでなければならないが、そういう提起ではない。また、改憲派が改憲条文に対して護憲的である保証はないのであることにも注意しなければならない。例えば、自民党は2012年に自民党改憲草案の53条で「内閣は、臨時国会の召集を決定することができる。いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があったときは、要求があった日から20日以内に臨時国会が召集されなければならない」としていたが、実際には野党の執拗な要求にもかかわらず臨時国会召集をせずに逃げ回った。そのほかにも、「通常政治=法律改正」と「憲法政治=憲法改正」の区別が必要だ。法律改正で対応できるものは法律改正で行うべきであり、これは両院の過半数で制定・改正・廃止が可能であり、コロナ対策など各種の緊急事態に対する法的対応ができる。例えば、2016年におこなわれたイギリスのEU離脱国民投票による大混乱を見ればわかるように憲法のような永続性のある基本政策を二者択一で問うことは非常に危険だ。今、必要な「憲法論議」と立法改革は、@多元的民意を可能な限り公正に国政に反映させる選挙制度の模索、A政府・与党の無答責性に対する法的・政治的歯止めの整備、B新自由主義的改革の「成果」を抑制する抜本的制度改革など憲法の社会権規定の立法による具体化である。
樋口陽一さんは、「戦後憲法学は、『非現実的』という非難に耐えながら、その解釈論を維持してきた。…その際、過少に見てならないのは、そういう『非現実的』な解釈論があり、また、それと同じ見地に立つ政治的・社会的勢力…があったからこそ、その抑止力の効果を含めて、現在かくあるような『現実』が形成されてきたのだ、という事実である」とも言っている。戦後憲法政治における「自衛隊違憲論」の効用として、1960年安保闘争の際、岸信介首相の自衛隊出動要請を赤城宗徳防衛庁長官が拒否したことがあげられる。一方で、アメリカの要請でベトナムに出兵した韓国軍は米国に次ぐ32万人を派遣し、死者5000人、負傷者1万人などという犠牲を出している。
 飯島滋明さん(名古屋学院大学)は「改正改憲手続法の問題点と憲法審査会」と題して報告。南西諸島・九州の自衛隊配備・強化や台湾有事日米共同軍事作戦計画が判明するなど2022年は、壊憲・改憲の「危機の年」となるかもしれない。自民党、公明党、維新の会、国民民主党などが改憲論議をすすめようとしている。自民党は入管法などの対決法案を避け、参議院選挙後に憲法改正の動きを活発化させようとしている。今年7月の参議院選挙で立憲野党の躍進と改憲勢力の議席削減に向けたとりくみが必要で、立憲野党への応援のとりくみ、頻繁に学習会、SNSなどによる発信など改憲発議の抑止にむけた活動を強化していかなければならない。
 集会では、国会から立憲民主党の近藤昭一衆議院議員、共産党の赤嶺政賢衆議院議員、社民党の福島みずほ参議院議員があいさつした。
 集会アピール(別掲)が採択・確認された。
 最後に、総がかり行動実行委員会の高田健さんが、行動提起と閉会発言をおこなった。

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2022・2・3「9条改憲の流れを絶て!」自民党改憲を許さないキックオフ集会アピール

1 はじめに
 戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会と改憲問題対策法律家6団体連絡会は、これまで、憲法9条改憲などの自民党改憲4項目案に強く反対し、立憲主義・平和主義に反する「安保法制」などの法律の廃止を求めてきました。
 通常国会が開かれている今、市民が望まない無用な改憲への流れを絶ち、市民の命と暮らし、平和と自由を守る政治を実現する運動をあらためてスタートすべく、本日、この集会を開催しました。
2 今取り組むべきは改憲ではない
 岸田総理は、所信表明演説で「いわゆる敵基地攻撃能力も含めて、防衛力を抜本的に強化していく」と語り、自民党の憲法改正実現本部においても、「(憲法9条改憲などの自民党改憲4項目は)きわめて現代的な課題であり、国民にとって早急に実現しなければならない」「自民党の総力を結集して憲法改正を実現する」と強い意欲を示しました。
 しかし、新型コロナウィルス感染拡大をはじめとした、日本が抱える多くの課題の解決に改憲は全く必要ないばかりか、市民が現在、改憲を求めている状況にもありません。 
 自民党改憲4項目案などの改憲勢力が示している改憲案は、法律で対応可能なために憲法を改正する必要がないもの(教育無償化、参議院合区解消など)や、戦争や市民の弾圧につながる危険なもの(自衛隊明記、緊急事態条項など)ばかりです。
 また、改正改憲手続法(国民投票法)には投票環境や広告規制など国民投票の公平・公正を欠く多くの欠陥があり、現行法のままでの改憲発議は、国民主権の原理に照らし憲法上許されません。
3 いまこそ憲法を活かす政治を
 オミクロン株による感染が急拡大する現在、政治に求められているのは、医療体制の拡充や生活困窮者への支援です。すなわち、生存権(憲法25条)や個人の尊重(憲法13条)といった、憲法に立脚する政治こそが最優先で行われる必要があります。
 また、米中の緊張関係が高まる中で日本がすべきことは、敵基地攻撃能力の保有などによって徒に対立を深めることではなく、憲法の平和主義に基づいてあらゆる外交的努力を行って戦争を回避することです。
 今の日本に必要なのは、憲法改正ではなく、立憲主義・平和主義に基づく憲法が活かされた政治の実践です。
4 まとめ
 現在、私たちは憲法と平和の危機に直面しています。しかし、2020年には検察庁法改正案を、2021年には入管法改正案を、市民が作り出した広範な世論の力で廃案に追い込んだように、私たち市民には政治を変える力があります。
 私たちは本集会を皮切りに、「戦争する国」につながる9 条改憲を始めとする不要な改憲論にあらためて強く反対し、署名など世論喚起に取り組むととともに、今年の参議院選挙で改憲勢力の議席数が3分の2を大幅に下回るようにすべく、市民と野党の共闘を一層拡大し強化するため奮闘することを宣言し、本集会のアピールとします。

                  集会参加者一同


平和フォーラム主催・建国記念の日を考える集会

    
  「日中関係!これでいいのか」

 2月11日、フォーラム平和・人権・環境の主催で、建国記念の日を考える集会「日中関係!これでいいのか」が開かれた。
 平和フォーラム共同代表の藤本泰成さんが主催者挨拶。
 来賓あいさつは、日中友好議員連盟の幹事長の近藤昭一衆議院議員(立憲民主党)がおこなった。
 冨坂聰さん(拓殖大学教授)が講演。集会の名称に、「日中関係!これでいいのか」とありますが、これでいいはずがない。日本には、アジアに対する蔑視がある。かつては工業化、いま民主主義の優等生を自称している。あやまった中国認識は、この先日本にひどい結果をもたらしてしまうだろう。この間、中国女子テニス選手の彭帥さんをめぐる騒動があったが、日本マスコミは膨大な中国情報の中にこの問題だけをそれもかなり歪曲された報道が行われた。IOCのバッハ会長攻撃に飛び火し、彼女の動静を伝えたシンガポールマディアまで批判にさらされる始末だ。こうした姿勢は、コロナウイルスの武漢起源説もそうだが、「悪魔の証明」を迫ることである。ウイグル問題でも、強制労働やジェノサイドがなかったことを、企業に提出しろと要求する。こうした中で、反中ビジネスがはやっていて、書店にはそうした書籍が並んでいる。何度も中国崩壊論がでたが、そうでない結果が歴然としているのにそれらの著者はまた同じような主張を書きまくっている。中国に行って「天津飯」やラーメンを注文してもだめだ。それらは本格中華料理にはないからだ。日本の中国認識もそれによく似ている。中国の現実とおおくの日本人の中国認識の違いを考えなくてはならない。恒大集団の問題が起こっているが、日本では中国不動産バブルの崩壊、中国経済は危ない論が幅を利かせているが、中国での不動産産業は絶好調だ。だが、日本人が聞きたいのはバブル崩壊の音だ。たしかに不動産によりかかる経済は不健全で、そこからの脱却の時期の時期を迎えている。恒大集団の本業はいい状況だ。問題はEVへの投資しすぎだ。日本のバブル崩壊のストーリーを安易に当てはめても事態はわからない。
 中国のいま重要な課題は共同富裕だ。秋の党大会にむけて政治の季節にはいる。アリババやテンセントなどの巨額寄付が報道されている。その中で、「現代の文化大革命」が起こったと日本で報道されている。しかしこれはあやまりだ。中国は社会が不安定化すると左傾化する。習近平のやっているのは文革を起こさせないような政策だ。中国の腐敗はものすごく、反腐敗を徹底的にやった。軍のナンバー1、2やさらに党政治局常務委員までも摘発した。腐敗状況を放っておいたら文革がおこっただろう。共同富裕を進めなければ文革起こるのに、日本は見誤っている。習近平の独占・不正競争禁止は、中小企業の強化、中間層の拡大のためだ。教育でも学習塾やつめこみ教育は、人材育たない。だが教育界はもうかるからいうことを聞かない。こんなことやってたら人口も増えない。だから学習塾は強圧的に閉められた。だから、GDP重視ではなくなる。別の指標を持とうとしている。可処分所得、個々人の財布を重視するということで、これはバイデンも岸田も厚い中間層をつくるのとおなじだ。それを中国は強烈にやっているということだ。
 いま北朝鮮、ロシアが歴史問題を言い始めている。東アジアでいきていく日本をめざさなければならない。孤立すれば貿易依存度の高い日本が一番打撃を受けるのである。


遺伝子操作の表示もないままひろがるゲノム食品

     
 集会「遺伝子操作から有機農業を守るために」

 遺伝組み換え食品について危険視が広がる中で、ついに日本でも最初のゲノム編集食品として、2020年末に届出受理されたゲノム編集による「GABA(ギャバ)トマト」の苗が全国に配布され、ネット販売され、ふるさと納税の返礼品にもなっている。ゲノム編集技術を用いて血圧上昇を抑える効果のある「GABA」の含有量を高めたトマトというのがウリだ。しかしこの「高GABAトマト」には、「使用農薬の履歴」や「育種における遺伝子操作の有無」の表示はない。そして2021年秋にはゲノム編集の魚類も相次いで届出受理された。それだけでなく大学などでは、さまざまなゲノム編集生物が研究されている。ゲノム編集生物を生産者も知らずに栽培してしまうことが懸念されている。
 食と農から生物多様性を考える市民ネットワーク、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン、日本消費者連盟は、「種苗への遺伝子操作の表示を求める署名」を行っている。これまでにあつまった署名は、21万7267筆となった。

 2月8日、参議院議員会館で、食農市民ネット、日本消費者連盟、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンによる「種苗への遺伝子操作の表示を求める署名提出集会〜遺伝子操作から有機農業を守るために」が開かれた。
 集会では、天笠啓祐さん(遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン代表)が、「ゲノム編集食品の現状〜なぜ種苗に表示が必要か」と題して講演。高GABAトマトは、筑波大学の江面浩教授とサナテックシード社が共同開発し、パイオニアエコサイエンス社が製造・販売する。サナテックシード社は、2021年5月中旬から苗の無償配布始めた。パイオニアエコサイエンス社がトマトや苗を販売し、契約農家により3か所計30アールで栽培し、9月からトマトの販売始め(3kgで7506円・税込み)、10月から苗の販売も始めた(販売価格4株8250円)。トマトピューレも販売開始し、小学校やデイケア施設などへの無償配布を打ち出している。だが、植物が血圧上昇を抑える効果のある高GABA状態が継続することはない。こうした有効性への疑問があり、さまざまな安全性への疑問もある。高GABAトマトが健康に良いということは立証されていない、正式に科学的に健康に良いとする報告はまだない、そのデータ収集を兼ねた無償配布の可能性がある、高GABAの状態が悪影響を及ぼす可能性は否定できない、高GABAを摂取した際の影響も不明であり影響を調査した報告もない。幼児など子どもたちや高齢者や障害者などへの影響が懸念されている。また、トマトの花粉の寿命は長く、交雑の範囲は広いのでゲノム編集トマトによる汚染のおそれもある。ゲノム編集技術には、抗生物質耐性遺伝子が使われているが、操作した細胞としない細胞が入り乱れるモザイクをもたらす。魚ではよく起き得ることだ。だが、ゲノム編集食品はゲノム編集された内容が公開されれば簡単に判定可能できる。特許申請で判定可能なのであり、有機認証や原料原産地表示での社会的な追跡で判定可能なのだ。特許権を主張しながら「通常の品種の改良と同じ」という主張はまったく矛盾している。農家・消費者は、環境影響評価もない、食品としての安全審査もない、届け出も任意、種苗に表示がない、食品表示もないのではまったく無権利状態におかれているといわざるをえない。種苗に遺伝子操作の表示させるなどして、食の安全を守り、生物多様性を守り、農家・消費者の暮らしを守り、未来の世代を守っていこう。
 分子生物学者で「遺伝子組み換え情報室」代表の河田昌東さんが、ゲノム編集食品の危険性について報告。
 署名提出につづいて、農林水産省、厚生労働省、消費者庁などの関係省庁からの回答をもとめて、鋭い追及が行われた。

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農林水産大臣 殿

種苗への遺伝子操作の表示を求める署名

ゲノム編集トマトの栽培や販売が認められました。このトマトには、種苗にも食品にも表示の必要がありません。 このままでは知らないうちに栽培したり、食卓に登場することになりかねません。
遺伝子組み換えやゲノム編集などで遺伝子を操作された作物や家畜、魚などは、環境や食の安全に悪い影響をもたらす可能性があります。現在、食用の遺伝子組み換え作物は国内で栽培されていません。しかし、ゲノム編集作物の栽培が進めば、遺伝子組み換え作物の栽培も進み、食卓にやってくる可能性があります。
遺伝子組み換え食品については極めて不十分ながら表示義務があります。 しかし、遺伝子組み換え作物の種子や苗には表示義務はありません。ゲノム編集された種子や苗にも表示義務はありません。国内でゲノム編集作物が栽培されようとしている今、生産者が種苗の選択をするために表示は絶対に必要です。
私たちは、遺伝子操作作物を栽培したくない生産者、遺伝子操作原料を使いたくない事業者、遺伝子操作食品を食べたくない消費者の選択の権利を求めます。

【要望事項】
 種苗法第59条の表示項目の第6項「その他 農林水産省令で定める事項」に、現在定められている「使用農薬の履歴」とともに、「育種における遺伝子操作の有無」を追加することを要望します。


警察庁サイバー局の創設

     
 監視国家化を許すな

 警察・監視国家への動きが加速している。「横行する重大サイバー犯罪に対応するため、警察庁は『サイバー局』を創設し、その傘下に独自捜査に当たる約200人の『サイバー直轄隊(仮称)』を置く。サイバー犯罪に都道府県境はない。中国やロシア、北朝鮮などによる国家レベルのサイバー攻撃まで対抗していくには、米国の連邦捜査局(FBI)のような国家の機関が捜査に当たるのが世界的な流れである。人材を警察庁に集中させて捜査の一元化を図る意義は大きい。サイバー局は令和4年度中に創設される見通しだ」―これは、昨年6月29日の産経新聞主張「警察庁サイバー局 情報機関創設への一歩に」の文章だ。
 1月28日に閣議決定・国会提出された「警察法の一部を改正する法律案要綱」では、「重大サイバー事案に対処するための警察の活動に関する規定等の整備」の「次の事務又は事業の実施に重大な支障が生じ、又は生ずるおそれのある事案」として、「ア(ア)国又は地方公共団体の重要な情報の管理又は重要な情報システムの運用に関する事務、(イ)国民生活及び経済活動の基盤であって、その機能が停止し、又は低下した場合に国民生活又は経済活動に多大な影響を及ぼすおそれが生ずるものに関する事業、「イ高度な技術的手法が用いられる事案その他のその対処に高度な技術を要する事案」「ウ国外に所在する者であってサイバー事案を生じさせる不正な活動を行うものが関与する事案」をあげている。
 すでに2022年度の概算要求では、必要な組織再編や人員などが計上されている。米国のFBIのような国家の機関をつくって監視・警察国家づくりをおこなうということの意味はなにか。

 2月6日、盗聴法に反対する市民連絡会などによる「サイバー局新設と警察法改悪に反対する市民集会」が開かれた。
 盗聴法に反対する市民連絡会の中森圭子さんは、「サイバー局新設で市民社会の何が変わる?」と題して報告。―サイバー警察局とサイバー特別捜査隊の新設が警察法改正案閣議決定としてだされた。日経新聞は、「サイバー警察局 4月発足へ」と報じた。警察庁内に捜査指導や情報分析を担う「サイバー警察局」(約240人)を設置する。関東管区警察局には「サイバー特別捜査隊」(約200人)を新設する。重大サイバー事案は、@国や自治体の運営システム、重要インフラへの重大な支障、Aコンピューターウイルスの解析のように対応に高度な技術が必要、B海外のサイバー攻撃集団が関与ということだ。
 サイバーセキュリティ・情報化審議官主催の私的懇談会「サイバーセキュリティ政策会議」(2021年12月17日)の報告書は、「実空間と公共空間としてのサイバー空間とが融合したデジタル社会の安全・安心の確保、そしてその安全・安心をマルチステークホルダーで作り上げることを据える」ために、@対処体制の強化(体制構築・サイバー局とサイバー部隊が機能するための人材確保と環境整備。警察内他部門等との連携体制構築)、A国際連携・対応の強化(海外治安機関等との強固な信頼関係の構築、事業者との共同対処の拡大・充実)、B実態把握と社会変化への適応力の強化(警察への通報・相談促進に向けた気運の醸成)、C社会全体でつくる安全・安心(サービス提供事業者等への情報提供・働きかけ等、地域全体で安全・安心をつくる土壌の育成、学校教育と連携したセキュリティ人材の育成、サイバー防犯ボランティアの拡大・活性化、地域に根ざした各主体の防犯活動との連携)などの措置を行い、「『世界一安全な日本』というかけがえのない社会の財産を育み、守り抜くことが警察組織全体の果たすべき役割であるという原点を再確認するとともに、警察庁サイバー局及びサイバー隊は、警察の既存部門はもとより、多様な主体とも手を携え、『実空間と公共空間としてのサイバー空間とが融合したデジタル社会の安全・安心の確保 〜マルチ ステークホルダーで作り上げる安全・安心〜』を実現するための中心的な役割を果たすことが求められている」とする。まさに警察を軸とする監視社会づくりの狙いが明らかである。
すでに、こうした市民社会を張り巡らす監視網は2020東京五輪においても、大会期間中、4億5000万回のサイバー攻撃があったとされ、警察による監視カメラを搭載したバルーン、顔認証付き監視カメラ、警備員着用のウェアラブルカメラなどで具体化された。また警察はDNA情報約 145万件保管している。
米国NSA(国家安全保障局)、CIA(中央情報局)の元職員エドワード・スノーデンさんが告発しているように、米国が世界を網羅する監視・盗聴システムを機能させ、日本もそれに加担しているが、今回のサイバー局設置はそれを補完・強化させるものだ。
 こうした動きは、憲法21条の「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」という規定を否定するものである。
わたしたち市民も、警察庁の権限強化による国家警察の復活という視点とデジタル社会の進展を結びつけ批判していかなければならない。国(警察庁)がサイバー犯罪を取締り、デジタル社会の安心・安全を担い、サイバー空間の安全を確保するというが、インターネットで繋がり活動する人に及ぼす影響はどうなのかという点から批判し、個人情報を渡さない、プライバシーの保護するために一人でもできることであるパソコンやスマホなど、ネット環境を見直すこと必要であり、検索エンジン、ブラウザ、パスワードの管理、メールに何を使うかということも含めて対抗手段を取っていかなければならない。
 つづいて、原田富弘さん(共通番号いらないネット)の「デジタル改革と運転免許証・マイナンバーカード一体化」、木元茂夫さん(すべての基地に「No!」を・ファイト神奈川)の「『自衛隊サイバー防衛隊』は何をやろうとしているのか」、安藤裕子さん(破防法・組対法に反対する共同行動)の「治安弾圧の現状と課題」についての報告が行われた。


せんりゅう

   新しい資本主義?おやカビだらけ

          きく耳はアメリカ殿へおもいやり
  
   アベスガの国会汚染そのまんま

          2万 自殺大国なんでなんでなんで

   病院のようなつめたい夜の街

          ひとしれぬちいさな花のひらくとき

   アナーキーな猫たちなるほどなぁるほど

               
                    ゝ 史
2022年2月


複眼単眼

     
 自民 改憲めざし地方で対話集会開始

岸田文雄総裁が改憲へのドライブをかけるために改編した自民党の「憲法改正実現本部」(古屋圭司本部長)は、5月の連休までにすべての都道府県で少なくとも1回は「憲法の対話集会」を開くという計画だ。
 2月6日には古屋本部長の地元岐阜市(衆院岐阜5区)で、自民党の県議など地方議員ら40人をあつめて「憲法対話集会」を開いた。
 古屋本部長が率先して開かざるを得ないところが、憲法問題が同党内で盛り上げに欠けるところの証拠だ。
 安倍晋三政権当時、二階幹事長の音頭で同様の憲法集会を全国で開こうとしたが、実際にやったのは二階氏の地元の和歌山県くらいで、いつしかその企画が立ち消えになったことがある。地元に密着している議員たちは、有権者が改憲を切実な課題だとは考えていないことを熟知しているだけに、党中央が笛吹けど踊らないわけだ。
 極右改憲派の古屋も「改憲機運が十分に高まらないのは、大半の議員の取り組みが不足しているからだ」と考えている。
 古屋本部長は「まず、私がキックオフした。全国で同時多発的に憲法のただしい理解を増進するための会合を開いてほしい」と訴えた。
 この日の記者会見で古屋氏は「県議らが有権者と一番最前線接しているので、聞かれたときにただしく答えられるようにすることが大事だ」とのべた。なんとも頼りのない自民党の県議らか。
 自民党は今後、地方組織と調整し、集会の日程をいれ、安倍晋三元首相や、麻生太郎副総理、石破茂・元幹事長、中谷元・元防衛相などを講師として派遣する予定だ。
 岐阜の集会では古屋本部長が、改憲攻撃のターゲットと考えている立憲民主党を名指しして批判し、「憲法改正を実現できるのは主権者である国民であり、(立憲など野党が)国民投票に参画する機会を奪っているのは、ある意味で立法府の不作為だ。きわめて腰がひけている。議論するのはいいが、具体的に提案するのはいやだというのは、論理破綻ではないか。衆参両院の憲法審査会でしっかり審査しなければいけない環境を全国で作り上げ、世論を盛り上げていきたい」などと述べた。
 さらに古屋氏は「自民・公明両党が夏の参院選で勝利すれば、首相が衆院を解散しない限り、2025年まで大型国政選挙がない時期(黄金の3年)がある。改憲の実現はこの時期が一番可能性が高い」と述べた。
 維新の会の馬場幹事長らが「参院選と改憲国民投票の同時投票を」などとデマをふりまき、改憲の空気を煽り立てようとしているが、古屋ほどの極右改憲派ですら、この「黄金の3年」が改憲のチャンスだと考えている。
 たしかに、この3年が次期参院選に続く改憲の行方をきめる時期になるのは間違いない。
 私たちはあわてず、しかし急いで全力で、改憲反対の世論づくりに奮闘しなければならない。(T)