人民新報 ・ 第1407号統合500号(2022年3月15日)
  
                  目次

● ロシアのウクライナ侵略糾弾・即時撤退を

        武力ではなく対話による平和を!

● 22春闘勝利に向けて

        郵政本社に非正規署名2万1753筆提出   非正規社員の均等待遇と正社員化を求める

● ロシアはウクライナへの侵攻をやめろ!

        さようなら原発緊急行動

● 朝鮮戦争を終わらせよう!  植民地支配の清算を!
 
        3・1朝鮮独立運動103周年東京集会

● サイバー警察局を新設する警察法改悪案を廃案に!

● 戦争をヤメロの声は全国各地で起こっている

● 追悼 杉本昭典さん

● せんりゅう

● 複眼単眼  /  「非核5原則」をいう愚






ロシアのウクライナ侵略糾弾・即時撤退を

       
 武力ではなく対話による平和を!

 2月24日、ロシア軍は突如としてウクライナに侵攻した。戦火は拡大している。
侵略の暴挙は断じて許されない。戦争反対の声は、ロシア国内を含めて全世界に拡がっている。民間人の犠牲も増え、国外に脱出する人も250万人を越え、国内の避難民は数知れない。即時の停戦により、これ以上の犠牲拡大を阻止しなければならない。だが、反戦の声の広がりにもかかわらず、また米欧諸国政府によるかつてない「経済制裁」はロシア軍の行動にはほとんど影響を与えず、首都キエフの攻防戦も間近といわれる。戦闘はウクライナ以外にも拡大する様相も見せ、その前途は不透明だ。
 なにより人命が尊重されなければならない。いま、なにより早期の戦闘停止がなされなくてはならない。
 武力による争いでは何も解決しない。ところが、この悲惨な事態を「好機」として日本の右派好戦勢力は、核武装化、非核三原則の放棄、敵基地攻撃能力、9条改憲などの言動を活発化させている。ウクライナ反戦の闘いは改憲阻止の闘いと一体のものとなっている。

 ロシア軍のウクライナ侵攻以来、日本でも市民団体や労働組合などによるさまざまな反戦の行動が取り組まれている。ロシアの侵略戦争の即時中止、ウクライナからの撤退を訴えて、ロシア大使館や各地の領事館への抗議行動や街頭宣伝、集会、スタンディング、デモ行進、声明発表などが連日のように行われている。
 東京では、3月11日にも、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」による新宿中央公園での集会、新宿駅周辺デモが行われた。ロシアのウクライナ侵略糾弾、即時撤退を!、核兵器による威嚇はやめろ、原発攻撃やめろ!、核兵器全面禁止の早期実現を!、武力ではなく対話による平和を!、惨事便乗の9条改憲、大軍拡論議はやめろ!、非核三原則の堅持を!をかかげたこの行動には1200人が参加した。集会では、はじめに総がかり行動の高田健さんが発言―ロシア軍は直ちにウクライナから撤退しなければならない。またアメリカもイラク戦争では10万人の人びとを虐殺している。そして日本でもこの悲劇に便乗しての動きがあり、断じて許してはならない。つづいて日本体育大学の清水雅彦教授―ワルシャワ条約機構が解体したのにNATOは拡大している。だが今回のロシアの行動は国連憲章に違反している。国連憲章も改正が必要で、集団的自衛権条項は廃止されるべきである。作家の落合恵子さん―いますごく怒っている。ロシアに対してすぐさまウクライナからの撤退を要求する。また火事場泥棒のように非核三原則を否定しようとしていることも許してはならない。
 集会後、デモに出発した。

 ロシアのウクライナ侵略には複雑な背景がある。1991年末、ソ連は自滅的に崩壊し、冷戦は西側の勝利で決着した。以降のポスト冷戦の時代に、アメリカ一極支配の世界ができ、その体制を維持し拡大するために、アメリカは東では中国を念頭に置いた日米安保の強化と拡張を進め、現在では「インド太平洋戦略」の強化を図っている。西では、ロシアを対象にしたNATOの東方拡大が重点となってきた。
 プーチン・ロシア大統領は、2月24日、ロシア国民向けのテレビ演説で、ウクライナ侵攻事態を戦争ではなく「特別な軍事作戦」と言った。かつての日本帝国の満州などでの「事変」の言い分にそっくりだ。演説では、ドンバスの人民共和国がロシアに助けを求めてきた、ロシアは、ウクライナに核兵器が出現することを許容できない、ロシアはNATO軍によるウクライナ吸収の脅威を目にしている、ロシアはウクライナ領土を占領するつもりはない、ロシアはウクライナの非軍事化を目指しているとし、プーチン大統領は自身の行動を「ウクライナを人質にしている人々」への対応であるとしている。ロシアは今後の流血の責任は「ウクライナの現統治体制」にあるとし、また、第三国が介入を試みた場合、ロシアの報復は即時行われると述べた。
 ウクライナ憲法116条に「NATOとEUに加盟する努力目標を実施する義務がウクライナ首相にある」という趣旨の条文が追加されたのは、ウクライナのポロシェンコ前大統領時代末期の2019年2月のことで、2019年6月に第6代ウクライナ大統領に就任したゼレンスキーはその政策を継承している。ちなみに親ロシア派のヤヌコーヴィチ大統領時代(2010年〜2014年)には、「中立を保ちNATOに加盟しない法律」(2010年6月)があった。
 欧米でも、ウクライナがNATOに加盟すれば、ロシアの国境に敵対軍事力が来ると考えるロシアの激烈な反応が予想されていた。とくに旧ソ連構成国へのNATO拡大はロシアとの決定的な対立をもたらすとして、米国内でも例えばキッシンジャー元国務長官などからの強い反対の意見もあった。だが、ウクライナのNATO加盟は副大統領時代からバイデンがつよく推進してきた政策だ。プーチンにとって、それには1962年にキューバにソ連核ミサイルが配備されそうになったときのケネディー米大統領と同じ危機感を抱いたようで、これが今回のウクライナ侵攻に踏み切った動機であろうとみられている。そうであればロシアの軍事行動は簡単には止まらない可能性が高い。
 今回の事態に対する米欧側の反応は不可解なことの連続だ。アメリカ政府と情報機関は昨年暮れからロシアのウクライナ軍事侵攻は間近いとの予測を公表していた。キエフ攻略のプランさえあると暴露していた。同時に、バイデンやシュトルテンベルグNATO事務総長は、はやばやと「ウクライナへの軍事介入はしない」と明言していた。
 こうしたバイデンのウクライナに米軍は介入しないとの発言は、ロシア軍のウクライナでの軍事行動を実質的に容認し、プーチンの行動にゴーサインを出したと批判されている。
 一方、ゼレンスキーは、何度もNATOへ有効な軍事支援を求めたが拒否された。またウクライナのNATO、EU加盟も拒否されるようだ。ゼレンスキーは、徹底抗戦、長期戦を呼び掛けているが、ウクライナは単独で強大なロシア軍と戦う状況に追い込まれている。両国はそれぞれ国外から義勇兵をも呼び込み戦闘の激化は必至で、犠牲者の激増が心配されている。
 米欧は、経済制裁でプーチンを締め上げようとしているが、ロシア軍の戦闘停止・撤退という直接的効果は表れていない。中長期的に効果が出てくるといわれているが、ロシアだけでなく欧米、日本をふくめて全世界的な否定的影響がすでにおこり始めている。この戦争と大規模な制裁は世界秩序を変えることになる。ポスト冷戦期からポスト・ポスト冷戦期が始まり、世界の多極化の趨勢が決定的になる。
 武力による争いでは何も解決しない。各国の主権と領土保全を尊重・保障など国連憲章原則を堅持し、対話・協議を通して、平和的な方法による紛争の解決を堅持しなければならない。平和解決の様々な交渉・仲裁などの動きを求め、なにより世界で反戦平和の声を一層大きくあげていこう。

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第24回 許すな!憲法改悪・市民運動全国交流集会 特別決議

 ロシアはウクライナ侵略をただちにやめろ〜武力で平和は作れない

 ロシア軍の侵攻はウクライナの首都キエフに迫っている。あろうことか原発まで攻撃した。ロシアは核兵器の使用を示唆している。
 ロシアの軍事侵略の結果、ウクライナの市民に多数の死者、負傷者が出ている。国内外に膨大な避難民が発生している。
 私たちは戦火のもとで苦しんでいる4000万のウクライナ民衆に連帯する。プーチン政権による逮捕・投獄などの弾圧をおそれずロシア全土で声をあげている勇敢な市民たちに連帯する。そして全世界で「戦争反対、ウクライナ侵略やめろ、ロシアは兵を引け」の声をあげているすべての人びとに敬意と連帯を表明する。
 ここにこそ、ロシアの侵略をやめさせ、平和をとりもどす力の源泉がある。
 今回のロシアの軍事進攻は2度にわたる世界大戦の反省から導きだされた「国連憲章」の精神を踏みにじるものだ。たしかにNATO(北大西洋条約機構)は軍事同盟であり、その拡大はゆるされる問題ではないが、武力を行使したロシアによるウクライナのNATO加盟阻止の行動は、1991年に独立した国家であるウクライナに軍事侵攻する理由にはならない。
ウクライナの進路を決定するのはウクライナ民衆自身だ。
 このロシアによって作り出された危機を利用して、日本の一部勢力がこの危機がアジアにも波及する危険性を振りまき、無責任にアジアでの軍事的緊張を挑発し、「台湾海峡」の危機などを煽っていることは見逃せない。
 とりわけ、安倍晋三元首相をはじめ日本国憲法の改悪をねらう勢力が、ロシアのウクライナ侵略を利用して、軍事力の強化や「核のシェアリング」などを主張し、平和憲法の改悪を企てていることは断じて許すことができない。
 「武力で平和は作れない」ことは歴史が証明している。
 だが米国は自らの深刻な反省なしにロシアを一方的に批判できる立場にはないはずだ。例えば2003年3月20日,米英を中心とする連合国軍がイラクの大量破壊兵器に関する国連決議違反の疑いを主な理由として,主権国家であるイラクを一方的に侵略し、全土に1ヵ月余に及ぶ軍事攻撃を行い、10万以上のひとびとを殺した歴史がある。これはわずか19年前のことだ。のちにイラクの「大量破壊兵器」保有は、米国のいいがかり、でっち上げに過ぎなかったことが判明した。米国政府はあの攻撃の口実に根拠がなかったことを認めたが、日本政府はこれに加担したことをいまだに反省していない。
 しかしながら、目下の急務は、世界の平和を願うすべての国々と人びと、そしてロシアの国内で「反戦」の声をあげている市民、苦難に直面しているウクライナの市民が、「戦争反対」の声を一つにして、ロシアに侵略の即時中止を要求することだ。
 日本の私たちも、コロナ禍という困難な条件の下ではあるが、あきらめずに声をあげ続けよう。ロシアはウクライナ侵略をただちにやめろ〜武力で平和は作れない。

2022年3月5日


22春闘勝利に向けて

        郵政本社に非正規署名2万1753筆提出

        
非正規社員の均等待遇と正社員化を求める

 日本郵政本社前行動をとりくむ!! 郵政産業労働者ユニオンと郵政倉敷労働組合を事務局団体とする郵政リストラを許さず労働運動の発展をめざす全国共同会議(以下、全国共同会議)は3月4日、日本郵政本社前で「22春闘勝利!郵政に働く非正規社員の均等待遇と正社員化を求める本社前行動」を行った。集会に先立ち、全国でとりくんできた「郵政に働く非正規社員の均等待遇と正社員化を求める署名」2万1753筆を近畿と千葉の非正規社員2人が日本郵政に手渡した。この非正規署名は2009年からとりくみを開始し、累計で37万2617筆に達した。
 11時半から開始された集会にはコロナ禍の「まん防」下にもかかわらず、全労連、全労協をはじめ多くの支援と首都圏の郵政ユニオン組合員約100人が参加した。近畿からは非正規組合員が6人参加した。主催者を代表して日巻直映郵政ユニオン中央本部委員長があいさつを行った。日巻委員長は非正規署名の提出を報告したのち、会社が2021年9月21日、「最高裁判決を踏まえた労働条件の見直しに関する基本的な考え方」を示してきたことに触れた。労働条件の見直し提案は、正社員の処遇の引き下げ、均等待遇とは程遠い非正規社員の「均等待遇」を内容とするものであり、最高裁判決をおとしめるものであり、到底認めることはできないと厳しく批判した。さらに郵政ユニオンは最高裁判決を勝ちとった労働組合として切り開いてきた格差是正に向けた大きな流れを止めるような見直し提案に真っ向から反対し、真に均等待遇実現につなげるため全力でたたかう決意を力強く表明した。
 続いて、全労協から渡邉洋議長が、全労連から黒澤幸一事務局長が連帯のあいさつを行った。二人とも2月24日からのロシアによるウクライナへの軍事侵攻を厳しく糾弾し、即時停戦・即時撤退を求めた。22春闘においてもウクライナ反戦のとりくみを全力でたたかっていこうと訴えた。
 東京と近畿の非正規社員が決意表明を行った。労契法20条裁判第一次訴訟の原告でもある東京の浅川さんは自らのたたかいで勝ちとった最高裁判決を武器に非正規社員の格差是正をさらに押し進めようとアピールした。近畿の船山さんは労働条件の見直し提案を厳しく批判し、コロナ禍で正社員と同じように非正規社員も働いており、均等待遇を勝ちとっていこうと訴えた。二人の力強い決意表明に参加者から大きな拍手が起こった。
 アピール文を確認し、シュプレヒコールの後、全国会議共同代表でもある郵政倉敷労働組合の井本信行委員長からのメッセージが読み上げられた。最後に日巻委員長による団結ガンバローで成功裡に終了した。

 引き続いて、衆議院第二議以下会館においてオンライン併用で院内集会が行われた。院内集会は3年ぶり開催で会場参加は約50人。国会開会中で議員の参加は伊藤岳日本共産党参議院議員ひとりだったが、国会でも郵政問題を取り上げた経験もあり、今後ともに非正規社員の処遇改善にとりくんでいく連帯のあいさつがあった。
 特別講演は「20条裁判の到達と今後について」と題して、郵政20条東日本裁判弁護団の平井哲史弁護士(東京法律事務所)が行った。平井弁護士は@非正規雇用の現状と課題、A差別克服を求める裁判闘争の歴史、B郵政職場における20条裁判の前史を報告し、C少数組合が「非正規の仲間」を担いでたたかった郵政20条裁判について説明した。その中で、最高裁判決の到達点と会社の対応、現在の和解協議の現状を報告した。今後の課題については後で会場からも質問が出た無期転換後のアソシエイト社員の処遇改善、格差是正をどうとりくんでいくのかという点である。最後に上平光男本部書記長がまとめと行動提起を行った。


ロシアはウクライナへの侵攻をやめろ!

        
さようなら原発緊急行動

 3月5日、「ロシアのウクライナの軍事進攻に反対し、市民の命を守ることを訴える」「チェルノブイリ原発の軍事占領に反対し、他の稼働中の原発・原子力施設への攻撃中止を訴える」「ロシアの核兵器の使用、威嚇を止めることを訴える」ことなどを趣旨にして代々木公園・けやき並木園路で、さようなら原発1000万人アクション実行委員会の主催による「ロシアはウクライナの侵攻をやめろ! 原発を攻撃するな! さようなら原発緊急行動」が行われた。集会では、ルポライターの鎌田慧さんが主催者あいさつ。プーチンはNATOに脅威を感じてウクライナに侵攻し、ロシア軍が原発を占拠している。原発が戦火にあい、極めて危険な状況となっている。原子炉の破壊などに至れば重大惨事となる。また核兵器の脅しなど許しがたいことが起こっている。核兵器はもちろん原発の危険は明らかだ。つづいて高野聡さん(原子力資料情報室)―休止中のチェルノブイリが攻撃されたが運転中の原発の危険性はその比ではない。ウクライナには15基の原発があるが、占拠されたザポリージャ原発はヨーロッパ最大級だ。核兵器がなくとも原発があれば、核戦争となることを忘れてはならない。向井雪子さん(チェルノブイリ子ども基金)―ウクライナの市民もロシアの市民にも罪はない。支援を強めていきたい。藤本泰成さん(戦争をさせない1000人委員会)―いまの事態を口実に核武装をいうものも出てきたが、絶対に許せない。憲法九条をいかして平和を築こう。
 集会後はデモ行進を行った。緊急呼びかけにもかかわらず、市民団体や労働組合の旗も多くみられ、参加者は800人となった。


朝鮮戦争を終わらせよう!  植民地支配の清算を!
 
        3・1朝鮮独立運動103周年東京集会


 2月27日、文京区民センターで、「朝鮮戦争を終わらせよう!植民地支配の清算を! 3・1朝鮮独立運動103周年 東京集会」がひらかれ、150人が参加した。主催は「3・1朝鮮独立運動」日本ネットワーク(旧100周年キャンペーン)で、戦争させない!9条壊すな!総がかり行動実行委員会が協賛団体となった。
 加藤正姫さんが主催者挨拶―3・1朝鮮独立運動から103年をむかえるが、日本政府は歴史に真摯に向き合おうとしていない。朝鮮半島の分断固定化、統一妨害の態度に責任追及がなされなければならない。日本は米国の傘から脱するべきだ。そして、改憲の岸田政権にブレーキをかけなければならない。

 つづいて、ビデオ上映「植民地支配に抗って―3・1朝鮮独立運動」が上映された。

岸田改憲と東アジアの緊張

 講演@は、高田健さん(総がかり行動、朝鮮半島と日本に非核平和の確立を!市民連帯行動)の「岸田改憲の動向と東アジアの緊張」―改憲策動が強まっている。国会憲法調査会の開催、オンライン国会への動き、コロナ禍を口実にした改憲緊急事態条項の前面化などがある。昨年の衆院選での改憲派議席増加で三分の二を超え、今年夏の参院選以降は国政選挙がないので改憲派にとっての「黄金の三年間」となる。安倍・菅政権は、支持率を低下させたが、岸田が自民党の「新しい表紙」を演出して総選挙で勝利をおさめ政権を奪取した。だが、その裏では岸田は政権にありつくために安倍らの支持を売るために比較的リベラルな宏池会の伝統と手を切った。岸田は、新自由主義や安倍政治からの脱却を演出したが、コロナ対策では前政権同様の無為無策で批判はひろがり、内閣支持率にも陰りがみえる。一方で、改憲、対米関係、安保防衛政策では危険な安倍路線を継承した。改憲では、安倍が言い残した「残念ながら、世論が十分に盛り上がらなかったのは事実であり、それなしには進めない、改憲の世論づくりはできないことを改めて痛感している」「志半ばで職を去ることは断腸の思いであります」の言葉から自民党は改憲の世論づくりの運動を起こそうとしている。
 また、米国は「一方的な現状変更に反対」の旗印で、自らの「覇権」を守り抜こうとして、「自由で開かれたインド・太平洋」で戦略重点を東方に移し、日米豪印のQUADや米英豪で将来は日本も入れようとしているAUKUS、ファイブ・アイズ(米英豪加ニュージーランド)などによる中国包囲網形成の異常な軍事同盟構築強化路線をとった。それは、日本政府の対米軍事加担の拡大となってきている。
 台湾有事で重要影響事態が認定されれば、「戦闘地域」でも自衛隊による米軍への後方支援が可能となり、存立危機事態が認定されれば、米軍への武力攻撃に対し集団的自衛権を行使して参戦し、海外での武力行使が可能となるとしている。すでに南西諸島に米軍の軍事拠点をつくる新たな日米共同作戦計画原案を策定し、海兵隊の作戦計画切り替えが進んでいる。菅前政権は、日米共同声明とG7首脳宣言で52年ぶりに「台湾情勢」に言及した。岸田政権のもとでの今年の2+2でも、台湾有事を念頭に中国に共同対処が語られた。そして、日中関係に関する4文書や日朝平壌宣言は事実上過去のものとされた。
 岸田政権の「戦争のできる国」づくりは、従来の日本政府の「専守防衛」や「日米安保体制の枠組み」を突破し、「日米軍事同盟の新しい段階」に至っている。岸田の明文改憲は、「戦争できる国」づくりのために既成事実化されているこれらの「実質改憲」を明文で合憲化するものである。参院選後の権力にとっての「黄金の3年」に、岸田は改憲論議を起こし、改憲国民投票を実施したいと考えている。自民党の憲法改正実現本部(古屋圭司本部長)は全都道府県での「憲法集会」を企画するなど、安倍改憲の失敗の轍を踏まないように準備をしつつある。軍事力バランス論や軍事力に頼る大国の覇権争奪と、日本がその覇権争いに加担する軍事的緊張と戦争の東アジアではなく、憲法9条を生かした、非核・平和・共存のアジアをつくことこそ、私たちの未来を拓くものとなる.私たちが草の根の運動で「戦争する国」づくり反対、改憲反対の世論をつくり、「世論の壁」を築き、明文改憲を阻止できるかどうか、今後のたたかいにかかっている。

韓国大統領選の行方

 李泳采(イ・ヨンチェ)さん(恵泉女学園大学教授)は、「2022年韓国大統領選の行方と日韓関係の展望―若者の政治意識の分析を中心に」と題して講演した。韓国は朝鮮戦争以降の軍事政権が1987年6月の民主化抗争で打倒された。この歴史的な戦いが民主化の大きな流れをつくった。2016〜17年のキャンドル・デモ、朴槿恵大統領弾劾、そして5月には文在寅大統領の誕生となった。
 この3月9日には、韓国大統領選挙となるが、今回も若者層の動向が注目される。歴史を書き換えた2016年選挙で20代の投票率が極めて高くなり、これが民主化に大きく作用した。だが今回は若い層が保守化している。2021年のソウル、釜山の市長選挙で与党は大惨敗した。キャンドル市民革命が作り出した文在寅政権は「機会は平等に、過程は公正に、結果は正義たるもの」としたが、4年後の現実は厳しいものがある。2018年6月現在の失業者は112万1000名・失業率4%で2000年以降の最高値を記録した。特に15〜29歳青年失業率は10・5%で1997年以降の最高となっている。文在寅政権が目指したものと正反対の結果がここにある。これは新自由主義、終わらない朝鮮戦争・兵役が原因だ。
 今度の大統領選では民主化政権第3期となるかが問われている。キャンドル革命の完成するためにはなにが必要か。第一に、コロナの国難を克服し、経済危機を乗り越えること、第二には、社会の民主化、検察権力・司法権力の改革、メディア権力(言論)改革、第三に、経済民主化、財閥改革、非正規問題、失業問題、福祉問題、不動産問題、第四に、政治民主化、帝王的な大統領権力の制限、選挙法改正、第五に、分断問題の解決、南北共存と経済繁栄による南北平和共同体の実現と朝鮮戦争の終結である。
 しかし保守メディアの改革はできていない。サムスンなどの財閥改革もできていない。改革に至っていない政権への不満がキャンドル革命の背景にある。 
 大統領選の結果はいずれの側の勝利になるにしても、韓国の抱えているこれらの問題は解決されなくてはならない大問題として残る。
 103年を迎える三一独立運動の宣言書の「公約三章」は「−、今日我らのこの行動は正義、人道、生存、尊栄のための民族的要求であり、自由的精神を発揮するものであり、決して排他的感情に逸走してはならない。一、最後の一人まで、最後の一時まで民族の正当な意思を快く発表せよ。一、一切の行動は秩序を最も尊重し、我の主張と態度をあくまで光明正大とすること」とし、日本へのメッセージとしては、日本を邪路から出て東洋支持者としての重責を全うさせようとのよびかけであったが、日本の返答は虐殺であった。いま韓国はキャンドル革命を続けているが、日本の市民社会はどうこたえていくのかが問われてるのではないだろうか。

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集会決議

     朝鮮戦争を終わらせよう! 植民地支配の清算を!


 今年の3月1日は、日本からの独立を求め朝鮮全域で人びとが立ち上がった3・1独立運動から103周年を迎えます。私たちにとっては歴史を直視しながら日本と朝鮮半島やアジアの人びととの平和な関係をいかに築くのかを問い直す日でもあります。
 
東北アジアの非核・平和をめざそう!          
 いま朝鮮半島では、日本からの解放と同時にもたらされた南北分断から77年。南北分断に起因する朝鮮戦争の停戦協定からも69年が経過しましたが、いまだ戦争は終結していません。南北分断体制もそのままです。これこそが朝鮮半島の「危機」の根源です。
 朝鮮戦争を終結させ、停戦協定を平和協定に転換させることで、東北アジアの非植・平和の実現に向かうことができます。自国軍隊が居座り続けるため、これを拒み続けている米国が朝鮮戦争の終結に応じるよう強く求めていくことが必要です。
 米国が本当に米朝対話を望むなら、米朝シンガポール共同声明(2018年)を言葉ではなく実際に履行しなければなりません。その一歩として、繰り返されている米韓合同軍事演習を中止すべきなのです。
   
加害の歴史に真摯に向き合い平和外交めざそう!
 しかし、安倍・菅政権を引き継いだ岸田政権は、米韓で協議されている朝鮮戦争の「終戦宣言」の提案にも「時期尚早」として反対しています。そして米国に追随して中国・朝鮮に向けた「敵基地攻撃能力」の保有、沖縄・辺野古の米軍基地建設、南西諸島の軍事化と日米軍事一体化など軍事大国化の道をひた走り、憲法改悪まで推し進めています。
 さらに植民地支配の反省もなく、引き続き朝鮮学校に対する「無償化」からの排除などあからさまな民族差別政策を進めており、朝鮮人元徴用工や日本軍「慰安婦」被害者への謝罪・賠償も65年日韓請求権協定を盾に拒み続け、自らの加害責任は無視して韓国政府に「日本側が受け入れられる案」の提示を迫るという本末転倒を繰り返しています。
 また最近では、朝鮮人強制動員・強制労働の事実を無視して「佐渡金山」の世界遺産登録の推薦を決定しました。2015年のいわゆる「軍艦島」(端島)などを含む「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録の際もこのことが問題となり、日本政府は「その意思に反して連れて来られ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者等がいたこと」などについて「理解できるような措置を講ずる」ことを約束したにもかかわらず、その後設置された「産業遺産情報センター」は朝鮮半島出身者への差別は「聞いたことがない」とする元島民の「証言」のみを垂れ流し、ユネスコから是正を求められているものの改められていません。韓国などがこれに抗議するのは当然です。
 これらは植民地主義が依然として根強く存続し続けでいることを示しています。
 憲法9条を持つ私たちは、過去の加害の歴史に真摯に向き合い、日本政府が米国追随と「核の傘」から脱して核兵器禁止条約に連やかに加盟し、平和外交に徴するよう促し、改憲・軍事大国化の道をやめさせ、植民地支配の清算を追っていきましょう。

2022年2月27日

3・1朝鮮独立運動103周年東京集会 参加者一同


サイバー警察局を新設する警察法改悪案を廃案に!

 3月3日、衆議院は「警察庁(関東管区警察局)にサイバー警察局・サイバー特別操作隊」をつくるという警察法の一部を改正する法律案を可決し、参議院内閣委員会での審議に移った。 中央集権的な警察を否定した戦後の警察行政の大転換の法改正であるが、ほとんど審議らしい審議、そして報道らしい報道もなされないまま、ウクライナ戦争のかげにかくれて成立させられようとしている。この改正法は、2017年6月に成立した共謀罪法、共謀罪の創設を含む改正組織的犯罪処罰法、2013年12月に成立した秘密保護法につづくもので、戦前の「特別高等警察」をも彷彿させる警察の権限強化である。

 3月1日、衆議院議員会館で「サイバー警察局を新設する警察法改悪案を廃案に!院内集会が開かれた。
 小倉利丸さん(JCA-NET)が、「警察法改悪を許すとどうなるか?」と題して報告。憲法21条は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。A 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」とあるが、今日のネット社会状況では、「ネットにおける集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。A ネットの検閲は、これをしてはならない。ネットの通信の秘密は、これを侵してはならない。」へと拡大しなくてはならない。つくられようとしているサイバー警察局の狙いは、ケイタイ、メール、SNS、ネットショッピング、SUICA、テレビなどのサイバー空間の検閲である。すでに2016年「警察白書」では、「インターネット上の情報収集・分析の重要性がこれまで以上に増しているところ、インターネット上に公開されたテロ等関連情報の収集・分析を強化するために、平成28年4月、警察庁警備局に『インターネット・オシントセンター』を設置した」とあり、情報通信局、情報技術解析課と警備局が連携している。こうして、人々のコミュニケーションと現実の行動の両面を統合的に監視し、たとえば全国各地から集まった反戦・抗議参加者などを追跡して動静を把握して情報を蓄積するなどをする。ネットとリアル両面でのハイブリッド捜査が可能になるとされる。また、人々の権利としての異議申立てを事前・事後にわたり監視し予防することになる。
 現在は、サイバー事案として収集した情報によって、自治体警察が捜査することになっている。警察法改悪のポイントは、警察庁にサイバー局を設置し、自治体警察を飛び越え、その上に、憲法で保障されている通信の秘密、表現の自由、思想信条の自由の領域を専門に捜査する機関の創設することである。警察庁長官官房のさらにうえには、内閣官房・内閣サイバーセキュリティセンターがある。これは、地方自治を否定し、中央政府の権限強化することであり、関東管区警察局を事実上の全国対象の国家警察に格上げし、警察庁長官官房に情報機能を統合するということだ。
 自民党改憲草案「第21条(表現の自由)」は「1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。3 検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。」と新たな2項を挿入しているが、これは、サイバー空間を「国益」に従属させ、反政府活動を違憲にする意図があることを露骨に表現したものだ。
 だが、警察や政府だけでは不可能なことがある。それは、プロバイダーの個人情報、民間が保有する個人情報、民間IT企業の技術や特許は、「検閲」ができないし、通信の秘密を侵害できない。そのため官民一体となった取り組みが不可欠であり、民間IT企業による警察機能の肩代わりが求められる。私たちが契約しているプロバイダー、私たちが利用する端末、ネットショッピングサイト、SNSを提供する企業民間IT企業が警察などの監視技術インフラを提供するという民間企業が公権力の一部を担うことが前提となった法改正なのである。
 このように警察法改正は、膨大な警察保有データとサイバー特高警察の到来をもたらすものとなり、通信の秘密、民主主義の基盤そのものへの脅威であり、強く反対していかなければならない。


戦争をヤメロの声は全国各地で起こっている

 浪速の空の晴れ渡り行くの如く街の隅々まで拡がってきている。
 小学生の低学年の子どもが「戦争で子どもが血を流しているのを観た!」と言って来る。また別の男子小学生は紙に「NO WAR」「ウクライナとロシアの国旗」を鉛筆で書き校門を出てすぐに紙を両手で持ち「NO WAR」を言いながら毎日帰宅しているという。いまは、通っているリハビリの先生までが、まずプーチンの話をしてくるご時世だ。
 だが、この時とばかりに安倍・橋下コンビは核武装などとトンチンカンな事を言い出して、「それじゃプーチンと同じ穴のムジナヤンケー」と大恥をかいている。
 この間、大阪でも多くの行動が取り組まれている。2月27日、JR吹田駅の広場で50名ほどがスタンディング行動を行いった。この日のも数名が豊中市にあるロシア領事館前で警察の検受けながらもステンディングを行い、東大阪でも行動が取り組まれた。
 翌28日には午前10時から平和委員会や全労連等の呼びかけで130名がステンディングでプーチンの侵略戦争で亡くなったウクライナ・ロシアの人びとへの黙とうがおこなわれた。つづいて豊中市民アクションの行動がおこなわれ、途中ロシア語で領事館に向けて「わたしたちはウクライナもロシアの人びとも愛している。戦争をやめよう」とアピールした。29日にはしないさせない戦争協力などの行動も行われた。
 世界中の民衆の立ち上がりでプーチンの戦争をとめさせよう。私利私欲で核や軍を使い自己満足をえようとなどというのはとんでもないことだ。アメリカのベトナム戦争、旧ソ連のアフガン戦争は多くの血と人に悲惨な状況を生み出し、結局超大国は撤退・敗北するという結末を迎えた。もっともっと声をあげていこう。  (K 大阪)


追悼 杉本昭典さん

 いつもにこにことほほえみ、恰幅のいい陽だまりのような杉本昭典さんが2月17日に他界された。93歳であった。100歳まで生きるのではと思っていたのだが。
 以前から尼崎の広畑貞昭さんより「杉本さんの本や資料の整理をたのまれている。本いらない?」と、たびたび言われていた。
 杉本さんは、戦後の激動を労働運動、社会主義運動を駆けぬき、今日まで社会運動に関わってこられた。尼崎で1928年労働者の子どもとして生まれ、育った。働き始めた職場で1946年に18歳未満で共産党に入党している。天性のオルガナイザーと思われるほど戦後の混沌としたなかを組織化で泳ぎ回っている。当時の写真には労働者の前ではつらつとしゃべっている杉本さんの姿を見ることができる。
 戦中の軍国少年からの転身であった。
 戦後の労働運動はアメリカ占領軍、経営者、共産党中央といった複雑な環境でその中で杉本さんは共産党を除名されたり、復党したりとしながらも常に労働者大衆の中で活発に、骨太く活動したようである。今から考えると非常に厳しい活動である。中でもレッドパージを受け手以後の活動は弾圧と「飯」の問題に常に直面したようである。
 六全協の前でも杉本さんは党中央に対しても自由に批判し、「国際派」として活動していた。党中央の軍事路線や教条主義、官僚主義の弊害にも巻き込まれ、筋を曲げない杉本さんは、結局共産党から3回の除名処分を受けたのであった。
 「労働者解放同盟」に関わったりした後、社会主義革新運動に参加し、なお社会主義運動の変革を追求した。同時に地域の医療生協 労働運動などに積極的に加わった。
 その後、新しい情勢に対応するべく1967年阪神共産主義協議会が結成された。地域の杉本さんら構造改革派の流れの活動家にブンド系(清田裕一郎さんたち)、共労党系(若林勝さん)、長船社研系(川島毅さん)等多様な活動家が合流した。中には戦前からの活動家、長井一夫さん(故人)、矢野笹夫さん(故人)などの姿もあった。六〇年代後半の反戦運動も下支えした。反戦生年委員会は小中島のグリーハウスを拠点に展開された。
 70年安保闘争後にその総括を踏まえ、阪神社会主義研究会が前者の活動家と全共闘運動や反戦青年委員会運動の流れの活動家が合流した。日本共産党を抜きにしては社会主義運動を語れなかった時代、スターリン主義からの脱却に理論的に格闘した時代、スターリン主義批判を自明のこととして出発できた世代、そこには戦前から戦後に至る日本共産主義運動の縮図があった。今日に至るまで世界をどう分析し、どのような新しい社会をめざしていくかが問われ続けている課題がある。
 いずれにしろ反戦運動、労働運動、反公害住民運動、民族差別反対運動、医療生協運動、部落解放運動、女性解放運動と阪神地区の多様な活動領域の担い手の結集でもあった。
 前者と異なるのは政治組織の二重加盟は前者(阪共協)の総括から認めないという方針であった。
 こうして労働運動では阪神労働運動活動者会議が結成され労働学校が組織されていった。阪神現代社が新たな拠点となった。関西労活―全国労働運動活動者会議と連携し、杉本さんはその協同代表の一人でもあった。また三里塚闘争に連帯する会の発足に当たって広範な関西の共闘を形成するために杉本さん達関西の古い活動家が奮闘された。
 こうした地域での大衆運動に杉本さんは精力的に関わっていった。印象に残っているのは全国労働運動活動者会議の東京集会での杉本さんの堂々たる発言の姿であった。最後に働いていた中小企業で労働組合活動を終えた後、地域の阪神合同労組で活動した。杉本さんの大衆運動への下支えは今日まで続いてきた。
 さらに「カラ出張」問題を期に尼崎市議会を巡る市民運動が発展し、多くの「市民派議員」を輩出していくことになる。これはその後の大衆運動の在り方を大きく変え、2人の女性市長の誕生につながっていった。
 今日では形態や領域を変えた大衆運動や政治闘争の中に時折、戦前、戦後を貫く連綿として続くなだらかで時として起伏有る階級闘争の伏流を見て取れる時がある。それは杉本昭典さんや、菊永望さん、長井一夫さん、矢野笹夫さんたちに象徴される多くの先達の社会主義者、共産主義者が切り開いてきた運動の成果である。同時に当時の運動の厳しさや、大衆的広がり、深さを感じる。 杉本昭典さん、ご苦労様でした。そして有り難うございました。合掌   (蒲生楠樹)

杉本さんの活動のより詳細な記録は、
 ●『時代に抗する―ある「活動者」の戦後期』(杉本昭典のインタビュー(構成=市田良彦)と解題「尼崎における日本共産党 『五〇年分裂』の展開」(黒川伊織) 航思社 
 ● 前田裕吾監修「杉本昭典と尼崎の政治・労働運動」 鹿砦社


せんりゅう

   まき起こる反戦の声海こえて

       恐ろしやリヴァイアサンが姿みせ

   核不使用合意したのは何んのため

       典型だ資本戦争の典型だ

   殺戮でだれが儲ける資本主義

       アメリカの子分のまま岸田節

   アベノマスクもアベノミクスも始末に困る

             
                 ゝ 史

2022年3月


複眼単眼

       
 「非核5原則」をいう愚

ロシアがウクライナ侵略に突き進む過程で、プーチンは「ロシアは核保有国である」として、核を振りかざした恫喝を行ったことがある。
つづいて、ロシアは2月24日、ウクライナのチェルノブィリ原子力発電所を軍事力で占拠し、3月4日には同国南東部の欧州最大規模といわれるザボロジェ原発を攻撃した。
この暴挙で世界に衝撃が走った。
もしもこれらの原発が爆発したら、それは人類にとって取り返しのつかない惨事となるのは論を待たない。核戦争の危機が現実のものとなりつつある。
こうした情勢の中で、ショック・ドクトリンよろしくこの惨事に便乗して日本の永田町周辺で国是である「非核3原則」の見直し、「核シェアリング(核の共有)」などの議論を要求する声が各所であがっている。戦後の日本の政界には核武装論者の根強い動きがある。
今回、まず口火をきったのは安倍晋三元首相だ。2月27日、TVの番組で「(戦争抑止力強化のためには、核シェアリングの)議論をタブーにしてはいけない」と述べた。
自民党の福田達夫総務会長は「国民や国家を守るのなら、どんな議論も避けてはいけない」とのべ、安倍発言を擁護した。菅前首相も「議論は必要だ」などと安倍氏を擁護した。
日本維新の会は「提言」をまとめ、「ロシアが核による威嚇という暴挙にでた威嚇という事態を直視し、核共有の議論を開始する」と主張した。
提言はもともとは「非核3原則のみなおし」という文言もはいっていたが、発表の段階で削除した。
維新の会の足立康史衆議院議員は3月3日の憲法審査会で、「核共有の議論を入口から封じるのは非民主的だ。非核3原則に加えて、考えさせず、語らせずで、非核5原則になっているのはおかしい」などとのべた。足立のこの発言は同日の産経新聞の記事の受け売りに過ぎないのだが。
これらの発言に対して岸田文雄首相は「政府として議論は考えていない」と答えてかわしたのだが、自民党や維新の会など右派の論者は「3原則」の「持たず、作らず、持ち込ませず」の「持ち込ませず」の「見直し」と、「米国との核共有」にむけ、「日米同盟の抑止力に実効性を持たせる点での議論の余地がある」(高市早苗政調会長)などという議論を展開している。
唯一の戦争被爆国の日本は「非核3原則」という国是を確立している国だ。
1967年12月、国会での論戦の中で、当時の佐藤栄作首相が、日本は「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」という非核3原則を主張すると発言していらい、非核3原則は、日本の「国是」とされてきた。
安倍晋三をはじめ、右派の論客は執拗に「非核3原則の破壊」の動きを繰り返してきたが、プーチンのウクライナ侵攻という惨事を契機にまたもや議論をぶり返し始めた。人びとの不幸をネタにして非核3原則を破壊しようとするこれらの策動を許してはならない。
 維新の会の役割は危険だ。もはやこの連中は自民党の改憲などの政治反動の動きの「補完勢力」ではなく、先導者になっている。 (T)