人民新報 ・ 第1409号<統合502号(2022年5月15日)
目次
● ウクライナ戦争・早期停戦を実現させよう
惨事便乗型の岸田改憲政治に反撃を
5・3憲法集会特別アピール
● 第93回日比谷メーデー
労働者は大きく団結して、平和と民主主義、雇用と権利を守り抜こう
● 経済安全保障推進法の危険性
● 国交正常化以来最大の危機にある日中関係
日中4基本文書に基づく平和友好関係の再構築を!
● せんりゅう
● 複眼単眼 / 日中関係の井戸を掘った人々が懐かしい
ウクライナ戦争・早期停戦を実現させよう
惨事便乗型の岸田改憲政治に反撃を
拡大するウクライナ戦争
ウクライナ戦争は続いている。ロシアでは5月9日に行われた対ファシスト戦勝利記念集会の演説でプーチン大統領は、戦闘の継続を宣言した。一方で、ゼレンスキー政権の背後にあるNATOとりわけアメリカ・バイデン大統領は、プーチン政権の打倒に向けて多額の軍事資金兵器と軍事情報の提供をつづけている。こうして、ウクライナ戦争は長期化、地域外への拡大、さらには第三次世界大戦へのエスカレーションの様相を濃くしている。米ロ両国は依然として戦争の一時的な停止さえも考えずにいる。その中で、ウクライナの市民、ウクライナ・ロシア両国の兵士の死傷者は増大していくばかりだ。ウクライナの経済的社会的基盤は徹底的に破壊され続けている。そのうえに大規模な経済制裁は世界的なエネルギー・食料不足をもたらしている。その被害は貧困国の人民、そして先進国といわれる国ぐにでも貧困層を直撃して、各地での騒乱・暴動続発の背景となっている。
仲裁国の一つと目されているトルコは「いくつかのNATO諸国が戦争の長期化を望んでいる」と暗に米英などを批判している。戦争の継続を望んでいるのは、ロシアだけでなく、米国などの軍需産業などとその政府支配層もである。戦争は当事者すべてが満足するような形では停戦すらできない。それぞれが不満足不承不承にテーブルに着くことになるが、犠牲者の増加、エスカレーションを防ぐためには、なにより早期の停戦交渉が求められているのである。世界国ぐにもいまのような事態をそのままにしていくわけにはいかない。
日本のマスコミは、全世界が欧米日と同様に反ロシア経済制裁を行っているような報道を繰り返しているがこれも「プロパンガンダ」である。例えば、3月2日の国連総会緊急特別会合でのロシア非難決議は、欧米や日本など合わせて141か国が賛成したが、ロシアのほかベラルーシや北朝鮮など合わせて5か国が反対したばかりでなく、中国やインド、南アフリカなど合わせて35か国は棄権という票決となった。アメリカ、オーストラリア、日本とともにクアッドを構成するインドは親ロ的対応を転換させていない。アジアで対ロ制裁を行っているのはオーストラリア、日本、韓国それに台湾だけである。アメリカや西欧諸国の方針は貫徹されていないのである。
今年の11月中旬には、インドネシアのバリ島でアメリカや中国、ロシアを含め20前後の国や地域が参加する首脳会議(G20)が開かれる。米国などはこれからロシアを排除しようと各国に圧力をかけている。しかし5月4日には、インドネシア、タイ、カンボジアの3か国の共同声明が出された。3国はそれぞれG20、APEC、ASEANの今年の議長国を務めている。声明では「地域的、また世界的な平和と安定を維持するためにわれわれはすべての参加国や利害関係者と共に働き、協力の精神を確かなものにする決意だ」としてロシアを含むすべての参加国や利害関係者を招くとした。バイデンの思惑は拒否されたのだ。
今後、フィリピンやオーストラリアの選挙などもあり、欧米日の思う通りの対ロ政策が実現できるかわからない情勢であり、ASEAN三国の動きもウクライナ戦争停戦に向けた好ましい動きを促進するだろう。ロシア軍の撤退、関係諸国の安全保障、早期の停戦を実現させよう。
バイデンの先兵となる岸田
ASEANなどの動きとは全く逆の動きをしているのが岸田政権である。岸田は、バイデンの意を受けて、インド、カンボジア、つづいてインドネシア、ベトナム、タイ、イタリア、バチカン、イギリスを歴訪した。最終訪問地のイギリスのジョンソン首相とのワーキングランチでは、「国際情勢」で、「@両首脳は、ロシアのウクライナ侵略は国際秩序全体の根幹を揺るがす事態であるとの認識の下、G7始め国際社会が結束・連携して強力な対露制裁及びウクライナ支援を続けていくことを改めて確認しました。岸田総理大臣から、今般のインドネシア、ベトナム及びタイ訪問などアジア諸国へのアウトリーチに積極的に取り組んでいることを説明し、両首脳は、アジア・アフリカ等への働きかけが重要であることにつき一致しました。A両首脳はアジア情勢についても意見交換し、東シナ海及び南シナ海における力を背景とした一方的な現状変更の試みに加え、急速かつ不透明な形での軍事力の強化及び地域における軍事活動の活発化への強い懸念を共有し、一方的な現状変更の試みや経済的威圧に対し一致して毅然として対応していくことを確認しました。また、4日の弾道ミサイル射を始めとする核・ミサイル問題や拉致問題を含む北朝鮮への対応において引き続き連携していくことを改めて確認」と発表された。対ロ政策で、バイデンの先兵として立ち回り、また東アジアにおいての緊張を激化させる役割をはたす役回りの岸田だったが、訪問したアジア諸国では予期した反応を引き出すことできなかった。バイデンは、欧州でのウクライナ戦争の継続・激化とNATOの拡大、それと連動させて、アジアでは日本、保守政権が誕生した韓国との軍事連携を強めるとともに、それをNATOとつなげ、アメリカ覇権の維持を目指す最前線国=同盟国として危険な役割を果たさせようとしている。
惨事便乗の岸田型政治
ウクライナ戦争とその影響は世界的に悲惨な事態をもたらした。だが、こうした「惨事に便乗」して利益を手に入れようとする勢力がうごめいている。岸田政権はその典型だ。岸田は、安倍・菅政治を引き継ぎ、いっそう悪辣化させている。5月3日、岸田は改憲を求める集会に自民党総裁としてビデオメッセージを寄せた。そこでは、新型コロナウイルス禍やウクライナ問題を口実に緊急時における政府の権限強化などの緊急事態条項の創設、9条への自衛隊明記の必要性について述べ、自民党の4項目の改憲案について早期の実現が求められると強調した。それとともに、自民党として全国各地で集会をひらくなど「きめ細やかに」改憲機運をこれまで以上に高めていくとした。
岸田政権の戦争する国づくりのピッチは加速している。岸田政権は、今年中に、国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画を改定する。岸田は今年1月の通常国会での所信表明演説で、「ミサイルの問題や、一方的な現状変更の試みの深刻化、軍事バランスの急速な変化、宇宙、サイバーといった新しい領域や経済安全保障上の課題。これらの現実から目を背けることなく、政府一丸となって、我が国の領土、領海、領空、そして、国民の生命と財産を守り抜いていきます。このため、概ね一年をかけて、新たな国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画を策定します。これらのプロセスを通じ、いわゆる『敵基地攻撃能力』を含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討します。先月成立した補正予算と来年度予算を含め、スピード感を持って防衛力を抜本的に強化します」などと述べた。防衛費の増大、陸海空のみならず宇宙、サイバーの領域までもの軍事化、また経済安保などを強力に進めると宣言したのだ。治安体制の強化については、特定秘密保護法・共謀罪体制を強めて、さらに4月1日には、警察庁にサイバー警察局を設け、政府機関や企業を狙った重大なサイバー攻撃などを捜査する「サイバー特別捜査隊」を発足させた。国の機関である警察庁が直接捜査にあたることは初めてのことである。そして、経済安保促進法を急いで成立させるなど軍事・政治にくわえて経済分野をも安全保障に組み込んだ。 4月26日に公表された自民党安全保障調査会「新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言〜より深刻化する国際情勢下におけるわが国及び国際社会の平和と安全を確保するための防衛力の抜本的強化の実現に向けて〜」について、自民党ホームページは次のように報じた―提言では、わが国周辺国が配備を進める弾道ミサイルの技術進化により「迎撃のみではわが国を防衛しきれない恐れがある」と指摘。専守防衛の考え方の下、弾道ミサイル攻撃を含むわが国への武力攻撃に対する反撃能力の保有を政府に求めています。また、わが国の防衛関係費について、中国の軍備増強やロシアによるウクライナ侵略等を踏まえ、北大西洋条約機構(NATO)諸国における防衛予算の「対国内総生産(GDP)比2%以上」とする目標も念頭に、「5年以内に必要な予算水準の達成を目指すこと」と明記しました。この他、技術革新に伴う自衛隊の能力強化や、防衛装備移転三原則の制度見直しなど、多岐にわたる項目が盛り込まれています。―としている。これが自民党の方針であり、急速に軍事大国化をはかろうとするきわめて危険な動きである。
憲法集会で改憲反対の決意
急進展する日本の政治反動化を断固として阻止しなければならない。いまこそ主権在民、基本的人権の尊重、平和主義という憲法三原則が活かされなければならない。
憲法施行から75年を迎えた5月3日、全国各地で憲法を守り生かそうと様々な集会などの行動が行われた。
東京では、「改憲発議許さない!守ろう平和といのちとくらし
2022 憲法大集会」(主催―平和といのちと人権を!5・3憲法集会実行委員会)が、有明防災公園で開かれ、1万5000人が参加した。共催団体は、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会、安倍9条改憲NO!全国市民アクション、戦争をさせない1000人委員会、憲法9条を壊すな!実行委員会、戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター、九条の会で、本集会開会の前には、「自由に話そうトークイベント」「女たちよつながろう」「こども憲法ひろば」「ライブステージ」などが催された。
本集会では主催者を代表して、集会実行委の藤本泰成さんがあいさつ。ロシア武力による威嚇・行使は国連憲章違反だ。即時撤退の声をあげよう。
実行委の菱山南帆子さんが「ウクライナ特別決議」(別掲)を提案し、参加者の拍手で確認された。
国会からは、立憲民主党の奥野総一郎国対委員長代理(衆議院議員)、共産党の志位和夫委員長(衆議院議員)、社民党の福島瑞穂党首(参議院議員)があいさつし、それぞれ憲法改悪に反対し、夏の参院選では協力して、改憲に反対する議員の議席増を闘い取ろうと述べた。
つづいて課題別スピーチ。 @憲法審査会=改憲問題対策法律家6団体連絡会事務局長の大江京子さん―岸田首相は、これまでの専守防衛の原理さえ捨て去り、軍事同盟や軍拡にむかおうとしている。二度と戦争を起こさせないと定めた憲法の改正を阻止しよう。
Aジェンダー=小川たまかさん(日本のフリーライター、フェミニスト)―女性に対する様々な差別が横行している現実がある。憲法14条は「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係に
おいて、差別されない」と規定している。女性のみなさんは前に出てしゃべり、私たちの声を響かせましょう。
B沖縄・日米地位協定=琉球大学名誉教授の高嶋伸欣さん―今年は沖縄の本土復帰50年だ。沖縄の人々にとって、本土復帰は憲法の適用という意味だった。だが米軍基地の状況を見れば、米軍は日米地域協定によっていまも治外法権と同じような状況にある。
C貧困・労働問題=ジャーナリスト・和光大学名誉教授の竹信三恵子さん―かつての日本は10年おきに戦争をして軍事費が国家予算の大部分を占めた。憲法9条は戦争しないで、社会保障などに予算を使うということでもある。
市民連合(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)からの連帯あいさつは、上智大学国際教養学部教授の中野晃一さん―自民党やマスコミなどは改憲の世論が高まってきているなどといっているが、世論調査での一番優先すべき政治課題はとの問いでは、景気、福祉、教育・子育てなどがほとんどで、憲法は2%程度でしかない。多くの人は改憲を望んでいない。軍事だけの抑止論が横行しているが軍拡競争を引き起こすだけだ。なにより安心供与が大事だ。そのためにも夏の参院選で闘おう。
最後に、実行委員会の米山淳子さんが行動提起―憲法の闘いは国会とともに草の根からの闘いだ。「憲法改悪を許さない全国署名」を大きく広げ、そして、7月参院選では市民と野党の共闘で闘おう。
集会を終えて、豊洲コースと台場コースに分かれて、パレードを行った。
岸田の前には難問が山積
ウクライナ戦争を契機に米欧日はこれを好機として、アメリカ中心のG7先進国の支配力・影響力を強めようとしている。岸田政権は日米同盟強化・軍事大国化の政治を推し進めようとしている。だがその思惑の前にはいくつもの困難が立ちはだかっている。新型コロナはまた拡大し始めた。これは世界的な趨勢でもある。なにより多くの人びとの生活苦の深刻化がある。社会的格差の拡大・貧困化、少子高齢社会の現実、科学技術の停滞など解決困難な諸課題の山積が指摘されてきた。これにウクライナ戦争と経済制裁による物価上昇、インフレの打撃が襲いかかってくる。すでに日本の国家財政赤字は世界の最先端を行く状況であるのに、軍事費をいまの倍にする。長期にわたる経済低迷はつづき国の税収はむつかしい。社会保障費・教育費など生活に密着する予算にしわ寄せが来るのは必至だ。法人税は減税だが大衆増税はあるだろう。岸田政権の改憲・軍事大国化路線は人びとの生活破壊の政策である。反戦平和・改憲阻止の闘いと人びとの権利と生活を守る闘いは表裏一体のものだ。
市民と野党の共闘で参院選勝利!
総がかり行動で岸田政権を打倒しよう!
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集会特別アピール
ロシアがウクライナに侵攻してから間もなく2カ月半になる。
ウクライナでは500万におよぶひとびとが難民となって国をのがれ、それに倍する人びとが国内で戦火に追われて住む家を失って難民となり、数えきれない人々が殺され傷ついている。学校や病院、民間アパート、鉄道駅など非軍事の施設まで爆撃され、無差別に砲撃されている。原子力発電所も制圧された。ウクライナの肥沃で広大な畑や野原や林も焼け野原になった。これらはすべて「戦争」のなせる業だ。
いま人々の「戦争やめろ」の声が、ウクライナから、プーチンのロシアから、東西ヨーロッパから、アジアから、アフリカから、中南米から、全世界から地鳴りのように聞こえてくる。「戦争反対」「侵略やめろ」「直ちに停戦!」の声が世界各地から上がっている。
爆弾と砲撃の轟音(ごうおん)の中で、日に日に高まるこの声こそが希望だ。平和を願う全世界の人々の切実な声こそが希望だ。この声は非道な戦争を進めるものの手をやがて縛りあげ、戦争を止めるだろう。
この度のロシアのウクライナ侵攻は2度にわたる世界大戦を経て人類が獲得した国連憲章の「国際紛争を平和的に解決する原則」に反し、「武力による威嚇または武力の行使を禁止」する国連憲章第1章2条4項に明白に反するものだ。
いかなる理由があれ、ロシアの今回の蛮行は許されない。ロシアはただちに軍事行動を停止し、撤退しなければならない。
しかし、わたしたちはこの侵略戦争のさなかに、日本で惨事に便乗するがごとく、まことしやかに語られている暴論の数々を見逃すことはできない。「憲法9条は役に立たない」「日本も非核3原則を放棄して米国と核兵器を共有すべきだ」「軍事費を倍加しよう」「台湾有事に備えよう」「敵基地攻撃能力をもとう」「基地だけではなく敵の中枢も攻撃しよう」などなどの言説だ。
憲法9条にもとづいた外交努力で近隣諸国との友好共存関係の積み上げを怠り、列強との軍事同盟や軍事協力を強化し、軍事力を強化して緊張を煽り立て、いたずらに他国を誹謗し、戦争の危機をあおり立てるこの道は、日本を際限のない軍拡競争にひきづりこみ、やがて壊滅的な戦争の勃発を招きかねないものだ。この道は日本がかつて歩んだ道だ。これこそがいまウクライナで起きている事態の教訓ではないか。
本日、日本国憲法施行75周年にあたる5月3日、東京都防災公園に集まった私たち市民は、集会の総意において、平和を希求する全世界の民衆に連帯し、なかんずくウクライナとロシアの民衆に連帯して、ロシアの侵略戦争を直ちにやめよ、人を殺すな・即時停戦実現の声をあげる。
そしてこれに便乗した日本政府の一切の軍拡策動に反対し、憲法9条を掲げ世界の市民とともに平和をつくり出す闘いに全力を挙げてとりくむことを、宣言する。
2022年5月3日
改憲発議許さない!守ろう 平和といのちとくらし 2022年憲法大集会
第93回日比谷メーデー
労働者は大きく団結して、平和と民主主義、雇用と権利を守り抜こう
5月1日、第93回日比谷メーデーが東京・日比谷野外音楽堂で開かれた。
共同行動へ共通スローガン
全労協を中心とする第93回日比谷メーデー実行委員会は、全労連などでつくる第93回中央メーデー実行員会と、労働組合の共同行動を強めていく観点から労働者の統一メーデー実現に向けた取り組みとして、幹部によるエール交換を行うこと、そして「共通スローガン」を確認した。
「共通スローガン」は、@ コロナ解雇を許すな!雇用の継続と休業・生活補償の充実を!
A ジェンダー平等、なくせ貧困・格差・差別、8時間働けば暮らせる社会を!
B 福島原発事故を忘れない!原発ゼロ社会・復興の実現を!核兵器廃絶!
C 反戦平和!9条改憲反対!辺野古新基地建設阻止!岸田政権は退陣を!。
また日比谷メーデーは、「新型コロナウィルス感染症をロ実としたベアゼロ・低額回答、首切り・解雇、契約打ち切り、雇い止め、内定取り消しを許さない!命と健康、生活と権利を守るため、すべての労働者に休業補償を!企業は内部留保を今こそ吐き出せ!」など41本のサブスローガンを掲げた。
団結して闘おう
日比谷メーデーは、10時に開会。
主催者を代表して、鎌田博一・国労東京地本委員長があいさつ―ロシア軍によるウクライナ侵攻に反対し、戦闘行為の即時停止をもとめ、対話での外交を実現させることが急務だ。コロナ・ウイルス感染症は終息のきざしをみせない。岸田政権は、時間や場所に捉われない多様で柔軟な働き方など労働者には大きな犠牲がかけられている。首切り・解雇、契約打ち切り、雇い止め、内定取り消し、職業差別と人権侵害を許さず、命と健康、生活と権利を守り、すべての労働者と中小企業への休業補償と生活保障を実現しなければならない。要求実現に向けストライキで大幅賃上げ、非正規労働者の均等待遇、最低賃金の引き上げ、労働法制の大改悪に反対して闘おう。未組織労働者・非正規労働者・外国人労働者の低賃金と労働条件全般の改善、技能実習生をはじめ移住労働者の権利確立のために闘おう。岸田首相の危機感煽り、軍事費増大、貧困と格差社会、憲法改悪、原発推進政策に反対し、平和と民主主義を掲げ、ともに闘っていこう。
連帯挨拶は、都労連の西川晋司委員長と第93回中央メーデー実行委員会を代表して全労連の黒澤幸一事務局長が行った。
来賓挨拶は、福島みずほ参議院議員(社民党党首)と坂本雅彦東京都産業労働局長が行った。
韓国民主労総からのメッセージが読み上げられた。
決意表明・訴えでは、育休取得で報復解雇の男性育休ハラスメントで三菱UFJモルガンスタンレー証券と闘うグレン・ウッドさん(全国一般労働組合東京南部)が、長男の手を引いて登壇―解雇からの6年間、会社に撤回を求める裁判を闘っている。育休制度がなぜ使えないのか。子どもが出来たら仕事が続けられない社会はおかしい。育休を求めたら解雇される社会はおかしい。
つづいて、全労協全国一般東京労組東急分会、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックからの発言がつづいた。
反戦反改憲などをアピール
集会アピールが参加者の拍手で採択された。集会アピールは政治的課題については、次のように呼びかけている。―岸田首相は、朝鮮半島と東アジアの危機感を煽り、平和国家としての歩みを進め戦争へと向かう動きを強め、生活保護や社会保障費を切り捨てて軍事費を増大させ、辺野古新基地建設や南西諸島への自衛隊基地建設、ステルス戦闘機の大量購入、護衛艦の「空母」化など、憲法改悪を射程に「戦争をする」国へと突き進んでいます。さらには「脱炭素社会」の実現を掲げる一方で、原発事故からの復興すら見通せない中で原発の再稼働を明言し、汚染水の海洋投棄や原発事故被災者・避難住民の人権を無視した政策を進めています。原発の押し付けと沖縄への基地押し付けを許さず、民意を踏みにじり民主主義、地方自治も破壊しようとする岸田政権に抗して、平和と人権、民主主義を守る闘いが、今私たちに問われています。ロシア軍によるウクライナ侵攻に反対するとともに戦闘行為の即時停止と核使用を許さず、武力による解決ではなく対話での外交を実現させなければなりません。ミャンマーや香港の民主化運動圧殺など、圧政に抗して闘う世界の人々と国際連帯を強化して、働く者の団結で生活と権利、平和と民主主義を守る闘いに決起していきます。ウクライナ問題を口実に台頭する改憲論、核共有論を許してはなりません。そして、人間としての生きる権利を確立し、平和で民主的な社会を創るために、岸田政権を打倒しましょう。―
右翼の集会妨害を許さず
集会を終わって、デモ行進に出発準備。ところが、日比谷公園霞門前に数台の右翼街宣車ががなり立て妨害、抗議した実行委員抗議に行くと殴る蹴るの暴行を行った。メーデー参加者はこれに断固抗議した。実行委員会は警察の対処を強く批判した。
デモの隊列は、新橋土橋まで行進した。
経済安全保障推進法の危険性
経済安全保障推進法案(経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案)が衆院を通過し、参院で審議され、自民・公明両党と野党の立憲民主党や国民民主党、日本維新の会などの賛成多数で可決成立した。
だが、この法律はきわめて危険であり問題点が多いものである。
大川原化工機事件
法律ができる前から経済安保がらみの冤罪事件が発生している。2020年3月、化学機械メーカー「大川原化工機」(本社・横浜市)の社長ら3人(大川原正明社長、島田順司取締役、相嶋静夫顧問)が、経済産業相に許可申請が必要な「スプレードライヤー」と呼ばれる噴霧乾燥機を無許可で中国などに輸出したとして警視庁公安部に逮捕された。
3人は密室に監禁され、自供を強要され、「生物兵器製造に転用可能な噴霧乾燥機を不正に輸出」したとして外為法違反罪などで起訴された。相嶋さんは癌だった。明らかな体調不良があり輸血処置を受け、弁護団は適切な医療処置を受けるために保釈請求をしたが、証拠隠滅の恐れがあるといって却下された。そして、保釈もされずに2021年2月、刑事被告人のまま亡くなった。ところか、この事件は21年7月、初公判が予定された日のわずか4日前になって、東京地検は突然に「起訴取り消し」を決定した。 また、その後、東京地裁が大川社長らによる刑事補償請求で、長期の勾留に対し計1130万円の支払いを決定している。
経済安全保障のためとして根拠もなく強引な捜査・起訴を行った公安警察・検察の暴走は明らかである。 経済安保促進法の制定によって今後も経済安保がらみの事件は頻発も予想されている。
経済安保推進法案とは
この法律は、「国際情勢の複雑化、社会経済構造の変化等に伴い、安全保障を確保するためには、経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為を未然に防止する重要性が増大していることに鑑み、安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進するため、基本方針を策定するとともに、安全保障の確保に関する経済施策として、所要の制度を創設する」とするもので、サプライチェーン(供給網)の強化、基盤インフラの強化、官民技術協力の推進、特許非公開制度の導入が柱で、施行期日は公布後6月以内〜2年以内に段階的に施行されるとなっている。
事業者への監視・監督
まず、「特定重要物資の安定供給確保」では、「国民の生存や、国民生活・経済に甚大な影響のある物資の安定供給の確保を図ることは重要。重要な物資の安定供給確保を講じる制度を整備する必要。政府は安定供給を確保すべき物資を指定。所管大臣は民間事業者が策定した供給確保のための計画を認定し支援措置を実施。民間への支援では対応が難しい場合には特別の対策を措置」とする。特定重要物資とは「国民の生存に必要不可欠又は広く国民生活・経済活動が依拠している重要な物資で、当該物資又はその原材料等を外部に過度に依存し、又は依存するおそれがある場合において、外部の行為により国家及び国民の安全を損なう事態を未然に防止するため、安定供給の確保を図ることが特に必要と認められる物資」とし、「所管大臣は各物資の生産・輸入・販売の事業を行う者に対し、その状況について調査を実施可」として、生産・輸入・販売の事業に対する政府の監視・監督・管理を打ち出している。
また「基幹インフラ役務の安定的な提供」では、「基幹インフラ役務(電気・ガス・水道等)の安定的な提供の確保は安全保障上重要。基幹インフラの重要設備は役務の安定的な提供を妨害する行為の手段として使用されるおそれあり。基幹インフラの重要設備が我が国の外部から行われる役務の安定的な提供を妨害する行為の手段として使用されることを防止するため、重要設備の導入・維持管理等の委託を事前に審査」ある。すべての産業への国家管理をめざすものとなっており、まさに戦前・戦中の国家総動員体制づくりそのものであるといえよう。
官民共同の研究体制
経済安保のなかでも最大の狙いは軍事にも使える研究の推進だ(先端的な重要技術の開発支援に関する制度)。
政府は、特定重要技術の研究開発の促進及びその成果の適切な活用に関する基本指針を策定し、この指針に基づき、特定重要技術の研究開発等に対し、必要な情報提供・資金支援等を実施する。特定重要技術とは、「先端的な技術のうち、研究開発情報の外部からの不当な利用や、当該技術により外部から行われる妨害等により、国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれがあるもの(具体的には、宇宙・海洋・量子・AI等の分野における先端的な重要技術を想定)」される。そのための官民パートナーシップ(協議会)がつくられ、構成員は「研究開発大臣、国の関係行政機関の長、研究代表者・従事者、シンクタンク等」で、「お互いの了解の下で共有される機微な情報について、協議会構成員に対し、適切な情報管理と国家公務員と同等の守秘義務を求める。守秘義務の対象となる情報は、政府のこれまでの研究成果、サイバーセキュリティの脆弱性情報等を想定。研究成果は公開が基本。研究者を含む協議会が、研究開発の進展や技術の特性、政府インフラ、テロ・サイバー攻撃対策、安全保障等での利用において支障のある技術に関し、研究開発の促進方策や個々の技術の成果の取扱等を決定」する。
経済安全保障とは、外交・防衛政策と並んで経済施策も国家安全保障の一つの柱に位置付けるもとなる。経済分野をも「戦争する国づくり」体制構築の一環とするもので、まさに戦前・戦中の「国家総動員法」のようなものとなっている。今後、とてつもない軍・産・学の複合体がつくられる可能性は大きい。
国交正常化以来最大の危機にある日中関係
日中4基本文書に基づく平和友好関係の再構築を!
台湾介入を強める岸田政権
今年は、日中両国の国交正常化から50年の記念すべき年である。しかし日本政府の側にはまったく祝賀モードはない。その逆である。1945年の日本の侵略戦争の敗戦から1972年の国交正常化までの間は、戦争終結の処理は行われず、さらに東西冷戦の激化なかでの敵対的な厳しい両国関係であった。国交正常化とそれ以降の日中関係は、日中共同声明(1972年)、日中平和友好条約(1978年)、平和と発展のための友好協力パートナーシップの構築に関する日中共同宣言(1998年)、「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明(2008年)の4文書を基礎に築かれてきた。しかし、中国の台頭を阻止しようとする米国は米中対立を激化させ、日米同盟の下、日本政府は、台湾問題への積極的な介入、軍事大国化を強行しようとしている。 いまの日中関係は、国交回復以来の平和友好関係が根底的に破壊されようとしている。東アジアの平和は危機に直面している。日中間の関係改善は急務である。
日中対立を促すアメリカ
4月14日、衆議院第一議員会館大会議室で、「日中国交回復50周年記念緊急集会」が開かれた。
特別講演でははじめに、纐纈厚・山口大学名誉教授が「日中対立を促すアメリカの軍事戦略を問う〜米本土の盾にされる日本の行方〜」と題して講演した。 中国脅威論が蔓延しているが、そのまえにアメリカの軍事戦略がどう動いているのかを知ることが必要だ。アメリカ国防総省や国務省、様々な軍事関係出版物、日本の軍事ジャーナリストの論稿など豊富に存在しており、材料には事欠かない。 そこから見えることは、日本を含めた東アジア地域及び地域内諸国家の安全保障問題を考えるうえで、極めて攻勢的な軍事戦略を採用するアメリカが、とり分け同盟国日本を戦略実行の鍵と見なし、これまで以上に日本の加担を強いる作戦発動を念頭に据えていることだ。日本では岸田政権が年内にも「国家安全保障戦略」、「防衛計画の大綱」、「中期防衛力整備計画」の三文書を改定する予定である。そこでは、軍事色を一段と強めた日本の安全保障政策が、文字通り軍事に突出した内容に塗り替えられようとしている。アメリカは日本の政治プロセス如何に関係なく日本の軍事負担を強いている現実からして、アメリカとの関係の見直しなくして脱軍事への舵切りは困難となるばかりであり、その意味で今年は、大きな曲がり角に差し掛かった年となることが予測され、独立国家であるはずの日本が、こと外交防衛の領域においては、真の独立を確保していないのではないか、という実態をあらためて問題にしたい。
日本国内で強まる一方の中国脅威論の効果は絶大である。自衛隊の装備強化を担保する防衛費総額への反対論を封印する勢いだ。自民党内では、最近になって防衛費をGDPの2%に引きあげるべきだ、とする声が強まりつつある。だが、その声の発信元はワシントンだ。自民党はじめとする保守系議員だけでなく、立憲民主党など野党においても、中国への厳しい眼差しが目立つ。防衛費増額への議論が活発となることは必至で、2021年度の防衛費は5兆3422億円、2022年は5兆4005億円と膨らむ。それに補正予算の7738億円が加算される。
アメリカでは軍事費増額の動きが止まらない。2021年12月に国防権限法がアメリカ連邦議会で通過し、2022年会計年度のアメリカの国防予算は7777億ドル(約88兆円)に達すると報じられている。この他にも中国を念頭に据えた「太平洋抑止イニシアチブ」だけで71億ドルの予算を計上した。ロシア対策予算である「欧州抑止イニシアチブ」の予算の40億ドルの二倍近い。だが今回のウクライナの問題で対ロシア軍事予算を増やさざるを得なくなっている。
一方、中国の国防予算は、中国国務院が発表した2021年には1兆3553億元(日本円で約22兆6000億円)である。
日本の防衛予算が現行の二倍相当の10兆円以上となると、米中に次いで世界第三位の軍事費大国となる。
防衛費の拡大を目論む政治家たち、これを支持する人たちは、防衛費拡大の理由に中国の軍事大国化の脅威を挙げる。所謂タカ派と目される自民党議員団だけでなく、世論にもメディアにも、さらには青少年たちの心情にも、今この中国脅威論が浸透している。立憲民主党も、外交防衛政策の基軸として、日米同盟の堅持による中国脅威への備えを説く。もう一つの保守政党とも言うべき日本維新の会が議席を多く伸ばして、元来タカ派の国防論を説いてきた勢力が、「野党」第二党の位置につけたこともあって、改憲への動きが加進される勢いだ。そこでも中国脅威論と改憲とが、ワンセットとなって俎上に挙げられることになろう。
大方のメディアは、異様と思われるほど中国に敵対的だ。日本のメディアや世論が、中国を万国共通の脅威とみなすステロタイプに嵌まり込んでいる。中国では共産党一党支配による強権政治が強行されていて、自由も人権も無い国だとするというた固定観念に縛られてしまっているかのようである。中国との対話を設定しようとする知恵も湧かなくなってしまう。日本政府の現在の姿勢も、そうした状況下にある。
中国とすれば、日中共同声明において、日本も「一つの中国」の立場を支持し、日中国交回復したのではないか、ということだ。何時、何をもって日本が共同声明の約束を破ったのか、との問いを発し続けている。言わば、予想外の日本の変節ぶりに、日本政府は正面から答えていない。中国の対日不信が増大する一因である。
日本の戦前史を辿ってみても、この手の脅威論のふりまきは常に用意されていた。日清戦争の前には、当時の清国を「眠れる獅子」と呼び、軍艦建造を中心に軍拡の絶好の口実とされた。日清戦争に勝利するや、今度はロシア脅威論が持ち出された。その後、脅威対象国となったのは、アメリカとイギリスであった。「鬼畜米英」のスローガンは両国を脅威とし、反米・反英こそ、日本の生きる進だと宣伝されたのである。
戦後の日本も戦前と同様に脅威設定を止めていない。中国、ソ連、北朝鮮がそれだが、眼の前にあるという脅威は、実体としての脅威と作為された脅威とに、分けてみておくべきだ。数多のミサイルや核兵器を隣国が保有しているとしても、直ちに無条件で脅威と算定することは、あまりにも作為的な脅威論となる。日本自衛隊が保有する装備も相手方にとって脅威となろう。問題は、相手方の武装を脅威と算定するか、しないかはひとえに両国関係の実際にある。世界で群を抜く軍事大国アメリカの軍装備に強烈な脅威を感じる日本人は多くないはずである。だが、私は大きな脅威だと思っているし、そう思う日本人もまた基地周辺住民に限らず、少なくないことも確かなことだ。
政策として設定された脅威というものがある。軍事戦略は脅威やライバルの存在を前提にして案出される。それが無ければ攻勢的な軍事戦略が存在する意味がないと考えられている。だから、軍事戦略が案出されるためには、脅威やライバルの設定が不可欠なのである。その意味で現在、恰好の脅威やライバルとして対象とされるのが中国である。
2020年月に公表された「アーミテージ・ナイ報告」の第五次報告の副題は「地球規模での対等同盟」とある。アメリカ経済力には陰りが見え始めてから久しい。世界での覇権を維持するためには軍事力に頼るしかないが、軍事力を支える経済力が相対的に落ちてきている現在では、同盟国に軍事力の一端を担わせることで、何とか辻棲を合わせ、従来と変わりのなく国際社会で圧倒的な力を示していきたい。それが同盟国分担体制だ。ここで言う同盟国とは日本と韓国、オーストラリアだが、中国の隣国である日本と韓国への期待が増している。そうした同盟国分担体制に答えるのは日本の2015年に強行成立させられた集団的自衛権行使容認と新安保法制だ。日本はそうしたアメリカの軍事戦略に積極的に便乗することで、中国と対峙する方向に大きく舵を切ってしまった。2021年4月の日米首脳会談における「共同声明」には、台湾問題が明記された。日米両国が台湾問題に全面的にコミットしていくことを確認したのだ。これは「一つの中国」の立場を繰り返し主張する中国政府の大方針を、事実上正面から否定する構えをとることであった。また、南西諸島に配備展開中の自衛隊基地に関連して、「日米の施設の共同使用を増加」すると明記した。これは既述した通り、自衛隊基地が同時にアメリカ軍基地にも使用され、その基地運用の主導権がアメリカ軍に取って替わられることを意味する。米中戦争となった場合、「太平洋の盾」として日本列島がアメリカ本土防衛に利用されようとしている。つまり、南西諸島を含め日本列島に配備された自衛隊基地に中国から飛来するミサイルを「吸収」させるとの議論が、アメリカで実際に行われていることを忘れてはならない。一番に割を食うのは、中国のミサイル攻撃で甚大な被害を受けることになる沖縄・南西諸島住民をはじめ、日本国民ということになる。イメージで言えば、武蔵坊弁慶(日本)が牛若丸(アメリカ)を守るために満身に矢(ミサイル)を受け止めるようなものである。こうしたシナリオを実現するために、アメリカの後押しを受けて強行されるのが自衛隊の南西諸島への展開である。アメリカ本土防衛のために日本が盾にされようとしている現実を日本政府と国民は、如何に理解しているのだろうか。
二度と戦争を起こさない
つづいて、羽場久美子(青山学院大学名誉教授)が「中国は敵ではない。東アジアは平和と繁栄の基礎。東アジアで二度と戦争を起こさない」と題して講演した。いま、100年に一度の転換の時代がおこっている。欧米支配の200年の世紀から、アジアの時代へという流れだ。中国、インド、ASEANの成長そして、一帯一路やロシアのユーラシア経済連合などがひろがり、アメリカはそれを脅威として阻もうとしているのが現在の国際的な構図だ。 もう一方で、グロバリーゼーションと格差の拡大、移民・難民、ナショナリズムの成長などでも緊張が高まっている。
中産層の没落、特に先進国経済の頭打ちが進行しているが、それは皮肉なことに、途上国の急成長を生んでいる。すでに中国は、日本のGDPを2010年に追い越し、2014年にはる国である価格で買える商品が他国ならいくらで買えるかを示す交換レートであるPPPでみるとアメリカを追い越した。世界銀行やIMFは、ドルベースでも中国のGDPは、すでに日本の3倍となったが、2030年にはアメリカをも超えて世界一になると観ている。もちろんこれは国としてのGDP比のことで一人当たりのものではない。 こうしたなかでのバイデン政権の安全保障戦略は、アジアでアジア人同士を戦わせる戦略すなわち、アメリカは戦わないで代理戦争をやらせるといことだ。
いまウクライナ危機に乗じた危険な動きが行われている。しかし、まずその背景を知ること、そして地域の軍事化を許さないことが求められている。戦いを止めさせるには、メディアと、平和を願う知識人、市民の連携が不可欠だ。だが、いまは逆のことが起こっている。それでも、なんとかして対話により戦争を止めるために、対外的には、対立国との地域対話を調整することが必要だ。
今年は、日中国交回復50年、沖縄返還50年の年だ。中国、ロシア、北朝鮮3カ国に対し軍事力で対応するのは極めて危険だ。本来なら日本は、中国、インド、ASEANなど、アジア諸国と結び、ウクライナ紛争の調停に積極的にとりくみつつ、アジアの経済発展を支えリードすべきだろう。なにより、
市民の力が必要だ。広範な国民の平和の願いを結集し、夏の参議院議員選挙で改憲派の多数議席を実現させず、憲法改正国民投票を止めること、そしてアジアでの代理戦争を止めよう。
せんりゅう
「新しい資本主義」ますます分断ですか
必要最小限とは月給のこと?
時代はかわる個から社会の自覚へと
戦争は人類の癌クスリがほしい
反戦の声世界に響けSprechchor
地蔵さまマルクスの顔して立っている
資本主義おわらせ戦争にさようなら
ゝ 史
2022年5月
複眼単眼
日中関係の井戸を掘った人々が懐かしい
今年の大型連休はコロナ対策の20年、21年とは異なり、久しぶりの閣僚の外遊ラッシュになった。いつもこの時期に閣僚たちはたいした仕事もないのに、公金を使って外国にあそびにいく。「外遊」といわれる。良い習慣ではないだろう。
岸田文雄首相は東南アジア3カ国(インドネシア、ベトナム、タイ)とヨーロッパ2カ国(イタリア、イギリス+ヴァチカン)、林芳正外相は中央アジアやモンゴル、大平洋島嶼諸国を訪問し、岸信夫防衛相ら4閣僚は訪米するなど10閣僚が海外出張を行った。
首相の東南アジア3カ国は中国包囲網を狭めるためで、特にインドネシアはG20の議長国だからロシアをG20に招請しないよう圧力をかけに行った。中国との海上覇権争奪のため、各国に船を供与したり、借款を約束したり、あの手この手の懐柔策を行使した。
結論から言うと、岸田首相の東南アジア歴訪は失敗に終わった。インドネシアはロシア排除に同調しなかったし、ベトナムではろくに口にもできなかった。ASEANという地域機構をつくって、体制を超えて友好協力関係を形成しているこの地域で、日本の新人の首相が札ビラきって、圧力をかけても、相手はしたたかだ。
ヨーロッパの各国への訪問はなんのためか、目的もはっきりしない。NATOとの連携を強めたいからだろうが、ウクライナ戦争のこの時期、わざわざ行くのか。このように首相の外遊にいくらかけたかしらないが、何の成果もなかったわけだ。
林外相や岸防衛相の外遊結果は定かではないが、林防衛相はウクライナ戦争に関連して米国の要求があったに違いない。林外相は露骨に中国包囲網の形成に動いた。中国がこれをどんな思いで見ていたか、想像するに余りある。ともかく、あまり上手な外交のやりかたではない。
一方、今年は日中国交回復50年なのに、閣僚はだれも訪中しない。閣僚どころか、与党の国会議員で訪中した人物がいたなどという話しはついぞ聞かない。日中関係がぎくしゃくしているのは百も承知で言うのだが、これっておかしくはないか。意見が違ってもこういうときに訪問して議論するのが外交というものだろう。松村謙三とか、竹入義勝がなつかしい。
「尖閣諸島の軍事占領に備えて自衛隊を強化する」とか「台湾有事は日本有事」だとか、政界の一部から過激な声が聞こえてくる。先日、また尖閣諸島に上陸しようとした議員がいたそうだからあきれ返る。
本当に「台湾有事」になってよいのか。
日中の衝突を回避するために先人たちは1972年の日中共同声明や1978年の日中平和友好条約など日中関係4文書を締結した。 岸田内閣の閣僚には、現在の日中問題を少しでも解決しようと訪中する腹の座った人物はいないのか。友好的な国々だけ訪問するのは誰でもできる。政治に求められるのは違うのではないか。相対して議論するもいい。ケンカするもいい。そこからしか平和と共生の道は生まれてこないではないか。気概のある政治家はいないものか。それともこの人々は、本当に台湾有事、日中戦争を望んでいるのか。 (T)