人民新報 ・ 第1411号統合504号(2022年7月15日)
  
                  目次

● 共闘をさらに強め、総がかりの態勢で、岸田政権の憲法改悪・軍事大国化と闘おう

● 第26回参議院選挙に関する声明(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)

● ロシア中国を敵視するNATO新戦略

        戦火をアジアに引き込む岸田外交

● 生活保護基準額大幅引き下げ改定は「違法」

        生活保護制度の改善と充実を

● 共謀罪成立から5年

        反対運動を強め、共謀罪を死文化させていこう!

● 参院選勝利!ロシアのウクライナ侵略反対!即時撤退!改憲発議反対!軍拡やめろ!辺野古新基地建設中止!くらしといのちを守れ!

        6月の19日国会前行動

● 核戦争の脅威の高まりの中での核兵器禁止条約締約国会議

        日本は核兵器禁止条約への早期批准を

● まき散らされる差別意識に抗議

        東京清掃労組「職業に対する差別を許さない声明」

● せんりゅう

● 複眼単眼  /  安倍元首相殺害と「安倍改憲」






共闘をさらに強め、総がかりの態勢で

        岸田政権の憲法改悪・軍事大国化と闘おう


 参議院議員通常選挙がおわった。自公与党の改選議席を上回る議席の獲得を許し、維新の会など改憲派も議席を伸ばし、立憲野党の議席を減少させるという残念な結果となった。非改選議員数あわせての参院の議席状況は次のような内訳となった(カッコ内は選挙前議席)。自民119(111)、立民39(45)、公明27(28)、維新21(15)、共産11(13)、国民10(12)、れいわ5(2)、社民1(1)、N党2(1)、諸派1(0)、無所属12(15)。自民党、公明党に加え、日本維新の会、国民民主党は改憲論議に積極的であり、この4党で参院でも改憲発議に必要な3分の2以上となる。
 参院選に向けて自民党は最大限の体制をとった。ロシアのウクライナ侵攻、コロナ感染者の一時的減少、元自衛隊員による安倍元首相の殺害やそれらをあおるマスコミ報道があった。だが、一方でじわじわと迫る物価高、長期にわたる経済低迷、実質的な賃金低下、深刻化する少子高齢化、年金の切り下げなど自民党政治への不満がたかまりなどの状況があった。今回の参院選にむけ、安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合は、@平和国家路線の堅持と発展、A暮らしと命を守るための政策の拡充、B気候変動対策の強化とエネルギー転換の推進、C平等と人権保障の徹底、などの政策提言を行い、立憲野党各党がすくなくとも1人区において最大限の協力を行うよう要望した。だが野党の共闘が今回は完全には成立しなかった。この共闘の不調は、単に一人区にだけではなく、全体の選挙に否定的な空気を造り出した。1人区では、自民党が28議席を獲得し、野党系は4議席に留まった。連合芳野友子会長などが共産党との共闘を圧殺したことは、立憲民主党、国民民主党の選挙区での大きな後退にあらわれた。現在の連合指導部は、労働組合運動を低迷させ長期にわたる低賃金状況を造り出したが、政治面でも自民党へのすりよりで労働者や多くの人びとの生活を苦しめることになっている。

 参院選に勝利したとはいえ、岸田政権の前には難問山積だ。世界も日本も本格的な激動期に入った。
 岸田政権は当面の課題を次のように並べている。7月11日、岸田サイトの「参議院選挙の結果を受けて」で、「今の日本は…『戦後最大級の難局』にあると考えています。」といい、当面の課題として、@新型コロナ対応、Aロシアによるウクライナ侵略、B世界的な物価高への対応、Cエネルギーの安定供給確保、D新しい資本主義の実現、E憲法改正をあげた。
 新型コロナには「感染拡大の防止と経済社会活動の両立に心を砕きながら対応」するというが、すでに第7波に突入し、急速な感染者拡大は、今後に重症者、死者の増加が予想される。近隣の台湾、韓国、香港などでも感染の勢いは強烈である。だが経済界の要請で経済重視の政策は変えられず、感染対策は失敗するだろう。 ウクライナ問題では、バイデン政権に従ってロシア敵視を強めるとともに「日米同盟の抑止力・対処力の一層の強化、同志国との連携強化を進めると同時に、いわゆる反撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討し、年末までに新たな国家安全保障戦略などを策定し、我が国自身の防衛力を5年以内に抜本的に強化していきます」とした。アメリカ一極支配構造維持のため軍事面でも全力を尽くすもので、米日韓軍事一体化をすすめ、インド太平洋にひろげ、それをNATOむすびつけてグローバルな戦略体制を作る目論見だ。だが、米国は国際的な影響力が低下し、国内における分断・混乱が激化している。ロシアへの制裁に加担する国も世界的に見れば多くはない。同盟国に負担を加重させようとするバイデンの政策はうまくいくはずがない。
 物価高への対応は焦眉の課題だ。5月の消費者物価指数は2カ月連続で前年同月比2%を超えた。日銀の6月の国内企業物価指数は3カ月連続で過去最高を更新し、16カ月連続のプラスを記録した。
 エネルギー価格高騰や飲食料品の値上げなどが進んでいる。生活必需品の値上がりは今後も高騰し人びとの国民生活は深刻化する。原油、天然ガス価格の上昇に歯止めがかからない。ロシアからの逆経済制裁でサハリンT・Uからの日本向け輸送はストップするかもしれない。「熱中症も懸念されるこの夏は、無理な節電をせず、クーラーを上手に使いながら、乗り越えていたただきたいと思います」というのは政府の責任を棚に上げた自己責任論の押し売りだ。岸田は、物価・賃金・生活総合対策本部を週内に開き、5・5兆円の予備費を「機動的に活用する」、また秋の臨時国会での第2次補正予算の編成をやるというが効果は期待薄だ。
 看板政策の「新しい資本主義」で「私は、これからの経済政策で最も大切なことは、持続可能で包摂的な経済を作り上げていくことだと考えています。そのために重要なことは、まずは賃上げを含む人への投資であり、民間が賃金を引き上げやすい雰囲気をつくっていきます。…既に、新しい資本主義の実行計画を公表しています。ここで掲げた方針に沿って、私のビジョンを実現させていきます」というが核心である賃上げの具体策には言及しない。
 岸田は「憲法の改正は、自由民主党結党以来の党是であり、近年の国政選挙においては、必ずこの憲法改正を公約に盛り込み、選挙戦を戦ってきました。今回も、憲法改正の早期実現を公約に掲げ、この選挙を戦いました」「秋に予定される臨時国会では、今回の選挙で示された民意を受けて、与野党全体で一層活発な議論が行われることを強く期待します。」という。参院選直前のNHKの投票先を選ぶ際に最も重視することを6つの政策課題をあげて尋ねた世論調査では、「経済対策」43%、「社会保障」16%、「外交・安全保障」15%、「新型コロナ対策」5%、「憲法改正」5%、「エネルギー・環境」5%だったのであり、改憲が支持されたわけではない。

 自民党政権の長期支配のもとで日本はきわめて厳しい状況に落とし込まれている。経済的規模では激しい凋落ぶりだ。日本の名目(ドルベース)GDPの規模は、2010年に中国に追い抜かれて以降、米国、中国に次ぐ第3位だ(ドルベースではなく購買力平価換算の順位では中国、米国、インド、日本となる)。ところが1人当たりGDPで見ると、日本は世界第24位までに低下している。成長率が低いので、さらにさまざまな国に抜かされていくことは必至だ。しかし2000年には日本の1人当たりGDPは世界第2位(第5位はアメリカ)だったのである。この凋落の期間はアベノミクスの時代だ。円安の進行、また世界が成長するなかで日本は成長できなかった。
 2022年版の「ジェンダーギャップ報告書」では、日本は116位となった。教育面では、初等教育から高等教育に対する公的支出総額の比率は低く、クラス当たりの生徒数はOECD各国の中で日本が最も多く、日本の学校のICT活用比率は極めて低い。地震大国、気候変動に弱いのが日本である。高齢化社会であるにもかかわらず社会保障費はおさえられる。こうしたなかで自民党は、日米安保体制強化・中国敵視政策の推進のために軍事費の大増強を行おうというのである。

 自民党政治は反動化を強めている。それは日本社会を破滅させる道である。改憲、軍事大国化、人びとの生活と権利をないがしろにする動きを決して許してはならない。
 参院選後の新しい段階において、市民と野党の共闘をさらに強化し、岸田内閣と闘っていこう。

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第26回参議院選挙に関する声明

 7月10日に行われた参議院選挙は、大方の予想通り、自由民主党や日本維新の会が議席を大幅に増やし、衆議院に続いて参議院でも改憲勢力が議席の3分の2を超える結果となった。かたや立憲野党は、社会民主党が1議席を死守する一方で、立憲民主党も日本共産党も選挙前に比べて議席減となってしまった。
 より詳細に見ると、自由民主党が議席を増やしたのは1人区を含む選挙区に限られており、比例区ではむしろ1議席減らしている。逆に立憲民主党は、比例区では改選議席数を維持、議席減となったのは1人区を含む選挙区でのことであった。2016年、2019年と立憲野党が積み重ねてきた32の1人区すべてでの候補者の一本化が今回わずか11にとどまり、また、その11の選挙区でも選挙共闘体制の構築が不十分に終わった結果、勝利できたのは青森、長野、沖縄の3県だけに終わった。
 2016年に11議席、2019年に10議席を1人区で勝ち取ったことと比較して、野党共闘の不発が今回の選挙結果に結びついたことは明らかである。各地の選挙区で厳しいたたかいを最後まで懸命にたたかい抜いた全国の市民連合の皆さんに深い敬意を表するとともに、立憲野党各党には本格的な共闘への取り組みをまずは国会で一刻も早く再開することを呼びかけたい。
 むろん1人区だけでなく、複数区や比例区のたたかい方でも課題は見られた。複数区で日本維新の会の全国政党化を阻止したのは極めて重要な成果であったが、特に比例区において立憲野党各党は伸び悩み、日本維新の会や右派小政党に隙を突かれた。これらの課題は立憲野党だけでなく、私たち市民連合も今一度大きな広がりを作り直していくことが不可欠であることを示している。
 結果としては改憲勢力に3分の2を許してしまったが、安倍元首相の殺害という重大事件によって選挙戦が最終盤で大きく歪められてしまったことに加えて、もともと岸田自民党がいかなる政策も明確に訴えなかったこともあり、9条改憲や歯止めなき軍事力強化路線が信任されたとは到底言えない状況である。市民連合としては、自己目的化した改憲の企てを阻止し、いのちと暮らしを守る政治の実現を求める広範な取り組みを建て直していきたい。

2022年7月11日

安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合


ロシア中国を敵視するNATO新戦略

       
 戦火をアジアに引き込む岸田外交

 ウクライナ戦争での犠牲者が増え、早期解決がなにより求められている。

NATO新戦略概念

 6月下旬に開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は、ロシアに対抗するNATOの防衛態勢を長期にわたって大幅に増強する軍拡計画を確認し、また10年間の行動指針を示す「戦略概念」を改定した。
 新戦略概念の要旨はつぎのようなものだ―◎ロシアは安全保障や平和・安定への最大かつ直接の脅威。これに対応するため、加盟国の防衛力と抑止力を大幅に強化する。◎中国の野心と威圧的な政策は、われわれの利益や安全保障、価値観に挑戦している。加盟国で協力して対応する。◎中ロは戦略的協力を深め、ルールに基づく国際秩序を損ねる試みを補強し合っており、われわれの価値観や利益にもとる。◎ルールに基づく国際秩序の維持へ、価値観を共有する国との関係を深める。インド太平洋のパートナー国との対話と協力を強化する。◎気候変動や食料安保、保健分野の緊急事態の影響に備え、救援活動の能力を高める。―
 とくにロシアを安全保障の「最大で直接的な脅威」と位置付け、「これに対応するため、加盟国の防衛力と抑止力を大幅に強化する」としたことが大きな転換だ。また「中国の野心と威圧的な政策は、われわれの利益や安全保障、価値観に挑戦している」として、「加盟国で協力して対応」するとした。

2010年戦略概念

 以前の2010年戦略概念では、「核兵器が世界に存在する限りNATOは核同盟であり続けることを再確認」しつつも、「核兵器の使用が考慮されなければならないような状況は、極めてありそうにない」「同盟は、いかなる国をもその敵国とみなしていない」としていた。
 ロシアにつては次のように規定していた。「NATOとロシアの協力は、平和、安定、及び安全保障の共通のスペースを創出するのに貢献するものであり、戦略的重要性を持っている。NATOは、ロシアに対し、何の脅威をももたらさない。それどころか、我々は、NATOとロシアの間の真の戦略的パートナーシップを見たいと考えており、これに従い、ロシアからの同様のものを期待しつつ、行動する。」

NATOも解体すべき

 NATOの新戦略概念の採用は、ロシア・中国を敵視するものだが、NATOの対ロシア政策が破綻したことも意味している。そもそもNATOは米ソ冷戦時代において東側のワルシャワ条約機構と対抗するものであり、冷戦終結時にワルシャワ条約機構が解体されたときに、同時に解消されるべきであった。それでこそ、「NATOとロシアの間の真の戦略的パートナーシップ」が実現するべきものだった。正確には、NATOではなく米欧諸国との相互に敵視しない安定的な関係を構築すべきだった。だが、ロシアの度重なる批判にもかかわらずNATOは依然としてロシアを対象とする東方拡大をやめなかった。ロシアのウクライナ侵攻の暴挙の背景にはこうしたことが存在する。
 岡田充さん(共同通信客員論説委員)が、「ウクライナ侵攻『予言』したランド研究所のレポートが話題。台湾有事煽る米政権の戦略とシナリオが『酷似』と」(BUSINESS INSIDER 7月5日)という文章で、アメリカの保守系シンクタンク米ランド研究所(RAND)が2019年に出した「ロシア拡張?有利な条件での競争」が注目されるとして、「アメリカが優位に立つ領域や地域でロシアが競争するように仕向け、ロシアを軍事的・経済的に過剰に拡張させるか、あるいはプーチン政権の国内外での威信や影響力を失わせる」とある部分に「米軍がロシア、中国など『敵対的勢力』に対して採用する戦略的対応をパターン化したとも受け取れる内容で、緊張を煽り、敵を屈服させる論理が読みとれる」としている。そして「この行動パターンを、台湾情勢に当てはめてみると以下のような流れになる。まずアメリカ側が挑発し、(中国に)競争するよう仕向ける。中国に軍事的、経済的に『過剰な対応』を引き出させる。国内外での中国の威信や影響力を喪失させる」という。アメリカが中国に打撃をあたえるために日本を第二のウクライナとして利用するというわけだ。

NATOのアジアへの拡大

 ロシアのウクライナ侵攻、NATO側の対抗措置によって世界は核戦争の危機をもふくむ危険な時代に入った。こうした状況に岸田政権は緊張激化・戦争の危機の加速に積極的に乗り出した。6月29日発表の「岸田総理大臣のNATO首脳会合出席(結果)」は、「日本の総理大臣による出席は史上初めて」であることを強調自賛した。岸田は会合での演説で「ロシアによるウクライナ侵略は、ポスト冷戦期の終わりを明確に告げた。東シナ海・南シナ海で力を背景とした一方的な現状変更の試みが継続されている。ウクライナは明日の東アジアかもしれないという強い危機感を抱いている。」「NATOが、インド太平洋地域への関与を強めていることを歓迎。ストルテンベルグ事務総長の早期の訪日を期待。また、NATOのアジア太平洋パートナー(AP4)である日本、豪州、ニュージーランド及び韓国のNATO理事会会合への定期的な参加を進めていくべき。」「法の支配に基づく国際秩序の確立と『自由で開かれたインド太平洋(FOIP)』の実現に向けて、この場の出席者達との連携を強化していきたい。」などと述べた。NATOとアジア太平洋諸国との積極的な連携強化に積極的役割を果たすという宣言であり、自ら火中に栗を拾うという愚策である。
 岸田外交は日本を破滅させるものだ。戦争する国づくりを許してはならない。


生活保護基準額大幅引き下げ改定は「違法」

        
生活保護制度の改善と充実を

 三地裁判決の意義

 6月24日、東京地裁(清水知恵子裁判長)は、国が生活保護基準額を大幅に引き下げた改定は生存権を保障した憲法25条に違反するなどとして受給者ら生活保護費を減額した決定の取り消しなどを求めた訴訟の判決で、生活保護の減額は「違法」だとして決定の取り消し認めた。同種訴訟では11件目の判決で、引き下げを違法としたのは、大阪地裁(昨年2月)、熊本地裁(今年5月)に次ぎ3例目となる。
 日弁連「東京地方裁判所判決を受け、改めて恣意的な生活保護基準引下げの見直しを求める会長声明」(7月1日)は、「同判決は、本引下げの理由の一つとされたデフレ調整について、専門家による審議検討を経ていないことを指摘し、国の説明を踏まえ、@デフレ調整の必要性についての判断は、統計等の客観的な数値等との合理的関連性を欠き、あるいは、専門的知見との整合性を有しない、A物価の変化率による調整を行うとしたことの合理性についての判断は、審議会等において示されてきた専門的知見との整合性を有しない、Bデフレ調整の起点を2008年としたことの合理性についての国の説明は、合理的根拠に基づくものとは言えず、根拠は不明である、C減額率を定めるに当たって厚生労働省が設定した『生活扶助相当CPI』については、生活扶助相当CPIの下落の相当部分がテレビ等の価格の下落の影響によるもので、統計を分析すると生活保護利用世帯のテレビ等の支出額は一般世帯の3割未満に過ぎない等とし、生活保護利用世帯の可処分所得の実質的増加の有無・程度を正しく評価し得るものと言えない、と判断した。そして、本引下げの影響は重大であるとし、本引下げに係る厚生労働大臣の判断過程には過誤・欠落があり、本引下げ全体について裁量権の逸脱・濫用の違法があったと結論付けた」として地裁判決を「高く評価」した。
 政府は、同判決を直ちに受け入れることを求めるとともに、大阪、熊本、東京三地裁の「引き下げを違法」とした判決を尊重して、憲法25条の精神に基づいて生活保護に対する抑圧的な態度を改め、生活保護制度の改善と充実をはかるべきである。

生活保護法改正要綱案

 日本の生活保護制度の改善と充実は焦眉の課題だ。日弁連は、生活保護法改正要綱案(改訂版)を公表し、厚生労働大臣、衆議院議長、参議院議長及び各政党代表者に提出している。
 要綱案には、「@権利性の明確化」、「A水際作戦を不可能にする制度的保障」、「B保護基準の決定に対する民主的コントロール」、「C一歩手前の生活困窮層に対する積極的な支援の実現」、「Dケースワーカーの増員と専門性の確保」の5つの柱がある。
 「権利性の明確化」では、現行の生活保護法を生活保障法(健康で文化的な最低限度の生活の保障に関する法律)に法律の名称を変更する。それは、生活保護制度は,憲法25条の生存権保障を具体化したものであるにもかかわらず,「保護」という用語が,利用者にはスティグマ(世間から押し付けられた恥や負い目の烙印)を与え,制度を運用する公務員には「保護を与えてやっている」との誤った意識を生んでいる。そこで,法改正によって,法の名称を「生活保障法」と改めるとともに、「被保護者」を「利用者」と言い替えるなど用語を改め,生活保護は恩恵として与えられるものではなく,健康で文化的な最低限度の生活を保障する憲法25条を具体化した権利であることを明確にする。
 要綱案には、条文の改正案とその「趣旨・解説」がつけられている。


共謀罪成立から5年

        反対運動を強め、共謀罪を死文化させていこう!


 テロ等組織犯罪を防止するためという口実で、さまざまな規制を行う法制度がつくられた。2017年6月15日、安倍政権は各階各層のからの多くの反対の声を圧殺して、「実行行為以前の話し合うこと、表現行為を処罰」する共謀罪法(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第6条の2)を強行採決した。第六条の二は「次の各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。(以下略)」とする。このように共謀罪は、犯罪の実行を合意しただけの者を処罰する法律である。これによって刑法などに規定される犯罪の大多数について共謀罪が創設されたが、その処罰範囲は極めて広範である。
 犯罪の「計画」段階を処罰するもので、内心の自由や表現の自由を侵害する危険性が指摘されている。自民党政権の日米軍事同盟強化、軍備大増強、改憲の危険な道、戦争する国づくりのなかで、憲法の保障する言論・表現の自由、結社の自由を侵害する共謀罪などの治安弾圧法制の持つ意味は大きい。

 共謀罪強行成立から5年たった。6月15日、「秘密保護法」廃止へ!実行委員会と共謀罪NO!実行委員会による「強行採決から5年、共謀罪の廃止を求める市民の集い―共謀罪組織的犯罪処罰法―」が開かれた。
 小池振一郎弁護士が、「共謀罪と組織的犯罪処罰法」と題して講演。共謀罪法は、市民団体も「組織的犯罪集団」とされる恐れがある。これは日本の法体系の変容であり、監視社会の強化である。共謀罪と組織的犯罪処罰法によって、団体規制法の流れが強まる。
2017年の「組織的犯罪処罰法」の改正によって、6条の2(第1項 第2項)が新設されたが、条文の見出しは「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画」となっている。そこに「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者による「準備行為」が行われたときは、全員を刑に処する、としているが、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団がきわめて多岐にわたるものとなっている。 「組織的犯罪集団」は、法の別表3の犯罪の実行を共同の目的とする団体とされるが、組織的逮捕監禁、組織的強要、組織的虚偽風説流布・偽計信用棄損・業務妨害、組織的威力業務妨害、組織的詐欺、組織的恐喝、公正証書原本不実記載、傷害、窃盗、背任、横領、強制労働、特許権侵害、商標権侵害、脱税、著作権侵害、営業秘密の不正取得、児童ポルノ不特定多数提供、詐欺破産等々一般的犯罪類型多数など二百数十にのぼるが、「偽りにより所得税を免れる行為」「著作権侵害」など国民に身近な犯罪も沢山掲げられている。別表4には、別表3の罪がほぼ全部含まれ、偽証罪などが追加されるが、これらの犯罪の実行を目的とする団体の2次的な目的でもよいとされるている。
 犯罪の主体は、2人以上で「計画」した個人だ。そして、計画に基づき、何らかの外形的行為があれば、「準備行為」とされる。
 市民団体も「組織的犯罪集団」とされる恐れがある。なにより計画段階では、どの程度か、誰もわからない。
 共謀罪では、共謀するだけで犯罪が成立するとされるが、「準備行為」は内心の意思が問題となる。これまでの罪刑法定主義に反する刑事法体系が根本的に壊れ、憲法が保障する言論・表現の自由の侵害になる。警察が一方的に犯罪と決めつけ恣意的な捜査をおこなうことができる。
 また、共謀罪は自白偏重に拍車をかける。「ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する」とあり密告の奨励となっている。実行着手前に自首すれば必要的刑の減免するとされ、密告奨励共犯者の自白獲得を促進させようとしている。2016年5月の刑事訴訟法等一部改正法では、司法取引、証人に不利益な証拠としない約束で証言を強制する刑事免責制度、共犯者(証人)の名前が弁護人にさえ匿名にされる証人秘匿制度が導入された。
 また、1999年の盗聴法では、盗聴対象犯罪は薬物犯罪、銃器犯罪、集団密航、組織的殺人だったが、2016年盗聴法改悪で、殺人、傷害、逮捕監禁、詐欺・恐喝、児童ポルノ製造・提供等なども入り9種類に拡大された。通信事業者の立会いという歯止めもなくなった別件傍受により共謀罪を直接立証することもできるようになる。
 戦後の団体規制法は、1952年の破壊活動防止法から、1991年の暴力団対策法、そして1999年の組織的犯罪対策関連法、2016年盗聴法改悪、2017年の共謀罪法と拡大されてきたが警察を監督する機関がない。このような、監視社会を阻止するためには、国内人権機関の設置が必要だ。
 共謀罪反対運動などの成果により、現在まで、共謀罪適用例は聞かない。共謀罪適用の困難性があるので、今後、組織的犯罪処罰法が改正される恐れがある。
 反対運動を強めて、共謀罪を死文化させていかなければならない。

 集会では、共通番号いらないネット、東京・地域ネットワーク、共謀罪NO! 実行委員会からなどの発言が続いた。


参院選勝利!ロシアのウクライナ侵略反対!即時撤退!改憲発議反対!軍拡やめろ!辺野古新基地建設中止!くらしといのちを守れ!

        6月の19日国会前行動


 6月19日、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会、9条改憲NO!全国市民アクションのよびかけで、衆議院第2議員会館前を中心に、「参院選勝利!ロシアのウクライナ侵略反対!即時撤退!改憲発議反対!軍拡やめろ!辺野古新基地建設中止!くらしといのちを守れ!国会議員会館前行動」が行われ、800人が参加した。
 主催者を代表して総がかり行動実行委員会の小田川義和共同代表さんがあいさつ―さる17日の東京電力福島第一原子力発電所事故で各地に避難した人らが国と東電に損害賠償を求めた集団訴訟での最高裁の判決は、津波の予見可能性や津波のリスクを国の規制権限でどう扱うべきだったかを十分検討せずに、国の責任を認めないひどいものだった。さらに高く原発ゼロの声を上げていこう。岸田自公政権は、いま改憲や中国を対象とし、また台湾有事をあおって軍事費をさらに5兆円も増加させるなどという大軍拡をおこなおうとしている。このような政治をやめさせなければならない。参院選では自民党・公明党与党維新の会らの改憲派が国会議席の3分の2を占めることを許してはならない。投票ではそれをはっきりとしめそう。
 国会からの発言では、立憲民主党の大河原雅子衆議院議員、共産党の宮本徹衆議院議員、社会民主党の福島瑞穂参議院議員があいさつし、参院選での勝利にむけて闘おうと訴えた。
 4月にウクライナに行ったジャーナリストの志葉玲さんは、この戦争を利用して改憲派は、改憲や軍事費増加をねらっている、市民と野党はおおきな声をあげていこうと述べた。
 連帯挨拶では、安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合の福山真劫さんが、参院選では野党一本化した一人区で、また複数区でも野党共闘を強め勝ちとっていこうと述べた。
 つづいて安保法制違憲訴訟の会の内田雅敏弁護士は、原発責任を認めない最高裁判決は不当だ、ウクライナ問題を口実にした軍事化、憲法改悪を阻止し、参議院選挙に勝利しよう、と述べた。
 また、集会では、韓日和解と平和プラットフォームの共同代表のハン・チュンモクさん(韓国進歩連帯常任代表)のメッセージが読み上げられた。


核戦争の脅威の高まりの中での核兵器禁止条約締約国会議

      
 日本は核兵器禁止条約への早期批准を

締約国会議に多くの参加

 ウクライナでの戦争で核戦争の脅威が現実に感じられるようになった。同時に核戦争の脅威に反対する世界の人びと諸国の声はいちだんと高まっている。核兵器禁止条約第1回締約国会議が6月21〜23日オーストリアの首都ウィーンで開催された。核兵器禁止条約は、2017年7月に122か国の賛成により採択され、2020年10月に発効要件である批准国50か国に達し、昨年2021年1月22日に発効した。
 締約国会議には、65の批准・締約国、そしてドイツなどを34カ国がオブザーバー参加した。また多くの反核平和団体も参加した。しかし唯一の戦争被爆国である日本政府は条約を批准しないばかりか、被爆者などをはじめおおくの強い要求にもかかわらず、オブザーバー参加すらしなかった。

核廃絶を求めない日本政府

 日本政府の対応について、6月15日の記者会見で、小野日子外務報道官は次のように述べている―この条約は、「核兵器のない世界」への出口ともいえる重要な条約です。しかしながら、現実を変えるためには、核兵器国の協力が必要であり、この条約には、核兵器国が1か国も参加をしていないという現実がございます。我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させるよう努力をし、「核兵器のない世界」に向けて、現実的な取組を進めていく方針です。こうした考えから、今般、ウィーンで開催される締約国会合に、日本政府としてオブザーバー参加はせず、まずは、国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石である核兵器不拡散条約、NPTの維持と強化に向けて、8月に開かれるNPT運用検討会議にて、意義ある成果を収められるよう全力を尽くす方針です。その上で、効果的な核軍縮措置を積み重ねて、「核兵器のない世界」に一歩ずつ近づいていきたいと考えています。―
 この論理はなんだ。まったく論理が破綻している。締約国条約に核兵器国が参加をしていないから、「現実的な取組」として、「核兵器不拡散条約、ンPTの維持と強化」にむけて努力し、そのために核禁会議にはオブザーバー参加もしないというのだ。
 だが核兵器の拡散と核兵器の禁止はちがうものだ。核兵器保有国は、核拡散には賛成だが、核兵器禁止・放棄・廃絶を自発的に行うわけがない。そもそも核兵器拡散防止は既成の核保有国の核兵器に手を付けるものでもないし、核保有国の核独占を保証するものである。核兵器拡散防止をどんなにすすめても核兵器保有国はへらない。核廃絶とは、核兵器拡散防止ではないのであり、日本政府の立場は、アメリカの核軍事態勢優位を支えるものでしかない。日本政府の核廃絶の言葉はまやかしに過ぎないのである。

世界へ「ウイーン宣言」

 締約国会議では、ウイーン宣言「核兵器のない世界への私たちの誓約」が採択された。それは次のようなアピールをおこなっている。「核兵器は、平和と安全を守るどころか、強制や威嚇、緊張の高まりにつながる政策の道具として使われている。これは、核兵器が実際に使用されるという脅威、すなわち無数の生命、社会、国家を破壊し、地球規模の破滅的な結果をもたらす危険性に基づいている核抑止論の誤りを、これまで以上に浮き彫りにしている。私たちは、核兵器が完全に廃絶されるまで、すべての核保有国がいかなる状況下でも核兵器を使用したり、使用の威嚇をしたりしないよう要求する。」「私たちは、すべての国に対し、核兵器禁止条約に遅滞なく加盟するよう求める。私たちは、このステップを踏む準備がまだできていない国々に対し、この条約に協力的に関与し、核兵器のない世界という私たちの共通の目標を支援するために、私たちと協力するよう訴える。私たちは、一部の核武装国が、非核保有国に対して条約への加盟を思いとどまらせるような行動をとっていることを遺憾に思う。私たちは、こうした諸国はそのエネルギーや資源を、核軍縮に向けた具体的な進展に向ける方がよいと提案する。そうすれば、すべての人のための持続可能な平和、安全、発展に真に貢献することができる。私たちは、そのような進展を歓迎し、祝福する。」「私たちは、この条約の目的を実現する上で私たちの前に立ちはだかる課題や障害に幻想を抱いていない。しかし、私たちは楽観主義と決意をもって前進する。核兵器がもたらす破滅的なリスクに直面し、人類の生存のために、そうしないわけにはいかない。私たちは、開かれた道をすべて選び、まだ閉ざされている道を開くために粘り強く努力する。私たちは、最後の国が条約に参加し、最後の核弾頭が解体・破壊され、地球上から核兵器が完全に廃絶されるまで、休むことはないだろう。」

唯一の被爆国の責務とは

 こうした宣言に日本政府も真摯な態度でこたえなければならない。しかし、岸田政権の行っているのは、バイデン政権のウクライナ戦争長期化政策に全面的に賛同し、また日米軍事同盟の強化、大幅な軍備増強、アメリカの対中軍事態勢の先兵になることだ。
 だが、今日の情勢は、ウクライナ戦争の早期解決、武力よらない国際的な諸問題の解決・緊張緩和が求めている。もしそうできなければ、悲惨な状況は克服できず、ついには、かつてない核惨事をもたらすことになる。
 世界各地とりわけ東アジアでの非核化の動きを強めていかなければならない。朝鮮半島の非核化を具体的に実現する平和的な国際環境をつくり、この地域の核兵器廃棄を進めていくことが日本にも求められている。日本政府はこうした動きに積極的に関与すべきである。 締約国会議に参加しないということで日本に対する国際的信頼はいちじるしく低下している。
 日本政府は早期に核禁条約の締結・批准に大きく舵を切らなければならない。そのために核兵器禁止の世論を大きく盛り上げていこう。


まき散らされる差別意識に抗議

        東京清掃労組「職業に対する差別を許さない声明」


 悪質な職業差別を助長する就活情報サイトに批判が殺到している。新卒向け就職情報サイト「就活の教科書」が公開した「【底辺職とは?】底辺の仕事ランキング一覧」は、「土木・建設作業員」「警備スタッフ」「工場作業員」「倉庫作業員」「コンビニ店員」「清掃スタッフ」「トラック運転手」「ゴミ収集スタッフ」「飲食店スタッフ」「介護士」「保育士」「コールセンタースタッフ」をあげ、「底辺職と呼ばれる仕事に就きたくない方は、転職したり、スキルや資格を身に付けることが重要です」などといっている。
 「就活の教科書」を運営するSynergy Career社(大阪市)のサイトでは、「就活生の課題」として、「企業発信の情報に惑わされると、自分らしい働き方や会社を選べなくなります。だからこそ、就活生は自分で情報を取捨選択し、自衛する必要があります。情報に惑わされてしまうと、納得のいく就活ができません。『就活の教科書』では、就活生に寄り添った情報を届けることで、一人でも多くの『納得のいく就活ができた!』といえる就活生を増やします。」というのが宣伝文句だが、こうした会社の発信するデタラメ情報にはきわめて問題がある。
 それだけではない。今度は、「Fランク大学一覧」で教育分野でも差別をあおっている。
 資本主義の競争社会では、差別意識は自己責任論とあいまって、格差の固定化をもたらす。「就活生に寄り添った情報を届け、大学生を自分らしい生き方に導く」が、Synergy Career社のモットーらしいが、偏った情報で、間違った意識を植え付けるのは断じて許すことはできない。

 7月1日、「東京清掃労働組合は、すべての差別を許さず、誰もが安心して生活できる社会づくりに向けた活動に取組んでいます。こうした中、ある就活情報サイトに看過できない職業差別事案の記事が掲載されました。…我われが長年住民とともに築き上げてきた職を『誰でもできる仕事』『同じことの繰り返し』などと評することは、断じて看過できるものではありません。ましてや、優劣をつけることは、職業差別意識を助長するものであり、わが組合は満腔の怒りを持って抗議します。職業差別をはじめ、わが組合は引き続き、あらゆる差別を根絶していくため、今後も取組みを強化することを表明」するとして、「職業に対する差別を許さない声明」(別掲)を発表した。声明への共感が拡がっている。


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職業に対する差別を許さない声明


 東京清掃労働組合は、すべての差別を許さず、誰もが安心して生活できる社会づくりに向けた活動に取組んでいる。
こうした中、ある就活情報サイトに、看過できない職業差別事案の記事が掲載された。
 その内容とは、「底辺職とは? 底辺の仕事ランキング〜回避方法も〜」というものである。記事によると「社会にとって必要な仕事」「必須の職業」などと擁護しながらも、土木・建設作業員∞介護士∞保育士%凾ニ並びゴミ収集スタッフ=i記事原文のまま記載)も含め12の職種を「底辺職」と位置付けている。また職の特徴について(1)肉体労働である(2)誰でもできる仕事である(3)同じことの繰り返し…と解説しており、デメリットについては(1)平均年収が低い(2)結婚の時に苦労する(3)体力を消耗…を挙げた。
 今年6月下旬、記事がツィッター上で拡散され、「『底辺の仕事ランキング』として就活生に差別意識を植え付けていた」「職業差別を助長する記事」「世の中の仕事をバカにしてるのはありえない」と物議をかもした。 こうした指摘を受けて、記事はすでに削除されている。このサイトを運営している会社はマスコミの取材に対し、「今回の記事の作成者に、改めて記事の作成経緯を含め事実関係を確認し、弊社内で、今後の対応について検討中でございます」と回答している。
 我われ清掃職場に働くすべての労働者は、年々激甚化する自然災害時の対応や、2年以上に亘るコロナ禍の中、感染リスクと向き合い職務を遂行してきた。また猛暑や極寒、その他厳しい気象条件や社会情勢の中でも、住民の衛生環境を守るため、昼夜や年末年始も問わず奮闘してきた。さらに、日々変化し多種・多様化している住民ニーズに対応するため、高齢者等訪問収集や、未来を担う子どもたちへの環境学習などの普及啓発にも積極的に取組んでいる。こうした職員のたゆまぬ努力が多くの住民からの感謝や激励のメッセージにつながり、当たり前の社会生活を営むために必要不可欠な仕事として認知されてきた。
 我われが住民とともに長年築き上げてきた職を「誰でもできる仕事」「同じことの繰り返し」などと評することは、断じて看過できるものではない。ましてや、優劣をつけることは、職業差別意識を助長するものであり、東京清掃労働組合は、満腔の怒りを持って抗議する。
 職業差別をはじめ、社会には多くの差別・排外主義が根深く残っている。我われ東京清掃労働組合は、あらゆる差別を根絶していくため、今後も取組を強化していくことを、ここに表明する。

2022年7月1日

東京清掃労組合


せんりゅう

     新しいマネーゲーム主義へとキシダ節

          日銀の屑籠巨大百参十兆

     マイナポイントを毛バリに騙し釣り

          わが貧乏キシダ政治のまずしさよ

     むかし植民地いまは資本増殖地

          世界中シホンという黴が生え

     空を舞う神業みせて二羽のハト
   
                    ゝ 史
2022年7月


複眼単眼

      
  安倍元首相殺害と「安倍改憲」

 7月8日昼、安倍晋三元首相が奈良市での参院選関連での街頭演説中に元海上自衛官の山上某に襲撃され、射殺された。
 これは暴力による議会制民主主義の破壊であり、断じて許されない。
 首相経験者が暗殺されたのは戦後の日本の憲政史上、初めてのことだ。
 しかし、安倍元首相の死によって、この間の「安倍政治」という言葉に代表される彼の数々の悪政の責任が水に流されていいわけはない。
 結論的に言えば、彼は戦後歴代政権の中で最悪の首相だった。
 そのためにもあらためてこの参院選で何が問われていたのかを考える。
 この選挙での安倍元首相の最大の関心事は改憲派の獲得議席数が非改選議員と合わせて参議院の3分の2以上を占めるかどうかだったはずだ。すでに昨年の総選挙でこれらの政党は衆議院の3分の2以上を獲得している。いうまでもなく日本国憲法第96条の規定に従えば、これらが賛成すれば改憲の発議が可能になる。
 安倍元首相は1991年、急死した父親の地盤をひきついで改憲右派政治家として国会に議席を得た。安倍は2006年に首相に就任して、その後、参院選の敗北などを経て、潰瘍性大腸炎を理由に退陣した。
 彼は2012年に再度第2次内閣を組織し、改憲に執念を燃やした。以後8年余、首相在位日数歴代1位などの記録は残したものの、改憲やコロナ対策の失敗などで、またも退陣することになった。退陣の説明は「持病の潰瘍性大腸炎が再発し、国民の皆様の負託に自信を持って応えられる状態でなくなった以上、総理大臣の地位にあり続けるべきではない」というものだった。
 この人物は自らの政治的野望がうまくすすまないことを、自らの失敗と認めることができず、体調のせいにして2度、政権を投げ出したという、とんでもない小心者だ。
 しかし、2度目の退陣から2年もたたないのに、安倍はもしかしたら自分が黒幕となって改憲政権を作り上げ、念願の改憲を実現することができるかもしれない情勢が来たと考えるようになった。こうなると持病の潰瘍性大腸炎はどこかにふきとんでしまう。この参議院選挙はいくつもの箇所で演壇に立った。
 襲撃される2日前の7月6日、安倍は横浜市で2か所で演説した。そして、憲法への自衛隊明記に関し「命を懸けて国民生活を守る自衛隊を憲法に明記し、違憲論争に終止符を打とうではないか」と絶叫した。「明治憲法は欽定憲法で、現行憲法は占領軍が作った。国民の参加で私たちの憲法に変えていく大きなチャンスを迎えている」と。
 そしてウクライナ危機を引き合いに出し、NATO加盟国が掲げる国内総生産(GDP)比2%の国防費は「世界のスタンダードになっている」「経済規模に応じて国を守る責任を果たしてこそ、強固な日米同盟の維持につながる」と軍事費大幅拡大、軍備強化を叫んだ。
 安倍は、米国と同盟し、事実上、世界の第3位の軍事費大国となって、インド洋から西太平洋に至る国々を同盟国・同志国に引き入れ、NATOと連携する。いよいよその日がくるのを夢見ていた。
 しかし、安倍元首相はこの夢を果たすことができないまま、死んだ。岸田文雄首相がこの安倍の夢をひきつぐのかどうかは、これからの問題だ。
 市民運動から見ても宿敵の安倍元首相との闘いはこうした形で終わらせたくはなかった。私たちは2014〜15年に試みて果たせなかったが、再度、そうした大衆闘争の渦の中で、この人物を物理的にではなく、政治的に打倒したかった。かえすがえすも残念だ。 (T)