人民新報 ・ 第1413号統合506号(2022年9月15日)
  
                  目次

● 安倍国葬許すな!

● 沖縄県知事選での玉城圧勝は政権の南西諸島軍事化に大打撃

● 芳野連合はどこへ行くのか
 
          反共主義を公言し、自民党に限りなく接近  芳野友子連合会長

● 自民党どこを切ってもカルト飴

          安倍国葬に反旗を!(大阪)


● 関東大震災・朝鮮人中国人虐殺から99年

          林伯耀さん「大島町事件再考」

● 本当のダイバーシティをめざすということ

● せんりゅう

● 複眼単眼  /  「新たな戦前」か






安倍国葬許すな!


四面楚歌に陥った岸田内閣

 岸田内閣は、新型コロナ禍再蔓延、急激な物価高、反社会的カルト集団・世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との癒着暴露に加えて、安倍国葬に反対する声が各地で広がっていることなど極めて困難な状況に追い込まれている。とりわけ政治焦点したのが国葬問題だ。いまの段階でも、内閣存亡の瀬戸際に立たされると言ってもよいほどである。
 経済活性化を口実に新型コロナ再蔓延に政府は感染者・重症者の数値をあいまいなものにしようとしている。ますますこれらの数字には信ぴょう性がなくなってきている。だが、世界的にも日本の蔓延状況はトップクラスにあり、日々かつてない死者の激増がある。しかしこの時期にさまざまな緩和策を強行しようとしている。政権の対応は有効でないばかりか真逆の結果をもたらす可能性が高い。
 そして、物価の急上昇はこれからである。身動きの取れなくなったアベノミクスによる円安激化も日本社会に破壊的な作用をもたらしている。また、エネルギーの高騰には原発再稼働を行おうとしているが、この道は破滅的な事態を生み出すだろう。
 岸田はいろいろ手を打っているが有効なものにはならない。この秋、コロナ、物価高に対して、人びとの怒りはいっそう高まるだろう。生命・生活と権利を守り、岸田政権との対決の闘いを強めていこう。

旧統一教会との癒着の暴露

 自民党の支持基盤の一つに宗教右派勢力がある。神道政治連盟・全日本仏教会・霊友会・崇教真光・佛所護念会教団などがある。中心は日本会議勢だが、それとならんで旧統一教会である。 旧統一教会と自民党等の癒着の最大の接点は安倍晋三にあったのだから、旧統一教会への怒りは安倍国葬反対に連動かつ促進し、相互に盛り上がってきたのは至極当然のことであった。
 旧統一教会は、さまざまな被害者を生んできた。日弁連は「霊感商法及びその他反社会的な宗教的活動による被害実態の把握と被害者救済についての会長声明」(三面別掲)を出し、緊急な被害実態の把握と被害者救済を求めている。
 そもそも国葬については歴代自民党内閣も慎重な対応を続けてきたのに、7月参院選での勝利に慢心した岸田は、麻生太郎などの身内だけの会合での盛り上がり話で安易に国葬を決めた。麻生の果たした役割は大きい。その後の旧統一教会との癒着や国葬反対の世論の急拡大にたいしても当初はきわめて楽観的であった。自民党元幹事長の二階俊博は8月下旬になっても「自民党はビクともしないよ」とうそぶいていた。しかし、事態の展開は自民党がビクついていることは誰の目にも明らかだ。
 いま岸田内閣の支持率は急降下している。岸田は支持率回復を狙って、予定を早めて8月10日に内閣改造・自民党役員人事に踏み切った。しかし経産相から党政調会長になった萩生田光一衆議院議員(安倍派)や経済再生相に留任した山際大志郎衆議院議員(麻生派)など党と政権の中枢が旧統一教会ときわめて強く結びついていることがたちまちにバレてしまい、岸田の目論見は見事に失敗した。
 8月下旬におこなわれた朝日新聞の調査によると、岸田内閣を支持は47%となり、前回の7月に比べて10ポイント下落した。支持しないは25%から39%に急増した。首相の旧統一教会問題への対応を「評価しない」が多数である。他社の調査でも同様に政権支持率は低下している。今後もこの趨勢は変わらないだろう。
 世論の動向に危機意識を持たざるをえなくなった自民党執行部は、旧統一教会との自民党との関係について発表せざるをえなくなり、
9月8日に自民党の茂木敏充幹事長は自民党所属の国会議員379人のうち、旧統一教会および関連団体と179人が何らかの接点があったとの調査結果を公表し、「結果を重く受け止めている。率直に反省をし、今後は旧統一教会と一切関係を持たないことを党内に徹底していく。また、被害の防止・救済にもしっかり取り組んでいく」と述べたが、今後自民党が旧統一教会と絶縁できると考える人は少ない。もっともっと暴露されてくるだろう。
 この問題でも隠ぺいで時を過ごそうというのが自民党執行部の目論見だ。国会での審議を逃げ回っている。ようやく閉会中審査開催でお茶を濁そうとしているが、甘い考えだというしかない。

旧統一教会と安倍家三代

 旧統一教会と自民党との癒着の歴史は長い。結びつきの発端は反共産主義ということであり、その中軸となってきたのが、岸信介、安倍晋太郎、安倍晋三の安倍三代にわたる強固な関係であり、安倍派(清和政策研究会)である。
 勝共連合は1968年に旧統一教会の文鮮明が当時の韓国軍事独裁政権・朴正煕大統領下の韓国中央情報部(KCIA)の指示で作られたものである。1960年代は、東西冷戦の最中であり、米・ニクソン、日本・佐藤栄作、韓国・朴正煕、台湾・蒋介石、南ベトナムのゴ・ジンジェムなどが人権無視の政権運営を行っていたが、その一角を支えていたのが勝共連合・旧統一教会であった。
 旧統一教会の悪事が明らかにされつつある。強引な霊感商法、布教、そして日本が集金場所とされ、それが旧統一教会本部に流れ、そしてアメリカ・日本などの右派政治家に流れて、右派政治潮流のための選挙活動・政治活動を強力に行ってきた構造なのである。日本では旧統一教会は、安倍晋三や山谷えり子ら自民党右派と連携して夫婦別姓反対、スパイ防止法制定、教育反動化促進などが進められ、その先兵・手兵としてとして活動してきた。
 改憲問題では、最優先順位を「緊急事態条項」の新設とし、大災害・戦争などにおいて「政府の権限を強化して、所有権等を一時的に制限したり、食料や燃料の価格をしっかり規制して、守れる命を守る」としている。また「家族は社会の自然かつ基礎的単位」とし、同性婚合法化に反対する。憲法9条についても、「自衛軍」「国防軍」などの明記を主張している。
 まさに自民党改憲案と同じものであり、自民党改憲案は統一教会改憲案でもある。

国葬反対・安倍政治清算

 岸田文雄首相は、7月14日の記者会見で安倍を国葬とする理由として、首相在職日数が憲政史上最長であること、日本経済の再生や外交に大きな実績を残したこと、国内外から幅広い哀悼、追悼の意が寄せられていることなどを挙げている。だが、この「説明」は多くの人びとから反発・冷笑・批判されることとなった。こうした批判と岸田が十分な説明をしていないという世論の高まりに逃げ回っていたが、どうにも逃げおおせることができなくなって、9月8日、ようやく国会で岸田文雄総理が出席し、野党などの質問を受ける形で安倍総理の国葬について説明した。
 法的根拠については「行政権の範囲内で内閣府設置法と閣議決定を根拠に決定したが、どう評価するかについては、その時の国際情勢、あるいは国内の情勢によって評価は変わるわけであります。その時々、その都度、政府が総合的に判断し、どういった形式をとるのか判断する。これがあるべき姿だと、政府としては考えているところ」としたが、これは政府だけの判断で十分だということだ。
 かつて1975年に佐藤栄作元首相が死去した際、当時の吉国一郎内閣法制局長官は国葬について「法制度がない」「三権の了承が必要」との見解を三木武夫首相に示していた。佐藤は当時首相在職日数が最長であり、非核三原則を宣言などでノーベル平和賞を受けていたが、こうして佐藤国葬は取りやめとなった。
 今回の内閣法制局の対応はずいぶん違う。内閣官房内闇総務官室応接録(令和4年7月12日日〜14日)に「〔件名〕国の儀式として行う総理大臣経験者の国葬儀を閣議決定で行うことについて」があり、そこでは「〔相談・応接要旨〕標記の件に関し、別添の資料の内容について照会があったところ、意見がない旨回答した」とある。つまり、内閣法制局としての「意見がない」つまり黙認しただけということだ。かつての内閣法制局は政権の意向に対してもそれなりの意見があったが、いまは単なる自動承認機関になっているのである。こうした内閣法制局の在り方は、安倍政権時の戦争法制を合憲とするために、急遽、内局経験のまったくない外務官僚(小松一郎駐仏大使)を局長にすげ替えて以来顕著になった。だが政権の言うことはなんでも0Kという建付けは安倍国葬での混乱をもたらした。自民党の自業自得の弁証法的な結果というべきであろう。

ますますひろがる反対行動

 いま全国各地から安倍国葬反対の行動が巻き起こっている。これは安倍政治をひきつぐ岸政治への怒りの声の激増にほかならない。
 7月22日、岸田は、国会に諮ることもなく、安倍「国葬」を9月27日に日本武道館で、全額国費で行うことを一方的に閣議決定した。
 早速、閣議決定当日の22日、首相官邸前では早朝から、「許すな!憲法改悪・市民連絡会」など11の市民団体のよびかけによる緊急の行動がおこなわれ国葬決定に反対の声をあげた。以降、市民団体、労働団体、言論、宗教、法曹、職域また女性、青年、被爆地からなど各界各層の反対の声明が出された。
 集会・デモ・署名、国葬の賛否を問うシール投票」などの行動は数多く展開されている。「国外への反対アピール、また外国人記者クラブでの国葬反対の会見もおこなわれる。
 そもそも安倍政治とはなんだったのか。
 森友学園、加計学園、桜を見る会問題、消費税の10%へのアップ、教育基本法の改悪、防衛省の設置、特定秘密保護法の制定、武器輸出禁止3原則の撤廃、集団的自衛権の閣議決定と戦争法制、共謀罪・組織的犯罪処罰法の制定、アメリカ製高額兵器の購入、辺野古米軍基地建設、南西諸島への自衛隊配備とミサイル基地化を強行し、そして辞任に際しては敵基地攻撃論、核「共有」などを置き土産とした。コロナ対策でもアベノマスクの失態を犯すなど、総じていえば、日本の政治・経済・社会の状況を危険な水域にまで引き込んだ悪政であった。
 安倍国葬反対運動とは安倍政治に対する否定的決算の闘いでもある。
 いま自民党岸田政権は窮地に陥っている。自民党と旧統一教会の癒着を暴露し、安倍国葬反対の声と運動を大きく盛り上げよう。
 9月27日の安倍国葬当日には全国各地で、国葬反対、自民党政治反対の声をあげていこう。
 岸田政権を打倒しよう!

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霊感商法及びその他反社会的な宗教的活動による被害実態の把握と被害者救済についての会長声明

 本年7月8日、安倍晋三元内閣総理大臣が銃撃されたことを契機として、世界基督教統一神霊協会(現在の法人名は「世界平和統一家庭連合」、以下「旧統一教会」という。)の問題が様々指摘されている。
いうまでもなく、信教の自由は、憲法第20条に保障された権利として十分に保護されるべきである。しかしながら、宗教団体も社会の一員として関係法令を遵守しなければならないのは当然のことであり、仮に法令から逸脱する行為があれば、厳正に対処されなければならない。

 当連合会は1987年7月に「霊感商法被害実態とその対策について」、翌1988年3月に「霊感商法被害実態とその対策について(その二)」と題する意見書を公表した。これらの意見書では、霊感商法に関わる販売業者群の背後に旧統一教会の存在が推認できることを指摘した上で、 このような販売業者が、先祖や家族のことを思う消費者の心情や不安心理を巧みに利用して高額な商品を売りつけていること、全国的に同一の手口によって深刻な被害が多数発生していることなどについての報告を行った。そしてこれらの実態を踏まえ、当連合会として、司法・行政各部門はもとより弁護士会・弁護士個々人においても、毅然として対応すべきであることなどを提言した。

 さらに、当連合会は、1999年3月にも「反社会的な宗教的活動にかかわる消費者被害等の救済の指針」と題する意見書を公表し、宗教団体等による消費者被害を抑制するべく、相談事例や裁判例の紹介をするとともに宗教的活動に関わる人権侵害についての判断基準を解説するなどした。

 しかしながら、今なお、霊感商法や不安心理を巧みに利用した過大な献金の要求等反社会的な宗教的活動に関わる深刻な被害は無くなっておらず、信者の子どもの生活や精神面まで苦境に陥らせる実態が続いている。

 国は、このような状況を踏まえ、本年8月18日、法務大臣の主宰により「『旧統一教会』問題関係省庁連絡会議」を開催し、関係省庁が幅広く、被害実態の把握と被害者救済のための仕組みづくりを速やかに進めること及びその前提として情報提供のための集中相談を行うことを決定した。また、消費者庁は、「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」を立ち上げ、霊感商法等の消費者被害の発生及び拡大の防止を図る対策を検討するとしている。国のこのような取組は、被害者救済の第一歩として評価できるものであり、当連合会としても抜本的かつ実効的な解決策の構築に向けて、積極的に連携協力をしていく所存である。

2022年(令和4年)8月29日

          日本弁護士連合会   会長 小林 元治


沖縄県知事選での玉城圧勝は政権の南西諸島軍事化に大打撃

 9月12日投開票の沖縄県知事選では、玉城デニーさんが大差の勝利で再選された。自公が推す佐喜真淳、保守系無所属の下地幹郎の票あわせても、玉城票が1万以上上回った。佐喜真陣営は「完敗」を求めざるを得なかった。辺野古基地建設を強行しようとする岸田政権に対するおおきな打撃となった。
 自民党茂木敏充幹事長を中心に、佐喜真は陣営は辺野古移設と普天間返還実現と国からの巨額な振興予算獲得を打ち出し、きわめて攻撃的な選挙戦をしかけてきた。政府・自民党の政策を背景に、今年に入ってからの市長選では「オール沖縄」系候補は自民推薦候補に4連敗という厳しい状況だった。7月の参院選でも伊波洋一さんは勝利したとはいえ接戦となった。
 こうした逆風に抗して玉城知事は辺野古基地建設断固反対を訴えたー「辺野古新基地建設は完成できない。普天間の危険性除去は部隊を県外・国外に移し、オスプレイやヘリが上空を飛ばない日常を取り戻す。玉城デニーは絶対にぶれない。再び、県知事としての役割を担わせてほしい」。正面から、普天間の県外・国外移転と辺野古の建設中止を強く訴えたのであり、その結果として圧勝なのだから、辺野古問題についての「NO」の県民世論が確定したということに他ならない。
 玉城知事の訴えが浸透し、また日本全国各地で広がる安倍国葬反対・自民党と旧統一教会の癒着への糾弾の声が追い風となった。この間、佐喜真の旧統一教会とのズブズブの関係が暴露された。佐喜真が台湾での同教会のあやしげな儀式にまで参加していたことも暴露された。
 政府自民党は、今回の沖縄県知事選で玉城県政を覆し、辺野古新基地建設や南西諸島への自衛隊配備、また日米共同での中距離弾道ミサイル配備など対中国戦争体制づくりを加速化しようとしてきた。しかし、今回の県知事選での佐喜真の大敗北はその目論見に重大な障害を造り出した。
 今後、政府としては、経済再建に向けた財源の確保というところで沖縄県に対するいやがらせ・恫喝をかけてくるのは必至だ。来年度の概算要求も前年度から200億円減だが、さらなる減額という暴挙もやってくるだろう。
 次の戦いは、10月23日投開票の那覇市長選だ。故・翁長雄志前知事の息子さんの翁長雄治前県議が出馬する。
 沖縄の人びとと堅く連帯し、辺野古基地反対、沖縄の軍事基地化を阻止する闘いを強めていこう。


芳野連合はどこへ行くのか

  反共主義を公言し、自民党に限りなく接近  芳野友子連合会長


物価・内部留保・賃金

 マスコミは連日にわたって円安ドル高や原油高・原材料費の高騰による食品や燃料、電気、ガスをはじめとする物価上昇の到来を報じている。総務省が発表した7月の2020年を100とし、生鮮食品除く全国消費者物価指数は、前年同月比2・4%上昇の102・2。こうした物価上昇が止まらないどころか、加速している。これからが本格的な値上げラッシュの時期にはいる。物価上昇が止まらないどころか、加速している。
 企業が生み出した利益から税金や配当、役員報酬などの社外流出分を差し引いたお金で社内に蓄積されたものを内部留保という。財務省が9月1日発表した法人企業統計によると、企業の内部留保は516兆4750億円(前年度比6・6%増)で、10年連続で過去最高を更新した。規模別では資本金10億円以上で5・9%増、1千万円未満は3・6%減で、大企業製造業を中心に、内部留保が積み上がった状況が見てとれる。
 一方で、賃金は全くといってよいほど上昇していない。諸外国との賃金格差がいよいよ顕著となり、いまや、日本の低賃金は国の内外で認識されるようになってきている。米・欧・日など38ヶ国の先進国が加盟する国際機関であるOECD(経済協力開発機構)によると、2020年における日本の平均賃金(年収ベース・購買力平価のドル換算)は各国の賃金が1・2倍から1・4倍になっているが、日本はほぼ横ばいの状態であり、アメリカの約半分、ドイツの7割程度で、韓国にも抜かされた。国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、日本のサラリーマンの平均年収は1997年をピークに、その後は一度も上回ることなく推移している。じつに長期にわたる低賃金構造の固定化である。そしていま、かつてないほどの物価高にという事態に落ちいろうとしている。

連合の「春闘総括」

 企業は、より多くの儲けを生み出すことを目的にしている。企業にとって、労働者の賃金・労働条件の改善は目的ではない。労働組合は企業と闘い、賃金・労働条件の改善を勝ち取る以外にない。そのなかで日本の労働組合はどう対応しようとしているのだろうか。2021年の「労働組合基礎調査」の結果によると、労働組合員数は1007万8千人(前年比0・4%減)で、推定組織率は16・9%(同0・2ポイント低下)となっている。連合は699万人(同3万人減)、全労連は72万4千人(同1万4千人減)、全労協は9万7千人(同4千人減)だった。
 連合は、8月25日の第 8回中央闘争委員会で「2022春季生活闘争まとめ」をおこなった。全体としては「コロナ禍の影響に加え、ロシアのウクライナ侵攻や燃料・資材価格の高騰等があった中での労使交渉となったが、中長期的視点を持って『人への投資』と月例賃金にこだわり、『働きの価値に見合った賃金水準』を意識して粘り強く交渉した結果であり、労働組合が社会を動かしていく『けん引役』として一定の役割を果たすことができたと受け止める」などと自画自賛の総括を行っている。だが、具体的な「実質賃金の反転はできたか」では、「毎月勤労統計調査の2021年度分結果確報によれば、所定内賃金は前年度比0・4%増(うち一般労働者0・5%増、パートタイム労働者0・9%増)、現金給与総額も同0・7%増であった。一方、2021年度の消費者物価指数は前年度比0・1%の上昇(総合指数)であったが、2021年5月以降はほぼ一貫して上昇を続け、2022年に入ってからはその上昇幅が拡大している。そのため物価を加味した実質では、所定内賃金は2月分から、現金給与総額では4月分から、前年度比マイナスで推移している。継続的な賃上げにより、『実質賃金の長期低下傾向を反転させる』ことをめざした方針の実現をはかる必要がある」として、まったく不十分な結果であることを自ら告白することとなった。
 今後の「課題」として、「2023春季生活闘争をとりまく情勢は、国際情勢やコロナ禍の動向、輸入物価の上昇などによって大きく変化している。情勢を冷静に見極めつつ、政労使で中期的・マクロ的な視点から問題意識を共有し、国民経済を安定的な成長軌道に乗せ、デフレ経済に後戻りさせない状況をつくり、定着させていかなければならない」とか「政労使で認識を深め産業構造の変化に対応するとともに、生産性三原則を基本に雇用の安定と公正な成果分配を実現し、政策課題の取り組みとあわせ、『働くことを軸とする安心社会』に向けて前進をはかっていく必要がある」とした。

自民党と問題意識共有

 労働者をとりまく情勢には極めて厳しいものがある。この間、連合の芳野友子会長(JAM〈ものづくり産業労働組合〉出身)の政治をめぐる動向がきわだっている。7月参院選では、「連合と共産党は考えが違う。立民と共産党の共闘はありえない」と野党共闘を妨害した。その結果、全国32ある1人区で、自民党が28勝4敗となり、立憲民主党が改選23議席から6議席減らすという事態をもたらした。「野党候補の一本化が実現していれば、自民にとって勝敗は『22勝10敗』になる可能性があった」と自民党敏充幹事長もいうほどの大きな違いの結果をもたらした。参院選敗北を総括した立憲民主党の新人事(岡田克也幹事長、長妻昭政調会長、安住淳国対委員長、大串博志選対委員長など)に対しても立民と共産の再接近があるとして批判的だ。
 一方で、芳野会長の自民党との関係はいっそう密接になっている。自民党ニュースの「わが党に雇用労働政策の推進求める 連合・芳野友子会長招きヒアリング」(4月21日)には「党人生100年時代戦略本部は4月18日、日本労働組合総連合会(連合)の芳野友子会長からヒアリングを行いました。わが党は今年の運動方針で連合等との懇談を積極的に進めるとしており、今後も労働界の声にもしっかりと耳を傾け、労働者を取り巻く諸課題の解決に全力で取り組みます」という記事を掲載している。 連合の春闘総括にあった「情勢を冷静に見極めつつ、政労使で中期的・マクロ的な視点から問題意識を共有し、国民経済を安定的な成長軌道に乗せ、デフレ経済に後戻りさせない状況をつくり、定着させていかなければならない」ということのあらわれだ。

連合OBからも厳しい批判

 芳野連合はどこへ行くのか。この間、連合幹部OBからも厳しい批判が出てきている。
 連合大阪副会長だった要宏輝さんは、「連合に鳴り響くのは弔鐘か、女性会長が突進する『ガラスの断崖』」《季刊・現代の理論 第29号》(http://gendainoriron.jp/vol.29/rostrum/kaname.php)で、「2013年から10年間続いた『官製春闘=アベノ春闘』、つまり、政府が財界と『直接交渉』せざるを得なかったのは労働組合の交渉力が十分ではなかったからだ。交渉力が不十分というよりは組合の闘争力の低下といった方が正確であろう」とし、また「彼女の出身は同盟系の旧ゼンキン連合、富士政治学校出のアクターで、幸運にも組合出世コースにのったステレオ・タイプの反共かぶれの女性と仄聞する。連合会長に就任以降の彼女の言動は首尾一貫し、ぶれることはない。バックにシテ役が付き、首相官邸に通じる人物が仕切っていると思われる。『立場が変われば、言うことが変わる人がいますが、私はそうはならない。…JAMの皆さん、応援してください』(JAMのホームページ「JAMインサイト動画」)と自己の信念=反共主義を貫くことを公言している」と反共主義の姿勢を指摘している。
 またJAM副書記長だった早川行雄さんは「芳野友子新体制で危機に立つ連合 会長の器ではない、速やかな交代を――連合は労働運動の原点!に立ち返り再生の道を探れ」《季刊・現代の理論 第30号》(http://gendainoriron.jp/vol.30/feature/hayakawa.php)で、「政府審議会に労働者の代表が参加することは必要だが、大衆行動や先進的な労働協約の獲得など運動の背景がなければ政策の実現も叶わないということである。ところが芳野会長は、自民党と連合の急接近に世間の厳しい視線が向けられている最中にも関わらず、岸田内閣に設置された「新しい資本主義実現本部」への参加に加え、自民党政調の『人生100年時代戦略本部』にも出席するなど、ことさら周囲の批判や懸念を挑発するかのように、自民党へ接近する行動を続けている。」「戦後労働運動における負の側面を集大成したような人物が現在の連合会長であるという戦慄すべき事実に、連合や労働界に留まらず、社会全体が最大限の危機感を持たねばならない。」と批判している。
 日本の労働組合運動の危機的な現実がここにある。自民党政治、企業・資本との闘いとともに労働組合の抜本的な改革がなされなくてはならない。


自民党どこを切ってもカルト飴

           安倍国葬に反旗を!(大阪)


 「ナンデ? 故安倍氏が国葬に 岸田独断政治はアカン」の看板をもってはや一カ月半が過ぎた。毎週行われるスタンディングに馴染みのおじさんや不動産屋さんが声をかけてくれる。高校生も「こないだ統一教会に騙されました」といってきてくれる。なかなか皆さん主張が明確で、ついつい話が戦争の方にいってしまう。なかには「非国民」と口先で言っていく人もいる。今日はウクライナ侵略反対のアピールとセットなので、安保法制反対運動の時とは異なり、立ち止まる人数も多く一か所で固定している。

 8月27日、大阪茨木市では二か所で各140名が集まり、翌28日には吹田市内JR吹田駅前に210名が結集して「安倍元首相の国葬に反対します吹田アクション」が行われた。
 この日までに半旗掲揚の吹田市教育委員会に対して7月12日の安倍葬儀および9月の国葬に際しての半旗掲揚の強制について吹田市には質問状が寄せられた。実行委員会としても対市交渉も行っている。スゴイ動きだ。 くわえて吹田市議会議長への国葬撤回を求める陳情書の提出準備している。集会当日には賛同人が226名に達し、8月最後の日曜日で通行人は少なかったが、私のところにも若い男性が署名をしたいと来られた。
 吹田アクションでの特徴点は、この国葬反対運動を通して日本の民主主義をつくりかえていこうという意気込みがある点だ。発言者から「安倍ではなく中村哲さんこそ国葬にすべきだ」「アベ・ヤクザ・カルトとこの反社会勢力が日本の政治を支配してきた。もう許せない」などがつづく。共産党、新社会党、れいわ、市民派市議などからも強い連帯アピールがあった。国葬費用も2・5億円から35億円それ以上といわれだしている。連日300名を超すコロナ死者が出ているのに、コロナ死者は看取りの立ち合いすらされなかったというのに、東京オリンピックに次ぐ政商ボロ儲けの政治は許されない。またこの北摂で悪名高い維新議員は国会内外で暴言を繰り返しておきながら、統一教会のことは不勉強でしたとして関与追及から逃げ回って、維新代表選に登場している。どの口が物を言ってるのかと思う。
 岸田首相は、国会で国葬について説明する前に、統一教会の実態解明を安倍氏との関係調査を各疑惑議員について明らかにしなければならない。自民党と統一教会の改憲案が瓜二つなどあってはならない。岸信介・安倍晋太郎とつづく家業としての安倍自民党政治を岸田はどう説明できるのか。これからも注目だ。
 豊中市民アクションでは、9月から4連日スタンディングが行われている。
 わたしたちもそれぞれ地元で頑張りましょう。 (河田)



関東大震災・朝鮮人中国人虐殺から99年

          
林伯耀さん「大島町事件再考」

 関東大震災から99年たった。
 大震災は天災であるとともに人災であった。1923年9月1日の関東大震災では、日本の軍や警察の悪質な扇動や直接行為によって多くの朝鮮人、中国人また日本人無政府主義者、社会主義者、労働組合の活動家が虐殺された。いままたこの国で排外主義があおられ、自民党政権によって「戦争する国」づくりが強行される状況で、こうした事件は、避けることなく直視されなければならず、歴史に永遠に記され、世代から世代へと伝承されていかなければならない。
 今年も各地でさまざまな集会、追悼会などが催された。
 9月4には、「関東大震災中国人虐殺を考える会」の主催で、中国人受難者追悼行事が行われた。

遺族からのメッセージ

 江東区亀戸文化センターでは、「中国人受難者追悼式」での黙祷と受難者氏名が読みあげられた。
 中国からは、南葛飾郡大島町(現在の東京都江東区大島)周辺で中国人救済組織、僑日共済会を結成して在日中国人を助ける運動をして虐殺された王希天の遺族や犠牲者の多くの出身地の遺族団体からのメッセージが寄せられた。
 王希天の孫の王旗さんは、「過去のことは胸にしまい、永遠に離れた天上の人を思い、悼み悲しむ。この時に当り、私たちは王希天烈士と温州旅日華工が民族屈辱の時代が生み出した、反帝反封建の人生の選択に思いを寄せ、彼らの短いけれども永遠に光り輝く生命の歴程に思いを馳せるとともに、最も心しなければならないのは、彼らの勇敢に闘う革命精神と国と人々を憂う純潔な心です。私たちが歴史の経験と教訓をしっかり銘記するのは、恨みを継続させるためではなく、善良な人々の平和への憧れとその堅持を喚起するためであります。それは、また歴史を鑑として未来に向かうことであり、ともに平和を尊重し、平和を維持することです。中日両国人民の友好を何世代にもわたって続けていきましょう。世界各国人民が、平和と安寧を永遠に享受できるようにしましょう」。
 関東大震災虐殺事件温処遺族聯合会(準)は「絶え間なく右傾化を進める日本社会において、この歴史を振り返ることはとても重要なことです。今日の日本社会には、警鐘を鳴らし続けることが必要です。こうした反人間的で人権を踏みにじる虐殺事件は、忘れてはならず、力を込めて伝えていかなければなりません。歴史の教訓を汲み取り、同じ過ちを再び繰り返してはなりません。」として、以下の提案をこなった―@中・日・韓を含むそれぞれが、東京、ソウル、温州、麗水、福建などの各地において、それぞれの形式で記念活動と宣伝を行い、この歴史を伝えましょう。歴史の教訓を深く銘記し、平和を大切にしましょう。私たちの初志は “歴史を鑑として、未来に向かう”ことです。A関東大震災虐殺事件に関して、中・日・韓を含む相互間において、民間交流及び学術交流を推し進めましょう。新型コロナ感染症の期間は、オンラインでの開催も可能でしょう。Bそれぞれの国で、歴史教科書に取り上げられるように努力しましょう。Cそれぞれが、関係する現地の学校と連携し、学生達に向けて巡回報告会をしましょう。

背景に中国人排斥政策


 つづいて「関東大震災中国人虐殺を考える集い」が開かれた。在日華僑で長く侵略戦争と中国人への暴虐を告発し続けてきている林伯耀さんが「大島町事件再考」と題して報告を行った。
 震災後の9月3日から4日にかけて、大島町及びその近辺で、400人以上の中国人労働者が虐殺された。虐殺された中国人の多くは浙江省温州の貧しい地域から来た労働者であった。加害者に軍・警察・在郷軍人会・自警団、人夫頭、労働者大衆がいた。凶器には銃、刀、鉄棒、棍棒、薪割り、斧、とび口、竹槍等が使われた。虐殺は、極めて計画的、組織的に行われ、虐殺後、被害者の所持金や金目の物までが奪われた。1020年3月から起きた戦後恐慌で多くの中小企業の倒産の続出が続いた。労働市場には失業者が溢れ、労働者の生活を守るための労働組合活動は逆に活発化したが、日本人底辺労働者までには及ばなかった。底辺の中国人労働者の労働と生活の権利を擁護するために22年9月に大島町に設立された僑日共済会とそれに結集する中国人労働者の存在は、当地の人夫頭や一部の零細企業経営者、更には多くの日本人底辺労働者にとって怨嗟の対象となった。
 関東大震災とその後に発令された戒厳令の機会を利用して、普段より共済会に強い敵愾心を持っていた人夫頭たちと警察は、在郷軍人(自警団)や同じ不満を持っていた日本人労働者と事前に謀議して、中国人労働者の計画的な集団殲滅を謀った。大島町事件は、中国人労働者と共済会の生活と労働の権利を守る戦いへの警察権力と人夫頭や在郷軍人会、排外主義の虜となった自警団、日本人労働者大衆による集団的組織的報復であった。虐殺の背景には日本政府による中国人労働者排斥政策があった。その上に共済会の労働者支援の動きがあり、この結果、日本人底辺労働者や日本人人夫頭らと中国人労働者との間に対立感情が潜在化、中国人労働者は低廉な賃金で日本人労働者の仕事の機会を奪っていると見なされていたのである。震災前の1923年2月には神奈川県で横浜高島町事件が発生している。当時の「時事新報」2月15日夕刊によると「三百名の日支人、横浜で格闘―負傷者二十名を出した高島町駅前の大喧嘩…十三日午後八時半頃、横浜市高島町貨物駅前広場に於て、約三百名の日支人労働者が手に手に棍棒、薪、雑棒等を携えて入り乱れ、大格闘」とある。5月には、東京の本所と深川の人夫請負人が、同所一帯の大運送店、工場に対して、中国人労働者を雇用しないように要請し、以後、日本政府当局による中国人労働者の本国送還、強制退去が続いていた。
 大島町事件に王希天事件が加わることによって、中国人虐殺は日本の国家戦略と結びついていることが明らかとなり、朝鮮人大量虐殺と社会主義者への弾圧を含めて、日本が国内の天皇制ファシズム体制を強化し、中朝人民を一層敵視し、大陸への更なる侵略体制を整える契機となったのである。

虐殺事件と日本政府

 一橋大学名誉教授の田中宏さんは「虐殺100年の時代を問うー2023年を前に」と題して報告。
 来年の関東大震災100年となる。伊藤博文は朝鮮植民地化に大きな責任があり、朝鮮の愛国者安重根によって暗殺された。戦後の日本は、その伊藤を1000円札の肖像としたことがあったが、これは戦後の日本も侵略・植民地化の責任を全く感じていないことを示すものだと在日の人に指摘されたことがあったが、まったくその通りだ。日本政府はいまもそうした対応をやめたわけではない。関東大震災の朝鮮人・中国人大虐殺事件でもそうだ。9月2日には戒厳令が布告され、軍隊が出動し、「朝鮮人が放火した」「朝鮮人が暴動起こす」というデマが流され、官憲、自警団による虐殺がおこなわれたが、犠牲者に関する日本政府の調査はなかった。「朝鮮罹災同胞慰問団」名での調査で6415名と報じられたが、司法省は232名、諸新聞報道で1464名とあるだけだ。中国については、帰国した幸存者・温州出身の黄子蓮などの聞き取りで中国人虐殺事件が明るみにでた。上海の有力紙『時報』(23・10・13)が第一報といわれる。日本の読売新聞の社説「支那人殺傷事件」(23・11・7)は当局の指示で削り取られて発行された。
 東京で公然かつ大規模に行われた蛮行は世界に知られることになった。戦後のことだが、「このような恐るべき大虐殺(朝鮮人)が白昼公然と行われている日本という国は断じて文明国とは認められないことに、それを平気で見ていて止めようとしない日本政府は世界中でも一番野蛮な政府である」(当時の米駐日大使、『人物往来』1967年 1月号)と書かれている。 いまでは、様々団体、個人がこの問題に取り組み、数多くの著作・雑誌でも出された。日弁連は、2003年に小泉純一郎首相に対して、関東大震災直後の朝鮮人、中国人に対する虐殺は軍隊あるいは虚偽事実の伝達などの国の行為に誘発された自警団により行われたものであるとして、謝罪と真相究明などを求める勧告「関東大震災人権救済申し立て事件調査報告書」を出している。
 日系人強制収容について、米ブッシュ大統領は謝罪の手紙と2万ドル小切手を手渡した。
 ソ連抑留者問題では、ロシアのゴルバチョフ大統領はハバロフスクで抑留者墓地に献花、死没名簿など持参、全国強制抑留者協会らと面会した。また、広島訪問したオバマ大統領は、生存被爆者と対面した。
 しかし日本政府にはそうした姿勢はまったく見られない。
 こうしたことは続けられてはならない。


本当のダイバーシティをめざすということ

 昨年の3月、スリランカから技能実習生として日本に来たラスナヤケ・リヤナゲ・ウィシュマ・サンダマリさんは、名古屋出入国在留管理局に収容中、自身の体調不良を訴え続けていたにも関わらず、医師に診せられることなく適切な治療を施されないまま亡くなった。この事件は、日本の技能実習制度・出入国管理及び難民認定法体制の問題点・残酷さを世に示すものとなった。
 ベトナム、アフガニスタン、ミャンマー、シリアなどからも多くの技能実習生が来日している。
 技能実習生といっても、日本人が嫌う劣悪な労働をさせるのが実態だ。たとえば、ベトナムからきた三人の女性は不法就労という状況に怯えながらも故郷にいる家族のために懸命に働くのだが、思わぬ悲劇が待っていた。映画『海辺の彼女たち』(2020年日本・ベトナム作品)に描かれている。
 このような技能実習生はここ盛岡にもいることを最近知った。
 盛岡の台所として親しまれている神子田の朝市にいくと二人のベトナム人が「岩手日報」の配達をしていてた。日本語をマスターしている彼らは「おはようございます」と声をかけてくれるし、私が「いま同じ新聞を読んできたよ」というと「ありがとうございまう」とさらに笑顔がひろがる。私も20代には新聞奨学生で苦労したことがある。
 映画『ベイビー・ブローカー』を観た人たちも多いと思うが、言葉がわからないからこそ人間はその行為で心がつながることができると言っているような作品だった。
 いろいろな国から人々が入国してくことは避けられない。日本社会がかれらによって支えられていることは否定できない。 多くの国籍のひと・民族が日本に住んでいて、多民族国家化が進んでいる現実がある。
 言語・文化・宗教・食などの生活習慣などを相互に理解しあい、性別・国籍・年齢・宗教などで区別・差別をしない本当のダイバーシティをめざすのがいまの課題だろう。  (R・T)


せんりゅう

  アベの毒せおいてキシダの国葬

        統一もアベのまねいた甘い汁

  ネコにまたたび自民に統一

        日本国をほうむるのかな国葬

  生きることは食べること循環世界

        魚 なんにも言わず食べられている

  資本そこいらぢゅうに不幸むごん

        しらざぁ言って聴かせやしょう自殺激増

   うんどうを興しあかりを灯す友

   
                 ゝ 史
  2022年9月


複眼単眼

       
 「新たな戦前」か

 8月31日、自民党の麻生太郎副総裁は党麻生派の会合で、「台湾有事」を念頭に「日本でも戦争が起きる可能性は十分にある」とのべた。「少なくとも沖縄、与那国島、与論島にしても、台湾でドンパチ始まるということになったら、それらの地域も戦闘区域外とは言い切れないほど、間違いなく国内と同じ状況になる。戦争が起きる可能性は十分に考えられる」と発言した。
 この麻生発言はきわめて危険で、南西諸島の住民に対する無責任きわまる発言だ。しかし、これは自民党の中では異端の考え方ではなく、2021年12月1日、故安倍晋三元首相が台湾で開かれたシンポジウムにオンライン参加し、その基調講演で「日本と台湾がこれから直面する環境は緊張をはらんだものとなる」「尖閣諸島や与那国島は、台湾から離れていない。台湾への武力侵攻は日本に対する重大な危険を引き起こす。台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」と語ったことがある。
こうした認識にもとづいて政府は年内に「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」の防衛3文書の大幅な改訂作業を進めようとしている。この中で「防衛力の5年以内の抜本的強化」が企てられている。
 防衛省の2023年度予算の概算要求では、「敵」のミサイル発射基地などを破壊する「反撃能力」(従来は「敵基地攻撃能力」と呼称)を保有するために、22年度当初予算比3・6%増の5兆5947億円と、過去最大規模となった(防衛費に関しては、金額を明示しない「事項要求」が認められており、今回は年末に実施される「防衛3文書」の改定に伴って金額を確定できないという理由がつけられており、それが異例の100項目に上っている。
事項要求の筆頭は敵の射程圏外から攻撃できる長射程能力を有する「スタンド・オフ・ミサイル」で、従来の数百キロ程度の射程能力を900キロ以上に伸ばすため陸上自衛隊の「12式地対艦誘導弾」向上型(SSM)改良費に272億円を計上したうえで事項要求した。この改良型が南西諸島に配備されれば中国沿岸部や朝鮮半島全体を射程に収めることが可能になる。23年度からの量産費用は事項要求とされた。
 戦闘機F15に搭載する射程900キロのミサイルJASSMの取得費も計上した。また音速の5倍以上で飛行する超音速誘導弾の研究費用も事項要求とされた。
 この結果、緊張するアジア情勢の中で5年以内にたち現れる日本は、軍事費がNATO並みの対GDP比2%以上の世界第3位の軍事費大国であり、米中の覇権争奪戦のなかで、米国と同盟し、台湾有事から日本有事へとすすんでいく政策だ。
 8月3日、米国連邦議会のナンシー・ペロシ下院議長(民主党)は中国政府の繰り返しの強硬な警告を無視して台湾を訪問し、台湾の蔡英文総統などと会談し、「脅威に直面する台湾が自由を守るのを支援する」という米国議会の継続的なコミットメントを再確認した。
 ペロシ議長の訪台強行を受け、中国は4日から数日間にわたり、台湾近海で過去最大の実弾軍事演習を展開した。演習は中台の中間線を越え、台湾が領海だと主張する沿岸12カイリ内でも行われた。
 これらの軍事的緊張は両者が計算ずくで作り出しているものであり、麻生がいうような即戦争になるとは言わないが、戦争の導因にならない保証はない。「火遊び」は即刻辞めるべきだ。 今年は日中復交50周年でしょ。(T)