人民新報 ・ 第1415号統合508号(2022年11月15日)
  
                  目次

● 戦争と大増税への道・防衛三文書改定

        岸田内閣をさらに追詰めよう

● 貧困問題の抜本的解決を

        反貧困ネットなどが院内集会

● 憲法改悪阻止   11・3  国会前など全国で憲法集会

● 守ろう!外国人労働者のいのちと権利  労組、弁護団、市民団体などが院内集会

        「守ろう!外国人労働者のいのちと権利」集会アピール

● 問題多い顔認証式カメラシステム  共謀罪NO!秘密保護法廃止へ!
        
        マイナンバーカード普及のための健康保険証の廃止に反対します(共謀罪NO!実行委員会・「秘密保護法」廃止へ!実行委員会 2022年10月20日)

● 狭山差別裁判第3次再審請求

        万年筆の鑑定と11人の鑑定人尋問を求める署名

● 上関・伊方原発反対訴え

        西瀬戸ピースサイクル&第36回伊方集会

● 映画『日本原−牛と人の大地』 (監督:黒部俊介 2022年 110分)

● 映画と音楽と戦争

● せんりゅう

● 複眼単眼  /  すべての軍事演習に反対だ





戦争と大増税への道・防衛三文書改定

        岸田内閣をさらに追詰めよう

 岸田内閣の支持率が急落しつづけている。安倍「国葬」の一方的な決定・強行や旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と自民党の切っても切れない癒着ぶりは多くの人びとの批判を浴びた。旧統一教会との関係で辞任した山際大志郎・前経済再生担当相が自民党新型コロナ対策本部長に就任。山際後見人である麻生太郎副総裁・甘利明前幹事長の圧力があったといわれる。葉梨康弘法相も辞任した。つぎは誰か、辞任ドミノは続きそうだ。くわえて首相の息子を独断で秘書官にしたりと、岸田の自ら墓穴を掘る行動が止まらない。
 物価上昇はこれから本格化する。物価高が多くの人びとの生活を直撃している。にもかかわらず賃金はいっこうに上がらない。実質賃金の目減りは深刻化している。そしてまた新たなコロナ感染の拡大がはじまった。こうした状況にもかかわらず、岸田内閣は、ワクチン接種の有料化をもくろんでいる。これではコロナ蔓延を政府が後押ししているようなものだ。
 岸田の挽回策は「新しい資本主義」の実現政策だ。10月28日、政府は電気、ガス料金の負担軽減策を柱とする総合経済対策を閣議決定した。当初、岸田は、電力会社への補助金ではなく、家計を直接支援すると強調していたが、財務省の反対でとん挫し、小売業者へ補助金を支給するということになった。財源は、またも赤字国債の増発である。くわえて国民年金の保険料納付期間を現行の59歳までから5年間延長する検討をはじめた。
 なにより軍事費の飛躍的な増大である。自民党は、GDP比2%以上の増額を5年以内に達成するよう求めている。22年度は5兆4000億円でGDP比1%程度であるが、倍の2%になれば11兆円近くとなる。財源については国債発行論があるが、増税による財源確保を求める声が多い。自民党税制調査会の宮沢洋一会長は10月17日に、政府が目指す防衛費増額の財源について「足りないときは税収ということになる。所得税、法人税を含めて白紙で検討する」と述べているように、結局は大増税でまかうことになろう。
 これで内閣支持率が下がらない方がおかしい。各種世論調査でも岸田内閣への批判の声の大きさがわかる。とくに政権寄りでは定評のある読売新聞でさえそうだ。―読売新聞社は4〜6日、全国世論調査を実施し、岸田内閣の支持率は内閣発足以降最低の36%(前回10月1〜2日調査45%)で初めて30%台に落ち込んだ。不支持率は50%(前回46%)。物価高対策などで実施する総合経済対策を「評価する」は62%で「評価しない」は32%。北朝鮮の核やミサイル開発を阻止するために、岸田首相は、適切に対応していると「思う」は19%にとどまり、「思わない」は68%に上った。「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)による被害者を救済するための法案を今国会で成立させるべきだと「思う」は73%だった。今の健康保険証を原則として廃止し、マイナンバーカードに一本化する方針であることには「反対」が49パーセント、「賛成」が44パーセント。―
 内閣支持率は8月以降、緊急調査も含め5回連続で下落し、政権発足以来、最低を更新した。政府の物価高対策となる総合経済対策については「評価する」が62パーセントだったが、ほとんどすべての国内政策が評価されていないことがわかる。
 だが、外交安保面では、注意すべき数字となっている。―自衛目的で相手国のミサイル発射基地などを破壊する「反撃能力」を日本が持つことに「賛成」とした人は52%となり、「反対」の41%を上回った。日本が防衛力を強化することに「賛成」は68%(前回10月調査71%)で「反対」は23%(同21%)だった。中国で習近平政権が3期目に入ったことで、今後、日本の安全保障にとって中国の脅威が高まると「思う」人は80%に達した。―
 このように「防衛力強化」には少し賛成が減って反対が増えているが、対中脅威論が依然として多数を占めている。
 この傾向をあおり外交努力で緊張を解くのではなく、軍備増強での対応は危険な結果をもたらしてしまう。
 この危険な道=戦争する国づくりを一歩進めるものが、防衛三文書(「国家安全保障戦略(国家安保戦略)」「防衛計画の大綱(防衛大綱)」「中期防衛力整備計画(中期防)」)の年末までの改定である。
 自由民主党政務調査会安全保障調査会は、今年の4月26日に「新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言〜より深刻化する国際情勢下におけるわが国及び国際社会の平和と安全を確保するための防衛力の抜本的強化の実現に向けて〜」を発表した。「わが党は先の選挙公約において、NATO諸国の国防予算の対GDP比目標(2%以上)も念頭に防衛関係費の増額を目指すことや新たな国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画を速やかに策定することを国民に約束した。わが国が平和であり続けるために、わが国自身の防衛力の抜本的な強化や価値観を共有する国々との様々な分野での協力などを通じて、かつてない厳しい安全保障環境に立ち向かうために必要な抑止力及び対処力を強化する必要がある。現在、岸田内閣はこれら三文書の策定に向けた議論と検討を行っており、わが党としてもこの議論と検討に有益な貢献をするべく、これまでのわが党における安全保障に関する真摯な検討と議論の結果を踏まえた提言を行う」といっている。
 安保三文書改訂を絶対に許してはならない。岸田内閣は厳しい状況に追い込まれている。岸田内閣をさらに追詰め打倒しよう。



貧困問題の抜本的解決を

        反貧困ネットなどが院内集会


 10月20日、衆議院第一議員会館で「反貧困ネットワーク」「コロナ災害を乗り越えるいのちとくらしを守る何でも電話相談会」主催による「生きさせろ!コロナからもうすぐ3年 出口が見えない困窮者支援 貧困問題の抜本的解決を求める院内集会&対話集会」集会が開かれた。
 はじめに宇都宮健児理事長があいさつ。コロナ禍で社会的な弱者は追い詰められている。困窮者支援の相談者の大半は若者で、精神疾患を持つ人が多い。格差・貧困は拡大しているが、支援の現場に公助は見当たらないという厳しい現実がある。
 つづいて瀬戸大作事務局長は、救済政策は政治の責任だと強調した。
 在日外国人支援の現場、電話相談会からの提言、シングルマザーアンケートの分析などの報告が行われた。
 集会には、維新の会を除く野党の立憲民主党、国民民主党、共産党、社民党、れいわ新選組の国会議員も出席し、貧困問題に取り組むとあいさつ。
 集会後の国との交渉では、生活保護制度などの拡充などを求めた。
 要請項目では、厚生労働省に以下のような要望を行った。◎物価高、光熱費等の上昇への対応としての生活保護費(生活扶助費)の引き上げを求める。また、猛暑が続く中、夏季加算の創設を求める。◎地方創生臨時交付金を迅速、効果的に使い、国の支援がいきわたらない事業者や困窮世帯を直接支援するよう働きかける。◎特例貸付利用者の破産申立等がすでに急増しており、償還が始まる23年1月以降、自殺者の増加等、一層深刻な事態となることが強く懸念される。償還免除の範囲の抜本的拡大と家計状況に応じた柔軟な償還猶予・少額返済の容認、多重債務を解決しつつ生活再建を支援する相談支援体制の拡充・広報の徹底を求める。◎貸付でもない生活保護でもない「給付付き税額控除制度」や最低生活費を下回る収入の世帯に資産調査なしで、生活扶助相当額を給付する制度の新設を求める。◎住居確保給付金制度を拡充・恒久化するなど民間賃貸住宅に暮らす低所得者を対象にした恒久的な家賃補助制度を創設するとともに、入居費用の無利子貸し付け制度の創設を求める。高齢者、ファミリー世帯だけでなく、若年単身者も含めたすべての低所得者を対象とする。◎公営住宅の入居要件を緩和、60歳未満、単身でも入居できるようにすることを求める。◎居住支援協議会とも連携して、民間の空き家住宅や老朽化した公社住宅を民から公が借り上げて確保し、入居基準を緩和し、単身者でも外国籍の方でも入居できるようにすることを求める。(以下略)


憲法改悪阻止

        11・3  国会前など全国で憲法集会


 1946年11月3日、「主権在民」「平和主義」「基本的人権の尊重」の三原則を柱とし、平和と文化を重視した日本国憲法が公布された。
 これを記念して11月3日には全国各地で憲法を生かし改憲に反対するさまざまな取り組みが行われた。
 東京では、国会議事堂周辺で「武力で平和はつくれない つなごう憲法をいかす未来へ「11・3憲法大行動」(主催は、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会、9条改憲NO!全国市民アクション)が行われた。集会は、国会正門前(解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会)、衆議院第2議員会館前(戦争をさせない1000人委員会)、国会図書館前(戦争する国づくりストップ! 憲法を守り・いかす共同センター)の三か所を中心に4200人が国会をとりまいた。
 主催者を代表して総がかり行動実行委共同代表の藤本泰成さん(戦争をさせない1000人委員会)があいさつ。朝鮮の複数のロケット打ち上げ、米韓の軍事演習など朝鮮半島での緊張がふたたび高まっている。朝鮮との対話が必要だ。岸田内閣は朝鮮、中国を軍事的脅威として軍事費の2倍化や敵基地攻撃能力の保有など大幅な軍事増強を進めている。だが武力で平和はつくれない。わたしたちの安全は保障されない。また、この国は外国人労働者を悲惨な目に合わせている。すべてのひとが生きていける社会にすべきだ。
 国会からは、社民党の福島瑞穂党首・参院議員、立憲民主党の水岡俊一参院議員会長、共産党の田村智子副委員長・参院議員、れいわ新選組の櫛渕万里副幹事長があいさつ。「沖縄の風」の伊波洋一参院議員からのメッセージが紹介された。
 メインスピーチは、杉浦ひとみさん(安保法制違憲訴訟共同代表・弁護士)、永山茂樹さん(東海大学教授・憲法学)、古今亭菊千代さん(落語家・芸人9条の会)。
 つづいての青年リレートークでは、障がい者介助施設で働く女性、ピースボート、総がかり行動実行委員会青年PTから運動を若者に広げていく活動について報告があった。
 第2部の集会は、エリアごと(国会正門前、衆院第2議員会館前、国会図書館前)で行われた。 
 憲法の改悪を絶対に許さない運動をさらに強化・拡大していこう。


守ろう!外国人労働者のいのちと権利

        労組、弁護団、市民団体などが院内集会

 技能実習生は厳しい境遇に置かれている。とくに単純肉体労働において、外国人労働者が「使い捨て」にされている。
 技能実習生らの悲惨な現状はメディアでも取り上げられている。

 10月28日、参議院議員会館で、院内集会「守ろう!外国人労働者のいのちと権利」が開かれた。集会実行委員会は、日本労働組合総連合会(連合)、移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)、在日ビルマ市民労働組合(FWUBC)、ものづくり産業労働組合JAM、外国人技能実習生問題弁護士連絡会、日本労働弁護団、外国人技能実習生権利ネットワークで構成されている。
 はじめに、JAMの小山正樹さんが集会の趣旨を説明するなど開会のあいさつ、出席国会議員のあいさつにつづいて、現場で働く労働者による事例報告の発言がおこなわれた。連合徳島の技能実習生の労災事故への支援の取り組み、またベトナム、ミャンマーからの技能実習生から労災事故、セクハラ等についての報告があった。
 パネル討論「外国人労働者政策の課題と対応」では、連合の冨裕子総合政策推進局長が「外国人労働者に関する連合の考え方」について発言。@すべての外国人労働者の権利を保障、A受入れ対象は「専門的・技術的分野」の外国人、B外国人労働者の安易な受入れは行うべきでなく、総合的かつ国民的議論が必要という基本的考え方に連合はある。外国人労働者の権利保障の不十分さとしては、生活者としての社会的インフラの整備、コスト負担などの問題、 制度本旨を逸脱した外国人技能実習制度の不当な活用、「資格外活動」許可の悪用、不法就労、失踪などをあげた。そして、外国人労働者の受入れに関して検討すべき事項として、国内雇用や労働条件に及ぼす影響、産業高度化を阻害することへの影響、労働需給見通しに係る詳細な分析を踏まえた受入れの必要性、使用者との交渉力が弱い労働者の一層の権利保護、生活者の視点(社会保障、教育、公共サービス、防災、多文化理解の促進など)、上記に関わる社会的コスト負担などを指摘した。
 移住者と連帯する全国ネットワークの、鳥井一平代表理事は、新型コロナウイルスで実習制度の虚構がいっそうあらわになったとし、外国人技能実習制度は速やかに廃止し、ウソやごまかしのない、まっとうな労働者受入れ制度とし、労使対等原則が担保された多民族・多文化共生社会を実現すべきだと強調した。
 日本労働弁護団常任幹事・外国人技能実習生問題弁護士連絡会の指宿昭一共同代表は、安価な労働力として外国人を都合良く使い、不要になれば帰国させるという「使い捨て」の制度であるの考えが社会に蔓延している。外国人技能実習生制度は存続させるべきではなく、日本は難民の受け入れや処遇に関する問題と向き合い解決していくべき時だと述べた。
 最後に、集会アピールを確認した。

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「守ろう!外国人労働者のいのちと権利」集会アピール


 外国人技能実習制度の適正な実施と技能実習生の保護を目的とした外国人技能実習法は2017年11月に施行されました。本年で法施行から5年を経過しますが、実習実施者による残業代不払いや不当解雇等の労働関係法令違反やハラスメント等の問題の発生は後を絶ちません。また、技能実習生を安価な労働力として活用する実態から、発展途上国への技術移転を通じた国際貢献のためであるとする技能実習制度の本旨が建前に過ぎないことは明らかです。

 一方、特定技能制度については、国内人材の確保が困難な産業分野に限り、一定の専門性・技能を有する外国人労働者の受け入れを目的として創設されました。しかし、制度上求められる日本人との同等賃金や悪質なブローカーの排除等の労働者保護の実効性は確保されておらず、また、受入れ分野や人数が関係閣僚会議のみで決定されるプロセスなど、特定技能制度にも多くの課題が内包されています。

 特定技能制度も併せた技能実習制度の見直しに向けた検討は、この秋にも開始されると言われています。見直しにあたっては、まずは両制度の課題や実態を認識したうえで、技能実習生や外国人労働者の権利保護に向け、他の在留資格も含め外国人労働者政策全体として総合的かつ国民的な議論を進めるべきです。

 加えて、外国人労働者は、地域における生活者でもあります。各種行政サービスにアクセスできるよう、言語上の障壁を取り除くことはもちろん、各種社会保障や子どもの教育など共生に必要な環境整備は喫緊の課題です。外国人労働者はもとよりその家族が、安心して働き、暮らせるよう、共生社会実現に向けて大きく舵を切らなくてはなりません。

 外国人労働者の人権および労働基本権が尊重され、日本に暮らす誰もが安心して生活できるよりよい共生社会の実現にむけて、外国人労働者のいのちと権利を守る運動を強力に推し進めることを、ここに宣言します。

2022年10月28日


問題多い顔認証式カメラシステム

         共謀罪NO!秘密保護法廃止へ!


 11月7日、衆議院第二議員会館前で、共謀罪NO!実行委 秘密保護法廃止へ!実行委の共催による「共謀罪廃止!秘密保護法廃止!監視社会反対! 12・6 4・6を忘れない6日行動」が行われた。

 国会前行動をおえて、院内集会「市民の行動が追跡される 顔認証式カメラシステムの問題はどこにあるのか」が開かれた。
 武藤糾明さん(弁護士 日弁連情報問題対策委員会副委員長)が講演。監視カメラで被疑者を手作業で探すことは容易でないので顔認証カメラが導入された。顔認証とは、デジタル画像から、「顔」部分を抽出し、「顔」部分から、特徴点を捉えた識別データを生成して、あらかじめ登録されている「顔認証データ」と照合し、一致・不一致を判定することであり、「顔指紋」のように、人の同一性を特定できる。デジタルデータの特性として、照合・検索処理が極めて容易かつ簡便である。1対1型と1対N型がある。1対1型は、スマホや空港などにおける日本人向け入国ゲートチェックであり、個別の同意拒否を設定しやすい。1対N型は密かに網羅的、地引き網的に検索照合できる。書店における万引き犯・不審者データベースを使用した入店チェックやJR東日本、警察の捜査、中国のカメラなどに使われている。不特定多数に対するカメラ(1対N)を使うと、対象者に気づかれることなく、顔指紋データを収集でき、データベースと照合でき、過去・現在・未来、あらゆる場所の行動と検索照合が可能となる。捜査に便利なものは、違法な監視にも便利だ。この間、精度は向上し実用化されてきている。2020年9月の共同通信ニュースは、全国の警察で捜査に顔認証が運用開始されていると報じた。2021年10月には、健康保険証機能付きマイナンバーカードによる、医療機関受け付けでの顔認証チェックが始まった。
 日弁連は、これまでの何度も「提言」で危険性を訴えてきた。2012年1月19日付「監視カメラに対する法的規制に関する意見書」では、官民を問わず、監視カメラの設置・運営についてはルールを事前に明示する法律を制定し、規制すべきことを提言した。その中でも、設置するカメラが他のデータベースと自動的に照合して特定の個人を識別する機能を持つことを禁止することや、収集後のデータについて、その後他のデータベースと自動的に照合する2次利用を禁止するよう求めた。2016年9月15日「顔認証システムに対する法的規制に関する意見書」は、警察による顔認証システムの利用に対し、「重大組織犯罪等」の捜査以外で使用しないなど、法律による規制が必要であることを提言した。2021年9月16日「行政及び民間等で利用される顔認証システムに対する法的規制に関する意見書」では、警察以外の行政機関や民間等における顔認証システムの利用に対しても、法律による規制が必要であることを提言した。特に、不特定多数者に対して利用する場合は厳密な規制が必要であるとしている。
 海外での対応では、EUは、GDPR(一般データ保護規則)9条で、生体情報の収集を原則禁止している。

 原田富弘さん(共通番号いらないネット)は、健康保険証廃止とオンライン資格確認等システム原則義務化について報告。
 10月13日河野太郎デジタル大臣は、記者会見で、マイナンバーカードと健康保険証の一体化を打ち出し、マイナンバーカードの取得の徹底、カードの手続き・様式の見直しの検討を行った上で2024年度秋に現在の健康保険証の廃止を目指す、また運転免許証との一体化を2024年度末としているが時期を少し前倒しできないかなどと述べた。これはマイナポイントでマイナカードが期待したようには普及せず目標達成できないからと思える。実施のための細部を検討せずに紙保険証廃止だけ決める乱暴なやりかたであり、訪問診療や柔道整復等の導入方法、マイナカード取得困難者への対応、マイナカードと保険証(と免許証等)との更新期間の相違、紛失時の対応など問題は多い。いずれにせよ、マイナンバーカードの「危険性」は「漠然とした不安」なんかでは絶対にない。

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マイナンバーカード普及のための健康保険証の廃止に反対します

2022年10月20日

     共謀罪NO!実行委員会
     「秘密保護法」廃止へ!実行委員会

 10月13日、河野デジタル大臣は岸田首相と会談後 、マイナンバーカード普及のために2024年秋までに健康保険証を廃止し、そのかわりにマイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」を発行することを明らかにしました。その理由は「健康保険証があるからみんなマイナンバーカードをもたない 」( 10月14日東京新聞 ) というものです 。
 私たちはこのような暴言、暴挙を絶対に許すことはできません。岸田政権は、健康保険証廃止の方針を直ちに撤回すべきです。

健康保険証がマイナンバー普及の邪魔!?
 いったい、岸田政権は何を考えているのでしょうか。マイナンバーカード(以下、マイナカードと略)の普及がいまだに49パーセントと低いのは、制度に問題が多いからです。2016年1月、マイナカードの交付が開始されました。しかし、その普及は遅々として進まず、業を煮やした政府は、2020年9月同カードの申請者にポイントを付与するという利益誘導で申請者数を増やそうとしました。しかし、それでもうまくいかず、本年6月から第二弾のポイントの付与を開始し、やっと9月末段階で普及率が49・0パーセントに達した状況です。政府は2023年3月までに市民の大半にマイナカードを普及することを目標としてきましたが、それは程遠いものになっています。こうした現実の前に、政府は紙の健康保険証をなくせば、市民はマイナ保険証を取得するだろうと考えたのです。なんという姑息なやりかたでしょうか。
 そもそも多くの市民がマイナカードの申請に躊躇している大きな理由は、登録した個人情報の漏洩への危惧によるものです。マイナカードには、市民のさまざまな情報がとりこまれています。多くの市民は、同カードから、プライバシー、個人情報がもれることを恐れているのです。だから、ポイント付与の利益誘導にもかかわらず、マイナーカードの普及率が急激にふえないのです。

いのち、健康よりマイナカード
 政府は、いのちと健康にかかわる健康保険証の廃止という脅しをかければ、市民は病院にいくためにはマイナ保険証に切り替えるだろうと考えています。これは、マイナカードを取得しない市民は病院にいくなということを意味します。死ねということに等しいものです。
 そもそもマイナカードの取得は、本人による申請が前提でした。しかし、マイナカードを市民の大半にいきわたらせるという目標を実現できないことが明らかになるなかでついに紙の健康保険証の廃止という方針に踏み切ったのです。これは、マイナカードは選択制ではなく、取得は義務と宣言したに等しいものです。
ついに、政府はマイナカードについての説明が嘘とペテンであったことを自ら認めたのです。

個人情報の国家管理を狙う
 ついにマイナーカードの狙いが明らかになりました。政府は、デジタル社会の軸にマイナカードを位置付けているのです。マイナンバー(共通番号)とは、住民登録した市民一人一人につけられた重複のない生涯不変の12桁の番号のことです。これに、所得関連情報、健康保険や年金情報、給付情報などさまざまな情報が紐づけされています。マイナンバーは国により市民全員に強制的につけられますが、マイナンカードは本人の申請による選択制とされてきました。今回の政府決定は、健康保険証を廃止することで、市民全員にマイナカードを強制し、デジタル社会の軸にすえ、国家による市民の個人情報の管理への道を開こうとするものにほかなりません。 私たちの命、健康、プライバシーを守るために、健康保険証の廃止に反対します。


狭山差別裁判第3次再審請求

        万年筆の鑑定と11人の鑑定人尋問を求める署名


 日本には根深い差別意識と社会構造が存在する。それは支配と搾取の重要な構成要素であり、差別をなくすことはこの社会の民主化実現のためには避けて通ることのできない課題だ。
 1963年5月、埼玉県狭山市で女子高校生が行方不明になり、脅迫状がとどけられ、警察は身代金を取りにあらわれた犯人を取り逃がし、女子高校生は遺体となって発見された。
 世論の非難が集中した警察は、予断と偏見に基づき、付近の被差別部落に見込み捜査をおこない、なんの証拠もないままに石川一雄さんを別件逮捕し、ウソの自白をさせて、犯人にでっちあげた。石川一雄さんは当時24歳だった。
 一審は死刑判決、二審は無期懲役判決で無期懲役判決が確定した。
 石川さんは再審請求を申し立てたが、第一次再審請求棄却、第二次再審請求も東京高裁は事実調べも行なわないままに、抜き打ち的に再審請求を棄却した。
 この不当な棄却決定に対し、東京高裁に第三次の再審請求がおこなわれ闘われている。
 弁護団は石川さんの無実を示す多くの新証拠を提出した。第3次再審請求で提出された新証拠は255点で、この専門家の意見書による新証拠は、スコップの土砂および油脂についての元科学捜査研究所技官による補充意見書、殺害方法、死体処理についての法医学者の鑑定書、下山鑑定人の意見書など、検察官が提出した意見書の誤りを明らかにしたもので、石川さんを有罪とした確定判決が根拠のないもことを示している。 弁護団は、8月29日に東京高裁に対してこれまでに提出した新証拠を作成した鑑定人のうち、11人を証人尋問するように求める鑑定人の証人尋問の実施、そして万年筆のインクの鑑定を求める「事実調べ請求書」を裁判所に提出した。

 狭山事件の再審を求める市民の会は、「『狭山事件』万年筆の鑑定と11人の鑑定人尋問を求めます」署名を訴えている。
 10月28日、日比谷野外音楽堂で、狭山事件の再審を求める市民集会実行委員会の主催による「鑑定人尋問実現・狭山第三次再審闘争勝利に向け狭山事件の再審を求める市民集会」が開かれた。 集会では、11人の鑑定人の事実調べを求める紙の署名は、9月からこの日までの一カ月余りで個人10万3921筆、団体1024筆が集まり裁判所へ届ける、年内に20万筆を達成したいと報告された。
 集会であいさつした石川一雄さんは、全国各地での署名の取り組みに御礼をのべるとともに、「なんとしても元気な間に第三次で無罪を勝ち取りたい」と力強く述べた。
 石川さんは無実だ。冤罪をそのまま放置しておくのは甚だしい人権侵害そのものだ。差別判決を糾弾し、事実調べを実現させ再審開始をかちとろう。


上関・伊方原発反対訴え

        西瀬戸ピースサイクル&第36回伊方集会

 今年から、秋の伊方集会に合わせた日程とした四国・伊方ピースサイクルは、当初予定を早めて10月17日から西瀬戸ピースサイクルとしてスタートした。
 山口県の上関原発建設計画から40年経過した今も、工事準備すらも中断したままです。
 「脱原発を!中電株主行動の会」の溝田代表世話人から、この機会に、「上関原発絶対反対」を訴え続けている「上関原発を建てさせない祝島島民の会」からのメッセージを山口県内瀬戸内沿岸の自治体に届けると共に、上関原発白紙撤廃を県や中国電力に対して表明するように求める申し入れを自転車で取り組もうと提案がされました。
 ピースサイクル広島ネットも、それに応えて22日からの四国・伊方ピースサイクルと連動して西瀬戸ピースサイクルとして走り、23日の第36回伊方集会に
参加して行きました。
 
 17日に、山口県の東端の和木町への申し入れで始まりました。
 その後、岩国市、周防大島町を経て、上関町へ。役場では副町長が対応。
 40年前の原発建設計画から、町民は分断され、反対、推進の選択を求められました。23日の町長選挙も反対と推進の一騎打ちとなりました。
 翌日からの11年ぶりの町長選挙を控えた事務所で「原発を建てさせない上関町民の会」と交流会を行い、これより自転車走行はスタートしました。
 18日から21日まで、柳井市、平生町、田布施町、光市、下松市、周南市、防府市、山口市、山口県、宇部市、山陽小野田市、下関市と16の自治体と中国電力山口支店にメッセージを届け、申し入れをしました。
 22日には、深夜便フェリーで愛媛県・松山観光港に渡り、ここで広島からのフェリー組に香川県からの参加者が合流して伊方原発へ向けてのピースサイクルです。
 伴走車の軽トラ2台には、「原発絶対反対」「全国PC(ピースサイクル)横断幕」などが掲出され、アピール性は抜群です。
 大分、香川、広島の参加者の混成PC隊は4台の自転車で、伊予市、双海海岸と街宣を行いながら八幡浜市に向かって元気に走行しました。
 23日は、第36回伊方集会が開催される四国電力・伊方原発ゲート前を目指した走行です。   
 最後に長い登り坂が待ち受けますが、「原発反対」の思いが自転車を前に進めてくれました。
 10時から開催の集会は、「原発さよなら四国ネットワーク」の主催です。
 ゲート前からの道路沿いには、参加団体の色とりどりの幟旗や横断幕が掲げられ、集会を盛り上げてくれます。
 四国各県、近畿、広島、大分などからの参加団体の報告の合間には、歌も入り、歌に合わせて踊りも飛び出すなど、元気で楽しい集会です。
 11時半には、伊方原子力発電所への申し入れです。多くの団体や労組から、四電社長あてに、「再稼働を直ちに停止し、3号機も廃炉にせよ」と要請書を読み上げて手渡しました。
 「上関原発を建てさせない祝島島民の会」からのメッセージも届けられました。
 対応した、総務課長は、申し出を伝えるとの返答のみで発電所内に引き上げて行きました。
 第36回伊方集会は、歌で締めくくられました。

 1週間の西瀬戸ピースサイクルは天候にも恵まれ、各地での参加者も得て、無事に走り抜き、伊方集会への参加で2022年ピースサイクルの最後を努めました。


映画『日本原−牛と人の大地』

        (監督:黒部俊介 2022年 110分)

 9月18日、大阪市の十三(じゅうそう)、第7芸術劇場で「日本原」の映画を観た。日本原演習場は、岡山県勝田郡奈義町と一部が津山市に所在する陸上自衛隊の演習場だ。
 上映後、日本原演習場での牛の放牧をめざしている内藤秀之さんや黒部監督、黒部麻子プロデューサーを交えての交流会(上映挨拶)があった。骨太のすばらしい映像であった。ここまでの映画ができるとは思っていなかった。
 映画はいきなり、子牛の出産シーンから始まり、カメラを回している監督にも手伝うように声がかかる。

明治以来の演習場と農民の返還運動

 いくつもの流れが自然な岡山内陸部の山間部の農村を舞台に交錯していく。日本社会の流れ、特に農村が経験してきたこと、人口減、酪農の直面している問題。後継者問題と一族と家族の行き方を通じて描かれていく。
 牛の成育や牛乳へ意欲的な取り組みも描かれる。村の祭りの継承など村落共同体の課題もある。
 日本原の流れが他所と異なるのは明治以来の軍の広大な演習場と隣接していることである。戦後の米軍接収から自衛隊に変わった。
 自衛隊の存在は農民の生活にいろいろな問題を生じさせてきた。演習場内の耕作地、入会権、共同ため池の使用が自由に出来なくなり、長い歴史を持つ農地返還運動とは裏腹に、政府、自衛隊の働きかけもあり、徐々に演習場内耕作者が減っていく。
 自衛隊の演習、自衛隊米軍の共同訓練の時には耕作地への出入りが禁止される。

扇町闘争への参加から日本原へ
 
 私は、1969年11月佐藤訪米阻止―扇町闘争と内藤さんとの関わりを2021年、闘いの中でなくなった糟谷孝幸さん追悼の集まりまで全く知らなかった。日本原現地集会には何回か参加していたが私の中では内藤さんは現地、奈義町の農民であった。戦う農民としての内藤さんは糟谷さんと扇町闘争に参加していたのであった。糟谷さんが倒れたことが岡山大医学部で医師を目指していた内藤さんを日本原に向かわせたことも映像のなかで描かれている。毎年行われる加古川での糟谷孝幸さん墓前追悼での偲ぶ場面も描かれており、共に戦った人々の想いも伝わってくる。

直耕私塾と有機農業の調査活動(私的な経験) 

 1988年8月30日、直耕私塾のMさんから依頼され岡山地方の農業調査の一環として内藤さん方とNさん方を訪問した。タイとアメリカの大学教授の聴き取り調査であり、私は車の運転と通訳であった。内藤さん方では有機農業、酪農について説明がなされ、自衛隊の基地への反対行動についても話された。その時の話で奥さんは婦人民主クラブに属されていたと言うことであった。酪農はまだ今日のような多くの頭数ではなかったと思う。しかし、そうしたイメージであり内藤さんの進まれてきた全体像は殆ど見えなかった。(岡山からの帰途、私は交通事故を起こし、赤穂市民病院に一ヶ月入院することになった。)
 映像を通して内藤さんの歩いた道がどう交差してきたか少しずつ解明されていく。
 安倍晋三元総理の「国葬」反対集会で岡山大学出身の元教師のBさんに「日本原の映画が出来ましたよ」と話しかけてみた。「映画ができたのは知っている」ということであった。そこで十三の第7芸術劇場で今、上映されており、日本原から内藤さんや監督が上映挨拶に来られていたことを報告した。「内藤さんは岡山大学の3年後輩で家にも行ったことがある」ということで、なにかすがすがしい風が吹いたような気がした。内藤さんの生き方は多方面で人々に関わりを広げていたことを実感する。

上映後の挨拶、交流

 上映後の交流では黒部監督の撮影のために内藤さん方に住み込むいきさつが語られた。介護施設で働いているときにパワハラに遭い、行き詰まっていた後に映画を撮ることになったという今風の経過であった。
 なによりも50年という歳月を飄々と自然体で反基地闘争や農業、酪農、子育て、農村共同体の下支えと生き抜いている内藤夫婦の姿が観る人の心に迫るのではと強く感じた。
 日本原という一地域を描くことで日本の現在の社会を描き出している力作である。にこやかな笑顔を絶やさずさつまいもの収穫祭に集まった人々に家で搾乳した牛乳を振る舞う姿は長年、この岡山の地で反戦反基地闘争がおおらかに力強く土地に根付いて行われてきたことを映像としてとらえている。内藤さん方に住み込み、生活しながら映像に納めた黒部俊介監督の奮闘に感謝したい。すばらしい映像を残してくれました。 (蒲生楠樹)


映画と音楽と戦争

 「ビッグバンド」という言葉はアメリカで生まれた。太平洋戦争で多くの男たち(白人も黒人も)が兵隊にとられてオーケストラという多人数のバンドが組めなくなり、それより一回りも二回りも小さいバンドがダンスミュージックを奏でるのが「ビッグバンド」である。日本人にとって最も馴染深いのは『グレン・ミラー楽団』だろう。戦争中なのに「ムーンライトセレナーデ」「茶色の小瓶」などロマンチック曲を聞かせてくれたが、グレン・ミラー自身は、第二次世界大戦の勃発にともない1942年に陸軍航空軍に入隊、慰問楽団を率いて演奏にまわっていたが、大戦末期の1944年12月にイギリスからフランスへ慰問演奏に飛び立った後、乗っていた専用機が消息を絶った。ナチスの戦闘機に撃たれてあの世の人となったという説もある。映画の『グレン・ミラー物語』(撮影1953年 主演ジェームズ・ステュアート)には、あのルイ・アームストロングもトランぺッターとして出てくるが、彼はべトム戦争に出征しようとする米兵士たちの前いで「What a Wonderful World」をあの濁声で歌い「どうか生きて帰っておいで」というメッセージを送ると、兵士たちは涙を流すということがあった。それを撮ったフィルムがハリウッドとNHKフィルムライブラリーに残されている。
 映画『プリティ・リーグ』(1992年)は、アメリカの男が戦争に持っていかれてしまい、メジャー・リーグは若い女性たちが野球選手になるという本当にあったことを映画化している。
 オーケストラが奏でる交響曲を世界中にとどろかせたのはゲルマン民族のベートーベン
だったが、その第九交響曲の「合唱」が1942年のヒトラー誕生日の前夜祭演奏会で高らかに歌われていた。ベートーベンの弟子を自称するワグナーの曲はベトナム戦争を描いた『地獄の黙示録』(1979年 主演マーロン・ブランド)のテーマ曲として使われていた。  (R・T)


せんりゅう

   1・5℃さぁ大変君の体温上昇

        胸裂けるおもひウクライナの声

   元統一?いざ忘れてるご答弁

        頭脳明晰記憶にないの謎掛けのこし

   円安はアベノミクスの総決算

        戦争症には九条というマスク

   九条は真理の力みんなのちから

        雑草の種いくとせも土の中
   
   
                 ゝ 史
  2022年11月


複眼単眼

        すべての軍事演習に反対だ


 日本国憲法公布76年にあたる11月3日朝、朝鮮のミサイルが飛んでくるといって、日本の全国瞬時警報システム(Jアラート)が発動され、政府は宮城、山形、新潟の3県を対象に、建物内や地下への避難を呼びかけた。全国のテレビが通常の番組を停止し、真っ赤なグロテスクな画面に変わった。NHKは看板番組の「朝ドラ」も中止し、9時ころまで、この画面を流し続けた。
 JRの列車の運行も一部では止められるなど、大騒ぎだった。
 政府は午前7時50分に、朝鮮の弾道ミサイルが日本列島上空を超える可能性があるとして、1回目のJアラートを発令し、対象地域住民などに避難を呼びかけた。次いで8時には2回目のJアラートが発令され、「7時48分ごろには列島を通過したとみられる」と発表した。この時間は1回目の発令の2分前だ。この情報によれば、1回目の発令時にはすでに日本列島を飛び越えていたことになる。
しかし、政府はミサイルの通過は確認できず、8時40分頃には「通過情報」を訂正した。Jアラートの根拠となった上空1000キロの宇宙を飛ぶ飛行物体がレーダーから消失したというのだ。「消えたミサイル」だ。防衛省は説明がつかず、朝鮮のミサイル実験は失敗したとみられるなどと、弁明した。当然のことに、政府や自民党の中から、「改善を求める」声が噴出した。
朝鮮が大規模なミサイル実験を強行したこの時期、米韓両国は練「ビジラント・ストーム」とよばれる大規模合同軍事訓練を航空機240機を動員して1600回の出動をするなどしていた。米軍の参加部隊の一部の、B1B戦略爆撃機などはこのあと、九州北部空域で自衛隊のF2戦闘機などと合同訓練を実施した。事実上の日米韓合同演習だ。 3か国の首脳は11月中旬にカンボジアで開かれる国際会議の際に、3国の「安保協力」について会談する予定だという。
 朝鮮側は「ビジラント・ストーム」に反発し、「中止しなければ一段と強力な措置をとる」との警告をくりかえしていた。
 大規模なミサイル実験の後も朝鮮の軍用機の航跡が180本確認されたとか、対抗して韓国の軍用機が80機緊急発進したとか、朝鮮半島の軍事的緊張はつづいている。
 容易ならない事態が進んでいる。しかし、日本の政府から聞こえてくるのはミサイルに対抗する話のみで、いかにしてこの緊張を緩和させるかの方策は全くない。
特に韓国に尹政権が誕生してからは、南北両側は、相手の演習に対する対応だといって、大規模軍事演習をくりかえしている。軍事挑発したのはどちらがさきかなどという、鶏か、卵かの論争ではない。
 軍事演習は戦争の準備だ。米日韓朝のいずれも戦争準備の軍事演習をやめるべきだ。良い軍事演習と悪い軍事演習などありえない。戦争につながる軍事的瀬戸際政策はやめるべきだ。 (T)