人民新報 ・ 第1428統合521(2023年12月15日)
  
                  目次

● 自民党は自業自得で危機的状況

        市民と野党の共闘で岸田政権を倒せ

● ガザのジェノサイド止めろ 即時停戦

        イスラエルへ軍事支援するバイデン

● 24春闘・大幅賃上げを勝取ろう

        けんり春闘の発足総会・学習集会

● 今日のガザは明日の沖縄、あさっての日本

        「南京大虐殺から86年、2023年東京集会」

● 経済安保法改正案は経済安保版・秘密保護法案だ

● 「ウクライナ動乱」(松里公孝著 )を読む

● せんりゅう

● 複眼単眼  /  ウクライナに関する奇妙な議論

● 冬季カンパのお願い  労働者社会主義同盟中央委員会





自民党は自業自得で危機的状況

        市民と野党の共闘で岸田政権を倒せ


 岸田政権は、安倍政治を引き継いだ。安倍の遺産とりわけ党内右派や党外極右勢力の力を背景にいっそう悪辣な形で展開してきた。岸田は、「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の策定と具体化、軍拡財源確保法の成立の強行、「武器輸出三原則」の大転換で殺傷能力のある武器輸出の解禁、南西諸島へのミサイル群の増強・配備、イージス艦発射のトマホークミサイルの導入などで日米一体の戦争準備を行っている。だが、安倍・菅政権下で与党の圧倒的優位の中で進められてきた政治は、傲慢不遜そのものであった。それは、政権与党の内部での腐敗のすさまじい進行と表裏一体のものであった。これは多くの人びとの怒り・恨みを蓄積させることになった。この構造は一端が崩れ始めればたちまち全体が動揺することになるのは理の当然である。まさに「おごれる者は久しからず」である。 
 内閣支持率の傾向的低下に直面して人気回復策として出す政策がことごとく不人気度を加速させるものになって来ていたが、ここに来て党内最大派閥にして党内第四派閥でしかない岸田が頼り切っていた安倍派のパーティー券疑惑が告発されて検察が動き出し、マスコミも連日取り上げるようになってきた。安倍派だけではなく自民党全体が疑惑の目でみられている。この自民党の資金集めのためのパーティー問題は、政治資金規制法、脱税にかかわるというだけでなく、企業団体献金に代って贈収賄の場としてもある。
 くわえて岸田と梶栗正義(旧統一教会の関連団体である「国際勝共連合」、「世界平和連合」、「平和大使協議会」、「国際ハイウェイ財団」、「UPFジャパン(天宙平和連合の日本支部)」などの議長・会長)との関係も暴露された。
 NHKが12月8日から3日間おこなった世論調査で内閣・政党支持率は次のように報じられている。―「岸田内閣を『支持する』と答えた人は11月の調査より6ポイント下がって23%と、おととし10月の内閣発足以降最も低くなりました。また、2012年12月に自民党が政権に復帰して以降で見ても、最も低くなりました。一方、『支持しない』と答えた人は6ポイント上がって58%でした」。また、自民党の支持率は、29・5%で、「自民党の支持率が30%を下回るのは自民党の政権復帰後初めてです」。―
 追い詰められた岸田は、臨時国会終了直後にも大幅な内閣と自民党役員の入れ替えをせざるを得なくなった。内閣ナンバーツーの松野官房長官をはじめ安倍派議員の政務三役からの更迭説などが流れているが、それがどのような人事となるか、また検察の捜査もどこまで進むかわからないが、いずれにしろ岸田内閣と自民党にとっては大打撃の事態となっていくだろう。
 自民党だけでなく、維新の会も大阪・関西万博問題や所属党員の不祥事の連続しておこり、支持率も曲がり角に来ている。国民民主党も前原グループの離党で打撃をうけている。

 岸田内閣を打倒し、自民党政治を終わらせなければならない。総がかりの行動を一層広げ、立憲野党は統一して岸田政治を終わらせるために闘う好機である。
 12月7日、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)は、衆議院会館で、立憲野党へ「市民の生活を守り、将来世代に繋げる政治への転換を」を手交し、記載された基本的な共通政策項目を野党連携の土台とするよう要望した。
 窮地の岸田がなにをしでかすかわからないが、それに備え、市民と立憲野党の共闘を再構築・強化し、いまの情勢を最大限に生かして岸田政権・自民党政治を終わらせよう。

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市民の生活を守り、将来世代に繋げる政治への転換を

 ウクライナ、パレスチナ・ガザと目を覆うばかりの惨事が続き、平和への道筋がみえず、平和・人道の危機が続いています。また日本においても自公政権は、憲法を空洞化させながら、戦争への道を突き進むと同時に新自由主義政策のもと貧困と格差を拡大させ続けています。
 そうした中、市民連合は立憲主義の回復と安保法制の廃止を求めて、立憲野党と連携しながら、5回の国政選挙を闘ってきました。
 市民連合は8月に、憲法9条と13条を共通の政策ビジョンの中心に据えるべきだとの考えを立憲野党各党に示しました。次期衆議院選挙に向けて市民と立憲野党の協力体制を整える必要がいよいよ迫っていることから、市民連合は、以下の基本的な共通政策項目を野党連携の土台とするよう要望します。

 1 憲法も国民生活も無視する軍拡は許さない
 日本国憲法が掲げる平和的生存権の理念に立脚した平和外交と専守防衛の安全保障政策に徹することこそ、危険かつ不毛な防衛費増大・軍拡競争とその行き着く果ての戦争を回避し、真の意味で、国民の生命、自由及び幸福追求権を守ることができる。憲法9条の改悪や専守防衛を逸脱する集団的自衛権の行使・敵基地攻撃能力の保有を容認せず、辺野古新基地建設等基地の強化ではなく、基地負担を軽減する。非核三原則の遵守など、核兵器廃絶めざして、努力する。

 2 物価高、燃料高騰、円安、不公平税制を放置せず、市民の生活を守る経済政策を行う
 実質賃金が低迷しつづける中、急激な円安やエネルギー費高騰が多くの人の命と暮らしを脅かす事態になっている。実質賃金引き上げや格差是正、インボイス制度の廃止、逆進性の強い税制の是正と社会保険料負担の適正化、保育や教育のための子ども予算の増額など、市民の生活を保障し将来世代へと繋げる政策へと転換する。当面、現行の健康保険証は維持する。農林水産業の育成を支援し、地域経済の振興を図る。食料自給率の向上をめざす。

 3 だれもが個人として尊重されるよう、ジェンダー平等・人権保障を実現する
 政治の場、働く場、学ぶ場、家庭における男女平等の実現をめざし、選択的夫婦別姓制度や同性婚制度などを整備し、日本の将来世代にふさわしい、伸びやかで活力のある社会や経済へと転換する。日本に住む誰もが個人として尊重されるよう、あらゆる差別を禁止する。

 4 将来世代へと繋げるために、気候変動対策を強化し、エネルギー転換を推進する
 市民の生活を脅かす異常気象が頻発する現実を直視し、将来世代や未来の人々、生きものに対する責任を果たすために、国際協調に基づく気候危機と環境保全の対策を加速し、温暖化対策の強化へのリーダーシップを発揮する。原発にも化石燃料にも頼らないエネルギーへの転換を進め、脱炭素社会を早期に実現し、経済や安全保障上のリスクを軽減する。

 5 権力の私物化を止め、立憲主義に基づく公正で開かれた政治を行う
 「自公一強体制」の下での権力の腐敗・私物化に歯止めをかけ、みんなのための政治を取り戻す。また同一選挙区からの世襲立候補や親族間の政治資金のやり取りを制限する。解散権の乱用は許されない。財政民主主義の原則をないがしろにする予備費の膨張と流用は認められない。

2023年12月7日

          安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合


ガザのジェノサイド止めろ 即時停戦

        
イスラエルへ軍事支援するバイデン

 イスラエル・ネタニヤフ政権の残虐なガザ攻撃が続いている。死傷者が激増し、その多くは市民とりわけ子どもと女性である。イスラエル軍は市民をハマスだとして虐殺、逮捕・連行しているが、これはまさにジェノサイドという以外にない。
 12月8日、国連安全保障理事会は、パレスチナ自治区ガザ地区での人道目的の即時停戦を求める決議案の採決を行ったが、常任理事国のアメリカが拒否権を行使したため、決議案は否決された。イギリスは採決を棄権した。その他の13カ国(中国、フランス、ロシア、アルバニア、ブラジル、エクアドル、ガボン、ガーナ、日本、マルタ、モザンビーク、スイス、アラブ首長国連邦)は賛成票を投じた。
 またアメリカ政府は、イスラエルに対し、戦車の砲弾などおよそ1億650万ドル相当の武器の売却を承認した。
 バイデン政権は、口先ではイスラエルに自制を求めたなどと行っているが、口先だけのごまかしであり実際には、イスラエルへの軍事援助を強化するなど、パレスチナ民衆の虐殺を援助しているのである。
 だがイスラエル・米国の国際的な孤立は著しい。

 ガザのジェノサイドに反対し即時停戦を求める運動が全世界に広がっている。日本でもイスラエル大使館前行動をはじめ全国各地で様々な取り組みが行われている。
 12月10日には、全国一斉アクション国会正門前を中心にした行動「パレスチナに平和を!日本政府は停戦を実現させろ!国会正門前大行動」が行われた。集会では、パレスチナ出身の人びと、イスラム教徒人びとをふくめて、「ガザに自由を」「虐殺やめろ」「パレスチナに自由を」「アメリカは恥を知れ」「岸田は恥を知れ」などのシュプレヒコールをあげ、イスラエル、米、日の政府に抗議した。


24春闘・大幅賃上げを勝取ろう

        けんり春闘の発足総会・学習集会


 うちづく物価上昇は人びとの生活を直撃している。厚生労働省の10月の毎月勤労統計(速報・12月8日)によると、実質賃金は前年比2・3%減少した(19カ月連続のマイナス)。 物価上昇に比べて賃金のが追いついていない。労働者は団結して大幅な賃上げを勝ち取らなければならない。

 11月30日、全水道会館で、24けんり春闘の発足総会・学習集会が開かれた。
 第一部「発足総会」では、はじめに、けんり春闘実行委員会共同代表の渡邉洋・全労協議長が挨拶。岸田政権は支持率回復のために賃上げを言っている。連合もそれにあわせて5%という強気の要求を掲げた。アメリカではインフレの中で賃上げ闘争が全進んでいる。米自動車労組(UAW)は長期にわたるストライキで大幅な賃上げを実現した。日本でも賃上げを実現するためにはストライキなどの実力行動が必要だ。24春闘で、けんり春闘はストライキを含む様々な行動で闘っていく。岸田政権の戦争政策、反動政治に抗した運動を展開していく。

 つづいて、24けんり春闘全国実行委員会事務局長の関口広行・全労協事務局長が議案の提起をおこなった。
 24春闘では、労働者・市民の生活と権利を守るために大幅賃上げを獲得しなければならない。日本の労働運動の停滞の深刻さを克服する闘いこそ求められている。春闘での要求が統一要求・交渉ではなく、分断され横の繋がりが絶たれている状況が固定化している。また、企業間格差と雇用形態による労働者の生活は格差が開くばかりであり、非正規労働者やフリーランスなどは全労働者の40%を超えている。またこのような働き方を強いられている労働者によってエッセンシャルワークが維持されているのである。私たちはこうした働く人々と共に生活改善と権利拡大のために全力を尽くすことが必要だ。
 24けんり春闘は世界の政治・経済が混乱を増す中「8時間働けば生活できる賃金!」をめざした闘いと「誰もが安心して働ける職場・暮らせる社会の実現!」に向けて奮闘することを訴える。そのために、改めて職場での団結・連帯の形成に全力を挙げ、分断やハラスメントを許さない闘いと格差と貧困に正面から向き合う大衆的な闘いをつくることが必要だ。そして世界に広がる戦争の危険性、平和も求め地球環境を守るための社会的課題と正面から取り組んで行こう。
 けんり春闘は、誰もが安心して働ける職場・暮らせる社会の実現を!(雇用・賃金・労働時間・労働環境・社会保障の要求をストライキで闘い取ろう!軍備増強・改憲阻止!労働者・市民の力で戦争を止めよう!、どこでも誰でも、いますぐ最低賃金1500円を!、ウクライナ戦争の即時停止!ロシア軍は直ちに撤退を!、ガザへの攻撃をやめ、即時停戦を!を、基本スローガンに闘う。サブスローガンとして、労働者の生活と権利を守ろう!、インフレを上回る大幅賃上げを!、8時間働けば生活できる賃金を!、8時間働けば暮らせる社会を!、どこでも誰でも時給1500円・月額25万円以上の賃金保証を!、掲げて闘う。
 「私たちの要求」はつぎのとおりだ。月額25000円以上の賃金引き上げを!、時給労働者150円以上の賃上げ、物価上昇分を上乗せし、賃上げ要求を実現しよう!、中小、地方企業の充実した経営支援策の策定を!、公務・公共サービスを労働者市民の手に取り戻そう!、公務・公共サービス労働者、会計年度任用職員の雇用保障と処遇改善を!、全ての公務労働者に労働基本権の回復を!、長時間労働の規制、在宅勤務の時間管理の徹底を!、三六協定の見直しと労働安全衛生活動の強化を!、あらゆるハラスメントを撲滅させよう!、ジェンダー平等などすべての差別を禁止し、ヘイト行為には刑罰を!、外国人労働者・移住労働者に労働基本権と安心して生活できる環境を!、基本的人権を保障する入管法を改正し、真っ当な労働者受入制度の確率を!、9条改憲阻止!沖縄辺野古新基地建設阻止!、南西諸島の軍事基地化阻止!、原発再稼働阻止!老朽原発を稼働させるな!新増設を許さない!汚染水の海洋投棄反対!、すべての争議に勝利しよう!。
 24けんり春闘は、こうした諸課題を目標にして、中小零細・非正規労働者の処遇改善、全ての労働者の賃金引き上げ実現のために職場議論を活性化させ、雇用形態を超えて連携した闘いを作り出していく。正規―非正規、フリーランス、自営業など幅広い戦線の拡大を全国に拡大し、最低賃金引き上げなど全国で統一した闘いを作り出していく。地域の労働組合、市民運動、立憲野党との共闘を強化して闘い抜く。
 代表幹事組合を、全労協、全港湾、全造船関東地協、民間中小労組懇談会、おおさかユニオンネットワークとし、代表幹事組合の代表者をけんり春闘の共同代表とする。
 提案は、満場の拍手で確認された。

 第二部学習集会では、嶋ア量弁護士(日本労働弁護団常任幹事)が、「岸田政権の労働政策を問う」と題して講演した。
 つづいて、参加労組・団体の決意表明では、東京清掃労働組合、全国一般東京東部労組、争議組合として、全統一労組流山クリーンサービス分会からの発言がつづいた。
 最後に、団結ガンバローを行い、春闘勝利に向けての闘い意思を確認した。


今日のガザは明日の沖縄、あさっての日本

       
 「南京大虐殺から86年、2023年東京集会」

 12月2日、ノーモア南京の会の主催で、連合会館で「南京大虐殺から86年、2023年東京集会」が開かれた。

「ノーモア沖縄戦」は「ノーモア日中戦争」と同義


 はじめに主催者を代表して、田中宏さんがあいさつ。私は南京大虐殺の年の1937年に生まれた。日本では、ノーモア・ヒロシマだが、中国では、ノーモア・南京であり、このことを忘れてはならない。いまだに「南京大虐殺は幻」などの言論が横行している。大虐殺から50年の1987年に東史朗さんの『わが南京プラトーン―一召集兵の体験した南京大虐殺』が出版されるなど南京戦の参加者からの証言が出てくるようになった。こうしてノーモア・南京の会ができた。
 いま文字通り戦争はそこまで来ているという状況だ。泉川友樹さん(日本国際貿易促進協会業務部長)は、今年8月15日の琉球新報のコラム「南風」の「開戦の日」に、「日本は1931年9月18日に瀋陽で起こした『満州事変』を契機に中国への侵略を本格化し、37年7月7日に北京で勃発した『盧溝橋事変』によって中国との全面戦争に突入した。そのため、中国では満州事変や『盧溝橋事変』を開戦とする見方が一般的であるが、『玉音放送』には日中戦争や戦争で中国に与えた被害に対する視点が欠落している。…日中戦争と太平洋戦争の末、沖縄は戦場となった。日中戦争がなければ沖縄戦は起こり得なかったし、それは今でも同じだろう。その意味において『ノーモア沖縄戦』は『ノーモア日中戦争』と同義である。そして、それを期すためには歴史、特に近代史を学び、中国と真摯に向き合っていかなけれはならない」と書いたが、全くその通りだ。
 戦争ではどのようなことが起こるのか。ちょっと長いがある文章を引用したい。「歴史は作られた。世界は一夜にして変貌した。われらは目のあたりにそれを見た。感動に打顫えながら、虹のように流れる一すじの光芒の行衛を見守った。胸うちにこみ上げてくる、名伏しがたいある種の激発するものを感じ取ったのである。十二月八日、宣戦の大詔が下った日、日本国民の決意は一つに燃えた。爽やかな気持ちであった。これで安心と誰もが思い、口をむすんで歩き、親しげな眼なざしで同胞を眺めあった。口に出して云うことは何もなかった。建国の歴史が一瞬に去来し、それは説明を待つまでもない自明なことであった。東亜から侵略者を追いはらうことに、われらはいささかの道義的な反省も必要としない。敵は一刀両断に切って捨てるべきである。われらは祖国を愛し、祖国に次いで隣邦を愛するものである。われらは正しきを信じ、また力を信ずるものである。大東亜戦争は見事に支那事変を完遂し、これを世界史上に復活せしめた。今や大東亜戦争を完遂するものこそ、われらである。…中国文学研究会一千の会員諸君、われらは今日の非常の事態に処して、諸君と共にこの困難なる建設の戦いを戦い取るため努力したいと思う。道は遠いが、希望は明るい。相携えて所信の貫徹につき進もうではないか。耳をすませば、夜空を掩って遠雷のような響きの谺するのを聴かないか。間もなく夜は明けるのであろう。やがて、われらの世界はわれらの手をもって眼前に築かれるのだ。諸君、今ぞわれらは新たな決意の下に戦おう。諸君、共にいざ戦おう。」
 これは中国文学者で魯迅研究の第一人者の竹内好の「大東亜戦争と吾等の決意(宣言)」である。ちゃんと歴史を見ていないと竹内ほどの人でさえそういう雰囲気に飲み込まれてしまうのである。

中国と戦争してはならない。日本は火だるまになる

 講演は、新垣邦雄さん(ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会・事務局長)による「ノーモア沖縄戦・ノーモア日中戦争 今日のガザは明日の沖縄・今日の沖縄は明日の日本」と題しての沖縄からの報告。
 今日の話の主題は二つ。一つは、中国と戦争してはならない。そうすれば日本は火だるまになるということだ。もうひとつは沖縄戦の経験から、軍隊は非人間的だということだ。こんど戦争になれば沖縄だけでなく日本全体がそれを体験することになる。「沖縄を犠牲にしない」という言葉には違和感があるが、映画監督の三上智恵さんがよく言うように「沖縄の問題は対岸の火事ではない、向こうに火がついていて大変だね、ということではなくて、もう私たちの服にも火がついているんだ」ということを認識しなければならない。 久島の付近で米空軍のオスプレイが墜落して8名が死んだ。横田基地所属で、岩国基地から嘉手納基地に向かう途中だったという。こういうことがたびたび起こっている現実がある。
 11月23日には、那覇市で「県民平和大集会」には1万人以上が結集、全国からも多くのひと参加した。「不条理が存在する限り、私たち沖縄県民はこれからも絶対にひるむことなく行動し、平和の声を上げ続けていこう」という玉城デニー知事の発言や、「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」共同代表の具志堅隆松さん(沖縄戦遺骨収集ボランティア)は「私たちが選択するのは、沖縄を戦場にさせない、ひいては日本を戦場にさせないということだ。そのために県民一人一人が戦争は嫌だと意思表示する機会を、このような集会をこれからも持ち続ける。沖縄だけでなく、台湾、フィリピン、韓国、近隣諸国と連帯しながら、東アジアを戦場にさせないことをみんなで確認して、より確固たるものにしていきたい。戦争に巻き込まれたくない、生き残りたいと思うことは当然の権利だ。ともに頑張っていこう」とのべ、オール沖縄会議共同代表の高里鈴代さんは「沖縄の地上戦の経験は本当にすさまじいものだった。だからこそ被害者にも加害者にもなりたくない。これは多くの県民の願いだ。でも加害者になるかもしれない。辺野古基地を認めてしまう、あるいは自衛隊基地の拡大を認めてしまう。それは次の戦争に加担することにもなる。それを明確に拒否するために、この状況にノーの声を上げ、立ち上がろう」と言った。
 麻生太郎自民党副総裁は、中国と「戦う覚悟を」と発言した。だが、「台湾有事=日本有事論」は、台湾を助けず、戦争を誘発するだけだ。台湾の元従軍慰安婦の廖淑霞さんは、「日本のために戦い命を落とした。台湾籍の人々のことを忘れないでほしい。日本が統治した台湾からは日本兵として約20万人が太平洋戦争に出征し約3万人が死亡した。だが、日本敗戦により国籍が中華民国、台湾籍に変更されたため、台湾籍の旧軍人軍属は、恩給や保証が受けられなかった。また強制的に軍事郵便貯金に積み立てられた。当時の日本円で家が立つほどの金額だったが、2000年に受けたのは20万円足らずだった」と言っている。
 そもそも台湾は一つの国ではない。中国と台湾の問題は中国内戦の継続であり、他国が手を出すことは、内政干渉であり国際法違反となる。それは侵略戦争となると言うことだ。だから、台湾の国際法上の位置づけが大事であり、今後の重要なテーマだ。
 「日本防衛の捨て石になる沖縄」論は誤りで、日本は無傷ではいられない。中国はミサイル大国であることを忘れてはならない。80年前とは違うのである。
沖縄戦争計画は非人道的なものだ。琉球新報1月3日で高橋杉雄防衛政策研究室長は次のように語っている。政府・防衛省の考えがわかるので詳しく見てみたい。「中国が米軍の介入を阻止するため、南西諸島の飛行場や港湾をミサイルで攻撃すると考えられる。民間も含め、軍事的に使用できる施設が対象になる。無防備なら上陸して占拠しようとする可能性もある」。そして、住民の被害については、「中国は米軍や自衛隊が使える飛行場や港湾をピンポイントで狙える。民間人が意図して狙われることは基本的にないと想定している。基地従業員や空港職員ら、軍事目標となり得る施設にいる民間人が巻き込まれる可能性はある。」中国のミサイルはピンポイント攻撃できるから、民間人の被害はないというのだ。そして長期戦を想定してつづける。「軍全体で見れば中国の戦力は米国の7割程度だが、米軍は世界的に展開するため、中国大陸からグアムまでの地域に限れば中国が上回っている。ミサイル攻撃の能力を考えれば、短期決戦では中国が有利となる。しかし、半年〜1年ほど時間を稼げば、他地域に配備されている米軍が駆け付けて日米が有利になる」「長期戦のリスクはある。勝利しても地域全体が、台湾を含めウクライナのような破壊を受ける可能性が高い。だから抑止が重要だ」。これが自衛隊などの本音だ。 だが、この戦争の想定はいかがなものか。民間人に犠牲の出ない長期戦だというのである。そんなことはありえない。いまもウクライナで、ガザで民衆の虐殺が続いている。11月6日に、ノーモア沖縄戦・命どぅ宝の会による、ガザ地区・イスラエル紛争の即時停戦と沖縄の戦争準備中止を求める声明「今日のガザは明日の沖縄」がだされた。ここには「海に囲まれ『軍民が混在』する島々の住民は、逃げ場もなくミサイル攻撃にさらされかねません。ガザ地区に打ち込まれた何千発ものミサイル被弾地の地図が沖縄の島々に重なって見えます。ミサイル攻撃で多数の市民、子どもたちが犠牲になるガザ地区の映像は、明日の沖縄の姿かもしれません。」「日米政府は沖縄―奄美の島々の『敵基地攻撃ミサイル基地化』を進めています。戦争準備は、自衛隊那覇基地の『滑走路復旧訓練』、『遺体処理訓練』、『戦傷者の輸送訓練』、「『液製剤の製造・備蓄』など、『戦争前夜』を思わせます。沖縄は『人間の住んでいる島』です。無人島ではありません。私たちは、人が殺し合う戦争に反対します。誰も死なせてはなりません。ガザ地区・イスラエル紛争の即時停戦と国際人道法、ジュネーブ条約追加議定書に基づき、住民の犠牲を前提とする沖縄への戦争準備をただちに中止するよう要求します。」とある。
 すでに徳之島、大分、岡山空港の自衛隊戦闘機訓練が行われている。
 またアメリカのシンクタンクSIS(戦略国際問題研究所)報告では、「嘉手納だけでなく岩国、横田、三沢も使う」としていて、日本全国の空港・港湾の軍事化が進んでいる。そして、中国、韓国の戦争賠償問題、賠償訴訟への日本政府の対応は加害(被害)の事実を認めながら賠償責任を放棄するというまったく不条理なものだ。

 会場から内田雅敏弁護士が発言した―前泊博盛・沖縄国際大学教授は麻生元首相の「台湾有事は日本有事」との発言を、台湾有事、沖縄有事をまるで期待するかのような傍観者的好戦論だと批判したが、必要なのは当事者的非戦論であり、日中関係は日中共同声明など四つの基本文書を基に構築されなければならない。いま自衛隊員の戦死を前提に靖国神社への合祀論が元自衛隊陸幕長からだされるなどの状況がある。

大分敷戸ミサイル弾薬庫・大分の戦争基地化を許さず

 池田年宏さん(大分敷戸ミサイル弾薬庫問題を考える市民の会)は「大分の戦争基地化をゆるさない」と題してリモート報告をおこなった。
 政府は反撃能力の要とされるミサイルなどを保管する弾薬庫を国内に整備する方針で、陸上自衛隊の大分分屯地(大分市大字鴛野)には2棟を新設する計画だ。10月31日に、「大分敷戸ミサイル弾薬庫問題を考える市民の会」は、記者会見で、「敷戸ミサイル保管庫新設計画の撤回を求める声明」ならびに「公開質問状(内閣総理大臣、防衛大臣宛て)」を発表した。
 11月2日夜には、九州防衛局・大分県・大分市による「大分分屯地における火薬庫等の整備に係る住民説明会」が行われた。予定は一時間だったが質問相次いで2時間近くになった。しかし住民の疑問や不安に答えるものではまったくなかった。大分県の湯布院にはミサイル連隊があり日米共同訓練が今年になって2回行われ、また自衛隊の統合演習と言うのも行われている。その際には民間の港、一般道路も使われている。引き続きの「説明会」実施を求めるなど、反対運動を強めていきたい。


経済安保法改正案は経済安保版・秘密保護法案だ

 12月6日、衆議院第二議員会館前で、秘密保護法」廃止へ!実行委と共謀罪NO!実行委の共催による「共謀罪廃止!秘密保護法廃止!監視社会反対!」行動が行われた。その後に院内集会「強行採決から10年 改めて秘密保護法を問う」が開かれた。
 金子勝さん(立正大学法学部名誉教授)は、「経済安保推進法は何を狙うのか〜戦争と経済の癒着」と題して報告。岸田内閣が2022年12月16日に閣議決定した「安全保障3文書」は、日本の国が自己の欲するところにどこへでも先制侵略攻撃ができるというものである。この侵略戦争宣言が出された最大の理由はアメリカのバイデン政権の世界覇権国家を維持するため中国を押さえ込む政策がある。米国は、中国が2027年に台湾に侵攻するとの仮説を立てた。起点となったのは、アメリカ・インド太平洋軍の司令官が2021年3月9日にアメリカ上院軍事委員会の公聴会で行った発言にある。それは中国がインド太平洋地域で軍事力を急速に増強させている。中国は米国にとって変わろうと野心を強めている。脅威は今後10年、実際には6年ほどでピークになる、といものだった。アメリカが2027年戦争の準備を始めた以上、日米核同盟を結ぶ日本国も参戦準備を始めなければなかった。だから、岸田内閣は安全保障3文書と言う憲法クーデタを行った。日本の経済の軍事化を果たすために制定された法律が、「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律」すなわち経済安全保障推進法である。

 秘密保護法対策弁護団・事務局長海渡双葉弁護士は、「経済安保版・秘密保護法に反対する!」と題して報告。岸田政権は、来年の通常国会に経済安保法改正案を提出しようとしているが、これは経済安保版・秘密保護法案である。特定秘密保護法の大きな3本柱は、@国の安全保障に関する情報について、「特定秘密」に指定する。A特定秘密を取り扱う者を制限するために、「適性評価制度」を導入する。B特定秘密を漏えいした者や特定秘密を取得した者を、厳しく処罰する。特定秘密とは、防衛、外交、特定有害活動、テロリズムの4分野の情報で、公になっていないもののうち、「その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるもの」とされるが、特定秘密の範囲が、広範かつ不明確になってしまっている。国民の知る権利も守られない。これが最大の問題だ。
 秘密保護法第1号事件がおこった。防衛省は、2022年12月26日、秘密保護法で定められた「特定秘密」をOBに漏らしたとして、海上自衛隊の1等海佐を付けで懲戒免職処分した。自衛隊内部の捜査機関である警務隊は、1等海佐を秘密保護法違反で書類送検したが、「何が秘密、それは秘密」という状況で、不起訴となった。だが、本当に問われるべきは何なのか。秘密保護法の構造的な問題が問われなければならない。
 経済安保版・秘密保護法案には導入されているセキュリティ・クリアランスとは、@経済安全保障上重要な情報を、秘密指定する。A当該情報にアクセスする必要がある者に対して政府による調査を実施し、信頼性を確認してアクセス権を付与する。B情報が漏えいした場合は厳罰を科す。特定秘密保護法と同じ構図だ。経済安保改正法案は、秘密保護法の拡大に他ならない。


「ウクライナ動乱」(松里公孝著 )を読む

 ロシアによるウクライナ侵攻から2年近くが経ても今なお戦火は収まらず打開の道が見えない中、世界的に有名なウクライナ研究者である松里公孝氏(東大大学院教授・専門はウクライナなど旧ソ連圏の現代政治)はソ連解体から露ウ戦争までの歴史的背景を命がけの現地調査などをもとに分析した著書「ウクライナ動乱―ソ連解体から露ウ戦争まで」 (ちくま新書)を発刊した。

ソ連末期から継続する社会変動


著者は「はじめに」の中で「私たちは、冷戦終了・ソ連崩壊後の現代史について次のようなイメージをもちがちである。…アメリカ一極世界が安定し旧社会主義諸国では体制移行が進んだ。イラク戦争や…アメリカ一極世界が動揺し始め、…特にロシアは軍事大国化し、旧ソ連領に干渉している。この『いったん安定したものが再び動揺している』という有力イメージに対して、本書で問いかけたいことは、私たちはまだ1989―91年に始まる社会変動の只中にいるのではないかということである。特にソ連継承国の多くは、1990年の経済水準を回復していない。貧困問題が直視されない代わりに、親露派対親欧米派という二項対立が、現地について何も知らなくても現地情勢を説明出来てしまう魔法の杖のように振られる。これは、現地に対するバイアスであると同時に日本人が自国の貧困問題に取り組めなくなっていることの反映ではないだろうか。」している。そして「住民の経済的困窮がうみだしたのはポピュリズムである。グルジア、アルメニア、ウクライナというポスト・ソ連時代における生活水準の落ち込みが激しい国に出現したことは私には偶然とは思えない。」そこで「普段、市民はどうやって生活防衛をするかというと、脱税と汚職である」そのため自分自身が共犯者であるからこそ…奇跡によって清潔で効率的な社会を実現して欲しいという願望が一挙救済を約束するカラー革命に市民を駆り立てるとしている。

ドンバス戦争

 2008年以降の旧ソ連圏における戦争・紛争はすべてソ連末期の分離紛争の再燃という性格を帯びている。その特徴はマトリョシュカ連邦制(ソ連政権中央―連邦構成共和国―自治単位という三層構造)でありソ連末期の沿ドニエストル・アブハジア・クリミヤなどはソ連からの独立を目指していたわけではなくまったく逆でそれらが帰属していたモルドヴァ、グルジア、ウクライナなどの上位共和国がソ連からの独立傾向を強めたので、自分たちはそれら上位共和国から分離してソ連に残ることを目指したのである。こうした背景のもと2014年2月にユーロマイダン革命が起こった。これは、当時のヤヌコヴィッチ大統領はEUとの自由貿易協定を合意することにしていたが、その内容はウクライナの性急な市場開放や石油・ガスを国際価格より安くするための国庫から逆ザヤの援助を止めるなどウクライナに不利なものとなっていた。そのためヤ大統領は自らの再選に公共料金の値上げは不可避となることとプーチン政権からウクライナを中継点としEUの製品が無関税でロシア等に流入することになるので圧力を掛けられたことで協定の調印を延期した。これに対し「EUに入りさえすれば経済は繁栄し汚職もなくなる」と固く信じる一定の階層が首都中心部の「独立広場(マイダン)」に座り込みを始めたことに対し政権側の治安部隊が発砲し多数の死者を出す大規模衝突に発展した。抗議運動の激化を受けてヤ大統領はロシアに逃亡したため民族主義愛国派の野党が政権を握るマイダン革命が起きた。以降分離派との対立は深刻化し東部ドンバスは住民投票を通してドネツク人民共和国の承認を経て分離独立傾向を強めた。そして2014年5月ウクライナ軍によるドネツク空港の空爆でドンバス戦争が開始された。これを停戦させる目的で独仏の仲介で露・ウ・ドネツク・ルガンスク代表が参加したミンスク合意が2回にわたって調印されたが露ウとも自軍に有利な「時間稼ぎ」と見なしていた。2019年の選挙で大統領になったゼレンスキーは「ミンスク合意のリセット」(合意の否定)を提唱した。ゼレンスキー政権は2021年以降、分離紛争はトルコ製無人機やドローンがあれば軍事的に解決(再征服)できるとして東部に兵力を結集し一方ロシアも南北国境線上に兵力を結集する事態となった。

ミンスク合意から露ウ戦争へ

 2022年2月プーチンはウクライナ民族主義者による戦争準備に対決するため「特別軍事作戦」=「予防戦争」を開始した。しかし国連憲章第51条は先制攻撃や予防戦争を正当化するものではなく同条が想定しているのは、実際に攻撃を受けた場合のみである。プーチンの戦争目的は「NATO拡大の阻止」「ドンバス住民の救済」「露語系住民の保護」「脱ナチ化」であるが実際は「この戦争によってNATO拡大は加速し、ドンバスでの民間犠牲者数は増大し…ウクライナ政治における右派民族主義者の地位は揺るぎないものとなり野党は撲滅され…戦後にウクライナが民主化する見通しはほぼないと言わなければならない」としている。そしてロシアは開戦当初、政権打倒を目指したがウクライナの抵抗によって首都からの撤退・へルソン・ザポリジャの占領・併合に向かい、「ロシアの戦争目的は体制変更から領土獲得に替わった」とし、その後戦争は東南部で膠着状態となった。著者は「ロシア指導部は、自国の安全保障上の死活の問題にさえ統一した方針を持たない」と批判している。一方ウクライナ側に対してもゼレンスキー大統領が「野党系テレビ局の放送免許を剥奪」したので「こんにちテレビ局は政府支持の一局しかない。つまらないので誰も見ず、敵であるロシアのテレビを見るようになってしまう。なぜ明日にでも反転攻勢が始められるような嘘を、国民につくのか」と述べている。

終章・ウクライナの統一と分裂

 著者は「本書のまとめとしてまず強調したいことは、ウクライナの問題は第一義的にはウクライナの問題だということである。…ウクライナの再生に協力したいと考えている日本の市民には、ウクライナを知って欲しいと思う。善意は知識の代わりにはならないし、プーチン政権を倒しても、ウクライナはよくならない。」しかし「ドンバスもクリミアもないウクライナ」という主張は心では思っていても口に出せないものとなり「国境線を変えられては困る欧米や国際機関が、援助を梃子にウクライナを『励まして』強硬姿勢に戻したと思う」「国や民族が画然と分かれた東アジアに住む我々にとって、旧ソ連空間はわかりにくい。日本人は太平洋戦争時の日米関係や、今後ありうる日中戦争のアナロジー(類推)で露ウ戦争を認識する。大統領の下、国民は団結してロシアと戦っているというイメージは、判官贔屓の私たち自身にとって心地よい。しかし、これは事実ではない。ウクライナ住民の戦争評価は地域によって様々である。そのうえ、交戦国間に言語障壁が存在しない。情報空間は単一である」「そもそも分離紛争は『国の領土は大きければ大きいほど良い』『領土を失うことは人間が手足をもがれるのと同じ』などという国家表象を人々が捨てない…限り解決が難しい問題なのである」そして著者は「最も現実的な紛争回避策は一時凌ぎの停戦協定を、綻びを繕いながら何十年でももたせて、人々の国家表象や国際法の通説的解釈が変わることを待つことである。分離紛争を『解決』して恒久的な平和を目指そうなどとすると、かえって戦争を誘発する」とし「いずれにせよ、露ウは切っても切れない関係にあり、両者が普通の国家として綺麗に株別れすることはありえない」としている。(DAM)


せんりゅう

     丁寧にていねいに言い「武器買います」

          呪術の如くJアラート耳につき

     また値上げすってんてんの大晦日

          物価高粗煮たべて一日

     一方は万円の酒であそんでる

         発言撤回ウラの裏に金張り

     キシダ君ABEグミに酔っている
  
                         ゝ  史
  2023年12月


複眼単眼

        
ウクライナに関する奇妙な議論

 ロシアのウクライ侵略戦争が終わりのきざしも見せないうちに、イスラエルのガザへのジェノサイドが始まり、激化している。
 ウクライナ東部では一進一退の激戦がつづき、ガザやパレスチナでは子どもや女性たちをはじめ、大量殺りくが連日繰り返されている。
 日本も含め、世界中で反戦の運動が高揚しつつあるが、はじまった戦争は容易におさまらない。筆者も微力を尽くしているつもりだが、いてもたってもおられない気持ちだ。多くの人びとが一刻も早く戦争をとめたいと思っているだろう。
 約20年前のイラク戦争時には全世界で2000万人ともいわれる反戦運動の高まりがあった。この時は日本ではWORLD PEACE NOWという市民運動の高揚があった。市民運動の歴史に残る運動だった。
 しかし、冷静に見ると運動内部には亀裂もあった。当時の反戦運動はWPN以外に共産党系と平和フォーラム系に分裂していて(総がかり行動は誕生していなかった)、平和フォーラム系はWPNに協力し、共産党系の参加はあまりみられなかった。
 これは少し苦い思い出だったが、いままた喉の奥から何か苦いものがこみあげてくる思いを追体験している。
このウクライナ戦争の中で、日本の一部知識人がウクライナの戦いが米国の「代理戦争だ」という論理を前提に、「即時停戦」論や、「プーチンもゼレンスキーもどっちもどっちだ」論にこだわっている。これらの人びとは時折、知識人の共同声明を出す運動などを企画し、賛同者を募り、結果として日本の平和運動に亀裂をいれているのだ。そしてそれをイスラエルのガザでのジェノサイドを引き合いに出して、「これ以上、死者をだしてはならない」と感情に訴えて、正当化している。
 ロシア軍の撤退を含まないウクライナの「即時停戦論」は問題を解決しない誤りであることはいうまでもない。これでは戦争は終わらない。国際法を犯して国境を武力で侵犯し、他国領土を軍事占領していることは断じて認められない。
 こんなことが21Cの現代に容認されてはたまらない。
 かつて1930年代に日本帝国主義が中国を侵略し、「満州国」をデッチ上げたとき、偽満州国をそのままにした「即時停戦」などありえただろうか。当時の中国人民は、日本帝国主義を追い出すために、侵略に反対して戦ったのではなかったか。
 ウクライナを米国などNATO諸国が支援していることの評価は別問題だ。かつてファシズムに反対して各国人民が欧米列強と連携した経験もある。
 いうまでもなくジェノサイドの企てがつづくパレスチナには「イスラエルの即時停戦」が必要だ。しかし、これは「イスラエルのガザからの撤退」「ガザの解放」と不可分の要求だ。
 米国=NATO=帝国主義=侵略者論によるロシアとの「代理戦争」論は一時代前の米ソ冷戦時代の議論だ。ロシアも領土拡張主義・帝国主義にほかならない。
 いまは市民運動に無用な亀裂を入れないことが肝心だ。市民運動は「ウクライナのロシア軍の即時停戦・撤退」、「ガザのジェノサイド止めろ、即時停戦」「ガザの解放」でまとまろう。 (T)


冬季カンパのお願い

       労働者社会主義同盟中央委員会

 岸田内閣と自民党はこれまでかさねてきた自らの数々の悪行の報いで断末魔の様相を呈しています。かれらは、安倍の戦争する国作り路線に拍車をかけ、いっぽうで人びとの生活をないがしろにし、腐敗を深めてきたからです。
 この情勢を活用して、自民党政治を終わらせるため、労働運動、市民運動、立憲野党は共闘をつよめ、総がかりの行動を全国で展開していきましょう。
 私たちも一段と奮闘する決意です。運動の勝利的な前進のために冬季カンパをお願します。

二〇二三年冬

新報  2023年12月号.pdf