人民新報 ・ 第1429統合522(2024年1月15日)
  
                  目次

● スキャンダル続出で窮地に立つ自民党

        大軍拡・金権腐敗の岸田政権を終わらせよう

● 暴走を止めない公安警察と検察

● 政府の騙し討ち的な工事強行

        辺野古新基地は作らせないぞ

● イスラエルは虐殺をやめろ!

        パレスチナ・ガザに自由を!

● パレスチナに平和を!軍拡増税反対!改憲発議反対!などを掲げて

        12月19日   97回目の「19日行動」

● 軍事侵攻から2カ年! ロシアのウクライナからの即時停戦、完全撤退をもとめよう! (上)  /  矢吹 徹


● 2024年度政府予算案の内実は財政ファイナンスだ!  /  関 孝一

● せんりゅう

● 複眼単眼  /  改憲原案作りの「作業部会」の設置は止めよ





スキャンダル続出で窮地に立つ自民党

        大軍拡・金権腐敗の岸田政権を終わらせよう


災害対策より軍拡優先

 2024年は最大震度7の北陸激甚震災であけ、波乱の年明けとなった。事態が明らかになるにつれて死者数、家屋、インフラ破壊のすさまじさが明らかになってきた。一刻も早く十分な支援が求められている。この事態への岸田政権の対応のひどさが現在の自民党政治の混迷を物語るものとなった。
 岸田は主要政策の一つで「国民生活の安全・安心」をあげ、「近年、激甚化・頻発化する豪雨等の気象災害、切迫する大規模地震等、インフラの老朽化等から国民の生命・財産を守り、被災者を一人でも減らすことは、我々の使命です。中長期的、継続的かつ安定的に、防災・減災、国土強靱化に取り組みます。また、東日本大震災の被災地の復興なくして日本の再生はありません。この強い思いの下で、地元の声に寄り添い、引き続き全力で取り組みます。さらに、感染症有事への備え、良好な治安の確保を含め、国民の皆さまが、安心して豊かな暮らしを送ることができるよう、全力を尽くしてまいります。」としてきたが、「全力を尽くして」いるとは言えない。以前から能登半島には大きな地震がくるとの警告にもかかわらずその対処はなされていなかった。その象徴的なあらわれが志賀原子力発電所1号機、2号機を再稼働させようとしていることだ。この原発は地震で外部から電気を受けるために使われている変圧器で配管が壊れ絶縁や冷却のための油が漏れるトラブルがあり、外部から電気を受ける系統が使えなくなった。
 政府として第一になすべきはまさに「国民生活の安全・安心」のための施策だが、岸田のもっとも力を入れているのは、米政権の意向に「忖度」した戦争する国作りなのだ。今回の震災は、こうした政治・政府はいらない、必要なのは人びとの生活と安全を最優先する政治・政府なのである。今回の深刻な事態は岸田人災といえるものだ。

違反当事者による政治刷新

 岸田政権は発足以来最大の危機にある。戦争する国づくりへ暴走する岸田内閣だが、これまでのさまざまなスキャンダルに加えて、安倍派などの自民党の派閥の政治資金パーティー収入キックバック問題で議員逮捕者をだすなどで一層の支持率低下に直面している。あわてた岸田自民党は、岸田が本部長、党副総裁の麻生と前総理の菅が最高顧問、茂木幹事長が本部長代行、木原誠二が幹事長を務めるなど38人の構成で「政治刷新本部」を設置し、1月11日に初会合を開いた。会議で岸田は「極めて深刻な状況にあるという危機感の下、一致結束して対応しなければならない」「自民党自らが変わらなければならない。私自身、この問題を最優先、最重点で取り組む」「『政治は国民のもの』という立党の精神に立ち返り、忌たんのない議論を」と述べた。茂木は、「わが党自らの取り組みとして政治資金の透明化への取り組みを進める必要がある」と述べた。だが派閥解消や政治資金規正法の改正など具体的な改革案は示されなかった。
 「本部」の派閥ごとの内訳は、安倍派10人、麻生派3人、茂木派7人、岸田派5人、森山派1人、無派閥10人(派閥を離脱した岸田を含む)。これからもこのメンバーからもスキャンダル暴露は続くだろう。ま麻生、菅の間には派閥解消をめぐって深刻な対立がある。この陣容で政治刷新(!)は不可能である。
 問題の奥には、禁じられたはずの企業団体献金の「合法化」のために政治家によるパーティー収入がある。だが、それさえもごまかし報告での裏金作りが明らかになった。検察も動かざるを得なくなった。だが中途半端に終わるだろう。
 こうした大企業の自民党への政治献金とその見返りとして政府与党の大企業に有利な政策展開という構造が日本資本主義社会の政治の基本であり、その克服をスキャンダル当事者たる自民党の自浄作用に任せようというのは、自民党政治の延命を黙認することになる。
 野党も「政治刷新本部」による改革には批判をつよめている。自民党の逃げ切りを許さず、徹底究明・追及で、岸田を追い詰めよう。

戦争挑発を許すな

 岸田は今年の年頭所感で、「経済でも、社会でも、外交関係でも、『変化を力に』して、『明日は今日より良くなる』と国民の皆様が信じられる時代を実現します」と述べたが、岸田の政治は人びとに日々悪化する生活を押しつけるものとなっている。
 その中で、外交について「本年は、『緊迫の一年』となります。…外交力を駆使して難局を乗り越え、日本ならではのリーダシップを発揮していくことが求められており、本年も首脳外交を積極的に展開していく覚悟です。また、ロシア・北朝鮮の連携など複雑化する東アジアの安保環境の中にあっても、国民の安全、我が国の領土・領海・領空を断固として守り抜きます」と述べた。また、4日の年頭記者会見では、「総裁任期中に改正を実現したいとの思いに変わりはない。今年は条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速していく」と改憲への意欲を示した。
 世論調査での内閣支持率は過去最低を更新し、反転の兆しはない。改憲決意表明で自民党の岩盤支持層である保守派をつなぎ止め、支持率の回復につなげたいとの思いだろうが、それは極めて困難なことだ。
 改憲のために情勢の緊張を引き起こそうとしているのが、麻生太郎だ。1月10日、訪米中の麻生は、台湾海峡有事は「日本の存立危機事態だと日本政府が判断をする可能性が極めて大きい」と述べた。台湾では1月13日に総統選挙と立法院(国会)議員選挙が行われる。その結果は今後の東アジア情勢に重大な影響を及ぼす。しかし、日中間の関係は両国間の四つの基本文書に立脚して処理されなくてはならない。昨年五月九日の原口一博衆議院議員(立憲民主党)の「いわゆる一つの中国と台湾有事に関する質問」への政府答弁(内閣衆質二一一第五五号)にも「台湾に関する我が国政府の立場は、昭和四十七年の日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明第三項にあるとおり、『台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である』との中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重するというものである」としているが、麻生の言動はおおきく逸脱する内政干渉的な挑発的なものと言うことができる。
 岸田政権に大きな打撃を与える好機が訪れた。市民と野党の共闘を強化して自民党政治を終わらせよう。


暴走を止めない公安警察と検察

  大川原化工機訴訟・都と国の控訴を許すな 軍事転用可能な機械を不正輸出したとして2020年3月11日に警視庁公安部外事一課が神奈川県横浜市の大川原化工機株式会社の代表取締役らを逮捕・起訴され、後に起訴が取り消された機械製造会社「大川原化工機」(横浜市)の大川原正明社長らが国家賠償を求めた訴訟で、昨年12月27日、東京地裁(桃崎剛裁判長)は、国と東京都に計約1億6000万円の支払いを命じた。
 判決では、警察の捜査については「製品を熟知している会社の幹部らの聴取結果に基づき製品の温度測定などをしていれば、規制の要件を満たさないことを明らかにできた。会社らに犯罪の疑いがあるとした判断は、根拠が欠けていた」とし、また逮捕者の取り調べでも、調書の修正を依頼されたのにもかかわらず、修正したふりをして署名させるなどとした。検察については、「必要な捜査を尽くすことなく起訴をした」と違法だったと指摘した。
 また勾留中にガン発見され、直ちに医療機関を受診させずに亡くなった相嶋静夫さんについて「家族は、夫であり父である相嶋さんとの最期を平穏に過ごすという機会を、捜査機関の違法行為によって奪われた」とした。警察・検察による冤罪でっち上げ事件が明らかにされた。
 勝利判決だが、まだ十分なものとはいえない。
 原告の大川原社長や島田取締役は、謝罪と再発防止のための検証を求めている。
 東洋経済オンラインの記事「公安と検察の捏造に言及不足の大川原化工機判決冤罪逮捕の社長らへの捜査の違法性は認める」(山田雄一郎記者 12/30)は原告代理人の高田剛弁護士の言葉を引きながら次のように指摘している。―「警視庁公安部は経済産業省を説得するため、安積伸介警部補(肩書きは当時。以下同じ)らが防衛医科大学校の微生物学者・四ノ宮成教授ら4名の有識者から聴取した報告書を、公安部独自の法解釈の根拠として提出している。だが、その報告書には有識者の供述と異なる内容が書かれていた。このことは、証拠として提出されている四ノ宮教授の陳述書から明らかであるし、私自身、四ノ宮教授を含む3名の有識者から確認をしている。つまり、経産省は嘘の有識者見解に基づき公安部の法解釈を受け入れたということだ。しかし判決文では、公安部が経産省を説得する過程の事実についていっさい触れられなかった。公安部が経産省を説得する過程で何があったのかは、事件の深層にかかわる重要な事実であるが、事実認定してもらえなかった。判決は(公安部や東京地検の)捜査の明らかな違法を認定している点で手堅いものの、われわれからすると薄味な印象がある。「それでも、東京地裁の桃崎裁判長は捏造の構図にまでは踏み込まなかった。判決文には事件を指揮した張本人・宮園警部の名前すら出てこない。」

 ところが、1月10日、都側と国側は、逮捕や起訴は違法だと認定し、東京地裁判決を不服として控訴したのである。警察庁の露木康浩長官は控訴した理由について、「警視庁で精査した結果、上級審の判断を仰ぐことが適当との結論に至った」また、控訴審の審理に対応する過程で、捜査した警視庁が捜査の事実関係を確認、整理し、判明した教訓を今後の捜査に生かしていくなどと述べたが、みっともない悪あがきそのものだ。
 大川原社長は控訴について「あきれたという思いだ」と述べ、社長側も控訴し「冤罪の真相を一層明らかにするべく主張、立証を尽くす」としている。
 地裁判決で違法とされた警察官や検察官の行為は、強制捜査や公訴提起といった強大な権限を不正に濫用したものであり、経済安全保障の名の下に恣意的かつ横暴な警察・検察の暴走をやめさせなければならない。


政府の騙し討ち的な工事強行

        辺野古新基地は作らせないぞ


 辺野古新基地建設は沖縄を対中戦争の最前線基地として強化するためのものだ。その建設用地の大浦湾側は軟弱地盤でもある。その軟弱地盤は、辺野古沿岸部東側の埋め立て予定地の海底がマヨネーズ状になっている軟らかい粘土層であり、それも最深で海面下90メートルにまで及ぶ。防衛省は「地盤改良すれば建設可能」として、地盤改良は、海底に約7万本(!)の砂くいなどを打ち込んで地盤を固めるという大幅な設計変更を行ったが、それは無理筋というものだ。「近傍の地点から強度を推定する方法は間違ったものではない」と防衛局の見解を支持して設計変更にお墨付きを与えた地盤などの専門家である技術検討会の委員らへ受注業者からの金品が送られているなどの報道もある。でたらめな工期作業では当然にも膨らむ工事費が膨らみつづけている。こうしたことは決して許されることではない。
 基地絶対反対の県民民意を背景に玉城デニー沖縄県知事は、工事のための設計変更を承認していない。
 だが政府・国土交通省は反対の声をまったく無視して昨年12月28日、沖縄県に代わり承認する代執行を行った(政府は工事完了までの工期を約9年と見込んでいる)。

 年明け早々の1月10日、林芳正官房長官は、沖縄名護市の辺野古新基地建設にむけての大浦湾側の地盤の改良工事に着手すると述べた。同日、防衛省は、軟弱な地盤の改良工事を含む大浦湾側の海の埋め立てに向け、石材を投入するなどの工事を強行した。当初12日に工事を始める構えだったが、抜き打ち的な工事開始だ。そもそも沖縄県が2013年12月に当時の仲井真弘多沖縄県知事が埋め立て申請を承認した際に付けた「留意事項」は、防衛局に対して工事の実施設計について県と事前に協議するよう定めていた。そうした協議も一切無いままの段階での埋め立て工事の開始は全く信義を欠いたものである。
 沖縄県の玉城デニー知事は県庁での会見で、政府は県が求めてきた対話に応じず、知事の権限を奪う代執行を経て工事の着手を強行したことにたいして、「『丁寧な説明』とは到底真逆の、極めて乱暴で粗雑な対応がなされたものと言わざるを得ない」と批判した。
 大浦湾の工事着手に抗議して、1月12日には辺野古に新基地を造らせないオール沖縄会議の主催による「代執行埋め立てを許さない県民集会」がひらかれた。オール沖縄会議共同代表の稲嶺進・元名護市長は、国の代執行による工事着手にたいして政府は地方自治を尊重する立場がまったくないと批判し、これからも運動を頑張っていこうと述べた。玉城デニー知事は、辺野古新基地建設をやめさせようとのメッセージを寄せた。
 辺野古新基地反対には海外からの支援の輪も広がっている。日本政府による辺野古の「代執行」をうけて1月6日、アカデミー賞受賞映画監督のオリバー・ストーンや歴史家のピーター・カズニック、「フォーカス・オン・グローバルサウス」共同代表のウォルデン・ベロなどのアカデミー賞、ノーベル平和賞、ピュリッツァー賞受賞者ら世界の著名人による国際声明「米国と日本は沖縄の軍事植民地支配をやめよ」がだされた。
 辺野古損基地建設工事をただちに中止せよ。

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知事コメント(大浦湾側工事の着工について)

 本日正午頃、沖縄防衛局が大浦湾側の工事に着手したことについては、承知しております。
 平成25年の埋立承認書の留意事項には、工事の施行についての協議、工事中の環境保全対策等についての協議が定められており、沖縄防衛局もこれに基づいて昨年9月に協議書を提出しております。沖縄県は、昨年12月に国土交通大臣によって変更承認申請が承認されたことから、これらの協議を開始することとしましたが、協議が未だ調っていない中で、本日、工事が着手されたことについては、誠に遺憾であります。
 本日、林官房長官は記者会見で「地元の皆さまへの丁寧な説明」を行うと発言され、また、木原防衛大臣も、先月の記者会見で「地元の皆様方に丁寧な説明」を行うと発言されておりますが、私はこれまで、辺野古新基地建設問題を含む基地問題について、一度たりとも、林官房長官とも、木原防衛大臣とも面会する機会をいただいておりません。
 沖縄県がこれまで再三求めてきた真摯な対話に応じることなく、一方的な文書の送付が重ねられるばかりで、知事の権限を奪う代執行に至り、さらに本日、工事の着手が強行されたことは、「丁寧な説明」とは到底真逆の、極めて乱暴で粗雑な対応がなされたものと、申し上げざるを得ません。
 沖縄県は、昨年12月20日の高裁判決に不服があるとして、同月27日に上告受理申立てを行ったところであり、今後、最高裁判所において高裁判決の問題点を明らかにし、多くの県民の願いをしっかりと訴えてまいります。
 政府においては、必要性・合理性のない埋立工事の強行がもたらしている甚大な問題を直視した上で、沖縄の苦難の歴史に一層の苦難を加える辺野古新基地建設を直ちに中止し、問題解決に向け、沖縄県との真摯な対話に応じていただくよう求めます。

令和6年1月10日

        沖縄県知事 玉城デニー


イスラエルは虐殺をやめろ!

        パレスチナ・ガザに自由を!


拡大するイスラエルの虐殺

 イスラエル・ネタニヤフ政権によるパレスチナ・ガザへのジェノサイド攻撃が続いている。ハマスなどパレスチナ抵抗勢力の反撃は続き、イスラエル軍兵士の死傷者も増えている。イスラエルの攻撃はガザ地区だけでなく、ウエスト・バンク、さらにレバノン国境地帯にまで拡大している。イスラエルの虐殺に対して、レバンノン南部に拠点を置くヒズボラやイエメンに勢力を置くフーシ派、そしてイランなどが強く反発して戦火の拡大は避けられない。
 イスラエルの建国から75年になるが、今回の事態は、イスラエルによる一貫したパレスチナへの差別と植民地主義のなかでも突出した大規模な虐殺となっている。
 1月6日、イスラエル軍の報道官が「2024年も戦闘は続く。中心部と南部でハマスを解体し、人質を取り戻すためにあらゆる作戦を継続する」と述べている。だが人質解放を名目に行われている砲撃、空爆、市街戦でのイスラエル人質の救出はできていない。攻撃がパレスチナ人の絶滅を狙うジェノサイドそのものと言われるは当然だ。イスラエルでも人質家族たちを始め「いますぐに解放を」求める集会が開かれている。ネタニヤフ政権の支持率も急落している。だが、ネタニヤフは「米国が第2次世界大戦の真珠湾攻撃の後で停戦に応じなかったのと同様に、ハマスの奇襲攻撃を受けたイスラエルが戦闘停止に応じることはない」「ハマスに乗っ取られたパレスチナのより良い生活を望むなら、ハマスを破壊せよ。第2次世界大戦中の日本やドイツのように、有害な政権を排除しなければならない」と強弁し、停戦には応じない構えである。
 非人道的な暴挙をつづけるイスラエルを支え続けているのはアメリカ政府である。今回も民間人の犠牲を少なくしろと言う裏で、これまでにもまして軍事援助を強化している。バイデン政権は、昨年12月9日、イスラエルに対し、戦車の砲弾などおよそ1億650万ドル(日本円にして154億円)あまりに相当する武器の売却を承認した。すでに、東地中海と紅海には米軍艦船が派遣され、イスラエル軍の攻撃をサポートとしている。
 日本は、上川陽子外相が昨年11月にイスラエルを訪問したさいに、コーヘン・イスラエル外務大臣に、「今般のハマス等による残虐な殺りく、誘拐等を含むテロ攻撃を断固として非難する旨を改めて述べた上で、イスラエル国民との連帯の意を表明するとともに、今般のテロ攻撃の犠牲者の御遺族に対して哀悼の意を表し、負傷者の方々に心からお見舞い申し上げると述べました。そして、誘拐された方々を案じており、人質は即時解放されるべきである」と述べている。上川も「日本としてガザ地区の人道状況を憂慮しており、人道的休止が必要であること、全ての行動は国際人道法を含む国際法に従って行われるべきことを提起」したが、コーエンは、このことにはふれずにただ、「日本のイスラエルとの連帯に対して謝意が示されたほか、邦人の安全確保のためにしっかり協力していきたい」と述べただけである。
 日本政府も米国政府と同様に、イスラエル支援がメインで、ガザ虐殺にふれたところは単なるリップサービスにすぎない。本気で「ガザ地区の人道状況を憂慮」するならば、イスラエルに虐殺をやめさせる具体的なアクションを起こすべきだ。だが、それらはなんらなされていない。

高まる虐殺反対・停戦の声

 一方で、世界の世論では、虐殺反対、即時停戦、イスラエルに対する抗議・糾弾の声が急速に高まっている。世界各地でイスラエル抗議・パレスチナ支援のデモが継続的に起きている。
 こうした動きをうけての国連緊急特別総会(昨年10月27日)で「敵対行為の停止につながる人道的休戦」決議(民間人の保護と法的・人道的義務の遵守)が、圧倒的多数で可決された。
 これまでイスラエル支持が主流だった米国でも大きな変化が生まれている。とりわけ民主党支持層のなかでのパレスチナ支持への流動化は著しい。その核となっているのがいわゆるZ世代を中心とする若者らだ。Z世代とは、生まれたときからインターネットが普及しているデジタルネイティブ世代のことだということだが、かれらはSんSを駆使して一般市民の被害が増えるパレスチナ側への同情論を拡散させており、大規模な反戦デモなど大きなうねりを生み始めた。若年層の「離反」は11月の大統領選挙で再選をめざすバイデン政権の前途にも影を投げかける。日本においても、ガザ虐殺抗議のデモ、イスラエル大使館抗議・座り込み行動、米国大使館・領事館への抗議などが展開されてきたが、この運動でのZ世代の動きはあきらかだ。
 また、12月20日に東京都議会で、@人道目的の停戦及び人質の即時・無条件の解放、A国際人道法を含む国際法の遵守、B民間人の被害の最小化、人道支援物資の供給を通じた人道危機の改善を求める「ガザ地区で人道目的の停戦などの実現を求める決議」(全会派の共同提出)を全会一致で可決するなど、「ガザでの即時停戦」を求める決議や意見書を採択した自治体は12月24日までに176に上っている。
 来る3月30日は、「レスチナ3・30「土地の日」だ。パレスチナ連帯の輪をいいそう広げていこう。

日本外務省への抗議行動

 昨年末、12月22日に、総がかり行動、市民アクションなどによる「パレスチナに平和を!緊急行動」のよびかけで、外務省正門前での抗議行動に500名の参加した。集会では、ジェノサイドの即時中止を求める発言が続き、また外相への要請文(別掲)を読み上げた。

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2023年12月22日

  外務大臣 上川陽子さま

ガザおよびヨルダン川西岸におけるイスラエルの国際人道法を含む国際法、国連決議などを無視したジェノサイドと蛮行を直ちにやめさせる行動を求めます

 10月7日のハマスのイスラエル奇襲攻撃に対すると称してイスラエル政府と軍がガザで行っている「ハマス殲滅」作戦は、民間の市民に2万人を超える死者、5万人を超える負傷者、8000人もの行方不明者を出し、その中には多くの子どもや女性、高齢者が含まれ、犠牲者は今も増え続けています。その実態は、民間人の保護を命じる国際人道法や、2回の国連総会の決議の精神も踏みにじるもので、世界中で「ジェノサイドだ、即時停戦を」という声が上がり、それが大きな国際世論となっています。

 上川外相が主宰されたG7外相会議の共同声明では、イスラエルの自衛の権利は「国際法に従う」ことが前提とされ、「一般市民の保護、および国際法、特に国際人道法の遵守の重要性を強調」していますが、国連事務総長は、イスラエルのガザ侵攻は国際人道法違反と指摘しています。しかも、国際司法裁判所は2004年、非占領地からの脅威に対して占領国は自衛権を行使できないとの意見を出しています。しかし、あなたは「イスラエルに対して一般市民の保護や国際人道法を含む国際法に従った応答を要請してきた」と言うだけで、国際法に違反するとの認識を示していません。これは事実上、イスラエルの行動を容認するシグナルにほかなりません。また、共同声明では戦闘の「人道的休止」を支持しましたが、それは短期間に終わり、ガザの惨状はさらに深刻化しています。双方とくにイスラエル政府には「即時停戦」こそ求めるべきです。

 また、G7共同声明では、イスラエルとパレスチナの双方の人びとが「安全で、尊厳があり、平和に暮らすための平等な権利を有する」と明言し、「ガザの悪化する人道危機に対処するための緊急行動をとる必要性を強調」し、「食料、水、医療、燃料及びシェルターを含む一般市民のための妨害されない人道支援並びに人道支援従事者のアクセスを可能としなければならない」と指摘しています。しかし、ネタニヤフ政権は、これらすべてを無視して、住宅をはじめ病院や学校、教会、難民キャンプを含むガザ全域への空爆や砲撃、市民の射殺を続けています。その実情は、ガザ市民からの直接の報告だけでなく、国連の関係諸機関や国際人道支援団体、世界中のジャーナリストからも日々具体的に伝えられています。日本政府として、明確にイスラエル政府に対し、このような非人道的作戦を直ちにやめるよう要求し、ガザの市民と国際支援機関・団体への資金・物資の提供や専門の支援要員の派遣を緊急に行うべきです。

 さらに、イスラエルはヨルダン川西岸地域でも、パレスチナ人を襲う入植者を武装化し、抗議するパレスチナ人への武器使用や大量逮捕を行っています。占領地への入植や領土併合は明らかな国際法違反です。これらに対しても日本政府として明確に批判し、パレスチナ住民への暴力を直ちにやめさせ、入植と併合を撤回させるため、具体的な外交的・経済的な制裁措置を含む行動をとるべきです。

 私たちは日本政府がイスラエルともパレスチナとも外交関係を有していると承知しています。またご案内の通り「全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有すると確認する」との憲法前文および平和主義の第9条を持つ国として、米国の顔色をうかがうのではなく、「即時停戦」に積極的イニシアティブを発揮し、以下のような実効的な措置をとることを求めます。人びとの生命と尊厳、中東の公正で永続的な平和の実現のために。

 ・国連安全保障理事会での停戦決議の採択に向けて、拒否権を行使しないよう米国を説得すること。
 ・国際刑事裁判所(ICC)があらゆる当事者の戦争犯罪等を調査し、容疑者を起訴するために必要な支援を行うこと。
 ・「日・イスラエル投資協定」を破棄し、「日・イスラエル経済連携協定に関する共同研究」を停止すること。
 ・「日本国防衛省とイスラエル国防省との間の防衛交流に関する覚書」を破棄すること。

         「パレスチナに平和を!緊急行動」参加者一同


パレスチナに平和を!軍拡増税反対!改憲発議反対!などを掲げて

       
 12月19日   97回目の「19日行動」

 12月19日、国会議員開会前を中心にして、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会と9条改憲の!全国市民アクションの共催による「パレスチナに平和を! 自民党の裏ガネ疑惑続出糾弾! 軍拡増税反対! 辺野古新基地建設反対! 改憲発議反対! 12・19国会議員会館前行動」が行われ1000人が参加した。97回目の「19日行動」だ。
 主催者を代表して総がかり行動実行委員会共同代表の高田健さんがあいさつした。政治資金規正法違反の政治資金パーティー券裏金問題で自民党のカネまみれの体質が明らかになったが、これは自民党全体の問題だ。その自民党の岸田内閣は大軍拡と大増税に押し進めている。一方で物価高で多くの人が苦しんでいる。一刻も早い政権を交代が必要だ。
 国会からは、社民党の福島みずほ参議院議員、日本共産党の井上哲士参議院議員、立憲民主党の水岡俊一参議院議員があいさつ。沖縄の風と韓国19日行動からのメッセージが紹介された。
 ガザ出身のアシュラフ・アイーダさん、改憲問題対策法律家6団体連絡会の大江京子弁護士、オール板橋事務局長の和田悠立教大学教授、宗教者ネットの武田隆雄上人が発言した。
 岸田政権を終わらせよう。


軍事侵攻から2カ年! ロシアのウクライナからの即時停戦、完全撤退をもとめよう! (上)

 2月24日でロシア軍の軍事侵攻から2年を迎える。ウクライナの民間人死者数は10、000人、難民は634万人を超えた。ここ最近のロシア軍のウクライナ全土への攻撃は苛烈を極め民間人の犠牲が増えている。ウクライナの反転攻勢の頓挫、欧米の支援疲れ、3月ロシア大統領選再選をめざすプーチン政権によるウクライナへの攻撃は激化するだろう。ガザ・パレスチナの人びとと共に侵略に晒され、人道的危機に瀕しているウクライナ市民との連帯を国際社会のみなならず市民社会が示していこう。

あらためて憲法9条の意義を考える

 日本国憲法は、日本では310万以上、アジア諸国では2000万人以上の人々が犠牲となったアジア・太平洋戦争の深い反省の上に立って生まれた。憲法は、前文で「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しよう決意した。」「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と記し、第九条で「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する。A前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権はこれを認めない。」と記した。 この非戦・非武装の憲法を基軸に平和構築の法制が整えられてきた。しかし、2014年旧安倍政権が集団的自衛権行使の憲法解釈を変更して以降、日本は急速に「戦争を準備する国」へと変質を遂げつつある。 昨年末、岸田政権は、殺傷兵器の輸出解禁を閣議決定し日本の平和主義の放棄を内外に刻印した。歴代自民党政権は、憲法と現実の矛盾を繕うために自衛隊は軍隊でなく、最小限の実力組織であり、日本は「専守防衛」に徹するという立場をとってきた。しかし、その矛盾は、修復できないほどに拡大し明文改憲にのりだろうとしている。日本は、あくまで「専守防衛」に徹するべきであるという考えに立つ人びととも協力して9条明文改憲を阻止しなければならない。
 憲法九条の価値は、このウクライナ戦争でも示されている。戦争はいったん始まれば終わりを見つけることが難しく、絶対に戦争は起こしてはならいということ。また、ロシアがいうようは集団的自衛権がいかに危険かが明らかになったということ。そして、核兵器含めた軍事力と軍事同盟強化では平和を構築する事できない、ということ、いずれも重要な教訓である。

国連憲章とウクライナ侵略

 憲法公布の1年前に国連憲章(条約)が生まれた。第二次世界大戦で8500万人を超える犠牲者をだし、その反省の上に立ち世界平和をめざし人類が到達したのが国連憲章である。国連憲章は、国際法的な意味での「戦争」はもちろん、あらゆる武力の行使が原則として禁止された。国連の侵略への対抗措置は「集団安全保障」であるが、それまでの間、各国は個別的自衛権と集団的自衛権自衛権の行使が認められている(国連憲章51条)。ただ、集団的自衛権についてはそもそも定義が議論されず、東西対立を見据えた米英ソの大国の覇権的な支配のための産物であり問題点がある。
 今回の軍事侵攻についてロシアは、@東部ドネツク州・ルハンスク州が独立したと決定した、Aウクライナがジェノサイドをしている、B「共和国」がウクライナから攻撃をうけており、その防衛のために集団的自衛権を行使した、と主張している。国連総会では、@両国の独立は否定された、Aジェノサイドについては国際司法裁判所は認定しなかった、B集団的自衛権行使については、2州が独立しておらず集団的自衛権は成立しない、かりに承認されたとしたとして両国はウクライナから攻撃されておらず集団的自衛権行使は成立しない、
 以上が確認され総会ではロシアの無条件即時撤退が採択された。
 プーチン大統領は、論文「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」(2021年7月12日)を発行し、その中でロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人は、歴史的に「三位一体」のロシア民族だと強調している。戦争の目的は、プーチン論文に示されたようにウクライナを完全にロシアの支配下に置くことであってロシア帝国の思想そのものである。戦争の性格は、まぎれもなく帝国主義的な侵略戦争である。この点をはっきりさせておかねばならない。ウクライナ側は、国連憲章にある個別的自衛権を行使しているのであってウクライナの自衛的抵抗権の行使は当然擁護されるべきである。
 憲法九条は、世界に広げていく普遍的な価値を持っている。しかし、それは他国に対して非戦・非軍事を押し付けるものでない。大事な点は、正義と秩序を基調とする世界の構築と不可分であるということである。前に引用した憲法前文と憲法九条をもう一度引用する。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しよう決意した。」「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」とある。ロシアに対して国連憲章を守れという立場は、まさに憲法前文と九条の立場に他ならない。

ロシアは即時停戦、完全撤退を!

 毎日新聞に載ったインタビュー記事を紹介する。
・・左派系の識者らがロシアとウクライナ双方に「即時停戦」を求める運動を始め、朴さんの知る人も参加した。「ならば、日中戦争でも中国は停戦すべきだったと?筋が通らない・・・」
彼らの主張は、日本の植民地支配や侵略の加害の責任を追及してきた、これまでの姿勢と矛盾していないか。また、朴さんは、「私も、以前は戦争全般と侵略戦争をちゃんと区別できていなかった」と反省する・・・(2023年8月10日/特集ワイド朴・沙羅さん・ヘルシンキ大学講師)
 ウクライナへの軍事侵攻は2年を迎えようとしている。ガザへのイスラエルの大規模攻撃が続く中、米・露大国のダブルスタンダードも顕著となり状況が複雑になってきている。
 我々は、憲法と国連憲章を基軸にぶれることなく、反戦・平和の運動を構築せねばならない。 (矢吹 徹)


2024年度政府予算案の内実は財政ファイナンスだ! 

@防衛費の膨張が異常な24年度政府歳出案

 昨年末、岸田政権は過去2番目の規模・6年連続で100兆円の超え2024年度予算案を閣議決定した。一般会計の歳出総額は112兆717億円とし前年比では2・3兆円あまり減額したが、5年で43兆円に上る防衛費の一部に予備費から回した批判をかわすため予備費を4兆円減の1・5兆円にした為であり小手先の対策に過ぎない。現に防衛費は1兆1277億円増え7兆9796億円とは前年比16・5%増加し12年連続で過去最大を更新した。24年度は「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の早期整備やミサイル防衛網の調達など「スタンドオフ防衛能力」の強化に7340億円を計上し、そのうち射程を約1000キロに延伸した地上発射型ミサイル「12式地対鑑誘導弾能力向上型」に961億円をあてるほかミサイルの迎撃態勢を強化する「統合防空ミサイル防衛能力」には1兆2477億円を投入するとしている。23年末に政府が国会に諮ることもなく閣議決定した「防衛力整備計画」の2年目の24年度では、防衛費は累計で14兆8015億円となり43兆円の34・4%に達することになり「自衛の範囲」はるかに超える規模に膨張している。
 その一方、社会保障費は37・7兆円の2・3%の増加に過ぎない。また岸田政権の人気浮揚策である「次元の異なる少子化対策」のばらまき的「こども未來戦略」には3年で3・6兆円をあてるとするがその財源の1兆円程度は「支援金制度」(健康保険料の上乗せ)で一人当たり500円の負担増を求めるとしている。またインボイス制度による消費税の増収分を回すとしているが残りの財源はつなぎ国債(いずれ増税するが一時的に国債を発行すること)を想定しているが国民負担の増加が不可避の「ごまかし」に過ぎない。
  
A赤字国債(借金)に過度に依存するしかない政府予算案

 防衛費の異常な増加や継続するガソリン代補助を賄う歳入の内訳は税収69・6兆円(うち消費税が物価高により過去最大の3.6%増の23・8兆円を見込む)だが新規(赤字)国債発行額は34・9兆円にのぼり歳入に占める国債の割合は31・1%となり借金に依存するしかない財政の問題が露わになっている。一方では借金の返済と利払いに充てる国債費が1・7兆円・7%増の27兆円と過去最大を更新し歳出の四分の一に迫る規模になる。これは財務省が想定金利を前年度の1・1%から1・9%に引き上げたためだが、昨年の物価上昇率が政府・日銀が目標する2%どころか、41年ぶりに3・0%上昇したことからみてもその想定は極めて甘すぎるものだ。現在、国債の市中発行の必要額は新規と借換えも合わせて約170兆円にのぼる。何千億円分かの新規発行を減らしたところで焼け石に水だ。世界経済がコロナ危機後の高インフレ・高金利局面に入った現在各国は発行する国債に付すクーポン(表面利率)を大幅に引き上げざるを得ず、米国は連邦政府の利払い費がコロナ危機前の1・7倍にまで急膨張しており、その利払費調達のためにさらに財務省証券(米国債)の増発を余儀なくされている状態にある。いわば借金を返済するために新たな借金=国債を発行しているのである。日本の場合は、毎年度の国債発行額の名目GDP比でみた規模が米国よりはるかに大きく、今後日銀が利上げ局面入りを余儀なくされる局面では利払い費の急増に見舞われることは明らかだ。

B財政ファイナンスの泥沼にはまる政府財政

 財政ファイナンスとは「政府が発行する国債を日銀が直接引き受け通貨を発行すること」である。第2次大戦時のドイツや日本が侵略戦争のために国債の乱発を行い中央銀行に直接買い取らせ通貨を増発し戦費を捻出したが敗戦後通貨の価値がなくなるほどのハイパーインフレを引き起こした歴史的な経緯があり財政法5条は日銀による国債引き受けを禁じている。しかしアベノミクスはこれを完全に無視する国債発行を続け「みせかけの景気回復」を目指した。実際安倍元首相は「輪転機をぐるぐる回し、日銀に無制限にお札を刷ってもらう」「「みなさん、どうやって日銀は政府が出す巨大な国債を買うと思います? どこかのお金を借りてくると思ってますか。それは違います。紙とインクでお札を刷るんです。20円で1万円札が出来るんです」と公言していた。その結果、国債の発行残高は雪だるま式に増加しており24年度は1302兆円(対GDP比約260%)となる見通しだ。日銀保有国債は国債発行残高のうち5割近くの約600兆円にのぼるが平均金利は0・3%に満たない。金利が1%上昇すると含み損は28・6兆円、2%で52.7兆円、米国並みの5%で108・1兆円となり24年度政府予算に匹敵する金額となる。もちろん満期まで売却しなければ損失は発生しないが金利が上昇すれば政府・日銀の信用は地に落ち、猛烈な円売り=極端な円安が発生することは避けられない。1ドルが200〜500円になる事態も絵空事ではない。

Cこのままでは「戦わずして負ける」


 昨年6月に防衛財源確保法が参議院で可決成立した。その主な内容は、防衛力強化のための財源確保の一環として税外収入をプールする「防衛力強化資金」を設置するとしているが財源としての増税策は一切盛り込まれていない。中でも安倍派は全額国債発行を強硬に主張していた。一部増税を主張する自民党内財務省派寄り勢力との対立から岸田政権は財源の結論を来年度以降に先送りしている。今回の「裏金問題」が主に安倍派を直撃しているが、今後岸田政権はより増税・負担増にシフトする可能性が高い。そうだとしても財政ファイナンスは止めらるものではない。武器や兵器を借金に借金を重ねてそろえても防衛力強化と言えるのか?昨年5月の政府の財政制度等審議会の建議には次の一節が記されている。「仮に防衛力を抜本的に強化したとしても、それを支える経済・金融・財政の強いマクロ構造がなければ、防衛力を継続的かつ十分に発揮することはできず、結果的に『戦わずして負ける』ことにもなりかねない」   (関 孝一) 


せんりゅう

     再考!階級とは?富とは

           格差のさきのその先で戦争

     トー横の正月寒いさむい国

           最先端国家をこえて詐欺経済 

     真心 年頭に深甚揮毫

           真心あり戦意おこることなし

     われら闘う人民の期待背負ふて
  
                   ゝ  史
  2024年1月


複眼単眼

        
改憲原案作りの「作業部会」の設置は止めよ

 岸田文雄首相は、1月4日、記者会見で要旨次のように改憲問題に言及した。
「憲法改正の実現に向けた最大限の取組も必要だ。自民党総裁として言えば、自分の総裁任期中に改正を実現したいとの思いに変わりはなく、議論を前進させるべく最大限努力をしたいと考えている。今年は条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速していく」と。
 「自民党総裁として」などと「首相」の肩書と使い分けて発言したつもりだろうが、憲法で「憲法尊重擁護義務」を負う首相の記者会見で、改憲問題について「条文案の具体化」とまで踏み込んで発言したのは昨年の臨時国会での所信表明演説をさらにすすめたものだ。
 自民党の最大派閥の安倍派(清話会)をはじめ、閣僚や党役員を先頭に多くの国会議員が違法な政治資金を使って当選したことが疑われている大スキャンダルの最中だ。そして多数の犠牲者が出ている能登半島大震災がつづいている最中に、国の最高法規である憲法の改正に関する発言をもてあそぶことは、立憲主義の立場から見て許されることではない。
 憲法調査会以来、憲法の議論は「政局から離れて静かに議論をする条件・環境をつくって議論する憲法調査会以来のよき伝統」(自民党憲法改正推進本部の会合での保岡興治本部長発言・2016年10月18日)のもとで行うべきものと繰り返し確認してきている。
 12月7日の衆院憲法審査会で中谷元・与党筆頭幹事(自民党)は、@「緊急事態条項、特に議員任期延長を始めとする緊急事態における国会機能維持」については自民、公明、維新、国民、有志の会で認識が一致しており、立憲民主が合意形成に向けて建設的な議論をする必要があること、およびA自衛隊明記について、は記述の仕方というテクニカルな問題を除けば「ほぼ合意が形成されている」として、「具体的な条文作成のための機関を設け、条文作成のステージに入る」ことを提案した。
 この中谷発言は事実とは大きく異なる。衆参両院の憲法審査会の議論では「改憲すべき条文」などについて、意見の違いは小さいものではなく、全体の「合意」はない。
 7日の会議で中川正春・野党筆頭幹事(立憲民主党)は「緊急事態については、現時点で私たちは憲法に明記する必要はないと考えている」と言明した。またこの会議で国民民主党の玉木雄一郎委員は「(中谷委員は自衛隊明記についてほぼ合意ができていると言ったが)私は、単なる明記案は中途半端で反対」と自民党案のより右にシフトする立場で発言した。
 また昨年10月27日の衆院憲法審では公明党の北側一雄副代表は自衛隊を9条ではなく、憲法の統治機構条項部分に挿入する変化球的改憲案を提起している。
にもかかわらず「ほぼ合意」があるごとく述べて「条文案の具体化」を語るのは、まず「改憲ありき」の姿勢であり、自らが繰り返し公約してきた「自分の総裁任期中の(憲法)改正」の実現をめざして、強引に採決をしてでも「条文案」をつくるという、改憲推進問答無用の宣言に通じるものだ。  (T)

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