人民新報
 ・ 第1430統合523(2024年2月15日)

                  目次

● 自民党とカネ、統一教会との癒着徹底究明

        岸田・自民党政治を終わらせよう

● 24春闘をめぐる状況と労働者の闘い

● 悪名高い技能実習生制度から「育成就労制度」へ  
外国人労働者問題の解決とは

● 裁判所は公平・公正・まともな判決を出せ

        関西生コン弾圧を許さない  昨年末からの闘いの報告

● 軍事侵攻から2カ年!ロシアのウクライナからの即時停戦、完全撤退をもとめよう! (中)

● 追 悼  /  中北龍太郎さん 中岡哲郎さん

● 「デジタル小作人」化が進行する日

● せんりゅう

● 複眼単眼  /  腹が立つ能登半島大震災への政府対応





自民党とカネ、統一教会との癒着徹底究明

        岸田・自民党政治を終わらせよう


 1月26日、第213回通常国会(会期は6月23日までの150日間)が開会した。
 1月29日に衆・参の予算委員会で「自民党とカネ」問題の集中審議、30日に岸田首相の施政方針演説、外務大臣の外交演説、財務大臣の財政演説、経済財政政策担当大臣の経済演説など政府4演説が行われた。 首相の施政方針演説の前に政府・自民党を直撃している裏金・キックバック・企業団体献金問題の集中審議を行わざるを得ないという変則的な国会スタートとなったことに岸田政権の危機的な状況が見て取れる。
 読売新聞社が1月19〜21日におこなった全国世論調査でも内閣支持率24%、不支持率は61%となって、支持率の低迷が続いている。
 この通常国会を契機に、岸田はなんとかこの窮地から脱出しようと、さまざまなことを行おうとしている。だが、それらはことごとく裏目にでている。
 国会開会直前の自民党両院議員総会で岸田発言を自民党のホームページは次のように報じている。―政治資金を巡る問題で国民はわが党に厳しい目線を注いでいるとし、「政治は国民のもの」という立党の原点に立ち戻るべく、党政治刷新本部で熱心な議論の上、決定した中間とりまとめを実行しなければならない」と強調。さらに「能登半島地震からの復興、30年ぶりのデフレからの完全脱却、急速に悪化する国際情勢の中でいかに日本のかじ取りをしていくか。重要政策、重要課題にしっかりと立ち向かっていかなければならない」と語りました―。自民党は能登半島地震、デフレ、外交問題を重点として取り上げた。 
 施政方針演説でも、「国民の信頼なくして政治の安定はありません。いま、その信頼が揺らいでいる。自民党の政策集団の政治資金の問題で、国民から疑念の目が注がれる事態を招いたことは、自民党総裁として極めて遺憾であり、心からお詫び申し上げます。『政治は国民のもの』との立党の原点に立ち返って自民党は変わらなければならない」と弁明せざるを得ない始末だ。自民党のお手盛りの「政治刷新本部」が納得のいく方針を出すわけでもないし、当該の議員が開き直るのは当然に予想されることだ。いま、なにより企業・団体献金の禁止が厳格になされなければならない。それが大前提だ。能登半島地震への対応もまったくできていない。十分な支援・復興がなされなければならない。そして志賀原発は直ちに廃炉にしなければならないのは言うまでも無い。
 経済対策も、中小企業、非正規労働者など最も厳しい状況に追い込まれている層を重点的に対策を強化しなければならない。
 岸田演説に右派マスコミでさえ不満だ。読売新聞の社説「施政方針演説 新機軸の乏しさが気がかりだ」(1・31)は、「岸田首相が取り上げたテーマはどれも重要である。日本がいかに困難な課題に直面しているか、改めて気づかされる。しかし、それらの対策が新機軸に乏しいのは残念だ」としているくらいだ。
 一方で岸田は右傾化・軍事化には力を入れている。施政方針演説の「防衛力の抜本的強化」では「我が国が戦後最も厳しい安全保障環境のただ中にあることを踏まえ、防衛力の抜本的強化を着実に具体化し、自衛隊員の生活・勤務環境、処遇の向上にも取り組みます。また、日米安全保障体制を基軸とする日米同盟は、グローバルな安定と繁栄の『公共財』として機能しており、同盟の抑止力・対処力を一層強化します」としている。
 いま大事なことは、大軍拡をやめ、辺野古新基地建設など戦争体制作りを中止して、平和外交を推進することでなければならない。
 また「憲法改正」については、「衆・参両院の憲法審査会において、活発な議論をいただいたことを歓迎します。国民の皆様に御判断をいただくためにも、国会の発議に向け、これまで以上に積極的な議論が行われることを期待します。また、あえて自民党総裁として申し上げれば、自分の総裁任期中に改正を実現したいとの思いに変わりはなく、議論を前進させるべく、最大限努力したいと考えています。今年は、条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速してまいります」とするなど、安倍政治路線を加速させた「戦争する国づくり」の危険な政策を推進するとしている。
 だが、「憲法改正・皇位継承」については、「その他の先送りできない課題」として扱われており、産経新聞「主張」の「施政方針演説 安全保障をもっと訴えよ」(1・31)は「『その他』扱いには違和感を覚える」と不満だ。
 日本が直面する焦眉の諸課題を解決することが、政府の本来果たすべきだが、それらにまったく逆行しているのが岸田だ。
 岸田政権をいっそう追い詰めよう。
 市民と野党の共闘、総がかり行動の前進で、岸田政権・自民党政治をおわらせるために闘っていこう。


24春闘をめぐる状況と労働者の闘い

 第213回通常国会が1月26日に開会した。岸田首相の衆参両院での施政方針演説は4日後の30日に行われた。
 今国会の焦点は言うまでもなく、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件に端を発した「政治とカネ」、否、「自民党とカネ」の問題であるにも関わらず、施政方針演説でその部分に触れたのは全体を通して約5%だけであり、1/4超を経済政策に充て、「賃上げ」との文言を18回も用いて、「物価高に負けない賃上げ」を強調した。
 政府はデフレを脱却し、経済の再生のためには賃上げが喫緊の課題とし、「賃金が上がることが当たり前だ」という社会意識の定着、「持続的な賃上げ」を目標に掲げている。岸田首相の施政方針演説はその「決意」を示したものではあるが、本当の狙いは「自民党とカネ」の問題から目を逸らさせ、自身の低迷する支持率を少しでも向上させ、9月の自民党総裁選再選のための延命策に過ぎない。

 24春闘にあたって経団連は1月16日、経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)を発表した。報告は政府の方針とも連動し、賃金と物価の好循環によるデフレ脱却に向けて、大企業で4%以上の賃上げをめざす考えを表明した。また、連合の掲げる「5%以上」の目標を前向きに評価し、中小企業の賃上げも支えるよう大企業に求める異例の指針となっている。
 十倉雅和経団連会長は、今春闘の賃上げに「日本経済の未来がかかっている」とし、「昨年以上の賃上げを取り組みたい」と労使フォーラムで表明している。

 政府、経団連とも「経済の再生」のための賃上げを強調しているが、これまでの賃金抑制の主な要因の一つである大企業の内部留保(利益剰余金等)の問題には全く触れていない。大企業の内部留保は増え続け、2023年度では前年比7・4%増の「554・8兆円」と11年連続で増加している。内部留保増加の要因は第一に賃金抑制と安価な労働力としての非正規雇用の増加、第二に法人税の引き下げと大企業優遇税制(法人税率は最高43・3%から現在は23・2%に低下している)、第三に社会保険における会社負担の低さと下請け企業への単価の切り下げなどである。これまで大企業が貯めこんだ内部留保を数パーセントでも取り崩せば大幅な賃上げは可能となる。これは大企業の社会的責任であり、中小企業や非正規労働者の賃金底上げにもつながっていくものでもある。

 1月22日、政府、経団連、連合三者による政労使会議が首相官邸で開かれた。24春闘のスタートとも言うべき「労使フォーラム」が24日に行われ、2月1日には経団連・連合による労使トップ会談が開かれた。2025年度から始まっている都道府県ごとの「地方版政労使会議」も各地で開かれ、今年度は初めて「賃上げ」が議題に設定されている。

 連合は「30年ぶりの賃上げ率」となった23春闘を高く評価し、春闘の基本構想として@年齢や勤続年数に応じた定期昇給分2%確保を前提に、A賃金体系そのものを引き上げるベースアップ(ベア)目標を3%以上とし、「5%以上」の賃上げを求める方針を決定した。
 芳野友子連合会長は新聞のインタビューで春闘について「賃金も物価も安定的に上昇する経済社会へとステージ転換を図る正念場。持続的な賃上げが最大のカギになる。プレッシャーと同時に、若干わくわくしている。今年は賃上げ率5%以上を最低ラインと位置付けた」と述べ、経団連の春闘方針の評価を聞かれて、「基本的な考え方や方向性、課題意識は多くの点で一致している」と回答している。
 岸田政権、経団連、そして連合は24春闘に関する問題意識にそれほど大きな相違がないことが今春闘の最大の特徴である。春闘における本格賃金交渉の外で大企業が7%程度の賃上げを相次いで表明していることも例年にはないことである。
 さながら24春闘は「労使一体の官製春闘」の様相を呈している。
 
 23春闘で「30年ぶりの賃上げ率」があったとしても労働者の生活は一向に改善されていない。
 昨年12月の実質賃金は前年同月比1・9%減、21カ月連続でマイナスとなり、また2023年の実質賃金は前年比2・5%減となり、2年連続マイナスとなった。物価上昇に賃金の伸びが追いつかない状況が続いている。物価高騰が労働者の生活を直撃している。日本の労働者の約7割は中小で働いており、春闘の課題はその中小零細企業の賃上げにかかっている。23春闘では中小企業の賃上げは前年比で1・33%増、3・35%となったが大企業を下回った。ある信用金庫のアンケートでは中小零細の3割超が「(春闘での)賃上げの予定なし」と回答している。中小企業の賃上げが難しい背景には原材料や資源の高騰を大企業への価格転嫁、とりわけ労務費(賃金)の上昇分を価格に転嫁できないことにある。大企業は取引先の中小企業の値上げ要請に対し十分に応じず、その結果として大企業の賃上げの原資が生まれ、大幅な賃上げを可能にしている面もある。中小企業の「犠牲」のもとに、大企業の賃上げが「実現」している。コスト全体の転嫁率は2023年3月が47・6%だったのが、同9月には45・7%と減っており、大企業は価格転嫁を進めるどころか、後退させている。労務費の価格転嫁が進まないと中小企業は賃上げの原資を十分に確保することはできない。中小企業の価格転嫁に経団連が口先だけではなく、どう対応していくのかその「本気度」が問われている。

 全労連は1月24・25日に第65回評議員会を開催し、24春闘方針を決定した。
 方針は、非正規労働者を含むすべての労働者の賃金について、ベースアップ相当分と定期昇給分とを合わせて10%以上、月額にして3万円以上の賃上げを求めるものである。また、労使が協定を結ぶ企業内最低賃金は時給1500円以上とし、物価が高騰し、実質賃金が低下する中でこれまでで最も高い水準で大幅賃上げを求めている。23春闘で400回を超えるストライキを行い、24春闘においても全職場でのスト権の確立とスト決行を方針として打ち出しているのが特徴だ。
 その背景には昨年8月の地域・利用者の共感を呼んだ「そごう・西武」のストライキと正規だけではなく非正規労働者の大幅な賃上げを勝ちとった全米自動車労働組合(UAW)のストライキが大きく影響している。全労協も「ストライキで大幅賃上げを勝ちとろう」と強くアピールしている。

 「労使一体の官製春闘」に抗し、労働組合の闘う力によって中小の労働者と非正規労働者の賃金の底上げと物価高騰を上回る大幅賃上げを勝ちとる24春闘を作り出していこう。


悪名高い技能実習生制度から「育成就労制度」へ

        
外国人労働者問題の解決とは

 日本政府は、技能実習制度を廃止して、新たに「育成就労制度」を設けるとした方針を決定し、今国会に関連する法案を提出するとしている。

 人口減少社会の日本は、外国人労働者への依存を拡大してきた。厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)」によると、「外国人労働者数は2、048、675人で前年比225、950人増加し、届出が義務化された平成19年以降、過去最高を更新し、対前年増加率は12・4%と前年の5・5%から6・9ポイント上昇。外国人を雇用する事業所数は318、775所で前年比19、985所増加、届出義務化以降、過去最高を更新し、対前年増加率は6・7%と前年の4・8%から1・9ポイント上昇。国籍別では、ベトナムが最も多く518、364人(外国人労働者数全体の25・3%)、次いで中国397、918人(同19・4%)、フィリピン226、846人(同11・1%)の順。在留資格別では、「専門的・技術的分野の在留資格」が対前年増加率として最も大きく595、904人、前年比115、955人(24・2%)増加、次いで「技能実習」が412、501人、前年比69、247人(20・2%)増加、「資格外活動」が 352、581人、前年比21、671人(6、5%)増加、「身分に基づく在留資格」が615、934人、前年比20、727人(3・5%)増加。一方、「特定活動」は71、676人、前年比1、687人(2・3%)減少」としている。外国人労働者数は初の200万人超えた。 だが、日本の政府・企業の外国人労働者への扱いはひどいもので、国連の人権理事会作業部会が発表した勧告でも、技能実習生を含む外国人労働者や移住労働者の労働条件を改善し、彼らに対する人権侵害を防止するよう日本に求めている。

 昨年11月30日に技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議の最終報告書がだされた。そこでは、「国際的にも理解が得られ、我が国が外国人材に選ばれる国になるよう」に見直しを行うとして三つの視点(ビジョン)で、外国人の人権保護、外国人のキャリアアップ、安全安心・共生社会をあげ、また見直しの四つの方向性として、@技能実習制度を人材確保と人材育成を目的とする新たな制度とするなど、実態に即した見直しとすること、A外国人材に我が国が選ばれるよう、技能・知識を段階的に向上させその結果を客観的に確認できる仕組みを設けることでキャリアパスを明確化し、新たな制度から特定技能制度への円滑な移行を図ること、B人権保護の観点から、一定要件の下で本人意向の転籍を認めるとともに、監理団体等の要件厳格化や関係機関の役割の明確化等の措置を講じること、C日本語能力を段階的に向上させる仕組みの構築や受入れ環境整備の取組により、共生社会の実現を目指すこと、としている。

 1月30日、24けんり春闘全国実行委員会主催の「新たな外国人材『受け入れ制度』学習会〜有識者会議最終報告書をどうみるか〜が開かれた。
 けんり春闘共同代表で全国一般全国協委員長の平賀雄次郎さんが代表あいさつ。日本の労働者の分断・格差は著しい。大企業、中小企業、非正規、そして外国人労働者だ。とくに外国人労働者は搾取、人権の収奪を受けている。現実を変える闘いを抜きして日本の労働者の権利・人権はない。
 中村優介弁護士(日本労働弁護団事務局次長、外国人技能実習生権利ネットワーク共同代表)は、「外国人労働者受け入れ制度・現在の議論状況」と題して問題提起。労働組合として取り組むべきことは、同じ働く仲間として、かれらの労働者としての権利は保障されているか、労働組合として組織化、労働条件の改善、賃上げをできているかがとわれなければならない。外国人であっても日本人であっても労働関係諸法令の遵守は変わらない。同じ労働者・生活者として、就労に関する在留資格制度全体の見直し、細分化された在留資格ではなく、移民政策を含めて、就労に関する在留資格を正面から議論する必要がある。
 鈴木江理子国士舘大学教授(NPO移住者と連帯するネットワーク共同代表理事)は「『共生社会実現』から問う外国人労働者の現在(いま)」と題して報告。外国人労働者は労働市場だけでなく経済的、社会的不平等な立場に置かれている。また不安定な雇用で、仕事とともに住居を喪失することもある。経営基盤が脆弱な事業所では雇用日本人と比較して、総じて低い賃金水準であり、権利が侵害されやすく、周辺的で不安定な状況に置かれやすい。労働市場における不平等格差を是正する取り組みがなっていない状況で新たに不自由な外国人労働者が導入されようとしていることは、さらなる不平等を生み出すことになる。
 最後に、鳥井一平さん(NPO移住者と連帯するネットワーク共同代表理事)が、労働組合としての取り組み、1993年からの外国人春闘などについて報告した。


裁判所は公平・公正・まともな判決を出せ

        関西生コン弾圧を許さない  
昨年末からの闘いの報告

 昨年秋に韓国建設労働者訪日団と東京と大阪で交流集会が行われた。
 韓国ではトラック運転手が個人事業者として扱われて、企業の雇用労働条件悪化に拍車をかけてきた。それに対して反撃し組織化し成果を上げてきた。その組合に警察・警察は事件をでっち上げて攻撃を加えてきた。その中で労組役員は抗議の焼身自殺を行う事態となっている。
 韓国でもまさに日本の連帯ユニオン関西生コン支部に対するのと同じ弾圧がかけられているのである。

 2018年から今日までも関西生コン支部への厳しい弾圧が続いている。
 関西生コン支部は、大手セメントとゼネコンの間で買い叩かれてきた中小生コン業者と労働組合が政策的に共闘して、大企業の収奪に対抗し、産業政策を展開し、生コン業界の再建で成果を上げてきていた。
 だが、現場では日々雇用者は正社員化されず、運賃も引き上げられなかった。そこで関西生コン支部は、「約束を守れ!」、運賃を引き上げること、そして大阪広域生コンクリート協同組合の組織運営を民主化することを要求してストライキに入った。
 しかし、私利私欲に走る協組幹部は、ストライキを「威力業務妨害だ」とデマ宣伝し、警察を使って滋賀から次々と事件をでっち上げていった。
 そのうえレイシスト集団を雇い、元暴力団組員も使って、組合事務所への襲撃や連帯労組組合員が多数派となっている企業への攻撃をかけてきた。
 まさに戦後労働運動史における三池や国鉄のような大弾圧が展開されている。
 組合組織破壊の中で、働く者としての当然の日常すら犯罪とされている。
 京都の加茂生コン裁判では、公然化した組合員が子供の保育園に提出する「就労証明書」を会社に要求したのに会社に拒否され、また会社に組合を交え話し合うことまでが刑事事件化された。この事件は、大阪高裁で一部無罪となりながらも、最高裁は差し戻し差し戻し審となっている。

 12月15日には、最高裁判決をどう見るかの集会が100名以上の参加者で開催され、熱気溢れるものとなり、年明け、春闘までには取り組みをすることが確認された。

 今、大きな社会問題となっているのが2025年の大阪・関西万博だ。万博の経費が膨大になり、国民・市民に大きな負担となり、中止の声が上がっている。ことに建設の費用で生コン価格はこの8年間で2倍以上に値上がり、大阪は全国平均と比べて1・3倍もの高値となっている事態についてマスコミも取上げている。
 関西生コン弾圧事件ニュース・ナンバー97は、大椿ゆう子参議院議員(社民党)の12月21日の記者会見での発言を報じている―大阪の生コン需要は年間約740万立方メートルで、そのおよそ3分の1が公共事業で使われていると考えられることから、高値の生コンを使うことで133億円相当の税金の無駄遣いが生じている疑いがあるとの試算がある。大阪の生コン価格が割高となっている原因は、この地域の生コン業者の95%以上を組織する大阪広域生コン協組の運営にあるのではないか。大阪広域協組は、市場独占で吊り上げた価格を維持する目的で、協同組合に加盟していない生コン業者を市場から排除するため、生コン製造の原料を販売するセメントメーカーに圧力をかけ、非加盟業者へのセメント販売をストップさせるなどの行為をくりかえさせているのではないか。
 大椿さんの記者会見の翌日には、林官房長官会見で東京新聞の望月衣塑子記者が、大阪の生コン価格高騰とその背景にある大阪広域協組の独占禁止法違反問題をとりあげ、林官房長官に「所管の省庁でしっかり調べるべきだ」と質問し、林官房長官は「そういうご指摘が出たことについて当局としっかり共有していきたい」と答えた。―

 そのことを裏付けるニュースが週刊誌(「週刊文春」2023・12・14)で取り上げられている。
 「吉村知事『親密企業』が維新万博を続々受注している!―『350億円リングを強行』内部資料入手」の記事には、大阪広域の木村貴洋理事長と「身を切る改革・しがらみのない政治」をかかげる吉村洋文大阪府知事との写真が掲載されるなど蜜月ぶりが浮上してきている。
 それとともに阪神淡路大震災から大きく日本を変えてきた建築基準の元となるコンクリート強度問題である。
 大阪中心部を中心に建設ラッシュであるが、今は残念ながら関生コンプライアンス(点検摘発活動)が展開されていない。昨年のトルコ・今年初めの石川県の状況を見れば、モノ言う労働組合が労働現場に存在しないことが、いかに危険な状況が明らかだ。

 今年の元旦行動では大阪府警前に500名が結集して約1時間半の集会を行った。関生支部の湯川裕司委員長は「ストライキが当たり前に打てる社会の礎になる」と力強く述べ、また闘争に連帯してきた議員を代表して大石あきこ衆議院議員(れいわ新選組)、大椿ゆう子参議院議員(社民党)のメッセージが代読された。

 元旦行動は1年の活動のスタートである。
 これから、春闘とそして4月7日には全国同時アクションがあり、大阪では、労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会の主催で、大阪天満警察署そばで「不当弾圧許さない!決起集会」(西天満若松浜公園)で集会・デモが予定されている。 
 裁判所に、公平で公正でまともな判決を出させるようがんばりましょう。  (大阪 河田)



軍事侵攻から2カ年!ロシアのウクライナからの即時停戦、完全撤退をもとめよう! (中)

 第二次ロシア・ウクライナ戦争(2014年に発生したクリミヤ半島の併合と東部ドンバス紛争が第一次ロシア・ウクライナ戦争)は、まる二年を迎える。
 ロシア軍は、東部ドネツク州で攻勢をかけており、昨年6月以降の反転攻勢に失敗したウクライナ軍は守勢に回っている。
 ロシア軍は、昨年来40万人以上の契約兵を集めたと言われており、兵士を東部に投入してさらに攻勢をかけている。また、昨年末からウクライナ全土に対してミサイル・無人機攻撃を強めている。
 2月7日、ロシア軍による攻撃は首都キーウをはじめリビウ、ミコライウ、ドニプロ、ハルキウの各州、ウクライナ全土に加えられた。この攻撃によりキーウ市内で4人が死亡、各地で多くの死傷者が出ている。ロシア軍による国際法違反の民間人殺戮は絶対に許されない。我々は、自衛抵抗するウクライナ国民と連帯して、ロシアに対して即時停戦・完全撤退を求めていかねばならない。

佐藤優の「ウクライナ即時停戦論」の誤り

 戦争の長期化とともに様々な「停戦」論がでている。国際的には、昨年12月サウジアラビアのリアドでG7やグローバルサウスの主な国の高官による非公式協議が開催され、その際、ウクライナに対してロシアとの停戦に応じるよう発言が相次いだとの報道がされている。
 だが、厳しい戦況の中でウクライナが停戦に応じることは領土の一体性を回復することを放棄することになり、ウクライナは受け入れがたい。
 また、プーチン大統領が停戦に応じることもありえない。具体的には停戦の動きは全くないのが現状だ。 国内的には和田春樹氏などが「今すぐ停戦」と「運動」を始めているが、最近様々なメディアに登場しているのが作家で元外交官の佐藤優氏だ。
 2月6日、朝日デジタルでこれまでは即時停戦が「言いにくいのは確かでした」と述べ、いまは「でも早くやめないと黒海に面した領域が全部ロシアにとられる可能性がある」「米軍の支援が先細り、ウクライナは完全に弾切れを起こしている」ので即時停戦が言いやすいという。そして、「トランプ大統領が当選するような事態になれば、完全にはしごを外された形になる。ロシアは手加減しないでしょう。だから早く停戦にもっていかないと」というのだ。
 要するにこのままいけばウクライナは敗北が間違いないのでこのあたりで「停戦」すればどうかと言っているのだ。
 ウクライナ敗北・停戦論は、佐藤氏の兄貴分である鈴木宗男議員のもともとの主張である。特段新しい話ではない。
 しかし、この佐藤氏の「停戦論」で見過ごせないのは、第二次ウクライナ戦争の経過・目的についてロシア側にたって述べている点だ。
 佐藤氏は次のように言う。戦争は、「2期に分かれると思います。境目は2022年9月30日にロシアがウクライナ東部ドネツク州など4州の併合を宣言したこと。それまでロシア側は、ウクライナ東部にすむロシア系住民の処遇をめぐる地域紛争との主張でした。他方、西側連合の考え方は民主主義対独裁。その意味で非対称な戦争でした」「ところが4州併合によってロシアの目標があいまいになってしまった。と同時に双方が価値観戦争にしてしまった。終わりなき戦いです、価値観戦争は」「一方で、プーチン大統領は勝敗ラインを明確にしなくなった。実効支配の領域が開戦時より少しでも多ければ、当初目的は達成で来たという形でいつでも停戦できるということです。」などとのべている。
 1月23日放送されたNHKクローズアップ現代でも同様の事を述べている。
 じつに誤りだらけの発言だが、大きい点では、前号でも触れたがこの戦争が「帝国主義的な侵略と被侵略」の戦争であり、国連憲章をはじめとする国際法を遵守するか否かの問題であって、「西側連合」が当初から価値観から出発した戦争という認識は基本的に誤りである。
 また、ロシアの主張・戦争目的が、「ロシア側は、ウクライナ東部にすむロシア系住民の処遇をめぐる地域紛争との主張」というのも誤りだ。
 2022年2月24日開戦時公開されたプーチン大統領のビデオ演説では、「現在のウクライナはソ連時代に人工的につくられたもの」から始まり、この戦争の目的は、「ウクライナの非軍事化、非ナチ化、そしてロシア系住民の虐殺の阻止である」と明確に述べている。戦争目的は何一つ現在も変わらない。
 プーチン大統領は、昨年12月14日次のように語っている。「目的は以前と変わっていない。ウクライナの非ナチ化であり、非武装化であり、中立化だ」と。
 ここでいう「非ナチ化」とは、ウクライナが反ロシア路線を捨てることを意味している。「非武装化」とはウクライナ軍の解体であり、「中立化」とはロシアの勢力圏に入って事実上の属国となることを意味する。この選択肢以外はウクライナに認めないというのがプーチン大統領の主張である。佐藤氏は、「実効支配の領域が開戦時より少しでも多ければ、当初目的は達成で来たという形でいつでも停戦できる」などと言っているが今すぐにでもロシアは停戦に応じるなどと言うことはミスリードであり完全に誤りである。
 現在の厳しい戦況の中でウクライナに対して「即時停戦」を呼びかけることはウクライナにとっては事実上の降伏勧告に等しい。停戦を呼びかけるならロシアに対して「停戦・撤退」を求めるべきだ。

松里公孝氏の「ウクライナ早期停戦論」

 世界2024年1月号に「正義論では露ウ戦争は止められない」という小論が掲載されている。
 筆者は松里公孝氏、東京大学大学院の教授でロシア帝国史研究者である。
 早期停戦に向けてというまとめがある。「人道的な観点からすぐに停戦しなければならない」「特にウクライナ側は、すでに民族の再生産が妨げられるほどの犠牲である。」とのべている。
 そして、「いまの戦線を前提にした停戦論に対しては、『ロシアの侵略を追認するのか』という正義論からの批判がなされる。・・長期的な和平のためには正義論が必要だが、停戦は『これ以上は戦えない』と交戦国の少なくとも片方が判断することによってなされるのである」などと述べている。
 要するに国連憲章、国際法、国連決議などを持ち出していては「露ウ戦争は止められない」というのだ。この立場がどういう立場であるかについては前号で触れている。まずは、ウクライナが停戦し、そこから次の段階として和平交渉をせよという主張だ。
 ここには佐藤氏以上にロシア・プーチン大統領に対する「幻想」が溢れている。   (この項つづく)


追 悼

        中北龍太郎さん 中岡哲郎さん


 昨年から今年にかけて二人の方々が他界された。
 弁護士の中北龍太郎さんは闘病中であったが12月8日、間質性肺炎で76歳にて他界された。
 技術論で高名な中岡哲郎さんは長い闘病中であったがこの1月6日に腎不全で96歳にて他界された。

中北龍太郎さん

 中北龍太郎さんは早稲田大学政治経済学部を卒業して76年に弁護士になっている。狭山差別裁判の弁護団で事務局を務め活動されてきた。憲法改悪の動きに対して全国的に行動し、関西では関西共同行動や国際連帯など幅広い分野で活動された。労働問題で広範な人々の相談にのりながら各地域の市民運動にも関わってこられ、無くてはならない人であった。
 私も定年退職時の雇用延長で排除のために就業規則を変更されるということで中北弁護士に相談した。中北弁護士に一筆かいてもらい、会社との交渉に使ったことがある。延長を認めない代わりに2年分の賃金相当を支払うということで決着した。その後のボランチア専従をこの解決金で賄うことができた。
 次に吹田市民から寄せられた追悼の文章は中北弁護士が各地の市民と関わってきた多くの事例の一端を表している。

 ― 全国的に日の丸、君が代が国家化される中で侵略戦争であった日本の戦争を賛美する決議が全国各地の自治体で決議され始めた。その時吹田市でもその動きがあった。議案決議案の動きは全国的に右翼団体の申し入れが市役所を包囲して行われていた。そして討議会にも右翼団体が集まるとの情報であった。
 教育合同を中心に幅広く呼びかけがあり、議会への陳述行動が取り組まれた。当日は夜明け前より多くの労働者、市民や各団体が参集した。決議を挙げられてしまった松山からも10名近く来られていた。吹田在住の故松井義子さん(在韓被爆者を支援する会)もおられた。全労協系は約100名、革新懇系が400名が議会開始前から議会事務局や各会派を訪問し、決議を挙げないように申し入れた。また、市長や議長にも団体や個人が面会に行った。泉南市議の小山さんや中北さんや周辺地域の市議も駆けつけてくれた。中にはハンストを始めたり、全国に連絡を取り、吹田市に抗議や電話を集中してもらうように動いていた。私たちの司令塔になってくれたのが中北さんであった。取り組みは真夜中まで続いた。私たちは庁舎前に座り込み、ハンストを徹夜で行い翌日を待った。中北さんは翌日、用事で参加できないとのことで尼崎市議の酒井一さんが中北さんの後を引き継がれた。翌日も昨日同様の取り組みで同じ人数が集結した。
 そして議会は開かれなかった。決議は流れた。その半年後、決議の文言が大幅に変更された。多数決で通過した。その時も中北さんは参加してくれ、励ましてくれた。テレビ、新聞でも大きく取り上げられた取り組みを引っ張ってくれた。
感謝!(河田) ― 

 私の手元には尼崎市議選で酒井一さんの支援に駆けつけた中北龍太郎さんと上坂喜美さんの写っている写真がある。若い時の映像であり実直な人柄がよく見て取れる。私より一歳若い早すぎる他界である。ご苦労様でした。合掌。

中岡哲郎さん

 中岡哲郎さんは学問の世界では技術論で高名であるが「京大事件」での天皇への公開質問状の原案を書いたという別の側面を持たれている。学生への弾圧と国会でも取り上げられた「京大事件」は戦後の社会再編と天皇制を考える上で象徴的な事象であった。中岡さんは阪神溶接機材で働き、現場経験のある視座から戦前戦後の技術論を追求していかれたようである。その後神戸外国語大学で数学の講師として教鞭をとることになった。神戸外国語大学で教鞭をとる傍ら直面した学生たちの全共闘運動にも7教官の一人として誠実に取り組まれたようである。生活協同組合の改善要求から出発した学生たちの行動に支持を表明し、一定の解決を見たのちも復学を望む生徒たちのために尽力をされたようである。
 その後大阪市立大学経済学部に転任し、最終的には大阪経済大学で教鞭をとられたようである。
 私は中学卒業後集団就職し、先輩のすすめで北野定時制高校に入学した。卒業ののち好きな語学をやりたいと神戸外国語大学2部に入学した。入学式での行田良夫教授の「大学に入ったからには『朝日ジャーナル』、『世界』、『思想』ぐらい読みなさい」との強烈な洗礼を受けた。3年生になり数学の講師が中岡さんであった。背筋を伸ばした凛とした人であった。
 田舎に引き上げるために資料整理をしているとき構造改革派潮流の中に中岡さんと行田さんの名前を見出した。中岡さんが神戸外大にきたのは行田さんのひきであったのではと推測した。
私は無知の世間知らずな青年であった。周りの人から中岡さんが何らかの社会運動の関係者であることを聞いてもよくわからなかった。知らないものの強さで東大全共闘へのカンパを貰いに行ったり、帰りの阪急電車の中で反戦青年委員会について問われ答えたのを思い出す。69年4月、研究所封鎖が始まったとき、2部からも数名が参加し、私も寝泊まりして出勤していた。その後28日には東京の沖縄デモで逮捕長期拘留されたのでごく短い間昼の生徒たちと行動をともにした。それから何年もたって当時の全共闘にかかわった生徒と支持した教官たちとの交流に参加できるようになった。外大スペイン語学科出身で全港湾で活動していた宮本さんの誘いであった。集まりにはドイツ語の小川教授や中岡哲郎、百合夫妻が参加されていた。それから数回この集まりに参加させてもらった。労働者上がりの私にはこの集まりは大きな喜びであった。復学した学生の中には中国語学科やロシア語学科の学生で学問の世界に入った人もあり、異なる経験が聞かれた。中岡教授の「日本近代技術の形成」出版記念集会には多くの多方面の人々が参加していた。会場までJR立花駅から小川教授と同行したのを思い出す。
 私は関西東チモール協会に参加して、そこの大阪市立大学出身の人々が中岡教授のかかわりのあった人々がいた、中岡教授に学問的な示唆をうけたということであった。出版記念集会には両方の人々が参加していた。
 また、私が69年に逮捕拘留された際に2部の学友から励ましの手紙をいただいた。その中には中岡さんのハガキもあった。無知な私は新聞で読んだ中岡さんの工場での生産不具合が工場外に出た問題を論じた寄稿分に生意気にも技術者がわかっつていることと告発とは同義ではないのではと返事を書いたのを思い出す。今日、ダイハツや三菱電機などでの品質管理の不具合が繰り返し発生している時、今でもこの思いは変わらない。労働組合がしっかりしているか、自立した個人が確立しているか、全共闘運動で問われたことは今でも継続している想いがある。
常に問題と真剣に向かってきた背筋を伸ばし、凛としたまなざしの中岡哲郎さん、ご苦労様でした。
 全共闘メンバーは感謝以上のものを感じていると思います。    (蒲生楠樹)


「デジタル小作人」化が進行する日

 1月16日の日本経済新聞の一面に「デジタル小作人、米に貢ぐ5兆円」との記事が掲載された。あらゆる産業がデジタル経済に統合される時代において日本の現状は悲惨である。日本のデジタル市場の現状はスマホOSの市場規模約3000万台 海外製のシェア100%、PCのOS約1700万台 同シェア100% クラウド 約2・9兆円 同シェア80%などソフトウェアのほとんどがアメリカに依存している。スマホ・PCなどハードウェアも純粋国産はないに等しい。日本の産業の中核をなす製造業(自動車等)110兆円規模や運輸業(約27兆円)・不動産業(約66兆円)などに今後デジタル化が進行すると見込まれるが、アメリカ製OS・ハードがなければすべて立ち行かなくなる。三菱総合研究所は、すでに日本のデジタル赤字は2023年過去最高の5兆6000億円前後となると試算する。これは原油や液化天然ガス(LNG)の赤字額3ヶ月分に相当し2014年の2・6倍に達している。また23年度政府予算の教育関連費の5兆2941億円を上回っている。23年はコロナ禍後のインバウンドの増加によって旅行収支の黒字額が3.4兆円と過去最大になったが、米IT産業への支払いには及びもつかないレベルになっている。岸田政権が推進するDX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)においても中核となるOSやIT機器はアメリカ製が前提であり6年後の30年にはデジタル関連サービス収支の赤字額は年10兆円を超えるとされている。23年の日本の経常収支は22年比9割増の20・6兆円程度の黒字となったが内10・3兆円は海外子会社が内部留保しており国内に恩恵をもたらすわけではない。今後もデジタル課金が増大していけば、いずれ日本の企業と労働者が汗水たらして稼いだ成果をすべてアメリカに貢ぐことになる。この状態を「デジタル小作人」と名付けるのも「むべなるかな」である。小作人制度とは土地の所有権を持たない貧しい農民が豊作・凶作に関わらず地主に地代の支払いを義務付けされた封建的システムである。また地主制度は、自ら農作に一切かかわらず小作料に依存して大都市で優雅に暮らす「寄生地主」「不在地主」と批判的に呼ばれるようになった。戦後の農地改革によって封建的地主制度を一掃したはずが21世紀になって、新たな封建的地主に擬されるアメリカとそのくびきの下に置かれる「デジタル小作人」となった日本は、生産した利益の大半を年貢として払わねばならず、貧しくて水しか呑めないような江戸時代の「水呑百姓」に日本が丸ごと成り果てるのは時間の問題である。防衛費43兆円でアメリカ製武器の爆買いとともに、日本の「デジタル小作人」化は今後の政治・経済・生活すべてに係る根本的な重大問題となっている。  (DAM)


せんりゅう

     腐敗した自民にたかるハエもいる

         鬼に金棒自民に裏金

     ウラ金のここに自民のバカぢから

         労働が価値、子供の価値見失い

     冒険心老いて尚うずく友よ 
 
                     ゝ  史
  2024年2月


複眼単眼

        腹が立つ能登半島大震災への政府対応


 今年の元日の午後4時過ぎに起こった能登半島地震はマグニチュード7・6、震度7(石川県志賀町、輪島市)で、本稿を書いている時期の暫定値で、死者240人、不明0人、負傷者1291人、住宅被害30538棟という大震災だった。
 輪島はずいぶん昔に訪れたことがあり、懐かしい。朝市も行った。傷ものの輪島塗りのお椀を買ってきた。あの朝市の街並みが猛火に襲われている映像はなんともいえず、悲しかった。かつてみた阪神淡路大震災、熊本大地震、東日本大震災の映像を思いだしながら、政府の対応の遅さに激しくいら立ってきた。
 この震災対応は岸田政権の大失策だ。
 おかしなことがたくさんある。いちいち指摘するたびに怒りがわいてくる。
 地震発生の元旦に岸田首相が官邸で会った閣僚はたった2人という。夜、東京に戻った斎藤国交大臣は首相との連絡もなく、官邸に入ったのは翌日だった。震災発生直後から、岸田首相は記者会見の場に役にも立たない防災服を着て出席し、「やってる感」の演出丸出しのパフォーマンスを続けたが、肝心の現地に入ったのは、これも初めての(なんということか)馳県知事とともに13日のことだ。 岸田・馳コンビの無能、無気力にあきれるばかりだ。 東日本大震災時に民主党政権の菅直人首相が福島第一原発上空からヘリで視察したことと比べるまでもなく、立ち遅れもはなはだしい。当時、菅首相は逃げ出そうとしていた東電幹部を叱り飛ばし、またのちには浜岡原発もとめた。テレビを見ていた視聴者が、睡眠もとらずに情報を発信し続けた官房長官に「枝野、寝ろ」と声をかけたのも思い出される。
 先の大震災と比べて驚くのは、災害救助が売り物の自衛隊の出動の遅れとその規模の小ささだ。
 能登半島地震の自衛隊員投入は発生2日目、1000人。発生3日目2000人。発生5日目5000人。
熊本地震は発生2日目2000人。3日目は1・4万人。5日目は2・4万人だ。東日本大震災は1日目は8400人。2日目は5万人。5日目は7・6万人だ。
 あきらかにすくない。この極端な数の違いの理由を政府は地震による道路の崩壊や海岸の隆起など交通手段の寸断のせいにしている。孤立集落がたくさんある。建物倒壊や土砂崩れによる生き埋めの危機がたくさんある。なぜヘリの救援がこんなに少ないのか。へり、あるいはドローンによる物資の投下はどうなっているのか。ヘリが下りられないなどという言い訳も聞く。寝言は休み休み言ってくれ。当時、優秀な空挺団が千葉県の木更津で軍事演習をしていたではないか。中国や朝鮮からの攻撃に備えて準備しているはずの日本海沿岸の防衛体制がこれだ。
 ライフラインの甚大な損傷、交通網の寸断、家屋の倒壊と火災は原発避難路の確保など不可能だったことを示した。海上輸送の途絶、海岸港湾の隆起(90キロにわたる隆起、最大4M)。
地震の直接死では熊本を上回る。安倍晋三は「悪夢の民主党政権」(安倍)などといったが、悪夢の自民党岸田政権ではないか。
 交通事情を理由にボランティアや政党党首の現地行きを止めた政府の判断も最悪だ。役に立たない政治家は必要ないが、自己完結型のボランティアの投入は不可欠だ。18000人のボランティア登録者がいるのに、現地宿泊所が確保で来ないことを理由に、その1%も投入できない。国際的にも高く評価されている東京消防庁のレスキューもしばらく足止めをくった。経験のある市民は自発的にどんどん駆け付けている。 
 レッドサラマンダー(無限軌道災害対応車)が愛知と大阪に2台しかない(1億円程度)というのは解せない。トマホークは1発5億円で400発も購入予定ではないか。
 それにしてもなぜ救援の自衛隊が迷彩服なのか。救援には目立つ服装が必要だ。それしか支給(2着)されていないというが、日頃から救援用の作業着を支給したらどうか。眼営西福は戦争出動に慣れさせるための災害出動だからにほかならない。。
 原発の危険性も気になる。志賀原発は本当に無事だったのか。情報が少なすぎる。危険にさらされていないのか。45年前に建設着工が予定され、住民の20数年にわたる反対闘争で阻止された珠洲原発2基は、もし建設・稼働していたらどうなったか。今回の4Mにわたる地盤の隆起をみて、みな反対闘争を称えている。あれが建っていたらフクイチどころではなかっただろう。
 いくらかいても書ききれないほど、腹が立つことばかりだ。  (T)


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