人民新報
 ・ 第1431統合524号(2024年3月15日)

                  目次

● 次期戦闘機・武器輸出を許すな

        岸田軍事大国化路線阻止

● 2・24 ロシアのウクライナ侵攻2周年

        ロシアは即時撤退せよ!

● 連帯労組関西生コン事件

        労組への大弾圧に反撃

● 3・1朝鮮独立運動105周年

        植民地主義を清算し平和な東アジアを!

● STOP 経済秘密保護法

           経済安保版 秘密保護法案に反対を!(秘密保護法対策弁護団)

● 島根原発2号機再稼働迫る現地から

        無責任な国の無責任な避難計画

● ウクイナからの即時停戦、完全撤退をもとめよう!(下)

● “オレンジ色の悪魔”とTSMC

● せんりゅう

● 複眼単眼  /  時間読みの岸田退陣

●  「人民新報」 ウェブ版への移行のお知らせ






次期戦闘機・武器輸出を許すな

        
岸田軍事大国化路線阻止

次期戦闘機・輸出への策動

 昨年12月に「防衛装備移転三原則」と運用指針の見直しをおこなった岸田政権は、日本が英国、イタリアと共同開発を目指す次期戦闘機を巡り、第三国への輸出を解禁する方向で公明党と合意に向けて詰めの協議に入っている。
 次期戦闘機とは、日、英、伊三国が共同開発に合意した新鋭戦闘機のことで、35年度の配備開始を目指して、3国は共同開発する次期戦闘機に関する条約(GIGO)を締結し、25年から開発に着手する。
 武器輸出に前のめりの岸田は3月5日の参院予算委員会で、共同開発する次期戦闘機を第三国へ輸出できなければ、機体設計に関する両国との交渉で不利に働き、戦闘機性能実現が困難になり、防衛に支障を来すとの理屈を述べている。

安倍の国家安全保障戦略


 日本は、戦後長期にわたって「武器輸出三原則」で禁輸政策を取ってきたが、2014年に安倍晋三政権が「防衛装備移転」と言い換えて限定的に解禁した。
 前年2013年の国家安全保障戦略にもとづくもので、それは歴代政府が掲げてきた「専守防衛」の原則をも投げ捨て、「敵基地攻撃能力」の保有に初めて踏み込むなど、戦後の安保政策を大転換し、空前の軍拡と「戦争国家づくり」を推し進めようとするものだ。その安倍の敷いた大軍拡路線を岸田はいっそう推進しようとしている。
 防衛装備移転三原則では、「防衛装備の海外移転は、平和貢献・国際協力の積極的な推進に資する場合、同盟国たる米国を始め我が国との間で安全保障面での協力関係がある諸国との国際共同開発・生産の実施、同盟国等との安全保障・防衛分野における協力の強化並びに装備品の維持を含む自衛隊の活動及び邦人の安全確保の観点から我が国の安全保障に資する場合等に認め得るもの」とし、「国際共同開発・生産」を輸出解禁の突破口として書き入れていた。そして、「救難、輸送、警戒、監視、掃海」の5類型であれば自衛隊法上の「武器」を搭載した状態で輸出することが可能とされた。
 いま岸田は、その5類型の制限すら撤廃しようとしている。

日本の紛争当事国化

 武器輸出とは、日本産兵器が紛争激化を招き、他国の人々を殺傷することである。「専守防衛」の国是を踏みにじるものであり、日本は間接的な紛争当事国になる。共同開発だからといって責任が三分の一になるわけではない。
 憲法に違反し、戦後政治の流れを否定する画時代的な政策変更を、国会の論議にもかけずに与党内の密室協議で行おうというのである。
 昨年4月始まった与党協議は非公開で、議事録も公表されない。両党代表も説明らしい説明をしない。ひろく知られることを恐れていることのなによりの証拠だ。協議終了後に両党の代表者が記者団に説明するが、内容が最小限にとどまるようになった。
 公明党は、解禁対象を国際共同開発品全般ではなく、次期戦闘機に絞る、また輸出する際の決定プロセスで与党との事前調整の運用をより厳格にするという「歯止め策(?)」などで合意の方向とみられる。

厳格な武器輸出禁止原則を

 昨年10月には国際NGO活動者や平和学研究者らの連名で「日本は『死の商人』になるのか〜殺傷武器の輸出に反対する共同声明」がだされ、@武器輸出の運用指針見直しに関する与党実務者チームをただちに解散させ、閉会中審査を含め、国会で期限を設定せずに徹底した議論を行うこと。A殺傷武器の輸出を解禁しないこと。B第三国輸出による戦争への加担と不可分である次期戦闘機の日英伊共同開発そのものを中止すること。C武器輸出に多額の税金を投入する軍需産業強化法を廃止すること、を求めた。
 安倍の防衛装備移転三原則を撤廃し、より厳格な武器輸出全面禁止の原則を定めなければならない。
 日本国憲法の基本的な精神をいかして国際的な緊張緩和と当面する深刻な事態に平和貢献することが日本の立ち位置とならなければならない。


2・24 ロシアのウクライナ侵攻2周年

        
ロシアは即時撤退せよ!

 2月24日はロシアのウクライナ侵攻から2年。世界・日本の各地で侵略への抗議の行動が行われた。
 東京では、ロシアは即時撤退せよ!、原発を占拠・攻撃するな!核使用の恫喝を許さない!、すべての戦争と戦争準備に反対!のスローガンをかかげて、「ウクライナに平和を!2・24青山集会&デモ」がひらかれた。参加者は500人。
 集会で、主催者を代表して藤本泰成さんがあいさつ。 つづいて、総がかり行動実行委の小田川和義さんが発言。国連総会は安保理事会で常任理事国が拒否権を行使した場合、総会での説明を求める決議案を採択した。ウクライナへ侵攻したロシアが拒否権を行使し、自国への非難、決議案を廃案におよんだことへの批判が国際社会で共有された結果だ。昨年9月にインドで開催されたG20では、ウクライナへの軍事侵攻について、領土の獲得のための武力の行使を控えなければならないと明記し、核兵器の使用や威嚇は容認できないとした。この首脳宣言をロシアも含めて採択した。不十分な点もたくさんあるが、グローバルサウス等の国々が軍事ブロックの道ではなくて、粘り強い対話で国際法のルールにのっとった紛争解決を目指す動き積み重ねているその結果だと思う。軍事ブロックに組み込まれれば小国は軍事大国に翻弄され紛争に込まれるそのことは明らかだ。同様にイスラエルのガザへの侵攻はジェノサイドと告発した南アフリカとこれに賛同する国々の動きでも示されている。平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼して、我らの安全と生存を保持しようと決意したと宣言する憲法前文の立場からしても、国連憲章のルールによって、ロシアはウクライナから手を引け、戦争やめろと日本政府が国際社会の先頭に立つよう求め続けていくこと、それが私たちの責務だ。アメリカの経済誌『フォーブス』がロシアで事業を続ける2022年の外国企業のランキングを発表したが、実質の1位は日本のタバコ産業JTの海外子会社JTインターナショナルだ。ロシアで事業展開する日本企業168社中完全に撤退をしているのは2割だけだ。何よりも日本は石油天然ガス開発事業であるサハリンから天然ガスを輸入し続けている。ロシアウクライナ侵略を止めさせるために日本は経済制裁政策を行っているはずだが、この状態だ。ロシアのウクライナ侵略、イスラエルのガザ侵攻で、戦闘の最大の被害者は、子供や女性などの市民であって、力と力の対立では平和が絶対に行われない。戦争を準備する政府にはレッドカードということではないだろうか。大軍拡、敵基地反撃能力保有の戦争準備と改憲を同時に進める自民党政権にレッドカードを、自民党政治を終わらせるために声を上げ行動しよう。
 原子力資料情報室の松久保肇さんは、ウクライナでの状況とりわけ原発への攻撃が行われていることについて報告。欧州最大のザポリージャ原発はロシア軍に占拠されたままだ。南ウクライナ原発も狙われた。きわめて危険な状況がつづいている。いまはどこの原発も同じような事になっている。日本をふくめて原発をなくしていかなければならない。
 集会ではウクライナの女性カテリーナさんも参加し、民族楽器バンドゥーラの演奏、歌でウクライナの平和を訴えた。
 集会を終わり、六本木通りを経て三河台公園までのデモを行った。


連帯労組関西生コン事件

        労組への大弾圧に反撃


4件目の無罪判決

 2月6日、大津地裁はコンプライアンス第2事件について、7名に無罪、2名に執行猶予付き有罪判決を言い渡した。
 本件は2018年以降、全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部にかけられた戦後最大規模の一連の労組弾圧、業界と権力による不当労働行為、組合つぶしである。
 建設現場にコンプライアンス(法令遵守)を求める、産業別労働組合の当たり前の活動を組織犯罪として、廃液垂れ流しなどの法令違反を指摘し是正を求める活動やビラまきを「恐喝未遂」、「威力業務妨害」と組合員を大量に逮捕、長期拘留の末に起訴した事件だ。
 捜査には組織犯罪対策課が当たり、刑事や検察官の取り調べではあからさまに組合脱退勧奨を行う。裁判所も人質司法と呼ばれる長期拘留を認めた。異常なまでの権力弾圧だ。

 3月8日、東京・連合会館で、「7名の無罪が確定」コンプライアンス第2事件判決報告集会(主催・関西生コンを支援する会)が開催された。
 今回の報告集会では、2月6日に大津地裁が出した判決について担当の太田弁護士、川上弁護士から詳しい報告がなされた。
 両弁護士は、昨年3月に同じく大津地裁の同じ裁判官が、湯川関生支部委員長に実刑を言い渡したコンプライアンス第1事件判決と比較しながら、「7名の無罪判決は喜ばしく思えるが2名は有罪。業界対策のコンプライアンス活動が恐喝や威力業務妨害となることが大前提であることに変わりはなく、無罪となったメンバーは活動する地域が違うからという判断となった」。「コンプラ活動について『些細な違反について繰り返し指摘』というが、具体的な事実認定をしていない。この判決文では司法試験では不合格」。「違法性が阻却される労働組合法1条2項(組合活動の正当性)も判断していない」「さすがにビラまき1回で恐喝未遂や威力業務妨害は躊躇したのでは」など論点を挙げて解説した。
 和歌山広域協組事件(大阪高裁で逆転無罪判決)に続き、今回で二度目となる無罪判決を受けた当該関西生コン支部執行委員は、「裁判所は逃げた」と断じた。「当日のビラまきは、予定されていた行動が中止になり、急遽行った短時間のもの。職場の組合員が逮捕・起訴され、本当に苦しかった」。また、無罪となった組合員は「有罪とされたメンバーと同様に我々も控訴したい。組合活動の正当性を認めさせたい。」と、言われたと発言した。

破綻する権力弾圧の構図

 2018年から続く権力弾圧は、これまで8件の刑事裁判のうち4件で無罪判決。内3件で検察が控訴、上告を断念し無罪が確定した。一方で、大阪ストライキ1次事件、2次事件では、22年にともに最高裁が上告棄却し、有罪が確定している。
 この権力弾圧により、解雇され仕事を干しあげられた組合員の多くは組合を去り、関生支部は大きな打撃を受け、高い水準を誇った労働条件も大きく引き下げられた。
 一連の弾圧は、2017年に輸送賃引き上げを求めた組合のストライキに対して、約束を守らず利益を独占した大阪広域生コン協組が、組合つぶしを企図しヘイト集団を雇い、組合事務所を襲撃させるなどの事件を引き起こした。そして、協組加盟各社に「連帯と手を切れ」と号令をかけ、組合員を大量に解雇させた。さらにその混乱に乗じて警察・検察・裁判所による組合つぶしの権力弾圧が開始された。
 しかし、8件中4件までに無罪判決が出され、権力側の構図が破綻しはじめている。

「黄犬契約」肯定の中労委命令

 また、組合員に対する不当な解雇は、これまで地方労働委員会、裁判闘争で解雇無効の判断が出されている。その一方で昨年、中央労働委員会が、大阪府労働委員会が出した組合側勝利の初審命令を覆すとんでもない内容の命令が立て続けて出された。
 旭生コン事件、三和商事事件、寝屋川コンクリート事件は、日々雇用労働者を生コン業者に供給する連帯ユニオン近畿地方本部所属「淀川事業所」が、2017年12月のストライキの際に労働者供給を一時的に停止したことを理由に、三社が供給依頼を停止した事件だ。
 日々雇用労働者は、就労先を失い、生活のため組合を去らざるをえなくなった。
労働者供給労組は、「スト破り」を防ぐために争議現場に組合員を供給してはならないことになっている。この当然の対応を「関生支部が再びストをすれば淀川事業所も再び供給を停止することから生コンの安定供給が出来なくなる。だから労働者供給先を変更しても不当労働行為にならない」と三社の代理人弁護士は主張した。
 大阪府労委はこの主張を一蹴したが、中労委は「三社の行為は合理的で不当労働行為に該当しない」と判断を示した。組合側は、東京地裁に命令取り消しの行政訴訟を提訴している。

産別運動の全国化が弾圧への答え

 現在、全日建本部と関生支部、当該組合員ら5者は、2020年3月に国、京都府、滋賀県、和歌山県の4者を相手取って国賠訴訟を提訴。また、弾圧の真っただ中で闘い続ける等身大の組合員の姿を記録した映画「ここから」の上映運動を各労組、平和フォーラムの支援を受けて展開している。
 また、大阪広域協の組合つぶしを「合理的」と追認する中労委に対して、日本労働弁護団、他労組と連携して社会的キャンペーンを展開する準備をするなど、相次ぐ無罪判決を追い風に反転攻勢の取り組みが進められている。
 最も重要なのは、関西地区で取り組まれた産別運動、業種別運動を首都圏で、全国で展開すること。そのための組織拡大運動だ。


3・1朝鮮独立運動105周年

        植民地主義を清算し平和な東アジアを!


 世界各地で緊張が高まる中、いま朝鮮半島でも緊張が高まっている。植民地主義の清算、日韓民衆連帯、日朝国交正常化、東アジアの平和めざす運動の強化が求められている。
 2月25日、文京区民センターで、「3・1 朝鮮独立運動105周年集会 戦争反対!日米韓軍事同盟化を許さない! 植民地主義を清算し平和な東アジアを!」(主催・「3・1朝鮮独立運動」日本ネットワーク(旧100周年キャンペーン)、協賛・戦争させない!9条壊すな!総がかり行動実行委員会)がひらかれた。

植民地支配責任を問う


 はじめに動画「植民地支配に抗って〜3・1朝鮮独立運動」の上映。
 主催者を代表して加藤正姫さんがあいさつ。
 同志社大学教授の板垣竜太さんが「いまこそ植民地支配責任を問う」と題して講演。
 戦後日本は植民地支配責任否定の歴史だ。戦後日本における植民地支配責任否定は今の日本のレイシズムにつながっている。東京裁判では、日本の植民地住民の被害という観点が欠落し、南次郎や小磯國昭は朝鮮総督であった時代のことは問われず、またBC級戦犯裁判でも占領地住民への戦争犯罪は裁かれたが、むしろ朝鮮人台湾人の軍人軍属が裁かれた。対日講和条約でも対日賠償の方針が変化した。冷戦の力学によって対日厳格方針が変更された。サンフランシスコ講和会議では参加52カ国中46カ国が賠償放棄させられた。ここには、南北朝鮮、中国、台湾は招待されなかった。
 植民地支配の追及とレイシズムの解消は、あまりに大きな課題だからといって立ちすくんでいるわけにはいかない。問題が歴史構造的に連動しているとの観点から一つ一つ立ち向かい、歴史の側から事実の歪曲に対して事実をもって対抗することが必要で、それが広く届くものでなければならないので、インターネットやサブカルチャーの活用が大事だ。何より日朝国交正常化が必要で、これが課題だ。

三一運動は民族・民主革命

 キム・ジョンハン(金英丸)さん(民族問題研究所対外協力室長、日韓歴史正義平和行動共同執行委員長)は、「日米韓軍事同盟化の現状と韓国民衆の闘い―強制動員被害者の人権と尊厳そして東アジアの平和―」と題して報告。三一運動は、民主共和制の確立を求めた民族革命であり民主革命でもあった。帝国主義の侵略に立ち向かった主権の回復と近代社会の実現への要求があった。
 不当な暴力の主体である日本帝国主義・朝鮮総督府に対して主権者としての人民が蜂起したという意味であり、その結実としての自由・民主・平等の価値を掲げた新しい政治体制、民主共和制の確立をめざすということだった。
 韓国民衆は闘いを続けて成果を積み重ね、ろうそく革命の結果、ついにムン・ジェイン政権が誕生した。しかし現在のユン・ソンギョル政権は歴史の時計を逆さまに戻そうとしている。朝鮮半島の平和プロセスを破棄し、反共と反北に基づいた日米韓軍事協力を外交政策の最優先課題として採択した。脱原発政策を放棄して原発拡大へと転換し福島原発の核汚染水の海洋投棄を容認した。
 日米韓対北中露の対決構造において米国の突撃隊を自認している。
 韓国では、日本軍「慰安婦訴訟」は、昨年11月にソウル高等法院で勝利した。また大法院での日本製鉄、三菱重工、不二越に対する全ての訴訟が最終的に勝訴した。戦争責任から逃げようとしている日本政府や戦犯企業に対して、判決の履行を強く迫る運動が求められている。歴史否定論に対抗する市民連帯の構築、群馬の朝鮮人追悼碑撤去、関東大震災100年追悼集会参加者に対する韓国政府の弾圧、水曜集会へのヘイトスピーチなどと闘い、植民地時代を生き抜いた人々、戦争被害者の声を受け継ぎ、被害者の人権と尊厳の回復、歴史正義の実現、東アジア平和のための市民連帯を強めていこう。

 つづいて日系進出企業・韓国サンケン労組支援闘争不当弾圧当該の尾澤孝司さんの特別アピール、最後に集会宣言が参加者の拍手で確認された。


STOP 経済秘密保護法

 政府は、経済安全保障上の秘密情報を扱うための資格制度「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」を創設する法案「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案」(経済秘密保護法案)を閣議決定し、今国会での成立を狙っている。
 これは国家機密の範囲を広げる経済安保版の秘密保護法案=「スパイ防止法」である。秘匿する情報の範囲を経済分野にも広げ、漏洩した場合などに処罰を下すとする中身になっている。絶対に許してはならい。

国会前で法案反対の集会

 3月6日、衆議院第二議員会館前で、「秘密保護法」廃止へ!実行委、共謀罪NO!実行委の共催で「秘密保護法廃止!共謀罪廃止!監視社会反対!6日行動〜経済安保版秘密保護法の制定を許さない」が開かれた。 集会では、沖縄の風の良鉄美参議院議員、共産党の仁比聡平参議院議員、社民党の福島瑞穂参議院議員と総がかり行動実行委員会の高田健さん、憲法九条やまとの会の久保博夫さんが発言し、れいわ新選組の大石あきこ衆議院議員はメッセージをよせた。

法案の狙いは軍事経済化

 集会後には、「経済安保推進法と大川原化工機事件」をテーマに院内集会がもたれた。
 金子勝立正大学法学部名誉教授が、「『重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案』の問題点―軍事経済の確立を狙って」と題して逐条的に法案を批判した。この法律の狙いは、軍需産業の強大化のためである。国家が軍事情報を管理し、企業や大学や研究機関に軍事情報を提供し、軍事研究を促進させ、軍事産業を大きくすることができ、日本国の軍事経済的確立化を可能とすることだ。

大川原事件での違法捜査

 秘密保護法対策弁護団事務局長の海渡双葉弁護士が「大川原加工機事件と経済安保版・秘密保護法案」と題して報告。大川原加工機事件は、生物兵器の製造に転用可能な噴霧乾燥機を必要な許可を得ずに輸出したとして、外国為替及び外国貿易法違反の容疑で、会社の代表者が逮捕拘留され、検察官による公訴提起が行われた。しかし、第一回公判の直前に検察官が公訴取り消しをした。
 会社側からの国家賠償請求訴訟の東京地裁判決は警察、検察の違法が認められ被告である国と都に1億6200万円の支払いを命じた。国家賠償請求訴訟の証人尋問で驚くべき証言がなされた。捜査を担当した警視庁公安部の現職の警部補が、原告側の代理人弁護士から「事件をでっち上げたと言われても仕方がないのでは」と問われて「捏造ですね」と証言した。また逮捕に踏み切った背景について、警部補は、「捜査員の個人的な欲でそうなった」とも証言した。また輸出規制を所管する経産省の元担当者が証人尋問において、同社の機器が規制対象外である可能性を警視庁に何度も伝えたと証言したことも報道されている。
 判決は、捜査について警視庁公安部が通常要求される捜査を行っていれば、噴霧乾燥機が外為法の規制物件に該当しないことを明らかにする証拠を得ることができたと言えるから、3名を逮捕したことが国賠法上違法であるとしたのだった。 現在、控訴審に事件が係属中だ。今後もこうした違法な捜査・起訴が考えられる。
 経済安保版・秘密保護法案は、セキュリティ・クリアランスといった新しい単語を使っているが、その本質は経済安保版秘密保護法案だ。経済安保分野への秘密保護法の拡大は、経済や研究開発分野など広範な分野が秘密指定される。政府に都合の悪い情報が隠蔽され、知る権利が侵害され、民主主義の前提となる情報が得られない。秘密の範囲は曖昧で処罰範囲も広範であり、冤罪の温床となりかねない。その上、指定状況を監視する機関や指定解除の仕組みが欠落している。こうして軍事ブロック化を招き、戦争する国づくりの総仕上げとなり得るものだ。
 秘密保護法対策弁護団では「経済安保版 秘密保護法案に反対を!」などをのせたリーフレットを作成しているので拡散してほしい。また日弁連も意見書を出している。

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経済安保版 秘密保護法案に反対を!


         2024年2月

             秘密保護法対策弁護団

 岸田政権は、本年の通常国会に、セキリティ・クリアランス制度の導入などを盛り込んだ「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案」を提出しました。
これは、特定秘密保護法自体の改正ではありませんが、特定秘密保護法の特定秘密の対象となっていた4分野(外交、防衛、テロ、スパイ活動)に加えて、更に経済情報についても秘密とすることで秘密保護法制を拡大し、市民の知る権利の制限を拡大しようとする「経済安保版 秘密保護法案」です。
 私たち秘密保護法対策弁護団は、特定秘密保護法について、秘密指定が恣意的に拡大するおそれがあること、公務員だけでなくジャーナリストや市民も独立教唆・共謀・煽動の段階から処罰されること、最高刑は懲役10年の厳罰であること、政府の違法行為を暴いた内部告発者、ジャーナリスト、市民活動家を守る仕組みが含まれていないこと、適性評価によるプライバシー侵害のおそれが高いこと、政府から独立した「第三者機関」も存在しないことなど、ツワネ原則(国家安全保障と情報への権利に関する国際原則)にことごとく反していて根本的な欠陥があると考え、廃止もしくは抜本的改正を求めてきました。
国連自由権規約委員会も、第六回(2014年)・第七回(2022年)の審査で、日本政府に勧告をし続けています。
 私たちは、知る権利、言論・表現の自由、報道の自由、プライバシー権、ひいては民主主義を危うくする秘密保護法制強化の今回の動きに強く反対します。

【法案の概要】
 @ 重要経済基盤保護情報であって、公になっていないもののうち、その漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるため特に秘匿する必要があるものを、「重要経済安保情報」として秘密指定する。
 A 当該情報にアクセスする必要がある者(政府職員と民間人)に対して政府による調査を実施し、信頼性を確認してアクセス権を付与する(セキュリティ・クリアランス(信頼性評価)=適性評価)。
 B 刑事罰として、漏洩すると安全保障に「著しい支障」を与える恐れのある経済分野の情報を機密性の特に高い「特定秘密」として、漏洩した場合には、既存の特定秘密保護法を適用(10年以下の拘禁刑)する。一方、本法案では安全保障に「支障」を与える情報を「重要経済安保情報」に指定し、漏えいや取得行為について5年以下の拘禁刑や500万円以下の罰金刑などを科す。共謀、教唆、煽動段階でも処罰する。


島根原発2号機再稼働迫る現地から

       
 無責任な国の無責任な避難計画

 今年8月に島根原発2号機の再稼働が迫る3月3日(日)に地元松江市の松江テルサホールで再稼働を止める集会が約350人の参加者を得て開催された。

数の力で決まった容認

 2号機の再稼働が容認されたのは2022年の6月県議会での知事の「苦渋の決断」という同意表明であった。
 立地自治体の松江市と周辺自治体30キロ圏内にある島根県側の出雲市・安来市・雲南市と鳥取県側の米子市・境港市の容認意向を受けてのものだった。
 その理由は「電気代が安くなる」「雇用が確保できる」「地域が潤う」「避難計画は国のお墨付き」などでそれぞれが「再稼働はやむなし」と結論付けて新規制基準の信奉者たち(保守系議員と原発推進議員)の数の力で決まった。 
 中国電力が再稼働の運転時期を今年8月と表明したのは昨年の9月のことであった。 

身近に感じた能登半島地震

 集会で講演した大河陽子弁護士は松江市に司法研修生として1年在籍し東日本大震災の翌年には新任弁護士として鳥取県に着任。2016年に東京に転任するまで島根原発差し止め訴訟に係わり現在は2号機の運転差し止め仮処分裁判(広島高裁の審尋が2月19日に終了し結果を待つ段階)で「避難計画には実効性がない」ことを訴えている。
 奇しくも今年1月1日には能登半島でマグニチュード7・6の大地震が発生し家屋や道路が損壊しライフラインも止まり寸断された孤立集落の惨状を知るたびに複合災害時の原発事故に多くの県民が不安を抱いたに違いない。
 講演でのお話しはこうした不安を県民に与える国のお墨付きの避難計画の不備、欠落の杜撰さを次のように指摘している。

どうする?課題は山積み

 原発が立地する松江市の10キロ圏内には県庁、市役所、県警本部など多くの重要機関があり、避難対象地域の30キロ圏には全国で3番目に多い46万人が住むという特異な条件下で避難計画は極めて重要な問題である。
 にも拘わらず課題は山積みで、原発から1・4キロの鹿島病院をはじめ市内6ヶ所の放射線防護施設が土砂災害警戒区域内に点在している。
 在宅医療を受けている住民が屋内退避中に医療や介護を受けられる避難計画を策定していない。
 高齢化率34・5%の中で避難行動要支援者の支援者不足が未解決のままにある。
 福島第一原発事故で避難に4日間を要した双葉病院では見切り発車で受け入れ先を探すという過酷な避難で44名の患者が亡くなった。
 一方島根県の避難計画にはこの教訓を生かした具体的な計画や訓練がなく丸投げされた病院は実効性に不安を感じると困惑している。
 安定ヨウ素剤の服用も混乱の中では個々の判断になり受け取れない者も出る。
バス避難では台数確保以外にも被曝線量限度の1ミリシーベルト以下で協力要請とする原子力災害対策指針どおりに行動すると運転手の確保も困難になる。
 屋内退避や避難も熊本地震や能登半島地震の惨状を見れば明らか。
 建物の倒壊、道路の損壊、寸断など一ヶ月経っても全容が明らかにならない状況では無理。規制委員会ですら10日の記者会見でそれを認めている。

対岸の火事ではない原発事故
  
 東電福島第一原発事故では浪江町の「請戸の浜の悲劇」があった。
 3月11日の夕刻に浜を訪れ生存者を確認し「明日の早朝に助けに来るから頑張れ!」と伝えていた。
 しかし、翌朝の放射能放出で避難指示がだされ捜索が中止になった。再捜索が開始されたのは一ヶ月も経ってからだった。「原発事故さえなければ直ぐに捜索できて助かる命も沢山あった」と捜索隊員は無念を語っている。
 又、大河さんは東海第二原発運転差し止め判決の意義を紹介し、「当たり前で真っ当な判決だった」と評価、島根・鳥取両県の避難計画も同様に実現は不可能で人も町も守れる体制にはないと断じた。 
 そして、参加者には「実際に避難計画が実効性のあるものか防災マップの避難経路を辿り確認することが大事です。これではダメだと思えば声を挙げましょう!」と訴えて講演を結んだ。
 続いて4人の市民が登壇し避難が困難な地域環境、医療、アンケート結果について発言した。
 集会の最後はプラカードを掲げてのデモで再稼働反対を近隣住民に強く訴えた。


ウクイナからの即時停戦、完全撤退をもとめよう!(下)

 松里氏は、「いまの戦線を前提にした」停戦を主張している。しかし、「停戦」には双方の合意が必要であり条件が必要である。その条件とは、@戦闘が膠着状態にはいり動かないこと、Aロシアが侵攻をあきらめ、停戦が得策と判断するか、B侵略されているウクライナの人びとが主体性に判断し、納得ができるかどうかである。現在、戦闘はウクライナの反転攻勢が失敗しウクライナは態勢の立て直しに迫られている。一方、ロシアは東部の要衝アウジーイウカを占領し攻勢に転じている。首都への攻撃も続いている。大統領選後はさらに兵力を増強させ、夏には大規模な攻撃が行われる可能性が報じられている。ロシアは部分占領したウクライナ4州の完全制圧とさらに侵攻を拡大させるだろう。一方、ウクライナでは、ロシアの完全撤退、領土奪還、徹底抗戦の構えを崩していない。2024年2月の世論調査でも73%もの人々が「必要なだけいつまでも戦争に耐える」と回答している。「停戦」の条件は整っていないのが現状である。こういった状況の中で「今の戦線を前提にした停戦」の主張は侵略されているウクライナに一方的な譲歩を求めることになり、軍事侵攻の意図を隠さないロシアを利することになる。事実上、ウクライナに早期降伏を呼びかけているに等しい。
 前号で紹介した「世界」1月号「正義論では露ウ戦争は止められない」で松里氏は、「正義論を持ち込むと歴史の議論になり、きりがないので持ち込むべきではない」と述べている。では、全く「正義論」をもちださないのかというとそうではない。松里氏は、国連憲章や国際法など世界の平和的法理について解釈の変更を試みるのである。松里氏は、自身の新書「ウクライナ動乱」を紹介し「国際法上の-旧行政境界線が国境に転嫁する原則-は社会主義連邦の解体には適用できない」と述べている。この「旧行政境界線が国境に転嫁する原則」とは、民族自決権が「国連憲章第一条第2項(人民の同権及び自決の原則の尊重)」として書き込まれた後、国際政治の発展の中で1960年植民地独立付与宣言、1970年友好関係原則宣言、1975年CSCEヘルシンキ最終文章などによって確立されてきたものである。この中で、「独立国内の一部による、独立あるいは他の独立国との併合の一方的要求、『領土保全』の毀損は許されない」ことが確認されている。「独立した国は多数民族で構成されているのが普通であった。ここで民族自決(民族ごとの分離独立)を認めると際限のない離合集散を引き起こす危険があり、それを回避するための方策として現状承認原則の尊重が謳われた。」(国際法入門・山形英郎)ものであり、「国際法上の-旧行政境界線が国境に転嫁する原則」は平和構築のための重要原則である。
 旧ソ連邦の解体によって15の連邦構成共和国は平穏な形で分離が行われた。アブハジアなどの自治共和国やナゴルノ・カラバフなど自治州も90年代に停戦に持ち込まれた。2000年代に入り紛争が再燃するがそれぞれ個別の違う事情があり、「国際法上の-旧行政境界線が国境に転嫁する原則」が有効性が無くなっているわけではない。それを2008年のジョージアへの軍事侵攻、2014年のクリミア併合、ドンバス「2共和国建国」(第一次ロシア・ウクライナ戦争)そし、今回の2022年ドンバス「人民共和国」承認と軍事侵攻と力によって踏みにじってきたのがロシア・プーチン政権である。松里氏は、ロシア・プーチン政権による二重の意味での国連憲章違反を「社会主義連邦解体の国には適用できない」と述べて容認してしまっている。ロシア・プーチン政権の侵略の論理を擁護していることに無自覚であると言わざるを得ない。
 
国連安保理緊急会合でのケニア国連大使の発言の意義

 2022年2月21日、プーチン大統領がウクライナ東部の親ロシア派支配地域の独立を承認しロシア軍の進駐を決定したその日、国連安保理緊急会合が開かれた。その場でケニア国連大使は正面からロシアを批判している。
 以下、長文だが引用する。「ケニアと、ほとんどのアフリカ諸国は帝国の終焉によって誕生した。私たちの国境は私たちが自分で引いたものではない。ロンドンやパリ、リスボンなど植民地時代のはるか遠くの大都市で、彼らが分割した古くからの民族に何ら関係なしに、引かれたものだ。今日、アフリカのすべての国で、国境の向こう側には、歴史と文化と言語を深く共有す
る同胞たちが住んでいる。もしも独立の際に、我々が民族、人種、宗教の同質性に基づく国家を追求していれば、何十年も血にまみれた戦争を続けることになっていただろう。そうではなく、われわれは、受け継いだ(植民地主義者が引いた)線で国境を定めることに合意した。しかし、われわれはなお、アフリカ大陸の政治的、経済的、法的な統合を目指す。危険なノスタルジアで過去を振り返り続ける国民国家をつくるのではなく、われわれの多くの民族と人民の誰も見たことのない偉大性に向かう未来を選択した。帝国支配の後に形成され、破綻あるいは後退したあらゆる国には隣国の同胞との統合を渇望する人々が存在することを知っている。当然のことだし、理解できる。いずれにせよ、同胞と一緒になりたいと思わず、共通の目的をもちたいと思わないものがいるだろうか。しかし、ケニアは、そのような願望を力で追求することを拒否する。われわれは、滅亡した帝国の燃え残りかすから、新たな支配や抑圧に陥ることなく、復活を遂げなければならない。われわれは、人種、部族、宗教、あるいは文化を含むいかなるものが基礎となっているにせよ、領土回復主義と拡張主義を拒否した。われわれは、今日、それを再び拒否する。」
 アフリカ大陸は、多くの国が紛争を抱えておりその解決は容易ではない。そのアフリカのケニア国連大使の発言の意味は大きい。アフリカ諸国や中小諸国にとってロシアのウクライナ侵略は決して他人ごとではない。

ロシアの軍事侵攻3年目とウクライナ反戦

 2月24日ロシアの軍事侵略2年となった。この日、北海道、東京、名古屋、大阪他で「ロシアは侵略をやめろ!国連憲章を守れ!ウクライナに平和を!」の声が上がった。しかし、開戦1年と比べその規模は縮小し、メディアにも一部しか取り上げられなかった。これは、一つには、運動の側が戦争の長期化に伴い「2・24」が意識化されない状況が出ている事が反映している。また、和田氏や伊勢崎氏などの「今すぐ停戦」、鈴木氏や佐藤氏などの「即時停戦」、松里氏の「早期停戦」論などの影響もあるだろう。今、ウクライナの人びとは、「自分たちの事が世界から忘れられているのではないか」という危機感を抱いている。
 我々は、節々で運動を大きく取り組み、ウクライナを忘れない!ロシアの即時撤退!の声を上げ続けねばならない。憲法前文と九条、国連憲章を基軸にぶれることなく反戦・平和、反侵略の運動を続けてこう。


“オレンジ色の悪魔”とTSMC

 京都橘高校吹奏楽部が一昨年の台湾双十節に外国の団体として初めて招かれ、鮮やかなパフォーマンスを披露して一大旋風を巻き起こした。練習風景やバックステージを含め数十本の動画がYouTubeにアップされ、500万回近い視聴回数を記録したものもある。寄せられたコメントの“百看不厭”が熱狂ぶりを示している。共演した台北市立第一女子高級中学校儀仗隊はサーベルと模擬銃操作中心のミリタリー調、これと対照的であったことで一層印象深かったのだろう。確かに動−静−動の巧みな選曲と振り付け、確かな技量、絶やさない笑顔は魅力的で、私も何度も視聴した。ちなみに“オレンジ色の悪魔”は中国語では“橘色悪魔”、ユニフォームの色から来ている。
 その“オレンジ色の悪魔”が昨年末今度は玉山銀行等企業の後援で再び招かれ、高雄、台北でパレードや演奏会を行い再び大きな反響を呼んだ。玉山銀行と聞いて昨年10月の九条の会大集会での中野晃一さんの話を思い出した・・・台北で見かけたレンタル自転車。くまモンのマークが使われ「玉山」「玉山熊本熊」(くまモンです)「E.SUN」と書いてある。JCBが九州エリアでの観光交流を図るために玉山銀行と提携してくまモンのカードを作った。玉山銀行は福岡支店を開設、半導体企業の九州進出を支援する。半導体メーカー世界最大手台湾積体電路製造(TSMC)が熊本に建設中の工場が完成間近。1980年代日本の半導体企業が世界を席巻したが米国との半導体摩擦もあり衰退した。今や米中半導体戦争の焦点としての台湾。いま世界的に半導体不足になっている。半導体はそれこそデュアルユース、経済的にも軍事的にも必須。高性能半導体は台湾製、バイデンは半導体の国産化に力を入れている。台湾依存への危機感がある・・・と。
 「世界」3月号土屋直也「米中半導体戦争の中のTSMC」によれば、TSMCは日米独に生産拠点を作っている。岸田政権はTSMCの熊本第二工場建設費用の三分の一弱約7500億円の補助を2023年度補正予算に組み込み、現在建設中の第一工場でも建設費の半額近い4760億円の補助を出している。熊本の第一工場で製造される半導体は一二ナノでオールド世代の半導体。第二工場では六ナノを生産する可能性がある。TSMCは最先端の二ナノ半導体の開発に成功しているとされるが、これは台湾高雄市で建設中の最新工場で量産化に挑むと報じられている。2023年中国のファーウェイが七ナノ半導体を搭載するスマートフォンを発表した。米国はこのような最先端半導体を開発させまいと製造装置の禁輸措置を取っていたが包囲網を突破された。七ナノ半導体の製造にあたったのは中芯国際、開発したのはTSMCの元技師長だった人物。米国はF-35戦闘機に七ナノ半導体を搭載している。TSMCに対し管理責任を問い、三ナノ、二ナノの技術漏出の阻止を求め生産を米国内でと求めるだろう。「TSMCは、否応なく米中の半導体戦争にさらに深く巻き込まれていくのだろう」
※「ナノ(nano)」は、古代ギリシャ語で「小人」の意味を持つ「ナノス(nanos)」に由来する。 半導体回路の線幅に使われる単位「1ナノメートル(nm)」は10億分の1メートルに相当する。  (新)


せんりゅう

     自民国会鬼城の如し

          指鹿為馬キックバック答弁

     政倫審事前陰謀答弁

          み猿きか猿いわ猿ざる答弁

     「新しい資本主義」でもっと弱肉強食

          ウソ吐きてウソ重ね軍拡へ

     聴く耳はアメリカさんのためにある

  
               ゝ  史
  2024年3月


複眼単眼

        
時間読みの岸田退陣

 2024年1月30日、岸田文雄首相はその「施政方針演説」でこう述べた。
 「先送りできない課題についても取り組んでいきます。まずは憲法改正です。衆参両院の憲法審査会において、活発な議論をいただいたことを歓迎します。国民の皆さまにご判断をいただくためにも、国会の発議に向け、これまで以上に積極的な論議が行われることを期待します。また、あえて自民党総裁として申し上げれば、自分の総裁任期中(9月30日)に改正を実現したいとの思いに変わりはなく、議論を前進させるべく、最大限努力したいと考えています。ことしは、憲法改正条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速してまいります」と。
 しかし3月17日に予定されている自民党大会の運動方針案にはこう書いてある。
 「来年は、自由民主党結党から70年の節目の年である。本年中にわが党の党是である憲法改正実現のため、国民投票を通じ、主権者である国民の判断を仰ぐことを目指す」と。
 おやおや、いつの間にか改憲が「年内」になった。ここにはあきらかに3か月の差がある。この理由について、運動方針案には一言の説明もない。
 岸田氏の「任期中の改憲」についてはこの間、これは日程的に考えても無理だと思った中谷元・衆院憲法審査会筆頭幹事や、上川陽子憲法審査会幹事(当時)が、昨年の憲法審査会でしばしば助け舟を出して、「岸田総裁の言う任期中とは、今の任期中だけに限らない。。次の任期もある」と述べたが、岸田首相は直後に「そうではない、今の任期中のことだ」と言い張った。
 筆者は、これを岸田氏が自民党総裁に立候補した時から「不可能だ」「岸田の妄想だ」と指摘してきた。改憲の実現の期限だけが前のめりに設定されて、まともに改憲論の具体化のスケジュールが検討された節がないからだ。
 案の定、ぎりぎりのここにきて、突然先送りされた。そして、3か月先送りしても、それが実現する保証がなにもしめされていない。新運動方針は「決意」を語っているだけだ。
 筆者はたびたび指摘してきたことだが、岸田氏が空証文に過ぎない「任期中の改憲」にこれだけ固執することには理由がある。
 党内第4派閥(宏池会)の領袖に過ぎない岸田氏は党内最大派閥の安倍派(清話会)の支持なしに自民党総裁になることは不可能だった。そのためには宏池会の伝統的イデオロギーの「リベラル派」の立場を捨て、清話会の改憲派の立場に同調することを担保にして、総裁選での安倍派の支持を獲得した。
 だからこそ、その空手形の「任期中の改憲」をないがしろにできなかった。岸田氏は自らの総理総裁の地位を維持するためには党内で2割は固いと言われる極右の岩盤支持層の支えが必要だった。
 ぎりぎりまで引き延ばして先送りした岸田氏の改憲問題の姿勢をこの極右派はどうみるだろうか。
 折から自民党は裏ガネ問題で派閥の解消など、大騒動だ。能登の大震災への政府の対応は完全に立ち遅れ失敗だった。岸田内閣の支持率は1割台だ。もはや末期症状だ。岸田は裏ガネ問題で安倍派5人衆など対抗馬を潰したように見えるが、すでに自民党は戦国時代だ。これを切り抜けて政権を維持するためには、改憲への暴走か、朝鮮問題(拉致問題)の打開という切り札しかない。
 これは容易ではない課題だ。岸田首相の退陣は時間の問題となった。 (T)


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