人民新報
 ・ 第1433号統合526号(2024年5月15日)

                  目次

● 衆院補選全敗・窮地に立つ岸田政権

        軍拡増税改憲の自民党政治を変えよう

● 呉市を再び軍都、軍港にしてはならない

● タヌキとエンクロージャー

● 2024年度最低賃金改定

        物価高騰を上回る大幅な引き上げを勝ちとろう!

● イスラエルは今すぐ虐殺やめろ パレスチナ連帯

        残虐さ増すネタニヤフ イスラエル・米国の孤立化

● 決して忘れない!

        JR福知山線脱線事故 朝日新聞阪神支局襲撃

● メーデー集会

        労働者の団結で、生活と権利、平和と民主主義を守ろう

● ロシアのウクライナ侵攻に関する階級的一考察 

● せんりゅう

● 複眼単眼  /  改憲反対の世論と岸田改憲の激突





衆院補選全敗・窮地に立つ岸田政権

        軍拡増税改憲の自民党政治を変えよう


衆院補選・自民党全敗

岸田自民党は、4月衆院3補選(東京15区、島根1区、長崎3区)で全敗した。
 茂木幹事長は、「大変厳しい選挙結果だったと受け止めている。不断の改革努力を重ね、課題を解決することで、時間はかかると思うが国民の信頼を回復できるよう努めていきたい」と述べ、政治資金規正法の改正などを通じて、信頼回復を図り、次の衆議院選挙に向けて態勢の立て直しを進めていくとしているが、深刻な危機に陥っていることはたしかだ。補選では、自民党だけでなく、自民党すりより勢力の維新の会、国民民主党、小池百合子も少なからぬ打撃を受けた。
 衆院補選の特徴の一つは、投票率のきわめて低かったことだった。東京15区・40・70%(21年衆院選と比べ18・03ポイント減)、島根1区・54・62%(同6・61ポイント減)、長崎3区・35・45%(同25・48ポイント減)。このことは自民党の金権腐敗体質に対する不満の高まりとともに、政権交代への声が十分には高まってはいないことのあらわれでもある。
 市民と野党の強固な共闘で、おおくの人びとに政権交代の期待を現実化する体制をつくりあげることが求められている。

岸田外交・より危険水域に

 岸田はこの窮地から脱却を外交に見出そうとしている。4月訪米のあと、5月1日〜6日にフランス、ブラジル、パラグアイと立て続けに首脳会談を行った。 岸田の思惑は4月11日におこなわれた米国連邦議会上下両院合同会議における演説「未来に向けて 〜我々のグローバル・パートナーシップ〜」に鮮明に現れている。「世界は米国のリーダーシップを当てにしていますが、米国は、助けもなく、たった一人で、国際秩序を守ることを強いられる理由はありません。…米国は独りではありません。日本は米国と共にあります。…日本は長い年月をかけて変わってきました。第二次世界大戦の荒廃から立ち直った控えめな同盟国から、外の世界に目を向け、強く、コミットした同盟国へと自らを変革してきました。日本は国家安全保障戦略を改定しました。インド太平洋地域の将来の安定に関する不確実性が、私たちの政策、さらには考え方自体を変える契機となったのです。私自身、日米同盟を一層強固なものにするために、先頭に立って取り組んできました。」
 同時に、中国などを名指して批判した冷戦思考そのものの演説だった。
 しかし、岸田の反中国の思いとは違って、米国バイデン政権の対中政策は、対決状況が強まると当時に、国務長官、財務長官を訪中させるなど両国の頻繁な対話を継続させている。欧州も中国との対話は継続させている。

自民党に政権は任せない

 日本社会にはさまざまな面において衰亡の兆しがみえていると内外の識者が指摘している。人口減少・少子高齢化・総人口の減少をはじめ、都市への人口集中・地方の衰退、社会インフラの老朽化、経済の長期的低迷、低い労働生産性、教育面での立ち後れ、格差拡大・貧困化、気候変動、環境問題そして近い将来に予想される大地震・自然災害などなど深刻かつ極めて解決困難なものばかりだ。
 これらを解決するのが政治・政権である。税金を有効に活用する予算とその実行にかかっている。しかし現実はそうなっていない。この主要な原因は長期にわたる自民党政権によるものである。とりわけ軍事予算の大幅拡大、大企業・金持ち優遇税制は課題解決の障害である。
 気象庁は、「南海トラフ地震」について「概ね100〜150年間隔で繰り返し発生しており、前回の南海トラフ地震(昭和東南海地震(1944年)及び昭和南海地震(1946年)が発生してから70年以上が経過した現在では、次の南海トラフ地震発生の切迫性が高まってきています。」としている。NHK「災害列島 命を守る情報サイト」は、「国は、南海トラフの巨大地震が起きると、震度7の激しい揺れや10メートルを超える大津波が太平洋沿岸を襲い、最悪の場合、死者は32万人を超え、経済被害も220兆円を超えると想定しています。一方で、対策を進めれば被害を大幅に減らせる可能性があります。」としている。
 だが政府の対策は全く不十分であり、大増税による大軍拡に走っている。これが自民党政治だ。

 衆院補選の成果をいかし、自民党政治を終わらせるための政策、共闘態勢を強化して、岸田政権を打ち倒し、自民党政治を終わらせよう。


呉市を再び軍都、軍港にしてはならない

 4月21日(日)、呉市中央公園ふれあい広場で、市民団体「日鉄呉跡地問題を考える会」が主催する軍備拡張に反対する市民県民集会が、約400人の参加者で開かれた。
 主催者挨拶に立った西岡由紀夫共同代表は、「跡地の防衛拠点化は自衛隊の強化になり、戦時中のような標的になる危険性に繋がる。戦前の軍都、軍港に再びしてはならない。平和な呉を求めて声を挙げ続けよう!」と訴えた。連帯の挨拶では5人の女性が登壇し、呉空襲や軍転法制定投票の体験談などが語られた。
 その後参加者は、「県民・市民の声を聞け!」「NO!呉の軍事拠点化」と書かれたプラカードや幟を掲げて、JR呉駅までパレードをおこなった。
 この会の結成は僅か2週間ほど前の4月7日(日)、それほど緊急を要する事態であった。「ビューポートくれ」で開催された設立総会には、準備会の「防衛拠点化は呉の自衛隊への依存度を高め、標的になる危険性が増す。平和的な港湾都市建設を目指す旧軍港都市転換法(軍転法)の理念に反する。子供たちに平和な呉を引き継ごう」との呼びかけに応じた市民約120人が集まり、意見交換を行い、21日(日)に大規模な市民集会を開くことや、県内の市民団体との連携の他、地区での勉強会の開催などを決めた。

日鉄呉跡地問題とは何か

 ことの発端は、ひと月前の3月4日(月)、防衛省が呉市と広島市に「日本製鉄呉跡地(昨年9月に閉鎖)を多機能な複合防衛拠点に整備していきたい」と、130ha(ヘクタール・マツダスタジアム36個分)の跡地の一括購入とその利用を申し入れたことに始まる。その跡地に併設する、現在の海上自衛隊呉基地80haと合わせると2・6倍の210haとなり巨大な拡張整備となる。
 市民にとって、寝耳に水だった翌5日(火)の新聞報道では、その活用について、海上自衛隊呉基地のそばにあり、複合防衛拠点として、「民間誘致を含む装備品などの維持整備・製造基盤」、「ヘリポートや物資の集積場などの防災拠点と、艦艇の配備、訓練場などの部隊の活動基盤」、「岸壁などを活用した港湾」、の三つの機能を想定している、とある。
 この報道に市民も敏感だった。夕方にはJR呉駅前で平和団体ピースリンク広島・呉・岩国の6人が緊急の抗議行動を行った。その他、総がかり行動・呉や県原水協なども抗議行動や要請行動を重ねている。
 3月11日(月)にあった呉市議会の協議会で、防衛省(地方協力局)村井勝総務課長は「呉は海田(陸上自衛隊)に近く、佐世保(米海軍基地)や岩国(米海兵隊基地)と連携し易い場所」だから「装備品の整備や製造、補給の拠点にしたい」と説明している。つまり、台湾有事などを見据えた日米との共同作戦において、呉は武器、弾薬、食料などを供給する兵站(へいたん)の要になると同時に、真っ先に攻撃目標になる危険を孕むことになる。
 しかしながら多くの議員は、経済の活性化を期待し好意的な発言をしている。それでも中には、「戦前呉には海軍の基地があったから酷い空襲にあった。戦災復興のために、『旧軍港市転換法(軍転法)』を成立させた。『平和産業都市』の理想から遠ざかっているのではないか」と理念を説く議員もいた。

旧軍港市転換法(軍転法)とは 

 呉は1945年3月19日〜7月24〜28日の呉沖海空戦によって海軍が壊滅するまで14回の空襲を受けました。とりわけ7月1〜2日の呉市街地夜間空襲において、周辺部から焼かれて逃げ場を失った2,000人余りの市民が無残な死に追い込まれ、市街地は焼け野原となりました。戦後、海軍も工廠もなくなり人口は15万人に減り、失業者があふれるなか、旧軍港市転換法(軍転法)を成立させて復興してきました。
 軍転法は国会で議決された後、1950年6月4日に住民投票が行われ、投票率82.2%、賛成票95.8%で成立。呉市民は圧倒的な賛成票で軍港都市を過去のものにしました。
第一条(目的)には、「平和産業港湾都市に転換することにより、平和日本の実現の理想達成に寄与する」という目的が示され、第八条には、「市長及び住民の責務」が示されています。すなわち、「市長は、その市の住民の協力及び関係諸機関の援助により、平和産業都市を完成することについて、不断の活動をしなければならない」と、記されています。<日鉄呉跡地問題を考える会資料より> 
この軍転法は、日本国憲法第八章「地方自治」の第九十五条で特別法として、今でも保障されています。呉市にNHK記者として勤務経験のある池上彰氏の著書「超訳・日本国憲法」での解説には、「これは、戦前に軍港を持っていた四つの市(横須賀市、呉市、佐世保市、舞鶴市)を対象にして、『平和産業都市』に転換するため、国有財産である軍用施設を安く払い下げることを可能にする法律です。四つの都市でそれぞれ住民投票が実施され、いずれも過半数の賛成を得て法律が成立しました。これらは戦後復興のために特別に制定された法律です。」とある。

ネバーギブアップの精神で

 
 3月11日(月)の呉市議会への説明会で新原市長は「防衛省の話を丁寧に聞く」としていたが、その後、市民による情報公開請求で、昨年の8月と11月に旧軍港市4名の市長と、同4名の市議会議長らが、防衛省に、「防衛生産基盤強化」の要請に出むくという驚くべき事実が明らかになりました。新原市長は呉市民の意向を聞くことなく、整備案を進めていたのです。〈市民県民集会宣言より〉
 この新原市長はインタビューに、「戦後、呉に拠点を置いた海上自衛隊が日本の独立と安全を守ってきた。その誇りが呉市民に、そして私にも強くある。跡地活用として、市民が誇りに思える場所となることが大切である。」と答えている。
 翻って、戦後復興当時の鈴木市長は、横須賀市、佐世保市、舞鶴市に呼びかけ、旧軍港市転換法(軍転法)の制定に奔走しています。その後、呉市は市民運動の働き掛けもあり、折に触れて市報で広報していました。しかし、先の市議会説明会で軍転法に言及した議員が一人だけということに正直驚きました。新原呉市長、呉市議会には軍転法の理念を蔑ろにするな!と強く求めなければなりません。
 2022年12月26日、岸田政権は、「安保3文書(国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画)」の閣議決定を強行しました。敵基地攻撃能力の保有や、軍事費のGDP2%(5年間で43兆円)引き上げなどを明記しました。自衛隊基地の強靭化も盛り込まれています。こうした大軍拡政策への流れの一環として日鉄呉跡地問題はあると思います。
 最後に、21日(日)の「日鉄呉跡地問題を考える市民県民集会宣言」から引用しておきます。
 「ネバーギブアップ」、これは呉市音戸町出身で被爆者運動の先頭に立ち続けた坪井直さんの言葉です。
 南西諸島で進められている戦力配備と住民の闘いを描いた映画、「戦雲」の三上智恵さんは言います。「いったん土地を渡せば、どんな施設が造られても地元は文句を言えなくなる。情報は隠され、検証も難しくなる。」と。
 そうなる前に、今、声をあげましょう。踏まれても踏まれても、たくましい芽を出す麦のように、子供たちの未来のために、「平和の準備」を全国の仲間と共に続けていきましょう!
 ネバーギブアップ! 


タヌキとエンクロージャー

 造成されてから半世紀の団地に住んでいる。近くに整備された小川沿いの緑道があり、よく散歩に出かける。そこで先日タヌキに遭遇した。初めは犬かと思ったが首輪はしてないしどうも様子が違う。通りかかった散歩の犬がワンワン吠えても動じる気配もない。それからは何度も見かける。家族なのか5匹でいたことも。以前からリスも頻繁に目にするようになった。家の窓からツーッと電線を伝っていく姿が見えてびっくりしたことも。そういえば数日来鶯のきれいな鳴き声がよく聞こえる。前はこんなに近くで囀ることはなかったのに。
 団地の小学校はだいぶ前に3校から2校に統廃合され、中学校も数年前統廃合で1校になった。私の属する自治会では子ども会が数年前に解散した。かつては3桁いた小学生が10数人となったためだ。遊びに興じる子どもの歓声がめっきり減少し、人影も多くは高齢者、敏感に人間界の衰退を察知し、野生がじわじわとすり寄っているのかもしれない。各地で報じられるクマの出没とも無縁ではなさそうだ。

消滅可能性市町村
 「人口戦略会議」というところが「消滅の可能性がある」744市町村の一覧を公表し、マスコミでも大きく取り上げられた。人口戦略会議副議長の増田寛也日本郵政社長が座長を務めた「日本創生会議」は14年に消滅可能性のある896自治体を公表しセンセーションを巻き起こした。果たしてこれらが地方消滅に危機感を持ち、食い止めねばという使命感から公表されたものかどうか甚だ疑わしい。いったいどんな「戦略」を描こうとしているのか?むしろ危機を煽り、地方をパニックに陥らせてその隙に何かをたくらむものなのではないのか。「財務省は4月9日、財政制度等審議会の分科会を開き、能登半島地震の復興に向けて『コンパクトなまちづくり』を提言。人口減少地域の将来性やインフラ維持の負担を考慮すべきだと訴えた。 念頭にあるのは『コスト意識』だ」「そもそも、能登では復興どころか、復旧も思うように進んでいない」(4月11日 日刊ゲンダイDigital)。要するに消滅可能な市町村にはこれ以上“無駄な”金をかけるなという世論誘導ではないのか。惨事便乗型資本主義(ショック・ドクトリン)の一環なのだと思う。
 「人口減に対処して資本家たちが採用したのは、21世紀における新しい『囲い込み』でした。都市部に資源を集中し、雇用を集めて、そこを人為的に人口過密にする。一方で、地方を過疎地・無住地化するのです。それしかもう資本主義が延命する手立てがないからです。ですから、資本主義末期には、人間が棲息できる地域は都市部だけに限定されます。過疎地・無住地には生産性の高い事業が展開される。農業が可能なところでは企業による大規模農業が行われ、もう人が住まなくなった土地では地平線まで太陽光パネルが敷き詰められ、風力発電の風車が林立し、原発や産業廃棄処理場が作られる。そういうディストピア的光景が展開することになると思います。この『ディストピア化』は各地ですでに始まっています」(内田樹・石川康宏「若者よ、マルクスを読もう 最終巻 甦る『資本論』」―かもがわ出版。このシリーズは中国語・韓国語に翻訳され、中国共産党中央紀律委員会の推薦図書に選定されている)。

マルクスの怒り

 内田が書いている、「マルクスをして『資本論』を書かしめたのは(『共産党宣言』からずっと変わりませんが)、この世の中の不正不義に対する激しい怒り(原文傍点)からです。そして、僕が読んだ限りでは、第24章(注「いわゆる原初的資本蓄積」)がマルクスの怒りが極点に達している箇所のように思われます」「実際に読んでみると、その半分近くは他人が書いた統計や報告書の引用なんです。その多くは当時の行政官や医師や社会活動家のレポートです。そして、マルクスが引用するのはほとんどすべてが労働者たちの身体にかかわるものなのです(原文傍点)」と。
 余談だが私が初めて「資本論」を読んだ際印象深くて今でも覚えているのは、当時のアメリカの新聞広告の引用だった。白人がネイティブの頭皮に懸賞金をかけている、それも男、女、子供別の……西部劇映画で白人の頭皮を剥ぐのがネイティブと刷り込まれていたから驚いた。ちょうどその頃ベトナム戦争の真っ最中で、米兵が殺した解放軍兵士の耳を切り取っているというニュースが流れ、妙に納得した覚えがある。(新)


2024年度最低賃金改定

        物価高騰を上回る大幅な引き上げを勝ちとろう!

 2024年度の最低賃金改定の審議がもうすぐ始まる。6月中旬に岸田政権による2024年度の経済財政運営と改革の方針いわゆる骨太の方針が出され、その中で今年度の最低賃金に対する考え方と方針が示される。それを受けて、6月下旬の中央最低賃金審議会で武見敬三厚労大臣が今年度の最賃改定に関する調査審議を求める諮問を行い、2024年度の最低賃金改定に関する審議が開始となる。

格差が拡大した24春闘の結果
  

 4月16日に連合が24春闘の第4回集計結果を公表した。定期昇給を含めた平均賃上げ率は5・20%となり、33年ぶりの5%台となった。300人未満の中小企業では平均4・75%となった。24春闘の特徴は「満額回答」、「組合要求を上回る回答」であり、この結果は岸田政権の「賃金と物価の好循環」を追い風に政労使一体がもたらしたものと言える。中小企業は賃上げが進むものの、高騰する原材料費や人件費を十分に価格転嫁できず、大幅な賃上げができず、大企業と中小企業との賃金格差がさらに拡大した。

春闘とは無縁の圧倒的多数の未組織労働者の存在

 24春闘の大企業と中小企業の賃上げは格差があるものの、労働組合があっての賃上げである。日本の労働組合組織率は23年度で過去最低の16・3%、企業などで働く労働者のうち、労働組合に入ってない労働者はおよそ5、000万人にも及ぶ。労働組合に加入しているパートタイム労働者は141万人で組織率は推定で8・4%となっている。中小企業に占める労働者数は約7割であり、全雇用者数に占める非正規率は37%、2、101万人にもなる。コロナ禍で大きく取り上げられたエッセンシャルワーカーは24春闘ではそのワードすら出てこなかった。社会的に不可欠な仕事を担うエッセンシャルワーカーは非正規でしかも女性労働者が多いのが特徴だ。これらの労働者は「16・3%」という組織率の中には含まれず、春闘とは無縁の存在で、「満額回答」も「組合要求を上回る回答」もない。
 これらの労働者の賃上げをどうしていくのかが問われている。「満額回答」を勝ちとった大手民間労働組合が社会的労働運動として中小企業労働者の賃上げ、ましてや労働組合に組織されていない労働者の賃上げに目を向けることはない。

最低賃金の必要性と重要性

 労働組合に組織されずに春闘とは無縁の圧倒的多数の労働者の賃上げは勝ちとっていく方法は最低賃金の引き上げしかない。2023年度の最低賃金の引き上げ額の影響率は19・2%と過去最高となり、最賃近傍で働く労働者に大きな影響を及ぼす。
 最低賃金は言うまでもなく、「法定最賃」であり、労使交渉と労使自治で決まる賃上げではなく、唯一国(政府)が決めることができる「賃金」である。岸田首相が「賃金と物価の好循環」、「物価上昇を超える賃上げ」を掲げるならば、真っ先に物価高騰を上回る最低賃金の大幅な引き上げを行わなければならない。
2023年度中央最低賃金審議会目安に関する小委員会によると最低賃金近傍の労働者では、過去1年間で賃金が上昇した時期は4月(20・3%)より10月(29%)が最も多くなっている。10月の最低賃金の改定の重要性が一段と高まり、その意味では“第二の春闘″と言っても過言ではない。

最低賃金改定を前に

 連合は4月16日、最低賃金の引き上げを求める要請書を厚生労働省に提出した。この要請は「春闘での賃上げの流れを切らさないためにも」ということで、昨年より1か月以上早いものとなった。要請書は地域別最低賃金の水準について、国際的な最低賃金の流れが相対的な貧国水準(一般労働者の賃金中央値の60%など)が重視されていることを念頭に置きつつ、中期的な大幅な水準引き上げをめざすこと、地域別最低賃金の早期発効、労務費の上昇分の適切な価格転嫁に向けた対応等を求めている。
 一方で、日本商工会議所や全国商工会連合会など中小企業団体は4月18日、政府に対し、最低賃金に関する要望を提出した。これは、ここ数年、物価高を背景に最低賃金の引き上げが続く中で、今年の改定論議が本格化するのを前に、「地域経済の実態を踏まえない引き上げが行われないよう」に牽制するためのものである。
 全労連・国民春闘共闘は、24春闘のとりくみの一環として4月10日、「最賃ビックアクション」を全国でとりくんだ。東京では厚労省前で官民の労働組合320人が結集し、全国一律への法改正の実現、物価高騰を上回る大幅な引き上げを求めて、行動した。全国各地域でストライキやデモ、街頭宣伝を展開した。
 全国一般全国協や下町ユニオン、生協労連、郵政ユニオンなどでつくる「最低賃金大幅引き上げキャンペーン委員会」は3月18日、全国一律1、500円以上の最賃の早期実現、低賃金労働者のための年2回の最賃改定などを求めて、厚労省に対する要請と院内集会をとりくんだ。

物価高騰を上回る大幅引き上げをめざして

 2023年度の最低賃金改定は中央最低賃金審議会が示した目安額(全国加重平均)1、002円、41円を引き上げに対して、地方最低審議会の議論を経た結果、最低賃金(全国加重平均)の額は1、004円、引上げ率は4・5%、引上げ額は43円で過去最高となった。24県で目安を上回る答申が出された。しかし、全国加重平均は岸田政権の掲げた「1、000円達成」はクリアしたものの、1,000円を超えたのは8県のみで、39県は1,000円未満であり、800円台も11県にも及ぶ。
 この2年間の物価高騰により、実質賃金は2月までに23か月連続でマイナスとなり、物価上昇に賃金の伸びが追いついていない状況が続いている。政府が、物価高騰対策として続けてきた電気・ガス料金の負担軽減措置が5月の使用分までで、いったん終了する。
また、歴史的な円安は約4か月後に影響が出るといわれ、秋には値上げラッシュが予想される。
 2024年度の最低賃金の改定に求められるのは、物価高騰を上回る大幅な引き上げであり、最低でも24春闘における定昇を含む平均賃上げ率5・20%を超える引き上げである。さらに、地域別最低賃金1、000円以下の解消、最低賃金の国際的水準への引き上げ、地域間格差の是正、中小企業対策などは当面解決すべき重要課題である。昨年度は地方のとりくみによって、全国加重平均と引き上げ額を押し上げた。今年度はさらにそのとりくみを強めていかなければならない。そのためにも幅広い共闘がカギとなる。


イスラエルは今すぐ虐殺やめろ パレスチナ連帯

        
残虐さ増すネタニヤフ イスラエル・米国の孤立化

イスラエルの蛮行と米国


 イスラエル・ネタニヤフ政権はパレスチナの人びとに対する虐殺・抑圧を拡大している。その残虐さは日増しに強まっている。ネタニヤフ政権の中枢を担う右派勢力の狙いは、パレスチナ人の絶滅を図るヒトラーばりのジェノサイドそのものであり、5月9日には、東エルサレムにある国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の本部の建物が放火されるなどの異常な行為を強行している。
 いま、ガザ人口の半数以上の120万人が避難しているエジプト国境に近いラファにイスラエルは大規模な攻撃作戦を行っている。さらに多くの犠牲者がでるのは必至だ。さすがにこの軍事行動に対しては、米・バイデン大統領も「そのような作戦に物的支援を提供したくない」と言っている。バイデンはハマスを最終的に打倒するために、イスラエルへの協力を継続する政策を続けているが、それはラファ作戦が国際的な非難を招くことになり、目標の達成には不向きだというのだ。また11月に大統領選をひかえるバイデン票のゆくえにも悪影響をあたえる心配があるからだ。バイデンは、ラファ市での作戦に使用される可能性があるとの懸念から、イスラエル軍がラファに進軍すれば、イスラエルへの武器供給を停止すると警告し、米当局は航空爆弾3500発の供給を停止するという。こうしたバイデン政権に対してイスラエルは猛反発している。
 しかし、これまでアメリカは、中東でのアメリカの支配を維持するために、イスラエルに毎年38億ドル(約5900億円)の軍事支援をしてきたが、くわえて、140億ドルの軍事支援を提供する予算案を可決しているのである。ブリンケン国務長官などの「仲介」工作も、イスラエルに国際的批判をうけないように「もっとうまくやれ」と指示しているようなものだ。それを見越して、ネタニヤフは虐殺を拡大しる。

広がるパレスチナ連帯運動

 ネタニヤフ政権それを支えるバイデン政権に対する怒りの声が全世界的に広がっている。アラブ・中東地域やイスラム教圏はもとより、欧米諸国そして日本でも、イスラエル・アメリカを糾弾し、パレスチナに連帯する運動がおおきなもりあがりを見せている。イスラエル本国でも政権批判の運動がおこなわれ、ユダヤ人からもパレスチナ連帯の声も拡大している。
 とくに学生の動きは活発だ。米ニューヨークのコロンビア大では、イスラエルによるパレスチナ・ガザでの戦闘に反対する占拠がおこなわれ、警官隊が校舎に突入して多数の学生を逮捕した。運動は他の大学にも波及し、それに市民、政治家も参加してきている。欧州でもイギリスのケンブリッジ大学、フランスのパリ政治学院などの大学をはじめイスラエルのジェノサイド反対の行動がひろがっている。日本でも、東大や京大、早大などでも同様の動きが起こっている。
 昨年の10月以来、総がかり行動実行委員会も参加する「パレスチナに平和を!緊急行動」によるイスラエル大使館抗議をはじめさまざまな闘争がとり決まれてきた。市民、労働者、学生そして在日の外国籍の人たちの共同した抗議行動も継続している。
 この間の動きとしては、4月21日に、パレスチナにルーツを持つ人を含む500人東京・池袋駅周辺で、「今すぐ停戦。虐殺やめろ」「パレスチナ連帯」と声をあげるデモ行進が行われた。
 5月11日には、渋谷駅周辺での緊急アクション〜インティファーダ・マーチが行われた。

国連総会でパレスチナの正式加盟が圧倒的多数で採択

 アメリカの支持をうけてパレスチナ人の権利を全面的に無視・抑圧し中東地域の覇権を拡大するイスラエルの不法・不当な姿は今回の事態の中でますます明らかになった。
 国連の安全保障理事会は4月18日、パレスチナの国連加盟の勧告を求める決議案の採決を行ったが、常任理事国の米国が拒否権を行使して否決された。しかし、5月10日には国連総会はパレスチナの正式加盟を承認し、安全保障理事会に「この問題を好意的に再検討する」よう勧告する決議案が圧倒的多数で採択された。
 イスラエルのジェノサイド反対!
 パレスチナに自由と独立を!


決して忘れない!

        
JR福知山線脱線事故 朝日新聞阪神支局襲撃

 尼崎市ではこの時期(4月から5月)毎年2つの催しが開催されている。
 JR福知山線脱線事故犠牲者を追悼し、JRの責任を追及する集会と朝日新聞阪神支局襲撃による小尻智弘さんの死を追悼し、表現の自由を考える続ける集会である。

生命と安全を守る4・27集会

 106人の死者と562人の負傷者を出した福知山線脱線事故が2005年4月25日に起きて19年が経過した。事故の犠牲者を追悼し、JRの責任と安全を追及する集会は事故犠牲者の遺族を中心に4月25日、事故現場で毎年行われてきた。今、事故現場には事故を示すマンションを取り壊した後に慰霊碑が建てられている。何年経っても遺族の悲しみは癒えるものではないだろう。その一部をマスコミの取材を通して伺い知ることができる。負傷者の人生を一変させるような重い後遺症を負い続けている人も多い。この慰霊祭と並行して4月27日、福知山線脱線事故とJRの責任を問う集会が尼崎小田南生涯学習プラザで開催された。中心テーマは地脇聖孝さん報告の「国鉄改革」から活性化法まで〜つづく地方切り捨て〜。福知山線脱線事故の背景と原因を改めて国鉄民営化から今日までの鉄道政策の流れの中で問い直すものであった。そして鉄道輸送の現状と地方の採算の取れない路線の廃線化の進行について報告された。
 途中で流された日勤教育という名の労働者いじめと責任転嫁の実態の映像は生々しく事故時の運転士が追い込まれていった事情は改めて鬼気迫るものであった。
 その後国労大阪からの事故後から今日までのJR西日本の現場実態についての報告、リニア市民ネットからの現状報告、不当弾圧から一部無罪判決を勝ち取った関西生コン支部からの報告と今後の決意 JAL争議団からの継続されている闘いの報告がなされた。

朝日新聞阪神支局襲撃から37年 5・3青空表現市

 1987年憲法記念日に朝日新聞阪神支局が襲撃されてから37年が経過した。犯人はわからないまま2002年に時効となっている。尼崎を中心に阪神間の市民がこれを忘れまい、攻撃に小さく委縮しないと小尻智弘記者を追悼する集まりを表現市としてこの間開催してきた。襲撃現場の西宮市では朝日新聞労組による追悼集会が毎年開催されてきた。表現市は参加者が見守る中、木割大雄さんのガザに題材を取った川柳の墨書で始まった。一貫して関わってきた指紋押捺で小尻記者の取材を受けてきた金成日さんから川柳の説明がなされた。
 これまで幾たびも墨書を通して小尻さん殺害に対して抗議と表現を表してこられた木割さんである。これまで生前の小尻記者に取材を受けた人々を中心に歌や演劇、講演など多彩な方法で長い表現市の開催を続けてきた、
 この37年間の青空表現市の映像が会場に流された。その中には大テントの中で講演する山川暁夫さんやシベリア抑留体験を語る砂場徹さんの在りし日の姿も見られた。
 阪神尼崎駅前で開催されていた時は多くの市民が小尻記者の写真に花をささげていた様子も貴重な映像である。。
 この日、現在のイスラエルによるガザ攻撃という非常事態の中でイスラエル人による脚本とパレスチナ人、日本人による参加での演劇が流された
 そして日本語に翻訳された渡辺真帆さんとオンラインでのやり取りが松中みどりさんの司会で劇の成り立ちについて説明され、現在のガザの状況についても説明された。演劇という表現方法でしか伝えられないほど現地の監視体制はきびしいということでえあった。ミヤンマー、ロシア、パレスチナと言論と表現への弾圧が続いている状況が想起される。集会参加者は長い演劇にもかかわらず息をのむようにして映像を眺めていた。
 長年続けられた青空表現市は今回をもって小尻さんの名前を冠したものとしては終了することが主催者より述べられた。多くの市民の想いと尼崎市長の参加も含めての最終章であった。  (K・K)


メーデー集会

        
労働者の団結で、生活と権利、平和と民主主義を守ろう

 5月1日、全国各地でメーデーの行動が行われた。
 東京では、日比谷野外音楽堂で、働く者の団結で生活と権利、平和と民主主義を守ろうをメインスローガンに、第95回日比谷メーデーが開かれ、2800人が参加した。
 主催者を代表して、鎌田博一国労東京地本委員長があいさつ。都労連、中央メーデー実行委員会からの連帯あいさつ。東京都産業労働局次長と福島みずほ・社民党参議院議員の来賓あいさつ。韓国・民主労総、京都メーデー、大阪中之島メーデーからはメッセージが寄せられた。
 争議組合―全統一労組流山クリーンサービス分会、外国人労働者―全国一般東京南部、最賃―全国一般全国協、反戦平和―5・3憲法大集会実行委、移民―移住者と連帯する全国ネットワークがアピールした。
 集会アピールで、すべての労働者の幅広い結集と一層の団結をふかめ、闘い続けようと宣言した。
 集会後、土橋コースと鍜治橋コースに分かれてデモを行った。

 全労連などによる中央メーデーは渋谷区の代々木公園で開かれ、1万2000人が参加した。
 連合は4月27日にメーデー中央大会を開き2万8000人が参加。集会に参加した岸田首相にはヤジが浴びせられた。


ロシアのウクライナ侵攻に関する階級的一考察 

              関 孝一

 F民族独立闘争(戦争)における統一戦線

 外敵の侵略を受けた国家においての闘いは、民族的な統一戦線を作ることが不可欠である。民族を形成するのはブルジョアジー・中間階級・労働者階級であり、これら利害の異なる階級を統一して闘うことは勝利を獲得する根本的条件である。ブルジョアジーは外敵の侵略を受け自らの支配的地位を失う危機から国家的な独立闘争を主導しようとする一面を持つがもう一面は労働者階級への搾取・抑圧・支配を維持することが基本である。労働者階級が民族的課題に基づきブルジョアジーと統一戦線を成立させる必須の条件は、強大な敵を前に単独では勝利する見通しがない中、共通の敵を倒すためには対立状態の一定の緩和と相互の譲歩と合意が必要不可欠である。この合意には労働者階級の立場を反映する姿勢がなく負担のみを強いる片務的な条件では成り立たたない。歴史的事例として中国において日本が1931年に柳条湖事件を引き起こし、東北部(旧満州)の軍事占領から全中国への侵略に踏み出した中で民族の独立の危機が深まったことがある。中国共産党は抗日民族統一戦線結成を呼び掛けたが当時の国民党政府の方針は「まずは国内を統一してから外敵を討つ」として第5次にわたる共産党討伐戦を継続した。そうした中、国際的には1935年のコミンテルンによる反ファッショ統一戦線結成の呼びかけと中国民衆の抗日運動の全土にわたる拡大により6年後の1937年の盧溝橋事件を契機に国共合作・抗日民族統一戦線が形成されるに至った。その主な内容は国共内戦の停止、紅軍の国民政府軍への改編、地主の土地没収の停止、占領地域での労使衝突の緩和など相互の譲歩と合意であった。

 Gウクライナの反侵略の闘い不可欠な国際的統一戦線の形成

反侵略の闘いにおいて国内的に民族統一戦線が不可欠であると同時に国際的な統一戦線の形成も決定的な役割を果たすことは明らかである。現に開戦直後の国連総会(193ヶ国)で採択されたロシアを非難し軍の即時撤退などを求める決議案には欧米や日本など合わせて141ヶ国が賛成した。一方反対はロシア他5ヶ国、中国やインドなどの35ヶ国は棄権しロシアの国際的孤立は鮮明となった。昨年も同様の決議案が141ヶ国の賛成で採択されていたが、今年2月ウクライナはロシアに対する非難決議案の提出を見送った。その理由はウクライナの最大支援国である米国がパレスチナ自治区ガザ侵攻に対してイスラエルを擁護し続け、多くの国々から「ダブルスタンダード」との反発を招いることがあるとみられる。ゼレンスキー大統領はハマスによる攻撃の直後に「イスラエルにはテロから身を守る完全な権利がある」としてイスラエルとの連帯を表明し、また「10月9日にはNATO加盟国国会議員会議に寄せた動画メッセージで同大統領はハマスとロシアは『同じ悪であり、違いはイスラエルを攻撃したテロリスト集団とウクライナを攻撃したテロリスト国家だというにすぎない』と述べた」(同年11月1日テレ朝news) 同年10月27日、イスラエルの行動を非難し、「即時かつ持続的人道的休戦と戦闘行為の停止を求める国連総会決議」が賛成121、イスラエル・アメリカなどの反対14、NATO諸国とウクライナなどの棄権44で採択された。また同年11月11日サウジアラビアの首都リヤドで開かれた「アラブ連盟」と「イスラム協力機構」の計57ヶ国の臨時合同首脳会議において「ガザの惨状」に対して西側(主にアメリカ)は「偽善、二重規範、中東への無理解」とする厳しい非難がなされ「即時停戦」を求める声明が発表された。またウクライナに武器支援とロシアに経済制裁を課している国は米・NATO諸国・日本等33ヶ国でありグローバルサウスを中心に世界人口の3分の2がロシア非難を控えている国に住んでいると推計されている。(February 23, 2023 the washington post)

 Hロシアのウクライナ侵攻戦争と労働者階級

侵攻から3年経て依然として継続する戦争に対して労働者階級はいかなる立場を取るべきなのか。ロシアにおいてはプーチン政権に対し侵略戦争に反対する市民・労働運動の闘いをいかなる困難のもとでも粘り強く続けることが必要である。ロシアの労働者・市民は、戦時下を理由とした表現の自由、労働組合・市民運動の自由の弾圧に反対し、即時停戦と撤兵を要求しウクライナを含む世界中の労働者・市民との連帯を求めることが課題となっている。ウクライナにおいては反侵略の民族的闘い=戦争の勝利にとって国内における階級横断的統一戦線の形成と国際的統一戦線の形成は欠かすことの出来ない条件である。しかゼレンスキー政権のロシアの侵略に反対する点ついては支持・協力出来る面もあるが、労働者・市民に対して政府・軍に全面的服従のみを求めて広範な統一戦線形成を図らず、国際的統一戦線形成に対してもアメリカ・NATO諸国等にのみ依存する現状では停戦を求めざるを得ないと考える。これはロシアによる恒久的占領をけっして容認するものではなくロシアにおけるプーチン政権に反対する運動との連帯を実現し、ウクライナ国内における民主主義的変革を実現する運動の中でこの侵略戦争のあらゆる不正を糺す共同の闘いを行うためである。「資本主義を破壊するためのたたかいにおけるプロレタリアートの任務について、共産党宣言は明白にかつきっぱりと述べている。『労働者は祖国をもたない』と。…社会主義の運動は…人類の共同生活の新しい高度の形態をつくりだす。そしてそのあきつきには、あらゆる民族の勤労大衆の正当な要求と進歩的な志向は、今日の民族的な障壁がなくなることからくる国際的な統一のなかで、はじめてみたされるであろう。…階級意識ある労働者は、あらゆる民族のブルジョアジ―の支配を転覆するための闘いのなかで、いろいろの民族の労働者の統一を打ち立てる試みを、繰り返し繰り返しあらたに重ねることをもってこたえるであろう」(「社会主義インタナショナルの現状と任務」レーニン国民文庫12P)(了)
 (訂正 前号 Bの最後尾に<参考資料 公益財団法人 国際労働財団メールマガジンbU64・670>を挿入)


せんりゅう

      戦争は「お国」あるから起こります

          天空海闊絶対平和ハトはなつ

      ベランダの鳩追払うガザ如し
 
         九条に悲願かさねてデモに立つ
 
      柵深い金ありて自民党

         裏金国会おや瓢箪鯰
    
      資本さかえ民ほろぶ農山村
 
         祭りここに民主主義があった

               ゝ  史
  2024年5月


複眼単眼

        
改憲反対の世論と岸田改憲の激突

 5月3日、東京のお台場防災公園で開催された「2024年憲法大集会」は、昨年、同所で開かれた集会の25000人を大きく上回り、32000人の人びとが結集して成功した。2020年からのコロナ禍のもとでの重苦しい街頭行動の自粛を求める空気を突き抜けるように、5月の青空の下で、色とりどりの旗がはためき、歌声が響き渡り、力強いスピーチが続いた。
同日、大阪は5000人を結集し、兵庫も5000人、京都は2000人だったという。全国のいたるところで、はじける様な憲法集会や諸行動が展開された。
 岸田文雄首相が任期中の改憲を叫び続ける中で、運動と世論はこれに力強く反撃した。
 共同通信が行った世論調査(1日発表)では、改憲や9条改憲の必要性への賛同は微増しているものの、「改憲を急ぐ必要がある」は33%で、「急ぐ必要はない」が65%で、「改憲に前向きな政党で条文案を作成する」は24%、「幅広い合意形成を優先する」が72%。「改憲の機運は高まっている」が31%、「高まっていない」が67%だった。
 3日に発表された世論調査は、朝日の調査では憲法9条を「変えないほうが良い」は昨年を6%上回り61%、「変える」は昨年より5%減の32%だった。毎日新聞の調査では岸田首相の任期中の改憲に「反対」が昨年を5%上回り、52%、「賛成」が8%減の27%だった。
 岸田氏が首相就任以来繰り返してきた「任期中の改憲」は、3月17日に開催された自民党大会の運動方針で「本年中にわが党の党是である憲法改正実現のため、国民投票を通じ、主権者である国民の判断を仰ぐことを目指す」と理由も明らかにしないままこっそり改憲目標期限を従来言ってきた「任期中(9月)」から「年内」に延期した。
 ところが3月27日の参議院予算委で岸田文雄首相は杉尾秀哉委員(立憲民主)に「改憲は党是だ。目の前の任期で最大限努力する決意を表明するのは、おかしなことではない」と再び「任期中の改憲」論を答弁した。
 党大会で決めたことを党の総裁が勝手にひっくり返したのだ。幼児のつっぱりなみの強弁だ。
 岸田氏は自らの権力欲の実現のために岸田派(宏池会)の伝統的イデオロギーの「保守リベラル」の立場を捨て、「任期中の改憲」を公約して、安倍派(清和会)の支持を獲得し、総理・総裁になった。
 昨年の安保3文書の閣議決定に見られる実質改憲、軍事費の倍増や、敵基地攻撃能力の保有を含む軍事力の強化についても、「専守防衛」の放棄と日米両国の軍事的一体化、「戦争のできる国づくり」へと岸田首相の暴走は止まらない。岸田首相がくわだてる明文改憲これを合憲化しようとするものだ。
 4月10日の日米首脳会談では(対中国などで)「日米は『不滅の同盟』を達成した」とまでうたいあげた。バイデン米国大統領はこの岸田首相を「先見的で勇敢な指導者だ」と持ち上げた。
 ここで発表された「日米共同声明」は「日米同盟は前例のない高みに達した。……わずか数年前には不可能と思われたような方法で、我々の共同での能力を強化するための勇気ある措置を講じた」とのべ、日米軍事同盟の歴史的大変質を確認した。
 岸田首相は米国議会での演説で、「日本の国会でこれほど素敵な拍手を受けることはまずありません」と述べたが、岸田首相が暴走する戦争への道と、戦争に反対する世論の激突は避けられない。  (T)

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