人民新報
 ・ 第1434号統合527号(2024年6月15日)

                  目次

● 軍拡増税腐敗迷走の岸田内閣打倒へ

        反自民非小池「オール東京」で小池都政をおわらせよう

● パレスチナに平和を!緊急行動

        バイデンはイスラエルに加担するな!

                ネタニヤフ政権は退陣しろ

● 狭山事件の再審を求め  無実を叫び61年!

● 冤罪・袴田事件

        再審結審再審法改正の早期実現を

● まやかしの「新しい資本主義」

        岸田政権支える芳野連合会長

● 「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律」の成立に強く抗議する

● 台湾問題の見方・観点 

● 今月のコラム  /  テレビ・ラジオ・展示会

● せんりゅう

● 複眼単眼  /  岸田改憲と213国会終盤の波乱






軍拡増税腐敗迷走の岸田内閣打倒へ

       
 反自民非小池「オール東京」で小池都政をおわらせよう

岸田内閣の支持率急降下

 当然とは言え衝撃的な与論調査の結果だった。
 6月10日のNHK世論調査によると、岸田内閣を支持すると答えた人は21%(5月調査より3ポイント低下)で、2021年10月の岸田内閣の発足以降、最低となった。支持しないと答えた人は60%(同5ポイント上昇)となった。また、自民党と公明党、日本維新の会などの賛成多数で衆議院を通過した政治資金規正法の改正案のでは、「大いに評価する」が3%、「ある程度評価する」が30%、「あまり評価しない」が32%、「まったく評価しない」が28%。岸田内閣にとって極めて厳しい状況だ。この低下傾向は続く。
 この間、自民党は4月の三つの補選で敗北している。その後の静岡県知事選、東京都議会議員補選(目黒区)でもいずれも自民党候補は敗退している。その投票結果を見れば、保守基盤がおおきく動揺し始め、自民党のこれまでの集票マシーンが機能しなくなってきていることがあきらかだ。長年にわたる政権の座への安住は、その中で腐敗・癒着構造が作られ、くわえて世襲議員が大多数になったことで政党としての活力を失ってきたことは否めない。
 派閥・裏金事件処理だけでなく経済政策に対しても内閣批判が強まっている。岸田は国会の演説で「経済、経済、経済」と連呼するなど経済政策を最重視してきた。「新しい資本主義」など意味不明な言葉までつくりだしたが、「成果は期待できない」の声が圧倒的だ。
 なお5月19日におこなわれた読売新聞社全国世論調査では、次期衆院選後にどのような政権を望むかの問いに、「自民党中心の政権の継続」と「現在の野党中心の政権に交代」が、いずれも42%で並んだが、流は岸田・自民党により厳しいものになってきている。最も政権寄りの読売でさえ、こうした結果を公表しているのである。

苦境に立つ岸田政権

 鉄面皮の岸田も、このような情勢では、伝家の宝刀・衆院解散権を行使するどころではない。総選挙でもすれば自民党大敗となるのは必至とみられているからだ。今国会は、6月23日に会期末を迎えるが、岸田は解散に踏み切れないだろう。同時に自民党が今国会での憲法改正原案の提出を断念するといわれる。追い詰められた岸田の弱気な姿勢がみられる。岸田では総選挙を闘えないという声が自民党の中からも出始めている。岸田政権は大きな危機の中に落ち込んだ。ここから脱出するのは至難の業だ。
 岸田・自民党政治を追撃し、日本政治の展開を図る条件ができた。だが、これらの動きは、自民党勢力がおとなしく政権から引き下がるわけでもなく、立憲野党の政権交代の基盤が形成されたことを意味するものではない。市民と野党との共闘強化、総がかり行動の展開、自民党に代わる政治を下支えする組織基盤の形成が求められている。

沖縄県議選・東京都知事選

 当面の総選挙がないにしても、今年はこれからも重要な選挙が目白押しだ。なかでも6月の沖縄県議選、とりわけ7月の東京都知事選での決選がある。
 沖縄県議選は6月16日投票だ。岸田は、戦争する国づくり政策の最前線基地として日本本土とアメリカを防波堤として沖縄にふたたび犠牲を強いている。戦争のために生活を犠牲にさせる自民党政治を決して許さない選挙戦がたたかわれている。
 7月7日は、東京知事選の投票日だ。5月27日、市民と立憲野党の第5回候補者選定委員会は、市民と野党の共闘候補に立憲民主党の蓮舫参院議員を擁立することを決定した。蓮舫さんは出馬会見で、「反自民、非小池都政のオール東京の枠組みで支援いただきたい」と述べた。ところが連合の芳野友子会長や国民民主党は共産党を含む「オール東京」形成の妨害してきている。芳野会長は、「連合は共産党とは考え方が全く違う。そこの考え方を再度、立憲民主党には申し上げることになる」と述べたが、これにたいし、立民・岡田幹事長は、芳野会長について「今の自民党べったりの都政を認めるのですかと、お伺いしたい」と苦言を呈した。ようやく12日になって、小池百合子都知事は、3選を目指して立候補すると表明した。裏金事件で独自候補を立てられない自民党東京都連は、「不戦敗」を避けたい小池支援の方針を確認した。小池は自民党との連携を強め、選挙での自民党候補の応援を積極的に立て続けに行ってきた。
 おおきく市民と野党の共闘をひろげ、沖縄県議選、東京都知事選を闘い抜き、岸田政権を打ち倒そう。政権交代を実現し、自民党政治を終わらせよう!


パレスチナに平和を!緊急行動

        バイデンはイスラエルに加担するな!

               
 ネタニヤフ政権は退陣しろ

 強大な軍事力によるイスラエル・ネタニヤフ政権の残虐行為が強行されている。使われている兵器はアメリカの援助によるもので、攻撃はガザ地区だけでなく、西岸でも行われ、日々、犠牲者が増大しており、ネタニヤフの戦争目的がパレスチナ人絶滅をめざすものだということをはっきり示すものとなっている。こうした厳しい状況のなかでもパレスチナの人びとはイスラエルに屈することなく英雄的な抵抗運動を執拗に繰り広げている。

世界にパレスチナ支持拡大


 5月10日の国連総会は、これまで常任理事国の米国が拒否権を行使して否決されていたパレスチナの国連加盟を支持する決議案を177カ国中、採択に必要な3分の2の票を得て採択した。オーストラリア、ブラジル、中国、フランス、インド、インドネシア、日本、メキシコ、韓国、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ共和国、トルコなど143カ国が賛成。アルゼンチン、チェコ、ハンガリー、イスラエル、ミクロネシア連邦、米国、パプアニューギニア、ナウル、パラオの9カ国が反対。カナダ、ドイツ、イタリア、英国など25カ国が棄権した。決議案が採択されたことで、この9月からの国連総会で、加盟国の中にアルファベット順に着席する権利、グループを代表して発言する権利、グループを代表して提案や修正案を提出する権利、国連総会本会議や主要委員会の役員に選出される権利などが付与されることになる。イスラエルは大きな衝撃を受けることになった。つぎは国連安全保障理事会の決議を通じてパレスチナ国家の国連正式加盟をめざすことだ。

イスラエル内閣に亀裂

 イスラエルは自らの招いた残虐行為によって国際的な非難を受け孤立化の危機に直面しているが、この情勢に打撃を被っているのは、11月に大統領選を控えるバイデン政権も同様だ。イスラエルを実質的に支持しながら、世界の、そして米本土でも広がるイスラエル批判に対応し、バイデン支持層の解体を防ぐというきわめてアクロバティック的な対応をせざるを得なくなってきている。
 5月10日、国連安全保障理事会は、パレスチナ自治区ガザ地区における恒久的停戦と人質解放の決議(米国提案)を採択した。現在の国連安保理は常任理事国(中国、フランス、ロシア、英国、米国)と非常任理事国(エクアドル、日本、マルタ、モザンビーク、スイス、アルジェリア、ガイアナ、韓国、シエラレオネ、スロベニアの15カ国で構成されているが、決議案は賛成14、反対0で採択(ロシアは棄権)された。この停戦案がイスラエル、ハマスの双方がどう対応するか不明だが、アメリカが停戦提案を行わざるを得ない状況にあることは見て取れる。とりわけ問題なのは、ネタニヤフ政権の側の動きだ。現在の戦時内閣はネタニヤフ首相、ガラント国防相、ガンツ無任所相の3人の閣僚と、3人の無任所相(投票権を持たないオブザーバー)からなる。
 6月9日、戦時内閣のガンツ無任所相(政党連合「国民連合」代表)は、戦時内閣からの離脱を表明した。ガンツはガザ地区での軍事展開を支持するが、また今後のロードマップ、超党派的な政治協力、次回の選挙日程の早期決定などを主張してきたが、ネタニヤフは拒否してきたことの結果である。
 ネタニヤフ政権の一角が崩れたが、イスラエル政権は今後、右派勢力の発言力が強まり、軍事作戦行動、パレスチナ人迫害の強度が増していくことなる。絶対に許されない。

残虐なイスラエルへ反撃

 侵略・虐殺者イスラエルとその後ろ盾のアメリカ政府に反対しパレスチナの人びとに連帯し、イスラエル軍の戦闘行為の即時停止を求める声は全世界に広がり、アメリカの学生たちの行動をはじめ欧米各国でも青年学生の動きは突出している。 日本各地でもさまざまなデモや集会などの取り組みが行われた。
 5月23日にも、これまでイスラエル大使館への連続抗議行動を展開してきた「パレスチナに平和を!緊急行動」によるバイデン大統領への抗議と要請行動がおこなわれた。バイデン大統領に対して、イスラエルによるガザ市民のジェノサイドの即時停止とイスラエル軍の撤退、陸路による緊急援助回復、占領地への入植と併合の撤回により、公正で永続的な平和の本格的実現を求める要請行動を行った。

 イスラエルは虐殺戦争を直ちにやめよ!
 ネタニヤフ政権退陣!
 パレスチナの自由と独立を実現しよう!

             ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

イスラエルによるガザ市民のジェノサイドの即時停止とイスラエル軍の撤退、陸路による緊急援助回復、占領地への入植と併合の撤回により、公正で永続的な平和の本格的実現を求めます

アメリカ合州国大統領ジョー・バイデンさま                        2024年5月23日

 私たちは昨年12月16日、イスラエルによるガザでのジェノサイドの即時停止、緊急支援の実施、占領地への入植と併合の撤回、中東における公正で永続的な平和の実現をあなたに要請しました。
        (中略)
 私たちは再び、あなたとあなたの政府に次のことを求めます。
 1、イスラエルに国際人道法と国連決議を守らせ、ガザ侵攻作戦を直ちにやめさせること。
 2、ガザ地区の全住民の窮状に対し、直ちに緊急人道支援を行うこと。その実現のため、イスラエル軍に陸路の物資搬入を妨害させず、またできるだけ広範な国際的協力体制を直ちに立ち上げること。
 3、イスラエル政府によるガザ封鎖を解除させ、ヨルダン川西岸などの占領地への入植とそのイスラエル領土への併合を容認・承認する政策を撤回すること。
 4、以上のような措置と政策変更の上に、中東における本格的な公正かつ永続的な平和の実現のために積極的に行動し、国際社会の協力体制を構築すること。

                                       「パレスチナに平和を!緊急行動」参加者一同


狭山事件の再審を求め  無実を叫び61年!

 1963年5月1日、埼玉県狭山市で女子高校生殺害事件がおきた。この狭山事件で、石川一雄さんが不当逮捕・起訴され死刑求刑までされるという部落差別の予断と偏見による冤罪事件が起こった。石川さんは無罪を叫びつづけて61年になる。一昨年8月に狭山事件弁護団は、狭山事件を審理する東京高裁第4刑事部に、事実取調請求書を提出し、新証拠を作成した11人の鑑定人の証人尋問と万年筆インク資料について裁判所が鑑定を実施するよう求めている。

 5月23日、日比谷野外音楽堂で「狭山事件の再審を求める市民集会〜無実を叫び61年!東京高裁は事実調べ・再審開始を!」(主催・狭山事件の再審を求める市民集会実行委員会)集会が開かれた。
 開会あいさつで、西島藤彦(部落解放同盟中央本部委員長)は、警察は石川一雄さんを逮捕、厳しい取調べのうえ、冤罪事件をおこした。石川さんの無実はあきらかだ。東京高裁は狭山事件の再審を開始するよう運動を強めていこう。
 国会からは、立憲民主党の近藤昭一衆議院議員、社民党の福島みすほ参議院議員、れいわ新選組の大石あきこ衆議院議員があいさつの発言を行った。
 再審請求人の石川-雄さんと石川早智子さんが闘いのアピールをおこなった。
 狭山事件再審弁護団からは、竹下政行弁護士が、無実を立証する数々の証拠について説明した。
 片岡明幸(部落解放同盟中央本部副委員長)が基調提案をおこない、足利事件冤罪被害者の菅家利和さん、袴田巖さんを救援する清水・静岡市民の会の山崎俊樹さんが連帯アピール、狭山事件の再審を求める市民の会事務局長の鎌田慧さんの発言があり、集会アピールを参加者の拍手で確認した。
 集会アピールにはつぎのようにある―「袴田さんは58年、石川さんは61年も冤罪を叫び続けている。こうした長い冤罪との闘いを強いている再審手続きの不備を早急に変えていかなければならない。先日、超党派の「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」が結成された。いまこそ、再審開始決定に対する検察官の不服申し立てを禁止し、再審における証拠開示を保障する再審法改正を国会に強く求めよう。冤罪犠牲者や支援運動と連帯し、冤罪根絶にむけた司法改革、再審法改 正を実現しよう。」
 集会後に、霞ヶ関でのデモ行進をおこなった。


冤罪・袴田事件

        再審結審再審法改正の早期実現を


 1966年、静岡県で一家4人が殺害された「袴田事件」は冤罪の可能性が極めて高く、2023年3月、再審開始決定が確定した。静岡地裁での再審公判は、2023年10月から計15回開催され、2024年5月22日に結審したが、なんと検察はまたも死刑を求刑した。袴田巌さんは現在88歳、事件発生から実に58年も経過している。判決は9月26日に言い渡される予定だが、袴田さんに無罪を宣告し、検察官が控訴することなく速やかに無罪判決を確定させることが求められている。

 度重なる冤罪による再審裁判請求の実現が極めて困難なのは、検察側の横暴さはもちろんのことだが、再審法・再審手続きの法的整備が極めて不十分なことにある。ようやく、超党派で「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」が結成され、また全国の弁護士会による再審法改正を求める総会決議の採択が行われている。
 迅速に再審法改正が実現されなければならない。


まやかしの「新しい資本主義」

       
 岸田政権支える芳野連合会長

「新しい資本主義」の現実

 厚生労働省が6月5日に発表した4月毎月勤労統計で、実質賃金は前年同月比でマイナス0・7%となり25か月連続でマイナスとなった。一方で、5月から7月にかけて、物価上昇率が大きく高まり、実質賃金の前年比下落幅が拡大する。これが岸田政権の下での現実だ。
 岸田は、主要政策の第一に「新しい資本主義」をかかげ、まず「構造的賃上げの実現」をあげ「30年ぶりとなる高水準の賃上げを持続的・構造的なものとするため、『人への投資』を強化し、リスキリングによる能力向上支援、個々の企業の実態に応じた職務給の導入、成長分野への労働移動の円滑化、の三位一体の労働市場改革を進めます。あわせて、金融資産所得の拡大などにより家計所得の増大を図るとともに、多様な働き方の推進等を通じ企業の生産性を向上させ、さらなる賃上げにつながる社会を創ります。少子化対策・こども政策の抜本強化等に取り組むことを通じ、分厚い中間層を形成します。」とした。
 現実はどうか。新しいのは資本主義の露骨な搾取の度合いが上がったことであり、政治資金問題と並んで生活苦の深刻さが、内閣支持率・自民党支持率の低落となって現れているのである。政権交代の声が高まってくるのは当然の成り行きなのだが、その自民党政治と資本の横暴を支えるものがいる。

連合芳野会長の果たす役割

 「第28回新しい資本主義実現会議」が6月7日に開かれ、連合の芳野友子会長も出席し、「2024春季生活闘争では、5%台の賃上げが実現し、四半世紀にわたり凍り付いていた経済社会が動き出した。根強く残るデフレマインドを払拭し、個人消費を基軸とする経済の自律的成長を実現するためには、生活向上を実感できる賃上げを継続・定着させていくのと同時に、すべての国民の将来不安を払拭し、未来に希望を持ちうる政策面からの強い後押しと強力なメッセージが不可欠である。そうした観点から、特にわが国の構造課題である、少子高齢化・人口減少、格差の拡大と貧困の固定化の解決にむけて、税と社会保障を一体的に抜本改革し、所得再分配機能を強化するとともに、将来的に増加が見込まれる国民負担率の在り方について、国民的な議論を加速させていく必要がある。(」(連合ニュース)。まったく政府の言い分と連動している。
 今年の「5%台の賃上げ」なるものが、長期にわたる賃上げなしによる大企業の膨大な内部蓄積をほんの少し減らしただけであること、本来なら賃金闘争によって物価上昇にはるかに追いつかない賃金水準構造を打破できていないこと、なにより、賃上げは企業の利潤との関係にあり、いやがる企業経営者にストライキなどの労働者の行動で勝ち取るものであるという、労働組合の基本がまったく無視しているのが芳野発言である。1989年連合の結成は労働戦線戦の右翼的再編であり、今日の労働組合運動の停滞と労働者の低賃金をもたらす要因となっているが、芳野会長はそれ以前の連合会長がまがりなりにも政権交代を口にしていたのとはまったく違って、なにより共産党を含む野党共闘を妨害することに躍起となっている。

 政権交代の声を、労働運動のこれまでの路線からの大転換の動きへとつながらなければならない。


「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律」の成立に強く抗議する

 5月10日、「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案」と「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律の一部を改正する法律案」が可決・成立した。これらの法律は、個人のプライバシーを政府が調査できるようにし、国民の知る権利を阻害し基本的人権を侵害することになるものだ。民間企業の従業員や研究者、そしてその家族など数十万人が対象とみこまれている。岸田・自民党政権の戦争する国づくりの重要な一歩となるものだ。
 政府・与党などがこの法案の成立を急いだのには、宇宙、サイバー、先端半導体などの分野での軍事利用の拡大、日米の情報共有や国際的な共同開発への参加などのうごきがあり、とくにF35戦闘機の国際共同開発などについて、米国などから日本に厳しい情報管理を命じられているからである。
 そして、この法律は、処罰の対象となる「漏洩される重要経済安保情報」の範囲が明らかではなく、恣意的な秘密指定によって人びとの知る権利などに悪影響をあたえるおそれが極めて大きい。また適性評価のための調査は内閣総理大臣が実施するとされ、恣意的に行われるだけでなく、膨大な個人情報の政府による集積となる。付帯決議では「対象者のプライバシー権が侵害されることのないよう十分に留意」とされたがそれは有効には機能しない。
 国際的に見ても、適性評価がプライバシー保障の観点から疑問があることなどで、すでにイギリス、フランスなどにおいて廃止され、またアメリカでもこうした法律の問題点が指摘するようになっている。
 戦争準備の法制度におおくの人びと、立憲野党などの反対の声明をだし、これからもこの法案の修正・廃止を求めて運動していくとしている。
 この法律は問題点がきわめて多い。日本弁護士連合会は、「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律の成立に対する(渕上玲子)会長声明」を出し、「当連合会は、秘密保護法の廃止又は抜本的見直しを求めるものであるが、本法についても、附帯決議等の趣旨も踏まえ、重要経済安保情報が合理的で最小の範囲で指定されるようにする具体的基準や手続の策定、及び適性評価において対象者のプライバシー等を十分に保護し人権侵害を未然に防止する仕組みの構築等、市民の知る権利やプライバシー等が不当に侵害されないための対策を講じるよう、引き続き政府に対し求めていく所存である。」としている。
 改憲問題対策法律家6団体連絡会(社会文化法律センター、自由法曹団、青年法律家協会、日本国際法律家協会、日本反核法律家協会、日本民主法律家協会)も「『重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律』の成立に強く抗議する法律家団体の声明」(別掲)を出している。日本労働弁護団も、「同労働者の権利の観点から無視できない問題点」があると批判してきた。

 経済安保秘密保護法 参議院採決の日、「秘密保護法」廃止へ!実行委員会と共謀罪NO!実行委員会の主催による国会前行動「秘密保護法廃止!共謀罪廃止!監視社会反対!経済安保版秘密保護法案の制定を許さない」がおこなわれた。集会では、秘密保護法対策弁護団の海渡雄一さんが、法案の危険性について報告し、国会議員や市民団体の発言がつづいた。
 経済安保法体制を突き崩す闘いを継続していこう。

             ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律」の成立に強く抗議する法律家団体の声明

 2024年5月20日

 改憲問題対策法律家6団体連絡会(社会文化法律センター共同代表理事 海渡雄一、自由法曹団団長 岩田研二郎、青年法律家協会弁護士学者合同部会議長 笹山尚人、日本国際法律家協会会長 大熊政一、日本反核法律家協会会長 大久保賢一、日本民主法律家協会理事長 新倉修)

1 はじめに
 2024年5月10日、参議院が「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案」を本会議で採択して可決し、同法が成立した。
 私たち改憲問題対策法律家6団体連絡会は、すでに2024年4月25日に、同法案が国民の自由と権利を侵害して国家による国民監視を強化するものであるとともに、憲法の平和主義に反し軍需産業の育成につながるなどの重大な問題点を持つことを指摘して、廃案を求める声明を公表した。
2 何が秘密か不明確である
 まず、同法は、「特定秘密保護法」においては対象となっていなかった「重要経済安保情報」について、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金等の刑罰をもって秘密保護するものであるが、重要物資や基本インフラ、最先端技術など秘密指定される「重要経済安保情報」の範囲が法文上広範かつ不明確で、すべて運用基準や政令に委ねられる点で、罪刑法定主義に違反し、濫用の危険が極めて高い。
 また、国会審議においては特定秘密保護法とのシームレスな運用が言われ、政府は、特定秘密保護法の改正手続きではなく、その運用基準の改訂により、経済安保情報についても特定秘密の指定を行う予定とされているが、これは罪刑法定主義から許されない。
しかも、今国会で同時に審議され成立した経済安保法「改正」では基幹インフラに一般港湾運送事業が追加され、同改正に関して衆参両院では医療分野や地方公共団体の業務を基幹インフラの対象に拡大することを検討する付帯決議がされるなど、国民の知る権利等に対する不当な侵害がいっそう危惧されるものとなっている。
3 基本的人権侵害と国家による監視
 また同法により、適性評価の対象が民間労働者や研究者など大幅に拡大されるものであるが、把握された情報は政府が一括して管理する。その際実施される身辺調査は勤務先や上司・同僚、医療機関・金融機関、さらには警察や公安調査庁まで及ぶうえ、継続的に監視されるおそれや、適性評価を受けなければ職場の仕事や研究から外されものが言えなくなるとの危惧も国会審議で指摘された。市民のプライバシー権を侵害するとともに、思想・信条の自由、学術研究の自由、労働運動・市民活動の自由が害される危険性も浮き彫りとなった。ところが、これら法案のかかえる重大な問題については運用基準によるなどと先送りし、本来国会審議で解決するべき責任は何ら果たされていない。
4 平和主義に違反する
 さらに、同法は、日米同盟のもとで、日本の軍需産業を強化し、武器輸出の拡大をいっそう促進する動きの一環として、安全保障の確保に資する活動を行う事業者への重要経済情報の提供、セキュリティクリアランス制度等を規定し、軍需産業の支援強化を進めるものである。法案の国会審議において、岸田首相は、「国際的な共同開発などを進める動きが一層円滑に推進されることが期待される」と情報の活用に積極的な姿勢を示している(4月5日衆院内閣委)。4月10日の日米首脳会談共同声明でも、日米で共同してミサイルの開発・生産を促進することやAUKUSとの先進軍事技術協力を行うことが確認されている。同法は、それらに資する研究開発促進、軍需産業の育成を図るための環境整備につながるものであって、憲法の平和主義に反することは、いっそう明白となっている。
5 民主主主義に違反する
 同法については、本年3月20日に衆議院で審理が開始されて以降、審議の過程で法案の重大な問題点がいっそう明確となったにもかかわらず衆議院を簡単に通過し、参議院においても十分な審議がされないまま成立にいたったものであり、主権者たる国民が正当に選挙された国会における代表者を通じて行動するという議会制民主主義が形骸化されていると言わざるを得ない。
 改憲問題対策法律家6団体連絡会は、このように幾重にも憲法上重大な問題を含む、同法の成立に強く抗議するものである。


台湾問題の見方・観点 

         橋本勝史 

 「台湾有事」のキャンペーンがおこなわれ、これを口実にして岸田政権の大軍拡・憲法改悪がもくろまれている。ふりかえれば2021年3月9日、デービットソン米インド太平洋軍司令官(当時)が米上院軍事委員会において、中国が台湾に侵攻する可能性について「その脅威は今後10年以内、実際には今後6年で明らかになると考える」と述べ、ここから問題が大きくなった。
 今年の1月13日に台湾総統選・立法院選がおこなわれ、5月20日に頼清徳新総統の就任式が行われた。超党派による台湾との友好議員連盟である「日華議員懇談会」の全8会派(共産党を除く全ての会派)の31名の訪問団が参加した。「台湾有事は日本有事」「日本有事は台湾有事」との声がやかましくなってきた。台湾問題についてどのように見るべきか、日本の前途がかかる大問題である。

湾総統選・立法院選結果

今年の1月13日に行われた台湾総統の選挙結果は次のようなようになった。民進党の頼清徳―558万6019票(40・05%)、国民党の侯友宜―467万1021票(33・49%)、民衆党の柯文哲―369万 466票(26・46%)。事前に進められていた国民党と民衆党のいわゆる合作はアメリカの介入などで挫折した(国民党の党色は「藍」、民衆党が「白」、民進党は「緑」)。
 一方立法院の選挙結果は、全議席113のうち、国民党―52議席(改選前より15議席増)、民進党―51議席(改選前より11議席減)、民衆党―8議席(改選前より3議席増)で、無所属―2議席(?超明、高金素梅)は国民党よりと言われる。なお高金素梅議員は、来日して靖国神社を批判した行動で有名である。
内政問題では民進党に対する不満は明らかで、2022年11月の統一地方選挙では国民党圧勝・民進党大敗がおこった。
 このいわゆる「ねじれ現象」の中で、5月28日には台湾の立法院で、野党側が優位に立つ立法院の権限強化を狙った法案が賛成多数で通過した。頼清徳総統の民進党政権にとって痛手となる。4月には、立法院に8つある常設の委員会のすべてからあわせて17人の委員が参加する大規模な国民党の訪問団は、中国共産党の最高指導部の序列4位の王滬寧政治局常務委員と会見した。今後も、台湾内での「藍」、「緑」抗争は鋭くなるだろう。

バイデン政権の対応

 台湾総統選の結果をうけて、米バイデン大統領は、「われわれは独立を支持しない」とのべた。その一方で独立志向勢力を支持していることは公然の秘密である。それは米「タイム」誌(6月4日)の「中国がもし台湾を武力攻撃したら米軍が防衛する」とのバイデン発言に現れる。

日華議員懇談会などの動き

 日本では、台湾新総統就任式への大勢の議員の参加でもわかるように、自民党だけでなく野党も「台湾有事」論に加担する勢力が多い。とりわけ、自民党副総裁・麻生太郎の発言が典型的なものだ。今年1月8日・福岡県直方市での国政報告会でも次のように言った。「時代は大きく変わりつつある。今、台湾海峡を挟んで緊張が高まっている。忘れないでください。台湾には、日本人が正式に登録している人だけで2万400人。そのほかに多くの人が滞在しています。何かが台湾で起き、ことが戦争ということになった場合、我々は台湾にいる日本人を救出せねばならない。当然、海上自衛隊、そういう組織が救出する。そのときに台湾は中国と戦ってくれているのですか。それとも降参しているのですか。侵略されているのですか。台湾に戦っておいてもらわない限り、我々は邦人を無事に救出することはなかなか難しい。今までとは状況が違います。我々は、台湾海峡で戦う。潜水艦で、軍艦を使って、というようなことになる。台湾の有事は間違い無く、日本の存立危機事態にもなります。」
 また政党のみならず民間の親台湾右翼の活動も強まっている。
 台湾・民進党政権側も、こうした日本の動きに大きな期待を寄せている。台湾政権よりのメディア「台湾フォーカス」は、「『台湾と日本は運命共同体』 頼次期総統が日華懇総会にビデオメッセージ」(5・10)の記事で「(東京中央社)20日に総統就任を控える頼清徳副総統は9日、日本の国会内で開かれた超党派の議員連盟「日華議員懇談会」の総会にビデオメッセージを寄せ、台湾と日本の関係について『生死を共にする運命共同体となっている』『台湾有事はすなわち日本有事、日本有事はすなわち台湾有事だ』と強調した」と報じている。

日本政府と日中共同声明

 しかし、日本政府の公式の見解は麻生などの見解とは違うのである。日本側も1972年の日中国交正常化以来の両国間の台湾問題についての立場は何度も確認してきし、これからもそうしなければならない。
 日本外務省HPの「よくある質問集」に次のようにある。《問10、台湾に関する日本の立場はどのようなものですか。》「台湾との関係に関する日本の基本的立場は、日中共同声明にあるとおりであり、台湾との関係について非政府間の実務関係として維持してきています。政府としては、台湾をめぐる問題が両岸の当事者間の直接の話し合いを通じて平和的に解決されることを希望しています。」とある。
 その「日中共同声明」では、「日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」としている。「ポツダム宣言」の第八項は、「『カイロ』宣言ノ条項ハ履行セラルヘク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ」である。
 「カイロ宣言」は「同盟国の目的は、千九百十四年の第一次世界戦争の開始以後に日本国が奪取し又は占領した太平洋におけるすべての島を日本国からはく奪すること、並びに満洲、台湾及び澎湖島のような日本国が清国人から盗取したすべての地域を中華民国に返還することにある。」とする。
 日中共同宣言によれば、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」ことが基本中の基本である。

国連2758号決議の意味

 カイロ宣言の「満洲、台湾及び澎湖島のような日本国が清国人から盗取したすべての地域を中華民国に返還することにある」としたが、返還先は中華民国であって、中華人民共和国ではないという論がある。
 国際法的に見た中華民国と中華人民共和国との関係はどうか。とりわけ国連はこれをどうみているかという問題がある。
 1971年10月25日に第26回国際連合総会で採択された2758号決議(「国際連合における中華人民共和国の合法的権利の回復」)いわゆるアルバニア決議は次のようにある。
 「国連総会は、国連憲章の原則を思い起こし、中華人民共和国の合法的権利を回復させることが、国連憲章を守り、かつ国連組織を憲章に従って活動させるためにも不可欠であることを考慮し、中華人民共和国政府の代表が国連における中国の唯一の合法的な代表であり、中華人民共和国が国連安全保障理事会の5つの常任理事国の1つであることを承認する。中華人民共和国のすべての権利を樹立して、その政府の代表が国連における中国の唯一の合法的な代表であることを承認し、蒋介石の代表を、彼らが国連とすべての関連組織において不法に占領する場所からただちに追放することを決定する」。
 中華人民共和国が、新たに国連に加盟したのではなく、国連設立当初から5常任理事国の一つとしてあり、蒋介石の僭称を是正して、その代表権を回復したのである。
 その後の米中上海共同コミュニケ(1972年2月28日)や日中共同声明もその延長線上にあるのである。(つづく)


今月のコラム

        テレビ・ラジオ・展示会


 いつからだろうか、テレビを殆ど見なくなったのは。最近の番組編成替えでずっと見ていたNHKBSの「新日本風土記」の放送時間が変わり、鉄旅ものがどこかに行ってしまい、韓流ドラマも消えて今はEテレの30分もののクラシック番組1本だけになった。ニュース番組はまるで腑抜けた政府広報だし(例外はあると思うが)、バラエティー番組は歯医者の待合室でたまに見てバカにされた気分になる、歌番組もKPOPと比べるといかにも貧相、ドラマときたらどれもちゃちでチープ、見るに堪えない(これも例外はあると思うが)。「ハケンの品格」(韓流でリメイクされている)「ドクターX」あたりまでは結構面白く見ていた。「相棒」は右京が最後に説教めいた決めゼリフを吐くのが定番になってからは撤退した。ある報道番組で池上季実子と中尾ミエがある俳優の「日本のドラマが韓国に20年の差を開けられた」という発言を巡って語っている。「ドラマも映画も、すべて」「たとえばバスにトイレもないみたいな、だからトイレ探すのも大変なのよ」「すごいハードスケジュールで、早く撮ることしか意識がないみたいになってきちゃっているから、平気でギャラ値切ってくるじゃないですか」「何か言うと『時代ですので』って」…(東スポWEB)失われた30年は経済のみならずあらゆる分野の現象のようだ。

私の一推しラジオ番組
 数年来聴き続けているラジオ番組がある。NHK第1の金曜夜9時5分からの「高橋源一郎の飛ぶ教室」。メインキャスターが自身の学生運動と拘置所生活の回想を時折語る番組というのは他にはないだろう。番組前半は「秘密の本棚」で高橋が選んだ1冊を紹介する。これがきっかけで手に取った本は少なくない。陸軍船舶司令部がおかれた「日本軍最大の輸送基地」であり、それゆえに広島が原爆投下地に選定される根拠の一つとなった宇品と、そこに関わる人物像を追った堀川惠子「暁の宇品」、ロシア国立ゴーリキー文学大学を日本人として初めて卒業した奈倉有里が、一途な学問と文学への愛を語り恩師との稀有な交流を回想する「夕暮れに夜明けの歌を」、戦場を駆け抜ける狙撃兵の少女の成長(参考文献にも掲げられているスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ「戦争は女の顔をしていない」は第二次大戦参戦国中唯一百万を超える女性が従軍したロシアの女性兵士への聞き取りであり、中に狙撃兵のものもある)と戦争の無惨を描いた逢坂冬馬「同志少女よ敵を撃て」(ちなみに奈倉と逢坂は姉弟、一緒に番組に出演したこともある)、既成のナイチンゲール像を覆す栗原康「超人ナイチンゲール」等々。番組後半はゲストとの対談。様々な分野のゲストが登場するが、感心するのは高橋が事前にゲストの作品を全て読んで(写真集や画集なら観て)臨んでいること。なかなかできることではない。これは真摯さとも言えるが、高橋はそれを義務としてだけでなく純粋に楽しんでもいるのだと思う。番組に常連で伊藤比呂美、ブレイディみかこ、ヤマザキマリが登場するのもフアンとして嬉しい。聞き逃しラジオらじるらじるで放送日から1週間聴けるのも便利だ。なお、高橋は明治・大正・昭和三代を描き出す大部な「DJヒロヒト」を2月に刊行し、なお書き続けるようだ。健筆を祈るや切。

徹底の人 橋本治
 神奈川近代文学館の「帰って来た橋本治展」に行ってきた。東大駒場祭のポスター「とめてくれるな おっかさん 背中のいちょうが 泣いている 男東大どこへ行く」の原画が入り口に飾られていて懐かしい。イラスト、絵画、歌舞伎、浄瑠璃、薩摩琵琶、小説、評論、古典、編み物と広範なジャンルの膨大な仕事を残して2019年に亡くなった。「じっと見て(あるいは読んで)、考えることからはじめる人だった。目の前の現実を嘆いたり怒ったりする前に、どうしてこういうことになったのか、その仕組みや因果関係をさぐり、人間のあり方と照らしあわせ、答えを出そうとした。人が怒りはじめるのは『仕組みなんて知ったこっちゃない』と思考停止したときである。橋本さんには怒っている暇などなかったのだ」(図録巻頭随筆 松家仁之)。橋本の作品は7割くらいは読んだだろうか。父が死の床に就き付き添っていた時読んでいたのが「窯変源氏物語」だった。作品中漢詩を入れる必要があり、漢詩の入門書を紐解くことから始めたという。展示されている「双調平家物語」の8400枚余りの原稿と丹念に作成された年表類に圧倒される。橋本も高橋も実に徹底する人だ。  (新)


せんりゅう

     日本列島ジシン無いのはキシダ君 

          まぜこぜにして分からぬ答弁 
 
     献金汚職裏金おんなじです 
 
          裏の裏頭のクロいホラあそこ
     
     移民労働力のナミダ祈りあり
 
          外国に人材もとむ人はいらない
 
     人材と呼び木材を買うみたい 

          柔能制剛ここに九条 

     黒幕で隠せない九条聳え

                 ゝ  史

  2024年6月


複眼単眼

        岸田改憲と213国会終盤の波乱


 悪法が、少ない審議時間で着々と衆議院から参議院に送られたことにみられるような我慢ならない問題が多々あった213国会だが、最終盤に来て憲法審査会などをめぐって波乱が起きた。
それもこれも、岸田首相が総裁の椅子を得んがために「自分の任期中の改憲実現」という言葉を繰り返してきたことに起因する。
 首相は任期の9月末までを考えると、213国会が終わる6月23日までに改憲原案を作り、発議しなければならないという自縄自縛に陥ってしまった。
 「政権発足間もないころ、麻生氏は首相に『改憲のために首相になったんだろ』と期待を込めて語りかけたことがあ(る)」(産経新聞6月7日)という。麻生のような自民党内のウルトラ改憲派だけではない。「改憲突撃隊」や「第2自民党」を自称する維新の会や国民民主党、あるいは右翼改憲派の櫻井よしこらが、ここぞとばかり「改憲原案作りを急がないと任期中の改憲は間に合わない。公約違反になる」と首相と自民党を追い詰めようとしている。
 6月6日の憲法審査会では自民党の中谷筆頭幹事が、維新の会の小野泰輔委員に詰め寄られて、「ご質問で、自民党は本気かどうかということですが、私は本気です。昨日も自民党で憲法改正実現本部、開きました。……ただし、改正できるかどうかというのは、この審査会の審議と幹事会、……やはり各党の了解、両省の下に進めなければなりませんので……」などと答えるという緊迫したやり取りがあった。
 憲法審査会のこうした緊迫状況を反映して、立憲民主党の斎藤嘉隆参院国対委員長は6日、自民党の石井準一参院国対委員長と会談し、「自民が改憲案の条文化作業を強行する場合、参院側では政治資金規正法改正案を含め全ての法案審議に応じられない」と伝えたという。斎藤氏は会談で「信頼関係を根底から覆すような乱暴な動きに出れば、参院側としては一切の審議に応じることはできない」と申し入れた。衆院では立憲、共産、社民、れいわなどの反対を押し切って、6日に「政治資金改正法案」を通過させたが、そういうことになれば参議院では同法案の審議に応じないということだ。 
 これに対し、自民の浜田靖一衆院国対委員長なども「(首相の総裁任期中の改憲はなかなか厳しい)、政治資金規制法案の審議を優先する」考えを示している、という。
 もし、岸田首相が公約の「任期中の改憲」に失敗すれば、自民党の岩盤勢力の岸田離れは不可避で、岸田再選戦略は危うくなる。 そして「岸田改憲」の終焉の到来だ。 (T)


人民新報  2024年6月号.pdf