人民新報 ・ 第1439<統合532号(2024年11月15日)
目次
● 政治は変る 変えられる
総選挙・与党過半数割れ実現 支持率急落つづく石破政権
* 第50回衆議院選挙の結果を受けて(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)
● 米・大統領選
トランプ再登場で世界的大混乱の予兆
● 関生弾圧=産業別労働組合潰しを許すな!
労組弾圧を跳ね返そう・反弾圧シンポジウム
● STOP! 核軍拡・核兵器拡散
日本被団協にノーベル平和賞
● 国連サイバー犯罪条約の問題性
● 今月のコラム / 映画「五香宮(ごこうぐう)の猫」(想田和弘監督)を観る
● せんりゅう
● 複眼単眼 / 総選挙の八王子モデル
政治は変る 変えられる
総選挙・与党過半数割れ実現 支持率急落つづく石破政権
11月11日、第二次石破茂内閣が発足した。10月総選挙で、長期にわたる自民党政治とりわけ裏金・脱税問題に対する批判は大きく広がり、自公与党は過半数割れ(総議席数465のうち、自民党247→191、公明党32→24)に追い込まれた。総選挙後も自民党には不信の目が注がれ続け、石破政権はきわめて苦しい国会運営を強いられている。これまでの与党多数での強引な手法による法案成立は難しくなり、十分な審議を行わざるを得なくなってきた。自民党の苦境を示すのが衆議院の17の常任委員長の割りふりである。これまでは、立憲民主党が決算行政監視と懲罰、公明党が総務と経済産業で、残りの13の委員長はすべて自民党が占めていた。
それが、総選挙での新議席をうけて、自民党9、立憲民主党5、日本維新の会、国民民主党、公明党にそれぞれ1ずつに配分されることになった。それで、与党の自民党は内閣、外務、財務金融、文部科学、厚生労働、農林水産、経済産業、国土交通、それに議院運営の各委員長。公明党は総務委員長。一方、野党側は立憲民主党が予算、法務、環境、国家基本政策、懲罰の各委員長、日本維新の会が、安全保障委員長、国民民主党が、決算行政監視委員長となる。
委員長の権限は議事進行など極めて大きい。自民党は議長権限を使って審議なしの強行採決を幾度となく行ってきた。それがこれからは簡単にはできなくなるのである。ことに予算委員会は、政府予算案を含む国政全般を審議する場であり、ここでの審議・採決は日本政治の方向を決定づけるものであり、今後の審議で石破内閣を追い詰めていかなければならない。また衆議院には3つの審査会があるが、これまではすべての審議会の会長を自民党が占めきた。それが、自民党に情報審査と政治倫理の会長が、立憲民主党に憲法審査会長が配分となる。
改憲派は大幅議席減で凋落
安倍・菅・岸田と続いて日本を戦争する国にするという自民党政治は、軍事費の大幅増強、日米軍事同盟の強化、台湾危機あおりと反中国政策を押し進めた。反動化の要として9条改憲があり、改憲派は国会での改憲発議を急いでいた。しかし、総選挙の結果は改憲派にとって大打撃となった。衆院での自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党、参政党、日本保守党の改憲派政党の獲得議席は合計287となった。改憲発議に必要な総議員数の3分の2の310議席を下回った。いっぽうで立憲民主党、共産党、れいわ新選組、社民党を合わせた議席は166で3分の1を上回った。参院では改憲派政党の議席が総議員数の3分の2を上回っているが、改憲発議には衆参両院での3分の2以上の賛成が必要で、現状での改憲発議は不可能となったといえよう。だが石破は、来年の自民党結党70周年を控え、「党是である憲法改正を前に進める」と強弁しているが、まったくの幻想でしかない。
総選挙後の世論動向
衆院選の結果を受けて、朝日新聞社が行った全国世論調査(11月2、3日実施)によると、石破茂内閣の支持率は34%で1カ月前の組閣直後調査の46%から急落した。いっぽうで不支持率は30%から47%に上がった。そして与党の自民、公明両党の過半数割れの選挙結果については「よかった」が64%となっている。与論の動向は、総選挙の結果をほぼ肯定し、今後も、石破内閣への批判的な姿勢が続くとみられる。
弱体・石破政権の難問は、国会では少数与党、自民党内の十分な結束もなく、支持率の低迷が続く。だが、それに加えて、来年1月に正式発足する米・トランプ政権への対応である。「アメリカ・ファースト」政策で自国の利益を最優先し、対日要求で軍事・経済などで無理難題が続出するのは必至だ。
石破のアジア版NATO構想や日米地位協定の見直しなどは、米国側に一蹴されただけでなく、石破はトランプの盟友・安倍の政敵だとの認識もあり、日米両政府間の関係の改善どころか悪化も予想される。石破は当選直後のトランプの電話会談で軍事費の大幅増額をつきつられた。石破の訪米・トランプとの会談で、どこまで譲歩させられていくのか。そのことは、日本の政局に激震を走らせることになるだろう。
石破政権を追い詰めよう
来年は参院選の年だ。東京都議選もある。都議選の結果はこれまでも日本政治全体に大きな影響を与えてきたが、それがより鮮明となるだろう。なお、追い詰められた石破自民党は衆院解散・総選挙にでる可能性もある。そうなればトリプル選挙という決戦状況が生まれることになる。
今回の総選挙では、「政治は変る」「政治は変えられる」という雰囲気が広がっている。 総がかり行動・大衆運動の前進、市民と野党の共闘を強化していこう。維新の会や国民民主党などの自民党補完勢力の策動を許さず、立憲野党を強化していこう。10月総選挙でうまれた政治の大流動化から、自民党政治の終焉・政権交代・新しい日本政治の創造の闘いが続いている。 おおきく政治を変えよう。
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第50回衆議院選挙の結果を受けて
裏金政治をめぐって自民党に鉄槌が下った。国会解散まで戦後最短の審議で選挙に臨み、「禊(みそぎ)」をはかった石破新政権だったが、議席の単独過半数どころか、勝敗ラインとしていた自公による過半数獲得も達成できなかった。与党の一翼を担った公明党の新代表と副代表も、選挙区での落選を余儀なくされた。
選挙の公示前、自民党は、裏金問題への対応として自党の候補者10人を「非公認」としたが、間もなくそれら候補者支部への2000万円の資金供与も明らかとなり、同党の政治改革への不信を増長させた。今回、この「偽装公認」問題、そして裏金問題自体を幾多のマスメディアに先駆けて明らかにし、野党躍進の契機をつくりだしたのが日本共産党の機関紙『しんぶん赤旗』であったことは、記憶にとどめておくべきである。 今回の選挙では、いかなる強大な権力も、その体内に巣くう腐敗の事実が明らかとなり、国民の信頼を失えば、一夜のうちにその基盤が瓦解するという、民主政治の真実が再確認されることになった。日本の有権者は、今回の選挙で明確に、政治権力に対して抜本的な政治改革の必要性を突きつけた。
しかし他方で、派閥からのキックバックが政治資金収支報告書に不記載だった自民党議員46人中18人が当選を果たし、「旧安倍派5人衆」のうち4人が議席を維持した。したがって裏金問題は、依然としてまったく解決しておらず、引き続き国会内外での追及が続けられなければならない。そして今回争点となったこの裏金問題の解決も、民主政治にとってはいわば最低限のスタートラインにすぎないことも再確認すべきである。私たちの眼前には、自公政権12年間、あるいは「失われた30年」で蓄積された多くの政治課題が山積している。しかし、選挙期間中に全国で、それらの重要争点が十分に議論されたとはいえない。
私たち市民連合は、立憲主義の回復や安保法制の廃止というこれまでの取り組みにもとづき、先の立憲野党(立憲・共産・社民・沖縄の風)との「政策合意」において、憲法9条や専守防衛を逸脱する集団的自衛権の行使、そして敵基地攻撃能力を許容することはできないという点を再確認した。またこれに加え、逆進性の強い税制の是正など市民の生活を守る経済政策や、誰もが個人として尊重されるジェンダー平等と人権保障、原発にも化石燃料にも頼らないエネルギーへの転換といった、来るべき立憲政治の指針に関する共通原則も確認した。そしてこれらの確認にもとづき、今回の選挙戦においても、市民と野党との共闘で戦うために全国各地でさまざまな取り組みを行い、結果的に、改憲政党(自民・公明・維新)による3分の2の議席獲得を阻止することにも寄与することができた。ただその一方で、全国的には、野党共闘が実現した選挙区だけではなく、野党同士が競合した選挙区も生じ、今後の共闘のあり方に課題を残した。
しかしいずれにせよ、選挙期間中に必ずしも十分に議論されなかった重要課題について、今後不確実性を高める国会内の政治過程においても、立憲各野党がしっかりとその当初の方向性を見失わずに歩みを進められるかどうか、私たちはそれをしっかりと見守り、またその実現のために多くの市民団体と連携しつつ、独自の取り組みを行っていきたい。
いかなる政党といえども、永田町の権力闘争に拘泥し、つい昨日まで街頭で触れ合い、語り合ってきた有権者や国民の存在を忘れ、立憲政治の大きな原則を踏み外すようなことを、私たちはけっして許容しない。「政権交代は最大の政治改革」であり、その訴えは総選挙で大きく有権者に届いた。しかし、むしろその政権交代への過程で実現される具体的な政治の「中身」こそが、さらに重要な争点であることも、ここで確認しておきたい。
残念なことに、この度の総選挙では、戦後3番目に低い投票率に終わった。ほぼ2人に1人が選挙に行かなかったことになる。この国では、有権者の政治そのものへの無関心、あるいはさらに言えば「絶望」が顕著である。現在の選挙制度において、今回のような一部野党の躍進も、冷静に見れば、その多くが与党側の失策とそれに対する与党支持層の離反に起因するものにすぎない。したがって、今、勝利に沸き立つ立憲野党も、けっして奢ることなく、今後の国会活動においては、むしろ現在政治への期待を失った多くの国民でさえもが微かな希望を見い出しうるような政治の姿を実現してほしい。
私たち市民連合は、選挙後も引き続き、戦争へと向かう国のゆくえを正すべく、各地域でたゆまぬ活動を展開し、市民の立場から政治に参加し、これを創り、またこれを監視する。来年の参議院選挙に向けても、立憲主義と平和主義にもとづくあらゆる政党や組織、政治家と連携し、「市民と野党との共闘」を引き続き追求したいと願う。
2024年10月28日
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合
米・大統領選
トランプ再登場で世界的大混乱の予兆
トリプル・レッドの状況も
11月5日に行われた米大統領選では、共和党のドナルド・トランプ前大統領が、民主党のカマラ・ハリス副大統領を破った。選挙人312対226という数字で、事前の僅差予想に反して選挙結果は早期に決定した。ハリスが敗北を認め、選挙は終わった。同時に行われた米・上下両院選挙でも共和党が勝利しいわゆるトリプル・レッドが実現しそうである。それに加えて連邦最高裁も保守派が圧倒的多数であり、トランプの三権を掌握しての政権運営となりそうである。この状況は大惨事を呼びかねない。なぜなら、今回の人事には特徴がある。前回のトランプ政権時はそれなりに考える人もいたが、途中でトランプと対立し政権外に去った。今回はまったくのイエスマン・おべっかつかい優先人事となるだろう。
ウクライナ戦争、ガザ虐殺・パレスチナ抹殺戦争でもどうするのか明白にはわかっていない。環境問題の深刻化はもとより欧州との関係も悪化するだろうし、同盟・有志国への軍備増強の圧力の強化など、前回のトランプ政権で振り回された世界各国は悪夢の再来への対処に苦慮している。来年1月に正式発足する第二期トランプ政権の動向に世界中が影響されることは間違いない。
一段と拡大する米国の貧困
今回の米国での選挙の結果には、バイデン・ハリス現政権への批判の高まり、とりわけインフレと貧困感のひろがりがある。アメリカの貧困と格差は凄まじい。上位1%が持つ資産が、下位90%が持つ全資産よりも多い。2019年から2022年にかけて、アメリカでは郊外の貧困率が都市の貧困率の3倍のペースで上昇したが、とくに南部、西部、中西部の主要都市近郊では、貧困層が急激に増えた。大統領選ではトランプ支持の強い州や激戦州と言われた地域だ。
歴史的にもアメリカ経済の相対的な衰退は明らかだ。1960年代にはアメリカのGDPが世界の4割をこえていたが、現在は4分の1程度になっている。国際競争力の低下の趨勢は否めない。とりわけ第二次産業の弱体化は著しい。
こうした状況に、トランプは関税障壁を高くし、自国産業に補助金を巨額投入することによって、米国経済を活性化させようと政策主張している。だがそうした経済政策は効果をあげることができるだろうか。
第一期トランプ政権の崩壊
前回2020年の米大統領選でトランプはバイデンに敗れた。トランプは民主党が不正選挙で勝利したと主張し、連邦議会占拠の暴挙さえ行ったが、結果は覆らなかった。4年間の第一期トランプ政治は、米国内の格差・貧困、人種差別の拡大などによるかつてない社会分裂をもたらし、また国際的機関からの撤退・非協力など自らの孤立を強めることとなった。だが、トランプの政策に利益をえる層はたしかに存在する。こうした層に呼びかけることでトランプは再選を狙ったのであったが、一定層の票の掘り起こしには成功したものの、それを上回る反トランプの様々な声を呼びおこした。
人種差別・白人至上主義への激励、新型コロナに対するまったく誤った政策の強行、医療保険制度の改悪などアメリカ社会を破壊するトランプの行動は、前回2016年の大統領選挙でトランプ・共和党を支持した諸州でも民主党回帰の現象が起こり、いわゆる激戦州におけるバイデン票ののびとなったのであった。 そうして誕生したバイデン・ハリスの政権だったが、米国が抱える内外における諸矛盾を、この政権が解決するのは不可能だとみられていた。だが、それが現実となった。前回も今回も、共和・民主のどちらであろうと現政権の政策が否定されたのである。それほどまでにアメリカの抱える問題は深刻なのである。
トランプと中国
トランプの外交問題として焦点になっているは、ウクライナ、中東とともに東アジア問題であるが、とくに対中国政策がどうなるかが日本にとっても重要な問題である。
トランプは、関税を外交の武器として使っているが、大統領になったら全輸入品に対して10~20%の関税をかける、とくに中国には全輸入品に60%の追加関税をかける、個別ではメキシコからの輸入自動車にも100~200%の関税をかけると言っている。
関税をめぐって米中対立は激化するだろうが、中国側の反応は、高関税競争に出る対抗よりはちがった対策をとることになるだろう。中国は制裁を奇貨として、自国のハイテク産業化、BRICS+や一帯一路による市場・サプライチェーンの構築をすすめてきた。
台湾問題がどうなるかだが、新政権はまだ確定的な方針をだしていない。
だが、反中国政策も具体的にはさまざまなディールによって米中交渉が進められるだろう。
とくに中国との太いパイプを持つテスラのイーロン・マスクの新政権におけるポストがどうなるかによって大きな影響が出るだろう。
トランプとむきあう日本
弱体石破内閣への強烈な対日要求は、日本の政局に重大な採用を及ぼすだろう。日本政府の最大の懸念は、岸田政権でGDP比2%への大幅増を決めた防衛費のさらなる増額を求める可能性である。高額の米国製武器の大量購入はもとより在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)の増額を求めてくることだろう。また日本の基幹産業である自動車・同部品の分野における米国の自動車安全基準の多くを日本でも採用することなど非関税障壁の撤廃、日本製自動車の対米輸出数量規制等を求めてくる可能性がある。これに石破政権は対抗することができないだろう。トランプの「アメリカ・ファースト」政策で日米同盟の従属の実態がいっそう明らかにある。対米関係の見直し、日本の自主性の回復が求められている。
関生弾圧=産業別労働組合潰しを許すな!
労組弾圧を跳ね返そう・反弾圧シンポジウム
10月19日、国鉄労働会館・地下ホールで、関生弾圧=産業別労働組合潰しを許すな!関生支部・湯川委員長の実刑判決阻止し無罪判決勝ち取ろう!のスローガンをかかげ、全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部の主催「反弾圧シンポジウム in 東京」が開かれた。
関生支部の湯川裕司委員長が主催者挨拶。関生支部のすすめる産業別労働組合運動は経営による労働者の企業分断に抗して闘い、それをおそれる資本、右翼、警察・検察は一体となった弾圧を行ってきている。関生弾圧に対しての多くの労組の支援に感謝するとともに、弾圧をはね返し、関生支部が闘っている京都3事件、滋賀の控訴審、加茂生コン差し戻し審などの無罪判決を勝ち取るために闘い抜く。
つづいてのパネルディスカッションのパネリストには、立命館大名誉教授の吉田美喜夫さん、ジャーナリストの竹信三恵子さん、東京新聞記者の望月衣塑子さん、豊中市議の木村真さん、全港湾大阪支部委員長の小林勝彦さんと弁護団。関生支部書記長の細野直也さんがコーディネーターを務めた。
関生支部が闘う事件の内で京都事件は、ベストライナー事件、近畿生コン事件、村田建材(通称加茂生コン)事件である。①ベストライナー事件では2019年9月4日に組合員2名が逮捕された。事件概要は、2014年3月、8月、京都協組が実質的に設立した生コン輸送会社(ベスト・ライナー)を解散させて同社在籍の組合員を他の輸送会社に移籍させる際、当該組合員らの退職金等を要求し、京都協組から1億5千万円を支払わせたことが「恐喝」とされたものだ。②近畿生コン事件では2019年7月17日に組合員2名が逮捕された。事件概要は、2016年10月、京都協組に加盟していた生コン会社(近畿生コン)が破産した際、近畿生コンの工場が同業他社に売却されるのを防ぐ目的で組合が工場占拠行動を行った。この占拠行動にかかった費用として京都協組から6千万円の交付を受けたことが「恐喝」とされた。③村田建材(加茂生コン)事件では、2019年6月19日に組合員5名、企業側2名が逮捕された。2017年10月から翌年初め、組合結成をした従業員の正社員化を求めたことおよび就労証明書を求めたことが「強要未遂」とされた。また、村田建材に対してミキサー車の譲渡とプラント解体を要求したことが「恐喝未遂」「強要未遂」とされた。
これらのうち「ベストライナー事件」「近畿生コン事件」では、6月17日の京都地裁で、湯川委員長と武建一前委員長の刑事裁判が開かれ、検察側は両者に対してなんと懲役10年を求刑した。まさに常軌を逸した異常な求刑であり、検察側の中小企業協同組合と労働組合の共闘によって賃金原資の確保をめざす関生型の産業別労働組合運動への敵対意識のあらわれである。
弁護団は、検察の主張の数々の誤りを指摘して、裁判闘争は勝利できると熱弁を振るった。「実刑判決阻止するための世論づくりとは」についてパネリスト各人から発言がなされた。
全日建中央本部書記長の小谷野毅が集会のまとめを提起したあと、労働組合つぶしの大弾圧を許さない京滋実行委員会の服部恭子さんが閉会の挨拶をおこなった。
労働組合運動に対する不当な弾圧を許さず、すべての争議に勝利しよう。
大垣警察市民監視事件裁判・名古屋高裁判決の画期的意義
市民運動に対する警備公安警察の不法不当な監視、権力の企業との癒着には目に余るものがある。こうした不当な弾圧に対する闘いは各地で続けられてきたが、2024年9月13日、名古屋高等裁判所は、大垣警察市民監視違憲訴訟の控訴審において、公安警察による個人情報の収集・保有・提供を違法とし、損害賠償請求と個人情報の抹消請求を認める画期的な判決を言い渡した。そして、10月2日、被告・岐阜県は、上告又は上告受理申立てを断念する旨を公表し、名古屋高裁判決が確定することとなった。
公安警察の情報収集・保有・利用を断罪した名古屋高裁判決を受けて、11月6日、参議院議員会館で、「秘密保護法」廃止へ!実行委員会、共謀罪NO!実行委員会、日本国民救援会、共通番号いらないネットの共催による院内集会「警察の市民監視や情報収集は違法!―大垣警察市民監視事件裁判から学ぶ―」が開かれた。
講師の中谷雄二さん(大垣警察市民監視事件・白龍町暴行でっち上げ事件代理人)が「違憲・違法の市民の個人情報収集」と題して講演。大垣警察市民監視事案とは次のようなものだ。中部電力の子会社であるシーテック社が、2013年・2014年当時、岐阜県上石津町及び関ヶ原町において建設を計画していた風力発電事業施設の建設計画を巡り、環境破壊を懸念した地元住民らの個人情報を岐阜県大垣警察署の警備課がシーテック社に提供し、情報交換を行っていたとの報道がされた(2014年7月)。報道によって自分の情報が提供されたと知った原告4人が、シーテック社に対して証拠保全を行ったところ、大垣警察署とシーテック社の議事録が残されており、関係住民の人間関係、勤務先、経歴まで、大垣警察警備課はシーテック社に提供していたことが明らかになった。原告らは、個人情報を長年にわたって収集、保有し、それらの情報の一部を民間企業に提供したことを原告らの人格権としてのプライバシー等が侵害されたとして、被告県に国家賠償を求め、県と国に対して、人格権としてのプライバシーに基づき、保有する個人情報の抹消を求めた事件だ。
この裁判では、①公安警察による情報収集・保有・利用・提供行為は合憲・合法か、②根底にある市民運動への敵視は、憲法の観点から許されるのか、③警察活動の法的根拠と憲法が許容している警察活動は何か、④法治主義国家として、警察に対する法的統制はどうあるべきか、⑤司法の役割は何か、というとことだった。
一審岐阜地裁判決では、主文「一人50万円(合計220万円)、情報の漏洩を理由に損害賠償を認容。個人情報の抹消は、却下」で、判決理由「情報の提供の点は、違法性を認めたが、情報収集について、抽象的な必要性を認定。法律上の根拠がないというだけで国賠法上の違法性がないとは言えない」とした。問題なのは、本件情報収集の必要性について「原告らは過去に公共の安全と秩序の維持を害するような市民運動を行ったことはなく、原告らが公共の安全と秩序の維持を害するような具体的活動をしていなかったことによれば、本件情報収集等の必要性はそれほど高いものではなかったが、仮に上記のとおり原告らの活動が市民運動に発展した場合、抽象的には公共の安全と秩序の維持を害するような事態に発展する危険性はないとはいえない。大垣警察が万一の事態に備えて原告らに関する情報収集等をする必要性があったことを否定できない」としたことだ。「原告らの活動が市民運動に発展した場合、抽象的には公共の安全と秩序の維持を害するような事態に発展する危険性はないとはいえない」と市民運動を危険視しているのである。
原告側は名古屋高裁へ控訴し、次のような主張を行った。自衛隊を除けば、最大の実力組織である警察の統制は、厳格な法治主義に基づく統制が必要で、立法によって国家的「公安」が設定されても、必然的に曖昧なものにならざるをえない。立法が抽象的曖昧な規定の場合は、犯罪行為や犯罪行為につながる可能性のある場合にとどまらず、警察が国家的な「公安」を乱す行為一般にまで監視の範囲が広がる危険性がある。これを統制するのは、国民の権利・自由を擁護する任務をもつ司法権の役割で、一義的には、国会による立法を通じて警察力を統制すべきであるが、現に統制するための具体的な法律がない現在、裁判所が、本件のような個別事件における審査を厳しく行うことによって、立法を促すほかない。本件で明らかになった警備公安警察による市民監視が、抽象的一般的な警察法2条1項のみを根拠にして許されるなら、警備公安警察の恣意的な権力行使により市民の基本的人権の制約は、事実上野放しとなる。これは、法治国家とはいえない不正常な状態である。裁判所は、犯罪の発生や社会秩序の違反が具体的に発生する危険のない本件のような事案において、警備公安警察の情報収集活動と、収集した情報の保管、利用・活用に法的統制をかけること、つまり、そんな場合には、情報収集活動自体を違法と認定し、収集した情報の保管、利用・活用を違法と認定することで司法による統制を図る必要がある。その意味でも、本件において警備公安警察の情報収集活動の違法性と違法に収集した情報の保管・利用・活用を違法と認定することは、法治主義を貫徹するために、不可欠である。
そして、この9月の名古屋高裁の判決となった。判決は、「(一審原告らの活動は)いずれも犯罪行為を行ったり、反社会的集団と関係をもったりしていたものではない」とし、原子力発電所は、「その立地を含めた建設計画、建設工事、実際の運転及び避難計画等が完全なものでなければ極めて危険な施設(公共の安全を害する施設)であり、いったん事故を起こせば、広範囲に回復困難で深刻な影響を生じさせることは公知の事実であるところ、完璧を求めたり、その水準に達しない原子力発電所の建設に反対したりすることは、極めて正当な行為であって、原子力発電所が建設される地域の住民のみならず、国民全体の福祉ないし利益に資するものであるし、ダムについても、治水、利水に有用なものではあるが、その建設によって地域社会や自然環境が破壊されたり、ゲートの誤操作等によって下流に危険を及ぼしたり、場合によっては上流側へも背水の影響等を生じさせたりするなど、常に建設が望ましいわけではなくこれに反対したり、建設計画に不備がないか検討したり、改善を求めたりすることは、極めて正当な行為である。また、ゴルフ場建設や産業廃棄物処分場についても、プラス面、マイナス面があるのであって、賛成、反対いずれの立場に立って運動等を行うなどしても、非難されるべきものではない。その他の原告らの活動についても、社会通念に従って考えて、非難されるべきものはなく、むしろ推奨されるべきものも含まれている」とした。「むしろ推奨されるべきものも含まれている」とまで言ったのである。まさに画期的な意義を持つ判決であり、市民の権利を守るための大きな武器を勝ち得たといえる。
警察に対する法的統制・立法による統制、監視機関、司法的統制の必要性はますます高まっており、今後、裁判所の本質と制約を理解した活用を行っていくべきである。裁判所の役割は、国家の行為の正当化のための国家機関ではあるが、日本の裁判所・裁判官の特徴として、「憲法保障には熱心ではなくとも、私権の救済には真面目」だということがあげられる。そして、日本社会が一色に塗り込められようとし、個々人の人権がともすれば軽視される現状だからこそ、違憲・違法な公権力の行使に歯止めをかける-チェックのための異議申立が必要であり、権利行使によって、異議申立をすることが憲法の求める人権確立のための不断の努力ではないか。警察に対する立法的統制と監視機関の必要性の声をもっと広げていこう。
つづいて、大垣警察市民監視事件裁判原告、秘密法と共謀罪に反対する愛知の会の近藤ゆり子さん、共通番号いらないネットの宮崎俊郎さんが発言した。
STOP! 核軍拡・核兵器拡散
日本被団協にノーベル平和賞
日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)がノーベル平和賞を受賞した(10月11日、ノルウェー・ノーベル委員会発表)。
被団協は、長年にわたって国や自治体に援護施策の拡充を求め、同時に被爆体験の証言や原爆展の開催、署名活動などを通じ、国連軍縮特別総会や核不拡散条約(NPT)再検討会議といった国際会議に代表者を派遣するなど世界に向けて核兵器廃絶や核実験禁止を訴え続けてきた。
ノルウェー・ノーベル委員会は、受賞の理由を「今日、核兵器使用のタブーが圧力を受けていることは憂慮すべきこと」であり「いつの日か、被爆者は歴史の証人ではなくなるでしょう。しかし、記憶を留めるという強い文化と継続的な取り組みにより、日本の若い世代は被爆者の経験とメッセージを継承しています。彼らは世界中の人々を鼓舞し、教育しています。このようにして、人類の平和な未来の前提条件である核兵器のタブーを維持する手助けをしているのです」とした。
被団協のノーベル平和賞受賞は核廃絶に向かっての大きな前進である。この成果を受けて「核兵器のタブーを維持」から、具体的な核兵器禁止・廃絶にむかっていっそう力強く前進を行っていかなければならないときである。
2021年には国際条約として核兵器禁止条約(TPNW)が発効した。今年の9月現在、署名が94か国・地域、批准が73か国・地域にまで拡大している。しかし、唯一の被爆国をアピールする日本政府は「日本は唯一の戦争被爆国であり、政府は、核兵器禁止条約が目指す核兵器廃絶という目標を共有しています。一方、北朝鮮の核・ミサイル開発は、日本及び国際社会の平和と安定に対するこれまでにない、重大かつ差し迫った脅威です。北朝鮮のように核兵器の使用をほのめかす相手に対しては通常兵器だけでは抑止を効かせることは困難であるため、日米同盟の下で核兵器を有する米国の抑止力を維持することが必要です。」(核兵器禁止条約と日本政府の考え)とアメリカの世界的な核軍事戦略に積極的に加担し「核抑止」「核の傘」論にしがみつきまったく核兵器禁止には逆行している。
だが、自公与党過半数割れの総選挙後、立憲民主党、共産党、社民党など立憲野党はもとより、維新の会を含めて、日本政府の核兵器禁止条約へのオブザーバー参加や批准を求める声があいついでいる。
核兵器禁止の世論の風圧を前に、石破茂首相は10月13日のNHK日曜討論では、核兵器禁止条約へのオブザーバー参加について「これからよく議論する」と述べざるを得なくなっている。そして石破首相は核軍縮に向けて国内外の有識者らが議論する「国際賢人会議」(11月8日)にむけてのメッセージで「現在の国際社会では核抑止が必要という現実がある」としたうえで、「核兵器のない世界」の実現に向け具体的な道筋を模索する考えを強調するなどしている。
だが、米国の顔色をうかがうばかりの日本政府にそうしたことができるか。石破の発言を追及して、日本政府としての行動を起こさせなければならない。唯一の戦争被爆国である日本政府が、核兵器廃絶の先頭に立たなければならないのはあまりにも当然である。日本が核兵器禁止条約に参加すべきとの声は大きくなっている。
日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を求める運動を強めていこう。
国連サイバー犯罪条約の問題性
8月に、国連で国境を越えて行われるサイバー犯罪を取り締まるとして、新たな国連サイバー犯罪条約の草案が合意された。条約は「締約国に取り締まりに向けた対策の強化を義務づけているが、人権団体などは新条約への懸念を強めている。
JCA―NET(日本の通信NGOでAPC〈進歩的コミュニケーション協会〉とともに、世界のAPCメンバー40カ国以上のパートナーとの協力により、社会的、環境的、経済的正義、性による差別の克服を求める社会運動を、情報通信技術を使って支援している)は、「国連サイバー犯罪条約の問題点と要求の背景」として、①通信の秘密を侵害する、②令状主義の死、③法執行機関に過剰な権限を与えており、人権へのより一層の侵害がもたらされる、④海外との捜査共助が国境を越えた人権侵害に加担する可能性がある、⑤コンテンツ監視は検閲であり、表現の自由、思想信条の自由への侵害であることを指摘し、「JCA―NETは、これまでも世界中の人権団体などとともに、本条約がグローバルな監視体制を格段に強化し、結果として私たちのコミュニケーションの権利をはじめとする基本的人権を大きく侵害することなど、批判を表明してきた。また、憲法21条の通信の秘密条項等と相容れないことなど、多くの問題点と危険性を指摘してきた。しかし残念ながら、私たちの要求は事実上無視された。JCA―NETは、あらためて、日本政府に対して以下を強く要求する。①日本政府は、国連総会における国連サイバー犯罪条約の採択に反対すること、②内閣は、憲法に反する条約の締結を認められていない。国連サイバー犯罪条約が国連総会で採択され、各国による批准の手続きに入った場合、日本政府は条約を締結しないこと、③日本政府は、国連サイバー犯罪条約が求めている国内法の整備に応じるべきではなく、むしろ、国際的な人権基準すら満たしていない日本国内の刑事司法分野における人権侵害の現状を改善すること」。
今月のコラム
映画「五香宮(ごこうぐう)の猫」(想田和弘監督)を観る
子供の頃は田舎暮らしでいつも家には猫がいた、多いときは3匹、みな野良猫が住み着いたもの。時々蛇を摑まえてきてしばらくなぶって飽きるとふらっとまたどこかへ行ってしまう。恐る恐る棒に引っ掛けて後始末をするのに往生した。寒くなると布団の中に潜り込んできて、のどをゴロゴロ鳴らす。寝返りを打った途端ギャッといって引っ掻かれたこともある。翌朝はシーツが泥だらけになっている。行方不明になって1年も経った頃、突然駆け込んできて餌の皿に一直線、がつがつと食べ始めた猫もいた。ガリガリに痩せてどこでどうしていたものやら、何故戻ってきたのか、想像もつかない。猫には何やらミステリアスな雰囲気がある。
猫をめぐる人間模様
冒頭はマイクをガリガリかじる猫に監督が語りかけるシーン。撮影・録音はすべて監督自身が行う。事前のリサーチなし、台本なし、ナレーション・説明テロップ・音楽なしが監督の「観察映画」の手法。監督夫婦が住む岡山県瀬戸内市ののどかな港町・牛窓(うしまど)には猫がたくさんいる。ほかの町から月に一度やってきて餌をやり、なじみの猫に名前を付けて「今日はいないな~」と探す女性は癒しが得られるのだ、と言う。猫の写真を撮りに訪れる人は、猫で地域が有名になるのは却って猫にとって良くないと語る。防波堤で釣りをする年金生活の男性たちは、釣った魚を猫にふるまうが、その前に猫がかっさらってしまうこともある。母猫は子猫に魚を咥えて運んでやる。鎮守の社・五香宮は猫たちのたまり場だ。「猫神社」と呼ぶ人もいるくらい。猫の保護活動を行う人々が餌場を作り、傷ついた猫を治療し、猫の不妊・去勢手術を実施し、死んだ猫を葬ってやっている。
住民は猫好きとは限らない。糞尿その他のことで迷惑に思っている人がいる。ペットボトルに水を詰めて侵入防止柵にしている人もいる。寄合いで猫対策が話し合われる。感心するのは猫保護派も猫困る派の人々も何とか折り合いをつけて猫との共存を図ろうと話し合う姿勢だ。以前私の住む団地の管理組合総会で「ペット飼育禁止」の管理規則改正案が提出されたことがあった。かなり強硬な提案で、それを支持する発言が相次ぎ、ただでさえ少数派のペットを飼っている住民からは気おされてかほとんど発言がない。私は何とか折り合えないかと折衷案を出したが、圧倒的多数の賛成で原案が可決された。ペットを飼っている住民は諦めと憤懣の面持ちを隠さない。あれから随分経ったが、「一代限り」という暫定措置はあったものの、「あそこの犬はずいぶん若返ったみたいだね(笑い)」などと陰口が飛び交う。住民にしこりは残り、ペット禁止は事実上形骸化しているようだ。厳密にやろうとすれば一匹一匹のペットの写真を撮り、毎年現物と照合し、違反があった場合にはペットの処分を勧告しなくてはならない(実際そうしている管理組合もあると聞くが、本当だろうか?)。誰が管理組合の役員になってもそんな仕事をやりたくないだろう。団地は寄合い所帯だ、住民同士だって相性のいい・悪いはある。ペットは禁止できても気に食わない住民を追い出すわけにはいかない。お互いの立場を理解しようと努力しながら対話を重ねる牛窓の人々が“大人”に見えた。
富豪のような豊かさ
牛窓は過疎の町である。お年寄りの姿が多い。五香宮境内に花やハーブを植え、育てる人がいる、草刈りをする人がいる、台風で吹き寄せられた枝木の山を片付ける人がいる…どれも自発的な活動だ。寄合で神社の御簾を更新するための寄付について相談する。御簾の奉納。お祭り。お年寄りが集い話の花を咲かせる寄合いがある。カメラが趣味という女性は、カメラの機種に実に詳しくて監督を感心させる。カメラを興味津々覗き込む小学生。課題学習でインタビューに訪れた子どもは映画監督になった理由を質問する。凪いだ海のおだやかさ、すさまじい嵐、美しい日没、カタツムリやセミ・燕などの生き物…循環する時間。監督は27年間ニューヨークで暮らしたが、2021年牛窓に移住した。牛窓はお連れ合いでありプロデューサーである柏木規与子さんの母親の出身地。最初はコロナ禍での一時避難だったが、ゆったり流れる時間と自然に魅せられて「ここで暮らしたいな」と思うようになった。
映画製作と並行して内田樹との対談を行った(「下り坂のニッポンの幸福論」-青幻社)。「対談中“あの内田樹とウチのコタツに座って話をしている”ことの不思議さに、何度も目眩を覚えた。海を眺めるため窓を開け放っていたので、悪戯好きな茶太郎やチビシマ(注 監督夫妻が保護した兄弟猫)が部屋に繰り返し侵入し、そのたびに“捕り物”をした。そうして話し込んでいるうちに陽が沈み、宵の明星が輝き、夜のとばりが下り、お互いの顔も見えなくなっていった。それでも僕らは電気もつけずに、星が瞬く闇の中で対話を続けていった。それはまさに富豪のような時間だった」(おわりに)。 (新)
せんりゅう
日輪出でて百鬼失せ去り
論もせず逃げの選挙の夢のあと
如意棒をどこへ落としたイシバ殿
アベの影自公邪悪の夢がばれ
首相の名もういらないの支持率
自公国そんなお国は耳にない
折り鶴飛び巡りノーベル賞
ゝ 史
2024年11月
複眼単眼
総選挙の八王子モデル
今回の総選挙の結果は、与党が過半数割れを起こして、国民民主党と事実上の「部分連合」を組まずには新内閣が組織できなくなり、また至上課題としてきた「改憲」に必要な3分の2議席にも、自公以外の改憲勢力(維新の会、国民民主、参政、日本保守、無所属与党系)を加えても達しないという事態となった。
石破政権に対する党内外からの風当たりは強まり、右派系メディアまでが「政権に居座り、政局の混乱を長引かせることは許されない」(読売社説:10月29日)、「責任をとって潔く辞職すべき」(産経主張:10月29日)とか、「改憲勢力冬の時代」(産経記事)というなど、危機に直面している。
国民民主党の助けをえて、どうにか第2次石破内閣は船出するわけだが、日本の政治は「安倍政治の時代の終焉」で、政治危機の時代、大動揺の時代に入ったことは疑いない。
総選挙を前にして、2016年以来の「市民と野党の共闘」が中央段階では立憲民主党と共産党が政策協定を結べないという事態に陥り、大きな困難に直面した。しかし、「市民と野党の共闘」を求める全国の市民たちは公示日の前日まで、可能な限りのちからを尽くして、ひびの入った市民と野党の共闘の再構築のために奮闘した。これらのたたかいは各地で重要な成果を上げた。
従来から共同の運動を堅持して来た「オール沖縄」(4議席中2議席+比例復活1議席)、立憲民主党が5つの全選挙区で勝利した新潟県、そして宮城県(5議席中4議席)、長野県(5議席中3議席)などが、従来型の「市民と野党の共闘」を県レベルで実現し成果を上げた。また、前回の総選挙以来、「杉並モデル」とよばれてきた市民運動がイニシアチブをとって広範な立憲野党勢力をまとめ上げて勝利した東京8区(杉並モデル)は今回も同様にたたかい勝利し、加えて今回は同様のたたかいを東京24区が実現した。
これは新たに「八王子モデル」として加えられてよい。八王子の市民は、安倍派5人衆の中心人物で、統一協会、創価学会とベッタリ・ズブズブの、2728万円の裏金を机の引き出しに隠していた(!)という萩生田光一前自民党都連会長に対抗して、元参議院議員でジャーナリストの有田芳生候補を擁して挑み、ぎりぎりまで肉薄して、比例区復活当選を勝ち取った。有田陣営は10年に及ぶ粘り強い平和のための八王子の市民運動の積み重ねと、公認した立憲民主と、支持して奮闘した共産、社民、新社会、生活者ネット、無所属市議、八王子の元自民党代議士、れいわ有志、労働組合など可能な限りの民主主義勢力が協力してたたかった市民主導型選挙だった。これは公営掲示板のポスター掲示を共産党が全て引き受けたり、党の幹部たちが応援のために八王子入りするなどしたねばり強い運動のつみかさねの上に、相互のリスペクトを前提にした「おつきあい」的な共闘にとどまらない文字通りの共同が展開された。
これらの選挙区以外にも当選には至らなかったが、全国には共同を真剣に追求した沢山のたたかいがあった。
杉並・八王子モデルをはじめとして、今回勝ち取った典型に学びながら、政治の流動化局面を有利な条件として、さらに戦争と改憲に反対し、政権交代につなぐことができるかどうか、これからの運動の真価が問われている。 (T)
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