人民新報
 ・ 第1441号統合534号(2025年1月15日)

                  目次


●  大激動の2025年

        総がかり行動と野党共闘を強め自民党政治をおわらせよう

●  アジア平和体制のための構想と協議を  金敬敏さんの19日行動メッセージ 

●  「AIで電力需要増大」の大ウソ
 
        原発再稼働・増設を許さない闘いを!

●  島根原発再稼働反対 絶対に諦めない

●  労働組合には要求を実現する力がある!

        関生支部への弾圧を跳ね返せ!

●  袴田巌さん無罪から再審法改正へ

●  今月のコラム  /   「折々のうた」から

●  せんりゅう

●  複眼単眼  /  韓国民衆の闘いに思いを馳せる





大激動の2025年

        総がかり行動と野党共闘を強め自民党政治をおわらせよう

 1月20日にトランプ第二期政権が発足する。トランプは米国一国覇権体制をさらに強化しようとするが、その意図とは真逆の世界的混乱とパックス・アメリカーナの弱体化をもたらすことになるだろう。トランプは関税障壁を高くし、また自国産業に補助金を巨額投入することによって、米国経済を活性化させようと主張している。だがそうした政策は、中長期的に見れば、各国の反発と対抗関税をもたらし、米国の過保護産業の競争力の低下、なにより米国のインフレの増進をもたらすことになる。
 第二期トランプ政権の人事であげられたいずれの面々もトランプそのひとと同様に過激な言動が目立つ人びとである。
 とりわけ外交面では、いちだんと強権的反民主的手法が激化することになる。ロシアのウクライナ戦争、イスラエルのパレスチナ戦争への対処、そして東アジア、また米欧関係もどう展開するか展望はむつかしい。カナダの米51番目の州化、デンマーク自治領のグリーンランドやパナマ運河の領有発言などまで飛び出してきた。環境問題の深刻化、米中対立の激化、同盟・有志国への軍備増強の圧力の強化など、世界に大混乱と大きな被害がもたらされるだろう。

 トランプ政権の大幅な軍備増強など対日要求は日本にもおおきな衝撃をもたらすことになり、日本社会の階級対立、諸政治勢力の抗争はより激しいものとなる。
 自民党の裏金問題、統一協会との癒着、所属議員の不祥事などに対する世論の怒りは大きく、石破新総裁・新首相の下での10月総選挙では歴史的な大敗・与党の過半数割れという事態となった。
 その後も石破政権への支持率は低迷し続けている。自民党内での派閥軋轢も収まらない。
 自民党はこうした状況で、国民民主党や維新の会などを引きつけて国会運営を乗り切ろうとしているが、自民党政治に対する批判が強い中では第二与党と言われる両党も自民党へのすりよりは難しい。だが支配層は彼らの難局をのりきるためになにをしだすかわからない。

 石破茂首相は1月1日の年頭所感で、三つの重要政策課題として、その第一の「外交・安全保障上の課題への対応」で、「外交と防衛を車の両輪として、我が国の国益を守り」とし、とくに「防衛力の根幹である自衛官の生活・勤務環境や処遇の改善にも取り組んでいきます」とした。第二として「日本全体の活力を取り戻すこと」をあげ、「深刻な人口減少」を「静かな有事」とし、持論の「地方創生2・0を起動し、東京の一極集中を是正し、魅力ある地方と都市が結びつき、多様な国民の幸せが実現できる」ようにし、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を強調した。第三は、「治安・防災への更なる対応」として「令和8年度中の防災庁設置」と「闇バイトなどの強盗・詐欺被害」対策をあげた。
 1月6日におこなわれた石破の年頭記者会見では、「強い日本」「豊かな日本」から第三の「楽しい日本」を目指すべきだとし、「令和の日本列島改造」を第一の柱と位置付ける「地方創生2・0」を強力に推し進めるとした。だが、日本社会が落ち込んでいる厳しい情勢を突破する覇気も展望もないものだった。
 石破はトランプ政権との関係構築に苦慮している。石破のアジア版NATO構想や日米地位協定の見直しなどは、米国側に一蹴されただけでなく、石破はトランプの盟友・安倍の政敵だとの認識もあり、日米両政府間の関係の改善どころか悪化も予想される。
 石破は当選直後のトランプとの電話会談で軍事費の大幅増額をつきつけられた。石破はトランプに、どこまで譲歩させられていくのか。そのことは、日本の政局に激震を走らせることになるだろう。

 通常国会が1月24日に始まる。夏には東京都議選、参院選がおこなわれる。それに衆院解散・総選挙の可能性もある。日本の政治も激動期にはいった。多くの人びとが政治に関心を寄せる条件が熟しつつある。
 維新・国民の改憲勢力を孤立させ、改憲と軍拡の石破政権を倒し、市民運動の力で世論をつくり、野党に働きかけ、市民と野党の共闘を再構築しなければならない。多くの市民が市民と野党の共闘の推進をねがっている。
  反戦平和改憲阻止運動、総がかりの運動をいっそう強め・拡大しよう。
 参院選では必ず市民と野党の共闘を再構築しよう。
 市民と立憲野党の共闘を強化して、石破自公政権を打倒し、自民党政治をおわらせよう。


アジア平和体制のための構想と協議を

        金敬敏さんの19日行動メッセージ

 戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会と9条改憲NO!全国市民アクションの共催で、12月19日、衆議院議員会館前を中心に、『軍拡ではなく暮らしを守れ! the END 自民党政治 国会議員会館前行動』が開かれた。集会では、韓国から、戒厳令阻止、ユン・ソクヨル政権打倒を目指して闘う金敬敏共同代表(日韓プラットフォーム韓国運営委員会/韓国市民社会連帯委員会/韓国YMCA全国連盟事務総長)が参加して発言した。

19日行動メッセージ
 こんばんは。
 平和と民主主義を愛する日本の同志、市民の皆さん!韓国と日本の市民社会とは長い間、平和と連帯の絆で深くつながっています。特に、12月3日の夜、非常戒厳令が宣言された後、12月5日にすぐに記者会見を行い、非常戒厳令を非難し、韓国の民主主義と市民社会に連帯と支持を表明してくださったことに深く感謝いたします。
 12月3日の夜、非常戒厳令が宣言されると、数人の市民社会指導者が対策討議のために集まりました。 非常戒厳令を3回経験したあるご高齢の先輩は、この度の戒厳令宣布に対する抗議行動に出かける時に、自分がこの度はどうなってしまうか心に不安がよぎりながらも妻に「また会おう」と挨拶をして出て行ったそうです。
 光州民衆抗争は、軍部が緊急戒厳令を宣言した1980年5月17日の翌日、1980年5月18日に起こりました。 緊急戒厳令は韓国人にとって拷問と血の虐殺を意味します。
 今回の非常戒厳事態は、1980年よりも多くの軍が関与しており、国情院などの権力機関が広範囲に関与した緻密に計画された内乱であったことが具体的に明らかになっています。
非常戒厳令布告の発表にもかかわらず、国会前に集まり、武装した戒厳軍と装甲車を素手で阻止した市民の行動と、国会の迅速な非常戒厳令撤廃要求決議案の通過により、非常戒厳令を一旦阻止することができました。特別戦闘隊や707部隊など最精鋭の兵士たちの消極的な対応も、国会の戒厳令廃止に大きな力になりました。
 大韓民国の憲法第1条では大韓民国は民主共和国である、憲法第2条ではすべての権力は国民に依拠すると明記しています。憲法1条と2条は、民主主義のための闘争を通じて市民の心に深く内面化されています。
市民社会はすぐにユン・ソクヨルの即時退陣、社会大改革緊急行動を結成し、12月14日、200万人を超える市民が国会前に集まった中、ユン・ソクヨル弾劾を国会で可決しました。
 しかし、今回の非常戒厳令の過程で注意深く見なければならない部分があります。
 国会は非常戒厳宣布後の一連の過程を内乱と規定し、ユン・ソクヨルを内乱の首謀者として弾劾しましたが、ユン・ソクヨルが北朝鮮を刺激して戦争を誘発し、戦争状況を根拠に戒厳統治を試みようとしたことが至るところから明らかになって来ています。無人機の平壌上空への侵入、汚物風船の出発点打撃命令など、少なくとも3回以上の試みがありました。分断状況を利用して戦争を誘発し、強権集中化を夢見た狂人がユン・ソクヨルです。そして、朝鮮半島の分断は人間の安全保障と平和・韓国の民主主義と繁栄を脅かす最も根本的な問題といえます。また韓国は持続的な敵対行為と年500回を超える米韓連合訓練などの武力挑発、そして無人機の平壌侵入などを行ってきましたが、そのような南側からの挑発に対して軍事的に対応しない北朝鮮を高く評価します。
 韓国は産業発展と民主主義を実現した国ですが、なぜユン・ソクヨルのような人が大統領になり、また非常戒厳令が宣言されるのか、多くの人が疑問を抱いています。
 韓国の現代史は、日本植民地時代の残滓を清算できず、分断状況を利用した軍事独裁時代を経験し、民主化後も親日軍事独裁に回帰しようとする極右勢力との命をかけた闘争の歴史であり、市民抗争の歴史です。
それゆえ私たちは自信を持って申し上げます。大韓民国は市民が興し、市民が守り、築いてきた市民の国だと自覚しています。そして私たち市民は大日本帝国の植民地支配に協力した裏切り者、そして南北分断の傷と今も苦しみながら闘争しています。
 今回の弾劾後の日程は大きく2段階に予測されます。 約2ヶ月間の憲法裁判所によるユン・ソクヨル大統領の罷免手続きと罷免後2ヶ月以内の大統領選挙の過程で展開されるでしょう。
 朝鮮半島の平和と民主主義は、東アジア地域の秩序にも深く影響します。
 米国は中国を圧迫する日米韓軍事同盟と、安倍首相が推進したインド太平洋戦略を積極的に推進してきました。
 韓米日軍事同盟の締結は、東アジアを軍事的葛藤と危機の場として来ましたが、韓日市民社会は、そのような戦争への道ではなく、東アジア平和体制のための構想と協議を進めることを提案します。
 憲法9条を守るための日本市民社会の闘いは、東アジアの平和体制確立のための貴重な資産となり、その献身に深い敬意と連帯の気持ちを皆さまにお伝えします。
 石破首相が主張するアジア版NATOではなく、米国と中国、日本、韓国、北朝鮮などが相互の安全を保証する東アジア多国間平和体制の確立の可能性などを協議して行きたいのです。
 韓国と日本社会が友人として友情を分かち合い、民主主義と平和の定着に向けた大行進を共にする同志として、そして長い道のりを共にする友人として、いつも一緒にいてほしいと思います。
 ありがとうございました。

●2月5日12時から14時に、参議院議員会館講堂で「『私たちは韓国市民の尹錫悦政権退陣民主化闘争に連帯します』連帯声明」賛同連署者一同の主催による日韓市民と国会議員の院内集会&記者会見「私たちは韓国市民の尹錫悦政権退陣民主化闘争に連帯します」が開かれる。


「AIで電力需要増大」の大ウソ

        原発再稼働・増設を許さない闘いを!

 政府、電力会社、原発推進派は、今後AI(人工知能)などの普及を口実に原発推進・再稼働の世論をつくろうと躍起になっている。
 経済産業省は第7次エネルギー基本計画の策定を進めている。資源エネルギー庁の総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会では、AI普及によるデータセンターや半導体工場の建設により、電力需要が増加することがたびたび強調され、原発が必要不可欠といった方向にもっていこうとしている。しかし実態はどうなのだろうか。

 12月21日、地球規模での環境問題に取り組む国際環境NGOのFoE Japan(エフ・オー・イー・ジャパン)主催で、「福島支援と脱原発・連続オンライントークが開かれた。
 東北大学の東北アジア研究センター・環境科学研究科教授の明日香壽川さんが、「AI普及で電力需要が急増→原発が必要は本当か」と題して報告した。
 「原発が必要」という結論の三段論法は間違っている。政府・日経新聞が使う三段論法は、①データセンターやAIなどの情報関連技術(ICT)部門が急激に拡大している→②これによって、世界および日本の電力需要および二酸化炭素(CO2)排出が激増する→③ゆえに、日本で原発推進が必要である、というものだ。
 しかし、①の前提および①→②の論理展開が間違いで、そもそもデータセンターは電力需要増大要因としては大きくない。日本全体の電力需要は激増していないのは、政府が引用する電力中央研究所(2024)も激増とは予測していないことで明らかだ。電中研報告では、データセンターによる2050年までの増加分は200TWh弱、2021年比では約20%増(年率0・6%)にすぎない。 世界全体・各国・地域のデータセンター電力消費の現状をみてみよう。世界的には、1~1・3%( 2022)であり、米国で国全体に対して7%(2024)、日本では0・46%~1・5%(2022)だ。そして2022年電力需要に占める割合は半導体製造業で2・2%(半導体大手は0・9%)、そしてデータセンターは0・5%だ。半導体製造が年率5%増加、情報サービス業が年率15%増加すると仮定しても、2035年は2022年需要の7%相当、2040年は2022年需要の11%相当にすぎない。電力全体は、省エネして2022年比で15%減少できるといわれる。
 にもかかわらず、懲りない経産省によるミスリーディングな電力需要見通しをおこなっている。データセンターなどを除いた電力需要量として2024年8月の最大需要(約1億6千万kW)と同量が2030年まで続くという想定をしているが、これはかなり乱暴な数字だ。
 つぎに②→③の論理展開の間違いを指摘したい。まず再エネ・省エネのポテンシャルは日本全体の電力需要に比較して十分に大きいということだ。発電コストという意味でも温室効果削減コストという意味でも、原発新設は言うまでもなく、原発再稼働・運転延長は、再エネ・省エネよりも劣っている。
 最新のIEA(国際エネルギー機関)の文献では温室効果ガス排出削減コストでも原発運転延長よりも再エネ新設の方がはるかに安いとしている。
 12月27日から、第7次エネルギー基本計画(案)に対するパブリックコメント(意見募集)が始まったが、今回のものはこれまでのエネ基に比べてかなり雑で適当なものになっている。2040年というかなり先の数値を、とりあえず適当に決めた感じだ。本来ならば2030年の見直しや2035年の数値の議論があるべきだし、そもそも数値がほとんどないのが特徴だ。再エネは増やすと言いつつも、原発も火力も維持するとし、省エネは不十分だ。世界の平均気温の上昇を「1・5度」に抑える努力をするという1・5度目標ははなから無視し、これは国民に対する実質的な「詐欺」そのものだ。そして発電コスト検証の「検証」は必ずなされなければならないがそれもない。
 発電コスト計算とくに原発のそれには、資本費(建設費など)、追加的安全対策費、設備利用率、稼働年数、燃料費、事故リスク対応費用、バックエンド費用、割引率、政策経費など統合コストが計算されなければならない。原発の建設費用は今や数兆円。しかも、当初の予算額の数倍に達することもめずらしくない。世界的に見ても、原発建設費用は莫大なものだ。しかし、日本政府の「発電コスト検証ワーキンググループ」では各電源の発電コストを検証していますが、原発の発電コストの前提としては、原発建設費用+追加安全コストとして、6、169億円としている。これは最近の世界の原発の建設費からみると、かなりの過小評価となっている。最近稼働した原発の建設コストは、今や数兆円は当たり前で、当初予算の数倍に膨張も原発関連の工期延長やコストオーバーランは常識である。くわえて、追加安全対策投資額は、設置変更許可を受けた時点で追加投資額は大きく増えるようになっている。このように、発電コストという意味でも温室効果削減コストという意味でも、原発新設は言うまでもなく、原発再稼働・運転延長は、再エネ・省エネよりも劣るのである。日本の再エネ導入ポテンシャルはかなり大きいことを無視している。
 結論として言えるのは、「電力が不足する、エネルギーが不足する」というのは電力会社、エネルギー会社の脅しの常套手段であり、日本全体では電力需要は激増しない。原発・化石燃料維持や省エネ無視は電力価格やエネルギーコスト上昇を招くことになるのだといえる。


根原発再稼働反対 絶対に諦めない

 2024年12月7日に島根原発2号機(中国電力・松江市鹿島町)が再稼働した。事故を起こした東京電力福島第一原発と同型(沸騰水型炉)で、11月の女川原発に続いて2基目となった。
 この日は早朝から夕方までの間に連続した一斉行動が取り組まれた。松江市、出雲市、安来市、雲南市、米子市、境港市、倉吉市、鳥取市の街角では、数人から100人規模の市民が怒りの声を上げた。この行動は広島市の中国電力本社前でも連携して大々的におこなわれた。

 12月25日の発送電開始予定日を前に、12・21島根原発2号機再稼働反対集会は松江市の「くにびきメッセ国際会議場」で、中国5県、四国、関西から300人以上の参加者が駆けつけて開催された。
 司会を務めた芦原さん(島根原発増設反対運動代表)の「再稼働後の集会になったが、私たちが決して諦めていないことを示す場にしましょう!」との元気溢れる呼びかけの後、実行委員会を代表してあいさつに立った内田さん(島根平和フォーラム代表)は、「福島原発事故から13年が経ったが教訓は活かされなかった。これまで可能な限りの行動を積み上げてきたが、その思いが国や自治体に届くことはなかった。こうした怒りや悔しさをこの場で共有し、今後の廃炉にむけた闘いに繋げよう!」と訴えた。 
 続いて、県外から3名のゲストと島根・鳥取から3名が登壇しスピーチをおこなった。
 生憎の雨中で予定していた屋外でのスタンディング行動が出来ず、室内に変更された。
 集会は集会アピールを採択して無事に終了した。
 発言者6名の内容要旨は次のとおり。

広島県原爆被害者団体協議会事務局長の熊田哲治さん
 「先日、日本被団協がノーベル平和賞を受賞したが、これは世界中の被ばく者の活動に贈られたものであり、多くの平和団体の力添えがあってのこと。反面、足下の日本政府は核兵器禁止条約に背を向けたまま。我々は受賞の意味を、おめでとうではなく、もうひと踏ん張りしてくれ!と重い宿題を頂いたと受け止めている。
 授賞式で田中照巳代表委員が訴えたことは二度と戦争をしない、被ばく者をつくらない、という未来への保障で、それは今、国が進めている軍備増強や危険な基地拡張を止めること。
 また、被ばく者の身体は放射線リスクという時限爆弾を背負わされていて不安は死ぬまで付きまとう。これは原発の内部被ばくも同じで、核の問題が曖昧なまま原発への依存度を高めようとする国や電力事業者には強く反対の声を上げていかなければならない。」 
 
上関原発を建てさせない山口県民連絡会の大久保雅子さん
 「昨年から使用済み核燃料中間貯蔵施設建設計画が持ち上がり、新たに反対運動もやりだした。3.11以降、反対、容認の立場を超えた原発に頼らないまちづくりが軌道に乗り始めた矢先の出来事で再び住民の間に分断が生まれないか懸念が広がっている。
上関原発建設計画も撤回されていない中での新たな建設は許せないと両社へ中止を求める署名を提出した。5ヶ月で中国電力宛27万筆、関西電力宛26万筆を提出した。又、8月以降は山口県議会に請願を出し続けている。反対の動きを見せている周辺自治体と共に粘り強く闘っていきたい。」

志賀原発を廃炉に!訴訟原告団長の北野進さん
 「能登半島地震では7日目に発見された孤立集落があり、解消されたのは1月20日のことだった。救助が遅れた理由を半島のせいにしてはいけない。珠洲市では発災時に市職員が2割しか集まらなかったという災害対策の不備もあった。自然災害の対応でさえ言い訳ばかりの状態で原発事故災害の対応ができるのか?2mも隆起した珠洲原発建設予定地跡を見たとき、撤回させて本当に良かったと心底思った。
島根半島に原発があり、10キロ圏内に県庁、市庁舎、
市街地と30キロ圏内に避難対象者46万人を抱える島根は、より大きな災害になるのではないかと危惧している。
 災害復興もままならない11月24日に原発事故時も安全だ!キャンペーンに過ぎない原子力防災訓練がおこなわれた。言うまでもなく実効性は無い。それどころか今や原子力産業界の新たなビジネスチャンスの場と化している。ラトビアの無人機、中国製のドローン、三菱の防災用テントなどと、さながら見本市の様相だ。国、自治体、業界に住民の生命を本気で守る気はない。全ての原発廃炉にむけて共に頑張りましょう!」

原発ゼロをめざす島根の会・共同代表 石田忍さん
 「再稼働前の11月、12月と立て続けに発覚、発生した港湾無届使用や水位計誤認問題など、繰り返される不祥事や偽装、隠蔽、法令違反は、原発を運転する資格がないという企業体質を露呈した。志賀原発と同じ方法の海底活断層調査評価は信用できない。松江市に1250ヶ所ある橋の老朽化、7月豪雨で発生した孤立集落問題、土砂災害危険地域にある病院や施設、要介護者数1位の問題などなど避難対策が山積みの状態で再稼働はありえない。」

福島原発事故避難者 坂本美緒さん

 「2011年に福島県田村郡三春町から島根県の雲南市に2歳半の娘と避難移住してきた。島根原発が再稼働してあの時の光景、心情が蘇る。丁度、昨日まで故郷浜通りを視察する機会を得た。懐かしい風景の中に帰還困難区域を視る。13年間「原子力緊急事態宣言」が出たままを実感する。線量計を見ながら、原子力災害は自然災害と違うのだと。復興工事だけでは元に戻せない心の傷やもどかしさを解って欲しい。一番の安心、安全は動かさないこと。今からでも遅くないから、引き返すという決断をするべきだ。」

島根原発2号機運転差し止め仮処分申し立て人 土光均さん 
「島根原発を廃炉にしようと米子市議会議員になった。利害関係がない周辺自治体から島根原発反対の住民投票条例制定を求めて2022年に提出したが、米子市長が反対の意見をつけて議会に上程したため議会は否決した。議会がダメなら司法に訴えようと2023年3月に仮処分を求める裁判を起こした。争点を活断層の連動と地震動、火山、避難の実効性の3本柱にして訴えたが、2024年5月に敗訴した。ただし成果もあった。その後の11月27日の女川原発差し止め訴訟では『避難計画に実効性がなければ原発停止もあり得る』の考えを引き出した。仮処分では負けたが本訴ではこれを糧に借りを返したい。ネバーギブアップ!で。」


労働組合には要求を実現する力がある!

        関生支部への弾圧を跳ね返せ!

 政府が賃上げを主導するなど笑わせる。戦後労働組合を攻撃破壊して来たのは大企業優先の自民党政治ではないか。
 三池・国鉄・そして今連帯労組関西生コン支部にここ数年不当な刑事弾圧と不公平な裁判判決が続いている。
 だが関西そして全国の共闘する仲間と組合は連帯の輪を拡大強化して反撃を展開している。年末を挟んだ闘いを報告する。 

 12月19日大阪高裁前の公園にて120名以上が早朝より結集し加茂生コン事件の差し戻し審が行われた。労働組合の大弾圧を許さない実行委員会は『無罪と罰金刑の大阪地裁判決』を逃げて差し戻しして来た最高裁を糾弾し完全無罪を勝ち取るとした。裁判は弁護士の反論を展開し4月17日判決となる。

 今年元旦行動が大阪府警前で450名が早朝より結集し、湯川委員長の力強い決意と各地の共闘会議のアピールとシュプレヒコールや「インターナショナル」の大合唱があった。2月26日には京都事件の判決がある、委員長には10年の異常な求刑がされている。
 何としても、完全無罪を勝ち取るために、ガンバロウ!
 夢洲万博より能登復興を!
大阪検事正の性暴力犯罪糾弾!
 権力の横暴を決して許さないぞ。 (河田)


袴田巌さん無罪から再審法改正へ

 袴田事件は昨年9月26日に再審無罪(確定)となったが、警察・検察の証拠隠しだけでなく、証拠の捏造が明らかになった画期的な判決であった。また38年前の福井女子中学生殺害事件の再審開始も決まった。 しかし、検察などの体質は改善されていない。自白中心、調書裁判の警察・検察のでっち上げ事件は後をたたない。警察・検察に対する監視を強めるとともに、早期の再審法改正を実現しなければならない。
 再審とは、誤判により有罪の確定判決を受けたえん罪被害者を救済することを目的とする制度で、えん罪被害者を救済する最終手段だ。しかし現在の再審制度は制度的・構造的問題点を抱えている。現在、法務省の「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」で、①取調べの録音・録画制度等と②再審請求審における証拠開示等について理論されてはいるが、再審法改正の実現の展望は難しい状況だ。再審法改正、そして捜査手続のあり方を含む刑事司法改革が求められている。しかし、法務省は再審法改正の動きを阻止しようとしている。

 12月19日、国会内に誤判原因の究明と再審法改正に関する特別委員会を設置することなどを求めて活動している「再審法めざす市民の会」は、国会内集会「袴田無罪から再審法改正へ 国会で冤罪原因を究明し 改革を」を開催した。
 市民の会共同代表の監督・周防正行と袴田巖さんの姉・ひで子さんがあいさつ。
 日本弁護士連合会再審法改正実現本部長代行の鴨志田祐美弁護士が、「再審法改正の到達点と実現への課題」と題して報告した。
日弁連はとにかく今すぐにこれだけは改正して欲しいという4項目を立てている。①証拠開示の制度化、②検察官抗告の禁止、③手続き規定の明文化、④証拠の保管・保存だ。最低限の手続き規定を作ろうということだ。最近では鹿児島県警の「証拠はどんどん捨てましょう」とかいうとんでもない内部文書が出てきて問題になっている。再審法改正は待ったなしだ。

 つづいて市民の会運営委員で成城大学教授の指宿信さんが、「世界の誤判原因究明制度から学ぶ」と題して、諸外国の事例を報告した。
 集会には「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」から、会長・柴山昌彦衆議院議員(自民党)、幹事長・逢坂誠二衆議院議員(立憲民主)、福島瑞穂参議院議員(社民党)、衆議院法務委員会ではじめて質問に立った松下玲子衆議院議員(立憲民主)などの超党派の国会議員があいさつした(議員連盟には、衆参国会議員総数713名中361名が参加している)。

 日弁連は再審法改正の運動を強めている。「袴田事件」の再審無罪判決を受けて、検察官に対して速やかな上訴権放棄を求めるとともに、政府及び国会に対して改めて死刑制度の廃止と再審法の速やかな改正を求める会長声明(2024年9月26日)では、「当連合会は、「袴田事件」の再審無罪判決を受けて、政府及び国会に対し、改めて、死刑制度の廃止並びに再審請求手続における証拠開示の制度化、再審開始決定に対する検察官の不服申立ての禁止及び再審請求審における手続規定の整備を含む再審法の速やかな改正を強く求める。『袴田事件』は、死刑えん罪の残酷さを如実に物語るものであり、このような悲劇を今後二度と繰り返してはならない。そして当連合会は、袴田氏が真の自由を得て、一人の市民として人間らしく穏やかな日々を過ごされることを切に願っている」とした。

●日弁連が支援している再審事件(無罪が確定していない事件)
 名張事件、マルヨ無線事件、大崎事件、日野町事件、福井女子中学生殺人事件、鶴見事件、恵庭殺人事件、姫路郵便局強盗事件、豊川事件、小石川事件、難波ビデオ店放火殺人事件、
●日弁連が支援し、2010年以降に無罪が確定した事件
 足利事件(宇都宮地裁平成22年3月26日再審無罪判決)、布川事件(水戸地裁土浦支部平成23年5月24日再審無罪判決)、東京電力女性社員殺害事件(東京高裁平成24年11月7日再審無罪判決)、東住吉事件(大阪地裁平成28年8月10日再審無罪判決)、松橋事件(熊本地裁平成31年3月28日再審無罪判決)、湖東事件(大津地裁令和2年3月31日再審無罪判決)


今月のコラム

        「折々のうた」から

 大岡信が1979~2007年に朝日新聞に連載していたコラム「折々のうた」は「新折々のうた」を含め19冊の岩波新書になっている。
 年末年始はこれを読み返すようになって久しい。
 今回は最初の4冊から好きな詩歌を紹介する。
 語彙や背景の説明が長くなるのを避けるとおのずから近世以降の作品に絞られる。

人に勝らん心のみいそがはしき/熱を病む風景ばかり悲しきはなし (中原中也)
 90年ほど前の作品だが、この風潮は近年益々猖獗を極めているように思われてならない。

老いたるは皆かしこかりこの国に身を殺す者すべて若人 (与謝野 寛)
 M43年潜航訓練中に遭難した軍人を怒りとともに悼む歌。これも今も変わらぬ風景。

うつくしきあぎととあへり能登時雨  (飴山 実)
 能登半島地震から1年、復興は遅々として進まない。「あぎと」は「あご」のこと。

水鳥やむかふの岸へつういつい (広瀬 惟然)
 芭蕉晩年の門人の作。通院の際によく川端に遊ぶがまさにこのとおりの光景。

憂きことを海月に語る海鼠かな (黒柳 召波)
 江戸中期の俳人の作。思わずクスっとしてしまうのは、海鼠の深刻そうな顔が目に浮かぶからだろうか。

いくたびも雪の深さを尋ねけり (正岡 子規)
 肺結核による脊椎カリエスに苦しみながら「病牀六尺」のなかから家人に雪の降り具合を尋ねる。外の光景に思いを馳せるのだ。

鶏の嘴に氷こぼるる菜屑かな  (加舎 白雄)
 作者は江戸中期の俳人。子供の頃家で飼っていた鶏のしぐさと凍てつく寒さを思い出す。

しらしらと氷かがやき/千鳥なく/釧路の海の冬の月かな (石川啄木)
 仕事を求めて各地を転々とした啄木が釧路に着いた時を想い起して作った歌。「さいはての/駅に下り立ち/雪あかり/さびしき町にあゆみ入りにき」も胸にしみる。

余り言葉のかけたさに あれ見さいなう 空行く雲の早さよ (閑吟集)
 室町歌謡。時代を隔てて私にも確かに同種の体験があると思い当たる不思議。

あなたは勝つものとおもつてゐましたかと老いたる妻のさびしげにいふ (土岐 善麿)
 敗戦時の妻との会話。大岡は「当時の多くの終戦詠の中でも白眉のものではないか」と評する。

妻の手紙は悲劇めかずに来てあたたかし (橋本 夢道)
 作者はプロレタリア俳人として2年間検挙投獄された。中野重治の詩の一節が思い浮かぶ。「やがておれが刑務所へまわったとき/おまえはふたたび手を振ってやって来た」(今夜おれはおまえの寝息を聞いてやる)。

しんしんと寒さがたのし歩みゆく (星野 立子)
 作者29歳の作。溌溂とした健康な若さのもつ勢い。中野重治の初期の短編「愚かな女」に似た雰囲気の一節がある。「それでゴムの長靴をはいてびしゃびしゃ歩いて行くと、その泥みちがどこまでも続いているような気がしてきて、おれのほうじゃ、それならどこまででもびしゃびしゃ歩いて行くぞという気になって、りんりんとして勇気の生じるのを感じたがね」

雪はげし抱かれて息のつまりしこと (橋本 多佳子)
 30代後半に夫に先立たれた胸を突かれる追慕の一句。死を予感した最後の入院を前にした「雪の日の浴身一指一趾愛し」という絶唱がある。

うらやまし思ひ切るとき猫の恋 (越智越人)
 いっとき大騒ぎの恋猫も過ぎれば知らん顔。人間はそうはいかないから困る。芭蕉が激賞した句。

小学も五年となれば出で稼ぎ居所不明とて学校に来ず (筏井 嘉一)
 東京下町の小学校で音楽教師を長くやった人。貧しい庶民の生活を歌う。忘れられない一首がある。「欠食児の父戦死すと報到れり一年生にて事わきまえず」。

泥鰌浮いて鯰もいるというて沈む (永田 耕衣)
 ユーモラスでもあり水底の不思議な世界にひきこまれるような。戦後の作品。

あぶないものばかり持ちたがる子の手から次次にものをとり上げて ふっと寂し (五島 美代子)
 子育て中同じ思いをした人は多かろう。歌われている幼児は東大在学中に精神的苦悩のために急逝し、その悲しみから立ち直る過程で生まれた歌という。

金魚売買へずに囲む子に優し (吉屋 信子)
 金魚売と作者と二人の優しさが伝わってくる。

夕がほや物をかり合う壁のやれ (堀 麦水)
 芭蕉の弟子。小津安二郎の映画にもお隣さんと味噌醤油を借り合う場面がある。「やれ」は破れた所。

少数にて常に少数にてありしかばひとつ心を保ち来にけり (土屋 文明)
 敗戦直後の作。静かな自負のあり方が印象的。

ひのもとの大倭の民も、孤独にて老い漂零へむ時 いたるらし (釈 迢空)
 8月15日の後山に籠ったと詞書にある。養嗣子を南方戦線で失っている。多くの若者を戦火に失った国の前途への暗い予感。しかし、「孤独にて老い漂零へむ時」はある意味予言的である。

ふらここの会釈こぼるるや高みより (炭 太祇)
 蕪村と同時代の俳人。「ふらここ」はブランコのこと。

犬は犬、我は我にて果つべきを命触りつつ睦ぶかなしさ (平岩 米吉)
 作者はイヌ科動物の生態学研究で有名という。犬との結びつきの「哀し」さ「愛し」さは伊藤比呂美「野犬の仔犬チトー」にも強く感じた。

おそるべき君らの乳房夏来る (西東 三鬼)
 1946年夏の作。この解放感は「青い山脈」に通じる。

突きあたり何かささやき蟻わかれ (誹風 柳多留)
 江戸時代の川柳。いかにもいかにも。

術もなく苦しくあれば出で走り去ななと思へど児らに障りぬ (山上 憶良)
 進退窮まっても子らにひっかかって逃げ出すことができない。まさに「飛び立ちかねつ鳥にしあらねば」。

寝かさなき母になられし蒲団かな (岡本 松浜)
 戦前の作。老いて小さくなった母親への感慨。
 斎藤 史に「我を生みしはこの鳥骸のごときものかさればよ生れしことに黙す」という歌がある。
                        
                                                        (新)


せんりゅう

     予算案から犬金企業臭 

          だれのため自公犬金予算案

     国をうごかす犬金いただき党

          かみくだきかみくだき逃げの答弁

     唐突に原発大好きにもなり

          思想も理念も失せて首相の座

     黴菌のごとく金がまう政界

          戦う国にさせじ我は闘う

     戦う国にしてならじデモに立つ

          国会前もうひとつの国会あり  

                           ゝ  史
2025年1月


複眼単眼

       韓国民衆の闘いに思いを馳せる

 ネットで詩が流されてきた。誰の作品かはわからない。ネットでシートをかぶって路上に座り込む人々の写真もみた。冷たい手を握りしめながら、その顔は勝利への確信にあふれているようにみえる。こんなものすごい座り込み、わたしたちの誰が経験しただろうか。

[詩に道を尋ねる#31] 「民衆の炎、歴史の心臓」

 この寒い 雪まで舞う冷たいアスファルトの上に、 降る雪の中も揺るがない身体。
 そこに座っている人たちは 風より強い民衆の息吹だ。
 宮殿の中の暖かさをむさぼり、偽りとムーダンの影に隠れた者よ、民衆の目は厳しい。
 その手は歴史の歯車を回している。
 たくさん学べなくても、たくさん持てなくても、彼らの手に宿った正義と常識は、夜明けを開くたいまつだ。
 一人ひとりが作り出したこの力、3・1運動の歓声から、 5・18の抵抗から、今日のアスファルトへつながる。
 彼らの力が尹錫悦を引きずりおろし、正義の名のもとに裁くであろう。
 降る雪の中でも消えない炎、その名は、大韓民国の民衆の力、大韓民国の歴史の力。
 頭を下げ、畏敬の念を抱きて言う。
 一人一人の犠牲がまさに歴史の心臓であり、頭を下げ、われらは学ぶ。
 正義と常識は決して負けない。

 この原稿を書いている1月8日現在、違法・無法な戒厳令を宣布して、内乱罪等に問われ、韓国大統領職務を停止された尹 錫悦(ユン・ソンニョル)は、裁判所が発布した逮捕状を無視して、大統領公邸に立てこもっている。高位公職者犯罪捜査庁がどのように逮捕状を執行するのか、現場は一触即発の危機にある。
 それにしても韓国市民のこの不屈の闘いはどうだ。詩が歌っているように、いま雪の中にライトをかざして座り込んでいる若者たちは、「(1919年の)3・1独立運動」「1980年の光州の5・18闘争」の抵抗闘争の伝統を引き継いでいる。
 この闘いこそが米日韓軍事同盟の一角を崩して、東アジアのきな臭い戦火の臭いを消し止めるたたかいであり、私たち日本の民衆との共通のたたかいだ。
 2月5日、韓国から野党の国会議員と市民の代表が来日し、日本の市民と野党の国会議員と連帯する。  (T)

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