人民新報 ・ 第1442号<統合535号(2025年2月15日)
目次
● 日米首脳会談の危険な内容
暴走トランプに従う石破政権
● ネタニヤフ政権によるガザ虐殺糾弾!
イスラエル大使館の抗議行動
● 尹錫悦政権退陣民主化闘争連帯
日韓市民と国会議員の院内集会
● 労働者を守るための労働基準関係法制の実現を
労基研報告への全労協事務局長談話
● 能動的サイバー防御は攻撃的武力行使!
「能動的サイバー防御」法案を阻止しよう
● 収奪者から奪還せよ! ㊤
水野和夫著「シンボルエコノミー-日本経済を侵食する幻想」を読む
● 鹿児島県・西之表市選挙を振り返る
● せんりゅう
● 複眼単眼 / 石破首相とトランプ大統領
日米首脳会談の危険な内容
暴走トランプに従う石破政権
強化される軍事同盟
2月7日、トランプと石破の日米首脳会談が行われた。
日米首脳共同声明は「石破茂内閣総理大臣とドナルド・J・トランプ大統領は、ワシントンDCで最初の公式会談を行い、自由で開かれたインド太平洋を堅持するとともに、暴力の続く混乱した世界に平和と繁栄をもたらす、日米関係の新たな黄金時代を追求する決意を確認した」として、軍事面の項目では「米国は、核を含むあらゆる能力を用いた、日本の防衛に対する米国の揺るぎないコミットメントを強調した。両首脳は、日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを改めて確認し、尖閣諸島に対する日本の長きにわたり、かつ、平穏な施政を損なおうとするあらゆる行為への強い反対を改めて表明した。日本は日米安全保障条約及び日米防衛協力のための指針に沿って、平時から緊急事態に至るあらゆる状況への切れ目のない対応により、インド太平洋地域の平和及び安全を維持していく上での自らの役割を再確認した。これは、2015年の平和安全法制により一層可能となり、日米同盟の抑止力と対処力を強化している」などの文言を盛り込んだ。
米国の核軍事戦略への積極的加担であり、長射程ミサイルの配備や辺野古新基地建設など戦争体制のいっそうの強化の宣言だ。
なお共同声明の正文は、これまで同様に英文であり、日本外務省の発表したものは「仮訳」となっており、こうしたことに日米両国の不平等な関係があらわれている。
トランプに媚びる石破
首脳会談について日本のマスコミなどは、握手時間が15秒間続いたとかトランプが石破について「偉大な首相になる。首相として素晴らしい仕事をするだろう」など言ったことをとりあげて「成功」を演出している。
だが、海外メディアには違った評価が多い。石破は、世界の首脳からも厳しい批判が寄せられているトランプのパレスチナ・ガザ所有や一方的な関税政策をまったく批判しなかったことを問題にされている。米国のワシントン・ポストの「日本のリーダー、関税回避のためトランプに媚びる」、ニューヨーク・タイムズの「トランプを口説き落とすため、ゴマスリを駆使する」などという表現がそれだ。
石破訪米の直前の2月1日、トランプはカナダとメキシコからの輸入品に対して25%の関税を、中国には10%の追加関税を課すことを発表した。それに対してカナダのトルドー首相は米国からの輸入品に対し日本円にして16兆5300億円の関税を課す報復措置を発表した。またメキシコのシェインバウム大統領も同様に関税と非関税を含む対抗措置をとるとした。中国外務省は、米国の一方的なやり方を「WTO(世界貿易機関)に提訴する」とした。こうしたことにトランプは一定の猶予という政策後退となった。
だが、日本政府はカナダ、メキシコ、中国のような毅然たる態度がとれるだろうか。その可能性は極めて低いと言わざるを得ない。そうした日本の対米屈従姿勢が今回の日米首脳会談にも現れたのである。
中国からも不満の表明
日米首脳会談について中国外交部の報道官は記者会見で、「中国はこれに強い不満を表明し、断固反対する。中国側はすでに米側と日本側に厳正な申し入れを行った」「台湾問題は完全に中国の内政であり、中国の核心的利益の中の核心であり、外部からの干渉は一切許されない。釣魚島(日本名・尖閣諸島)及びその附属島嶼は中国固有の領土であり、中国が関連海域で活動することは完全に正当かつ合法である」としている。
日本でも、日米首脳会談が中国包囲・圧迫のための日米軍事共同作戦の強化、経済面での対米大幅譲歩などにたいする批判が展開されている。
日米共同作戦体制の強化
日米共同声明では米軍と自衛隊の共同作戦についてかなりの具体化が進んだ。これに十分に注目しなければならない。
「自衛隊及び米軍のそれぞれの指揮・統制枠組みの向上、日本の南西諸島における二国間のプレゼンスの向上、より実践的な訓練及び演習を通じた即応性の向上、拡大抑止の更なる強化並びに同盟のサプライチェーン及び海洋を含む日米の防衛産業力を強化する共同生産、共同開発及び共同維持整備を含む防衛装備・技術協力の推進によるものを含む防衛・安全保障協力の向上を通じ、日米同盟の抑止力・対処力を更に強化していく意図を有することを確認した。日米は、民生宇宙並びに航空、科学及び両国の宇宙飛行士が参加する国際宇宙ステーション(ISS)へのクルー10ミッションや、アルテミス計画の将来のミッションでの月面探査を含む有人探査に係る強力なパートナーシップを継続する意図を有する。日米はまた、AI及び情報共有を深化するための安全かつ強靱なクラウドサービス等の新技術の活用によるものを含む、サイバー空間の分野における二国間の安全保障協力を拡大する意図を有する。米国は、日本の防衛予算増加の好ましい傾向により下支えされた、2027年度までに日本を防衛する主たる責任を確固たるものとする能力を構築すること、そして、この重要な基盤の上に、2027年度より後も抜本的に防衛力を強化していくことに対する日本のコミットメントを歓迎した。」
日本政府の陸海空から宇宙・サイバー分野までの軍備強化を述べ、トランプはそれを満足げに歓迎したのである。
日米ゼロ・サムゲーム
トランプによって「首相として素晴らしい仕事をするだろう」といわれた石破にとっては、今後の対米の負担は非常に重いことになる。
トランプは、「米国ファースト」を繰り返し述べてきた。日本の米国との「ウインウイン」関係の構築は不可能で、米国優位のゼロ・サムゲームとなるのは必至である。それはトランプの関税政策が具体化するたびに明らかになるだろう。
石破は、首脳会談の「成果」をうけて、「関税の日本の除外を働きかける」などとしている。
しかし、仮にそれが出来たとしても、そのかわりにより厳しい条件を突きつけられることになるのである。これがトランプの「米国ファースト」だということを銘記しなければならない。
アラスカLNG輸入の問題
日米首脳会談で大きなテーマとなったのがアメリカ(アラスカ)産のLNG(液化天然ガス)の日本への輸出問題だ。
トランプはアラスカから日本にLNGを輸出するうえで日本からの巨額の投資を呼び込みたいのである。だが、このプロジェクトへの参加は無謀である。
アラスカからのLNGの出荷は、2031年から32年の間を予定していて→トルいるといわれるが→トル、だが日本へのLNG輸出にかんする施設はまだ出来ていないのである。
液化する施設と船にLNGを積み込むための海上桟橋建設、そしてパイプラインは全長およそ1300キロである。建設費用は6兆6000億円規模にものぼる巨大プロジェクトなのだ。そこに日本の資金を大量に注ぎ込まれるということだ。 しかも、日本でもLNGは不足してはいない。
日本経済新聞(2024年10月18日)「LNG需給見通しにズレ 数年で供給過剰」は「再生エネルギー転換への移行期の燃料とされる液化天然ガスの長期見通しにズレが生じている。LNGは今後数年で供給過剰に向かうとの予測がある。」と報じているように
←こんな馬鹿げたことを、石破はトランプの要求を先取りするような対米投資を約束してきたのである。
トランプの「日本重視」なるものは、あくまで「米国ファースト」を達成するための戦術的策略に過ぎない。
今回の日米首脳会談は、日米軍事同盟の危険性を浮き彫りにするものだった。必要なのは軍事的緊張・大軍拡でなく、国際的な平和の創出である。
大暴走するトランプ政権とそれに従属的に戦争する国づくりにすすむ自民党政治を終わらせなければならない。
ネタニヤフ政権によるガザ虐殺糾弾!
イスラエル大使館の抗議行動
イスラエルによるパレスチナ人絶滅戦争は、第二期トランプ政権の発足により、いっそう熾烈さを加えている。
2023年10月以降すでに4万6600人もしくはそれ以上の市民が虐殺され、ガザ地域は廃墟と化した。
トランプは2月4日、訪米中のイスラエルのネタニヤフ首相と会談し、会談後の記者会見で、パレスチナ・ガザ地区をアメリカが所有し、パレスチナ人をガザ域外に移住させると述べた。赤裸々な帝国主義的拡張政策であり、断じて許すことはできない。国連をはじめ、世界各国の首脳も批判の声明を出している。
パレスチナの人びと、世界の人びとと連帯して、トランプ大統領とネタニヤフ首相らの暴挙を糾弾し、虐殺・侵略・占領に反対していこう。
世界の多くの地域でさまざまな行動が行われているが、1月27日には、「イスラエルは停戦合意を守れ!ガザ虐殺を許さない!」をスローガンに「パレスチナに平和を!緊急行動」の呼びかけによる東京都千代田区二番町の駐日イスラエル大使館にたいする抗議行動が行われ、シュプレヒコール、トーク、イスラエル大使館へのネタニヤフ首相に対する抗議・要請行動が繰り返し行われた。
ネタニヤフ首相に対して「パレスチナに平和を!緊急行動」参加者一同は次のように要求した。①停戦合意の遵守―停戦合意のすべての条件を誠実に守り、ガザ封鎖を解除し、この脆弱な平和を損なういかなる行為も控えること。②人道支援の促進―ガザ住民への国際的な人道支援と援助を妨害せず、全面的に協力すること。③ヨルダン川西岸での軍事作戦の停止―西岸でのすべての軍事作戦を停止し、入植者によるさらなる暴力や破壊行為を防ぐこと。すべてのテロ行為と破壊行為の責任を追及すること。④占領地からの撤退―入植地を解体し、占領地をパレスチナ住民に返還すること。これは、国連安全保障理事会決議およびICJ(国際司法裁判所)の判決に従うものです。⑤アパルトヘイトと植民地主義の廃止―アパルトヘイト政策とその実践を終わらせ、中東における正義と平等に基づいた平和共存をめざして取り組むこと。
尹錫悦政権退陣民主化闘争連帯
日韓市民と国会議員の院内集会
尹錫悦政権の「戒厳令」措置の暴挙に抗議し社会の民主化実現のために闘う韓国市民の運動は持続的大衆的に展開されている。
2月5日、参議院議員会館講堂において、「『私たちは韓国市民の尹錫悦政権退陣民主化闘争に連帯します』連帯声明」139団体の主催による「2・5日韓市民と国会議員の院内集会」が開かれた。
日韓和解と平和プラットフォーム書記の金性済(キム・ソンジュ)さんが主催者あいさつ。大統領の退陣そして朝鮮戦争の終結を実現し、北東アジア地域に平和をもたらすために日韓の民衆は共同の運動を進めていこう。
パク・ソグンさん(ユン・ソンニョル即刻退陣社会大改革緊急行動共同議長・進歩連帯常任代表)とキム・ギョンミンさん(韓日和解と平和プラットフォーム共同代表・韓国YMCA全国連盟事務総長)から韓国での闘いの報告が行われた。
チェ・ヒョンファンさん(全国金属労働組合亀尾支部韓国オプティカルハイテク支会支部長)は、日東電工の100%子会社である韓国オプティカルハイテックが2022年工場棟火災を口実に工場の廃業と労働者の解雇が行われ会社側に雇用継承を求めている闘いの報告、争議解決のために日本の市民、労組、議員などの取り組みを要請した。
立憲民主党、共産党、社民党の各参加議員からあいさつが行われた。
日本側市民の連帯の言葉として、小田川義和さん(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動共同代表)、布施祐仁さん(ジャーナリスト)、渡辺健樹さん(日韓民衆連帯全国ネットワーク共同代表)、菱山南帆子さん(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動共同代表)、武田隆雄さん(平和をつくり出す宗教者ネット共同代表)が発言した。
韓国民主化闘争連帯声明文(別掲)が朗読された。
野平晋作さん(ピースポート共同代表)が閉会挨拶をおこない、日韓市民の連帯を確認した。
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わたしたちは韓国市民の尹錫悦政権退陣民主化闘争に連帯します
去る12月3日、韓国の尹錫悦政権は非常戒厳令宣布を行い、韓国市民をはじめ、日本と世界を驚愕させる事態を引き起こしました。
内乱もない韓国社会において突然、非常戒厳令を宣布するという暴挙は、戒厳令宣布の条件を規定した韓国憲法77条に対する明らかな重大違反であり、むしろ尹錫悦政権による戒厳宣布自体が韓国の憲政秩序に対する内乱として現在、尹錫悦大統領とその共謀者に対する、弾劾をはじめ厳しい追及が国会と市民社会において繰り広げられてきました。
12月4日未明には戒厳令は解除されたものの、日を追うごとに戒厳令宣布の真相が明らかとなってきました。すなわち、尹錫悦政権の失政に対する野党議員と市民による怒りと批判をかわすために 敢えて理不尽にも批判勢力を北側の朝鮮と結びつけることにより、戒厳令という非常手段をもって 一挙に弾圧を図ろうとした意図が明るみになってきました。
去る12月14日の韓国国会においてついに弾劾訴追案が可決されることになりました。一度目の弾劾訴追案の国会未成立をこの度の可決に導いたのはまさに韓国民衆の民主化のたたかいの力であり、これは民衆の大きな勝利の一歩です。これから韓国憲法裁判所が尹錫悦大統領の罷免判決を下すことを訴えながら、韓国民衆はさらに正義の審判を叫びながら民主化のたたかいを深め広げていくことでしょう。わたしたちはこの日本から引き続き、その動向を見守るばかりでなく、支援連帯の絆を強めていかなければなりません。
韓国市民運動は断固として、自ら内乱的暴挙を犯した尹錫悦大統領の弾劾罷免による退陣を要求して立ち上がりました。そして国内で市民の諸団体が連合・連帯するそのたたかいは単に一人の大統領の退陣問題にとどまらず、今「韓国政治の大改革」を掲げ、全国に広がっていきつつあります。
1980年5月、軍部独裁による戒厳令のもとで光州の多くの市民が虐殺された痛みの歴史経験を ←刻む韓国市民は権力による戒厳令宣布の暴挙に対して特別の記憶を心に刻んでいるとわたしたちは聞いています。しかし、その苦難の歴史の中から韓国市民はついに2016年、ローソク市民革命を成し遂げていきました。そのような韓国民主化闘争の歴史から、日本における民主主義と平和のたたかいを続けてきたわたしたち日本市民は多くのことを学び、これまで連帯してきました。この度の尹錫悦政権による戒厳令宣布の暴挙は今再びあのローソク革命の灯火を燎原の火のごとく韓国社会に広げることになりつつあります。
わたしたち、日本市民は、敵意をこえて友好と対話による平和実現の根幹である憲法9条に基づき、軍拡ではない立憲民主主義を堅く守り、日本と韓国・朝鮮、そして東アジアの平和構築の道をめざしています。
そのような理念と展望を堅持するわたしたちは、今韓国において高揚する市民による尹錫悦政権退陣民主化のたたかいに心から連帯の意思をここに表明します。
労働者を守るための労働基準関係法制の実現を
労基研報告への全労協事務局長談話
厚労省の「労働基準関係法制研究会」は1月8日、最終報告書を公表した。
2023年10月20日の「新しい時代の働き方に関する研究会」の報告書を受けて、2024年1月23日からはじまった労基研は16回の研究会を経て、報告書をまとめた。
全労協は1月17日に報告書に対する関口事務局長談話を発表した。
全労協も参加する雇用共同アクションは1月21日に報告書への意見表明を発表し、27日には全労連とともに厚労省との意見交換と記者会見を行った。
報告書は1月21日の労働政策審議会労働条件分科会に報告され、公労使三者で構成される労政審での審議へと移っていった。
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2025年1月17日
「労働基準関係法制研究会」報告書に対する談話
全国労働組合連絡協議会 事務局長 関口 広行
1、厚労省の「労働基準関係法制研究会」(座長:荒木尚志東大大学院教授)は1月8日、16回に及んだ研究会の議論を経て、報告書を公表した。報告書は労働基準法における「労働者」、「事業」、そして「労使コミュニケーションの在り方」について総論的課題、「労働時間法制」を具体的課題とし、今後の法整備の検討方向と具体的な制度見直しをまとめている。
2、「失われた30年」から労働者の低賃金を背景に、不安定雇用と過労死も招きかねない働き方が日本社会に蔓延してきた。今、労基法に求められるものは弱い立場の労働者の権利を擁護し、労働条件を労使自治に委ねないとする憲法27条2項(労働条件法定主義)と労基法1条(労働条件の原則)に基づく規制の強化である。しかし、報告書の内容は「デロゲーション」(適用除外・規制の逸脱)を「法定基準の調整・代替」に置き換えて、労働基準法の骨抜きを狙っている。強行法規としての労基法を骨抜きにする報告書を決して容認することはできない。「時代の変化」と使用者側の要請に応える形で行われてきたこれまでの労基法の見直し=デロゲーションはあくまで例外規定に過ぎない。例外規定の「標準化」は断じて許されない。
3、労基法上の労働者性の判断基準については、専門的な研究の場を設けて、今後の研究課題となった。2024年11月にフリーランス新法が施行されたが、フリーランス新法はそもそも「労働者性」に基づかない法律であり、全ての新しい働き方に対して労基法を確実に適用していくことが求められている。労基法上の事業・事業場については、今後とも「事業(場)単位適用原則」を維持すべきである。「事業」の概念については「将来的な労使コミュニケーションの在り方も含め検討していく」ことには反対である。
4、「労使コミュニケーションの在り方」は「労働時間法制の具体的課題」と並んで、報告書の中心となっている。労使コミュニケーションの課題は、まさに労働組合こそが当事者である。研究会には労働組合関係者はひとりもいないばかりか、16回の研究会で労働組合に対するヒアリングはたったの1回だけであり、当事者性の欠如を強く指摘せざるを得ない。今後の労働政策審議会の審議にあたっては労働組合からの十分な意見反映を求める。
報告書は、「労使の合意等の一定の手続の下で、個別の企業、事業場、労働者の実情に合わせて法定基準の調整・代替を法所定要件の下で可能にすることが、今後の労働基準関係法制の検討に当たっては重要である」と明記した。「労使合意」があれば、長時間労働も可能となり、まさに「労使合意」の下で最低基準を定めた労基法が骨抜きにされる。「労使コミュニケーションの在り方」の見直しは労基法の適用除外・規制の逸脱のためのものである。
集団的労使コミュニケーションの主体は、あくまで憲法28条を根拠とする労働組合にある。今日の労使コミュニケーションの抱える困難性は、使用者による組織破壊攻撃と組織率の低下がもたらした側面があり、そのことを十分に踏まえた上で、提起されている労使コミュニケーションの改善方法の諸課題について検討すべきである。
5、労働時間法制については、研究会は働き方改革関連法の施行5年後の見直しの役割も担っていた。報告書は、13日を超える連続勤務の禁止等、いくつかの制度改正の方向性はあるものの、「上限そのものを変更するための社会的合意」を言い訳に、過労死認定ラインに及ぶ時間外労働の上限規制に踏み込まなかった。さらに、副業・兼業を行う場合の割増賃金の法定労働時間を超えた支払いをなくすこと、テレワークに適用される新たな「みなし労働時間制」の創設、「勤務間インターバル制度」の義務化を見送ることなど、働き過ぎを助長する方策を示し、労働者保護に消極的な姿勢を見せている。労働時間規制、とりわけ時間外労働の上限規制は早急に改善すべき課題であることを強く認識すべきである。
6、経団連は、労基研に先立ち、2024年1月16日に「労使自治を軸とした労働法制に関する提言」を発表した。5月10日の第7回研究会では関係団体からのヒアリングで経団連としてのプレゼンテーションを行ってきた。「世界的な地位・生産性の低下」を口実に労働法制の見直しをという主張は、バブル崩壊後の経済成長の停滞、労働政策の規制緩和による非正規雇用の増大とそれに伴う貧困と格差の拡大、世界で唯一の実質賃金の低下などの歴代自民党政権と経団連の経済・雇用政策によってもたらされた「失われた30年」に対する一切の反省もない。まるで他人事のように語る姿に強い怒りを覚える。労使コミュニケーションに至っては組合破壊、組合員排除、不当労働行為といった労働組合敵視の労務政策の歴史に対する何らの反省もない。経団連に労働法制の見直しを語る資格はない。
7、報告書はすでに「社会的な合意」があるジェンダー平等の推進、約4割にも及ぶ非正規雇用(うち7割弱が女性である)の処遇改善には一言も触れていない。さらに最低基準である労基法が守られていない実態は全く無視している。労基法の「見直し」は「経済・社会構造の変化」や「新しい働き方」からではなく、女性に男性の5・5倍も家事・育児など無償労働を押し付け、男女ともにワークライフバランスが採れない働き方にある現状を変え、労働者保護の立場から法改正及び制度改正を求める。
全労協は引き続き、雇用共同アクションを中心に幅広い共闘で労働者を守るための労働基準関係法制の実現に向けて全力でたたかい抜いていく決意を明らかにする。 (以 上)
能動的サイバー防御は攻撃的武力行使!
「能動的サイバー防御」法案を阻止しよう
2月7日、政府は、サイバー攻撃の兆候や攻撃元を特定し、無害化する措置を講じるとの口実で「能動的サイバー防御」を導入するための法案を閣議決定した。これは、攻撃サーバーなどを検知するために通信情報を国が取得する法的根拠や、警察や自衛隊が攻撃サーバーの無害化措置を行う際の枠組みを定めるもので、「サイバー通信情報監理委員会」が承認すれば、当事者の同意なしに通信情報を取得できることと自衛隊が警察と共同し、通信防護措置をとれるとする。
「能動的サイバー防御」法案について、内閣官房サイバー安全保障体制整備準備室は次のように言っている。―「国家安全保障戦略(令和4年12月16日閣議決定)では、サイバー安全保障分野での対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させるとの目標を掲げ、①官民連携の強化、②通信情報の利用、③攻撃者のサーバー等への侵入・無害化、④内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の発展的改組・サイバー安全保障分野の政策を一元的に総合調整する新たな組織の設置等の実現に向け検討を進めるとされた。国家安全保障戦略に掲げられたこれら新たな取組の実現のために必要となる法制度の整備等について検討を行うため、サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた有識者会議を開催(令和6年6月7日~11月29日)、『サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた提言』を取りまとめ。これらを踏まえ、『重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律案』(新法)及び『重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案』(整備法)として必要な法制度を整備」した。
2月6日、衆議院第二議員会館前で、秘密保護法」廃止へ!実行委と共謀罪NO!実行委の共催の「秘密法廃止!共謀罪廃止!監視社会反対!―先制的敵基地攻撃能力と一体の能動的サイバー防御に反対する」集会が開かれ、市民と立憲野党の闘いで悪法を阻止しようとの発言が続いた。
ひきつづいて院内集会が開かれ、秘密保護法対策弁護団共同代表・経済安保法に異議ありキャンペーンの海渡雄一さんが「能動的サイバー防御法案のどこが問題なのか」と題して報告した。―政府は2022年末に改定した国家安全保障戦略で、サイバー脅威に対し「対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させる」とした。サイバー空間を平時から監視し、不審な通信やサーバーを検知する、さらに重要インフラなどを狙った重大なサイバー攻撃の危険性が高い場合は、未然に攻撃者のサーバーに侵入して、マルウエアを送り込んで無害化する「能動的サイバー防御(ACD)」制度を導入するとしている。政府は2014年6月7日から、このようなサイバー攻撃を未然に防ぐための「能動的サイバー防御(ACD)」制度の導入に向けた有識者会議会合を開催し、令和6年11月29日付で「サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた提言」が政府に提出された。しかし、なぜ、このような制度が必要なのか、そもそも許されるものなのかという前提が説明されていない。
能動的サイバー防御制度は広範なインターネット情報を収集分析することを不可避とする制度であり、不審なサーバーの検知や攻撃者を特定するための通信記録の監視や解析は、憲法21条が保障する通信の秘密に抵触し、プライバシーの侵害につながる可能性がある。このような、大きな弊害をもたらす危険性のある制度を導入することを不可避とする立法事実の説明がなされていない。
さらに、サイバー攻撃に対する対策の基本は、侵入を防ぐためのシステムの防御であり、攻撃によって食い止めるという方法は、その効果も不確実であり、他国の主権侵害行為を含み、紛争を拡大する危険性がある。
このような制度の導入が国際法の下で、どのような要件の下で許容されうるのかが、十分検討される必要があるのである。例えばドイツでは、連邦憲法裁判所は、他国からのサイバー脅威を早期に検知することを重要な公共の利益として認めた一方で、G10法(「信書、郵便及び電信電話の秘密の制限のための法律」)の規定には①内内通信の取扱いに関する規定の不備、②在外外国人の通信における私的生活形成の核心領域に関連した規定の不備、③実施記録の消去期限、④審査機関の体制の観点から問題があると指摘している。
しかも、戦略的監視と無害化は、まったく別問題である。無害化は、違法なサイバー攻撃であり、これは武力行使=戦争ではないのか。無害化措置のための攻撃元への侵入は、他人のサーバーへの侵入を禁止する不正アクセス禁止法や刑法に抵触し、さらに攻撃元サーバーが海外にある場合は国際法上の外国に対する主権侵害に当たる可能性がある。緊急避難に該当する場合以外は、サイバー攻撃は許されないことは、国際法の要請である。この点が踏まえられないと、サイバー攻撃の防止のための措置が、逆に国際紛争を拡大し、期せずして熱戦にまで発展する危惧までがある。ところが、法案で、どのような要件の下で、また、誰が、どのような手続きで、無害化の措置の判断をするのかは、まだ明確ではない。監理委員会が事前に承認すると説明されているが、緊急の場合は事後承認とされている。また、無害化措置は警察と自衛隊が分担して、軽微なものは警察、重大なものは自衛隊が対応するとしているが、その連絡調整の部分も不明確なまま残されている。
こうした火遊びのような法案をつくれば大火事になりうるのだ。無害化措置はネットへの監視とは次元の違う問題であり、憲法9条の理念に反する先制攻撃になりうるのであり、他国から報復を受けかねず、それはサイバー攻撃かもしれないが、ミサイル攻撃にもなりうる。サイバー攻撃の対処には、サーバー管理者に機能停止(テイクダウン)を依頼することや、攻撃者を公表し非難するなど、他にも手段があると指摘されてる。これまでそうした防御の対応を十分にしてきたのか怪しい。一足飛びに先制攻撃できるとするのは飛躍が大きすぎる。
この2025年通常国会で、能動的サイバー防御に関する法案の成立を食い止めなければならない。国会では、制度の必要性、海外の制度との比較、限定の要件に即した審議を積み重ね、法案の撤回を求めていこう。立憲民主党などの野党議員に、法案の問題点をロビーし、少なくとも、戦略的監視については、要件の厳格化がない限り法案反対、無害化措置については全面撤回を求めよう。そして、主要野党間の合意を実現しよう。
共通番号いらないネットの原田富弘さんが先制攻撃の危険を指摘した。共謀罪NO!実行委員会の角田富夫さんが、これからの取り組みについて提起した。
収奪者から奪還せよ! ㊤
水野和夫著「シンボルエコノミー-日本経済を侵食する幻想」を読む
かつて宮崎義一は「ドルと円」(1988年岩波新書)でプラザ合意(1985年)後の円高・ドル安から世界同時株式暴落の経過を分析し、「1970年代初め以降の現実は、為替レートをゆり動かす力もまた世界経済を動かす力も、もはやモノの貿易額にはなく、巨額な資金の流れそのもの方に大きく移行している」とした。40年近い時を隔てて急激な円安・ドル高が私たちの生活を揺るがせている今、世界経済の実相はどうなっているか、本書をもとに探ってみたい。
グレートモデレーション期
1990年代から2020年までの30年間、G5のグレートモデレーション(大いなる安定)期ではコアインフレ率(食料・エネルギーを除くベース)の増加率が鈍化し、変動幅が収斂していった。70年代・80年代のインフレ期に物価変動の振幅が激しかったのと対照的。日本の場合は1992年7月から2021年7月までコアインフレ率は平均マイナス0.01%と事実上30年間ゼロインフレの時代を実現した。2021年8月以降日本のコアインフレ率は1.0%を上回り、一方アメリカのそれは3・0%を超えるようになった(コロナ・パンデミックとロシア・ウクライナ戦争の影響)。2021年8月~2024年7月の日本の消費者物価上昇率(携帯電話通信料の引き下げ分を除く)は年平均2.9%。ほぼ同時期アメリカの消費者物価は年平均5.47%上昇した。この差はアメリカでは1996年以降労働者の実質賃金が年平均0・7%上昇しているのに、日本の場合1997年~2024年に実質賃金が18・7%も下落(年率マイナス0・7%)しているため、日本企業はコスト上昇分を販売価格に転嫁できないためだ。
日本の消費者物価が前年比で2年以上続けてマイナス(内閣府のデフレの解釈)になったのは1999年~2005年の7年間と2009年~2011年の3年間、この2期間を除くと消費者物価は0~1%で安定していた。2013年黒田日銀総裁は2%の物価安定に向けて「できることは何でもやる」と言い「異次元の金融緩和」に踏み切ったが失敗に終わった。かつてはコアインフレ率の説明には消費者物価と失業率の相関を示すフィリップス曲線(失業率が低ければ消費者物価上昇率は高く、逆は逆)が当てはまったが、1993年以降は失業率が高くても低くてもコアインフレ率はゼロパーセント近くでほとんど動かない。財・サービスの物価は景気の良し悪し(失業率)に連動しなくなり、代わりに資産価格が乱高下するようになった。シンボルエコノミーの膨張・収縮によって株価変動が激しくなり、収縮過程で企業はリストラを迫られ、結果失業率が上昇する。
世界の先陣を切って「定常状態」に移行する日本
日本の1人当たり名目GDPは低下の一途をたどっている。1988年にはスイスに続く第2位だったが、2022年には韓国にも抜かれて34位にまでなった。順位低下の理由は①GDPデフレーターの下落(いわゆるデフレ),②実質GDP成長率の鈍化、③為替(円安)。1人当たり実質GDPの増加率は日本が0・62%に対し日本を除くG7は0・74%増と大差はない。違いは物価(GDPの伸びがマイナス)・為替(大幅円安)要因にある。G7の1人当たり実質GDP成長率は1990年代1・88%→2000年以降0・72%であり、中で鈍化の幅が最も小さいのが日本(0・74→0・62%)。日本は世界に先駆けて定常状態(停止状態)に入っていると言える。
ボーモルの「成長の収斂仮説」は1870年の1人当たり実質GDPと1870~2020年の成長率の相関を分析し、1人当たりの実質GDPはある一定の水準に収斂するというもの。実際のデータはほぼこの仮説を裏付けている。貧しい国が豊かな国に追いつけるのは豊かな国は資本装備率(資本/労働者)が高いため、資本収益率が低下して資本が豊かな国から貧しい国に流失し貧しい国の投資率(投資/GDP比)が上昇して高い経済成長を促すからであり、グローバリゼーションがこれを加速する。
リアルエコノミーとシンボルエコノミー
「リアルエコノミーは、人々が必要とする財・サービスを提供するために、L(労働)とK(資本)を用いてGDP(実質国内総生産)を生み出す世界です。対してシンボルエコノミーは、ROE(自己資本利益率)を引き上げてK(資本)を増殖させる世界です」(はじめに)。リアルエコノミーの世界で日本は逸早くゼロ金利に到達し、近代の次の社会を構築するチャンスを得たが、シンボルエコノミーの世界に巻き込まれ翻弄されている。にもかかわらず政府・日銀、新自由主義を信奉する経済学者は20年以上にわたって2%の物価上昇と2%の実質GDP成長の実現に拘泥している。
19世紀の古典派経済学者J・Sミルは「イギリスのような国においては、(中略)利潤率は速やかにその最低限に到達して、その後における資本の増加はさしあたり一切停止してしまうであろう」と予想した。日本のリアルエコノミーの資本は1998年度以降、300兆~370兆円で四半世紀にわたり横ばいで推移している。一方、シンボルエコノミーの資本(内部留保金)は逆に1998年度以降増加テンポを強め2012年度にリアルエコノミーの資本を上回り、2023年度末には601兆円となっている。
日本でビリオネア(純資産10億ドル以上の資産家)に相当するのはこの内部留保金を抱えた法人企業である。バブル崩壊後の「失われた10年」で1998年度末には131・1兆円に落ち込んでいたものが2023年度末には4・59倍に膨れ上がっている。この間の実質GDPは1・19倍にしかなっていない。内部留保金はシンボルエコノミーにおける資本であり、当期純利益を増やすことで株価を押し上げる大きな要因となっている。日経平均株価は2009年3月に7054・98円とバブル崩壊後の最安値を付けたが、2024年7月には4万2224・02円まで5・98倍に値上がりした。定常状態に入った経済では当期純利益を増やすには、賃下げと銀行への利払費を削減するしかない。企業はこれを実行している。資本の自由化はバブル生成と崩壊を生み、結果景気の山は高く、谷は深くなる。谷が深くなると機動的な人員削減が必要になる。これによって企業のROEは2001年度にはマイナス0・1%だったものが2023年度には9・0%まで高まった。特大企業・製造業は12・3%、大企業・非製造業も10・1%と高収益を維持している。
円市場レートのオーバーシュート
円はプラザ合意の翌年からPPP(購買力平価)を超える円高が進み、1995年には割安・割高指数が0・78まで円高が進んだ。円の市場レートは1ドル=94・1円とPPP(輸出デフレーター基準)の120・1円を著しく上回って、オーバーシュート(価格の行きすぎた変動)した。その後、米国の「強いドル」政策により円安に転じ、2024年(1~8月)には割安・割高指数は1.69(1ドル=152・2円、PPP=89・8円)となり、1973年の変動相場制移行後、円は最も割安になった。日銀の「異次元緩和」のためだ。アベノミクスは財政再建、社会保障制度の持続性、日米同盟のあり方などの「不愉快な問題」から目を背けさせ、株価が上がっていればうまくいっているとの「幻想」を振りまくものに過ぎない。
21世紀になって先進国の実質長期金利はゼロないしマイナスとなった。実質10年国債利回りは長期で均すとおおむね期待潜在成長率を表す。つまり先進国の期待潜在成長は同じように低下している。利息が付くお金という意味で資本が誕生したのは13世紀初頭。14世紀から現在に至るまでの利息の推移をイングランド銀行(BOE)は計算している。それによれば先進国の実質長期金利、すなわち潜在成長率は長期にわたって低下傾向にあるのは明らか。古典派経済学の主張していた「利潤率低下の法則」が支配しているからこそ投資家が唱える「ROE革命」というスローガンが経済のシンボル化を促しているのだ。(つづく) (新)
鹿児島県・西之表市選挙を振り返る
南西諸島への自衛隊配備強化の中でそれらの地域には激震が走っている。
2月2日、鹿児島県西之表市市長選挙と市会議員選挙が行われた。これらの選挙には地方が抱える地場産業の弱体化、人口減への危機感、子育て環境の充実、雇用機会均等の創出、医療、福祉分野での人材不足など共通の問題が問われている。それ以外に何といっても馬毛島の自衛隊基地に対してどう向き合うか、反対運動と賛成運動が対峙しており、両選挙戦ではこれらが激しく問われてきた。
西之表市長選には6人が立候補しているが基地整備に賛成が4人、反対が1人、反対でも賛成でもないのが1人、八板俊輔氏である。これまで反対の立場の八板氏が2選を果たしてきた。今回3選した八板氏は2656票の得票であり反対の三宅公人氏は948票である。投票率71・89%である。これらの背景には基地整備がなし崩し的に進む中での民意の流動化がみられる。
西之表市議選には定数14に対して17人が立候補した。アンケ―トに自衛隊基地整備に反対が7人、賛成が9人、どちらでもないが1人。選挙結果は賛成、→トル9人、反対7人の当選である。これまで、賛成7人、反対7人と市議会で同数で拮抗してきたことを考えると投票率の低下と合わせて重要な変遷である。
沖縄諸島では民意を踏みにじり自衛隊の進出、軍備拡大が日本政府により強行されているがこれらの流れの中で自衛隊、アメリカ軍の共同行動が進行している。鹿児島県下の自衛隊強化もその一環であり地方の行事に自衛隊が車両を持ち込んで宣伝を行っている。 K・K(鹿児島在住)
せんりゅう
反省はなく犬金いただき党
アベ一派デブリのごとし困り物
財界はねあげ景気で楽しそう
同盟狂化イシ・トラの野望
米軍性暴力これ戦争ですよ
軍事といわぬ大嘘予算
立民よ力見せろよ自滅だぞ
反戦は市民がつくり市民のくに
ゝ 史
2025年2月
複眼単眼
石破首相とトランプ大統領
米国第一主義を標榜する第二次トランプ政権が誕生して、世界のガバナンスがどこへいくのか、「トランプ現象」とでも呼ぶべき動乱が生じている。よくも悪しくも定着してきた第二次大戦後の国際法や国際秩序への挑戦だ。
バイデン政権までの米国やその追随者たちが、中国やロシアに対して口を開けば「第二次世界大戦後の国際法秩序に対する重大な挑戦である」などと非難してきたことはどこへ行ったのか。
そこで日本国憲法前文の一節を思い出した。
「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる」と。
本稿がでるころはとうに日米首脳会談(2月7日)は終っているが、石破首相はトランプに対してこの憲法前文の紹介くらいはできないものか、できないだろうな。
石破氏は首相になる直前、例のハドソン研究所への寄稿論文でこういっていた。
「日米安全保障条約を『普通の国』同士の条約に改定する条件は整った」と述べ、自衛隊のグアム配備など、相互に防衛義務を負う安保条約への改定(日米地位協定の改定など)に意欲。また安保改定に必要だとみられる憲法改正の実現を改めて掲げ、「日米同盟を米英同盟並みに引き上げることが私の使命だ」と強調した。石破氏は持論の「アジア版NATO」創設に合わせて、米国の核兵器の共有やアジア地域への持ち込みを検討する必要がある」と啖呵を切っていたが、いざ首相の座を手に入れてみると、その椅子にしがみついて信念を曲げ、党内親米派にすり寄り「手のひらがえし」の連発だ。
石破首相への怒りのついでに、第二次石破政権の下での最初の通常国会の施政方針演説(2025・1・24)のことにもふれようと思う。
その冒頭で、首相は「今年は戦後80年、そして昭和の元号で100年にあたる節目の年」とのべ、それにからめて堺屋太一を引用し、近代史を概括している。
内閣官房が提唱している「昭和100年キャンペーン」には大反対だが、これは別の機会に論じたい。
堺屋が「強い日本」から「豊かな日本」へ、そしてこれからは「楽しい日本」だと述べたことにならって、石破首相も「楽しい日本」をめざすというのだ。すべての人が安心と安全を感じ、自分の夢に挑戦し、「今日より明日はよくなる」と実感できる、多様な価値観を持つ一人一人、互いに尊重しあい、自己実現をはかっていける、そうした活力ある国家」だという。
「誰もが安心と安全を感じ」、自分の夢に挑戦し、「今日より明日はよくなる」と実感できる楽しい社会だと?、ふざけるな。
この「今日より明日はよくなる」はどこかで聞いたセリフだと思ったら、23年の岸田首相の所信表明演説の借りものだ。そうまでして岸田にゴマをすり、人びとをおちょくるのか。 (T)
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