人民新報
 ・ 第1443号統合536号(2025年3月15日)

                  目次


●  暴走トランプが世界を壊す 広がる米国批判

        日米軍事同盟体制の打破へ

●  さようなら原発3・8全国集会「3・11福島原発事故を忘れない」

        東電刑事裁判「無罪」決定の最高裁に抗議

●  25春闘勝利へ

        東京総行動を展開 

●  移住労働者の権利を守れ

        MARCH in MARCH

●  関ナマ京都3事件判決公判「無罪判決」

●  3・1朝鮮独立運動106周年

        「非常戒厳」を阻止した韓国民衆と連帯し、今こそ植民地主義を清算・日米韓軍事同盟化に反対しよう

●  ウクライナに平和を!

●  埼玉市民連合の学習講演会

        新潟における市民と野党共闘のあゆみ

●  能動的サイバー法制

        先制サイバー攻撃への警察・自衛隊の動員

●  大崎事件特別抗告棄却と川内原発運転差し止め

●  収奪者から奪還せよ! ㊦

        水野和夫「シンボルエコノミー - 日本経済を侵食する幻想」を読む

●  せんりゅう

●  複眼単眼  /  石破ポチが語る「私は犬ではない」





暴走トランプが世界を壊す 広がる米国批判

        日米軍事同盟体制の打破へ

トランプの自国第一主義

 トランプ政権は、様々の分野で矢継ぎ早に画期的な政策を打ち出してきている。トランプの掲げている「アメリカ・ファースト」なるものを実現するためのものだ。ウクライナ問題での劇的政策転換は米ソ冷戦崩壊以降の米国中心の世界秩序を大きく動揺させている。いま、自国、自派、自分の利益のためには、他のことなどまったく考慮しないというトランプの思惑に世界はようやく気づき始めた
 こうした地殻変動が起こっているにもかかわらず、日本政府は、アメリカの利益と日本の利益のウインウインの関係を願っていたようだが、甘い期待は裏切られた。鉄鋼とアルミニウムに対する25%の関税発動に対し、武藤容治経済産業相は日本の「適用除外」に向け米閣僚らと会談したが、成果は得られなかった。日本は同盟国なのだから、アメリカの世界支配を支え続けてきたのだから、なんとかお目こぼしをなどいうもくろみは破産したようだ。
 トランプ政権の登場の背景には、米国総合国力の相対的低下がある。「アメリカはもはや世界の警察官ではない」と宣言したのは民主党オバマ政権の時代の2013年のことだった。第一次トランプ政権、バイデン政権とその趨勢が一層深刻なものになったことへの暴力的な対応が、現在のなりふり構わぬ「アメリカ・ファースト」なのである。米国は世界支配構造は残しながらも、同盟国をふくめて負担を押しつけていくのである。そのなかでも対米従属的な対応しかとれないところへ負担は加重される。関税問題でもカナダなどは一定の対米対抗策をとろうとしているし、世界各国で反米気運は強まっているが、日本政府の対応はそうはならない。かつては繊維・鉄鋼・自動車・テレビ・半導体と米国から輸出規制その他の要求がつきつけられ、そのたびに大幅な譲歩を強いられてきた歴史がある。

軍事費GDP3%の要求

 トランプは、米軍のインド太平洋戦略を日本、韓国、フィリピン、オーストラリアなどの大軍拡によって肩代わりさせようとしている。
 これまでも日本政府は、米国からの軍事費GDP2%要求などを契機に、自衛隊の増強と攻撃型軍隊への転換、軍需産業の推進、攻撃型サイバー網の構築など戦争する国作りに躍起となっている。政府は23~27年度の防衛費総額を43兆円と定め、年1兆円程度のペースで増額してきた。2025年度予算案で防衛費は、憲法9条に基づく専守防衛を形骸化させる敵基地攻撃能力(反撃能力)の整備、長射程ミサイルの配備や開発、標的を探知・追尾する小型衛星網の構築を含め過去最大の約8兆7千億円に達した。前年度当初予算比9・5%増である。一方で、社会保障費1・5%増、文教・科学振興費1・4%増、中小企業対策費0・1%増などとなっている。だがこれを昨今の急激な物価上昇率から見ると実質的にはマイナスとなっており、今後もその度合いは広がっていくことになるのは必至だ。
 第1期トランプ政権は、北大西洋条約機構(NATO)加盟国など「同盟国」に軍事費をGDP比2%以上とすることを、求めてきたが、この2期目では5%への増額を要求している。台湾にはGDPの10%を求めている。3月には、アメリカのコルビー国防次官が日本はGDPに占める防衛費の割合を少なくとも3%にまで引き上げるべきだと主張している。これに対し石破首相は、「日本の防衛費は日本が決めるものだ。政府として必要があれば予算を計上するということで、アメリカにかぎらず、他国に言われて決めるものではない。防衛費は、いろいろな積み上げの結果決まっていくもので、最初からGDPの何%ありきというような粗雑な議論をするつもりはない」と述べたが、拒否の姿勢ではない。

自民党政治にNOを


 すでに軍事費増による社会保障費などのへのしわ寄せで人びとの生活の圧迫は明らかだ。いっそうの軍備増強はそれを深刻化するとともに、日本をアメリカ軍の尖兵とした戦争をみずから招き寄せうるものとなる。
 石破は、維新の会、国民民主党などを引き入れようとして「交渉」を重ねている。しかし少数与党となった自民党はさまざまな点で野党に譲歩せざるを得なくなってきている。選択的夫婦別姓制度導入など党内右派から反発を招く課題でもこれまでの党是を転換せざるを得なくなってきていて、自民党内の矛盾・亀裂も進んだ。石破の党総裁交代の声までが出始めた。
 夏には、東京都議選、参院選がある。昨年の総選挙の結果による少数与党の実現で「政治は変る」「政治は変えられる」という雰囲気がうまれた。立憲野党を強化していこう。軍備拡張予算に反対し、日米軍事同盟強化、戦争する国作りに反対する闘いを前進させよう。維新の会や国民民主党などの自民党補完勢力の策動を許さず、総がかり行動の前進、市民と野党の共闘を強化していこう。


さようなら原発3・8全国集会「3・11福島原発事故を忘れない」

        東電刑事裁判「無罪」決定の最高裁に抗議

 東電福島原発事故から14年もたったが、汚染土処理・廃炉の目処などもまったく立たないにもかかわらず、政府は原発増強を押し進めている。最高裁も東電経営陣の無罪を決定した。このままでは福島事故の大惨事は繰り返されことになってしまう。原発事故を風化させることなく、原発再稼働阻止、脱原発の闘いを強めていかなければならない。

 3月8日、代々木公園で、さようなら原発1000万人アクション実行委員会の主催による「さようなら原発全国集会」が開かれた。
 呼びかけ人の佐高信さんの主催者あいさつ、瓶子高裕さん(福島県平和フォーラム)、大河原さきさん(原発事故被害者団体連絡会)、沢居恵美さん(新宿御苑への放射能汚染土持ち込みに反対する会)、荒木茂信さん (青森県農業者政治連盟組織協議会)、足立心愛さん、二宮リム虹さん(Fridays For Future Tokyo)、池田千賀子さん(柏崎刈羽原発再稼働の是非を県民で決める会)が発言し、呼びかけ人の鎌田慧さんが閉会あいさつをおこなった。
 集会終了後に、原宿コース、渋谷コースにわかれてパレードに出発し、原発再稼働、原発推進政策反対をアピールした。

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東電刑事裁判、最高裁の上告棄却決定に抗議する声明
         ―被害者を踏みにじり、次の原発事故を準備する最高裁を許さない!


2025年3月6日

   福島原発告訴団
   福島原発刑事訴訟支援団


 東京電力福島第一原発事故の刑事責任を問う東電刑事裁判において、最高裁判所第2小法廷(岡村和美裁判長)は3月5日付で、業務上過失致死傷罪で強制起訴された武黒一郎、武藤栄両被告について、検察官役の指定弁護士の上告を棄却し、1~2審の「無罪」の判決を維持する決定をしました。

 最高裁第2小法廷は、三浦守裁判官を除く裁判官3人(岡村和美裁判長、草野耕一裁判官、尾島明裁判官)全員一致として「業務上過失致死罪の成立に必要な予見可能性があったものと認定できず」「発電所の運転停止措置を講じるべき業務上の注意義務が認められない」とし、被告人を無罪とした第1審判決を是認した原判決の判断は「不合理な点があるとはいえない」と最悪の決定をしました。

 私たちは、東京電力との深い関係にある草野耕一裁判官が裁判の公正を妨げると考え、事件の回避を求めてきましたが、3月21日の定年退官の直前の判断に強い憤りを禁じえません。一方で、2022年、東電民事裁判の最高裁6・17判決で、少数意見を書いた三浦守裁判官が事件を回避したことにも驚きました。

 そもそも、第1審判決は、地震本部の長期評価に基づいて東電設計が算出した15・7メートルの津波高をもとに、東京電力が常務会で津波対策を承認していながら武藤らによって先送りした事実が公判で明らかになり、予見可能性は十分立証されたにもかかわらず、東京地裁永渕健一裁判長が握り潰した不当判決でした。

 この最高裁の決定は、本件の双葉病院から避難の途中で亡くなった被害者とその遺族をはじめ、万余の人々の生活と人生を壊した、日本最大の公害事件である福島第一原発事故の全ての被害者と被災者を踏みにじるものです。

 さらに、人災事故を引き起こし、国民の生命と財産を窮地に陥れ、甚大な被害をもたらしながら、原子力発電事業者は何らの責任も問われず免責されるという法的前例をつくり、むしろ、新たな原発事故を準備するものです。

 決して許されるものではありません。満腔の怒りをもって抗議するものです。

 私たちは、2012年、福島原発告訴団を結成し福島地検に告訴して以来、事件が移送された東京地検における不起訴処分と検察審査会の起訴議決を経て、市民の力で強制起訴を勝ち取り、2016年の福島原発刑事訴訟支援団結成、2017年から東京地裁の37回の公判の中で多くの真実を明らかにしました。2019年東京地裁の不当判決。2021年からの控訴審と23年の控訴審判決、さらに23年から24年にかけての最高裁で上告審と13年にわたる道のりでした。

 私たちは、改めて無念の死を遂げた被害者、その遺族、そして被災者の14年の想い、これまでの道のりの中で鬼籍に入られた多くの方々の想いを、決して忘れることはできません。

 私たちは、兄弟姉妹関係の東電株主代表訴訟はじめ、全国で裁判を続ける仲間の皆さん、各地に生きる原発事故被災者の皆さんと共に、今も続く過酷な福島原発事故の被害に真摯に向き合い、原子力行政におもねる司法をも変えるためにも、これからもあきらめずに活動を継続して参ります。


25春闘勝利へ

        東京総行動を展開 

物価高騰と低賃金の長期化という情勢の中で2025春闘がたたかわれている。

 2月13日、首切りは許さない、権利はゆずらない、全ての争議の勝利・解決に向けてたたかう全一日の東京総行動が展開された。けんり総行動実行委員会と東京全労協は呼びかけている。―誕生した石破政権は、一方で「103万円」の壁(所得税課税最低年収額)を引き上げるとしながら、他方では、大軍拡、その財源確保のために増税などを進めようとしています。これでは労働者・国民の生活危機は打開されません。今こそ自民党政治をうち破り、大幅賃上げ、労働者-国民の生活危機突破、社会保障の拡充、労働者の権利の回復に向けて運動を強めていくときです。また、開戦から3年を迎えようとするウクライナ戦争の即時停戦、イスラエルのガザ侵攻・ジェノサイド、シリア(ゴラン高原)への侵略を止めるために反戦運動を広げていく必要があります。――
 総行動は、日本製鉄(日本製鉄元徴用工裁判を支援する会)、トヨタ本社(全造船関東地協・フィリピントヨタ労組を支援する会)、日東電工東京本社(韓国オプティカルハイテック労組を支援する会)、JAL本社(JAL不当解雇撤回争議団)に対して行われた。
 昼には、けんり春闘全国実行委員会主催で経団連への抗議要請集会が行われた。経団連へは、韓国オプティカルハイテック労組やフィリピントヨタの解雇争議解決への指導、労働基準法制の改悪やめることなどを要請したが、経団連は要請団を阻止し、要請書も受け取り拒絶という不当極まりない対応をおこなった。これにシュプレヒコールで抗議をつづけた。
 労働者の団結で春闘に勝利しよう。


移住労働者の権利を守れ

        MARCH in MARCH

 「MARCH in MARCH for Migrant Workers in Japan(移住労働者の生活と権利のための3月行動)」は、1993年3月8日に生活と権利のための外国人労働者一日行動として始まった外国人春闘の取り組みで毎年行われている。

 3月9日(日)に、上野公園水上音楽堂の横の広場に、多様なルーツを持つ労働者が一斉に集まり、「わたしたちはここにいる!」の声を上げ、上野・御徒町までデモでアピールした。


関ナマ京都3事件判決公判「無罪判決」

 声を上げる労組・労働者を圧殺するのは、最大限の企業利潤を上げるためのものだ。警察・検察・裁判所が一体になっての産業労働組合・連帯ユニオン関西地区生コン支部への弾圧は、その最たるもので、反撃の闘いはひろがっている。

 2月26日、京都地方裁判所第2刑事部(川上宏裁判長)は、関生支部の湯川裕司現委員長・武建一前委員長に対して、ベスト・ライナー事件(企業閉鎖に伴う解決金要求が恐喝)、近畿生コン事件(企業倒産の際の工場占拠に関する費用要求が恐喝)、加茂生コン第1事件(就労証明書交付要求が強要未遂)、同第2事件(企業閉鎖に伴うプラント解体やミキサー車1台譲渡要求が強要未遂・恐喝未遂)のすべてについて、無罪を言い渡した。
 全日本建設運輸連帯労働組合、近畿地方本部、関生支部の三委員長連名の「京都事件・無罪判決についての声明」(2025年2月27日)は判決の意義を次のように指摘している。<京都地裁判決は、関生支部が産業別・職業別労働組合であることや、生コン業界の構造と京都地域における労使関係の経緯をふまえて、たとえばベスト・ライナー事件については、関生支部がストライキをおこなった経緯と目的、その態様をきめ細かく事実認定した。そのうえで、ストライキは京都協組が申し入れた企業閉鎖に伴う解決金支払いと雇用保障要求という『労働問題についての協定内容の履行を求めるもの』であり、労働問題を解決するという目的以外の目的を主としておこなったものであるとか、労務の不提供又は平和的な協力要請を超えるような態様での脅迫的な言動があったものではなかったとして、人を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知、すなわち脅迫に該当するとは評価できないとして検察官の主張を退けた。判決はまた、『そもそも、ストライキをはじめとする争議行為は、その性質上、労働組合が使用者に一定の圧力をかけ、その主張を貫徹することを目的とする行為であって、業務の正常な運営を阻害することはもともと当然に予定されているものであるし、そうした意味で使用者がストライキを避けたいと考えることは当然の前提となっているといえる』との確立した労働法理に立脚したまっとうな判断を示したうえで、京都協組の経営者らが関生支部の十数年も以前のストライキ以来『畏怖の念を抱いており、そのような畏怖に乗じて、ストライキや力を背景に自らの要求に応じさせるスキームを確立していた』などとする検察官の主張を一蹴した。>
 まさに画期的な判決であり、今後の闘いのおおきなステップとなった。


3・1朝鮮独立運動106周年

     「非常戒厳」を阻止した韓国民衆と連帯し、今こそ植民地主義を清算・日米韓軍事同盟化に反対しよう!

 2月27日、文京区民センター―で、「朝鮮独立運動106周年集会―『非常戒厳』を阻止した韓国民衆と連帯し、今こそ植民地主義を清算・日米韓軍事同盟化に反対しよう! 日本の敗戦―朝鮮解放・分断80年、日韓条約60年を問う―」が開かれた。
 今年は干支でいう乙巳(いっし・きのとみ・ウルサ)の年、60年目に回ってくるこの年は日本と韓国の関係で重要な節目の年だ。日露戦争終結後の1905年(明治38年)に日本は、韓国を日本の保護国とした(1910年に日本は韓国を併合して統治下に置いた)、1965年に日本は当時の朴正熙政権と日韓基本条約を締結した。
 集会では。はじめに主催者を代表して渡辺健樹さん(3・1ネットワーク/日韓ネット)があいさつ。

乙巳の年に考える

 吉澤文寿さん(新潟国際情報大学教授)が「何に抗い、何を守り、育てるのか―乙巳(1905/1965/2025)年に日朝・日韓関係を考える」と題して講演。明治政府は、幕藩体制の解体し、天皇制を前面に打ち出した国家統合をおこない、北海道(アイヌ語で「ヤウンモシリ」の「開拓」、琉球「強占」、征韓論、日清、日露戦争をへて朝鮮を「強占」した。朝鮮植民地化の本質は、なにより国家主権の簒奪であり、その方法の強制性、不法性であり、単にその無作法さや不適当さということではなかった。その後には戦時体制構築と皇民化政策、強制動員がおこなわれた。植民地支配の問題は「戦時強制動員」だけではなく、「巨大な監獄」 としての植民地支配全体を問う論理が必要である。日本の敗戦で、朝鮮解放、そして分断、日本も加担した朝鮮戦争を経て、日米同盟を機軸として、「安い」賠償、高度経済成長をおこなった。1960年には、日本では戦争に加担する「軍事同盟」反対した安保闘争があり、韓国では4・19革命があったが、それを覆す朴正熙らによる5・16反革命クーデターがおこった。日韓国交正常化のための日韓交渉では、植民地支配責任を追及する韓国、それを否認する日本の対立があったが、米国が介入して植民地期の「債務」「債権」に関わる外交保護権のみが解決される日韓両国の妥協となり、「1965年体制」ができ、植民地支配責任不問のままとされた。「帝国」解体、「植民地」独立後も植民地主義は継続したのである。日本は南北朝鮮の分断固定化に寄与してきた。
 韓国の軍事政権と戦う民主化運動、日韓連帯運動また日本の市民による郷土史、民衆史、在日朝鮮人史の掘り起こしなどの活動が続けられた。在韓原爆被爆者の来日、裁判闘争が闘われ、日本政府は、韓国の被害者については「日韓請求権協定で解決済み」を前提とした「人道的対応」を行い、韓国政府も同調したが、日本政府の対応は植民地支配責任は不問のまま、韓国世論の好転を期待するというものに過ぎなかった。しかし、韓国における民主化、被害者・支援者による行動、日本軍「慰安婦」被害者の金学順さんの証言、アジアにおける戦争被害者の告発、国連などの国際機関からの支援などがあった。国際的にも多くの旧植民地が独立主権国家になり、冷戦終結には、米国一極体制から多極化への動きが加速し、グローバルに植民地主義・植民地支配の歴史を問う声が高まった。日本でも在日朝鮮人被害者・支援者による運動が起こり、日本政府も河野談話、村山談話を契機とする歴史認識についての進展もあった。また日朝平壌宣言もだされた。
 しかし、日本人拉致問題で日朝交渉が停滞し、また日本政府は「日韓方式」で植民地支配責任を回避する方針を維持しつづけている。
この間の韓国被害者の運動の成果として、2005年日韓会談文書公開、2011年韓国憲法裁判所決定、2012年から2018年の韓国大法院判決があり、日韓請求権協定 「解決済み」論の克服、朝鮮植民地支配の不法性およびその支配による朝鮮人被害の認定など植民地支配責任不問という「1965年体制」の根幹が動揺する事態を勝ち取ることが出来ている。いま、韓国では、12・3戒厳阻止・大統領弾劾の闘いが拡大している。ひきつづき朝鮮学校の差別、ヘイト行為との対決など植民地主義との闘いが進められなくてはならない。今年2025年の乙巳の年、植民地・分断主義に対して反植民地・反分断主義そして「公正」さを求めて、「1965 体制」 の民主主義的な克服に向けた実践の継続が必要なのである。

尹錫悦弾劾と平和への道

 チュジェジュンさん(尹錫悦即刻退陣・社会大改革非常行動共同運営委員長・韓国進歩連帯政策委員長)が、「尹錫悦弾劾と朝鮮半島平和への道」について、韓国からリモート報告。尹錫悦大統領とその一味は戒厳のため昨年4月の総選挙後、北との戦争を誘導していた。尹錫悦は12月3日、戒厳令を宣布し憲法を破壊、大統領が保護すべき国民に向けて銃口を向けた。さらに自分に批判的な政治家や労働組合のリーダーや宗教人まで「全員捕まえてしまえ」として「射殺」まで計画した。非常戒厳は「戦時・事変またはこれに準ずる国家非常事態」で宣言される。だが、誰が見ても大韓民国はこのような状況になかった。宣布の手続きもまた、法に違反していた。戒厳令宣言のためには内閣・国務会議の手続きが必要だが、実際に国務会議もなかった。憲法では戒厳宣言時に大統領が「遅滞なく国会に知らせなければならない」と規定されているが、この通告も存在しなかった。宣言後の措置はさらに深刻な問題がある。憲法によると、国会は戒厳解除の要求が可能で大統領はこの要求に従わなければならず、国会の権限の特別措置は禁止される。だが、尹錫悦の戒厳布告令は国会の活動を停止し、戒厳軍は国会議事堂に武力で突入して国会の機能を無力化させようとした。これは憲法の規定する戒厳解除の手続きさえも意図的に毀損しようとするものだった。重大かつ明白な憲法違反と言わざるを得ない。
 尹錫悦政権の民主主義破壊、民生破綻、歴史正義の毀損、戦争危機など、政治的、社会的暴走は深刻なレベルに達していた。それに加えて積み重なった権力型の各種不正が発覚し、民意は離反、怒りがほぼ臨界点に達していた。
 尹錫悦政権に反対する闘いの流れはバラバラだったが、ついに11月16日に「尹錫悦を拒否する第1次市民大行進」が行われた。これは「尹錫悦政権退陣運動本部」と「拒否権を拒否する全国非常行動」、「全国非常時局会議」が共同主催し、共に民主党や祖国革新党、進歩党など院内野党までが参加した。そして10万人を越える大規模な市民が参加する大きな共同の広場となり、この闘いは11月23日の第2次市民大行進、11月30日の第3次市民大行進の流れへとつながっていった。
 このような中で12月3日の夜、尹錫悦大統領は奇襲をかけた形で非常戒厳を宣布したが、ただちに市民の抵抗と国会の迅速な戒厳解除議決でクーデターは第一段階ですぐに阻止された。翌日からただちに、本格的な抵抗運動が組織され始めた。1 2月4日午前9時には 「全面的抵抗運動を宣言する」社会団体共同の緊急記者会見が行われ、毎晩ろうそくの灯りをともした。ついに12月7日には国会前で100万人以上が参加する退陣広場が開かれたが、与党議員らの本会議ポイコットで弾劾訴追議決は定数未満で「不成立」となった。そして12月11日には全国1、500以上の社会団体が参加する「尹錫悦即刻退陣、社会大改革非常行動」が発足した。12月14日には国会前で200万人集会が開かれ、この日国会では尹錫悦弾劾訴追案が可決された。国会で大統領弾劾訴追案が議決された後も週末ごとに大規模な市民集会とデモ行進が行われたが、紆余曲折を経た末に1月15日ようやく尹錫悦大統領が逮捕され、1月26日に起訴された。これにより尹錫悦退陣闘争は第3段階へと進んだ。何よりもこれまでのデモと根本的に違うのは、以前の闘いに対する新しい参加者の信頼だろう。南泰嶺や漢南洞の闘いの勝利でも農民と労働者が先頭に立ち、市民がつながって勝利へと導いた。この過程で民主労総と全国農民会、全国女性農民会への大衆的信頼が高まった。これから尹錫悦退陣闘争は第4段階に入ることになる。それは憲法裁判所で大統領罷免審判が下されるまでだ。尹錫悦が罷免されれば60日以内に大統領選挙が行わられることになる。今回の大統領選挙における第1の課題は、極右勢力に対抗し民主党や進歩党、祖国革新党、基本所得党、社会民主党の野党5党が力を合わせ広場の市民とも共同しこれら極右勢力が政権を握ることを阻止し、内乱勢力を清算していくことだ。そして、第2の課題は、社会大改革の土台を作り出すことだといえよう。現段階の退陣運動の中心的課題は、内乱を早期に終息させ社会大改革の課題を広場で客観的に広げることだ。今後、社会大改革の課題を公然化し、広場で実践していく過程に進むだろう。尹錫悦弾劾罷免闘争の第5段階は、その後の大統領選挙を通じた政権交代まで進められることになる。今回の大統領選挙では何としても親米保守の内乱勢力だけは韓国政治から排除させたい。そして朝鮮半島の恒久的平和体制の構築と、韓国内での不平等の解消や嫌悪や排除の政治を乗り越えて新しい士台作りができれば、光復80年目にして夢にまで描いた自主、民主、平等の統一への可能性が飛躍的に高まるだろう。

 菱山南帆子さん(総がかり行動)が、2月8日に開かれた尹錫悦即刻退陣ソウル大行動への参加報告、韓国オプティカルハイテック労組支援闘争報告を大畑龍次さん、最後に日朝協会の今野耕太さんが行動提起。


ウクライナに平和を!

 ロシアのウクライナ侵攻から3年、2月24日、さようなら原発1000万人アクション・戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会の共催による「ウクライナに平和を!核兵器をつかうな、原発に手を出すな」集会(日比谷公園大音楽堂)がおこなわれた。総がかり行動実行委員会の染裕之共同代表の開会のあいさつ、原子力資料情報室の松久保肇事務局長、チェルノブイリ子ども基金の黒部信一さんと向井雪子さん、憲法共同センターの石川敏明さんが発言した。
 集会終了後、鍛冶橋駐車場までデモが行われた。


埼玉市民連合の学習講演会

       新潟における市民と野党共闘のあゆみ

  2月22日(土) 、埼玉市民連合主催による学習講演会がさいたま市のさいたま共済会館で開かれた。  開会あいさつは共同代表の田中重仁さんからありました。「新潟における市民と野党共闘のあゆみ―総選挙における市民連合の役割―」と題して佐々木寛さん・新潟市民連合共同代表による講演が行われました。
 佐々木さんは、昨年10月27日の総選挙は自公与党の歴史的な敗北となり、新潟では、5区の全てを立憲民主党で議席を獲得しました。また、これまでの新潟市民連合の設立経過や今回の総選挙での野党候補の統一化に成功させた取り組みについて報告がされました。脱原発運動や地域エネルギー問題を取り組む市民などと連けいをし、普段から生活でつながり、ていねいにつくることを大事にしてきた。また、新潟で野党の統一ができたが、埼玉でも共闘が実現していたら野党は5議席を積み増すことができたと指摘しました。衆院選で、埼玉は、一部の小選挙区でしか野党候補が一本化されず、16区中8区で自民党が議席を占めました。野党共闘が後退している現状で「今のぎくしゃくを解決できるのは市民の連帯しかない」、「埼玉も次は共闘を」と呼びかけました。
 閉会のあいさつで共同代表の前島康男さんは「社会を変える道筋は市民と野党の共闘しかない」と訴えました。


能動的サイバー法制

        先制サイバー攻撃への警察・自衛隊の動員

 3月6日、衆議院第一議員会館会議室で院内集会「先制サイバー攻撃への警察、自衛隊の動員は問題だ!」が開かれた。
 共謀罪NO!実行委員会の角田富夫さんが、「インターネット監視・先制サイバー攻撃法案に反対しよう」と題して報告。警察、自衛隊の先制サイバー攻撃への動員は問題だ。それを警察官職務執行法と自衛隊法の改正で先制サイバー攻撃への道を開こうとしている。一昨年12月の安保三文書で、先制的な敵基地攻撃能力が打ち出されたが、それと一体のものとして能動的サイバー防御がある。内閣官房の「サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた有識者会議」では、当初能動的サイバー防御の実行部隊は自衛隊として議論されてきたが、途中から警察も並んで議論され、最終的に有識者会議の報告書では、警察が軸としてだされた。自衛隊が軸になり能動的サイバー攻撃をおこなうこととすると、「専守防衛」をかなぐり捨てることになり、敵基地攻撃能力と一体のものとして批判されることを怖れ、自衛隊を後景化し、警察が前面にでることが建前になったと思われる。この警察の能動的サイバーへの動員は、警察の国家警察への転換をはかるものである。だが、警職法改正で警察のサイバー攻撃を認めることはできるのか。警職法は、国内を対象としたものであり、外国を対象としたものではない。違憲の可能性が大きいから、警職法の趣旨を逸脱するものだ。警職法の「サイバー危害防止措置執行官による措置」が第6条の2として新設される。警察庁長官が警察庁又は都道府県警察の警察官の中からその能力を有する者をサイバー危害防止措置執行官として指名し、同執行官は、サイバーセキュリティを害する電気通信、情報技術を用いた不正な行為による電気通信、若しくはその疑いのある電気通信、または電磁的記録を認め、放置した場合、人の生命、財産など危害が発生するおそれがあり、緊急の必要があるときは加害関係電気通信の送信元、若しくは送信先である電子計算機などの管理者、関係者に対し必要と認められる措置をとることを命じ、または自ら措置をとることができる、とする。
 自衛隊法の改正では、「重要電子計算機に対する通信防護措置」が新設される。それは、内閣総理大臣は、重要電子計算機に対する特定不正行為で、外国の者から、「特に高度に組織的かつ計画な行為と認められるものが行われた場合において、次の各号のいずれかにも該当することにより、自衛隊が対処をおこなう特別の必要があると認めるときは」被害を防止するめに「通信防護措置」をとることができる、というものだ。

 白藤博行さん(専修大学名誉教授)が角田報告へのコメント、原田富弘さん(共通番号いらないネット)が活動の報告を行った。


大崎事件特別抗告棄却と川内原発運転差し止め

 鹿児島では2月に2つの重要な動きがあった。無罪を訴える原口アヤ子さんの第4次再審請求に対して最高裁が棄却したこと、もう一つは2月21日九州電力川内原発の運転差し止めを要求した住民に対して鹿児島地裁がこれを退ける判断を下したことである。

大崎事件とは
 1979年鹿児島県曾於郡大崎町で男性の変死体が見つかった。その犯人とされた原口アヤ子さんは無実を主張し続けてきた。
 1981年までに実刑が確定し10年の服役を余儀なくされてきたがこれまで再審請求を続けてきた。今回の再審請求に対しては棄却されたとはいえ5人の最高裁判事のうち1名が再審するべきであるとの判断を下している。
 97歳という高齢の原口さんは第5次の再審請求を行う意思表明を弁護団にしている。
 鹿児島県では兵庫県での知事によるパワハラスメントと類似の県警本部長によるパワハラスメントが起きてきた。
 大崎事件の過程で示された県警による原口さんへの取り調べの実態は人 権無視の決めつけである。事後的ではあるが県警本部長による管内での警察による犯罪隠ぺいをみると冤罪事件が生じやすい土壌があったことを遡って実感させる。 原口さんを支援する弁護団や市民は引き続き無罪を求めて活動している。

川内原発差し止め訴訟
 川内原発1号、2号機の安全性が確保されていない現状は住民の人格権や生存権を侵害しているとして運転差し止めを要求してきた裁判に対して鹿児島地裁は2月21日住民の訴えを棄却した。
 福島原発事故で原発行政は大きな転換に直面したはずであるがこの14年の間に政府、行政、電力会社はなし崩し的に震災前にもどりつつある。逆に地震や津波は熊本や能登地震のように何回も起きているし南海トラフの潜在的可能性は絶えず警告されている。特に阿蘇や桜島、霧島の活火山を抱える周辺住民にとっては実感を伴う恐怖である。
 鹿児島地裁判決の骨子は1・避難計画、2・破局的噴火、3・基準地震動、4・重大事故対策となっている。1の、重大事故が発生しない保証はない、また避難経路、風向きの予測に対して前提となる放射能の具体的危険性が認められない。2の、姶良カルデラがあることや噴火の可能性否定についての学者の批判などに対して火山性事象の安全性を欠いているとは言えない。3の、地震時の震源断層面の長さ、上回る地震の来襲や耐震安全性の確保できていないに対して規制委の判断妥当。4の、水素爆発や炉心溶融の事故収束困難に対して安全確保策に関する設置基準や適合性検査の過程に不合理な点は認められない、などとしている。
 このように九州電力と国に追従した内容となっており住民側は福岡高裁宮崎支部に控訴して戦う方針である。 K・K(鹿児島在住)


収奪者から奪還せよ! ㊦

        水野和夫「シンボルエコノミー - 日本経済を侵食する幻想」を読む

シンボルエコノミーはなにを犠牲としたか


 1985年度以降大企業・製造業でグローバル化が進む過程で、立場の弱い人が過去四半世紀にわたって被った損失(逸失利益)をいかに遡及して救済し、かつ将来の歪みを是正するか考える必要がある。前者は内部留保金課税など資産課税であり、後者は法人税の累進課税になる。長期にわたって歪んだ年々の賃金と借入金利率の決定は、ストックである内部留保金として積みあがっているのだから。
日経連(現経団連)が1995年に公表した「新時代の『日本的経営』」で非正規労働者が激増した(1994年971万人→2023年2124万人 2・2倍)一方正規労働者は減少した(3805万人→3606万人 199万人減)。シンボルエコノミーの世界で株価上昇を目指す資本(内部留保金)にとっては中間層(労働者階級)は邪魔な存在なのだ。経団連「経営労働政策委員会報告」はずっと労働生産性上昇なしに人件費増なし、と呼号しているが、実質GDPを就業者で割った労働生産性は、1997年から2003年まで年平均0・5%増となっているにもかかわらず実質賃金は1997年以降下落している(年0・7%減)。四半世紀に及ぶ実質賃金下落の理由は資本の力が圧倒的に強くなり、雇用の流動化政策が実施され非正規労働者が増加したこと、労働者間の分断が進んでいる。「連合」は組合員の暮らしは守っているかもしれないが、労働者全体の利益を代表する団体ではない。1997年以降の労働生産性が年0・5%上昇していたのだから、実質賃金も少なくとも追随率7割として年0・35%増加していなければならない。
利子も利潤もその源泉は付加価値からしか生まれない。だから両者は比例関係になるのが「常態」のはずだが、21世紀にはいると「例外」が定着するようになった。日本企業の利潤率(ROE)と金融機関の貸出金利子率のスプレッド(利子・利潤スプレッド)は規制金利時代(1960年~1976年度)には平均4・8%だった。1977年度以降ROEマイナス0・2%になる1998年度まで年平均で0・9%まで縮小した。しかし、1998年度から利子・利潤スプレッドは拡大に転じ、2023年度には7・89%(ROE9・04%、貸出金利子率1・15%)と大幅に拡大した。この動きをサポートしたのが「異次元金融緩和」だ。銀行は短期金利に一定の利ザヤを乗せて企業向け貸付金利を決める。日本の物価水準が下落に転じた1995年から2005年まで預貸スプレッドは平均1・99%だったが2006~2007年に下方屈折し、2014年2月までは1,09%と半分に縮んだ。銀行の資金利益は資金運用収益―資金調達費用で決まるから、その結果銀行の収益は2005年度をピークに大幅に減少した。銀行の預貸スプレッドが縮小したのは貸付金利子率の低下によるもの。借入金利子率と10年国債利回りは1977~1997年については同じ方向に動き、かつおおむね同水準だった。デフレは金融機関の収益構造に大きな打撃を与える。短期金利にはゼロ%超という下限が存在するのに貸付金利子率は10年国債利回りに追随して決定されている限り下限がない。ゼロインフレ下では10年国債利回りはマイナスとなることさえあるからだ。金融機関は存続の危機に立たされる。銀行の貸し出し金利子率は「予想(将来)」名目GDP成長率、すなわち10年国債利回りでなく、現在の企業利潤率を基準とすべきだ。
 1998年度以降、ROEと借入金利子率は逆比例となり、借入金利子率は1991年度には6・68%だったのが2023年度には1・15%になっている。借入金利子率が低下すれば当然預金利子も低下する。預金者の受取利息額は1994年度に26・6兆円だったのが2022年度には6・4兆円と20・2兆円減っている。アダム・スミスは利潤率と利子率の関係について「通常の純利益率に対する通常の市場金利の適正比率は、利益率が上下するとともに変わるはずである。イギリスの商人の間では、利子率は金利の2倍であれば低すぎず高すぎず、適切だとされている」。スミスによる理論値は2023年度のデータで計算するとROEは6・8%、借入金利子率は3・4%となる。またケインズは土地と資本はどちらも希少性を理由に地代や利潤率(利子率)が正当化されると考えていたので、土地と異なり資本の希少性はいつか消滅すると予想していた。リアルエコノミーにおける資本の希少性が消滅するサインが利子率ゼロであることから、ROEは地代より低くてよいとした。土地の利回りをREIT(日本の不動産投資信託)で代表させると4%前後なのでスミスの数字は高すぎることになる。

労働者と預金者の逸失利益を還元せよ


 年々の労働者の逸失利益を合計すると2023年度までの累計で77・5兆円になる。アダム・スミスの利子率と利潤率に関する理論を適用すると、2004年度~2023年度の累計で金融機関の逸失利益は106・6兆円となる。賃金と銀行利息という点で、労働者と預金者は合わせて184・1兆円の損失を被っていることになる。この184・1兆円は税引前であり、内部留保金は税引き後利益の積み上げだから、法人税率3割を控除した128・9兆円が601兆円の内部留保金に紛れ込んでいることになる。約130兆円の本来の所有者は労働者であり預金者だ。これを内部留保金課税の対象として本来の所有者に還元すべきだ。例えば10年の時限立法にすれば年13兆円の新規財源が生まれ格差拡大を少しでも食い止めることができる。法人税率の引き上げは現在と将来にわたる賃金と利潤の分配の適正化を促し、内部留保金課税はあくまで過去のゆがみを是正するもの。無論企業経営者はすんなり呑むことはしないから政治の出番となる。
〈追記〉統計的手法を駆使した展開で十分理解が追いついたか心もとなく、また多岐にわたる論点の一部しか紹介しきれなかったのは筆者の非力のためである。それにしてもこの本、校正ミスが目立つのが惜しまれる。 (新)


せんりゅう

     詐欺拠点国会内にもあるらし

         除染土のようなアベ派の御邪魔虫

     裏切のあいつもいてて自民党 

         人間の価値より高い企業価値

     人材尊重だよん万自殺

         ハゲタカのごとしトランプの睨み

     民衆は仲良しなのに国と国

         春がきて虫がでてくる我も出る 

     だまってちゃ世界かわらぬ叫んでる

                         ゝ  史

2025年3月


複眼単眼

        石破ポチが語る「私は犬ではない」

 米国防総省ナンバー3の国防次官(政策担当)に指名したエルブリッジ・コルビーは3月4日、上院軍事委員会公聴会で、「日本が防衛費を国内総生産(GDP)比で少なくとも3%にすべきだ」と主張した。反中国共産党で知られたコルビー氏は、中国による台湾侵攻を阻止するため、「米軍を効率的な台湾の防衛のために集中させることが不可欠だ」としたうえで、台湾や日本がさらなる自助努力をする必要がある、とのべ、台湾に対しては、「少なくとも(GDP比で)10%を防衛に費やすべきだ」と述べた。台湾は米国にとって、「実存的な利益ではない」と指摘。「中国の地域覇権を否定することが米国の核心的利益にとって重要だ」とのべた。要するに防衛費を増やして米国の武器を買えということだ。
 これに対して石破茂首相は5日の参院予算委員会で立憲民主の羽田次郎委員に答えて「日本の防衛費は日本が決める」と啖呵を切った。石破首相は「私はアメリカの犬ではない」と言ったつもりなのだろう。石破首相は「最初から何%ありきでというような粗雑な議論をするつもりはない。必要な積み上げに於いて(防衛費は)決まっていく」と述べた。今後の対応について首相は「防衛力というのはあらゆる総合的な観点においてなされるものであり、単に金額だけで決まるものではない。提案をするときは、真摯な積み上げの下で国会の審議を経たい」とも強調した。ご立派な答弁だ。
共産党の志位和夫議長は2月17日の衆院予算委員会で、政府が22年12月の「安保3文書」の「防衛力整備計画」は、23~27年度の5年間で軍事費を43兆円に増額した上で、「27年度以降、防衛力を安定的に維持する」としているが、日米首脳共同声明は「27年度より後も抜本的に防衛力を強化していく」と明記した。「防衛力の『維持』から『抜本的強化』に勝手に変えたのはなぜか」と追及した。これに首相は「何も新しいことは言っていない」と開き直った。志位氏は防衛力の『安定的な維持』と『抜本的な強化』は、全く違う話だ」と批判し、「つまり軍事費の増額を求めているトランプ氏の前で、『安保3文書』の根幹部分を勝手に書き換えたということだ。こんな重大なことを国会に諮らず、閣議決定すら行わずに約束する。許しがたいことだ」と批判した。
コルビー発言ではっきりしたことは、日米首脳会談で、米側が、28年度以降のさらなる軍事費増の具体的数値の明記を求め、それにこたえて「27年度より後も防衛力の抜本的強化」が明記されたのだ。ECに5%を要求しているトランプのことだ。日本に5%を言い出すのも時間の問題だろう。石破首相が「日本の防衛費は日本が決める」と志位氏に答えたのはトランプ政権の要求に沿ったポチの虚偽だった。石破ポチは「私は犬ではない」と吠えたわけだ。 (T)

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