人民新報
 ・ 第1444号統合537号(2025年4月15日)

                  目次


●  トランプ関税政策の深刻な影響・ドタバタ劇・その結果?

        対日高関税策・軍備大増強要求を拒否せよ!

● 尹錫悦大統領罷免民主化闘争勝利を共に祝して (日韓和解と平和プラットフォーム日本運営委員会)

● トランプ関税発動の経済的根源とは何か

● やめてんか カジノ・万博 行動レポート

● 25春闘前半を振り返って-その特徴と課題

● 郵政ユニオン 25春闘ストライキで闘う!

● 能動的サイバー防御と自衛隊法『改正』

● ピースサイクルの核禁条約署名

● 日本学術会議法案に反対

● 今月のコラム / たおやかな硬骨 加藤陽子著「この国のかたちを見つめ直す」を読む

● せんりゅう

● 複眼単眼 / いつのまにか春だ






トランプ関税政策の深刻な影響・ドタバタ劇・その結果?

        
対日高関税策・軍備大増強要求を拒否せよ!

 4月に入って、世界はトランプ関税による大きなショックに見舞われた。トランプのひとりよがりのカルト経済学による攪乱だ。トランプ政権の暴走に米国内を含む全世界で反対の声が広がっている。
 第二期トランプ政権の経済政策の目的は、製造業の再生による米国国力の回復である。このままでは、米国の世界覇権支配(パックス・アメリカーナ)は衰退する。また大統領選でトランプを勝利させたのは自動車や鉄鋼業など衰退する米国製造業に関係する白人層であり、来年にせまった中間選挙での勝利のために、なんとしても早期の製造業の回復はさしせまった課題としてある。トランプに残された時間は少ない。矢継ぎ早の政策実施で成果をだすしかないところに追い込まれている。3月5日に行われたトランプ大統領の施政方針演説では、「最優先は経済再建」とし、そのため関税政策による貿易赤字削減と製造業国内回帰を推進するとした。そして、拙速かつ強引な関税政策に打って出たのである。貿易赤字の削減や製造業の米国内回帰はインフレ圧力となる。バイデン民主党政権への批判の大きな要因はまさに物価上昇であった。こうした政策には、トランプ大統領経済諮問委員会委員長のスティーブン・ミランの影響が著しいという。ミランの「国際貿易システム再構築のユーザーガイド」(2024年11月)では、「関税は、トランプ大統領が2018~2019年に中国との貿易交渉で用いたツールとして既に実績がある。関税と同時に通貨調整が行われれば、輸入価格はほぼ横ばいとなり、インフレ圧力は抑えられる」とあるが、これがトランプの政策の基本的考えとなっている。だが、関税障壁で輸入を制限すれば、国内産業とくに製造業は復活できるのか。長期にわたって国内経済が金融にシフトし、他国に比べれば高賃金構造があり、すでに産業技術の継承も弱まっている米国では、インフレと経済停滞の二重苦であるスタグフレーションとなるのは時間の問題だ。
 米国関税政策の迷走は劇的な過程をたどった。トランプ米大統領の相互関税は米東部時間5日午前0時01分(日本時間同日午後1時01分)発効の全ての輸入品に一律10%の基本関税を課す措置の第1弾につづき、上乗せ分は米東部時間9日午前0時1分(日本時間午後1時1分)に発効した。このトランプの高関税政策は世界同時株安、それに連動した米国債の暴落を招き世界に深刻な動揺をあたえた。トランプは、「時には何かを治すために『薬』を飲まなければならないこともある」と豪語していた。ところが、トランプは米東部時間9日午後1時18分(日本時間10日午前2時18分)ごろの自身のSNSへの投稿で、相互関税について、報復関税を発動せず米国との交渉を求める国・地域については、90日間停止すると発表した。一方で、米国への対決姿勢を堅持する中国への追加関税を145%に引上げた。実に慌ただしい動きだ。
 強気のトランプも株だけでなく米国債の暴落と金利の上昇、国内からの関税政策への大反発に、政策の修正・延期をせざるを得なくされた。トランプにとって大きな打撃となった。トランプ関税一時停止で、日本でも株急騰となったが、追加関税は90日延びただけ、一律10%、鉄鋼・アルミ25%、自動車関税25%はそのままだ。石破政権は対米交渉を強めると言うが、具体的に関税を何%引き下げさせることが出来るのか。交渉の過程で農産物国内市場開放、そして軍事費負担の巨額な増加を押しつけられるようになるのは必至だ。
 関税政策でトランプ政権の「同盟国・日本」への仕打ちに驚愕した日本政府は、日米安保条約体制への「我々は日本を守らなくてはならないが、日本は我々を守る必要はない」とのトランプ発言にどうするのか。米国第一政策によれば、自らは第一戦に立たず、血と汗は同盟国同志国の責任とされる。3月30日、来日したヘグセス国防長官と中谷防衛大臣との日米防衛相会談が行われた。ヘグセスは、「中国共産党の軍の威圧に対応するうえで、日本は不可欠なパートナーだ」と語り、日本を対中国戦の最前線の基地として強化させるため、日米の連携をより円滑にし、米軍との共同作戦の行うための自衛隊「統合作戦司令部」や在日米軍が自衛隊との調整を担うチーム(米軍臨時ヘリポート「赤坂プレスセンター」)が設置された。自衛隊の南西諸島・九州シフトなど実戦体制の構築が進められている。いま、日本の進路が問われている。米国政府の意のままに、経済的負担を押しつけられ、対中戦争の尖兵とされるのか。石破内閣は、トランプの対日高関税政策、軍備大増強要求を毅然と拒否しなければならない。石破政権を打ち倒そう。


尹錫悦大統領罷免民主化闘争勝利を共に祝して

 韓国憲法裁判所は本日4月4日、昨年12月3日に非常戒厳令措置を行い、国会に弾劾訴追されていた尹錫悦大統領に対して、裁判官全員一致で罷免を宣告しました。これは、韓国の解放後史における民主化闘争史につらなり、厳寒の冬空の下で真の民主主義をめざす灯かりをともし続けて闘い抜いた韓国市民の新たな革命 の勝利として、私たちは心から称えずにおれません。
 私たち日韓和解と平和プラットフォーム日本運営委員会は、昨年12月5日に尹錫悦政権退陣民主化闘争連帯声明文を発出し、本年2月5日にはおよそ140に及ぶ賛同団体と共に同声明を公表しました。さらに昨年12月19日には、民主化闘争の最中にある韓国市民運動の代表から、憲法9条を守る運動である「19日総がかり行動」の壇上で、日本市民への支援連帯の呼びかけのメッセージを受けました。それに応えるように、本年2月8日に開催されたソウル光化門広場での10万人集会へ、日本から「19日総がかり行動」共同代表を派遣し、力強い連帯メッセー を届けました。

 韓国が、この激動する世界情勢と緊張の高まる東アジアの状況の中で、戦争を 決して起こさず、疑心暗鬼と敵意にとらわれた挑発的軍事行動もゆるさない平和 の道を行くための確固たる民主主義体制へと、新大統領と共に邁進していくことを、私たちは心から祈念します。そして私たちはこれからも、日本の大軍拡路線に抗いながら韓国民主化闘争に連帯し続けます。

 本年は、日本敗戦と朝鮮半島解放の80年であり、また1965年に締結された日韓基本条約締結60年の年であります。今こそ私たちは、第二次世界大戦後の冷戦体制下において植民地主義を清算できずに、植民地支配犠牲者の請求権問題をはじめ朝鮮植民地支配の歴史責任を不問にふさせることとなった日韓条約「65年体制」を否定し克服しなければなりません。そして私たちは、歴史の中で犠牲とされた踏みにじられたいのちと人権を守り、歴史の正義にゆるぎなく立脚した日韓、日朝をはじめとする東アジアの真の和解と共生、反戦・平和の道を切り拓いていくことをめざします。私たちは日韓民主化の真価の到達がそこにおいてこそ 試されていることを厳粛に心に刻みます。

2025年4月4日

 日韓和解と平和プラットフォーム日本運営委員会
   共同代表:小野文珖、高田健、野平晋作、光延一郎


トランプ関税発動の経済的根源とは何か

 2025年4月9日のトランプ政権による相互関税は世界経済に衝撃を与えておりその影響は計り知れない規模となっている。アメリカによる関税の大幅な引き上げは、米中の報復合戦になった。アメリカは対中関税を当初の20%に加えて相互関税を34%とし合計で54%とした。中国は対抗措置として対米関税を34%としたことに対しトランプ政権は更に50%の報復関税を課し合計で104%となった。 これ対して中国は10日からすべての米国製品に対する追加関税を34%から84%に引き上げた。その結果、米株式市場はS&P500で20%近く急落し、特にアップル株は4営業日で23%下落し、時価総額で112兆円(7700億ドル)を消失し時価総額トップの座をマイクロソフトに明け渡した。為替市場のドル指数も下落した。加えて米債権市場では国債価格の下落=金利の急騰が発生した。10年債利回りは3・8%→4・5%へ0.7%急上昇し、2023年以降の最高水準を記録した。これはトリプル安(株・債券・ドル同時売り)の発生であり、安全資産とされる米国債まで売られる異例の事態であり金融危機勃発の瀬戸際となった。アメリカの政府債務はコロナショックもあり近年急増しており2024年度でGDPの124%となり米国債残高は36・2兆ドル(5250兆円・図を参照)となっている。米国債の年間利払い費は1兆ドル(約150兆円・政府支出の18%)を超え2025年は1・2兆円(約180兆円)程度へ増加すると予想されている。これは米国防予算額の約8500億ドル(約125兆円・政府支出の13・3%))を上回る巨額の負担であり持続可能性が危ぶまれる問題でありトランプ政権が関税戦争を発動したの真の根源である。したがって金利の上昇はトランプ政権にとって死活を制する問題である。トランプ大統領が「債権市場はやっかいだ」として相互関税を90日間停止した理由もここにこそあるのであってけっして「他国の不安に応えた」わけでない。自らの失策を取り繕うために対中関税を更に21%上乗せして125%としたのであって中国から輸入に多くを依存するアメリカ国内のインフレを一層激化させる愚策でしかない。その直後から株価は大きく上昇し危機は一時休止したかのようである。しかし世界各国への一律の10%関税と自動車・鉄鋼・アルミへの25%関税は継続されている。いずれ市場の動揺は再燃すると想定されるが世界恐慌までにはならないだろうという見方が多い。それはそこまではしない、自制が働くはずと考えるからだ。 ただ、相互確証破壊戦略(核抑止論)も核戦争になれば双方(全世界ともいえる)が破壊されるから、核戦争は起きないという論理に基づいている。しかし、それは最初の核攻撃は行われないはずだ、という考え方に則っている。
 今回の関税戦争はその最初の一発が放たれてしまった。したがって、行き着くところまで行くリスクがあると言える。関税戦争は第3次世界大戦ではないが大量の失業者が出て、世界中の壊滅的被害が避けられない経済的「核の冬」を招きかねない。さらにトランプは対中関税を145%にまで上げ続けている。カナダのカーニー首相はトランプ関税を批判して「(戦後の)80年間の時代は終わった。これは悲劇だが、新しい現実でもある」(4/10朝日新聞)と述べたが、対米従属一辺倒の日本もまた政治・経済・社会の根本的変革は不可避の現実となった。 (関 孝一)


やめてんか カジノ・万博 行動レポート

 3月23日の日曜日、晴天の下、大阪市内のうつぼ公園にはぞくぞくと市民・労働者が集まってくる。〈夢洲危ない!パレード〉にむけて、13時に集会が始り、万博開催中の事故や災害が懸念されており、開催前に広くこの危険性を知ってもらおうとアピールが有りました。そして、これまで運動してきた市民団体や国会議員・府議・市議や各政党が紹介された。集会後行動にうつり、浪花の街を旗・横断幕・団扇・鳴り物・ぬいぐるみ・仮面などアピールグッズ満載で行進しました。参加者は千人で難波まで二時間声をからして訴えました 。
 建設期間中には、万博会場内でメタンガスの爆発事故・ヒアリの大量発見や災害時の安全対策の無さが顕著になりました。しかし、大阪府吉村知事は大阪府内在住の子供たち102万人を無料招待するとしています。学校現場や自治体から大きな不安や問題点が指摘され「再検討や安全対策強化」などの自治体議会の意見書の採択・万博遠足を止めた自治体や学校も出てきている 。実際にギネスで世界一の大屋根リングは建設費用は約350億円で、その内と外の面に海水を注入したてところ一ヶ月も経ずに護岸の盛り土が600メートルも削られてしまった。まだ外海の波すら当たっていないのにである。因みに南の泉州沖の1994年に開港した関西空港は現在も沈下しており本年もジャッキアップされている。万博会場の北側のIR・カジノ予定地では万博会期中に工事が開始される。莫大な税金の投入で土壌改良工事がなされる。税金投入底なしの赤字沼だ。儲けるのは維新との関係企業だけだ。リングには60メートルの杭を打ち込んでいるから大丈夫としているが、ここは元々は大阪府内のゴミの埋立地の大切な場所であった。身を切る改革の猿芝居も止めさせなければならない。
 デモ中に言われるのが、「パチンコはどやねん」で、パチンコも依存症になる人が多数出ている 。しかし、カジノの爪は深いのだ、24時間365日65年間大阪湾に不夜城が出現する。パチスロもこれまでと異次元のVRや6Gなどが予想されている。ゲーム感覚の博打でその魔力は底知れない。カジノを関西経済の起爆剤にする、すなわち博打で経済を成長させるなどありえない。

 3月30日、桜の花が点々と咲き始めた大阪市旭区大ホールにて600名が参加して「行ってはいけない 万博・カジノ反対 府民大集会」が開かれた。
 開始前の前座では主催者の西谷文和(路上のラジオ)と藤永のぶよ(大阪市民ネットワーク)両氏のかけ合い漫才で万博施設の欠陥や問題点を「昭和風過ぎる」と皮肉りながら爆笑のスタートとなった。
 一部は西谷さんが、行ってはいけない理由をスライドで示した。維新トップの吉村知事の府庁内での職員とのダンスのコマーシャルに一億円の費用―これは焦りや。二部では坂本篤紀日本城タクシー代表取締役と桜田照雄阪南大学教授ら四名によるパネルディスカッションがおこなわれた―日陰無しで熱中症・ヒアリ・落雷・メタンガスの点検不完全・交通手段はバスとタクシーにライドシェアーと地下鉄では帰宅困難者が出て野宿も予想・チケット申し込みにパスポートが必要で個人と健康情報盗まれる・台風と地震と津波対策が出来てないなど。またイスラエル館が出来るなど今回の万博の差別本質を明らかにしている。 最後の締めで、当日告示の岸和田市長選挙にN国の立花氏が立候補を断念した、皆さんの運動の成果だと報告され大きな激励となった。 これから半年間の万博開催中も中止を呼びかけ、被災地の復興へ注力させ、カジノ建設の中断に向けてがんばりましよう。  (河田)


25春闘前半を振り返って-その特徴と課題

 25春闘における民間大手の集中回答日である3月12日、首相官邸で政労使会議が開かれた。昨年をやや上回る回答が続く中で、石破首相は「賃上げと投資が牽引する成長型経済の実現に向けた機運が高まってきた」と述べ、経団連の十倉会長は「我々は『定着』と言ってきたが、定着しそうだなというのが確信に変わってきた」と話し、連合の芳野会長は「昨年の流れを継続できている」とコメントした。立場の違いはあれ、三者三様、この時点で早々と昨年に続き、「政労使一体の官製春闘」を“自画自賛“している。

 米国のトランプ大統領による関税政策問題という不安定要素はあるものの、内部留保の記録的な増大に示されるように、円安等を要因とした好調な企業業績、そして物価高騰と人手不足を背景に民間大手では昨年に続き、高水準の回答が相次いだ。連合の初回集計(3月14日)では正社員の賃上げ率が平均5・46%と昨年同期を0・18%上回った。中小の賃上げ率も33年ぶりに5%超となった。3月21日の第2回集計では正社員の賃上げ率は5・40%と2年連続で5%台は確保したものの、中小では平均4・92%となり、5%台は維持できなかった。

 現時点で民間大手の回答が出たことで25春闘は前半戦を終了した。その前半を振り返って、特徴と課題を考えてみたい。25春闘では満額回答、あるいは組合要求額を上回る会社回答があった。24春闘に続く傾向であったが、果たして「組合要求」そのものが労働者の生活実態を反映させたものであったのか大いに疑問が残る。労働政策研究・研修機構の藤村博之理事長は「定昇込みで5%の賃上げでは全く足りない。最低でも7%は必要」だとし、「賃上げが定着したというより、物価高でそうせざるを得なくなっている」と指摘している。また、その背景事情として「いまの労使関係は異常」で、「労使は本来対面して意見を言い合うものなのに労働組合も経営側と同じ席に座っている」と「政労使一体の官製春闘」を批判している。言い換えれば、組合の要求額が「低い」からこそ、「満額回答」、「要求を上回る回答」になったに過ぎないということである。定昇込みで「5%以上」とした連合の目標設定の妥当性が問われている。連合は23春闘、3・99%で「転換点」、24春闘、5・58%で「ステージ転換」と賃上げを評価してきたが、実質賃金は3年連続でマイナスとなっている。2月の食料物価は前年比5・6%上昇し、さらに4月から食品の約4、000品目の値上げが予定され、住宅ローンの金利も引き上げられる。〈値上げの春〉が労働者の生活を直撃する。要求額も獲得額もくらしを底上げし、物価高騰に負けない賃上げとはなっていないのが、25春闘ではなかったのか。

 2023年秋にUAW(全米自動車労組)は6週間に及ぶストライキ、史上初の「ビック3」での一斉ストライキによって4年半で25%の賃上げ、さらに派遣労働者の大幅な賃上げを勝ちとっている。藤村氏の指摘する日本的な「異常な労使関係」による「話し合い」での賃上げでは限界がありUAWのようにストライキでのたたかいで賃上げを勝ちとることが必要であり、求められている。連合のこの姿勢は日本経済が不景気に突入した時に、再び「失われた30年」の失態を繰り返すことになりかねない。満額回答ラッシュとなった昨年と違い、今年は同じ産別の中でも業績によって、企業間で差が生じる結果となった。満額回答を獲得できなかった組合がなぜ、要求額満額を勝ちとるためのたたかいをしなかったのか。
 「労働組合も経営側と同じ席に座っている」、労働組合の真価が今、問われている

 人材不足を背景に多くの企業で初任給の引き上げが行われた。帝国データバンクのアンケートでは7割超の企業が初任給の引き上げを実施し、引き上げ額の平均は9114円と回答している。有名企業での初任給30万円超も大きな話題となった。賃金の上昇カーブの基礎となる定期昇給とは違い、基本給を引き上げるベースアップは配分交渉が行われる。経団連が昨年度の年代に重点的に配分したのかという調査結果では、「一律定額配分」が51・1%と最も多くあり、「30歳程度までの若年層」は34・6%だったのに対して、「45歳以上のベテラン層」が1・1しかなかった。「45歳以上のベテラン層」、その多くは1993年から2004年ごろにかけて就職活動を行ってきた、いわゆる「就職氷河期世代」である。就職でも辛酸をなめ、賃上げ、賃金そのものでも不当な差別を受けている約2、000万人の労働者の賃上げは春闘のもう一つの大きな課題と言っても過言ではない。この層の賃金が上がらず、消費が増えないことは日本経済の成長力にも影響を及ぼすことにもつながる問題である。

 民間大手の集中回答が終わり、今後の焦点は中小企業の賃上げに移っていく。しかし、中小企業の賃上げが難しい背景には原材料や資源の高騰を大企業への価格転嫁、とりわけ労務費(賃金)の上昇分を価格に転嫁できないことにある。「取引先との協議に応じずに一方的に価格を決めること」などを禁じた下請法の改正案も上程され、「下請けいじめ」の大企業の横暴を厳しく監視していかなければならない。中小企業の犠牲のもとに大企業の賃上げという構図を決して許してはならない。労働組合組織率16・1%の中で未組織労働者、非正規雇用労働者、特に女性労働者、外国籍の労働者らの賃上げに関心を寄せ、最低賃金の大幅引き上げも射程に入れたとりくみを強めていかなければならない。
 25春闘はまさに今からが正念場である。


郵政ユニオン

         25春闘ストライキで闘う!

 郵政ユニオンはベア30、000円、時給200円引上げ、均等待遇実現など要求し、25春闘をたたかった。3月5日には日本郵政本社前集会を開催し、全国から郵政ユニオンの組合員が参加、支援の人々も含め120人が結集した。非正規組合員の代表団が「均等待遇・正社員化を求める署名」、1万7、119筆を郵政本社に提出した。2009年からとりくまれている署名は累計で約42万筆にも及んでいる。
 2月14日に要求書を提出してから本部は精力的に交渉を展開した。
 しかし、3月14日の会社回答はベア10、000円、定昇込みで5%の賃上げ、時給制契約社員は「ゼロ回答」というもので、全く物価高騰に苦しむ労働者の切実な要求に応えていないことから、17日に交渉は決裂、18日に怒りの全国一斉ストライキに突入した。
 全国19職場55人の組合員がストライキに参加。納得できる大幅な賃上げ、時給アップを行え、と拠点職場でストライキ集会、全国の郵便局で支援集会、宣伝活動がとりくまれた。
「ストなし春闘」が当たり前になる中で、全国でストライキを貫徹したことは各地域の中小の春闘に力強い“エール“を送るものになったと思う。


能動的サイバー防御と自衛隊法『改正』

 4月8日「能動的サイバー防御(ACD)」を導入するための関連法案が衆院本会議で自民党、公明党、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、衆院会派「有志の会」などの賛成多数で可決し、参院に送られた。賛成6党派による憲法21条の「通信の秘密」を保護、尊重する規定を明記したという口実の修正案だ。衆院内閣委員会で石破茂首相は、憲法が保障する「通信の秘密」の重要性について「いささかでもこれに抵触するような法の内容であってはならないということは、政府としてよく認識している」と強調したが、まったく歯止めにはなっていない。能動的サイバー防御法案を阻止しよう。

 4月7日には、インターネット監視・先制サイバ―攻撃法に反対する国会前行動が行われ、つづいて院内集会が開かれた。池田五律さん(戦争に協力しない!させない!練馬アクション)が、「能動的サイバー防御と自衛隊法『改正』」と題して報告し、極めて危険な法案を成立させてはならないと述べた。―法案の目的は、官邸主導の省庁横断型サイバー戦態勢の構築と民間動員によるサイバー総力戦体制の構築であり、情報収集と送信元探査、警察・自衛隊によるアクセス・無害化だ。サイバー戦は防諜と諜報の組み合わせであり、将来的には日本版CIAも構想されているようだ。
 内閣総理大臣が基本方針案を作成・閣議決定し、特別社会基盤事業者(企業規模などに基準があり、特定社会基盤事業者として200社超が指定)に対する当事者協定締結協議要請され、正当な理由がない限り、協議に応じなければならないとされるが、実質強制だ。
 どのようなものがサイバー攻撃とされるかについては、現行自衛隊法第八十一条「要請による治安出動」に次の一条を加える改正をおこない、その「重要電子計算機に対す通信防護措置」では、「内閣総理大臣は、重要電子計算機に対する特定不正行為…であつて、本邦外にある者による特に高度に組織的かつ計画的な行為と認められるものが行われた場合において、…部隊等に当該特定不正行為を行つた者による同種の特定不正行為を含む」とされ「当該特定不正行為により重要電子計算機に特定重大支障重要電子計算機の機能の停止又は低下であつて、当該機能の停止又は低下が生じた場合に、当該重要電子計算機に係る事務又は事業の安定的な遂行に容易に回復することができない支障が生じ、これによつて国家及び国民の安全を著しく損なう事態が生ずるおそれが大きいと認めること」とされるが、きわめてあいまいな規定である。
 そのうえ防御と言っても、それが犯罪なのかテロか、国家による攻撃か区別が困難だ。攻撃主体が正規軍なのか、不正規軍か、サイバー義勇兵か、テロ組織なのか、犯罪組織なのか、個人の 愉快犯 なのか判別はきわめて困難だ。そこで、戦争と治安の融合すなわち軍事組織と警察組織の一体化がすすめられる。膨大な個人情報の収集サイバー戦版要視察人リストの作成のために情報機関と法執行機関の協働がおこなわれ、事前にサイバー攻撃を察知、首謀者をとらえたり、攻撃を回避したりすることがおこなわれるが、その先に、スパイ送り込みや予防弾圧、仮装身分捜査の導入ということにまでになる。2025年度防衛予算 には、「自衛官等の給与・手当等の見直し」に「陸海空自衛隊のサイバー専門部隊等の隊員の処遇改善」があり、「教育の充実・強化」には「陸上自衛隊システム通信・サイバー学校サイバー教育基盤等に必要な機材等の整備」「陸上自衛隊高等工科学校システム・サイバー専修コースに専門講師を配置」「防衛大学校サイバー・情報工学科における専門教育の強化」と書かれている。
 だが、圧倒的にサイバー要員は不足していて、民間委託や派遣が必要だとされ、まさに現在版の徴用が行われることになる。


ピースサイクルの核禁条約署名

 2025ピースサイクル全国ネットワークは今年2月より「日本政府は核兵器禁止条約への署名・批准すること求める」署名をスタートさせました。ピースサイクルは今年で40年目を迎えますが、これまで毎年チラシを作成しており、「守ろう!平和憲法」「なくそう!原発・核兵器・軍事基地」のスローガンを長年掲げてきました。すでに3月8日のさよなら原発集会では多くの署名協力がありました。また、各自治体要請文には「国連における核兵器禁止条約を批准するよう政府に働きかけをされたい」などの要請項目を提出してきました。今回の署名を取り組んだきっかけは、核兵器がいかに非人道的であるかを語り継ぎ、核廃絶の必要性を唱えてきた日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)がノーベル平和賞を受賞したことです。そこでは被爆者の立場から核兵器のない世界を実現するための努力と核兵器が二度と使用されてはならないことを証言によって示してきたことが受賞理由となっています。1954年(昭和29年)3月1日には日本のマグロ漁船「第五福竜丸」の乗組員が、太平洋のビキニ環礁で行われたアメリカの水爆実験で被ばくしたことをきっかけに国内で原水爆禁止運動が高まりを見せていました。杉並区では、4月に杉並魚商組合がいち早く水爆実験に反対の声を挙げ、杉並区に陳情請願書を出し、翌17日には杉並区議会でも水爆禁止の決議がなされます。台所をあずかる女性たちも水爆禁止の訴えをはじめました。そして全国に広がる署名の始まりとなりました。
 2017年にノーベル平和賞を受賞したICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)の川崎哲国際運営委員は「被爆者の方々がずっとご苦労されながら活動してこられたのを近くで見てきたので、わがことのようにうれしい。世界で核の脅威が高まる中での受賞となったのは、核兵器が本当に使われるかもしれないという危機的な状況に対して警鐘をならすことをノーベル委員会は考えたのではないか」と述べています。アメリカのAP通信は、2024年のノーベル平和賞に日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会が選ばれたことについて「中東、ウクライナなど世界各地で起きている壊滅的な紛争を背景としている」として、ウクライナ情勢をめぐってロシアが核兵器使用の可能性を示唆するなど国際社会で核に対する懸念が高まるなかでの決定だったという見方を示しています。韓国原爆被害者協会の鄭源述(チョン・ウォンスル)会長と被爆2世の李太宰(イ・テジェ)韓国原爆被害者子孫会会長は12月10日、今年のノーベル平和賞受賞者である日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)とともにノルウェー・オスロで開催される授賞式に出席しました。鄭会長は「被爆者が平和賞もらうのはありがたい」「原爆の被害を受け、核兵器は絶対使用してはならないという同じ目的と仲間意識があるため、日本被団協の受賞は非常にうれしい」として、授賞式への出席により韓国人被害者が多数いることを伝え、積極的に核反対の声を上げたいと述べました。石破首相は「被団協にノーベル平和賞が授与されることが決定された。長年、核兵器の廃絶に向けて取り組んできた同団体にノーベル平和賞が授与されることは極めて意義深いことだと考えている」と述べています。核兵器禁止条約の第3回締約国会議が、今年3月3日から米ニューヨークの国連本部で5日間の日程で開かれました。日本政府に対してはオブザーバー参加を求める声が強まっていましたが、過去2回に続いて今回も参加を見送りました。日本政府は、オブザーバー参加の是非を検討したものの、「現下の状況に鑑みれば適当とは言えない」(岩屋毅外相)として参加見送りを決め、2月18日に正式表明しました。日本の安全保障環境が厳しさを増す中、米国の「核の傘」による抑止力を重視し、核廃絶は核拡散防止条約(NPT)体制の中で目指すという従来の方針を優先させたのです。これに対し被爆者たちは、こうした政府のスタンスを強く批判しています。「本来なら、唯一の戦争被爆国として核兵器禁止条約に参加すべきだが、それもしない。さらには、アメリカの『核の傘』に頼り、『核共有』の議論まで起きている。日本政府は、言っていることとやっていることが違う」「政府と被爆者が対立するのではなく、被爆者の思いをくみ取ることが大事だ。」「唯一の戦争被爆国として日本ができることは被爆者の声を届けることだ」としています。 日本政府に核兵器禁止条約への署名・批准を決断させる声を更に高めていきましょう。


日本学術会議法案に反対

 戦争する国づくりのために政府はわが国の科学者の内外に対する代表機関日本学術会議を強権的に解体しようとしている。菅内閣による2020年10月の学術会議会員候補者6名の任命拒否以降、圧力は強まっている。3月7日には、日本学術会議を廃止し、特殊法人「日本学術会議」を新設する日本学術会議法案を閣議決定し、衆議院に提出した。
 3月18日、日本弁護士連合会は、渕上玲子会長名の「日本学術会議法案に反対する会長声明」を公表した。声明は、「法案の最大の問題点」として、「学術会議が職務を『独立して』行うという現行法3条の文言が踏襲されず、政府を含む外部の介入を許容する新たな仕組みが幾重にも盛り込まれていることである」として、「アカデミア全体や産業界等の会員以外の者から会長が任命する科学者を委員とし、会員の選定方針等について意見を述べる選定助言委員会、会員以外の者から会長が委員を任命し、中期的な活動計画や年度計画の作成、予算の作成、組織の管理・運営などについて意見を述べる運営助言委員会(、内閣府に設置され、内閣総理大臣が委員を任命し、中期的な活動計画の策定や業務の実績等に関する点検・評価の方法・結果について意見を述べる日本学術会議評価委員会)、内閣総理大臣が任命し、業務を監査して監査報告を作成し、業務・財産の状況の調査等を行う監事、という各機関の設置である。これら各機関の設置は、活動面における政府からの独立性、及び会員選考における独立性・自律性というナショナル・アカデミーとしての生命線ともいうべき根幹を損なうものであり、学問の自由に対する重大な脅威ともなりかねない」。


今月のコラム

        たおやかな硬骨 加藤陽子著「この国のかたちを見つめ直す」を読む

 著者の作品を初めて手にしたのは「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」、文庫化(新潮文庫)されて橋本治の解説読みたさに買い求め、改めて一読した。2010年度第九回小林秀雄賞の「選考委員だった私は、半ば強引にこの作品を推しました。それをしたのは、もちろん、多くの人にこの本を読んでもらいたいと思ったからですが、もう一つ、『中学高校生を相手にして講義する』という形のこの本が、叙述の形としては画期的に新しいと思ったからです」(解説)。確かに生徒に問題を投げかけ答えを受け止めながら史実を紹介しさらに問題を解き明かしていく手法はスリリングだった。ある生徒の感想「個性的で面白い人物がたくさん登場して、その人の考えをたどりながら、大きな時代の動きを追っていけるのが面白かった。特に胡適は強烈でした。それと松岡洋右の本心みたいなものをぜんぜん知らなかったので、松岡が書いた手紙は印象深かったです」はそのまま私のものだった。

史実を参照することの意義
本書も単行本刊行時読んでいたが、9本の原稿を加えた増補版の文庫本が出たので求めて読み直した。2010年~2012年、2020年~2022年の二つの連載とこの間に書いた書評やインタビュー(すべて毎日新聞掲載)をまとめたもの。「著者が2010年から現在に至るまでにその時々の『今』を見つめる際、脳の中で参照するインデックスはどうしてもこの1930年代歴史ファイルとなるが、期せずして最適の引証例になったかもしれない」(はじめに)、これは歴史家としての静かな自負であろう。
どの文章もそれぞれに喚起的だが、特に印象に残った歴史引証例を紙幅の関係でごく一部挙げてみる。終戦時の海軍作戦部長・富岡定俊は終戦の詔書は「実によく出来ている(略)『耐え難きを耐え、忍び難きを忍び』なんていうのは、国民に対してではなく軍を対象にしているな、と思うのです」と言う。南原繁らは詔書の文案を1945年春から練っていた。この構想に沿って詔書には「日本と世界、国民と世界人類というように、内と外双方へ向けた深い洞察が周到に書き込まれていた」(「五輪開催の可否は科学的知見で」)
昭和天皇が即位式で読み上げる勅語を作成した委員会の議事録がある。近衛文麿は専門家の原案に対し「教訓があまり多すぎだ」と批判し、宮内次官であった関屋貞三郎も「国運の進展を計ると共に、万国の利益進歩に尽力する」との決意表明を入れるべきだと主張した。関屋の発言の前は枢密院書記官長二上兵治の「義勇奉公の精神」が衰えた今、それを勅語に入れたいというものだった。「関屋が反論してくれてよかったと後世の人間として思う」(「新型コロナ対策の検証には議事録が不可欠」)
第一次大戦時ドイツは英海軍による海上封鎖により深刻な食糧不足に陥り、女性と子どもを中心に餓死者が76万人余りに達した。マックス・ウェーバーは1916年3月、政府が計画していた潜水艦作戦強化方針を批判する意見書を要路者に送った。無謀な攻撃がなされたが最後、直ちに米国は参戦し、ドイツの敵国・英仏側は「物質的にも道徳的にも、実際にいつまでも戦争を続行することができるようになる」そしてウェーバーの危惧通りの顛末となった。(「危機の時代に必須の政治指導者の資質とは」)
敗戦後復員した将兵が軍保管の食料品や衣類を大量に持ち出し国民の恨みと怒りを買った。1945年8月14日「軍其の他の保有する軍需用保有物資資材の緊急処分の件」が陸軍からの請議で閣議決定された。だが閣議決定の内容を陸軍大臣から各機関に伝達する際には「軍需品、軍需工業品等の処理に関する件達」という文書形式が必要となる。この文書に貼られていた付箋には、この大臣達は、「敵側」に停戦後軍需品の整理をいかに行ったかを質問された時の回答用として作成されたものだと書かれている。文末には「本付箋のみは速やかに確実に焼却すべし」とある!(「焼かれなかった一枚の付箋が語る敗戦処理の真実」)

著者のプロフィール
 日本学術会議会員候補として推薦されながら菅義偉によって任命を拒否された6人の一人である著者は、他の5人が学術会議の「連携会員」「特任連携会員」となったが、特任連携会員就任の打診に対しその意思がないと答えた。取材に対するコメントで他の5人の選択を十分配慮したうえでこう語っている、「当方としては、やはり今回の菅内閣の、十分な説明なしの任命拒否、また一度下した決定をいかなる理由があっても覆そうとしない態度に対し、その事実と経緯を歴史に刻むために、『実』を取ることはせず、『名』を取りたいと思った次第です」
インタビュー「個人が尊重されるかどうか国民世論のありかに信頼」は著者の経歴・人柄を彷彿とさせる。応召し満州に送られたが予備士官学校入学のため内地に帰還、九死に一生を得た父親、結核で亡くなった先妻の後妻が著者の母親だが、先妻の母親が同居するという複雑な家庭環境。東大に入学すると体育の時間に女子学生用の更衣室がない、少ない女子はバレーボールで男子と交ざって試合させられ、男子のアタックを避けてコートを逃げ回る日々。女子学生の少なさは「自然化」された差別の正直な結果なのだろうと言う。研究者の道を選んだが「グロテスクなまでの言葉のハラスメントを多数経験してきています」。修士論文を発表した後の懇親会で、ある男性研究者に「君は女性だから、どうせ就職できない。だから僕と一緒にアメリカに行こう」と言われた。「何月何日かまで覚えていますね」「その時には場の雰囲気を壊さない程度にしか言い返せなかった当時の自分への悔しさもあり、怒りのエネルギーは全く減る気配がないです」。結婚してからは研究実績があるため旧姓を通称として使用するしかなかった。「私の方もなし崩し的に旧姓使用をじわじわと既成事実化する戦法を狙いまして、『通称使用届』などを書面で出した覚えはありません」「悪い制度には誠実に対応しすぎないことが肝心だとの考えで来ました」。 (新)


せんりゅう

     財界と自民のパイプ図太いね
 
         頂きリリちゃんいただき自民ちゃん 
 
     敵視して軍拡予算闇の道

         魔が差してほらまたかよのイシバ節 

     尹おろし横目に石破キモを据え

         斎藤知事のこれを許すか‼腐敗

     関税の檻のなかへと引籠る

         グローバル止めてアメリカ孤独主義
 
                         ゝ  史

2025年4月


複眼単眼

        いつのまにか春だ

 4月4日、韓国の民衆運動のほとんどを結集した「尹錫烈即刻退陣・社会大改革非常行動」は「尹錫悦罷免、民主主義の勝利だ。内乱を終えて社会大改革に進もう」という力強い「声明」を発表した。
 この「声明」の中に「いつのまにか春だ」という一節を見つけたとき、ここに秘められた韓国民衆の思いを見る思いがして、こころが揺さぶられた。
 「声明」の最後は以下の節で結ばれている。
 「昨年の冬、広場に集まったペンライトと旗の精神を私たちは忘れないだろう。 内乱の終息と新しい社会のための市民の熱望を私たちははっきりと見て、共に共有した。 いつのまにか春だ。 芽生える新芽の力で、冬の間広場を守った主権者市民の力で社会大改革を完成させよう。 私たちは去年の冬のように疲れたりあきらめたりしない。 
内乱首魁罷免、主権者市民が勝利した!内乱勢力を断罪して内乱を終わらせよう!主権者市民の力で社会大改革を完成させよう!」
 この「声明」にある「私たちは去年の冬のように疲れたりあきらめたりしない」という箇所は、クーデタ直前の尹政権のもとで、弾圧され、苦しい闘争を強いられた韓国の民衆運動の状況の表現に違いない。韓国民衆はそういう厳しい闘争をへて、尹の「国憲を乱し、暴動を起こした内乱」と「非常戒厳宣言のために戦争を企画」した陰謀をうち破って、今日の勝利を勝ち取った。
 まさに「声明」がいうとおり、4日の判決は「主権者市民の勝利であり、数多くの市民の犠牲と民主抗争で築いてきた憲法と民主主義の力を再確認したものだ」。
 韓国の民衆は新しいたたかいの決意を固めている。
 「尹錫悦の罷免は終わりではなく始まりだ」。
 「主権者市民が広場で叫んだのは『尹錫悦罷免』だけではない。 尹錫悦政権が退行させた改革の価値を復元し、人権と民主主義、平和と平等、生命と生態、世話と労働が尊重される持続可能な社会のために社会大改革を完成しなければならない。他の諸政党も党利党略を離れて協力しなければならない」と新しい社会を切り開こうとしている。
「声明」はまさに韓国民衆の革命宣言だ。
 同日、私たち「日韓和解と平和プラットフォーム日本運営委員会」も「
尹錫悦大統領罷免民主化闘争勝利を共に祝して」という「声明」を発表し、こう述べた。
 「韓国が、この激動する世界情勢と緊張の高まる東アジアの状況の中で、戦争を決して起こさず、疑心暗鬼と敵意にとらわれた挑発的軍事行動もゆるさない平和の道を行くための確固たる民主主義体制へと、新大統領と共に邁進していくことを、私たちは心から祈念します。
 そして私たちはこれからも、日本の大軍拡路線に抗いながら韓国民主化闘争に連帯し続けます」。「私たちは、歴史の中で犠牲とされた踏みにじられたいのちと人権を守り、歴史の正義にゆるぎなく立脚した日韓、日朝をはじめとする東アジアの真の和解と共生、反戦・平和の道を切り拓いていくことをめざします。私たちは日韓民主化の真価の到達がそこにおいてこそ試されていることを厳粛に心に刻みます」と。
 いま韓国の民衆が突き崩そうとしている米日韓台の反中国・朝鮮包囲網に反対し、東アジアの平和を勝ち取るための日本の民衆運動の責任は重大だ。 (T)

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