人民新報
 ・ 第1447統合540号(2025年7月15日)

                  目次


●  自民党政治を終わらせよう

        参院選を口実にしたデマ扇動の差別・排外主義集団の策動阻止

●  米国のイラン核施設爆撃糾弾!

        トランプ・ネタニヤフの戦争犯罪

●  資料・市民連合

        第27回参議院選挙に向けて

        「信じられる未来」へ――平和を守り、真に豊かな生活をとりもどす。

●  対中戦争を念頭においたオスプレイ佐賀空港配備反対

●  原発事故被災者に国の責任での生涯にわたる健康・医療保障を

●  ヘイト・排外主義を許すな

        参議院選挙にあたり排外主義の煽動に反対するNGO緊急共同声明

●  関西生コン弾圧事件・控訴棄却の不当判決

        資本の言いなり判決に怒り再燃! 弾圧は必ず粉砕や!

●  安保関連法廃止を求め、14回目の「オール埼玉総行動」

●  今月のコラム

        「助けて」を聞き逃さない-白石正明著「ケアと編集」(岩波新書)を読む-

●  せんりゅう

●  複眼単眼  /  NO PASARAN! 参政党を通すな! 






自民党政治を終わらせよう

        参院選を口実にしたデマ扇動の差別・排外主義集団の策動阻止

25参院選の意義

 第27回参議院議員通常選挙は、単なる中間選挙ではなく、石破自公政権への信任、それぞれの政治勢力の政策路線の是非、日本社会が今後どの方向に進むのかを問う「政治的選択」の場となる。これからトランプ関税が日本に襲いかかってくる。こうした情勢での選挙の結果、自公与党が現状を維持できるか、野党が反転攻勢に転じるか、いわゆる第三極が台頭するか――それらの帰趨は、日本社会の進路を決定することになる。参院選は、ポストコロナ時代の日本が直面する諸課題に対する有権者の審判であり、多岐にわたる政策課題に対して、各党がどのような政策・ビジョンをだし、それを有権者がどう選択をするかに注目が集まっている。
 参院選の結果は、2026年に予定されている統一地方選挙にも影響を及ぼす。そして、2010年代後半から続く安倍政権とその後の政局の一つの区切りとなる。それは日本の政治の大再編のはじまりとなる可能性を持つものである。

自民党後退と保守流動化

 岸田内閣退陣、石破内閣発足、政府・自民党支持率の低迷という政局流動化がすすみ、野党側でも勢力図が変動しつつある。まさに「安倍政権後の自民党」としての真価が問われる選挙だ。歴代自民党政権の経済政策の失敗、特に食料品・電気・ガソリン価格の高騰、さらに旧統一教会問題に再燃した政治とカルトの癒着疑惑などが支持率急落の要因となっている。また自民党と公明党との関係、地方組織の動向など不安な面が表面化してきており、自公与党は防戦の選挙戦を強いられている。加えて閣僚や与党議員の暴言・失言がいっそう厳しい情況をもたらしている。与党・自民党に対する不信感は根強く、野党にとっては、参院でも与党を少数派に追い込む反転攻勢の好機である。野党側では立憲民主党、共産党、社民党、れいわ新選組などが共闘を模索しているが、全面的な「共闘体制」は形成されていない。それでも、東京・大阪・沖縄などでは候補者の一本化や、市民連合をはじめとする市民運動との協力が進められており、無党派層の取り込みに一定の成果が見込まれている。
 そして、これまでの自民党・保守層の支持者が自民以外の新興保守政党支持に流れ出ているのが今回参院選の特徴だ。大阪を拠点とする日本維新の会は、衆議院での躍進を背景に参院でも議席拡大を狙っており、東京や愛知などの複数区で積極的な候補者擁立を進めている。国民民主党は自民党との接近が進み、参院でのキャスティングボートを狙っての中道路線を強調している。また参政党や日本保守党などは排外主義・外国人差別のデマをまき散らしながらうごめいている。

何が実現されるべきか

 NHKの「2025年7月 参議院選挙前トレンド調査(7月7日更新)」によると、「今回の選挙で投票先を選ぶ際に最も重視するテーマ」では、「コメ・物価高対策」と「社会保障・少子化」がともに28%、「政治とカネ」と「アメリカの関税措置への対応」がともに9%、「外交・安全保障」が8%、「外国人に関する政策」が6%、「選択的夫婦別姓」が1%だった。物価高、社会保障、少子化それにトランプ関税についての回答が多い。
 参議院選挙における政策の判断基準は、自公政府による軍拡=改憲路線・新自由主義的経済政策に対抗し、憲法擁護・反戦平和・格差是正を柱とした「生活防衛」と「民主主義の回復」を掲げるものでなければならない。この期に及んでもまだ自民党と日本維新の会など改憲派は憲法9条改悪、緊急事態条項の創設など掲げている。昨年年初の能登地震や首都直下地震への備えを口実にした国家緊急権がいわれているが、これは基本的人権制限と同義語である。
 石破政権が推進する「敵基地攻撃能力」や「南西諸島の要塞化」、防衛費のGDP比2%超えなどに反対し、憲法9条の擁護と反戦平和の立場を明確にすることが大事だ。消費税の減税と累進性の高い税制による生活支援・格差是正。原発ゼロと再生可能エネルギーへの転換やジェンダー平等や差別撤廃、外国人の人権問題が選択されなければならない。
まさに日本社会の直面する課題はいずれも深刻さを加えている。これに対する早期の対策・対処の具体化が急がれている。

野党共闘こそ勝利への道

 改選議席は半数の124議席(選挙区74、比例代表50)であり、1人区(地方小選挙区)でも与野党の一騎打ち対決に持ち込まなければならない。自民党が優勢であった地方保守地盤でも、物価高や年金問題への不満による無党派層や若年層が野党支持に回る可能性が指摘されている。格差是正、ジェンダー平等、教育費の無償化でも要求は高まっている。まさに野党共闘にとってこの条件を生かさなければならないのである。

 安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合(市民連合)は、6月96?に社会民主党・沖縄の風、6月10日に日本共産党、6月12日に立憲民主党にたいし、政策要望「『信じられる未来』へ――平和を守り、真に豊かな生活をとりもどす」を手渡した(三面に「資料・市民連合」)。
 参院選は、市民連合と立憲野党の協力関係がどこまで実を結ぶか、日本の民主主義の成熟度や市民社会の政治参加の在り方・今後に大きな影響をもたらすものだ。自民党政治を終わらせ、ヘイト諸勢力の進出を押さえ込み、新しい政治局面を創り出していこう。


米国のイラン核施設爆撃糾弾!

        トランプ・ネタニヤフの戦争犯罪

 6月22日午前2時30分(イラン標準時)、米国トランプ政権によるB―2ステルス爆撃機や潜水艦によるバンカーバスター爆弾(地中貫通爆弾)やトマホーク巡航ミサイルでイランの主要核施設(フォルドゥ、ナタンズ、イスファハーン)への爆撃が実施された。「真夜中の鉄槌作戦」と名付けられ突然の暴挙は、断じて許されるものではない。この攻撃はイスラエルによる「ライジング・ライオン作戦」に端を発するイラン・イスラエル間の軍事衝突の一環である。
 「イランの核兵器保有は近い」とする独断での予防攻撃は、かつてのイラク・フセイン政権への侵攻・占領と同様のやり口だ。これが国際法違反であることは明らかであり、まして核施設そのものへの爆撃は核汚染をもたらし、その影響は大きい。
 ところがG7諸国はトランプ政権を批判せず、とりわけNATOのルッテ事務総長などは、国際法に違反していないと断言するなど、欧米諸国政府首脳の帝国主義的立場は明らかだ。
 攻撃に対してイランの最高指導者とされるアリー・ハメネイ師は、「アメリカは空爆で何も得られなかった」と述べ、米国の攻撃を「戦略的失敗」とし、また「イランの核開発計画は中断されておらず、むしろ国民の結束を強めた」「敵の攻撃には代償が伴う。報復は繰り返される可能性がある」と対抗姿勢を明らかにした。イラン原子力庁は、攻撃を「核不拡散条約(NPT)と国際原子力機関(IAEA)との協定に対する重大な違反」と批判した。
 その後、イランと米国の対立は激化し、一時は、ホルムズ海峡の封鎖、相互攻撃の激化などの瀬戸際にまで至ったが、現在のところ直接的な戦闘行為は止まっている。
 トランプはイラン核開発の完全破壊が失敗したことで、イランに核交渉再開を呼びかけたが、ペゼシュキアン大統領は交渉再開には「イスラエルによる再攻撃がないという米国の確約」が必要だと強調した。
 パレスチナ問題を軸とする中東問題解決はイスラエルとそれを支持する米国の強権的政治がその最大の阻害要因だ。イランにおいても、親米・親イスラエルのパーレヴィ王政の抑圧に対する反発が、いまのイラン・イスラム体制を生み出すことになったが、米国大使館員人質事件、そして核合意問題などで、米国と対立してきた。だが、それでも核交渉は行われてきた。それから一方的に離脱したのがトランプ政権だった。そして今なおトランプ・ネタニヤフはイランの体制変革・転覆を諦めていない。
 米国など欧米諸国の安全保障政策は「制裁」「孤立」「威嚇」に偏重していて、長期的視野に立った外交や対話、信頼醸成の努力が欠けている。この基本姿勢があるので、アメリカのイラン核政策は、「制裁→対抗→再制裁」という悪循環となっている。

 トランプのイラン核施設攻撃に対し、世界各地の都市で、人々が街頭に出て抗議した。フランス、パキスタン、ギリシャ、フィリピンなどのデモ参加者たちは、イランとイスラエル間の戦争を大きくエスカレートさせたこの攻撃を非難した。
 日本では、6月25日、「STOP!トランプ、ネタニヤフ! 米国はイラン攻撃をすぐやめろ! パレスチナ・ガザへのジェノサイド反対! 米国大使館抗議行動」が行われた。
米国は直ちにネタニヤフ政権によるガザ・パレスチナのジェノサイド支援とイラン攻撃を中止せよ!、と米大使館に求めた。日本政府は米国のイラン爆撃はもとよりイスラエルによるジェノサイドに毅然として反対し、あわせて戦火の下で苦しむパレスチナ民衆への人道的支援に取り組まなければならない。
 いまこそ全世界の市民とともに、平和を求めるすべての日本の市民は共に声をあげよう。

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●資料・市民連合

第27回参議院選挙に向けて

 立憲政治の深刻な危機に直面し、それに抗するべく「市民と野党の共闘」が始まって以来、今回第4回目の参院選を迎える。今回の参院選も、立憲政治を破壊し、裏金政治と政治の私物化、さらには「失われた30年」をもたらした自民党政治への国民の判断が問われる。
 昨年の衆院選では、自公政権を少数与党に追い込み、多くの国会議員が「国会の風景も変わった」と語るようになった。高額医療費の上限引き上げ凍結、企業・団体献金禁止の国会審議、選択的夫婦別姓の28年ぶりの審議開始など、変化の兆しも見られた。しかし、裏金問題は、依然としてまったく解決しておらず、新自由主義で蓄積された矛盾は、市民の生活をさらに苦しめている。世界秩序が大きくゆらぎ、まさに平和への構想力が問われているにもかかわらず、日本外交は、未だに沖縄を犠牲にし続け、軍拡と対米追従以外の選択肢を描けずにいる。今まさに、その根底から限界を迎えた自公政治からの決別が要請されている。今回の参院選で、参議院でも自公を少数へと追い込むことは、来るべき政権交代への大きな足掛かりとなるだろう。
 先月私たちは、立憲各野党(立憲民主党・日本共産党・社会民主党・沖縄の風)に政策要望、「『信じられる未来』へ――平和を守り、真に豊かな生活をとりもどす」を手渡し、そのための共闘の維持と拡大を相互に確認した。政策要望は、①戦争と暴力に基づかない社会、②暮らしといのち第一(ライフ・ファースト)の社会、③すべての個人の尊厳が尊重される社会という、これからの来るべき社会の姿を大きく三つの方向性で指し示している。この国のゆくえを、中長期的にどちらの方向に設定すべきなのか、参議院選挙で問われているのは、まさにその大きな文脈である。市民連合は、立憲野党とともに、昨年の衆議院選挙での弱点の克服をめざして、多くの選挙区で、候補者の調整・一本化、野党共闘を実現してきた。この経過も踏まえ、参議院選挙では、立憲野党の勝利めざして、頑張ろう
 世界は大きく動きつつある。経済的矛盾のみならず戦争の論理も世界を覆いつつある。排外主義や差別も大手をふるって街中を闊歩するようになった。私たち市民は、そのような偏狭な国家主義の危険性を排し、真に「信じられる未来」を構想する。また、そのためにあらゆる既存の境界を超えて連帯=共闘したいと願う。

2025年7月3日

安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合

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2025年6月12日

立憲民主党
   代表 野田佳彦様

「信じられる未来」へ――平和を守り、真に豊かな生活をとりもどす。

 市民連合は、立憲主義の回復と安保法制の廃止を求めて、立憲野党と連携しつつ、これまで6回の国政選挙を闘ってきました。先の総選挙に際しては、2024年10月8日に政策協定「市民の生活を守り、将来世代に繋げる政治への転換を」を提出し、可能な限りの野党共闘を目指すことで、自公政権が少数与党へと転落する一助とすることができました。

 次の参院選に向けて市民連合は、先に要請した個別の諸政策(5項目)を前提とし、それに加え、来るべき政権交代や市民の生活再建に向けたさらなる要請を行います。自公政権の暴走を食い止め、それに代わる立憲野党勢力による新たな政権の実現と、その先にめざす「信じられる未来」の三つの方向性(①②③)を共有しながら、今選挙においても立憲各野党の真摯な連携を強く要望します。

 ① 戦争と暴力に基づかない社会――憲法や市民生活を無視する軍拡は許さない
  ・憲法9条改悪や専守防衛を逸脱する集団的自衛権の行使・敵基地攻撃能力の保有を認めず、日本国憲法の理念に立脚した平和外交と専守防衛の安全保障政策に徹する
  ・市民の生活を犠牲にする大軍拡を認めない
  ・沖縄に犠牲を強いる辺野古新基地建設など基地の強化ではなく、基地負担の軽減を実現する
  ・非核三原則を遵守し、核兵器廃絶のための国際的なリーダーシップをとる
  ・将来世代やすべての生きものへの責任を果たすために、気候危機対策に本気で取り組む
  ・化石燃料や原子力に依存しないエネルギー転換を実現する

 ② 暮らしといのち第一(ライフ・ファースト)の社会――市民の生活と命を守る経済政策
  ・物価高、燃料高騰、円安、不公平税制を放置せず、実質賃金を引上げ、格差是正を早急に実現する
  ・消費税の減税とインボイス制度の廃止
  ・社会保険料負担を適正化し、保育や教育のための子ども予算を増額する
  ・農林水産業の育成を支援し、食料自給率の向上を目指す
  ・企業団体献金問題や統一教会との癒着にみられるような、金権腐敗・裏金政治・政治の私物化や世襲化などを排し、公正で開かれたみんなのための政治を取り戻す

 ③ すべての個人の尊厳が尊重される社会――ジェンダー平等・人権保障・学問や教育の重視
  ・選択的夫婦別姓制度や同性婚制度の整備とあらゆる差別の禁止
  ・ヘイトスピーチなどの差別や人権侵害、フェイクニュースの捏造・拡散など社会の分断と排除をもたらす言動を許さず、民主的な市民社会の基盤を守る
  ・日本学術会議への政治介入や教育予算の削減など、これまでの政権で見られた学問(真理の探究)や教育への軽視を克服し、社会の公正や発展、自治や人権保障の基盤となる、教育・文化・芸術・学術研究への抜本的支援を行う

安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合


対中戦争を念頭においたオスプレイ佐賀空港配備反対

 7月9日、防衛省は、水陸機動団および同部隊の輸送を担うV-22オスプレイを一体的に運用できる陸上自衛隊佐賀駐屯地を開設した。駐屯地は佐賀空港(九州佐賀国際空港)にある。防衛省・自衛隊「陸上自衛隊の佐賀空港利用について」(平成27年3月)はつぎのよう説明を行っている―「中期防衛力整備計画(平成26年度~平成30年度)」では、島嶼部への侵攻などに対応するため、約3、000人規模の「水陸機動団」を新編する。このような部隊を島嶼部に迅速に投入するには、自衛隊が保有している輸送ヘリコプター(CH-47JA)の輸送能力を、巡航速度や航続距離等の観点から補完・強化し得るティルト・ローター機を導入して、有事の際における迅速な展開・対処能力を向上させる必要がある。ティルト・ローター機は、固定翼航空機のように早い巡航速度と長い航続距離を有しつつ、ヘリコプターのように高い離着陸性能を有しているため、島嶼防衛や災害対処などの場面における重要な役割を担うことを想定している。
 そして「佐賀空港を配備先とする理由」として、水陸機動連隊配置予定の陸上自衛隊相浦駐屯地(長崎県佐世保市)から近く、島嶼部等への迅速かつ効率的な輸送に適していること。島嶼部への侵攻に対処する水陸両用作戦には、統合運用に基づく陸海空自衛隊の緊密な連携が不可欠であり、同作戦に関わる主要部隊が多く存在する九州北部に所在していること。ティルト・ローター機の運用に必要な滑走路を有していること、周辺に市街地がなく、海に面しているため、騒音などの面で地元住民の方々への負担を最小限に抑制しつつ十分な地積の確保が可能であること。市街化が進んでいる陸上自衛隊目達原駐屯地からも近く、同駐屯地に配備されているヘリコプターの移設先としても活用しうること、としている。
 まさに、中国との戦争を想定した南西諸島軍事要塞化のため相浦駐屯地に拠点を置く離島防衛専門の水陸機動団とセットの軍事強化構想の具体化である。
 なお、防衛省の多用するティルト・ローター機とは、オスプレイのことである。だが、防衛省はオスプレイをティルト・ローター機などと言い換える場合が多いが、事故続きの危険なオスプレイにたいする反発を考慮してのことと思われる。
 オスプレイ配備に対して日本各地で反対運動が展開されてきている。佐賀駐屯地開設日の7月9日には、オスプレイストップ!9条実施アクション佐賀や戦争止めよう!沖縄・西日本ネットワークなどが、石破首相、中谷防衛相、九州防衛局、陸上自衛隊佐賀駐屯地司令、山口佐賀県知事あてに「抗議と要請の申し入れ」をおこない、7月16日までの文書回答を求めた。抗議文は、オスプレイは「空飛ぶ棺桶」と呼ばれ開発時をはじめ世界中で数々の事故を起こしてきた欠陥機であること、有明の漁民から土地を奪ってつくる佐賀空港の軍事基地化であること、オスプレイの低空飛行訓練が九州7県で85か所に広がる可能性があること、佐賀空港のオスプレイ基地化は、軍民共用化する佐賀空港の安全問題、低空飛行、夜間飛行、さらに飛行空域と騒音問題、海の水質汚染による海苔漁民への影響など、地元周辺住民の生活に多大な影響が懸念されるが、説明はまったく不十分なこと、などを挙げ「佐賀駐屯地開設に強く抗議し、欠陥機・オスプレイの配備撤回を求めます。」としている。


原発事故被災者に国の責任での生涯にわたる健康・医療保障を

 今年2025年3月11日で福島第一原発事故からすでに14年が経過した。溶け落ちた核燃料デブリの取り出しはまったくすすまず、廃炉作業は実現の見通しは立っていない。事故によって生じた精神的・物的・経済的損害に対して政府はつぎのように言っていた。原子力災害対策本部「原子力被災者への対応に関する当面の取組方針」(2011年5月17日)は「原子力政策は、資源の乏しい我が国が国策として進めてきたものであり、今回の原子力事故による被災者の皆さんは、いわば国策による被害者です。復興までの道のりが仮に長いものであったとしても、最後の最後まで、国が前面に立ち責任を持って対応してまいります。」「今後、原子力事故による被災者の皆さんが直面するであろう『すべての』課題に対しても、国として正面から取り組んでいくことは言うまでもありません。」としていたが、実際にはまったく進んでいない。
 原発事故によって大量の放射能が環境中に放出され、避難指示区域をはるかに超え、福島県全域と周辺県に及ぶ広大な地域に住む人々が、原発事故がなければ被ることのなかった追加被ばくを被り、とりわけ浪江町や飯舘村などでは、政府と東電から事故直後の情報提供や避難指示が適切になされなかったために、放射性プルームに覆われて空間線量が桁違いに高かった地域に住民が留まることになった。そのため住民は「避けられたはずの被ばく」も避けることができず、より多くの追加被ばくを強いられたのである。また、避難指示が解除された地域に帰還した住民も、多くの場合、事故前より高い空間線量の中で、長期にわたる低線量の追加被ばくを受けながら生活することを余儀なくされている。国の責任での生涯にわたる健康・医療保障は、「国策による被害者」である原発事故被害者に対して政府が行うべき最低限の補償であり、原発事故被害者の当然の権利である。

 6月26日、原発福島県民会議、福島原発事故被害から健康と暮しを守る会、原水爆禁止日本国民会議など10団体のよびかけで政府交渉(厚労省、環境庁、復興庁)がおこなわれた。10団体の質問・要求事項は、①医療費等減免措置削減・廃止への反対、②「被爆者援護法」に準じた新たな法整備、国による「健康手帳」交付を求める、③低線量被ばくの過小評価・切り捨て批判~政府の事実上の「統一的見解」でもある「統一的基礎資料」の改正(INWORKS)をはじめ低線量・低線量率被ばくの健康リスクの確認)を求め、福島事故被害者等の健康保障を求める、④福島での「公聴会」の開催を求める、などだ。
 政府に対して、国策で進めた原発で重大事故を起こし、多くの人々が追加被ばくを強いられ、生涯にわたる健康リスクを被り、健康と生命に対する基本的人権を侵害された。したがって、国の責任で全ての福島原発事故被害者に生涯にわたる医療・健康保障を行うべきで、そのために、政府には被爆者援護策の経験を活かし、「健康手帳」交付など「原爆被爆者援護法」に準じた、福島原発事故被害者のための「新たな法整備」を行うよう求めた。
 だが、政府側の回答は不十分・不真面目なものに終始した。
 政府は、約束を守って原発事故被害者に十分な補償を直ちに行わなければならない。


ヘイト・排外主義を許すな

        参議院選挙にあたり排外主義の煽動に反対するNGO緊急共同声明

日本経済・社会の衰退の深刻化はおおくの人びとの感じるところであるが、その原因を「外国人」が原因だとする参政党などの言説が勢いを増してきている。この主張は、自民党旧安倍派や維新の会などにも通底しているが、統一教会、幸福実現党、キリストの幕屋など極右カルト宗教集団が尖兵の役割を果たしている。日本社会の閉塞の原因は長きにわたる自民党政治がもたらしたものだが、その真の原因を隠し、デマによって排外主義と管理社会化をもたらそうとするものだ。ヒトラーのアジテーションとおなじものだ。現在のヨーロッパでは移民排斥をテコに右傾化が進んでいるが、真の原因である社会制度そのものを解決すること無く、移民・外国人への敵対・いっそうの排除を続けていけば社会の解体・混乱は必至だ。それに輪をかけたようなのが第二次トランプ政権で、米国社会の分断・亀裂は一段と激しいものになってきている。

 日本社会に排外主義が急速に拡大している状況に抗して、7月8日、移住者と連帯する全国ネットワーク、「外国人・民族的マイノリティ人権基本法」と「人権差別撤廃法」の制定を求める連絡会、外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会、人種差別撤廃NGOネットワーク、全国難民弁護団連絡会議、つくろい東京ファンド、反貧困ネットワーク、フォーラム平和・人権・環境の呼びかけ、266団体の賛同による「参議院選挙にあたり排外主義の煽動に反対するNGO緊急共同声明」が発表された。

参議院選挙にあたり排外主義の煽動に反対するNGO緊急共同声明

 私たちは、外国人、難民、民族的マイノリティ等の人権問題に取り組むNGOです。
 日本社会に外国人、外国ルーツの人々を敵視する排外主義が急速に拡大しています。NHK等が先月に実施した調査では、「日本社会では外国人が必要以上に優遇されている」という質問に「強くそう思う」か「どちらかといえばそう思う」と答えた人は64・0%にものぼります。
 外国人、外国ルーツの人々へのヘイトスピーチ、ヘイトクライムが止まりません。例えば2023年夏以降、埼玉県南部に居住するクルド人へのヘイトデモ、街宣が毎月のように行われ、インターネット上は連日大量のヘイトスピーチであふれる深刻な状況となっています。
 6月の都議会選挙では、選挙運動として「日本人ファースト」等のヘイトスピーチが行われました。また、外国ルーツの候補者たちが「売国奴」などのヘイトスピーチによって攻撃されました。
 来る参議院選挙でも「違法外国人ゼロ」「外国人優遇策の見直し」が掲げられるなど、各党が排外主義煽動を競い合っている状況です。政府も「ルールを守らない外国人により国民の安全安心が脅かされている社会情勢」として「不法滞在者ゼロ」政策を打ち出しています。
 しかし、「外国人が優遇されている」というのは全く根拠のないデマです。日本には外国人に人権を保障する基本法すらなく、選挙権もなく、公務員になること、生活保護を受けること等も法的権利としては認められていません。医療、年金、国民健康保険、奨学金制度などで外国人が優遇されているという主張も事実ではありません。
 「違法外国人」との用語は、「違法」と「外国人」を直結させ、外国人が「違法」との偏見を煽るものです。「不法滞在者」との用語も、1975年の国連総会決議は、全公文書において「非正規」等と表現するよう要請しています。難民など様々事情があって書類がない人たちをひとくくりで「違法」「不法」として「ゼロ」すなわち問答無用で排斥する政策は排外主義そのものです。
 本来政府、国会などの公的機関は、人種差別撤廃条約にもとづき、ヘイトスピーチをはじめとする人種差別を禁止し終了させ、様々なルーツの人々が共生する政策を行う義務があります。社会に外国人、外国ルーツの人々への偏見が拡大している場合には、先頭に立って差別デマを打ち消し、闘うべきなのに、偏見を煽る側に立つことは到底許されません。法務省もヘイトスピーチ解消法に則り、選挙運動にかこつけて行われるヘイトスピーチは許されないとの通知を出しています。
 ヘイトスピーチ、とりわけ排外主義の煽動は、外国人・外国ルーツの人々を苦しめ、異なる国籍・民族間の対立を煽り、共生社会を破壊し、さらには戦争への地ならしとなる極めて危険なものです。
 私たちは、選挙にあたり、各政党・候補者に対し排外主義キャンペーンを止め、排外主義を批判すること、政府・自治体に対し選挙運動におけるヘイトスピーチが許されないことを徹底して広報することを強く求めます。また、有権者の方々には、外国人への偏見の煽動に乗せられることなく、国籍、民族に関わらず、誰もが人間としての尊厳が尊重され、差別されず、平和に生きる共生社会をつくるよう共に声をあげ、また、一票を投じられるよう訴えます。


関西生コン弾圧事件・控訴棄却の不当判決

        資本の言いなり判決に怒り再燃! 弾圧は必ず粉砕や!

  6月9日、関西生コン弾圧事件・控訴判決当日、大阪高裁前で正午に百人を超える結集で、小雨のパラつく中をデモを行い、『憲法二十八条を守れ! 公正な裁判を行え!」とシュプレヒコールをあげ決意を固めた。
 勤労者の団結する権利、団体交渉権、団体行動権(争議権)を保障する労働基本権が脅かされている。
 集会では、労組つぶしの大弾圧を許さない実行委員会小林さんより報告―①近年工事現場でクレーンが倒れるなど基本的事故が多発している。コンプライアンス活動は重要な安全を守る活動だ。②ビラ配布も当然の活動でフザケタ判決は許さない。地域の連帯する組合などにたいして産業別組合を犯罪組織視する動きがあり、法令の勝手な解釈変更によって労働組合活動の幅を縮小させるなど不当労働行為のやりたい放題となっている。労働者をなめたら痛い目にあうぞと反撃を大衆運動から行っていこう。
 続いて関ナマ支部の湯川委員長からの発言―労働組合法を知らない裁判官が裁判を担当している、知らないなら労働学者や専門家から教えてもらえばいいものを、証拠も資料も証言も聴かないで不当な判決をだし続けている。証拠品だと称して家宅捜査して全部引き取っても都合の悪いものは出さない。実にいい加減な日本になっている。冤罪を造る仕組みがここにもあるのだ。絶対に許してはならない。

 全員でシュプレヒコールをして、大阪高裁傍聴に向かった。検事との「裏工作」で有名な坪井裁判官は大津一審判決をなぞっただけの控訴棄却という不当判決を組合員2名に行った。

 裁判終了後も雨の中での屋外集会を行った。湯川委員長は「たただちに上告して闘う」と述べ、各市民団体からの決意表明がつづいた。「不当な攻撃があっても前進するのみ、皆が手を取り合って闘いを共有して行こう。」「黙っていては、正義は正義で無くなる。」など意気天を突くの力強さがひろがっていった。

 今、夏の参議院選挙が闘われている。自民党が給与を増やすと言っている。だが賃金を上げるには、労働者は労働組合に結集して団結して闘う意外に成果は上げられないのだ。その労働組合特に産別の中心を担い新たな芽を出そうとした労組を潰して来たのは、大独占資本と自民党政権であった。
 かれらはこれまで何をやってきたのか。①石炭から石油へのエネルギー転換を名目として炭労三井三池労組攻撃、その後の保安要員削減による炭塵爆発・多くの死者、CO患者をうんだ大
災害発生、②大量失業時代=非正規化の労働者分断に向けて総評解体、それへの一里塚として国鉄分割民営化攻撃による国労潰し清算事業団方式と三桁にのぼる自死、③そして、今回は関西万博によってセメント価格の上昇が加速したが、労働者への分配は無く資本と大阪広域生コンクリート協同組合(広域協組)が独り占めする構造を作り上げようとしている。
 戦争反対の先鋒として活躍する関西生コン弾圧はそのためのものだ。労働者は団結し、仲間同士で競争・分裂をしない魂をもつから強い。連帯ストライキが打てる展望を拓こう。(河田)


安保関連法廃止を求め、14回目の「オール埼玉総行動」

 安保関連法廃止を求め、今年で14回目の「立憲主義を取り戻す!戦争させない!9条こわすな!6・8オール埼玉総行動」がさいたま市の北浦和公園で午前10時より行われ、4300人が参加しました。

 主催者を代表して、小出重義実行委員長があいさつを行ないました。「今日本は、戦争する国への道をまっしぐらに突っ走っています。世界も日本も『抑止力』に惑わされており、抑止論の行きつく先は人類滅亡の核戦争に行き着く非常に危険な考え方です。私たちは『抑止力』から脱却し、戦争する国への道から引き返さなければならない。そのためには市民と野党がガッチリ手を組んで政権交代するしかないのであり、夏の参院選こそチャンスであります」そして、世界へ9条による平和外交を呼びかけましょうと述べました。次に、後援団体の「埼玉弁護士会、連合埼玉、埼労連」からあいさつがありました。
 ゲストスピーカーとして菱山南帆子さん(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会)のスピーチがありました。「日本が戦中に入りかけているという危機感がある」「市民連合のスローガンは『信じられる未来』です。若者は未来が信じられずにいるが、私たち大人の力で信じられる未来をつくっていこう」と呼びかけました。

 各野党からは、立憲民主党・杉村慎治衆議院議員、日本共産党・伊藤岳参議院議員、社会民主党・高井環党埼玉県連政策部長、新社会党県本部村田文一委員長らのあいさつがありました。 参加者は登壇した議員らと、共に手を取り合い闘っていくという結束を深めました。 次にリレートークが行なわれ、医療生協さいたま、埼玉土建青年部、農民連、埼高教、民青同盟、埼教組よりアピールがありました。
 最後に、「戦後80年の節目を、『戦争の準備』ではなく『平和の準備』への転機とし、平和国家としての歩みを確かなものとしていきましょう」とのアピール案が読み上げられ、安保関連法廃止!9条こわすな・戦争させない!立憲主義を取り戻そう!6・8オール埼玉総行動参加者一同としてアピールの賛同を確認しました。 
 この後、「安保関連法は廃止を」と声をあげ、県庁前までのパレードが行われました。


今月のコラム

        「助けて」を聞き逃さない-白石正明著「ケアと編集」(岩波新書)を読む-

 著者は医学書院という出版社で編集者として〈シリーズケアをひらく〉を25年間で43冊刊行した。著者が昨年定年退職してからもシリーズは続いていて今年3月時点で50冊を数える。シリーズ全体は2019年毎日出版文化賞を受け、様々な賞を受けた作品も少なくない。私は内田樹「死と身体」、六車由実「驚きの介護民俗学」、國分巧一朗「中動態の世界」、栗原康「超人ナイチンゲール」しか読んでいないが、雑誌「精神看護」2024年3月号の「白石正明さんが主観で解説するシリーズ『ケアをひらく』全43冊」という特集を見るとどれも手に取ってみたくなる。

ケアと編集は似ている
 「あとがき」で著者は書いている、「今、ケアとは何か、と聞かれたらこう答えるだろう、『それ自身には改変を加えず、その人の持って生まれた〈傾き〉のままで生きられるように、背景(言葉、人間関係、環境)を変えること』と。編集もおそらく似たような行為なのだろう。文章に改変を加えるより先に、その人や文章の〈傾き〉が輝きに変わるような背景(文脈、構成)をつくっていく作業が編集の本態ではないか。そうしたやり方を、わたしはケアする人たちから学んできた」と。
 著者が編集の先生と仰ぐのは北海道浦河(うらかわ)町にある精神障害者の生活拠点「浦河べてるの家」のソーシャルワーカー、向谷地生良(むかいやち いくよし)氏だ。医学書院に入社した著者は精神科領域の看護雑誌をつくるよう言われ、精神科病院や精神科の作業所を巡る中でべてるの家にたどりつく。「精神病でまちおこし」「昆布も売ります、病気も売ります」!?などのキャッチフレーズで年間2千人近くの見学者が訪れる。精神科医にとって患者の幻覚は消すべきものだが、向谷地さんは幻覚妄想を「なくす」のでなく「使う」方向に向かう。きっかけは医師の前では自分の幻覚妄想を語りたがらない(語れば薬を増やされ、入院が長引く)患者同士が自分たちの幻覚妄想を生き生きと語り合っている姿を目撃したことだ。

二項対立ではなく
 べてるの家通いから「べてるの家の『非』援助論」が編まれた。はじめは「『反』援助論」だったが、「『反』というのはなんか貧しい。たとえば『精神医学』に対抗して『反精神医学』という言葉があるが、精神医学の肩の上に乗って後ろ向きに何かを言っている気がする。さらに言えば、威勢のいい『反』は実際のところ、反対する当のものを『反対するに値する』ものとして逆に高く評価してしまうと思う」だから「非」、二項対立をずらしてあえて半端な道を選ぶ。
 べてるの家の行事で著者は舞台に上げられる。生来吃音である著者は苦手な場面を緊張せず乗り切った。「なにかこう、試されている感じがしないのである」より正確には「ある理想の姿と現在の姿の差分を見られている感触がない」。
 向谷地さんは摂食障害当事者に「どうやって食べ吐きするの?」と聞く。「そんな貴重な経験をして、自分の体で実験をしながらオリジナル技術を開発しているあなたのことについて教えてほしい」というスタンスで。彼女はうれしそうに「テーブルの横に洗面器を置いておけば吐きながら食べられる」と言う。「彼女たちには、長年培われたノウハウがある。ポット出の医療者なんかに負けるはずがない。こうした研究成果を発表して、聴衆に大ウケしているうちに、摂食障害を恥じていた彼女自身がなんとなく変わってくる」。講演で舞台に上がる、それだけでその人は「承認」されている、この「承認」こそが社会的動物としての人間に必須な要素なのだ、と著者は言う。

常識を覆す言葉の数々
 「ケア」は難しい。「自立・自律志向」「効率志向」という世の価値観に反している。“志向”という言葉の前提「『未来の目標のために現在を手段とする』という姿勢そのものから、ケアはかけ離れているからだ」。ケアは「現在志向」だ。「今を少しでも楽にする。痛いことはしない。この場にある不快をとにかく除去する。そこに居られる『現在』をつくる」。
 「『今、ここ』で困っている人に手を差し出せる人は、太陽や空気や地面と同じように、この世界をどうにか存続させている基底的な条件である。こうした人たちが世界のバグを始終補修して、手入れをしている。ケアはこうして『今、ここ』を成立させている」。内田樹の高校生への講演が思い出される。「『助けて』という救難信号を発信している人がいる。君はそれを聴き取った。周りを見渡すと誰も気づかないらしく、そ知らぬ顔で通り過ぎてゆく。でも、君には『助けて』が聴こえた。だとしたらそれは君が『選ばれた』ということである。だったらためらうことはない。近づいて、手を差し伸べなさい」。講演の後生徒代表の女子が花束を差し出しながらにっこり笑って「『助けて』を聞き逃さないようにします」と言ってくれた。(内田樹「どうしたらいいかわからない時代に僕が中高生に言いたいこと」‐草思社‐)
 「健常者は何にも頼らずに自立していて、障害者はいろいろなものに頼らないと生きていけない人だと勘違いされている。けれども真実は逆で、健常者はさまざまなものに依存できていて、障害者は限られたものにしか依存できていない。依存先を増やして、一つひとつへの依存度を浅くすると、何にも依存していないかのように錯覚できます」「実は膨大なものに依存しているのに、『私は何にも依存していない』と感じられる状態こそが“自立”といわれる状態なのだろうと思います」(熊谷晋一朗)
 まだまだ沢山あるが、紙幅が尽きた。   (新)


せんりゅう

   ヒロシマの地獄おぼえを語り継ぐ

       原爆をおとした罪の資料館

   バクダンの数だけ憎しみうまるる

       悲惨しるわが魂反戦のデモ
     
   五濁悪政トランププーチン自民

       地位協定そのまんま米日関係
  
   献金で自民うごかすやつがいて

       九条に利他救世の本願あり
 
                ゝ  史

2025年7月


複眼単眼

        NO PASARAN! 参政党を通すな! 

 都議選で「日本人ファースト」(日本人第一主義)のキャッチコピーを打ち出し、新しく3議席を得た参政党が、続く参議院選には45の全選挙区と比例区に10名の計55名の候補者をたて、7月20日投開票の参議院選挙では都議選同様、国政の一角を確保しかねない勢いだ。
 参政党は参議院議員の神谷宗幣が代表兼事務局長を務め、全国に200名近くの地方議員を有している。金権腐敗の自民党に飽いた保守岩盤支持層の受け皿の役割を果たすとともに、政治への批判不満を持つ一定の層を引き付けていることが特徴だ。神谷宗幣は関西の地方議員出身で、自民党から衆院選に出て落選した経歴を持ち、のちに参政党から参議院議員に当選するまで陸自の予備自衛官もやっている。
 インターネットなどで「国守り」を主張、レイシズム、スピリチュアル、「陰謀論」、COVID-19ワクチン=製薬会社の陰謀説(マスク着用自由化主張)などニセ科学、オーガニック信仰、食と健康、外国人労働者規制など排外主義の主張に特徴(時と場所を選んで話題を変える狡猾さ)がある。自民党の西田昌司議員の「ひめゆりの塔発言」も「本質的にまちがっていない」といい、核武装については「佐渡を独立させて国を作り、そこで核ミサイルを置く。日本じゃないんだから問題ない」と語る。
 神谷は自民党時代から「ヤマト・ユダヤ友好協会」(熱狂的シオニスト集団「キリストの幕屋」関連団体)(その協会の趣意書には「神は全人類の救済と、民族的救済を融合するという歴史的使命を達成するためヤマトとユダヤの民を選んだ」とある)の理事を2022年7月まで務めている。「キリストの幕屋」は、迫害を逃れたユダヤ人が日本に流れ着き天皇家を作ったと主張するトンデモなカルト団体だ。
 この動向は、米国のトランプ政権はさておき、このところドイツ、フランス、ポーランド、オランダ、ベルギー、フィンランド、ハンガリー、イタリア、スロバキア、スウェーデンなどヨーロッパでも台頭している新右翼(ファシズム+既成保守政党への不満の受け皿)潮流との共通性に注目する必要がある。
 参政党の綱領は驚くほど露骨な天皇主権だ。「先人の叡智を活かし、天皇を中心に一つにまとまる平和な国をつくる」「日本の精神と伝統を活かし、調和社会のモデルをつくる」という。「重点政策」では「子供の教育(学力より学習力の高い日本人を育成し、郷土を愛する精神を作る)」「食と健康、環境保全(化学的な物質に依存しない食と医療の実現と、それを支える循環型の環境の追求)」とか「自虐史観を捨て、日本に誇りが持てる教育を」「移民受け入れより、国民の就労と所得上昇を促進」などの主張も掲げている。かつてのドイツのナチズムが優性思想を接着剤にオーガニックとむすびついたことは知られているが、参政党の主張も天皇主義ファシズムとオーガニックが結合している。これが既成の政治に対する社会の中間層が抱く不安に浸透する。
 2025年5月に作られた新日本国憲法(構想案)の前文には「天皇は、いにしえより国をしらす(治めるの古語)こと悠久であり……これが今も続く日本の国體である」とあり、「日本は天皇のしらす君民一体の国家である」(第一章第一条)、「国民は、子孫のために日?本を守る義務を負う(第2章第5条)、教育では「教育勅語や神話を教えることが義務」(第9条)とされている。「家族は社会の基礎」とされ、婚姻は「男女の結合を基礎」とし、夫婦同姓が規定されている(第7条)。国民の平等や信教の自由など人権に関する条文は設けられておらず、「国民主権」や「基本的人権」の文言は含まれていない。
 まさに新しい装いを凝らした古典的右翼集団だ。こんな輩を絶対にはびこらせてはならない。   (T)

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