人民新報
 ・ 第1448統合541号(2025年8月15日)

                  目次


●  自公与党は両院で少数派に転落

        日本の政治構造の抜本的な見直しへ

●  第27回参議院選挙を終えて (安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)

●  鹿児島参院選の結果―保守王国崩壊か?

●  アメリカ帝国主義衰退を示す新たな指標  

●  ピースサイクル2025 夏 守ろう!平和憲法 なくそう!原発・核兵器・軍事基地

     埼玉ピースサイクル 自治体への要請行動

     長野ピースサイクル 35回目「平和への想いをつないで」

     被爆80年・大阪ピースサイクル40年の夏 ~ 呉から原爆ドーム前、ヒロシマ到着集会へ ~

●  今月のコラム 

        「今だけ 金だけ 自分だけ」vs.「売り手よし 買い手よし 世間よし」
            -鈴木宣弘著「食の属国日本-命を守る農業再生」(三和書籍)を読む- ①

●  せんりゅう

●  複眼単眼  /  参議院選挙の結果で考えること





自公与党は両院で少数派に転落

        日本の政治構造の抜本的な見直しへ

日本政治は新段階へ


 7月参院選は、自民党の歴史的敗北と極右ポピュリズム勢力の台頭によって、日本政治の地殻変動を象徴する歴史的な選挙となった。自民党は39議席(13議席減)、公明党も8議席(6議席減)という大敗で、自公政権は参院でも少数与党に転落した。
 トランプ政権の対日関税攻勢と対米依存の産業構造からの転換、深刻な人口減少の加速、税と社会保障の再設計の問題、気候変動と大地震・大津波到来の可能性、そして日本国家の基本戦略であった日米同盟や対中戦略の見直しなど重要テーマについて、各政治勢力はスローガンではなく、実際にいかに解決して行くのかをめぐって、その本質が厳しく問われる時代はに入ったということなのである。自公与党との闘いを前進させるとともに、基本政策をめぐって野党の中での違い・分岐をはっきりさせていかなければならない。
 日本政治はいよいよ流動化・多党化時代に突入することとなった。日本政治の新しい段階の特徴をしっかりと分析し、立憲野党と市民の共闘を一層強めていく時期である。とりわけ日米関係の現状とその見直しが急務である。トランプの「アメリカ・ファースト」政策は、日本が米国に従属する構造をいっそう強めるものであり、貿易圧力、軍備増強要、戦争の危険の招来など日本の人びとへの負担・犠牲の拡大以外のなにものでもない。

トランプ関税・重圧の影響

 第二期トランプ政権の登場は、基幹製造業の衰退を軸とするアメリカ国力の弱体化の現状を明らかにした。またそれを一方的な関税政策によって逆転させようとする無謀・強引な手法が世界に衝撃をもたらすこととなった。金融市場は動揺し、貿易摩擦は激しさを増し、世界市場の分断が進み、これまでのWTO体制下でのグローバリゼーションを逆転させようとしている。
 日米関税交渉は、日本側の5500億ドル規模の対米投資、日本市場開放などで一応の妥結と発表された。だが、合意文書の不在や履行状況の四半期点検などトランプ政権の予測不可能な外交スタイルで今後も度重なる対日高関税攻勢がかけられるのは必至だ。
 日本からの自動車輸入に対する関税を15%に引き下げる方向で合意した。引き下げるとは言っても、自動車関税は従来の2・5%から15%へと大幅に引き上げられ、日本産業の基軸である自動車産業そして日本経済全体に打撃を与えることになる。そのうえこの15%関税がいつ正式に、かつ他の関税と重複せずに適用されるかについては不明だ。トヨタやホンダは大幅な利益減少を発表している。この日本の譲歩は韓国やEUへの圧力材料となり、グローバルな関税競争をもたらしている。
 日本の賃金にもおおきな影響がある。試算によると、製造業賃上げ率は3・3%から2・4~2・6%に減速し、場合によってはさらに減少する。他産業への賃上げにも鈍化傾向が波及し、中小企業は設備投資抑制や賃上げ取り止めの動きを見せている。

軍備増強の強要


 トランプ政権は、日本、オーストラリア、フィリピンに、「台湾有事」など対中軍事戦略に於いての尖兵の役割を求めている。日米軍事同盟強化は東アジアの緊張激化を招くものだ。トランプは日米安全保障条約を「片務的だ」とし、日本側にさらなる防衛負担を求め、米・国防政策担当次官エルブリッジ・コルビーは、日本に対し防衛費のGDP比を3・5%に増額するよう迫っている。日本政府はこれまで対中軍備の強化を急速に進めてきたが、トランプ政権の要求はそれを大幅に上回るものだ。防衛費激増は、社会保障や教育予算の削減などをもたらす。そして日米軍事同盟の強化とくに「集団的自衛権」の行使容認は、日本の「戦争する国」化を加速するものである。沖縄をはじめ在日米軍基地の維持・強化を要求しており、地元住民の反対を無視し、基地公害、米兵犯罪の増加を結果する。

安保・日米関係の見直しへ

 トランプ政権の強圧的な対日政策に対し反対する声が広がっている。一部右派勢力はそれを日本社会の反動的再編につなげようとする動きをしているが、こうした策動を警戒・批判しなければならない。
 いま、日米関係の抜本的な見直しの時期である。安保条約破棄・地位協定の見直し、トランプ政権の関税政策や保護主義に対して批判・対決し、日本外交の独立性と多国間協調、東アジアの平和構造構築のために広範な運動を作り上げていこう。

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第27回参議院選挙を終えて

 自公政権に再び国民の厳しい審判が下った。日本政治の流動化は今後さらに加速するだろう。
 私たちはこの度の選挙を、「自公政治からの決別」、そして「来るべき政権交代」への足掛かりとして位置づけ、立憲各野党に共通政策、そして共闘の維持拡大を要請した。結果的に、32の1人区のうち17選挙区で「野党共闘」が実現し、自民を14勝18敗にまで追い詰めた(前回は自民28勝)。今回の選挙で、獲得議席数は自公の与党は47議席、野党は78議席、結果として昨年の衆議院に続き、参議院においても、自公(与党)は少数となった。立憲主義を踏みにじり、長年国民生活に背を向けたまま裏金政治を温存する政権に、明確にNOを突きつけることができたのは、もっとも大きな成果であった。市民連合はこの成果を実現するために、全国で一定の役割を果たすことが出来た。
 しかし自公の凋落は、必ずしも立憲主義や「リベラル」の復調を意味しなかった。今回、私たちが共闘を呼び掛けた立憲野党は軒並み伸び悩み、戦後民主主義や「リベラル」な市民的諸価値を公然と否定する政党が台頭し、メディアを席巻した。昨年のアメリカ大統領選がそうであったように、社会の矛盾や不安の矛先が、与野党含め「既存の政治」全体へと向けられ、“サムシング・ニュー(新しい何か)”を求めた世論の一部は、従来の平和主義や立憲主義というより、むしろナショナリズムや排外主義へとなだれ込んだ。
かつて政治学者のB・バーバー氏が『ジハードvs.マックワールド』で分析したように、経済のグローバル化(マックワールド)が進行することで世界は一つになるのではなく、かえって社会内部に差別や偏見、憎悪や怨嗟が醸成され、相互扶助と対話を旨とする民主主義や市民社会の基盤が壊されていく。今回の選挙ではむしろ、このようにファシズム化する世界社会の「危機」に目を向けるべきだろう。日本政治も今後さらに本格的にこの問題と対峙することになる。
 これからさらに流動化する政治状況の中で、「市民」的な諸価値に基づく政治勢力は何を実践していくべきなのか。今後のファシズム、そして戦争という歴史の慣性に抗うためにはいったい何が必要なのか。時代の分岐点に立つ私たちは、選挙の度に奔走するのみならず、まさにあらゆる垣根を超えた日常的な対話や実践によって、この根本的な課題克服のための活路を見いだす必要があるだろう。そしてこの危機感を共有する市民と共に、混迷する時代の羅針盤、すなわち「信じられる未来」の具体像を、草の根から構想し、実現していかなければならない。

2025年7月21日

        安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合


鹿児島参院選の結果―保守王国崩壊か?

 7月20日、投開票された参院選鹿児島選挙区では尾辻明美氏が自民党園田修光候補に6万7千票の大差をつけて当選した。そして衆参通じて初めての県女性候補の当選となった(無所属・尾辻朋美301026票、自民党・園田修光234893票、参政党・牧野俊一170989票、N党山本貴平12309票)。
 尾辻氏の立候補のいきさつは複雑なものであった。当初、尾辻氏は自民党候補を希望したが選にもれて、無所属での立候補を決意したようである。その後立憲民主党の推薦を受けることになった。
 私が参加している大隅地方の住民の集まりでも参院選の対応が議論となり、各政党に政策についてのアンケート調査をし、また候補者の訴えを直接聞こうということになった。
 共産党の松崎真琴氏と立民推薦の尾辻氏に働きかけたが松崎氏のみ実現した。コメ問題や税金問題はそう違わないことが予測できたが平和政策については尾辻氏とは擦り合わせをしたいところであった。そして参加者の気になる点も野党一本化の問題であった。漏れ聞くところでは鹿児島市で総がかりの労組などが積極的に働きかけ、話し合いが直前まで続けられたようである。結果的に共産党松崎真琴氏が共産党の比例候補に転出することで事実上の野党一本化が実現することになった。鹿児島県の場合有権者数は鹿児島市のような少数の都市に集中し、離島も多く、さらに農村部は広大で有権者数は少ない。コメ、食糧問題や福祉、税金と政治的には重要であるが票の分布はまた異なる。私の居住する農村部のさらに田舎部にも各候補者やりくりして宣伝活動を展開していた。
 出発の時点で自民党からの立候補志向であったり、選挙中でも父秀久氏の名前と実績を積極的に訴えたりと今後に尾を引くような要素を抱えている。選挙戦で多くの県民と接触し、その願いと期待を聞いた経験が政治的な視野の拡大と自己変革の一助となることを期待したい。鹿児島の島津時代からの政治風土と文化を色濃く残す地域で女性候補が自民党候補を破り、当選したことは大きなできごとである。
 自民党森山幹事長の出身基盤であることや過去6回の選挙戦で30~40万票を自民党が取り続けたことを考えれば地滑り的ともいえる保守王国の崩壊の表現も過言ではない。17万票を参政党牧野俊一氏が得票したことも軽視できない。参政党の危険な政治作風と排外主義的な政策とここに投票した人々の想いの双方を深く分析する課題が我々に課せられている。比例では社民党で直前に登場したラサール石井氏が当選となった。比例関連では社民党から立候補予定の花岡しげる氏が来鹿され話をきくことができ山城ひろじ氏、大椿ゆうこ氏、かい正康氏など社民党比例候補者の配置について説明を聞けた。
 鹿児島では立民川内氏を含めラサール出身者が2名となった。未知数部分が多いが期待するしかない。鹿児島県が沖縄や南西諸島に近接していることを考えると鹿児島の大衆運動は重要である。   K・K(鹿児島在住)


アメリカ帝国主義衰退を示す新たな指標

①トランプ関税の衝撃

 二期目のトランプ政権がスタートして以来、アメリカの覇権の衰えは著しく進行している。8月からアメリカの貿易関係では世界規模の70ヶ国以上に新関税が課されることになった。とりわけブラジル50%、インド25+25=50%、スイス39%、カナダ35%、中国34%、メキシコ30%(この両国は90日間猶予中)などへの関税が突出している。EU・日本は15%となったがけっして楽観出来る状況でない。この関税による米政府歳入増加の負担をするのは対米輸出国側でなく米国内の企業・市民でありインフレが加速するのは避けられないと見られている。
 
②米第1次所得収支の赤字転落

 トランプ関税導入の大きな誘因の一つは、米国経常収支の赤字拡大が続いていることがある。コロナ前の2019年の4417億ドルから24年には1・13兆ドル(約164兆円)の2・5倍となり急増した。不動産の高騰や株高を受けた好調な消費により貿易赤字の拡大に歯止めがかからない状態が続いている。週刊エコノミスト(7・15号)によるとアメリカの第1次所得収支(対外金融債権・債務から生じる利子・配当などの収支)が初めて赤字に転落した。「金利の上昇により対外利払い費が大幅に増加し、米国企業の海外部門からの大幅な収益を全て食い尽くしてしまった。」(同30P)これはアメリカの衰退を示す新たな指標である。そしてアメリカの対外累積債務は2006年の5・9兆ドルに対して24年末では16.27兆ドル(約2357兆円)と約3倍に膨張している。(図1)この状況でインフレが進行し金利が上昇すれば利払い 費が急増し債務増加に直結する。こうした対外累積債務増加を食い止めようとするのが相互関税導入であり、そしてまた米国内の富裕層向け減税法(One Big Beautiful Bill, OBBB)の成立である。

③米経常収支赤字は止められるのか

 アメリカの貿易赤字拡大を止めるには増大する輸入を国内生産で代替することであり相互関税の狙いもまたそこにある。しかし米国内の賃金水準は高い。これまでは大量の低賃金移民で補ってきたがトランプ政権は大幅な規制を行っている。また米国の財輸入依存度は直近25年で5割から8割へと上昇し、製造業の雇用は3割失われた。それは雇用が失われただけでなく労働と製造のスキルと能力の喪失でもあり米国の製造業基盤の弱体化として現れている。これを再建するには短期間では不可能でありトランプ流の関税と輸入規制の効果は限定的である。

④厳しさを増す米経済の見通し

 相互関税は今後、一定の輸入の数量減少と輸入品の価格上昇として徐々に表れると思われる。具体的にはインフレの進行と可処分所得の減少によるリセッション(景気後退)であり、それもインフレと景気後退が同時に進行するスタグフレーション(景気が後退しているにもかかわらず、物価が上昇する経済現象のこと)に陥る可能性がある。トランプ政権は来年秋の中間選挙での敗北を避けるため、リセッションを回避のため米金利の引き下げを強硬に要求すると思われる。しかしインフレ下での低金利政策は、一時的に株高・不動産高には繋がるが消費者には逆効果=物価高を招くだけである。そうなればインフレ抑止の金利上昇(債権安)→米国債の利払い費の急増の悪循環を加速させ、ドル安・株安のトリプル安を招き世界恐慌突入もあり得る。

⑤帝国主義の基礎の一つ=「資本輸出」の優位性の衰退

 
 レーニンは『帝国主義論』(全集22巻)において資本主義の発展段階としての帝国主義を次の指標で示した。。それは、①独占資本主義の形成、② 金融資本の支配、③ 資本輸出、④国際的独占資本の形成、⑤ 資本主義列強による世界の領土分割の五つである。その中の「資本の輸出」で「過剰資本は…国外へ、後進国へ資本を輸出することによって利潤を高めることにもちいられるのである。これらの後進諸国では、利潤が高いのが普通である」(同278P)とし、また資本の輸出は「世界の大多数の国民と国に対する帝国主義的抑圧と搾取の基礎、ひと握りのもっとも富裕な国家の資本主義的な寄生性の基礎」とも指摘している。しかし現在のアメリカはその対外累積債務増大により資本輸出による利潤を上回る対外利払い費が生ずるに至っている。今やアメリカは帝国主義の基盤が崩れ始めているのである。  (関 孝一)


ピースサイクル2025 夏

        
守ろう!平和憲法 なくそう!原発・核兵器・軍事基地

埼玉ピースサイクル
     自治体への要請行動


 7月17日(木)埼玉ピースサイクルネットによる埼玉県庁、さいたま市役所、北本市役所、上尾市役所の4自治体の要請行動が行われました。今年の梅雨は九州、東北地方では線状降水帯が発生して大きな水害をもたらしました。関東地方にも大雨が危ぶまれましたが7月半ばになると空梅雨となり一挙に猛暑日が続く様になり、気候危機が実感されてきました。交通事故や熱中症に気を付けて取り組むことにしました。自転車2台と伴走車1台の参加者5人で訪問をすることになりました。最初の自治体は埼玉県庁東門玄関前で午前9時10分に要請を行いました。この後、さいたま市、北本市、上尾市とまわりました。今年の要請書は前文に政府は安保3文書に基づき「戦争する国」への道を突き進もうとしています。一方、世界ではロシア、イスラエルが核兵器を使うかもしれない威嚇が増し、パキスタン・インド両核保持国間の紛争が起きていることに戦争の危機を訴えました。要請文の事前提出以降もイスラエル、アメリカはイランへ核施設攻撃をしました。カンボジアとタイ国境で紛争が起きました。日本の某政党は「核兵器は割安」と言いました。とんでもないです。これまでの要請書では要請7項目のみでしたが今年は質問4項目を追加しました。4自治体とも回答があり、協力して頂きました。
 ①日本政府が核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加しなかったことは、「非核都市宣言」の取り組みを進めている貴市の立場から、平和・核廃絶の取り組みに連携しづらくなる可能性があると思われますか。
 回答:平和意識の啓発、核兵器禁止条約の早期締結を求めるオンライン署名のサイトをリンクしている。市民レベルの平和活動が重要、これまでどおり実施していく。
 ②これまで貴市は、「非核都市宣言」による平和施策を進められてきたと思います。政府の戦争を準備する国の政策によって、貴市の平和施策は今後、従来通り進められると思いますか。それとも困難になると思われますか。
 回答:戦争の惨禍を学ぶ、引き続き平和啓発をして行く、非核平和展などで平和、戦争を啓発して行く。これまでどおり実施していく。
 ③有機フッ素化合物(PFAS)による水道水、地下水、河川などの汚染が健康上大きな問題になりだしています。基地周辺だけでなく、使用済み活性炭処分場などからも高濃度の汚染水が放出されているとの報道もあります。貴市ではPFAS問題についてどのような調査、検討がされていますか。
 回答:水道法(51項目)など政府の基準値で水質検査しており50ng/L未満で推移。来年4月よりPFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)の略称でこの種も追加対象となる模様。
 ④これまでの自転車専用道路の総延長距離数は何Kmですか。これからの拡大計画はありますか。
 回答:サイクリングロードの整備、車社会緩和策としての専用道路の実施状況について県や政令都市では専用道路が作られているが小都市では実施はなかった。
各自治体より市長メッセージがあり、広島、長崎の原爆投下より80年となり、核兵器廃絶と恒久平和の実現への貢献、平和施策を実施して行くことやピースサイクル運動への激励のあいさつがよせられました。
 今年のピースサイクルは全国の17カ所で実走され、5月~7月間に沖縄ピース、愛知ピース、長野ピース、東海村ピース、東京ピース、神奈川ピース、神奈川ミニピース、千葉ピース、埼玉ピース、三多摩ピースでは事故の報告もなく、無事に終了したようです。8月以降は長崎ピース、伊方ピース、岡山ピース、大阪ピース、下北ピース、六ヶ所ピース、国会ピース10月7日を最後に今年の行動は終了します。各ピースの行動では各自治体要請、米軍基地、自衛隊基地、原子力発電所、電力会社へ申し入れ、各地の市民集会参加と交流を行います。

長野ピースサイクル
     35回目「平和への想いをつないで」


 戦後80年の今年、35回目を迎えた長野ピースサイクルは今年も松代大本営跡から東電柏崎刈羽原子力発電所まで約150kmを2日間自転車で走った。
 7月26日(土)午前9時過ぎ、「まもろう9条」「なくそう原発」の旗を付けた自転車実走5名(32歳から84歳)、伴走車2台3名が、松本から駆けつけてくれた支援者(2回目当時、学生で参加)に見送られて松代を出発した。このところの長野県は毎日真夏日を記録していて暑く、出発前からじりじりと照り付けていた。
 直前の参議院選挙では右派勢力の台頭があり、この国が確実に「戦争する国」に向かって深化し、軍拡・実質改憲が進められ、「原発再稼働」「原発回帰」が確実に進む現状への怒りを胸に秘めての2025長野ピースサイクルの始まりだ。
私たち長野ピースサイクルは日本が80年前までに行った「戦争加害」を意識し、35年前の1回目に松代大本営跡を出発地とした。そのうえで、ヒロシマ、ナガサキ、オキナワなど「戦争被害」が象徴的に語られる地に「平和へ思いをつなげよう」とピースメッセージを携えることにしてきた。35年間の長野ピースサイクルでは松代を出発点、あるいは通過点に選んできた。
もう一つ、憲法の前文と9条をふまえて、平和・戦争を考え、原発と核兵器に反対する立場も鮮明にしながら自転車を走らせることを意識してきた。
 今年もこれまで同様に、ヒロシマ、ナガサキ、オキナワに向けての市民や長野県内の市町村長・議長からのピースメッセージを募ってきた。その数は首長9、議長9、市民5(広島、長崎、沖縄あて計69通)となった。
 出発してから2時間余り、いよいよ最難関の急な上り坂に差し掛かる。格段の猛暑が続く今年は、路面から照り返す暑さは半端では無い。熱中症を警戒して1名がいったんリタイヤし、この区間の走行は4名となる。
昼食は昨年と同じで急坂の途中のレストランだが、今年からは自転車の飲酒運転が禁止となったために実走者の生ビール乾杯は自粛し、代わりにノンアルビールやサイダーで我慢だ。(おかげで、午後の走行時に足が痙攣などの影響はなかった様子?)
午後はさらにきつい上り坂へと進んだが、今年も昨年に続いて電動アシストのロードバイクは威力を発揮した。84才の高齢になってもピースサイクル運動を続けられることを今年も証明してくれたが、格別の暑さで走りのペースはダウンした。
 坂を上り切って新潟県境へと向かうところで走行者は5名に戻り、県境を越えると今度は一気に下り坂へ。少し風も出てきたが今年はとにかく暑い。休憩場所はとにかく日陰を選ぶように伴走者も苦心する。1日目最後の休憩地点で日帰り参加のメンバーが離脱して直江津経由帰路へ。みんなで見送ってから宿泊する妙高市のホテルまで走って1日目の走行は終了した。
 夕食を兼ねて、ホテルの近くの中華料理店で鋭気を養う。参議院選挙の結果を含む政治情勢の話やそれぞれの近況報告、様々な話題で盛り上がる。暑さによる疲れもあってか2次会は無しで1日目を無事終了した。
7月27日(日)も朝から晴天で暑い。午前8時過ぎに順調に走り始めた。うなぎ上りに暑さも増し、若干の向かい風の中自転車走行4名は順調に走る。水分補給を頻繁に行いながら、伴走者が差し入れるアイスクリームが特別うれしい状況だ。水不足が心配されている田園地帯をひたすら走る。そして、昼前には海の近い国道8号線へと進み海沿いに出たが、今年は佐渡ヶ島が見えない。
 途中、狭いトンネルと橋の危険個所を避けて、全員が車で移動し、昨年同様に高速道路のSAの食堂での昼食。SA裏の心地よい日陰でしばらくの休憩となった。
 再び8号線に戻って、暑い中を走る。全員、昨年より疲れ気味だが、それでも、原発直前の急な坂をそれぞれのペースで上りきって午後2時過ぎには東電柏崎刈羽原発に到着した。
 その後、ピースサイクル新潟のメンバーと合流し、柏崎刈羽原発での「東電への申し入れ行動」を行った。今年も対応は広報担当2名だけで事務所前での申し入れ行動となった。
東電はこの秋にも6号機の再稼働を予定しているが、先ごろ行われた「再稼働の賛否を問う県民投票条例を要求する署名」が15万筆(新潟県議会での条例策定はされなかったが)に近く、県民の大半が再稼働に不安を持っていることや最近でも数々のトラブルが起きていること、3.11の大事故を起こしている福島第一原発の廃炉の遅れを指摘し、同型炉である柏崎原発の再稼働はすべきでないこと、テロ対策工事の遅れから再稼働が当面できない7号機に装てんされた核燃料は早急に取り出すことなどを申し入れた。
そして、米どころ新潟でもし事故を起こし、放射能を拡散したら日本全体の大きな食糧問題になることも指摘して、再稼働をやめること、原発と放射能がある限り「人と自然との共生は不可能」であり、東電は原発以外の希望あるエネルギーを開発するべきだとも訴えた。
そのほか、参加者から柏崎刈羽原発はかつての中越沖地震で格納容器のコンクリートにヒビが入り、接着剤で補強してあるという事実(地震直後の見学会で当時の職員が説明していた)を指摘したが、引継ぎがないらしく、あいまいな答えしか出てこなかった。申入書を受け取った担当者は「(申し入れを)上部に伝えます」と答えるだけだった。暖簾に腕押し的な虚しさを感じる申し入れ行動だったが、参加者全員の脱原発への意思を確認しあって申し入れ行動を終えた。
 この後、記念撮影を行い、ピースサイクル新潟のメンバーと別れを告げ、長野ピースサイクルの夏の実走を終了した。最後に、参加者それぞれの感想を述べあって、伴走車に分乗して帰路についた。今年の長野ピースサイクルも参加者は少なかったが、「平和への思いをつなげ」楽しく充実したピースサイクルは無事終了した。

被爆80年・大阪ピースサイクル40年の夏 
     ~ 呉から原爆ドーム前、ヒロシマ到着集会へ ~

 8月1日に、大阪を出発した大阪ピースサイクルは、途中、岡山から自転車2台を加えて7台、伴走車2台で4日の夕刻に呉に到着しました。
 翌5日は広島原爆ドームに向けての最後の走行です。呉から新たに2台と伴走車1台が加わり、自転車9台、伴走車3台が朝からの暑い陽射しを受けて、滴る汗をものともせずに「反核平和」を訴えて原爆ドームを目指しました。
 正午には地元広島をはじめ各地から結集した仲間の熱烈な出迎えを受けて、無事に到着しました。 
 暑い中なので、早速、ヒロシマ到着集会は始まりました。地元広島の伊達・ピースサイクル全国共同代表から、1986年から40年間走り続けた大阪ピースサイクルに労いの言葉がかけられました。又、7月27日の報道に触れて、「日米両政府が日本防衛を話し合う定例協議の場で有事の際に、米軍が核兵器を使うシナリオを議論していた」ことに、強い憤りと日本政府の姿勢は許せないと怒りの訴えがされました。
その後、大阪、長崎、東京からの挨拶が続き、大分ピースサイクルからは、20年目の節目に作った歌がギターの伴奏と共に披露されました。
 最後に、大阪ピースサイクルの代表が「大阪―広島ピースサイクルは40年目をもって一区切りとするが、取り巻く状況の厳しさの中で引き続き頑張って行く」と挨拶し、全体から労いの大きな拍手がありました。

~ ダイ・イン~デモ行進~脱原発座り込み行動 ~ 
 「8・6ヒロシマ平和のつどい2025」関連行事が6日の早朝7時より原爆ドーム北側のピースプロムナードで始まりました。集会の前段に、昨年同様に広島市が平和公園一帯を規制したことへの抗議の人間の鎖が取り組まれました。
集会では、各地の報告が続きました。この日も広島は暑くて、8時過ぎには、近くのビルの温度計は既に30℃になっていました。平和公園周辺は、例年以上の警備体制が敷かれていました。
原爆が投下された8時15分を迎えて、周辺も静かになる中でダイ・インが行われました。その後、8時半に出発予定の「反戦・反原子力・反ジェノサイド」デモは、他団体デモの出発遅れで待たされましたが、その間もアピールは続きました。
中国電力本社前までのデモ行進は市民へのアピールの声を響かせながら進みました。本社前に近づくと、「原発反対!」の声は一段と大きくなりました。
 今年の、本社前での「8・6脱原発座り込み行動」は異常な状況での取り組みとなりました。デモ行進が終わるや否や、「ここは中国電力の敷地です。直ちに解散しなさい」と警察が介入してきました。集会参加者と対峙するように歩道に機動隊を配置して、集会が終わるまで、何度となく繰り返し、威圧的な警告を発しました。 
 異様な雰囲気の中でしたが、集会は整然と核被害者への黙禱を行い始まりました。その後、反原発を闘う各地からのアピールがあり、福島や島根からはメッセージが届けられました。
 広島原爆80年朝鮮人犠牲者追悼団の代表からも挨拶があり、韓国の参加者による元気な韓国式コールを聞くことが出来ました。
最後に、原発回帰への政策を進める日本政府のデタラメを許さず闘うことを確認して、全体で本社に向かって「原発やめよう!」コールをぶっつけました。


今月のコラム

        「今だけ 金だけ 自分だけ」vs.「売り手よし 買い手よし 世間よし」
           -鈴木宣弘著「食の属国日本-命を守る農業再生」(三和書籍)を読む- ①

 群馬の片田舎で育った。小中学校への通学路は田んぼの中の一本道で、馬で代掻きをしているのを見ながら通った。中学校時代の級友で酪農を行っている人が複数いる。クラス会のたびに遅れて参加し翌朝早く帰っていく姿にその生業の大変さを感じた。姻戚は東北で農業を営んでいておいしい米やサクランボを送ってくれる。でもその人々の営農の実態を知ることはなかった。にわかな米価高騰を受け農業への関心が高まりつつある。東京新聞には内田樹がコラムで「農業を基幹産業に」を書いた(7/6)。「グローバル企業によって“食”がお金儲けの道具とだけみなされるようになっていくことへの危機感」(「THE BIG ISSUE」504号 特集 喜びと誇り、枝元なほみを偲ぶ)  私も農業の現状についてあまりに無知であることを痛感して、以前から倦むことなく警鐘を乱打している著者の最新刊を手に取った。

迫りくる食料危機
 コロナ禍では世界中で農作物の作付けや収穫、運搬が滞り、多くを輸入に頼る日本に大きなダメージとなった。物流停滞は運賃の高騰を招き食料価格にも跳ね返る。特に食料を生産するための生産資材が入ってこなくなったことが深刻だ。かつては国際市場では日本が中心的なバイヤーとして力を持っていたが、今や中国が高い価格で先に買い付けるようになった。大豆の輸入量は中国年間約1億トン、日本は300万トン。売り手が中国を優先するのは当然、これまでの「お金さえ出せば買える」はとうに破綻している。ウクライナ戦争により世界の食糧事情は劇的に悪化した。ロシアやベラルーシは食糧を「武器」として使い、ウクライナは耕地を破壊され播種も十分にできず物理的に小麦の輸出が停止している。他の小麦生産国では「食糧争奪戦」になっている。世界二位の生産国インドは自国民の食糧確保のため輸出を規制する動きがある。戦争は化学肥料の原料の輸出入にも影響している。窒素やリン酸の原料は大半を中国に頼っているが中国は自国の需要増加を理由に輸出を抑制し始めた。カリの原料の25%をロシアとベラルーシから輸入していたがこれも止められた。異常気象の影響で農作物に大きな被害をもたらすようになった。北海道の食料自給率は223%、東京は0%、仮に異常気象で北海道の生産が大きく減少すれば自給率ゼロの東京などの住民を直撃する。

日本の人口の6割が飢餓に陥る!
 著者の研究室では2035年の実質食料自給率を試算した。それによると牛肉、豚肉、鶏肉、牛乳・乳製品の自給率は飼料の海外依存度を考慮した場合それぞれ4%、1%、2%、12%。種の海外依存度を考慮すると野菜4%、米も11%になる。敗戦直後1946年度の日本の食料自給率は88%だった。その後は1965年度73%以降下がり続け、2000年度以降は40%前後からじわじわと下がりつつある。海外はと言えば2013年度農水省の試算でカナダ264%、オーストラリア224%、米国130%、フランス127%。
 戦後日本の食料自給率が下がった原因は貿易自由化と食生活改変政策であり、それは日本の選択でなく日本を米国の余剰在庫のはけ口にするという米国の政策だった。戦後早い段階で、大豆・飼料用トウモロコシについて実質的に関税が撤廃され、小麦についても大量の輸入を受け入れた。学者やマスコミを通じた「コメ食否定論」の大宣伝がコメ消費量の減少を招き水田の生産調整が始まる。貿易の自由化と食料自給率の相関性は明らかだ。1962年に81あった輸入数量制限品目が現在の5まで減る間に、食料自給率は76%から38%まで低下している。

世界食料危機の元凶アメリカ
 1960年代に始まった「緑の革命」は化学肥料・農薬の大量投入とそれに対応した品種(タネ)のセットで世界の穀物生産を増大させ、一時は人類を飢餓と食料危機から救う救世主かに見えた。しかし化学肥料の大量使用により土壌の中の微生物が減少・死滅し、土の中の生態系が崩れて土壌の保水能力が失われる。少しの雨でも簡単に流出してしまう。国連食糧農業機関(FAO)の発表によると、世界の三分の一の表土はすでに喪失している。また微生物の減少は土中のシステムを破壊し植物の根が張らなくなり、土から水を吸収する力が弱くなる。このことは農業用水の多量の使用につながり、2050年には世界の7割の地域で地下水が枯渇すると推定する学者もいる。
 緑の革命後、穀物生産において単一品種の大規模生産が進められた。それを牽引したのはアメリカだ。トウモロコシの輸出の75%が米国、ブラジル、アルゼンチン、ロシア、ウクライナに集中している。中でも米国は自国の農業には手厚い補助金による支援を行っていながら、日本や途上国には「圧力によって関税を撤廃させ、相手国の農業を補助金漬けの米国産作物で駆逐」しているのが「自由貿易」の実態だ。また、途上国の農民を家族経営的な穀物生産から追い出し、コーヒーやバナナなどのプランテーションで収奪的に働かせている。農地を追われた農民が伐採することで森林破壊も進行する。
 こうして世界全体が米国をはじめとする少数の食料供給国に依存する構造ができてしまった。食料需給に何か問題が起これば途端に食料不足が発生し、食料価格上昇に直結する。投機マネーが流入し益々価格は上がる、輸出規制に踏み切る国が出始めれば一層の価格高騰が起きる。2007年に起きたオーストラリアの旱魃と、米国のトウモロコシをバイオ燃料にする政策に端を発した世界的食料危機で、メキシコでは暴動が起き、ハイチやフィリピンでは死者が出た。

日本の農家は守られている、はウソ
 マスコミを使った宣伝工作で日本の農家について全くの誤報が国民に刷り込まれている。まず、「日本の農業は高関税で守られている」というウソ…OECDのデータによれば、日本の農産物関税率は平均11.7%、EUはほぼ20%、タイ・ブラジルは農産物輸出国だが約35%の関税率だ。コンニャク(1700%)、コメ(300%超)がやり玉に挙げられるが、キャベツなど他の野菜の関税率は大半が3%程度で日本の農産物の9割は低関税率品目、こんな国は世界でも非常に珍しい。ちなみに韓国の平均関税率は62%、スイスは51%。
 次に「日本では政府が農産物の価格を決めて買い取っている」というウソ…政府が農産物の価格を決めて買い取ることを「価格支持政策」という。1993年のGATT(WTO)ウルグアイ・ラウンド合意により価格支持制度は削減することが決められた。「実は、日本は、WTO加盟国の中で唯一農産物の価格支持政策をほぼ廃止した国である。『削減』を『廃止』として対応した『過剰』優等生なのである」コメや乳製品の国内在庫が累積しているのに、コメ77万トン、乳製品13・7万トン(生乳換算)の輸入を日本政府は最低輸入義務として履行し続けている。コメについては米国との密約で「日本は必ず枠を満たすこと、かつ、コメ36万トンは米国から買うこと」を命令されているからである。乳製品についても実質的な米国枠が設定されている。これに対しEUは価格支持は引き下げたがそれにより農家支援策の総額が減らないような政策でフォローした。米国では農家にとっての必要な最低限の所得・価格は必ず確保されるようにその水準が明示され、それを下回ったら不足額を補填するシステムが完備されている。
 今、農業生産資材が高騰しているにもかかわらず、農家は農産物の販売価格への価格転嫁が十分できずに苦しんでいる。理由は「価格が需給で決まって」いずに、不当な買い叩き圧力があるためである。農産物を買い叩き、消費者には高く売って差益を増やそうとする寡占的企業の「今だけ 金だけ 自分だけ」の行動の抑制には、農協、漁協、生協などの共同組合に代表される共生システムが、生産者と消費者の双方に適正な価格を提供する役割を果たすことが不可欠である。規制改革推進会議などは「農協共販により不当な利益を農協と農家が得ている」「農協共販を独禁法で取り締まるべき」と言っているが全くの言いがかりだ。大手流通による小売部門の「優越的地位の濫用」こそが独禁法上もしっかり取り締まられるべきなのだ。酪農については米国でもカナダでもEUでも政府による乳製品の買い上げによる需給調整と乳価の下支え制度を維持しているが、日本は畜安法改正で完全に廃止した。
 3つ目「農家は補助金漬け」というウソ…日本の農家の所得の内、補助金が占める割合は3割程度。一方フランスでは90%以上、スイスではほぼ100%、日本は先進国の中で最も低い。命を守り、環境を守り、地域コミュニティを守り、国土・国境を守っているのが農家である。その農家を国民みんなで支えるのが欧米の常識だ。(つづく)            (新)


せんりゅう

   ちちをかえせははをかえせ
           ガザでウクライナで

        原発神話自民神話のおわるとき

   老朽原発老朽自民のすてどころ 

        乱発大統領令で王様気分  

   トランプのデコラ関税の花

        資本主義者の標本ですトランプ
 
                ゝ  史
2025年8月


複眼単眼

     参議院選挙の結果で考えること

衆議院選挙につづいて、参議院でも与野党議席数の逆転がおきた(自公与党が少数派になった)。しかし、石破自民党は比較第一党の立場で政権維持にしがみついている。
 国会は本格的な多党化状況になった(2議席だった参政党が15議席に。国民民主の拡大(9→22議席、400万票増、6・9%増)、維新の頭打ち(17→19議席。300万票減、7・4%減)、公明の後退(27→21議席)、保守党、みらいなど新議席、再生の道の消滅)
 これにたいしてリベラル・左派はまとまれない。立憲民主の停滞(38→38。比例得票数677万、前参院選より62万増も得票率は0.3%減)とリーダーシップの欠如。共産党(11→7)の後退、社民党(2→2)の伸び悩み、れいわ(5→6)の伸び悩みと迷走、などによる。
 政局の動向では、参院選直後の麻生による石破おろしは不発に終わった。以後、連立政権になるか、政策ごとの部分連合になるか、いずれにしても自公政権は極めて弱体化する。
 自民党が石破総裁を交代させるか、どうか。石破辞任と新総裁選出(石破後が極右の高市になるとは限らない、極右を嫌って林芳正官房長官などもありうる)か。総裁と首相は異なるのだから、自公+維新(副都心構想などで政策協定をした場合)もあるし、石破の退陣を条件に国民民主などとの連携による新首相選出もありうる。
 いずれにしても、永田町は不安定期、大激動期に入った。
  ※  ※  ※
 自公与党による永年の政治腐敗と、この新しいファシズムに対抗し、うち破っていくには市民運動の活発化と、市民と立憲野党の共同以外にないのは「15年安保」以来の10年の市民運動の経験で明らかだ。
 2016年参院選では32の1人区で立憲、国民民主、共産、社民の4党が候補を一本化し11勝。2019年参院選では10勝を挙げた。野党共闘の足並みが乱れ、1本化が11選挙区にとどまった22年の参院選では4勝だった。
 今回は32の1人区中、17の選挙区で1本化に成功し、自公与党と参政党などとたたかい、12選挙区で勝利(立憲会派は8名)した(ほかに共産党を除いて5選挙区で当選した)。
市民連合は、2025年6月9日から社民党と沖縄の風、日本共産党、立憲民主党に「第27回参院選に向けた立憲野党共通政策」の要請を行った。これを契機に両党で話し合いが行われ、共産党は福島と鹿児島で公認内定者を取り下げたほか、15選挙区で擁立を見送ることを確認した。これにより全国32の1人区のうち17選挙区で立憲の公認や推薦候補との一本化が実現し、ここで12勝した。これなしに、立憲は議席で現状維持はできなかった。
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 情勢を切り開く運動の在り方で考えるべきこととして、「石破、がんばれ!」運動や「財務省抗議」運動のもつ危うさがある。
 私たちは自公政権の打倒と政治の変革を要求して闘った。石破茂首相はかつて15年安保のデモを「テロ」と言い放ったような、根っからの右翼改憲派だ。高市よりはいいだろうという気分はわからないではないが、高市の亡霊におびえて、慌てふためくべきでない。策士、策に溺れるという格言もある。
 奇策に頼る運動で市民運動を前進させることはできない。「財務省」主敵論も同様だ。本丸は財務省ではない、「日の丸」とリベラルが同居するMMT(現代貨幣理論)理論は危うい。
 万が一、高市政権ができたら、それと闘うだけだ。
 韓国の民衆は尹前大統領の軍事クーデターの企てを大衆的なデモで阻止し、政権交代を成し遂げ、政治の変革への道を切り開いた。
 SNS全盛の時代にあって、SNSに可能な限り対応しながらも、街頭での市民との対話運動、市民によるファシストへのカウンター運動などを原則的に展開することこそ肝心だ。 (T)

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