人民新報 ・ 第1449号<統合542号(2025年9月15日)
目次
● 石破退陣・政治の流動化・液状化へ
自民党政治に歴史的終焉を
● イスラエルのカタール攻撃糾弾!
日本もパレスチナ国家承認を
● シンポジウム「太平洋戦争終結80年日本の敗戦80年」
中国を仮想敵国に戦争準備に突き進んで良いのか
● 関東大震災朝鮮人・中国人虐殺102年
日本人ファースト批判を
● KODAMA / ピースサイクルに勇気をもらった
● 今月のコラム
「今だけ 金だけ 自分だけ」 vs.「売り手よし 買い手よし 世間よし」
-鈴木宣弘著「食の属国日本-命を守る農業再生」(三和書籍)を読む- ②
● せんりゅう
● 複眼単眼 / スパイ防止法の企てを阻止しよう
石破退陣・政治の流動化・液状化へ
自民党政治に歴史的終焉を
昨年10月の衆院選、今年7月の参院選で歴史的な大敗を喫し、両院での少数与党に転落した自民党に依然として逆風が吹き続けている。この状況に、党総裁の首をすげ替えればなんとか支持が回復できるのではないかという甘い幻想にかられて石破降ろしのうごきが自民党内とりわけ右派勢力から強くなり、政権居座りを狙って抵抗してきた石破茂首相はついに9月7日に退陣を表明した。裏金問題、統一教会との癒着、派閥政治など自民党凋落の原因をつくり出した旧安倍派や麻生派などが石破おろしの主勢力だった。
自民総裁選は9月22日告示・10月4日投開票となる。候補者発表→必要推薦獲得→党内選挙→国会承認という流れだ。もちろん、両院での少数与党の自民党なので、党総裁になっただけでは首相就任が確実とはならない。野党との連立や閣外協力が必要だ。次期総裁にだれがなるのか、 世論とはかなり違う意見を持つ自民党という集団内の決定なのでの予測するのは難しい。
持続的な内閣・自民党支持率の低下、自公政権の少数与党化、自民党内の亀裂の激化、保守勢力の分党・離反などは、長きにわたる自民党政治の生命力がつきかけていることの現れである。大企業優先と日米軍事同盟強化路線の下で行われてきたこれまでの政治・政策によってもたらされたものは、日本社会の直面する焦眉の課題となっている少子高齢化、物価高と実質賃金低下、消費税などの負担、財政赤字と国債依存、気候変動と災害リスク、エネルギー政策の転換など数限りが無い。くわえてトランプ暴走政権の再登場と世界各地での緊張激化・局地戦争というきびしい国際情勢がある。
前回昨年9月の総裁選では、第一回投票では、高市早苗(国会議員票と都道府県連票の合計181)、石破茂(154)、小泉進次郎(136)、林芳正(65)、小林鷹之(60)、上川陽子(40)、茂木敏充(47)、河野太郎(30)、加藤勝信(22)であったが、決選投票では、自民党内では高市の右派ぶりを危ぶむ警戒のうごきもあり、石破茂(215)が大差をつけて、高市早苗(194)を押さえる逆転となった。
マスコミによる評価では保守強硬派の高市早苗、若手改革派の小泉進次郎、穏健派の林芳正、官僚につよい茂木敏充、若手保守派の小林鷹之などが有力候補とされる。高市、小泉の決戦とも言われるが、両人ともに今年の8月15日には靖国神社に参拝するなど右派的傾向を持つ。高市は安倍政治の継承者でより右派的な言動で目立っている。
最悪の場合は高市の総裁・総理の出現で、とくに外交面での深刻な局面があらわれるだろう。日米関係では、軍事同盟強化で米側との防衛・製造供給(軍需・戦略物資)で緊密化を優先する。トランプ関税を単なる脅威ではなく、日本の産業再構築の契機と見なし、「トランプ・ショックはむしろチャンスだ」「日本に富を呼び込むきっかけに」と、国内製造業の回帰を促す好機など夢見ている。対中関係では、強硬姿勢が鮮明になり、台湾・南シナ海を巡る中国の行動に対する批判を強め、経済面でも「依存脱却(サプライチェーンの多元化)」を推進する。「台湾を第二の香港にしてはならない」と強調し、蔡英文総統(当時)とのオンライン交流や、複数の場での台湾支持発言でも知られていて、経済安全保障や防衛分野を中心に台日関係が一層強化されるとみられる。当然に中国側からの反発も強まることになる。韓国に対しては、歴史問題に関して頑なな対応を続けるため、早期の全面的改善は難しい。北朝鮮のミサイル発射や核開発に対して、「日本の防衛体制は不十分」と明言するなど極めて強硬かつ軍事安全保障重視の立場だ。いずれにしても東アジアの緊張激化の状況を深刻化することは間違いない。
経済政策では、「危機管理投資」と「成長投資」を二本柱とし、国家の安全保障と経済力を同時に強化することを目指すとしている。だが政策の中核である「成長投資…技術力を活かした経済強化」「危機管理投資…安全・安心の経済基盤」とりわけ半導体・量子技術・ロボット分野などへの技術分野に国家戦略として資金を投入し、国際競争力を高めることは可能だろうか。日本の現状はどうか。日本の論文数は世界5位と依然として高水準だが、被引用数上位10%の論文では13位にとどまり、研究の「質」では米中英に後れを取っている。人材育成の面でも、博士号取得者数が横ばいであり、かつ若手研究者の待遇が低い。アベノミクスの後継者として高市は、国債発行による財政出動を、将来の成長に向けた先行投資と位置づけ、科学技術、量子・AI、防衛、教育などの分野に集中投資し、GDPの分母を拡大することで財政健全化を図るという戦略だ。財源は、国債による戦略的財政出動をいっている。だが、この発想は、MMT(現代貨幣理論)的発想に近く、インフレ制御が難しい。MMTの中核的な考え方は「自国通貨建て国債はデフォルトしない」という主張であり、高市もおなじことを言っている。しかし、無制限の財政支出はインフレを招くのは当然のことであり、「インフレ制御」「財政規律」「通貨信認」という制度的な制御メカニズムを無視多する結果は、すでにワイマール共和国など、通貨発行による財政ファイナンスが経済破綻をまねいたという歴史的な経験がいくつもあるのである。
高市以外の総裁・総理の場合も、自民党政治は継続することになる。だが、ようやく生まれたこの日本政治の流動化・液状化のなかで、市民と立憲野党の共闘を強め、来るべき衆院選での勝利、なにより労働運動、市民運動の総がかり行動の力を強めるために闘い抜こう。
イスラエルのカタール攻撃糾弾!
日本もパレスチナ国家承認を
9月9日、カタールの首都ドーハ、レクタイフイヤ地区など、住宅複合施設やそれに近接する地域で、イスラエル軍は、カタールに滞在していたハマスの代表団が停戦・人質交換などの提案に対応するための会議参加者を標的に爆撃を行い多くの死傷者をだした。カタール政府は、イスラエルの攻撃を主権国家への侵害、国際法違反であり、また「国家テロリズム」だと強く非難した。国連のグテーレス事務総長は、「明らかな主権侵害」と非難し、持続可能な停戦を追求するよう呼びかけるとともに、国連安全保障理事会は緊急会合を開いた。トランプ政権は、ネタニヤフ政権のパレスチナ政策を支持し続けているが、さすがに今回だけは、少々批判的な対応だった。イスラエルのカタールでの攻撃は、国際法違反であることは明白である。ガザや西岸でもパレスチナ人絶滅(ジェノサイド)を強行する非人道的ネタニヤフ政権への批判を全世界で強めていかなければならない。
イスラエルの暴挙が明らかになる中で、パレスチナ国家承認・二国家併存へシフトする国が増えている。国連加盟193カ国のうち、約3分の2がパレスチナ国家を承認している。今年に入ってからは、メキシコ、フランス、オーストラリア、マルタ、イギリスなどが加わった。
共和党・民主党を問わず従来の米国の政策は「二国家解決案」の方向へ近づいていたが、トランプ政権は大きく方針を転換させ、エルサレムをイスラエルの首都として承認し大使館を移転させ、またイスラエルによるゴラン高原の主権を承認し、くわえてヨルダン川西岸地区の入植地を合法とする見解を示した。ネタニヤフのガザ侵攻作戦を支援しつづけている。
日本政府は、イスラエルとパレスチナがそれぞれ国家として共存できるような和平プロセスを重視しているとするが、パレスチナ国家を承認するかどうかについて「適切な時期と方法を含め慎重に検討する」という態度で、いまだに承認はしていない。
日本はイスラエルと1952年5月15日に国交樹立(1063年大使級に昇格)したが、パレスチナ自治政府には駐日パレスチナ常駐総代表部(2015年10月開設)があるだけである。パレスチナ国家承認についての慎重姿勢は、「米国との関係」「イスラエルへの外交的配慮」が影響している。
9月10日、林芳正官房長官は、カタールのドーハでのハマス指導部に対するイスラエルの空爆を「カタールの主権・安全性や地域の安定を脅かすもの」「外交努力に支障をきたす」「人質解放と停戦へ誠実に戻るよう求める」と述べた。また国連総会(9月27日)での石破首相の演説を通じて、公式な立場表明を行うとも言われてきたが、ポスト石破の次期政権の外交方針がどうなるか不明だ。
駐日パレスチナ常駐総代表部は、日本政府に対して、日本がパレスチナを正式な国家として承認することを求めている。
日本も早期にパレスチナ国家の正規承認を行うべきである。そして、イスラエル・ネタニヤフ政権の侵略・ジェノサイド・戦争犯罪にたいして厳正な批判を行い、国際的制裁の実施に参加すべきだ。それには、イスラエル企業からのドローン兵器などの輸入停止が含まれなければならない。
イスラエルの非人道的な行為はますます酷いものになってきている。ネタニヤフ政権に抗議する運動は世界的に拡大している。イスラエル国内でも反戦運動への参加者が増えている。
日本でも、8月18日に、『政府は今すぐ動け! #ガザの飢餓 #イスラエル制裁 #パレスチナ国家承認官邸前行動』(主催・パレスチナに平和を緊急行動)が展開され、イスラエルと米日政府に対する抗議の発言が続いた。
シンポジウム「太平洋戦争終結80年日本の敗戦80年」
中国を仮想敵国に戦争準備に突き進んで良いのか
シンポジウム「太平洋戦争終結80年日本の敗戦80年平和な世界の構築にむけて~中国を仮想敵国に仕立て上げて、着々と戦争準備に突き進んで良いのか。中国は敵ではない。~日中友好こそ、日本の最大の安全保障の一つだ」(主催・村山首相談話を継承し発展させる会)が、8月14日、衆議院第1議員会館大会議室で開かれた。
来賓挨拶は、鳩山由起夫元首相、呉江浩駐日本中国大使がおこなった。
山田朗(明治大学教授)は「平和創造のために引き出すアジア太平洋戦争の教訓」と題する記念講演をおこなった。
なにより戦争加害と被害の記憶の継承がなされなければならない。戦争・植民地支配・国内暴力の「循環」が、日本の戦前・戦中77年だった。そして、戦後80年は、侵略戦争の否定と植民地支配の忘却としてあった。戦争否定の思想と社会運動が戦争を阻止してきたが、その平和主義思想の基盤は何であったのかが問われなければならない。また植民地支配の忘却という問題を克服するためには、戦争と植民地支配の教訓を生かすことだ。朝鮮半島の「先取」をめぐる日清戦争が台湾などの植民地支配の始まりだった。朝鮮半島、「満州」(南部)の支配権をめぐる日露戦争は、韓国併合(1910)と関東州を拠点とした「大陸経営」の始まりとなった。この植民地支配(植民地戦争)が国内暴力を生んだ。韓国併合と大逆事件はともに1910年だった。そして、日清戦争、日露戦争は「成功事例」とみなされ、教育による「帝国・大国意識」が刷り込まれた。
植民地戦争の継続への抵抗・反発としての朝鮮3・1独立運動(1919)が起こったが、武力弾圧と虐殺があり、そして間島(現在の中国吉林省東南部・豆満江以北の満洲にある朝鮮民族居住地)を拠点とする抗日運動も「討伐」された。この頃から日本国内新聞では独立運動家を「不逞鮮人」と呼称するようになり、この運動はアメリカのキリスト教徒、ソ連の共産主義者が煽動と報道された。
第1次世界大戦(1914~18)は、国家総力戦として戦争概念の転換があり、外敵に備えるとともに「内敵」(思想敵)に備えること、「内敵」とは天皇制の支配に服従しないとみなされた人々とされた。関東大震災虐殺事件(1923)の発生には、朝鮮支配の経験者(日本陸軍・内務省幹部、在郷軍人)の存在があり、「暴動」の主体として「内敵」とみなされた朝鮮人や社会主義者たちが、弾圧・検挙・虐殺された。
そして、治安維持法が、1925年に制定され、最高刑が死刑になり(1928)、国内における弾圧体制の強化とりわけ「内敵」である共産党員への弾圧が強化された。満州事変(1931)の首謀者は、血盟団事件・5・15事件(1932)の首謀者でもあった。「第2の満洲国」成立をねらった盧溝橋事件を契機に「華北分離」を実現する。蒋介石政権打倒は、英・米・仏・ソの蒋政権支援を断ち切るということで、日本対中国(英米仏ソ)となり、日独伊3国同盟(1940)で英米との衝突が不可避となった。独ソ開戦(1941)によって世界のパワーバランスは激変し、そして日独陣営は敗北した。
戦争はジェノサイドの状況を繰り返したが、それを生んだ原因には、近代の戦争観の矛盾・ダブルスタンダードがある。戦争法規には残虐兵器・捕虜虐待と民間人への無差別攻撃の禁止があるが、「人道主義」の仮面の一方で、「植民地戦争」への戦争法規の不適用、勝者による戦争法規のコントロール、破壊を正当化する英・米の「無条件降伏」方針がある。とくに「勝利が見えた」と認知した時に他国に対する残虐性が極大化する。たとえば南京大虐殺などがあり、また自国の人的犠牲を「節約」するために他国の人的犠牲を厭わない原爆投下などがあった。
日本軍侵攻・占領地域における膨大なアジアの人びとの犠牲、民間人の死者は第一次大戦では6%だったが、第二次大戦では60%にものぼった。日本軍戦没者の60%以上は餓死だ。犠牲者の90%は最後の1年間だった。民間人の犠牲者のほとんどがこの期間に生じたものだ。
こうしたあまりにも無惨で膨大な死という経験を経て、戦後における平和主義思想とその発展があったのだった。これには、膨大な人命の喪失が起こした残された人々の絶望と苦難があった。それには戦後の苦難の記憶も含まれるべきである。加害と被害は無数のPTSDやDVを生み出した。戦後日本の平和主義、これは憲法9条を支えるものでもあるが、「戦争記憶の継承」に基づく戦争や軍事的なるものへの拒絶意識、改憲論・再軍備論批判としての平和主義思想があり、1954年の第五福竜丸事件をきっかけとする原水禁連動の高揚、1959~60年の反安保(反岸)闘争、ベトナム反戦運動を中心とする市民運動そして、戦争被害だけでなく、戦争加害(加担)に注目した平和主義運動がある。そして、9条解釈も深化し、名古屋高裁自衛隊イラク派遣違憲判決(2008)は、「平和的生存権」の具体的権利性を認め、他国が行う戦争への協力(戦争加害への加担)も9条1項違反と認定した。ただし、9条と安保の双方を結果的に容認する軽武装論という消極的平和主義が「定着」しているのもまた事実である。また1990年代以降は、中東の紛争をテコに日本の戦争国家化が進展にしている。
では、戦争記憶・植民地支配の記憶の忘却をどのように克服するのか。なにより戦争・植民地支配・力の連鎖に着目する歴史認識が重要である。植民地支配は現代でも差別・格差・暴力として継続しているのであり、差別・格差・暴力の容認が戦争を容認するという価値観を育てる必要がある。そして現在の戦争から学び、過去の戦争を掘り下げること、過去の戦争から学び、現在の戦争を洞察、批判することだ。「新しい被害者にならない」だけでなく「新しい加害者にならない」ということ、ヒトからヒトへの「記憶の継承」は困難だが、それでもできる限りの聞き取りをし、各世代の連携がなされなければならない。憲法9条を支えてきた平和主義の土台を継承 し、市民が〈軍事〉を監視し、コントロールする力を強めていくこと、諸外国とりわけ隣国との付き合い方に知恵を絞らなければならない。
つづいて高野孟さん(東アジア共同体研究所理事)が「『台湾有事なら日本有事』というデマを粉砕しよう! 」と題して講演。
いま日中関係を妨げ、それどころか日本の進路そのものを歪めている最大の障害は「台湾有事切迫論」で、この克服が喫緊の課題だ。「台湾有事論」による「洗脳」効果で、沖縄先島諸島の軍事要塞化、辺野古基地建設、日米軍事統合、防衛費の増大が進んでいる。日本はトランプ関税でも哀願をくりかえす対米従属国の情けなさを見せているが、今こそ対米自立を果たさないと危険な時代なのだ。そもそも「台湾有事」は99・9%起きない。一方的に煽っているのは米国で、21年3月デービッドソン前米インド太平洋軍司令官が2027年までに中国の台湾侵攻がある、理由は、「習近平4選」「人民解放軍100周年」だという。へグセス国防相もこの5月に中国軍が軍事力行使準備中だと述べた。米日マスコミは習近平は「武力行使固執」と言うが、中国の台湾問題平和的解決路線は1949年から不変だ。ただし国民党軍との「内戦」はいまだに公式に終了していない。台湾では誰に聞いても「現在の事実上の独立」を変えたくないと言い、中国でも本来は台湾でも「中国はひとつ」で、仮に有事が起きたとしてもそれは「内戦」だ。台湾が「名目上の独立」を宣言した場合のみ中国は武力行使せざるを得ないとしているが、台湾も民進党に至るまでそれを熟知しているので、安易な独立宣言はしないだろう。米日が参戦しなければ「日本有事」にはならない。仮に「有事」になっても中国は電撃侵攻で台北を抑えるだけだろう。敵は少ない方がいいに決まっているので無駄に戦線を広げない。しかし米日が参戦したら、日本全土の米軍・自衛隊基地をミサイル総攻撃で壊滅される。日本がノコノコ出て行かず、米軍が軽率に出て行くことをも制止すれば「台湾有事は日本有事にならない」という簡単な理屈を理解しなければならない。
各界からの発言は高山佳奈子さん(京都大学教授)、木村知義さん(北東アジア動態研究会主宰ジャーナリスト)がおこない、東郷和彦さん(元外務省条約局長)、田中宏さん(一橋大学名誉教授)、前田朗さん(東京造形大学名誉教授)がコメントをおこなった。
関東大震災朝鮮人・中国人虐殺102年
日本人ファースト批判を
関東大震災朝鮮人・中国人虐殺102年犠牲者追悼大会が、8月31日、明治大学リバティホールで開かれた。第1部の「追悼式・虐殺責任をただす集い」では、黙祷・遺族による代表献花につづいて、田中宏一橋大学名誉教授が開式挨拶。1919年3月1日に朝鮮独立運動が正面から独立を掲げて大闘争が展開された。つづいての中国の五四運動も同じ精神だった。同じ年には、パリ講和会議において、日本(大日本帝国政府)が国際連盟規約に人種差別撤廃を入れてほしいと提案している。そして直近の参院選挙で、日本人ファーストを掲げる政党が躍進するという状況がある。今年は戦後80年と言われるが、戦争の処理をするための重要なサンフランシスコ条約の会議(1951)には、日本の過去と密接に関係のある中国と朝鮮の代表は招かれていない。日本が占領を解かれて独立を回復してその後の日本の繁栄ということが言われるが、実は朝鮮・中国とはサンフランシスコ条約を結んでいないので国交の正常化ができない。そしてその条約で、旧植民地出身者は、日本が独立したその日に、「今日から、お前たちは外国人だ。日本人から外す」とされた。最初に出てきたものが外国人が指紋を押した身分証明書を常時携帯しなければならないこと。もうひとつは、もう外国人になったんだから戦争で怪我しようが、あるいは亡くなろうが、もはや補償の対象にはしないとしたことだ。日本も福祉国家になって、例えば国民年金とか児童手当てとかをつくるが、全部国籍条項がある。日本人ファーストっていう話が出てきたが、この国はずっと日本人ファーストで来たのだった。韓国は20年前に永住外国人の地方参政権を認める法律を作って、今までに5回投票している。日本で外国人にこういうことが出来るだろうか。これから我々が作っていく社会、それは過去とどう向き合うかということも含めてとても重要な時期であることを一緒に考えていければと思っている。
遺族挨拶として、韓国慶尚南道から曺光煥さん、中国浙江省温州から周松権・邱煜峰さん、中国福建省福清から陳興斧さんが発言した。
集会には、国会議員挨拶では、杉尾秀哉議員(立憲民主党)、ラサール石井議員(社民党)、小池晃議員(共産党)、上村英明議員(れいわ新選組)が発言した。
つづいて第2部「関東大虐殺の責任をただす集い」。 はじめに、山田朗明治大学教授が開会挨拶。今年は80年ということで、新聞のテレビなども、それなりに戦争の記憶を継承しようという動きはあったが、植民地支配、これは戦争中の占領地も含まれ、それと連動する日本国内における暴力についての記憶を検証しようという動きは極めて希薄だ。現在日本は、今までにない軍拡モードになっている。軍備拡張は戦争準備だ。植民地支配は現在では差別とかいう形で現れている。戦争の記憶の継承ということはもちろん大事だが、さらにそこにそこから国内の暴力こういうものをきちんと理解して記憶を継承していくということが、私たちに求められている。
韓国のNGO「独立」の朴徳鎮代表の連帯挨拶。
ジャーナリストの安田浩一さんが「震災ジェノサイドから102年、いま問われることは」と題して講演した。今から102年前の9月、朝鮮人、中国人、日本人社会主義者、障害者、地方出身者が殺された。彼らは物のはずみで殺されたわけではなく、明確な意思を持った日本人が各地で狙って殺した。いろんな証言によると、その武器は、日本刀、竹槍、それに鳶口だ。鳶口は突き刺すものではなく、壊すもので、日本人の自警団は朝鮮人を中国人を社会主者を障害者を殺していただけでなくて、壊していた。人間を壊して地域を壊して社会を壊していた。壊しまくっていたのが当時の日本人だと私は思う。暴動が起こるなど根も葉もない噂話を政府が治安トップが全国へ流した。デマに加担していたのではない。政府自らデマを飛ばしていたのだ。今のクルド人をめぐる状況もよく似ている。
各地での取組みの報告は、関東大震災時朝鮮人虐殺の事実を知り追悼する神奈川実行委員会、鄭優希さん(百年ペンニョン)、1923関東朝鮮人大虐殺を記憶する行動についての北米大陸からのメッセージ、集会アピール(別掲)を参加者の拍手で確認し集会を終了した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
関東大虐殺の歴史とむきあい、再発を許さない共生の社会を!
1923年の関東大震災時の「関東大虐殺」を忘れ去ることがあってはなりません。
まして、その歴史を無かった事にすることは、決して許されることではありません。
私たちは、その無惨な悲しい歴史を、現場の目撃証言から、残されたその証言資料から学び、検証し、向きあってまいりました。被害の多くは、いまだ隠され続けてきていますが、それでも事実を否定できない多くの証言と資料が、私たちの前に突き出されています。
明治維新とは何だったのでしょうか? 江華島事件から始まるアジアへの植民地支配に走る日本軍に対し立ち上がった現地の独立運動、抗日戦争への日本軍の殲滅作戦は熾烈なものでした。その流れの中で関東大虐殺も起きています。
80年前、敗戦時、2度と戦争をしないと誓ったはずの日本政府は、今ではそのことを封じ、あらたな軍拡とアジアへの覇権の動きを強めています。関東大虐殺の歴史についても、それに関する資料は見当たらないと言って、謝罪を否定しつづけています。102年前の虐殺には日本軍が関与しており、戒厳令も含めた日本政府の責任は大きく、なおかつそれを隠蔽し続けてきた罪は許されるものではありません。
残念ながら、私たちの属する社会はこうした植民地戦争の反省とその犠牲者に謝罪できない貧しい社会と言えます。謝罪声明も追悼辞も拒否する都知事が再選を繰り返しており、先日の参議院選挙では「日本ファースト」を掲げる政党が歴史を知らない若者たちに選出されており、在日外国人へのヘイトクライムの危機感は深まる一方です。
しかし、それ故にこそ、私たちはこの国の負の歴史としっかりむきあい、その真実を伝え続け、犠牲者・ご遺族とともに歩むことに努め、国家責任を訴え続けていかなければならないのです。国際的な連帯の輪をこれからも拡げながら、再発を許さない共生社会をともに作っていかなければなりません。
私たちは訴えます。
日本政府は関東大虐殺の責任を認め、謝罪してください!犠牲者の名誉を回復し、ご遺族に謝罪してください!
102年間隠蔽し続けてきた責任を認め、謝罪してください!
2025年8月31日
関東大震災朝鮮人・中国人虐殺102年犠牲者追悼大会 参加者一同
KODAMA
ピースサイクルに勇気をもらった
今年の夏の話題の一つは誰もが感じている異常な暑さでしょう。そんな暑さに負けず実施された各地の「ピースサイクル」の報告には勇気を頂きました。
「ピースサイクル」のテーマである「守ろう!平和憲法 なくそう!原発・核兵器・軍事基地」の旗をはためかせ、颯爽と走る自転車が目に浮かびます。このように目に見える形で何かを訴えることはパレード以外に今ではあまり見られなくなったように思われます。 あの旗の下には長年にわたり憲法を守る闘いを堅持されている多くの方々や憲法改悪の策動に揺るぎない意志をもって闘い続けられた故人の思いが託されていると感じました。原発・核兵器・軍事基地の問題も全く同じで、なんとか80年間戦争をさせなかった、いや、これからもさせないと言う決意の象徴があの旗であると思いました。
情報を得る方法や情報を伝える方法は、先日の選挙などでも大きな力を発揮していたSNSによって変わろうとしています。
しかし、可視化された旗と個人の気概溢れる活動はSNSに負けない力があると信じています。小さな画面では得られない生き生きと活動する姿は、戦争と平和の問題がますます大きな課題となっていることを様々人に訴え共感を得たことと思います。
厳しい暑さの中での訴え、本当にお疲れ様でした。 (読者 東京)
今月のコラム
「今だけ 金だけ 自分だけ」 vs.「売り手よし 買い手よし 世間よし」
-鈴木宣弘著「食の属国日本-命を守る農業再生」(三和書籍)を読む- ②
多様な農業経営体を
2024年6月に公布された「食料・農業・農村基本法」に基づき2025年4月に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」は、2020年計画では重視されていた「その他の多様な経営体」の位置づけが後退した。2015年基本計画に逆戻りし、多様な農業経営体を軽視し「効率経営」のみを施策の対象とする色合いが濃くなった。農村現場では一部の担い手への集中だけでは地域が支えられないことが分かってきている。定年帰農、兼業農家、有機・自然栽培をめざす若者、耕作放棄地を借りて農業に関わろうとする消費者グループなど多様な担い手がいてこそ地域の農業と農村コミュニティは成立する。
翻弄される酪農
近年、全国的に生乳はずっと不足気味だったが供給不足分を北海道での増産によって何とか補ってきた。農水省は「畜産クラスター事業」を推進し、酪農・畜産農家に大幅な頭数増加や、機械設備の増強を条件として補助金を交付した。これによって北海道をはじめ全国の生乳生産量が伸びた。そこにコロナ禍が直撃し生乳需要が減少、乳製品在庫が増大し、大量の生乳が廃棄される懸念すら生じたが関係者の大変な努力で何とか回避することができた。しかし政府は「牛乳を飲もう」と呼びかけただけ、牛乳余りの一因となった畜産クラスター事業の責任を取って政府が買い上げればよかったのにそれをしなかった。どころか酪農家に対して「牛乳を搾るな」「牛を処分すれば1頭当たり5万円(後に15万円)支払う」などという通達を出した。こうした供給力不足と供給過剰への場当たり的な対応は「二階に上げて梯子を外す」ものであり、牛を生き物として扱わず、牛の命を顧みずに、短絡的に殺して需給調整しようとする非情さ、牛を道具としてしか見ていない。米国は3300億円かけてコロナ禍による困窮者に食料を提供するために緊急予算で農産物を買い上げた。そもそも米国の農業予算は年間1000億ドル近いが、その64%がSNAP(かつてのフードスタンプ)での消費者の食料購入支援なのだ。この消費者支援だけで10兆円、これによって結果的に農家も助かるから農業予算としている。こうした欧米では当たり前の政策を日本政府は拒否している。
食の安全の問題
2023年4月から、酪農・畜産の飼料を含めて「遺伝子組み換えでない(non-GM)」表示が実質的にできなくなった。新制度では「混入ゼロの場合しかnon-GM表示を認めない」とし、これに違反すれば摘発される。表示の厳格化の名を借りたGM非表示制度である。「non-GM表示を認めるとGMがまるで安全でないかのように消費者を誤認させる」という米国の要求をのんだ結果である。
乳牛の乳量増加のための遺伝子組み換え成長ホルモン(γBST)について、40年来これを調査している著者は、認可官庁と開発会社と大学の「疑惑のトライアングル」と呼んだ。米国ではγBST投与牛の牛乳・乳製品に乳癌は7倍、前立腺癌は4倍の発症リスクがあるとの論文が著名な学会誌に掲載された。これを機に反対運動が再燃する。バーモント州が表示義務化しようとしたが開発会社の提訴で阻止された。FDA(食品医薬品局)も開発会社の肩をもった。対抗して反対運動の消費者たちはγBST不使用の酪農家とネットワークを作り自分たちの流通ルートを確保した。このネットワークの広がりにより、ウォルマート、スターバックス、ダノンなどの大手企業は“不使用宣言”を出さざるを得なかった。米国酪農家の3割程度がγBSTを使用している。これが日本に輸出されている可能性がある。日本は国内ではγBSTは使用禁止だが、輸入はザルになっているから。
例えばまずは学校給食から地元の安心・安全な食料を提供する仕組みを作っていくことで、子どもたちの健康を守り、地元の生産者も守る素地ができないか。国産の牛乳・乳製品はすべてγBST不使用なのだから。カナダでは牛乳1リットル300円だが、米国産のγBST入り牛乳は不安だからカナダ産を支えるというのが消費者の声だ。農家・メーカー・小売りのそれぞれが十分な利益を得たうえで消費者もハッピーなら、これこそが皆が幸せな持続的システムではないか。「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」でなくては持続できない。
生物のDNAを切り取って特定の遺伝子の機能を失わせる技術「ゲノム編集」について。政府は「ゲノム編集は遺伝子組み換えではないから問題ない」という不正確な説明に基づき「審査も表示もするな」という米国の要請をそのまま受け入れた。現在、ゲノム編集は完全に野放しになっている。ゲノム編集については安全性への懸念が払拭されていない。世界的に慎重な対応を求める流れがあるのに日本は前のめりだ。日本はゲノム編集を動物に実用化した世界初の国となり、すしネタにも一部出回っている。米国消費者団体がすしは危険というポスターを作っている。
セーフティネットなき農業
コメ農家は有効なセーフティネットがないまま自由化と規制緩和の大波にさらされた。2006年度から施行された「農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律」で措置された収入減少影響緩和対策、いわゆる「ナラシ」は5年間の平均所得を基準額として申告時点の収入との差額の90%を農家に支払う仕組みだが、対象は収入金額だけで最近の生産資材暴騰には全く役に立たない。民主党政権下で導入された農産物価格が生産コストを下回った場合に国がその差額分を生産農家に補償する「戸別所得補償制度」は自公政権によって2018年に廃止された。
なぜ日本は備蓄をしない
規制改革論者は規模拡大を進めればコストは確実に下がり米価も安くできる、いくらでも輸出できる、などと主張する。日本では地域のあちらこちらに点在する田んぼを寄せ集めての規模拡大にならざるを得ないことを無視している。農水省のコメ生産費調査でも60キログラム当たり生産費は15~20ヘクタール層を底にしてそれ以上の規模の層は却って上昇している。
中国は今有事に備えて14億人の人口が1年半食べられるだけの穀物を備蓄する、として世界中から買い占め始めている。日本の備蓄はコメを中心にせいぜい1・5か月だ。コメは減反を続け、現在700万トン弱しか作っていないが、日本の水田をフル活用すれば1300万トン作れる。財務省はそんな金がどこにある、と言うだろうが米国の在庫処分のトマホークを買うのに5年間で43兆円を使う。まず国民の命を守る食料をしっかり国内で確保することこそ第一の「国防」ではないか。備蓄米は子ども食堂やフードバンクを通じた国内援助や海外援助にも活用できる。前述したように米国の農業予算は年間1000億ドル、その8割近くは「栄養」に使われている。そのうち8割が低所得者層への補助的栄養支援プログラムに使われている。また海外援助も実質的な輸出補助金の形で行われている。日本政府はなぜこうした政策を取らないのか。日本が支援物資としてコメを拠出すれば、米国の市場を脅かすことになるからだ。
2023年度補正予算では田んぼつぶしに750億円が充てられている。政府は水田の畑地化を推進している。「土壌物理学の父」と言われる米国のフランクリン・キングは1909年日本、中国、朝鮮の農業慣行調査旅行を行い、旅行記を著した。「われわれは、豊かな処女地をわずか三世代で疲弊させてしまうような農法の地から、30世紀にわたる作物栽培の後にもなお肥沃な土を維持し続けている別の農法をとる土地に来たのだ」「今日我が国の南部や南東部(大西洋沿岸諸州)で見られるようなすさまじい土壌侵食の如きは、極東では何処たりとも許されていない」
穀物生産は大きく分けると、コメ作りをする日本などのアジアモンスーン地域の水田農業と、小麦やトウモロコシなどを生産する欧米の畑作農業に二分される。水田耕作は畑作農業につきものの連作障害、土壌流出や地下水枯渇、塩害などの問題を4000年にわたって持続的に解決してきた。水田には多面的な機能がある。これを活用して食料自給率が上がると海外からの輸入が減り、輸送量×輸送距離のフードマイレージが下がり燃料使用量を減らしてCO2排出量が減る、水田稲作は少ない肥料で高い収穫をあげられ環境に優しい、水稲には連作障害が全く起こらないから安定した食料供給が可能、コメの消費が増えればコメ農家経営の安定性が向上し、農家のモチベーションを高めて農業の質も高まる、水田には高い水源涵養効果があり、洪水防止、国土の保全、災害対策にも資する、等々。なにより水田耕作は日本文化の礎であり、精神的な価値がある。景観の維持という面でも大事にしなければ。
種子をどうする
改正された新農業基本法には種に関する記述がない。農業において最も基本的な要素である種はどうなるのか。これはこれまでのコメや種に対する政府のやり口から予測されたことだ。1952年に制定された主要農作物種子法が2018年に廃止された。これはコメや麦、大豆という主要農作物について国が予算措置して、都道府県が優良な品種を開発し、安く安定的に農家に供給することを義務づけた法律である。種子の育成には膨大な手間と費用が必要になる。育成にかかる時間は長く、一つの品種を開発するのに約10年、増殖には4年かかるといわれる。これは農家の手に余ること、だから国が管理するとしたのだ。種子の生産に携わるのは各都道府県の農業試験場といった研究機関、採種農家などであり。国が必要な予算を配付してきた。これを民間に委ねれば、公的に優良な種子を開発し、安価に普及させてきた機能が失われ、種子価格が高騰することが懸念される。実際、米国では1996~2015年に大豆やトウモロコシの種子が3~4倍に値上がりしている。公的種子が主流の小麦では2倍弱だ。
この種子法廃止は外国企業の意向に沿うものであった。グローバル種子農薬企業(バイオメジャー)は「種を制するものは世界を制する」として世界中の種を自分のものにし、それを買わないと生産できないような状況を作ろうとしてきた。メキシコ、コロンビア、チリでは同様の法案が農民、学生、労働者の強固な闘いによって廃案や凍結に追い込まれた。その結果日本に要求が来るようになった。2017年には農業競争力強化支援法が成立した。公共種子の民間事業者(海外企業、モンサントなどのバイオメジャーを含む)への譲渡を促進するものである。さらに種苗法の改悪が行われ、それまで認められていた農家の自家採種をできなくさせた。これらの改悪は「公共財」の種子を「民間」に差し出すだけでなく、バイオメジャーに種子の独占権を与えることになりかねない。バイオメジャ-に種を渡せばどうなるか。種と農薬をセットで買わせ、できた農産物を全量買い取り、販売ルートを確保する形で農家を囲い込もうとする動きが起きてもおかしくない。そうなれば地域の食料生産・流通・消費が企業の「支配下」に置かれることになる。
種子法廃止に対して全国の農家ら1300人が違憲訴訟を起こしている。また各自治体も頑張って種子法に代わる種子条例を定め種苗開発を継続する取り組みが多くの都道府県で続けられている。沖縄県は2022年に種苗条例を制定している。種は人類が数千年にわたって守り育ててきた一種の共有資源だ。それには膨大なコストと労力が費やされてきた。その種を「今だけ、金だけ、自分だけ」の企業が勝手に素材にして改良しそれを登録して儲けの道具にするのは「ただ乗り」して利益を独占することに他ならない。
日本は米国の圧力に応じて農産物の関税撤廃を見返りに自動車等工業生産物の輸出で利益を得ようとした。RCEP(地域的包括的経済連携協定),TPP11など大きな自由貿易協定を一つ決めるごとに自動車は3兆円儲かり、農業は1兆数千億円失うことになった。また財務省は農水予算を減らし続け1970年に防衛予算の2倍近い1兆円近くあったが、50年経ってもまだ2兆円だ。著者の試算では2.7兆円の予算拡充で農業・農村は「復活」し日本の地域経済に好循環が生まれる。 (つづく)
(新)
せんりゅう
ナチほどのことをやってるイスラエル
資本がウクライナをあそんでいる
汚染土を除染土と言い財界人
すて場まで嫌われてます万年も
少子化なのに子供の自殺多発
皇室をやたら新聞かきたがり
貧者いじめたアベノミクスが癌だった
よくなれと忿怒をしるす秋の空
ゝ 史
2025年9月
複眼単眼
スパイ防止法の企てを阻止しよう
トランプ大統領の米国ではこの5日から「防衛省」の名称を「戦争省」に変える(ただ、正式な改称には連邦議会の承認が必要となるため、当面、国防総省の「第2の名称」として追加する形になる)のだという。
このところ、日本もそうしたほうが正確なのではないかと思えるような戦争する国に向けた動きが進んでいる。
戦争の準備ではこの秋の臨時国会にも「スパイ防止法」案提出のうごきが再燃しそうだ。これは戦争推進のための治安立法だ。
参院選で議案提出権を得た参政党は、臨時国会に向け維新の会や国民民主党などと連携しながら提出を目指している。参政党の神谷宗幣代表は参院選中の演説で公務員をやり玉に挙げ、「極左の考えを持った人たちが社会の中枢に入っている。極端な思想の人たちは辞めてもらわないといけない。これを洗い出すのがスパイ防止法だ」と語った。神谷氏は、戦前の治安維持法を「悪法と言うが、共産主義者にとって悪法だろう」とうそぶいた。戦争を準備したスパイ防止法という法律は、誰にとって悪法であり、誰にとって都合がよかった法律だというのか。
戦後、このトンデモない弾圧立法への反省から、日本国憲法には「思想・信条の自由」「信教の自由」「表現の自由」などが規定された。しかし参政党の「新日本憲法(構想案)」にはそうした人権規定が一切ない。スパイ防止法案は中曽根康弘政権下の1985年に自民党が「国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案」(略称スパイ防止法案)を提出し、国会内外の反対で、86年に廃案に追い込まれた。
この法律の制定運動は、当時の統一教会・勝共連合が強力に推進した。国際勝共連合は、1987年1月1日付の「思想新聞」で国家秘密法案は「戦後初めて全国民に国家に対する忠誠心を問う法律」であると明言。これに対して、日弁連、社会党、共産党などの野党、総評系の労働組合運動、市民の広範な反対の声によって、1988年に修正法案の提出を断念させた。
その後、自公政権は「国家秘密法案」よりも秘密指定の対象を広げる「特定秘密保護法」を2013年に閣議決定し、2014年12月に施行した。今回のスパイ防止法案はこれをさらに強化しようとするものだ。このような悪法に陽の目を見せてはならない。
既にさきの参院選でいくつかの政党がこの制定推進を主張していることは見逃せない。
「自民党」は選挙パンフレットには記載がなかった。しかし、「政策インデックス」には闇バイト対策の隣にスパイ防止法の記載がある。自民党では、かつて経済安保担当相として「経済安保法」の制定を進めた高市早苗氏が会長を務める自民党「治安・テロ・サイバー犯罪対策調査会」が、本年5月28日、「『治安力』の強化に関する提言」を取りまとめ、石破茂首相に参院選公約にこの提言を盛り込むよう求めた。
「国民民主党」の参院選公約には、G7諸国と同等レベルの「スパイ防止法」を制定することが明記されている
「日本維新の会」の参院選公約では、米国の CIA のような「インテリジェンス」機関を創設するとともに、諸外国並のスパイ防止法を制定し情報安全保障を強化すること、とある。
先に紹介した神谷代表の「参政党」も、日本版「スパイ防止法」等の制定で、経済安全保障などの観点から外国勢による日本に対する侵略的な行為や機密情報の盗取などを機動的に防止・制圧する仕組みを構築する旨を記載している。
これらの右派政党が目指す戦争準備と一体のスパイ防止法は必ず阻止しなければならない。(T)
新報 2025年 9月号 .pdf へのリンク |