人民新報 ・ 第1451号<統合544号(2025年11月15日)
目次
● 極右高市の危険な対中挑発
日中関係四文書をないがしろにするな
● 日本初の女性首相誕生へ、「金権マッチョ、自民にNO!」の言葉を贈る (市民連合・フェミブリッジ全国事務局)
● スパイ防止法阻止!
● 「循環取引」は「AIバブル」崩壊の前兆か
● 風雨に負けず、原発廃炉の訴え!
四国でピースサイクル
● 外国人労働者の権利擁護! 排外主義の根絶!
● 今月のコラム / 不屈のジャーナリスト精神-映画「非常戒厳前夜」を観る-
● せんりゅう
● 複眼単眼 / 安倍路線を超えて右傾化する高市首相
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極右高市の危険な対中挑発
日中関係四文書をないがしろにするな
極右の高市政権が10月21日に発足した。
高市内閣では、内閣官房長官に木原稔、外務大臣に茂木敏充、経済安全保障担当大臣に小野田紀美などタカ派を配置し、外交・安全保障政策の司令塔役である国家安全保障局長には、安倍政権下で「自由で開かれたインド太平洋戦略」の策定に携わった市川恵一をすえ、また維新との合意に基づき、「スパイ防止法」の早期制定、「国家情報局」(JCIA)の創設を重要政策として掲げ、「戦争する国づくり」完成に向けた布陣が特徴だ。
高市が10月24日の所信表明演説などで提起したのは、外交では日米軍事同盟強化と中国・北朝鮮への抑止力強化、スパイ防止法の整備や経済安全保障の強化を約束し、安保三文書の前倒し改定、軍事費GDP2%を前倒し年度内実行を断言し、自衛隊明記を含む憲法改正について早期実現など「戦争する国」作り諸政策だった。
高市は、10月28日の日米首脳会談で日米軍事同盟の飛躍的強化、防衛関連費の大幅増をトランプに誓約した。
10月30日の韓国でのAPEC首脳会議への出席を機に韓国の李在明大統領との日韓首脳会談につづき、31日には習近平国家主席と日中首脳会談をおこなった。
日中首脳会談について、日本外務省は「両首脳は、『戦略的互恵関係』を包括的に推進し、『建設的かつ安定的な関係』を構築するという日中関係の大きな方向性を改めて確認しました。その上で、高市総理大臣から習主席に対し、地域と国際社会の平和と繁栄という重責を果たしていく重要性について働きかけました。高市総理大臣から、安全保障や経済安全保障など懸案や課題があるからこそ、それらを減らし、理解と協力を増やし、具体的な成果を出していくとともに、首脳間で、戦略的互恵関係を進める意思を確認する重要性を指摘しました。両首脳は、首脳間での対話、そして日中間の幅広い分野での重層的な意思疎通を行う重要性を確認しました。…高市総理大臣から、中国での邦人襲撃事件や邦人拘束が発生する中で、中国滞在に不安を感じている日本国民のため、安全確保を求めるとともに、拘束中の邦人の早期釈放を求めました。高市総理大臣から、台湾海峡の平和と安定の我が国を含む国際社会にとっての重要性を強調しました。また、南シナ海、香港、新疆ウイグル自治区等の状況に対する深刻な懸念を表明しました。」と報じている。
今回の日中首脳会談についての外務省発表にはおおきな特徴がある。昨年11月15日、ペルー・リマでの当時の石破茂首相と習近平中国国家主席との首脳会談についての外務省の発表は、「両首脳は、日中両国は、引き続き、『戦略的互恵関係』を包括的に推進し、『建設的かつ安定的な関係』を構築するという大きな方向性を共有していることを確認しました。また、両首脳は、日中間の4つの基本文書の諸原則と共通認識を堅持し、率直な対話を重ねられる関係を築いていくことを確認しました。」とあった。
また2023年11月16日の米国サンフランシスコでの岸田文雄首相と習近平主席との首脳会談についての外務省発表は「両首脳は、日中間の4つの基本文書の諸原則と共通認識を堅持し、『戦略的互恵関係』を包括的に推進することを再確認した。その上で両首脳は、日中関係の新たな時代を切り開くべく、『建設的かつ安定的な日中関係』の構築という大きな方向性を確認した」としている。
「戦略的互恵関係」「建設的かつ安定的な日中関係」は高市、石破、岸田にあるが、「日中間の4つの基本文書」は高市の日中首脳会談での外務省発表には欠落している。この高市政権による「日中間の4つの基本文書」の無視はこれまでの日中関係を否定し、両国関係を悪化させる暴挙といわざるをえない。
日本マスコミも日中首脳会談に於ける習近平主席の冒頭発言を伝えていたが、「人民網日本語版 2025年11月01日」は、首脳会談で習近平主席は「中日両国は一衣帯水の関係であり、互いに重要な隣国である。中日関係の長期にわたる健全で安定した発展を促進することは、両国民及び国際社会の普遍的な期待に沿うものだ。中国は日本と共に、中日の4つの基本文書によって確立された原則と方向性に従い、二国間関係の政治的基礎を維持し、戦略的互恵関係を推進し、新時代の要請に適った建設的で安定した中日関係の構築に取り組むことを望んでいる」「歴史や台湾地区など重大な原則的問題に関する中日の4つの基本文書の明確な規定を遵守・履行し、中日関係の基盤が損なわれず、動揺しないようにする。『村山談話』は日本の侵略の歴史を深く反省し、被害国に謝罪したもので、この精神は大いに発揚する価値がある。」と報じている。
日中関係の四文書は、①日中共同声明(1972)、②日中平和友好条約(1978)、③平和と発展のための友好協力パートナーシップの構築に関する日中共同宣言(1998)、④「 戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明(2008)だ。日中共同声明には、「日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」ポツダム宣言第八項は「カイロ宣言の条項は、履行せらるべく、又日本国の主権は、本州、北海道、九州及四国並に吾等の決定する諸小島に局限せらるべし」であり、カイロ宣言には「同盟国の目的は、千九百十四年の第一次世界戦争の開始以後に日本国が奪取し又は占領した太平洋におけるすべての島を日本国からはく奪すること、並びに満洲、台湾及び澎湖島のような日本国が清国人から盗取したすべての地域を中華民国に返還することにある。」
すなわち、高市政権は「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、」という基本を、これまでの歴代日本政府の方針を変更・無視する姿勢を示したのである。
高市は習近平主席と首脳会談があった会談があった31日と1日の2回、台湾のAPEC代表である林信義と面会した写真をあえて自身のSNSに投稿した。歴代自民党政権がしなかった挑発をおこなった。
また高市は、国会での台湾有事で存立危機発言を「撤回するつもりない」と開き直っている。
これらの問題は、日中関係の基本的な原則に絡む問題であり、「戦略的互恵関係」「建設的かつ安定的な関係」を自ら否定するものである。わざわざ中国側を激怒させるこうした言動が、一挙に日中両国の対立・衝突の可能性を増大させた。高市政権が現在の政策を続ければ、戦争になることは必至だ。高市政権の戦争挑発政策を阻止しなければならない
市民と立憲野党の共闘を強化し、なにより大衆運動段階で反戦平和・改憲阻止運動のおおきなうねりをつくりだし、総がかりの運動をいっそう強め・拡大し、高市極右・反動政権打倒して、戦争する国づくりを阻止し、自民党政治を終わらせよう!
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日本初の女性首相誕生へ、「金権マッチョ、自民にNO!」の言葉を贈る
この度の首班指名選挙で高市早苗衆院議員が総理大臣に指名されました。男性優位のこの国で初の女性首相の誕生です。
私たち、フェミブリッジは女性の政治参加・政治参画を訴えてきましたが、今回の「初の女性首相誕生」を歓迎することはできません。ましてや「ジェンダー平等の前進」と捉えることもできません。維新との連立を組む高市政権の誕生は、平和、人権、平等を求める私たちにとって、戦後最悪の政治を招くことになると予想されるからです。
周知のように、高市首相は党内でも強硬なタカ派、右派の政治家です。国際的にも超保守、極右と目されています。その理由は、憲法改正、安保三文書の改訂、軍拡推進、過去の靖国神社参拝、スパイ防止法制定への積極姿勢、「金権議員」の重用、排外主義の煽りと政策強化、国会議員定数削減ほか、「新たな戦前」づくりに拍車をかけているからです。公明党の連立離脱、日本維新の会との連立で、高市政権の底知れぬ暴走に巻き込まれ、最大の権利侵害を受けるのは一般市民です。この国の行く末に慄然とします。
戦争できる国づくりへの道は、女性差別を強化し、家父長制的な家制度に固執します。高市首相は、選択的夫婦別姓制度への道を頑迷に妨げてきたうえ、夫婦同姓強制と表裏一体の「男系の皇統を守るための皇室典範の改正」を掲げています。「ワークライフバランスを捨てる」と、「滅私奉公」発言をし、過労死遺族の方たちや共働きの人々の反発を浴びました。今後いっそう進む軍事費増大は、社会保障費をますます削り、女性の貧困、無償ケア労働のさらなる過重負担、介護等ケアワーカーの待遇劣化などを招いていきます。高市政権のもとでは、とりわけ女性にとって苦境、困難が増し、実質的なジェンダー平等は後退していくに違いありません。
「金権マッチョ 自民にNO!」はフェミブリッジが掲げてきたプラカードのフレーズの一つです。「マッチョ」とは男性そのものを意味するものではありません。男性優位主義、力ずくで他者を支配する男尊女卑的なあり方を指すものです。高市首相は、まさに「女の顔をした自民党マッチョ政治」の体現者となるでしょう。
私たちはそんな「日本初の女性首相」の政権にはっきりとNO!の声を上げ、連帯の輪を広げ、希望の橋を架け、立ち向かっていきます。
2025年10月22日
市民連合・フェミブリッジ全国事務局
スパイ防止法阻止!
高市政権は「戦争する国づくり」に突き進んでいる。その重要な柱として「スパイ防止法」制定や(JCIA)国家情報局、外情報庁の設立がある。自民党と日本維新の会の「連立政権合意書」には、「インテリジェンス・スパイ防止関連法制(基本法、外国代理人登録法およびロビー活動公開法など)について25年に検討を開始し、速やかに法案を策定し成立させる」とある。また「26年通常国会において、内閣情報調査室および内閣情報官を格上げし、『国家情報局』および『国家情報局長』を創設する。」「27年度末までに独立した対外情報庁(仮称)を創設する」とある。
とくにスパイ防止法について今年中に検討を開始し、速やかに法案を成立させるとしている。中曽根政権下の1985年には「国家秘密法案(スパイ防止法案)」が提出されたが、マスコミを含めての反対運動で廃案になった。現在、自民党、参政党、国民民主党、日本維新の会などによって再び法案提出の動きが強まっている。この臨時国会での提出の可能性もつよまるなかで反対運動が活発化している。
臨時国会開会日10月21日に院内集会「戦争につながるスパイ防止法に反対する」(「秘密保護法」廃止へ!実行委員会、共謀罪NO!実行委員会)が開かれた。
海渡雄一弁護士が、「世界を敵と味方に分け戦争につながるスパイ防止法に反対する」と題して講演をおこなった。スパイ防止法は、世界を味方と敵に二分する考え方である。A国のB国に対するスパイ行為が成功した場合、この行為は、A国においては、英雄的行為として称賛され、対象とされたB国で検挙されれば死刑などの厳罰に処せられる。各国の情報機関が行う行為は、自国の安全保障戦略のためであるが、それは「敵国」からみれば、スパイ行為なのである。スパイ防止法が罪に問うているのは、人間社会において普遍的に罪とされるような行為ではなく、時と立場によって簡単に逆転してしまう性質の行為である。つまり、スパイ防止法は簡単に逆転する正義を厳罰で守ろうとする法律なのである。
スパイ防止法の内容の第一の特徴は、「外国通報目的の情報漏洩に厳罰を科す」ということだ。 2013年に制定された特定秘密保護法は、この自民党のスパイ防止法案の大半の部分をすでに実現している。両者の違いを見つけるとすれば、特定秘密保護法の罰則は最高刑期10年であるのに対して、自民党のスパイ防止法案は4条の「外国通報」の場合は、罰則が死刑と無期で著しく厳罰化されていることである。特定秘密保護法に含まれない規定は、この規定である。そして、経済安保情報の秘密保護についても、外国通報目的の漏洩は厳罰化される可能性がある。この場合、「外国」の定義が問題となる。アメリカに漏洩することが許され、中国に漏洩することが、厳罰の対象となることを、国際協調主義をとる憲法の下で、どのような法理で正当化できるのかが問われる。この点を考察する際には、経済安保法における「外部」概念が、「仮想敵国」と同義語として使われたことを踏襲する可能性があると考える。そして、外交関係や国際情勢に関する論議にまで、秘密のベールがかぶせられれば、日中の緊張緩和のために、何をすればよいのかについてのパブリックな討論すら難しくなってしまうことが予測される。近時の最大の冤罪事件といってよい大川原化工機事件は、公安警察が経済安保法の制定に前のめりになる中で立件をあせり、法解釈をゆがめ、証拠を捏造までして作り上げたものだったということも忘れてはならない。そして、経済安保情報秘密保護法が制定された今日では、大河原化工機事件のような事件が冤罪であることを明らかにすることそのものがむつかしくなった。秘密強化が冤罪を生みだし、その冤罪を晴らすための弁護活動にも大きな障壁となる。この教訓を忘れてはならない。
スパイ防止法の第二の特徴は、「セキュリティ・クリアランスによる公務員・大企業からのレッド・パージ」だ。また、参政党の神谷宗幣代表の最近の言動から、公務員、民間企業社員に対するセキュリティ・クリアランスの審査において、日本国に対する忠誠度を審査し、忠誠度の足りないものは組織から排除するような制度も想定されているのかもしれない。現状で、公務員、民間企業社員に対して実施されているセキュリティ・クリアランスにおいては、政治的な思想信条の調査などはしないし、できないとされている。このような制度は憲法の保障する思想良心の自由を侵害している。
スパイ防止法の第三の特徴は、「中央情報機関(JCIA)の設立」だ。注目されるのは、情報機関の設立が、日本維新の会と保守党という複数の政党から打ち出されていることである。JCIA=内閣情報局を、関連する機関を統合して設立することが、スパイ防止対策の決め手として打ち出される可能性がある。スパイ防止法も、情報機関も、世界の主要国にはどこにもあるということが推進する側から声高に宣伝されている。この機関に統合される可能性のある情報機関としては、次のような機関が想定される。国家安全保障担当首相補佐官、内閣情報官・内閣情報調査室、国家安全保障会議・国家安全保障局、自衛隊情報保全隊、警察庁サイバー警察局・各県警の警備公安警察部門、内閣府土地規制法事務局、経済産業省貿易経済安全保障局などだ。
スパイ防止法の第四の特徴は、「外国勢力活動透明化法案」の成立だ。「外国勢力活動透明化法案」では、外国勢力の日本国内でのロビー活動の内容や資金源、保有資産を登録し、一部を公開するとした。登録について審査・監督する独立機関を設け、制度の運用状況を定期的に点検・評価し、国会に報告する。中国、ロシア、北朝鮮関連の外交官や民間団体などが徹底的にマークされ、排外主義があおられることになる。市民団体についても、海外の市民団体と連携していると、外国勢力とみなされて監視対象とされる可能性がある。
スパイ防止法案の第五の特徴は、「インテリジェンス関係者安全保護法案」だ。これは、 関係者の安全を確保するため、仮装身分による活動を保障し、スパイを公認する制度で、情報機関の活動の秘密化がますます進み、民主的なチェックが困難になる。経済安保がらみの大河原化工機事件のような冤罪事件において、捜査官の証人尋問などが、ますます困難となる可能性がある。
すでにSNS上で、スパイ防止法案に反対する意見を公表しただけで、非国民・スパイのレッテルが張られるような状況となっている。私も、「スパイの断末魔だな」などというひどい書き込みにさらされている。石破政権が崩壊し、安倍派の勢力と参政党、国民民主、維新の会が連携するような形態の政治となれば、ここで述べたようなスパイ防止法案が臨時国会に提案される可能性がある。
反対運動のための体制をつくる時間は限られている。共産党、れいわ新選組、社民党は反対の旗幟を鮮明にしてほしい。そして、立憲民主党の心ある議員たちに共闘を迫るべきだ。
地域からも反対の声を上げ、たくさんの市民が声を上げる中で、反対の世論を国会に示していこう。
「循環取引」は「AIバブル」崩壊の前兆か
異常な株高が続くアメリカ市場
トランプ政権による関税戦争によって世界経済が混乱を極めている中、米株式市場は一時大きく下落したものの10月末まで連続して最高値を更新している。しかしその実態は極めて危うい構造となっている。米国株「割高」を示す3つのデータでは、Ⅰ 世界に占める米国の割合はGDP・25%対株式70% Ⅱ S&P500の平均PER(株価収益率)は2000年以降の平均は16・8倍対現在23倍(※米国の株価は、年間利益の23年分に相当する意味) Ⅲ GDPに対する時価総額の割合は過去30年間の平均95%対現在160%となっている。また7月末時点でS&P500指数の時価総額上位10社が同時価総額の合計に占める割合は39・5%で、過去最高となった。このうちマグニィセント7(アップル、マイクロソフト、アルファベット(グーグル)、アマゾン、メタ(旧フェイスブック)、エヌビディア(NVIDIA)、テスラの7社の総称)の時価総額は約16・7兆ドル(2・,678兆円)で、米国株全体の約29%を占めています。中でもエヌビディア(主にAI用GPU(グラフィックボード)を開発・販売している世界最大の半導体メーカー)は一時的に5兆ドル(約750兆円―日本のGDPは約600兆円)を超えた。
AI企業の株高の背景にある「循環取引」
米IT巨大テック企業の異常な株高の背景には「資金が身内でぐるぐる循環する取引」があるとされている。具体例としてオープンAI(著名なチャットGPTの研究・開発を行うアメリカの新興企業)とエヌビディア とオラクル(アメリカのソフトウェア企業)の三社間の取引がある。その仕組みは①今年9月、エヌビディアがオープンAIに最大1000億ドル(約15兆円)を投資 ②次にオープンAIはオラクルに5年で3000億ドル(約45兆円)規模のデータセンター構築を発注 ③一方でオラクルはその稼働に必要なエヌビディア製GPUチップを数十億ドル分購入調達することになっている。(図参照)要約するとオラクルはオープンAIから支払いがある前提で、エヌビディアからチップを買う契約をする。オープンAIが支払いを約束出来るのはエヌビディアの出資があるからである。つまりエヌビディアの最初の資金が2社を経由してエヌビディアに戻ることにとなっており『身内での間で資金が循環する構造』となっている。エヌビディアは3月に新規上場した米コアウィーブ社にも出資し同社のデータセンターで「保有するGPUを担保に融資を受け更にエヌビディア製GPUを買う」という信用取引の2階建てのような手法も駆使している。エヌビディアは他にも多数のAIベンチャー企業に出資し「いずれ自社の顧客になる」ための囲い込みを行っている。
IT(ドット・コム)バブル時代に酷似
エヌビディアが出資するAIベンチャー企業は「稼げる本業」がほとんど確立していないのが際立っている。チャットGPTが売りのオープンAIの今年上半期の売上高は43億ドル(約6500億円)に対して営業赤字は78億ドル(約1兆2000億円)にのぼる。「いずれ儲かる」という期待だけで多額の設備投資が行われ、日本からのNISA(ニーサ)投資など世界中から投機的資金が集まっている。これこそが異常な株高の背景であり自社株を大量に保有する創業者など一部の超富裕層が巨万の富を得ている「からくり」である。2000年初頭のITバブル当時、世界最大の通信機器メーカーのシスコステムズは、数多くの「インターネットベンチャ企業」に自社製品を買わせる資金を融資していた「ベンダーファイナンス」(供給者金融)と「循環取引」は類似している。しかし結局、インターネットビジネスは投資額を上回る収益を生み出すことが出来なくITバブルは崩壊しシスコの株価は高値から9割下落した。これはある種の「ネズミ講」でありアメリカのポンジ・スキーム(架空の運用や事業に投資したように見せかけ、後から参加した投資家から集めたお金を、先に投資した人への配当に充てるという詐欺的商法)に酷似しているとも言える。
「炭鉱のゴキブリ」は一匹ではない
米金融業界で「ゴキブリの目撃」が増えている。9月以降、アメリカでは信用力の低い個人(サブプライム層)向け自動車ローンを専門とする金融会社で経営破綻が相次いでいる。その中トライカラー社は1台の車に違法な複数のローンを紐付けて購入させる手法で販売を増加させていた疑惑があるとされる。同社に融資した米大手銀行JPモルガンは1億7千万ドルの貸倒損失を出し、金融システムへの波及が懸念されている。「炭鉱のカナリア」という警句がある。炭鉱が崩落したり、ガス爆発の危機をいち早く察知して危険を知らせるカナリアに由来し、リスクや不都合な真実を警告する格言として知られる。しかしカナリア自体には罪はない。今アメリカではカナリアを人々に嫌悪されるゴキブリ(詐欺会社)に置き換えて「炭鉱のゴキブリ」とか「ゴキブリを1匹見たら、恐らく他にもいる。この件は誰もが警戒すべきだ」と市場崩壊の予兆とする見方が出ている。
最後にエンゲルスの指摘を書き写して警鐘としたい。
「この産業上の速度は駆け足に変わり、更に速度を速めて、ついにふたたび産業、商業、信用、投機の本式の障害物競馬の手ばなしの疾駆となり、最後に命がけの跳躍をやったのち、またもや―恐慌の濠のなかにゆきつく。…恐慌においては社会的生産と資本主義的取得のあいだの矛盾が暴力的に爆発する。」(「空想から科学へ社会主義の発展」ME全集19巻216P) (関 孝一)
風雨に負けず、原発廃炉の訴え!
四国でピースサイクル
四国電力伊方原子力発電所3号機の運転をやめ、原子力からの撤退を求める要請行動を、10月25日(土)におこないました。
この行動は1989年から毎年続けている、例年秋に行なわれる伊方集会に合わせたピースサイクル四国の取り組みで、大分ピースサイクル(以下PCと略)、島根PC、広島PC、四国PCの参加者7名でおこないました。
但し、今年の第39回伊方集会は11月2日(日)におこなわれることになり、各地で開催が予定される憲法集会と重なったので、前倒ししての単独行動となりました。
当日は悪天候の予報もあり、例年の松山港からの走行を短縮して双海シーサイド公園からに変更して出発しました。双海に向かう途中の松山市内にある四国電力原子力本部原子力保安研修所前ではスタンディングの抗議行動をおこない景気をつけました。
双海からは自転車3台と伴走用軽乗用車1台、軽トラ2台で道中街宣をしながら伊方原発を目指しました。しかし、途中から雨が降りだしたので残念ながら自転車走行を断念し、軽トラに載せて伊方原発ゲート前に行きました。
要請時間の午後4時のゲート前は風と雨が激しく、今までで一番と思われる最悪の状態の中で要請文を読み上げて手渡しました。四国電力からは総務部用地担当課の曽我部課長が一人で出てきて対応にあたりました。要請内容について具体的な回答を求めましたが、「要請は会社へ伝えます」と答えるに留まりました。
その後、参加者で眼前の原発群に向かって「核と人類は共存できない!」「原発は今すぐ廃炉!」などのシュプレヒコールをおこない、要請行動を終えました。
今回の要請事項は3点
① 伊方原発3号機の運転を再開せずに、運転をしないことを求める ② 使用済み核燃料の乾式貯蔵中間貯蔵の使用をしないように、原発を廃炉にすることを求める ③ 原発からの撤退をし、自然再生エネルギーへの転換を求める、です。
大雨の中での要請行動を貫徹した思いもあり、何か少しはこちらの気持ちが伝わるようにと願いながら帰路に着きました。
外国人労働者の権利擁護! 排外主義の根絶!
日本労働弁護団は11月7日~8日の第69回全国総会(福岡県博多)で、「外国人労働者の権利擁護・排外主義の根絶を求める総会決議」など9つの決議を採択した。
外国人労働者の権利擁護・排外主義の根絶を求める総会決議
2024年6月14日、参議院において出入国管理及び難民認定法(入管法)の改正法案と「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」(育成就労法)が可決・成立した。
育成就労法は、2027年4月1日に施行され、本法の施行により、これまでの技能実習制度は完全に廃止される。代わりに、新たに人材確保と人材育成を目的とする「育成就労制度」が創設され、同制度による外国人労働者の受入れが始まることとなる。
「育成就労制度」においても、転籍の要件が残存していること、中間搾取の問題が根本から解消されていないこと、家族帯同が認められていないことなど、前身である技能実習制度について当弁護団が指摘してきた諸問題を根本から解決するものとは到底言えず、改正法案提出後にも反対の声明を発しているところである。
厚生労働省の発表によると、2024年10月末時点において、日本で働く外国人は約230万人となり、過去最高を更新し続けている。日本社会はこれまでも多くの外国人労働者に支えられてきたところではあるが、最近では、接客業や介護に従事する外国人労働者が増加していることで、サービスの提供を受ける立場として外国人労働者を身近に感じるようにもなってきた。日本社会における労働人口が減少していく中で、外国人労働者によって人手不足が補われている実情は明らかであり、今後も外国人労働者数は増加することが見込まれる。ところが、外国人労働者に対する不当な権利制約や中間搾取の放置をしている現状では、日本国内の産業が人手不足によって近い将来、維持できなくなる。単に「外国人材」などと労働力として扱うのではなく、本邦で共に生きる生活者として受け入れるための制度作りが必要である。そのためには、2027年施行に向けて議論されている「育成就労制度」はもちろんのこと、特定技能制度の見直しをすることが急務である。
ところが、国政選挙や地方選挙で複数の政党が排外主義を容認する政策を掲げたり、特定の人種を対象にしたヘイトスピーチが行われたりするなど、日本社会全体で排外主義の台頭が見られるところである。具体的には、2025年の参院選においては「日本人ファースト」なるフレーズが声高に叫ばれ、SNS等でも急激に広がっている。「日本人に比べて在留外国人が不当に優遇されている」「不法滞在者が増加している」「在留外国人の犯罪が増えて治安が悪化している」といった事実と異なる言説を用いて、在留外国人に対する差別を煽るような行動も見られる。しかも、このような行動を、国会議員・地方議会議員が率先して行っている様子も見受けられる。排外主義の台頭は、地域住民の不安感や経済・難民問題についての国の無策など様々な社会問題が複雑に絡み合っているが、排外主義の行き着く先は、社会の分断であり、その矛先は次なる弱者へと向けられる。日本社会で共に働き、共に生活し、日本社会を支えている外国人労働者を敵視し、差別するような言説は、断固として容認できない。
日本労働弁護団は、日本で働く外国人労働者が、労働者としてだけでなく、人として、また生活者として、日本において安心して暮らすことができるよう受入れ制度の見直しを求め、また、外国人労働者の権利が保障される受入れ制度を求めるとともに、排外主義を煽る言説や政策には断固として反対することを誓い、ここに決議する。
2025年11月8日
日本労働弁護団第69全国総会
今月のコラム
不屈のジャーナリスト精神-映画「非常戒厳前夜」を観る-
昨年12月3日夜の韓国ユン・ソンニョル大統領による戒厳宣布は衝撃的だった。200万人規模のデモが各地で重ねられ(凍てつく雪の日地べたに座り込んだ人々の姿が記憶に新しい)、12月14日弾劾可決、今年1月15日逮捕、1月26日「内乱首魁」容疑で起訴、4月4日には大統領罷免、裁判が始まった。正直言って日本での報道では経緯がよく理解できず唐突感があった。その背景を説得力を持って示してくれたこの映画の原題は「押収捜索-内乱の始まり」、韓国では4月23日に劇場公開、日本では9月6日に「超緊急公開」された。
なぜ非常戒厳に至ったか
板垣竜太同志社大教授によれば(パンフレット)、ユン・ソンニョルは「民主党を中心とした野党が国会を掌握し、意のままに国政運営ができないことに苛立ち、これを『北韓』に従う『反国家勢力』の策動によるものだという陰謀論にとらわれていた。そして、野党が圧勝した2024年4月の国会議員選挙が、『反国家勢力』によって操作された不正選挙だったと信じ込んだ」。ユンは「自身がイ・ジェミョンに辛勝した2022年3月の大統領選挙の段階から、既にそのような『工作』があったとみていた。大統領選直前にあったニュース打破(タパ)による釜山貯蓄銀行不正融資疑惑(担当検事だったユンが事件のもみ消しを図った疑い)に関する報道は-略-そうした『工作』の一環だとみなされた-略-ニュース打破はスケープゴートにされた」。ユンらによって「企てられた非常戒厳は、こうした批判的メディアと野党を一掃する一大逆転劇として構想され、見事に失敗したのだ」。トランプのミニチュア版の感がある(もっとミニチュアにしたのが安倍晋三と高市早苗だろう)。
ニュース打破弾圧の背景
政権は着々と公共放送の掌握を進めていた。韓国には公共放送として政府が資本金を全額出資するKBS(韓国放送)と準公営のMBC(文化放送)、さらにKBSの受信料と合算して徴収しているEBS(教育放送公社)がある。放送と通信に関する規制と利用者保護などの業務を行う中央行政機関が放送通信委員会、公共放送の理事会の人事権を持つ。放送通信委員会が任命した理事によって構成される放 送文化振興会はMBCの大株主である。ユンは放送通信委員会の委員長任命権を使ってメディアに対する政治介入を繰り返した。①KBS、EBSテレビ受信料の分離徴収強行(2022年7月) ②ユン大統領が米バイデン大統領にスラングを使う場面をMBCが報道、大統領取材からMBC記者を排除(2022年9月) ③TBS(地方公共放送)に対しソウル市長が偏向報道だとして市議会で予算支援を廃止する決定 ④放送通信委員長解任、大統領寄りの人物を指名(2023年8月) ⑤通常の手続きを無視しMBC理事長、KBS理事長を解任 ⑥検察がニュース打破と2名の記者自宅を家宅捜索、JTBC(ケーブルテレビ・衛星向けに配信するテレビ局)家宅捜索(2023年9月) ⑦フェイクニュース対応機構設置(2023年9月)⑧公企業が出資する24時間ニュースチャンネルYTN民営化強行(2023年10月) ⑨放送通信審議委員会がニュース打破の報道を引用した放送局に史上最大の課徴金(2023年11月) ⑩KBS社長を解任、放送局経験のない新社長の下で大混乱(2023年11月)、翌年4月の就任式では「公平公正ではなかった」とYTN社長とともに国民に謝罪 ⑪「ニュース9」などメインニュースのアンカー交代、主要な時事番組廃止など大規模な人事異動を強行しKBSを掌握(2023年11月) なお、ユン政権は戒厳令宣布に当たって14人の逮捕リスト(201万人が視聴するYouTube番組「ニュース工場」のアンカーも含む)を作り、射殺の指示まで出ていたという(以上パンフレットの岡本有佳さんの解説より)。
ユン大統領の逆鱗に触れたニュース打破
ニュース打破はイ・ミョンバク政権のメディア介入によって公共放送を解雇されたり辞職したジャーナリストが中心となり、新聞・放送・出版・印刷を横断する産業別労組「全国言論労働組合」が支援して立ち上げた調査報道専門の独立メディア。2013年に非営利民間団体探査ジャーナリズムセンター「ニュース打破」として設立。企業からの広告は取らず、現在、約6万名の会員の支援で運営されている。ニュース打破はユンの検察総長就任の前からユン及び周辺の悪事を暴露し続けてきた。2019年には検察総長候補ユンのウソ暴露、史上初の検察特別活動費など公開行政訴訟を起こす。2020年にはキム・ゴンヒ(ユンの配偶者、今年8月逮捕)のドイツモーターズ株価操作疑惑を報道。2021年、リベラル派の京郷新聞釜山貯蓄銀行捜査の際ユン主任検事が容疑者を見逃した疑惑を報道。2022年、大庄洞Xファイル(釜山貯蓄銀行捜査の際ユンが事件“解決”に動いた証拠となる音声ファイル)報道開始。2023年、検察の特別活動費訴訟に勝訴、放送通信審議委員会に「ニュース打破引用報道」処罰の請願が殺到(自作自演)、与党国民の力代表「死刑に処すべき国家反逆罪」発言、検察、大統領選挙介入世論操作特別捜査チームを編成、ニュース打破、JTBC、ハン記者・ポン記者の自宅を家宅捜索、ニュース打破キム・ヨンジン代表の自宅を家宅捜索 2024年、検察キム代表とハン記者を「ユン・ソンニョル名誉毀損」で起訴、ポン記者を起訴…以降裁判は続き、検察の起訴状は3回も訂正され、70頁以上だったものが30頁になった。
ニュース打破を孤立させない!
映画は一連の経緯を丹念に追う。家宅捜索の場面は緊迫感がみなぎる。バールや斧まで用意して捜索を行う検事・捜査官はあちこちに立ち入るので一人では対応しきれない。弁護士が駆け付け懸命に押し返す。韓国の名誉毀損罪の適用には被害者の意思確認が必要、ユン氏の意思確認はしたのか?検事から弁護士の発言を控えるよう言われると、「検察が私に命令するのか?」と食い下がる、検事は次第に意気阻喪していく。後で礼状の捜索対象にパソコンが含まれていないのにハードディスクを取り出したことが判明(損害賠償請求を提訴)。
ハンギョレ新聞等主要メディアとニュース打破のような独立メディアが共同取材チームを結成、さらにメディアと市民の力を合わせた言論の自由を守れの運動が展開され、ニュース打破を孤立させない。調査報道ジャーナリストの世界的ネットワークOCCRP(組織犯罪と腐敗報道プロジェクト)もニュース打破と連携している。 (新)
せんりゅう
金と株どんどんあがるどん格差
タカイチで資本家時代5万超
ウソ吐きアベの踏襲…🤑
吸血鬼のごとく献金吸います
「力による平和」憲法しらぬサナエ節
経済侵略まもる武力予算
ゝ 史
2025年11月
複眼単眼
安倍路線を超えて右傾化する高市首相
参院選での自公与党の敗北と、自民党総裁選での高市早苗総裁の当選、公明党の26年ぶりの連立離脱、自民党と維新の会の閣外協力もどきの少数与党連立政権と、相次いだどたばた劇で異常な物価高などの政治危機をよそに3カ月ぶりの政治空白にさらされた。そのうえ、ようやく10月21日からはじまった第219回臨時国会では、首相所信表明演説や各党代表質問を通じて、各方面から危惧されていた高市政権の極右路線があらあわになった。
問題点は沢山あるが、今回は「台湾有事」に関する首相周辺の発言を取り上げたい。
安倍晋三路線の継承を公言する高市首相は、日米同盟の下、「台湾有事」を口実に中国包囲を念頭に置いた「戦争する国」への急速な強化と準備を推進する構えだ。
台湾有事とは「中国による台湾併合戦争」を想定したもので、日本政府は1974年の日中国交回復以来、公式には台湾は中国の一部(1つの中国)とみなし、台湾海峡両岸の対立は「基本的に中国の国内問題」とみなしている。
日本が台湾併合をめざす中国軍を攻撃すれば、国際的には「日本による中国攻撃」とみなされ、日本は中国の攻撃対象になり、日中全面戦争が避けがたい。
中国は「平和統一に最大限の努力を尽くすが、武力行使の放棄は決して約束しない」という立場だ。平和統一を目指すが、武力の行使を放棄しないのは、台湾独立の動きが具体化する場合とそれを口実にした米国の軍事介入がありうるからだ。このところ、米国や日本の一部から繰り返し「台湾有事の危機」が喧伝されてきた。日本では敵基地攻撃能力をもった長射程ミサイルの全国的な配備など異様な軍拡と軍備拡張の口実にされている。しかし、先般の米中首脳会談でも米国から台湾問題は触れられていない。トランプ大統領といえども、自ら台湾でことを構えようとはしていない。ああきらかに高市首相の姿勢は前のめりにすぎる。
高市首相は11月7日の予算委員会で安保法制のいう「存立危機事態」について、従来の内閣が触れなかった「台湾有事」にまで踏み込んで言及した。「(中国による台湾進攻で)武力攻撃が発生したら(日本の)存立危機事態にあたる可能性が高いと私は考える」とこれまでの政府見解を踏み越えた。従来は存立危機事態の例は「邦人輸送中の米艦防衛」と「ホルムズ海峡の機雷除去」が例示され、台湾有事は想定されていなかった(2015年の安保法制における安倍首相らの説明)。高市首相はこれを突破した。質問した立民の岡田克也議員は、おどろいて「あんまりかんたんに武力行使をいうべきではない」と反論したという。
こうした高市首相の言辞は、それでなくともこのところ東アジアで日中の軍事的緊張が高まっているなかで、事態を悪化させ、日本社会の軍事化の推進に利用する狙いをもつものだ。
日中が戦争をはじめたらどうなるか。11月5日のれいわの高井崇志議員が問い質した。「2月の衆院予算委で中谷元防衛相(当時)が中国のミサイル攻撃にはイージス艦やPAC3で全て撃ち落とすと答弁した。日本は60基の原発を保有している、中国は2000発のミサイルを保有しているといわれている。もし戦争になったらこれら全てを撃ち落とせるのか」と質問した。
首相の答弁は「原発に対する弾道ミサイルによる攻撃に対しては、イージス艦とPAC3を機動的に展開して対応する。加えて迎撃能力向上と、反撃能力保有でミサアイル攻撃を抑止する。また来年中の安保3文書の見直しをすすめる」と答弁した。これはほとんど児戯に類する答弁だ。高市首相は日中問題をこの間の日本政府の基本的立場である、①
日中共同声明(1972)、② 日中平和友好条約(1987)、③ 平和と発展のための友好協力パートナーシップの構築に関する日中共同宣言(1998)、④
「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明(2008)などに基づいた平和共存的路線をすすめ、「台湾有事」の勃発を阻止するよう努力すべきだ。 (T)
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