人民新報 ・ 第1455号<統合548号(2026年3月15日)
目次
● イラン侵略戦争ただちに止めろ
日本の参戦国化を許すな
● 「積極財政」=高市政権に立ちふさがるのは、当面、為替・債権市場の反乱か ㊦
● ロシアのウクライナ侵略に抗議
● とめよう原発3・7全国集会
8500人が結集
● 鹿児島からの報告 / 衆院選と脱原発
● 3・1朝鮮独立運動107周年
大軍拡と戦争国家の道、排外主義反対! 今こそ東アジアの平和な未来を!
● せんりゅう
● 複眼単眼 / 小が大を飲み込んだ中道新党
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イラン侵略戦争ただちに止めろ
日本参戦国化を許すな
内外情勢は急変している。世界は各地に戦火がひろがり、核戦争の脅威も増大している。昨年、トランプ第二期政権と高市政権が発足したが、これらの政権はより危険な状況をつくりだそうとしている。だが、トランプ政治が具体化されるにつれてその矛盾は鮮明となり、批判の声は高まってきている。トランプに追従する極右高市政権もおなじ道をたどることだろう。いま、多くの人びとの反戦平和・社会変革運動の強化・拡大が求められているが、すでにその兆しは見えはじめている。
極右政策を強行する高市
高市自身の「台湾有事=存立危機事態」発言などで窮地に陥った状況での自己都合解散・総選挙は、「国論を二分するような政策で審判をあおぐ」としながら争点隠しの逃げの姿勢をとりつづけた。欺瞞的な与党の策略と野党の対抗軸の曖昧化・準備不足によって自民党が戦後初の「単独3分の2超」を獲得した勢いを背景に特別国会での首相演説は「高市カラーの全面展開」となった。責任ある積極財政と外交・安全保障・インテリジェンス機能の強化、そして「どのような国を創りたいのか、その理想を物語るのが憲法」と述べ、改憲への意欲を明確化した。
本年中に前倒し改定する「安保三文書(国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画)」は、中国を仮想敵国と想定し、ドローン・AIなど新しい戦い方への対応など継戦能力の強化、サイバー・宇宙領域の強化、そのための防衛費の増額数値目標を柱とする。くわえて港湾・空港・通信網などを有事に活用できるよう国内インフラの防衛利用、殺傷兵器など防衛装備移転の制限の撤廃である。高市政権は、長射程の「スタンド・オフ・ミサイル」を熊本市の陸上自衛隊・健軍駐屯地に配備を始めた。
これらの政策は、先制攻撃につながる敵基地攻撃能力の保有である。大軍拡は、すでに国の財政が破綻している状況をいっそう悪化させ、増税をもたらし、国民生活を圧迫することになるのは必至だ。なにより国会審議・民意を無視した決定であり、憲法違反であることは明白だ。
泥沼にはまるトランプ
11月の米国中間選挙をまえに、インフレ、関税政策の最高裁の違憲・無効判決、強引な移民政策、エプスタイン文書の公表などトランプ政権批判の高まりは、岩盤支持層といわれてきたMAGA派を分裂させるまでにいたっている。昨年11月のニュージャージー州およびバージニア州知事選挙、ニューヨーク市長選挙での共和党候補の敗北などトランプにとって前途は暗いものになってきた。1月のベネズエラ攻撃とマドゥロ大統領夫妻拉致につづく、イランへの大規模攻撃は、苦境からの脱出をもくろむトランプの賭けであり、イランや中東の人びとに多大な犠牲を強い、世界経済にも深刻な影響を及ぼしている。
2月28日、イランと核問題の交渉中にある米国は、突如、騙し討ち的に、イスラエルとともにイランの軍事施設、指導部、核関連施設を一斉攻撃し、最高指導者ハメネイ師を含む多数の高官を殺害した。直ちにイランの報復攻撃が始まった。その後も、米国、イスラエルはイラン空爆を繰り返し、多くの民間人を含む多数を殺害し続けている。
イランは湾岸にある米軍基地などをミサイル・ドローン攻撃すると共に、石油輸送の要衝・ホルムズ海峡の封鎖をおこなった。トランプは、早期勝利を達成しようとしたが、逆に、長期戦の泥沼に陥らざるを得ない局面に来ている。
トランプの戦争は、原油・LNG価格を急騰させ、世界経済にインフレ圧力と景気減速を同時にもたらすスタグフレーション型ショックとなる可能性を高めている。これは米国のインフレを激化させるもので、トランプの中間選挙対策には大きなマイナスとなっている。
苦境を脱するつもりの賭けは、トランプのもくろみを打ち壊そうとしている。だが、トランプは、戦争を止めるつもりはさらさらない。そして「逆転」のためにやることは、同盟国・同志国への負担の転嫁である。
原油高騰に直撃される日本
トランプの期待するのは、高市の日本である。ここからかぎりなく米国のための力を引き出す舞台が、3月19日に予定されている高市訪米と日米首脳会談の場である。
だがその日本はかつてない厳しい状況に直面している。日本は中東原油への依存度が高く、第一生命経済研究所レポート(3月6日)は次のような指摘を行っている。2026年度の実質GDPをマイナス0・38%(標準的な悪化予測)から、最悪のシナリオでは、マイナス1%近く押し下げる可能性がある。原油価格(WTI)が現在の90ドル台から130ドル、あるいは150ドルまで上昇した場合、日本から海外へ流出する富が増大し、国内の景気が急速に冷え込む。ガソリン代は補助金がなければ200円超、悲観シナリオではさらに上昇。電気・ガス代は燃料費調整額の上昇により、標準家庭で年間約1万円の負担増が見込まれる。その結果、実質賃金がマイナス転落する。減産と物流停止など実体経済への波及は大きい。その他の研究の予想もおしなべて深刻な影響は免れないとしている。
政府は、石油備蓄について、約254日分(国家備蓄(146日分)、民間備蓄(101日分)、産油国共同備蓄(7日分))の約8ヶ月分の在庫があり、また、LNGは約3週間分があると言っている。だが、それも短期間の対処しか出来ないだろう。
伊勢湾日米海軍共同訓練
米国・イスラエルのイラン攻撃について、日本政府は現時点でイラン情勢を「存立危機事態」とは認定していない。日本政府は、ホルムズ海峡の状況を「物理的・法的な完全封鎖」ではなく、民間の自主的な通航見合わせによる「事実上の停滞」と位置づけた。また、イラン側も「公式には閉鎖していない」との主張を繰り返しているためとしたが、イラン革命防衛隊が「ホルムズ海峡を封鎖」と声明したと報じられ、海峡は「事実上の封鎖」状態にあり、米国の同盟国同志国の船舶も攻撃を受け始めた。
政府と主要マスコミが、石油備蓄が切迫し、国民生活に回復不能な損害が出るなどと強調し始めたら、「存立危機事態認定の兆候」と見るべきだろう。 政府が「存立危機事態」と認定した場合、自衛隊による機雷掃海や米軍への後方支援など、武力行使を伴う活動がはじまる。また、イランを「敵対勢力」と見なせば、イランとの関係は断絶し、自ら報復を招くことになる 。
「存立危機事態」認定となった場合の自衛隊の具体的な行動としては、機雷掃海(海上自衛隊の掃海部隊が派遣)、船舶の護衛(護衛艦の派遣)、米軍への後方支援(給油・整備・輸送、捜索救助)などだが、今年の2月1日~10日には海上自衛隊と米海軍が伊勢湾で大規模な機雷戦・掃海特別訓練を実施した。目的は、①海上自衛隊の機雷戦能力の向上、②米海軍との相互運用性の向上であり、主要訓練項目は、機雷戦(機雷敷設、機雷掃海、機雷掃討及び水中処分)となっている。参加部隊は、海上自衛隊から訓練統制官に掃海隊群司令、艦艇15隻(掃海母艦×1隻、掃海艦×2隻、掃海艇×12隻)、航空機1機(MCH-101、水中処分員(横須賀、舞鶴、大湊、沖縄水中処分隊)。米海軍からは、訓練統制官に第5機動水中処分隊派遣隊長、 水中処分員、UUV操作員等(第5機動水中処分隊)などが参加し、ホルムズ海峡などでの実戦を強く意識した演練であったといわれる。
「火中の栗」日米首脳会談
こうしたなかで行われる日米首脳会談では、米国側の一方的な要求に高市・日本政府がどう対応するかが注目されている。
イラン攻撃からまだ2週間、戦火が拡大し、ホルムズ海峡の封鎖が「事実上の常態化」し始めたばかりのこの時期に、トランプ大統領と対峙するのは極めてリスクが高く、まさに「火中の栗」を拾いに行くタイミングといえよう。
トランプが突きつけてくると予想される要求の柱は、軍事的には、自衛隊の「実力行使」を伴う参加による「米軍の負担軽減」と「日本による直接的なリスク負担」であろう。経済面では、対イラン・対中「経済封鎖」への同調、米国内への「1兆ドル規模」の巨額投資などだろう。いずれも「アメリカ・ファースト」そのものであり、高市はそれに「ミー・トゥー」とばかりに完全同意するのだろうか。
基礎的大衆運動からの再建
総選挙を前に、立憲民主党と公明党が「中道改革連合」を結成した。政治の軸心が全体に大きく右ブレしている中での「中道」は、自らを一層右傾化させ、自民党との対抗軸を失わせ、争点なき選挙戦をうみだし、自民党の大勝をもたらしてしまった。これまでの野党と市民の共闘強化の段階から、極右高市政権と闘う戦線を再編強化すべき局面に入った。
反撃はなにより大衆的な運動の高揚を目指して実際の活動の展開から始まる。自民党政権打倒・政権交代のためには、はっきりとした対抗勢力の強化が必要であり、外交・安保・憲法や原発、賃金、社会保障などの面で確固たる立場を鮮明にうちだし、対抗勢力の形成・強化をはからなければならない。
2月22日、市民連合が主催して「信じられる未来へ 希望の新しい選択肢 市民と野党の共同アクション」を開催し、会場の有楽町イトシア前は約1000人の参加者で埋め尽くされた。この日、「『“信じられる未来”へ――市民連合』 からのメッセージ」(三面に掲載)が発表された。 その後も国会前をはじめ各地・各種の集会などの行動が展開され、行動には新しい参加者も増えてきている。
3月10日には、市民団体「WE WANT OUR FUTURE」と憲法9条を壊すな!実行委員会のよびかけで、国会正門前の平和憲法を守るための緊急アクションが行われ、8000人が結集して、対高市など右派勢力による改憲策動を阻止しようとシュプレヒコールをあげた。
今後、高市政治の結果、生活コスト増・税負担増・社会保障の不安は一段と深刻化し、戦争の危険が増大する。日米首脳会談では高市の戦争政策がもう一段あきらかになるだろう。市民運動・労働運動を強化して、高市超反動政治に対抗し、打倒していく反戦平和民主の潮流を創り出していこう。
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2026・2・22
「“信じられる未来”へ―― 市民連合」 からのメッセージ
私たち市民連合は、2015年に国会で安保法制が強行採決され、この国の立憲主義が根底から脅かされたことに対して、きわめて広範な市民が抗議し結集する中で誕生しました。それから約10年、自公政権はさらに歯止めなく憲法の平和主義と専守防衛原則を逸脱し、戦争準備に突き進んできました。沖縄南西諸島をはじめとする軍拡も加速しており、今月の総選挙では、さらなる軍拡路線と改憲を掲げる自民=維新(高市)政権が地滑り的勝利をおさめました。いま、平和憲法の戦後最大の危機が訪れています。
私たち市民連合は、この10年、「市民と野党の共闘」による政権交代を訴え、暴走する自公政権に対して、主に国政選挙を通じて異議申し立てを行ってきました。それまで自公に対抗する立憲野党勢力は、選挙における「共闘」の経験がほとんどなく、それは国政における「一強多弱」状況の一因となっていました。しかし野党が協力することで、多くの選挙区で次第に与党を追いつめることができるようになり、その経験も全国各地で共有され、地域ごとのさまざまな実践も実を結ぶようになりました。2024年の総選挙、そして2025年の参議院選挙で、与党が大敗し、戦後初めて衆参両院で少数与党に転落した背景にも、明らかに市民連合が追求した野党間の政策合意と、それに基づく選挙協力、そして地域ごとの共闘のための地道な努力がありました。
しかし、争われる政策も大義もない、抜き打ち国会解散によって実施された先の総選挙では、準備不足の立憲野党は壊滅的な敗北を喫しました。高市氏の「日本列島を強く豊かに」というスローガンは、実際きわめて抽象的で、その具体的な根拠は薄弱だったにもかかわらず(あるいはむしろそれゆえに)、野党、特に新たに結党された「中道改革連合」は、これに対抗する魅力的な世界像を打ち出すことができませんでした。さらにまた、それまで立憲政治を守るために「市民と野党の共闘」を支持していた多くの市民にとって、平和憲法、沖縄、原発といった基本政策における同党の変節ぶりは、権力追求の策に溺れた、市民置き去りの、理念なき政治として映りました。
このように選挙をするたびに右傾化が進む政治状況には、さらに大きな背景があります。 世界的に、「今だけ、カネだけ、自分(たち)だけ」という新自由主義的な社会病理が拡大し、格差是正や分断克服のための「政治」の機能は弱まり、民主主義は軒並み危機に瀕しています。代わりに、排外主義や国家主義、21世紀版の「ファシズム」や反フェミニズム・反知性主義が大手をふるって跋扈するようになり、「勝てば官軍」、「やったもの勝ち」というむき出しの〈力〉による政治が台頭しています。さらに、「世界終末時計」が警告するような核戦争の危機や年々深刻化する気候危機などをふまえれば、私たちは今や根源的な〈複合危機〉に直面しているとも言えます。
一方、このような地球大の危機の時代において、この国の政治は依然として「タコツボ」から脱することができません。政府や政党、多くの既存組織も、自分たちの生き残りのために精一杯で、来るべき国家像や社会の包括的なあり方を論じる余裕もありません。企業や大組織、一部の富裕層だけが政治を左右する「裏金政治」は、日本の政治をもっとも歪めてきた構造的な政治課題であるにもかかわらず、特に先の総選挙で高市政権の「裏金議員」が大量当選したことで、その克服への道は依然として塞がれたままです。政府は、当面の軍事的脅威に相も変わらず、ただ軍拡と軍事同盟への依存で対応し、またエネルギー高騰にも原発の再稼動で応じるだけです。このような真の展望を欠いた、その場しのぎの政治は、結局はただ未来世代にその矛盾を先送りするだけです。
このような未来を展望できない政治の下で、常に約半分の有権者は選挙に行かず、多くの若者は政治に絶望しています。若者たちの多くは、生活に追われ、未来そのものを信じることができずにいます。もはや既存の政治勢力に希望を失った少なからずの有権者は、立憲野党にも見切りをつけ、新興の「一度に何か変えてくれそうな」指導者に一縷の期待を託すようにもなりました。日々不安の海の中で溺れながら生きる私たちにとって、たとえば国を「強く豊かに」すると高らかに宣言する新たな指導者に、自らのはかない夢を託すようになることはむしろ自然かもしれません。
しかし、「信じられる未来」は、誰かに与えられるものではありません。既存の組織の、既存のメニューからただ〈消費者〉として選択するだけでは、危機の克服は困難です。私たちは「主権者」として、まさに政治の〈生産者〉となる必要があります。私たち市民連合は、今後あらゆる既存の組織と垣根をこえた対話をしながら、本当に信じるに足る未来を地域から構想したいと思っています。この国の平和を希求する市民が本当に求めるものを草の根から共に見いだし、政治に反映させたいと思います。
不安と不信の世界から「政治」を取り戻すために、私たち市民自身の手による「信じられる未来」の構想が必要です。安保法制から安保関連三文書、さらにはスパイ防止法や緊急事態法の設置をはじめとする憲法改正、あるいは核保有の議論に至るまで、今後政府は国会の絶対的な数の力で、再び戦争国家への道を突き進むでしょう。確かに、この度の選挙で、国会内においてそれを押しとどめる力はきわめて限られたものになりました。しかし私たち市民は、平和の砦(とりで)を再び路上から築き上げることができます。けっして忘れてはなりません。歴史の作り手は、いつも私たち民衆でした。
ここに私たち市民連合は、自らを新たに「“信じられる未来”へ――市民連合」と名づけ、あらゆる試行錯誤を積み重ね、みなさんとご一緒に未来を構想し、新しい市民政治の可能性を探求したいと思います。
「積極財政」=高市政権に立ちふさがるのは、当面、為替・債権市場の反乱か ㊦
関 孝一
⑧アメリカ・イスラエルによるイラン侵攻の衝撃
2月28日にアメリカ・イスラエルはイランと核開発問題協議が継続中にも関わらず大規模な爆撃を開始し、最高指導者のハメネイ師を殺害した。これは国際法を無視する主権国家に対する侵略行為であり国連憲章違反であることは明白である。以降アメリカ・イスラエル両軍のイラン全土へのミサイルや空爆による攻撃は激化している。それに対してイランは「協議継続は騙し討ち」と「最高指導者の殉教」を大義名分としてイスラエルはじめ中東全域に及ぶ米軍基地への弾道ミサイル・ドローンによるこれまでにない規模での反撃を続けている。トランプ政権の戦争目的は当初、イランによる「差し迫った脅威」を理由としてイランのレジームチェンジ(体制転換)を公然と掲げていた。しかしイランは対抗措置としてホルムズ海峡の通行停止を実行に移したことで世界のエネルギー市場で過去最大級の大混乱が始まった。原油価格は侵攻前の1バーレル60ドル台が一時119ドルに急騰した。ホルムズ海峡では世界の全原油輸送の約20%以上がこの狭い水域(幅約33km)を通過しておりイランによる封鎖は世界経済に大きな影響を与えている。
⑨ホルムズ海峡封鎖による原油の影響
日本へ中東産原油を輸送するタンカーは片道で約3週間(20~25日間)かかるとされる。日本は原油輸入量の約9割を中東に依存しておりこの封鎖が長期化すれば3月下旬以降、輸入の激減が表面化する可能性がある。すでに国内のガソリン・軽油代は上昇しており昨年末廃止されたガソリンの軽減税率分25.1円の効果は薄れ1リットル200円台も想定される。その影響は燃料代に留まらず基礎化学品エチレンの生産設備を止める可能性がある。日本はエチレンの原料となるナフサ(粗製ガソリン)の約6割を輸入しており、中東産ナフサは輸入の約7割を占め国内在庫は20日程度とみられる。ナフサを熱分解してエチレンやプロピレンなどを生成しプラスチックの原材料として自動車や家電、食品の包装材など幅広い製品の原料となっている。中東からのナフサ供給の制約の影響で日本企業などの販売先への供給義務を免れる「フォースマジュール(不可抗力宣言)」を出す海外企業が出始めている。今後石油製品の川下である食料品・医療用品・日用品などの幅広い生活必需品の品不足と値上がりが現実化しそうだ。日本には石油の国家備蓄が約146日分、民間備蓄が約101日分、他約7日分、合計で約254日分あるとされる。ただし、民間備蓄は原油から石油関連製品を製造する過程にあるものであり、緊急事態に備えた備蓄でなく通常の在庫とすべきものである。この民間備蓄を除けば153日分の約5か月分となるがその内政府が緊急用として約90日分を確保しているとされ国内では余裕があるとは言えない。
⑩中東産天然ガスの途絶
3月初旬、カタール国営カタールエナジーはイランによるドローン攻撃を受け、世界最大級のLNG(液化天然ガス)輸出施設での生産を一時停止し、不可抗力宣言(フォース・マジュール)を宣言した。日本のカタールからの輸入シェアは約5%程度であるが、カタールは米国に次ぐ世界第2位のLNG輸出国であり生産量は世界供給量の約20%に相当する。そのため欧州の指標ガス価格が40%急騰している。
日本は火力発電の約3~4割をLNGに依存しており、在庫はわずか2~3週間分。長期的な供給途絶が生じた場合、電力不足(ブラックアウト)のリスクや電気料金が高騰する可能性がある。国民民主党の玉木は「動かせる原発はすべて動かすべきだとし、テロ対策施設(特重施設)の審査ルールを柔軟化」などと危機に便乗した言動を行っている。また天然ガスは窒素肥料(アンモニアや尿素)の原料として必須であり、世界最大級の尿素・アンモニア生産・輸出拠点であるカタールの供給がストップしていることは、これから北半球の春の植え付けのため肥料の需要が高い時期と重なる。世界的な肥料供給網が寸断されたことで、肥料価格が急騰しており日本への影響も免れない。
⑪ホルムズ海峡封鎖は世界的経済危機を招く
トランプはイランに「無条件降伏」を要求しているが、それは今後7月の米国建国250周年と秋の中間選挙を控え早期停戦で原油高=インフレを止める必要に迫られているからである。しかしイランは徹底抗戦の構えを崩していない。トランプは長期戦か停戦かの深刻なジレンマに陥っている。この戦争が長期化する場合、原油・天然ガスの高騰による世界的物価高が拡がるのは避けられない。高い支持率を誇る高市政権は、この原油高・インフレの対応を迫られることになる。
これまで通りのガソリン等の補助金増額などは赤字国債増発となり一段の物価高に繋がる。また原油高は日本の貿易収支の大幅赤字となり円安に歯止めがなくなる。円安はすべての価格上昇を招く。その中で高市政権は無責任な「積極財政」路線を押し通すことが出来るのか。生活を直撃される市民・労働者は暮らしを守る行動を起こさざるを得なくなる。アメリカ・イスラエルのイラン侵攻の影響は中東にとどまらず、原油高=インフレによる通貨安・金利高・株式暴落などの世界恐慌勃発に及ぶ可能性がある。
ロシアのウクライナ侵略に抗議
ロシアがウクライナへの侵略を始めてから4年となった2月24日、日本平和委員会と憲法9条を壊すな!実行委員会の呼びかけによるロシア大使館付近で行われた行動で、「ウクライナから撤退を」をアピールした。
とめよう原発3・7全国集会
8500人が結集
フクシマ原発事故から15年、被害者補償、廃炉作業も進まない中で、高市政権は強引に原発再稼働を進めようとしている。世界的にもウクライナ原発への攻撃、そして核兵器増強と核戦争の脅威も高まっている深刻な状況がある。
3月7日、代々木公園B地区で「とめよう原発 全国集会―持続可能で平和な社会を―」が開かれ、8500人が参加した。脱原発全国集会実行委員会は、さようなら原発1000万人アクション実行委員会、原発事故被害者団体連絡会、原発をなくす全国連絡会、これ以上海を汚すな!市民会議、脱原発福島ネットワーク、脱原発をめざす首長会議、反原発運動全国連絡会、福島県平和フォーラム、ふくしま復興共同センターの構成によるもの。
メインステージでの集会では、主催者を代表して呼びかけ人の鎌田慧さんが発言―高市首相は原発推進政策を進めているが、原発再稼働反対の各地の多くの人びととともに大きく運動を作っていこう。
超党派議員連盟「原発ゼロ・再エネ1000の会」の阿部知子事務局長(前衆院議員)の特別発言。
メインスピーチの盛岡大学長の長谷川公一さんは、福島事故は東電と日本政府が起こした犯罪で、その被害の影響は今もつづいている、フクシマを忘れないことはいのちと平和を守ることだと強調した。
原発事故被害者団体共同代表の武藤類子さんは、政府の新エネルギー計画は原発再稼働を強行するものだ、何よりも命が大切だと述べた。
リレートークで、柏崎刈羽原発再稼働の是非を考える新潟県民ネットワーク、津島原発訴訟団、「原発のない福島を!県民大集会」実行委員会、フクシマ連帯キャラバン、甲状腺がん子ども支援ネットワークから、闘争報告と決意表明がつづいた。
脱原発をめざす首長会議世話人の三上元さん(静岡県湖西市議・湖西市長)は、再生可能エネルギーの推進を進めようと述べた。
集会後は、渋谷と原宿の2コースでパレード。
鹿児島からの報告
衆院選と脱原発
鹿児島での衆議院選挙を振り返って
私が関わっている戦争をしない国づくり応援団では憲法9条を守り、戦争準備に反対する政党(共産党と社民党)を支持、推薦することになった。
昨年の尾辻朋実選挙についての報告で状況が変わりつつある予感について述べたが今回これとは真逆の結果が出た。保守地盤の流動化とみられたものから「右翼バネ」といったような自民党高市政権への支持拡大が全県下で見られたことである。若い層を中心に社会の現状に対する不満、要求に高市政権の掲げたパフオーマンスが宣伝も含めて合致したのかと思われる。いずれにしても再考の余地があるとの念が強い。県下でよく見られた2つのポスター「強くて豊かな日本」を打ち出した自民党に対して中道を掲げた勢力の抽象的な「政治は人である」は対照的であった。
鹿児島県の4つの選挙区では3区を除いて自民党の圧勝であった。
1区
宮路拓馬 (自民) 90872
川内博史(中道) 56626
牧野俊一(参政) 26585
小山慎之介(共産)4228
2区
三田園訓(自民)114850
高橋徳美(参政)35299
松崎真(共産)17277
3区
野間健(中道) 88518
小里泰弘(自民) 85782
4区
森山裕(自民) 102727
中村壽(国民) 24076
桐原都生(参政)22211
伊藤周平(社民) 15329
私の居住する3区では自民党小里候補と中道改革の野間候補の一騎打ちとなった。結果は僅差で野間候補の勝利となった。3区は従来から旧社会党系の支持者の多い地盤である。
アメリカトランプ政権によるベネズエラに続いてのイラン侵略で世界は戦争の危機に直面している。この侵略に世界の国々や民衆とともに抗議しトランプ政権に侵略停止をさせることが急務であるが高市政権には望むべくもない。全国的な侵略反対の運動を強めアメリカへの追随、戦争準備の高市政権を打倒する運動が必須である。
ストップ川内原発!3・8かごしまパレード
3月8日、東北大震災から15年をうけて鹿児島では天文館公園で犠牲者を追悼し原発を廃止していく集会が350人の参加で開催された。
集会には川内原発の地元をはじめ県下の反原発団体が各地から参加していた。また熊本や宮崎などの反原発団体も駆けつけていた。 集会は東北大震災の犠牲者への黙祷で始まり、各団体の住民や川内訴訟弁護団、生協、宗教関係者からの発言があり、さらに高校生からの発言もなされた。「福島を忘れない」「使用済み核燃料を処分の流れは破綻している」「川内原発での使用済み核燃料の乾式貯蔵を許さない」の発言が続いた。 集会後、天文館前の大通りからワシントンホテル前までパレード行い道行く人々に原発はいらないことを宣伝した。(K・K 鹿児島在住)
3・1朝鮮独立運動107周年
大軍拡と戦争国家の道、排外主義反対! 今こそ東アジアの平和な未来を!
高市首相の「台湾有事」発言などにより東アジアの緊張がいっそう高まる情勢のなかで、2月28日、文京区民センターで「3・1朝鮮独立運動107周年 大軍拡と戦争国家の道、排外主義反対! 今こそ東アジアの平和な未来を!」(主催・「3・1朝鮮独立運動」日本ネットワーク)が開かれた。
ジャーナリストの布施祐仁さんが「高市政権の大軍拡と『軍国主義』の道を問う―今こそ『信頼による平和』を東アジアに」というテーマで講演。私たちが目指すべきは、大国が小国を力で支配する東アジアではなく、大国も小国も平等に共存共栄する東アジアだ。ASEANが主導してきたASEAN地域フォーラムや東アジア首脳会議など対話・協力・信頼醸成がすでに機能しているし、そこでは日本・韓国とASEANの連携が鍵を握る。だが、高市政権は、中国を対象にした大軍拡で、米国の歓心を買う道をひたすら進んでいて、中国との関係を一層悪化させている。この政策は国民生活と財政の破綻を招くことになるのは明らかだ。やるべきなのは東アジアでの中堅国と小国の連携強化でああり、これこそ最大の「成長戦略」といえないだろうか。
韓国は日本とは違った道を進んでいて、戦略的自主性を強めている。今年の一月に訪中した李在明大統領は習主席と互恵的協力の推進で合意し、今後は首脳会談を年1回以上開くことでも合意した。2月18日には在韓米軍のF16戦闘機約10機が訓練中に中国軍機と一時対峙する緊張事態が発生したことで在韓米軍に抗議し、在韓米軍司令官が韓国軍当局に謝罪することになった。安全保障においては「強さ=平和」ということではない。軍事力ではかなわない大国を相手にした場合、本当に力になるのは「信頼」だということではないだろうか。最後に日本国憲法前文の「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」ということをもう一度強調しておきたい。
続く韓国ゲストの講演では、招請していたパク・ソグンさん(韓国進歩連帯常任共同代表、社会大改革委員会委員長)が、羽田到着時に入管事務所が入国拒否する暴挙を働いた。急遽、ソウルからオンラインでチュ・ジェジュンさん(韓国進歩連帯政策委員長)が、「ユン・ソンヨル(尹錫悦)一味の親衛クーデターを粉砕した『光の広場、市民の闘と社会大改革』」と題して報告。2022年5月、尹錫悦政権は発足以降、改革と国政刷新はおろか、誤った国政基調にしがみつき逆走を続けてきた。各種の不正が明らかになり、大きな尹錫悦退陣闘争がくりかえし展開された。追い詰められた政権は12月3、4日、非常戒厳宣布の暴挙を行ったが、多くの民衆が国会の前に集まり戒厳軍を阻止した。国会の塀を乗り越えた国会議員たちが戒厳解除を議決した。一部の軍人と警察は消極的な対応だった。4日の午前9時「尹錫悦の不法戒厳糾弾!内乱罪の尹錫悦退陣!国民主権実現のための全面的抵抗運動」を宣言した。11日に「尹錫悦即刻退陣、社会大改革非常行動が」が発足し、全国の約1700以上の団体が加盟した。そして14日には、尹錫悦弾劾訴追が議決され、国会前の集会には200万人が参加した。6月3日の大統領選挙で李在明当選を実現し、「国民主権政府」がスタートした。 内乱終息・民主憲政を守る円卓会議には、民主党、祖国革新党、進歩党、基本所得党、社会民主党が参加し、市民参加型の政治改革による民主政治の復元と連合政治実現のための制度改革への取り組みがはじまった。
集会は最後に緊急声明「パク・ソグン氏の入国拒否に抗議する」を参加者全員で採択した。
翌3月1日には、新宿駅南口前で3・1独立運動107周年当日集会が開かれ、右翼の執拗な嫌がらせを跳ね返してリレートークが行われた。
今月のコラム
切迫する老い -高橋源一郎著「ぼくたちはどう老いるか」を読む
「はじめに」で著者は書いている、「誰もがみんな『老い』る。そして、誰もがみんな死んでゆく。誰もが歩む『道』がある。だったら、その『道』を楽しく歩きたい。そのためにはなにをすればいいのか、それを書いてゆくつもりだ。ぼく自身のために。みんなのために」
鶴見俊輔の「もうろく」
鶴見俊輔は晩年1992年から2011年まで「もうろく帖」、「もうろく帖」後篇を書いた。69歳から87歳にかけて、断片的に、時には数か月も間をおいて。「ぼくたちより先に『老い』の海を航海した人たちの記録」として著者はゆっくりと何度も読み返す。こんな具合だ…1994年鶴見は癌が見つかり手術を受け「もうろく帖」にこう記す〈今ここにいる。/ほかに何をのぞもうか。〉「歳をとると、どんどん人は死んでいく、そのことをみんな知っている。けれども、なかなか『自分の問題』として考えることはしない-略-『老い』とか『死』のことは考えたくないのだ」鶴見の癌との向き合い方は他の多くの人とは違っている。「『癌』になる。『癌』のことを考える。それはいい。けれども『癌』のことしか考えられなくなったら、それはよくない。それは 『癌』に支配されてしまうことだからだ。/支配されてはならない。それがなにであっても。-略-鶴見さんは生涯をかけてずっと『支配されてはならない』といいつづけてきた、それが人間なのだ、と考えてきた」。
鶴見の文章を巡ってとつおいつ考え、時に前言撤回し、さらに考え詰めるのが著者のスタイルだ。だから決して読みやすくない。坦々と論理を追っていくのではないから。むしろ著者と対話しながら一緒に考えていくことが求められる。
家族から見た「老い」―吉本隆明の場合
吉本の長女でマンガ家のハルノ宵子著「隆明だもの」を取り上げる。「自分が『老い』てゆく有り様を、一番近いところにいる『家族』はどう見ているか」「それは、当事者からは、決して見ることのできない風景」なのだ。吉本が亡くなる4,5月前のある夜、〈玄関で「ガチャン!」という音がした。あわてて階下に降りて行くと、玄関の石のたたきに父が転がっていた。杖を握りしめ、セーターに愛用の帽子、しっかりベルトを締めたズボン姿。明らかに異常だ-略-助け起こすと、何も映っていない真っ黒なガラス玉のような目をしていた-略-情けなくて涙が出た。「お前はノラ猫かっ!この家はお前にとって、そんなに安心できない場所なのか―〉〈そろそろアブナイかな…というノラが、軒下の暖房入りの箱にうずくまっている。でもある日力を振りしぼって、1歩2歩と箱の外へ出てヘタレ込んでいる。また暖かい箱の中に戻してやる。しかし翌日には10歩進んだ所で死んでいる。/そうだった―出て行こうとするノラ猫を「情けない」なんて思ったことはない。死ぬために出て行くんじゃない。1歩でも2歩でも、自分の力で生きるために行くんだ。/生ぬるい家も家族もいらない。最後には真の自由と孤独の時間を生きるために、すべての老人も出て行くのだと思う〉
「ハルノさんは、娘として、家族として父であり偉大な人でもあった一人の人間を見守った。そこには混乱や衰えや『ボケ』もあった。でも、いつまでも、その人は、奥深いところにある『その人らしさ』決して失うことはなかった。ハルノさんがぼくたちに教えてくれるのは、そのことだ」。
「恍惚の人」が暴いた社会の「本音」
1972年に刊行され140万部のベストセラーとなった有吉佐和子著「恍惚の人」が描いたのは「『老い』が、どうやって『家族』の間に入り込み、『家族』を破壊し、通りすぎてゆくかであった。また同時に、『老い』によって壊された『家族』をどうやって修復してゆくのか、という問題でもあった」舅が次第に「恍惚の人」に変貌していくのを眼前にした家族の戸惑い。「『異物』との付き合い方を彼らは知らないのだ。社会がぼくたちに教えるのは、『異物は排除せよ』という論理だけなのだ」「『老い』は不条理である。作者はそう考えている。それは受け入れることが不可能な事態なのだ。もともと『老い』が不条理なのではない。社会がそのように仕向けているからである。-略-『役割』を終えた人間は、その最後の仕上げとして『老い』という罰を受けるのである、いや、『老い』が罰としか考えられなくなるのである-略-『恍惚の人』は、この国、この社会において、初めて『老い』にひそむ問題を人々の前に引きずり出した。社会が隠していた『本音』を赤裸々に描いたのである」。しかし「社会」って何だろう?搾取の対象・資本増殖の手段としてしか人を見ない資本主義を内面化した集団のことだろうか。
主人公昭子は二度童に帰った舅の姿に生まれたばかりの頃の息子の姿を重ね合わせ、〈「信仰っていうのかしら、宗教っていうのかしら、神様に奉仕しているような気がするときがあります〉と隣人に語る。葬儀ではだれも泣かなかった。だが「『家族』はちがった。泣いていたのは昭子だけではないはずだ-略-なぜ彼らは泣いたのか茂造が『家族』だったからである。茂造は『老い』、その『老い』を受け止めることができるほど成熟した後彼らは真の『家族』になったのである。真の『家族』とは、社会に侵食されない『家族』だ。そんな「家族」だけが、おたがいをまもることができるのである」。そう、そしてそのような家族とは決して肉親に限定されるものではないのだろう。
夫婦がともに『老い』るとき
次に筆者は私小説家耕治人(こう はると)最後の連作「天井から降る哀しい音」「どんなご縁で」「そうかもしれない」を取り上げる。「そこには、長い生涯を共に生きた夫婦が、その最後にどうなっていくのかが、恐ろしいほど鮮明に、かつ詳細に描かれている」。はじめはちょっとした物忘れに見えた妻の認知症が次第に深刻化してゆく。鍋を焦がしボヤを出し炊飯器をガスコンロにかける、徘徊し、失禁し、夫は自らの老いをおして必死に面倒を見る。実に凄惨な場面の連続だ。でもその中で夫にはふと幸せな気持ちが湧く。「『私』にはわかったのだ。/人は最後に『赤ん坊』に戻るのだ。『老い』や『認知症』がたどり着く場所は、そこだったのだ」。妻を老人ホームに入れた矢先に夫の癌が判明する。もはや手術もかなわない。そうして夫は最後の小説を書き始める。老人ホームの親切な職員たちが妻を病院に連れてきてくれる。職員が何度目かに「ご主人ですよ」と妻に言ったとき、妻は「『そうかもしれない』と低いが、はっきりした声でいった」
妻が老人ホームに帰った後「点滴の身を忘れ、時の経つのも忘れ、いつか私はベッドの上に正座していた。その私の体は、自然とBMホームがあると思われる方へ向いていた」と小説は終わる。
「誰でもがたどらねばならない運命、それにもかかわらず、その当事者たちが自らの手で克明に記したことのない物語。それを書くことこそが、自らの『生』を描き続けてきた作家の責務なのだ。耕治人はそう信じたのだ、とぼくは思っている」 (新)
せんりゅう
奇襲トランプ ゴジラの如し
平和賞そして戦争も大好き
一旦緩急アレハ働いて働いて
押して押して押して軍国へ
カフェインレス中道でキキメがない
非正規いて内部留保ガッポり
抗議する声よ届けよ海こえて
ゝ 史
2026年3月
複眼単眼
小が大を飲み込んだ中道新党
総選挙の結果、立憲民主党と公明党が結成した新党「中道改革連合」は公示前の167議席から49議席と激減した。当選者は立憲系が公示前の144人から21人となったのに対し、公明系は21人から28人に増加。旧立民系では安住淳共同幹事長、小沢一郎氏、岡田克也氏ら幹部が小選挙区で落選し、比例復活もなかった。
1月22日の「中道新党」の結成に際し、中道の野田佳彦共同代表は「1足す1が2に届かなかったら失敗だ」と166議席以上の獲得を目指した。「失敗したら責任を取りたい」と述べ、選挙後は「(この敗北の)罪、万死に値する」と語ったが、いまなお衆議院議員の地位にある。
今回の中道新党の結成は政策においても、選挙戦術においても、小の公明が大の立憲を飲み込んだことが明らかで立憲民主の大敗北だ。比例区候補は旧公明党優先、小選挙区には旧公明党は立たず、立憲を応援するという選挙戦術は旧立憲側にとっては大失敗だった。
26年に亘って自民党と連立し旧民主党系と闘ってきた公明党(地盤は創価学会)は短期間に立憲支持に移るのは不可能だった。短期間の新党結成と選挙準備では、公明党の地方議員などが立憲の選挙演説に熱心に顔を出す演出は見られても、水面下の創価学会の動きは鈍重だった。
中道新党の政策問題でも、原発、安保法制、沖縄など立憲からみれば新党には従来の主張とは異なる重大な方針転換があった。これらの点でも、新党は長期に自民党と連立政権を組んできた公明党の立場に大きく偏ることになった。立憲の候補には安住幹事長らから、(当選したかったら)「踏み絵を踏め」「時間がない」「急げ、急げ」とばかりに追い立てられ、立憲内のリベラル勢力はなすすべもなく、新党に合流させられた。
その中には東京24区の萩生田晃一と有田芳生の対立の様に、自民の萩生田と連携する公明が、有田外しを要求して、有田を東北比例区第2位に遇する形で「排除の論理」を強行するという離れ技まで演じられた。有田はもし無所属で出るなら中道から対立候補を立てると脅され、泣く泣く東北に赴いた。
総選挙での「基本政策」の憲法問題では立憲は公明の加憲論を飲まされた。
従来から立憲は「論憲」という立場であるが、大多数の構成員は憲法のあれこれの部分の「改正」はありうるが、9条をいじる、あるいは憲法に自衛隊を書き込むという改憲には「反対」だった。
ところが従来、公明党の衆院憲法審査会の代表格だった北側一雄氏(元副代表・現在は引退)は、以前から「9条に自衛隊を書き込むのではなく、9条1項、2項はそのままにしておく」、そして、「憲法の72条とか73条に内閣総理大臣の権限とか内閣の職務について規定されている、ここに(自衛隊を)書き込んでいくことも考えられる」と主張していた。
これは「9条守れ!」の世論に配慮し、自衛隊を憲法9条以外のところに書きこむという公明党独自の改憲論だ。中道新党はこれを飲み込んだ。
安倍晋三元首相は、2017年に憲法9条1項2項を残し、3項として自衛隊の存在を憲法上明記する憲法9条改正案を提言した。
安倍改憲案と公明(北側)改憲案の違いは、憲法のどこに「自衛隊を書き込むか」の違いであり、憲法で自衛隊を規定する点では同一だ。従来の立憲の憲法論から見て、新党は大きな路線変更をした。マスコミの調査によれば、衆院憲法審査会では明確に改憲に反対するのは50人の委員ちゅう、有田と共産の畑野君江だけになった。
他の党は、維新は9条2項削除論で、国防軍規定導入論だ。国民、参政もほぼ同一だ。自・維政策合意にある条文起草委員会が設置されれば、これらの議論がなされ、審査会でも設置の合意が謀られる可能性が濃厚だ。
ちなみに衆院当選者の8割が憲法9条改正に賛成といわれるが、2月のNHKの世論調査「高市内閣に最も期待する政策」では、「憲法改正」はわずか4%だった。(T)
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