人民新報
 ・ 第1461統合554号(2026年9月15日)

                  目次


  秋からの闘いへ

        共闘を再建し高市政権と対決しよう

●  永住の厳格化にNO!

        「共に生きる社会」の構築を妨げるな

●  北海道の農業法人のミャンマー人労働者への暴力・虐待を許すな

        団体交渉を要求 ― 札幌地域労組

●  KODAMA

        子どもたちに忍び寄る自衛隊と戦争(3)
                    ―子供たちが戦闘訓練―

●  関東大震災 朝鮮人・中国人虐殺103年犠牲者追悼大会

        震災朝鮮人犠牲・関東事件法制定の意義

●  議員定数削減法案粉砕!

●  今月のコラム

        歴史の機微・読書の悦楽 ㊤ -加藤陽子著「歴史の本棚」(毎日文庫)から-

●  せんりゅう

●  複眼単眼  /  改憲と天皇制礼賛を一体で進める高市内閣




秋からの闘いへ

        共闘を再建し高市政権と対決しよう

臨時国会での重要争点

 政府・与党は、秋の臨時国会を10月5日の週を軸に召集する方向で調整に入った。
 臨時国会は、飲食料品の消費税減税・給付一体化関連法案、継続審議となっている衆議院議員定数削減法案、電気・ガス代やガソリン補助などエネルギー価格の高騰緩和策、生活困窮者・地域経済への支援策を盛り込んだ補正予算案など重要法案が目白押しだ。なかでも衆議院議員定数削減法案は民意を圧殺し戦争する国づくりを押し進める国会状況を作り出すものであり、また軍事予算の突出、内閣が決定する行政文書だとして国会論議を極力回避する国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画の安保三文書改定も国会論議とならなければならない。 加えて戦争する国づくりのために天皇制・靖国神社を使った戦争動員体制構築のもくろみが強められている。

突出する軍事予算

 防衛省が発表した来年度予算の概算要求は、歳出ベースで過去最大の8兆8、908億円を計上している。「新しい戦い方」への対応として、低コストな攻撃型ドローンや水上・水中無人機の大量獲得と、AIによる自動識別・意思決定支援システムの構築が重点化されている。また長期戦に備えた弾薬・部品の増強(弾薬庫の増設など)に予算が配分されている。中露軍機の活動増大に対応するためとして、太平洋側における警戒監視能力の穴埋めや施設整備も進める。さらに問題なのは、「安保三文書」の改定議論や物価高・為替の影響を考慮し、一部の事業については金額を指定しない「事項要求」として提出されていることで、年末の予算編成過程で最終的な防衛予算額はさらに膨らむことになる。「隠れ増額(事項要求)」をふくめればまさに実質「10兆円超え」という膨大な軍事予算である。こうした軍事費突出は、先制攻撃を可能にする「敵基地攻撃能力」の本格保有であり、憲法違反であるのは明白だ。そして大軍拡の財源確保のための増税や赤字国債発行は、国民へのさらなる重税感や将来負担につながり、医療・介護・教育などの社会保障費を抑制するものとなる。

安保三文書改正の内容

 安保三文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)は、いま2026年中の改定に向けて政府・防衛省の作業が進んでいる。
 防衛省の「現行の国家防衛戦略・防衛力整備計画の評価(課題と今後の方向性)」(8月3日)では「現状認識」で「2022年12月に閣議決定された現行の国家防衛戦略及び防衛力整備計画に基づく取組の結果、全体として防衛力強化は着実に進捗。他方、策定当時に想定した以上の速度と複雑性をもって国内外の情勢が変化する中で、その影響により、更なる対応が必要な状況。現行計画は最後の1年を残しているものの、現行戦略・計画に基づく防衛力強化を継続するのみでは、将来にわたり抑止が必ずしも持続的に機能するとは限らない、という厳しい現実を極めて強い危機感をもって冷静に直視し、打ち手を考えることが必要」とし、軍備増強が急速に行い、ドローンとAIの本格導入、日米の指揮統制機能・共同対処力の強化をあげた。
 こうしたなかで、中国を仮想敵国にした自衛隊の沖縄・南西諸島シフトは強まるばかりだ。そのため沖縄・玉城県政をさまざまな謀略手段をも使いながら倒そうと全力を挙げている。まさに9月の県知事選は「日米政府の戦争準備のための県政か、沖縄の平和と自治のための県政か」が問われる絶対に負けられない闘いとなっている。
 これから新設された自衛隊の「統合作戦司令部(JJOC)」と在日米軍との連携をより緊密にし、有事における即応性と共同抑止力の高度化がはかられる。
 米国の対中・アジア太平洋戦略にいっそう従属し、日米一体化で日本が米国の戦争の尖兵になる危険性を高めるもの以外のなにものでもない。

共闘を再建・強化しよう

 戦争と反動・強権の高市政治の暴走への全面対決が求められている。衆院比例定数削減法案阻止、防衛費増額・防衛増税・スパイ防止法反対、国旗損壊処罰法・皇室典範改定の廃案、安保三文書反対、物価高騰・暮らし危機への緊急経済要求などを市民運動・労働運動と立憲野党の共同再建・強化による国会包囲・全国各地での集会の展開などで実現していこう。
 中道改革連合の破産など野党勢力の分岐・再編が進んでいるが、それらを高市政権との対決に少しでも有利な構造となるようにしていかなければならない。
 人びとの生活と権利をまもりぬき、憲法改悪阻止・安保法制反対のおおきな運動を強化・拡大していこう。


永住の厳格化にNO!

        「共に生きる社会」の構築を妨げるな

 高市政権のもとで排外主義政策が進められている。8月4日、出入国在留管理庁は、永住許可の要件を大幅に厳格化する新たなガイドライン案を公表した。また、「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン案」は、すでに永住資格を得て日本に生活基盤を築いてきた人びとの法的地位を不安定化させるものだ。こうした政策は、外国人と日本人との間に分断を生み、多民族・多文化共生社会の基盤を損なうものだ。

 8月28日、NPO法人移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)は、参議院議員会館講堂で、緊急院内集会「『永住の厳格化にNO!』~日本に暮らす外国人の『永住への道』を奪わないで」を開いた。
 移住連共同代表理事で国士舘大学教員の鈴木江理子さんは、「『永住許可に関するガイドライン』改定案の問題点」と題して報告。今回のカイドライン改定での総合的対応策には「国民・外国人の双方が安全・安心に生活し、共に繁栄する社会」を目指すとある。外国人にとっての安全・安心は、安定的な法的地位の取得であるにもかかわらず、そのハードルをいたずらに引き上げるガイドライン改定案は、安定的に日本で暮らし働きたいと望む多くの外国人から、「永住への道」を奪うものであり、「共に生きる社会」の構築を妨げるものである。また80年近くにわたり継承されてきた永住制度を、十分な議論もなく、当事者の声に耳を傾けることなく、大幅な不利益変更を強行しようとすることは、まさに「秩序」を乱す行為であり、官製排外主義である。
 移住連運営委員で弁護士の丸山由紀さんは、「『永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン』案の問題点」の報告で、事前の議論なしでの突然提出、立法事実がない、外国籍住民の立場を不安定にする、差別的な制度であり外国籍住民に対する差別や偏見を助長する、と批判した。


北海道の農業法人のミャンマー人労働者への暴力・虐待を許すな

        団体交渉を要求 ― 札幌地域労組

 北海道・京極町の農業法人で働く特定技能のミャンマー人労働者が、金属棒で叩かれる、怒鳴られるなどの暴力・威圧を受けたと訴えた。今年来日した複数の労働者がSNSで助けを求め、同僚の退職届が破られる場面を目撃して恐怖を覚えた3名を、札幌地域労働組合が7月28日深夜に保護した。寮を密かに出て草むらに隠した荷物を回収して避難し、その後も避難する労働者が相次ぎ、現在10代、30代の6名を教会で支援している。その中の女性労働者の一人は「人間として扱われていないことが一番苦痛だった」とし、実質経営者である現職町議とその息子から胸ぐらを掴まれる、身体を叩かれる、暴言を受ける行為が日常的だったと主張している。胸や尻を触られるセクハラや、ガソリンをこぼしたとして給料から7万5千円を差し引かれた例もある。ネズミが頻繁に出る寮でのシャワー室には汚れとカビだらけの浴槽しかないなど、精神的に追い詰められたと訴えている。組合の調査では、農場を実質的に取り仕切っていた経営者一族が2022年、「技能実習生の人権を著しく侵害する行為」などを理由に技能実習計画の認定取消処分を受けていた。原則5年間は新規受入れできないが、今回の法人はその処分から47日後に設立された。住所・連絡先が旧法人と同一であり、設立当初の代表が同一、労働者は書類上の現代表と一度しか会っておらず日常の指示は処分を受けた一族が行っていた、ことなどの点から、組合は新法人を介した規制潜脱の疑義を持っている。組合は団体交渉を申し入れ、暴力禁止、未払い賃金、就労不能期間の補償などを求め、8月24日に倶知安警察署へ暴行事件で刑事告訴した。6名の多くは来日直後で蓄えもなく仕事と住居を失った。同労組はHPで「遠いミャンマーから日本へ来た若者たちは、『日本で働き、家族を支えたい』『自分の未来をつくりたい』という思いを抱いていました。暴力や恐怖によって、その希望まで奪われてよいはずはありません。安心して働き、安心して暮らすことは、国籍にかかわらず、すべての労働者に保障されるべき権利です」と訴えている。そして農業法人が登録支援機関を兼ねているためサポート組織がなく、公的な生活支援も整っていないため、組合や教会、フードバンク、通訳者らの善意で支えており、カンパを呼びかけている。
 【支援カンパ振込先 北海道労働金庫 本店 普通預金 3782169 札幌地域労働組合カンパ口座】


KODAMA

子どもたちに忍び寄る自衛隊と戦争(3)
            ―子供たちが戦闘訓練―

 自衛官募集のポスターは今風のかっこいいキャラクターを使い若者の関心を買おうと必死です。自衛官の定員割れは長く続いており、約2万人が不足していると言われています。自衛隊の人材確保が困難になっている実態は今年の2月に発行された防衛省の報告書「人的基盤の強化をめぐる課題」からも伺い知れます。
報告書の中から実態が分かる部分を抜粋します。 「高卒を主なターゲットにする2士採用の採用者数の減。採用は危機的状況。応募者数、採用者数も約4割減少。自衛官の中途退職者数の増加。1万人採用しても、その半分に相当する数が中途退職している。中途退職者のうち、5年以内で退職するケースが約5割」と記述されていますがその原因について詳しくは書かれていません。また、幹部自衛官を養成する防衛大学では卒業しても任官拒否をする学生が増え続けています。これらの傾向が強まったのは、以前に国民の反対を押し切って行った自衛隊の海外派兵や日本の平和への姿勢を大きく変えた集団的自衛権の行使容認が大きな要因と考えられます。若者は自衛隊が海外で戦争する可能性を感じているのでしょう。
 自衛隊があの手この手を使って若者を確保しようとする事例は次々と起こっています。

◆子供たちが戦闘訓練

 子どもと自衛隊が接近する事例を調べると、 「公共施設で『戦闘訓練』」(毎日新聞2025年6月5日)、時代を疑うような寒々としたタイトルの記事を目にしました。簡単に記事の内容を紹介します。「埼玉県の一般社団法人が『ジュニアサバイバルスクール』と称し、板橋区と杉並区の公共施設で小中学生対象に自衛隊式の『戦闘訓練』を指導していたことが、関係者への取材で判明した。子供に銃(おもちゃ)を構えさせるなどしており…スクールは元自衛官が指導役を務め…」とありました。新聞には迷彩服姿の子供たちがうつぶせの状態でおもちゃの銃を構えた写真が載っています。
子供に銃(おもちゃではあるが)を持たせ戦闘訓練を行わせることは、今日の社会で、何か問題が発生したときには粘り強く話し合いによって解決することが求められているにもかかわらず、武力をもって行動することが許されるかのような感性を子供たちに育ませることになります。決して許される内容ではありません。当然ではありますが、区民から板橋区に見解を求める要望書が提出されました。この社団法人は会費を徴収し公共の施設で実施しており、区は営利目的の利用を禁じる規約に反するとして利用許可を取り消しました。要望書提出後はジュニアサバイバルスクールの実施はありません。

◆中学生が戦車に乗った

 ジュニアサバイバルスクール等は学校の教育とは異なり管理されることなく実施できるものが多いのですが、教育委員会によって管理された学校教育の中にも自衛隊につながりを求める子供の姿が見られます。2024年10月7日の名寄新聞によると「名寄駐屯地は中学校の総合的な学習『職業(場)体験』を受け入れ、2年生4人が自衛隊の訓練の一端に触れた他、車両の体験搭乗などを行った。」と報じ、「99HSP(戦車)の体験搭乗を楽しむ生徒」とコメントの入った写真も載せています。 
 問題となる職場体験について簡単に説明します。職場体験はキャリア教育の一環として主に中学校2年生で行われています。日本経済の衰退・悪化の中、2004年に中央教育審議会が文科省にキャリア教育の必要性を提言し、文科省はその内容を忠実に取り入れることで始まりました。職場体験はほとんどの公立中学校で実施されていますが、実施する学校や地域に大きな負担となり改善を求める声は絶えません。職業体験の受け入れ先を教育委員会などが捜し、それを基に学校では生徒が関心のある職場を相談のうえで決定するという過程を得経ます。地域によっては受け入れ先が限られていることもあり、その隙間に自衛隊が積極的に生徒の受け入れを教育委員会に申し入れている地域もあります。自衛隊にとっては自衛隊のPR、さらには自衛官獲得の絶好の機会ととらえるでしょう。
名寄駐屯地で職場体験を経験した中学生の言葉が載っていました。「将来の職業として、自衛官は第一候補。自衛隊の仕事や日々の生活について知りたくて自衛隊での職業体験を選択しました」と、自分の意思で参加していることが分かります。

◆自衛隊は他の職業とは違う 

 自衛隊の職場体験について教職員組合や市民団体は「体験の場として妥当ではない」と反対行動を起こしています。しかし、近年、政府・文科省は災害救助活動をする自衛隊を小・中学校の教科書に登場させ、自衛隊の本来の任務である戦争を辞さない軍事的な面を子供たちから覆い隠そうとしています。さらに、自衛隊の職場体験を認めている教育委員会との折衝では「自衛隊も職業の一つである」とか「判断する立場にはない」などと自衛隊を職場体験のリストから外す構えは見られません。
 自衛隊は職業の一つであったとしても、自衛隊は殺傷能力のある武器を持ち人の命を奪いかねない集団であり、また、場合によっては本人や仲間が命を落とすことも十分に考えられる職業です。広い知識と豊かな感性を育み判断力を育成中の中学生が体験する職業ではないことははっきりしています。
 教育の理不尽な問題を発信することが難しくなっている学校ですが、戦争に向かう教育には教職員、保護者、市民の眼で注視し警鐘を鳴らしましょう。(元教育労働者)


関東大震災 朝鮮人・中国人虐殺103年犠牲者追悼大会

        震災朝鮮人犠牲・関東事件法制定の意義

 8月31日、明治大学リバティーホールで「関東大震災 朝鮮人・中国人虐殺103年犠牲者追悼大会」が開かれた。
 犠牲者への黙祷、遺族による代表献花、遺族挨拶(中国、韓国)、前韓国国会副議長の李学永(イ・ハギョン)議員の挨拶と来日韓国議員団紹介が行われた。
 国会からは、杉尾秀哉参議院議員(立憲民主党)、ラサール石井参議院議員(社民党)、小池晃参議院議員(共産党)、有田芳生衆議院議員(中道改革連合)が挨拶した。

韓国・日本で真実の究明を

 尹建栄(ユン・ゴニョン)韓国国会議員は、「『関東大震災朝鮮人犠牲事件真相究明及び犠牲者名誉回復に関する特別法』成立の意味と展望」と題して特別報告を行った。―1923年9月1日、関東大震災が発生し、甚大な被害が出た。大地震による痛みと傷が癒える間もなく、『朝鮮人が井戸に毒を入れた』、『放火を行っている』という噂が瞬く間に広まり、悲劇が始まった。自警団だけでなく、軍や警察、消防士など日本の公権力も加わり、無辜の朝鮮人を数え切れないほど虐殺し続けた。資料が存在しているにもかかわらず、日本政府は依然として「関連する事実関係を確認できる内部文書がない」とし、真相調査はおろか、最小限の謝罪すら回避している。 韓国では関東大虐殺の真相を政府レベルで調査するように特別法を制定し、まもなく施行される予定だ。特別法の制定までは簡単ではなかった。韓国国会では、これまで関東大虐殺の真相を明らかにするために立法化の試みが何度も行われてきた。何度も最終的な立法化のハードルを越えられずに廃棄されてきた。しかし私たちは諦めず、2024年、わたしを含む45人の与野党議員が再び特別法を提案した。特別法を発議した後、国内外で活動を展開し、国会でドキユメンタリ映画『関東大殺』の上映会を開催し、追悼写真展を開くなどして、法案の通過の必要性を説いてきた。2025年12月2日、ついに国会本会議で与野党の圧倒的な賛成(出席者236、賛成220名、反対3名、棄権13名)により《関東大震災朝鮮人犠牲事件の真相究明及び犠牲者名誉回復に関する特別法》(関東事件法)が通過した。今年の12月31日から法律が施行されると、韓国の国務総理の下に「関東真相究明委員会」が正式に発足する。委員会は3年間の基本活動期間で、公式な真相調査に入る。委員会は何よりも関東大虐殺の真相究明と犠牲者の名誉回復のために最善を尽くす。関東事件法には、犠牲者の遣骨の発掘と返還、追悼空間や資料館の建設なども規定されている。
 特別法により韓国政府は調査を開始するが、100年前の真実を明らかにすることができる最も重要な鍵は、ここ日本にある。韓国と日本の政府、市民社会が力を合わせて100年前の真実を明らかにし、真実の発掘を通じて両国が共に繁栄する新しい時代を切り開いていくことを願っている。

歴史修正主義・陰謀史観

 山田朗明治大学教授は、「改憲危機を押し返す歴史認識―9条を支え、加害責任を問う近現代史認識を」と題して報告。―改憲危機の今こそ、それを押し返す歴史認識が必要だ。いま歴史修正主義・陰謀史観が横行している。加害を隠蔽し、あったことを「なかった」とするのが歴史修正主義であり、なかったことを「あった」とする陰謀史観だ。
 近代日本の原点として琉球・北海道の併合・皇民化政策があり、対外戦争・植民地戦争の結果としての台湾支配・韓国併合があった。 植民地戦争の継続として総督府の支配に対する反発としての韓国3・1独立運動があり、日本による武力弾圧と虐殺が行われたが、それが、日本国内では「暴動」と報じられた。朝鮮と国境を接する当時の中華民国東北部でおこった間島事件(1920年)の頃から日本国内の新聞は独立運動家を「不逞鮮人」と呼び、独立運動はアメリカのキリスト教徒やソ連の社会主義者が煽動と報道された。第1次世界大戦(1914~18年)は国家総力戦となり、戦争概念が転換し、外敵に備えるとともに「内敵」(思想敵)に備えるとされた。「内敵」とは、天皇制の支配に服従しない、また、服従しないとみなされた人々のことであり、法律による支配(縦方向の支配)と民衆の相互監視(横方向の支配)が組み合わされた支配構造が作られた。こうしたなかで関東大震災虐殺事件(1923年)が発生したのだ。弾圧の首謀者である水野錬太郎内務大臣と赤池濃警視総監は、治安維持の最高責任者として戒厳令の施行を主導したが、ともに朝鮮総督府で三・一独立運動の弾圧に関わった朝鮮武力支配の経験者だった。そして、「暴動」の主体は「内敵」とみなされた朝鮮人・中国人・日本人社会主義者たちだとされ、弾圧・虐殺された。そして、こうした暴力行為の地域ぐるみでの隠蔽がおこなわれた。関東大震災直後の混乱デマによる社会不安の中で、香川県から来た薬売りの行商団15名が自警団や村人らに襲撃され、幼児や妊婦を含む9名が殺害された福田村(現・千葉県野田市)での虐殺事件などが典型例だ。
 満蒙の占領など力による現状変更と同時に、国内における弾圧体制が強化され、治安維持法(1925年制定)の最高刑が死刑にまでなった。満州事変(1931年)の首謀者・石原莞爾のイメージは「韓国併合」の再現だった。つづいて「第2の満洲国」成立をねらう「華北分離工作」が始まり(1936年国策化)、盧溝橋事件(1937年)を契機に「華北分離」から蒋介石政権打倒へ戦争目的をエスカレート(1938年)させ、英・米・仏・ソの蒋政権支援を阻止するとして、日本に対する中国(英・米・仏・ソ)の世界戦争の構図ができ、独・伊と結んで英米・ソを牽制しようという世界戦略となり、日独伊3国同盟(1940年)で英・米との衝突不可避となり、それは日独陣営の敗北となった。だが、日本は米ソ冷戦の状況に便乗して、朝鮮戦争下に講和条約を締結し、重要案件を先送りし、戦争責任問題の曖昧化をはかった。とりわけ植民地問題と日中戦争への直視を回避してきた。

 次に歴史修正主義・陰謀史観との対決についてであるが、歴史修正主義の「新潮流」として陰謀史観がある。戦後民主主義やリペラリズム否定の口実としての陰謀論である。そして陰謀論が現実社会を動かし始めた。ユダヤ人陰謀論(陰謀史観①)は欧米における古典的陰謀論・陰謀史観だが、ナチス台頭の大きな要因となり、現代においては「ユダヤ金融資本」=ディープステート論だ。
 加えて新たな陰謀史観(陰謀史観②)として「共産主義者=コミンテルンの陰謀」論がある。コミンテルン陰謀論は、右派論客のユン・チアン(「マオ 誰も知らなかった毛沢東」の著者)や中西輝政、渡部昇一らが主張し、田母神俊郎がそれらを集成し、政界でも杉田水脈らが流布させている。張作霖爆殺・盧溝橋事件・第2次上海事変・ハルノ-―ト・真珠湾攻撃など、「日本軍の謀略とされているものは実はコミンテルンの謀略」「共産主義者が日本を戦争に追い込んだ」「政権の中枢に共産主義者が入り込んで操っていた」「ハル・ノートを起草したのはコミンテルンの回し者」だなどだ。
 陰謀史観③の「アメリカ(GHQ)の陰謀論」が最近の主流だ。「ルーズベルトは知っていてわざと真珠湾攻撃をやらせた」などが典型だが、「GHQによるウォーギルトプログラム(WGIP)で日本精神が壊された」などの主張だ。「GHQの陰謀」という言い方には注意が必要であり、GHQが主導した初期の改革である日本国憲法を否定する可能性がある。初期占領政策(民主化と非軍事化)と後期占領政策(逆コース)を区別しなければならず、食糧の対米従属などはGHQの政策ではなく、MSA協定=日米相互防衛援助協定(1954年)が始まりである。
 そして陰謀史観④が、「中国(そして韓国・北朝鮮)陰謀論」であり、排外主義と強い親和性がある。もともとの反中国・反韓国・反北朝鮮の排外主義に乗った陰謀論で、例えば、コロナ禍における「武漢ウイルス論」や、政治家や官僚など日本国家中枢に中国などから人が送り込まれていて、そのため反日政策が遂行されている、だからスパイ防止法で中国などの影響力を断つ必要があるという論理だ。
こうした陰謀論による対外強硬論の煽動がおこなわれ、反軍拡・反戦論=「反日」という論理を拡大させている。根拠なき「陰謀論」の台頭を傍観しないこと、陰謀論を語る人の説得よりも陰謀論の拡散を防ぐ努力を行っていく必要がある。マスコミ(報道)と教育が対抗の要になり、マスコミへの批判と支援をおこなうこと、教育現場では、しつかり事実に基づいて考える姿勢、知のあり方の再構築がなされなければならない。

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集会アビール 

 1923年9月1日の関東大地震は日本の地震災害史上最大の被害をもたらした。首都圏の死者10万人、住居焼失者は200万人を超える。「帝都壊滅の危機」に、政府は2日「戒厳令」を布告する。朝鮮植民地支配の暴圧そのままに、日本軍は被災朝鮮人を狩り立て、政府・官憲は「デマ」を拡散して朝鮮人への殺意を煽った。民衆は「自警団」を作り、「自衛」の名のもと「天下晴れての人殺し」に狂奔し、関東一円で6000人余の朝鮮人を虐殺した。外国人労働者排斥のただなかで、800人近い中国人が東京・神奈川で虐殺された。同時に日本の社会主義者や労働運動の活動家も虐殺された。

 この朝鮮人、中国人の大量虐殺(ジェノサイド)を、日本政府は一世紀にわたり隠蔽し続けてきた。1923年末の帝国議会で、そして100年を経た2023~24年の国会でも、虐殺の事実とその責任を糾す質問に虚偽答弁を重ねている。

 これは政府自ら虐殺を正当化し続けているに等しい暴挙である。

 一方、韓国では、国会が2025年12月に「関東大震災朝鮮人犠牲事件の真相究明及び被害者名誉回復に関する特別法」を制定した。「日本政府によって隠蔽・歪曲された歴史の是正と相応する責任を問うことにより、反人道的犯罪に対する人類の普遍的な人権伸張に寄与する」とする提案理由は、そのまま日本社会への真摯な呼びかけでもある。 

 しかし、日本政府の「官製ヘイト」に力を得た民族排外主義者のアジア人敵視は、「お前らを殺してもいい法律が欲しい」と街頭で叫ぶまでに至っている。

 高市早苗首相は「台湾有事」を口実に「自衛のための敵基地攻撃ーと称し、南西日本でのミサイル配備、弾薬庫増設など、隣国の敵意を煽り戦争動員へ突き進んでいる。

 朝鮮人・中国人虐殺から103年となる〈いま〉、眼前の虐殺を決して許さないために、日本政府の責任を糾し、多民族・多文化が共生できる社会をめざして一緒に歩もう。


議員定数削減法案粉砕! 

 10月上旬に開始される臨時国会で、自民党と日本維新の会の連立与党は、衆議院の議席を削減する法案を成立させようと狙っている。この法案は、7月25日までの第221回国会では、立憲民主党や公明党、国民民主党、日本共産党などの野党各党が反対して国会審議が難航し、与党側も無理な採決強行によって政権運営への打撃や他の重要法案への影響を避けるため、継続審議・協議扱いとすることにした。そもそも定数削減など選挙制度のあり方は、衆院議長の元に設置された「衆議院選挙制度に関する協議会」などの場において各政党・会派間で時間をかけて合意すべきものとされている。そしてなにより学者、弁護士、市民団体、労働団体などが「比例代表の削減は多様な民意を切り捨てるものであり、民主主義の根幹を損なう」と訴え、世論の大きな反発や反対運動が起きたことが法案成立を阻止したのだった。

 しかし政府・与党はこの臨時国会で、なんとしても成立させようと躍起になっている。

 法案を断固阻止する闘いが広がっている。浅倉むつ子さん(早稲田大学名誉教授)、田中優子さん(法政大学名誉教授)、菱山南帆子さん(市民連合共同代表)ら各界を代表する40人の識者が呼びかけた「議員定数削減反対!緊急アクション」が結成された。緊急アクションは、院内集会・国会包囲行動を通じた国会への意思表示、スタンディングやSNS発信などを通じた世論への働きかけ、全国各地での共同行動などを呼びかけている。

 

 〇 議員定数削減反対!緊急アクション」にご賛同ください。賛同団体・賛同人 性別・性自認を問わず)を募集します。
   賛同申込先:https://forms.gle/whYC7hbuNt9npBmg9

 

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議員定数削減反対!緊急アクションの呼びかけ  

自民党と日本維新の会の連立与党は、衆議院の議席を削減する法案を共同提出しました。その法案には、1年以内に衆議院選挙制度協議会において削減方法についての結論を得られなければ、比例代表の定数のみ45議席を削減することが明記されています。先の国会では成立が見送られ、継続審議となりました。同協議会は9月中に結論を出すことを目指していますが、各党の意見の隔たりが大きく、議論が収斂する見通しは立っていません。しかし与党は次の国会で可決・成立させようとしています。

 議員定数削減 (特に比例代表の削減)は、議会の構成を歪め、民主主義の根幹を揺るがすものです。議席は国会議員の特権ではなく、わたしたち主権者のものであり、議員はわたしたちの声を代表するために一時的に議席を得ているに過ぎません。

 そもそも、日本の国会は世界の中で人口当たりの議員数が193か国中172位ととても少ないのです。さらなる定数の削減は、国会の熟議の機能を今以上に弱体化させるとともに、多数派への権力集中を加速化し、主権者を切り捨てる結果をもたらします。

 ひとりひとりの市民を尊重するには、国会にマイノリティを含む多様な「国民の代表者」が参画することが必要ですが、定数削減はその機会を狭めます。

 特に比例代表の削減が女性議員数に不利に働くことは、データから明らかです。国際比較からみて日本の女性議員が異常に少ないことは、国連からも繰り返し指摘されてきました。比例代表の削減は、女性議員を増やそうと全会一致で可決した政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」の趣旨に逆行するものです。

 また、比例代表の削減は小政党の議員を減らし、新しい政党の進出を阻む壁にもなります。現実の選挙における候補者選びが現職優先で行われていることを考えると、新人の挑戦の機会が減り、議員の新陳代謝を阻害することも懸念されます。

 他方、国会議員の多様性が失われることと引き換えに得られる歳出節約効果 は、歳出総額のわずか0・003%にすぎません。  「定数削減=身を切る改革」という聞こえの良いキャッチフレーズが目眩ましであることに、わたしたちは気づかなければなりません。

 わたしたちは、主権者の幅広い声が反映される健全な民主政治をめざし、今、議員定数削減反対の一点において広く結集します。

Our Seats,Our Voices――民主主義を主権者が取り戻すべく、法案反対の声を大きく上げていきましょう。


今月のコラム

        歴史の機微・読書の悦楽 ㊤

                -加藤陽子著「歴史の本棚」(毎日文庫)から-

 新聞広告で本書の発売を知りすぐに書店に走った。毎日新聞、月刊誌『論座』(朝日新聞社)に掲載されたものがまとめられ、2022年に刊行された。新たに20本分が加えられ、加筆修正されて今回文庫化された。かつて夏目漱石は明治も終わる頃、時間に追われ過去を振り返る暇がない我々にとって、過去はなかったことと同じだ、つまり、過去は「未来のために蹂躙されている」のだと喝破した。著者は漱石の鋭い指摘に感心しつつ「未来のために過去はある、と言いたくて」これらの書評を書いた(「はじめに」)。全77編が内容により「国家」「天皇」「戦争」「歴史」「人物と文化」の五つの柱で編集されている。たくさん紹介したいが各柱1編のみに限らざるを得ない。

大西巨人「神聖なる喜劇

 最初に取り上げられているのが思いがけずこの小説で、嬉しい。私も3回は通読した。幾つも忘れられないエピソードが思い浮かぶ。例えば、兵営から手紙を出すのに差出人を見本通りに「何某」としてしまう兵士がいる。高級時計と学歴を鼻にかける上官が大仰に呆れてみせる。手紙は腹違いの妹にあてた思いのこもったものだった。古兵が啄木の短歌「わかれおれば妹愛しも紅き緒の下駄など欲しとわめく子なりし」を朗詠し、ようできた手紙です、と嘆賞する、目を剝く上官。また、青年士官が兵士に聖戦の意義を諄々と諭す、効果のほどはと問うと、兵士たちは口々に「やらずぶったくりであります」と平然と答える、がっくり肩を落とす青年士官…
 「大西は、軍隊を理屈不要、問答無用、蒙昧無法の非論理的特殊地帯、すなわち『真空地帯』として描く一般的な筆法に断固背を向けた-略-かくて東堂は、『軍隊内務書』『砲兵操典』など軍隊を律する規則を完璧に暗唱し、身体化することで、上級者に伍していく」「小説の白眉は、兵士が『知りません』ではなく『忘れました』と言わされる理由を『下級者に対する上級者の責任』を絶対に認めぬ体質、すなわち帝国軍の『責任阻却の論理』から説明した部分にある」。終わり近く兵士たちが「抗命」罪に問われかねない状況を生みだすシーンには鳥肌が立った。

松元崇「持たざる国への道 あの戦争と大日本帝国の破綻」

 学生時代にしきりに「問題の立て方」と言っていたことを思い出す。正しく問題を立てないと正解には至らない…本書でも著者が重視しているのが問題の立て方とそれを解明する史料の適切な選択と読み解きであることを随所で感じた。
 1930年代半ば、欧米列国は世界恐慌の痛手から立ち直れなかったが、日本は高橋是清蔵相の一連の施策によって逸早く恐慌を脱した。宇垣一成は「その当時の日本の勢というものは産業も着々と興り、貿易では世界を圧倒する」と回顧し、当時植民地向けの輸出額の比較では英国を抜いて日本が最大の植民地帝国になっていた、と推計する研究もある。ところが日中戦争が泥沼化し国民生活が逼迫し始めると、国は「英米のブロック経済が『持たざる国』である我が国を追い込んだため」と喧伝する。松元は問う、「繫栄していた我が国が突然『持たざる国』になって窮乏化していった」のはおかしくはないか、と。そして「原因と結果が逆だったのだ」「経済合理性を無視して満州経営を行った陸軍」は「政府や財界をも巻き込み、通貨戦争という側面で、考えられないような愚策を華北分離工作で行った」、国民生活窮乏の真因は「軍部による経済的な負け戦」であったのに、「英米の敵対政策のせいだと思い込んだ国民は、英米への反感を強め、実はそれをもたらしている張本人である軍部をより一層支持するようになっていった」、高橋是清は二・二六事件で「農民の敵」とされて惨殺されたが、「農村疲弊の構造的な要因の一つは、1930年代までに進行していた中央と地方の税制のゆがみが放置されたことに帰せられる」…似たような思い込みに半ば陥っていた私も原著を読まなければならない。

小野塚知二編「第一次世界大戦開戦原因の再検討 国際分業と民衆心理」

 2014年、開戦百周年を迎えて活況を呈した第一次世界大戦研究の動向に対し、編者は「いかに大戦が始まったかを描いてはいても、なぜ大戦が始まったかを答えてはいない」と斬る。EUを軸としてまとまる現在の欧州の人々にとり第一次大戦のような戦争が域内で再発するとは考えられず、開戦原因論は欧州では人気がない。「だが、中国の海洋進出と日本の集団的自衛権容認決定で揺れる東アジアにおいては、開戦原因は今こそ論じられるべき問題ではないか。これが本書を貫く著者の姿勢である」。「例えば、帝国主義列強間に起きた、対外膨張策の衝突ゆえに大戦が勃発したとの」通説を退ける。「独の対外膨張は英仏の資本援助なくしては困難であった。経済的関係が緊密であっても、いや、経済的に緊密であったからこそ-略-六つの大国が、サライェボの銃声を契機に戦争開始の蟻地獄へと転がり落ちていったのだ」。「開戦原因の謎を解く方向性を氏は、民衆心理と各国の内政との相互作用に求めた」。「第一に、この時期の欧州では、金本位制のイギリスを中心とした多国的決済機構に支えられた経済成長が著しかった。各国間に国際分業が浸透した結果、各国は比較劣位業種を淘汰する必要に迫られ、国内に『繁栄の中の苦難』の部位を均しく抱え込むようになっていた。第二に、各国共に民衆の政治参加と世論形成が見られ、社会主義勢力とナショナリズムの拮抗も見られた。第三に、各国は他国の動向に関して豊富な情報を相互に持ち合わせていた」。「繁栄の中の苦難」を除去するために社会主義や平和主義の方向での解決を図れば、それは資本主義の揚棄へ向かわざるを得ない。だがそれでは、体制転覆の恐れが生じ、膨大な財政出動も必要とされる」「さまざまな苦難を外敵と内通者の仕業にすれば、国内に現前する問題や齟齬はとりあえずは外敵に向かって解消されることになる」、「民衆が、自国の内政の苦難を他国の政策の悪意の結果と捉え、祖国の危機を救えと訴えたとき、戦争を選ばない為政者はいなかったのである。100年前のお話で済めばよいのだが」。(つづく)     新


せんりゅう

     気候極端化に政治極端化

          あぶない地震台風豪雨タカイチ

     自民党まるで本当に百物語

          出てくる出てくる毒きのこ

     ア・ソーですか背後のドン

          なんでなんで自殺するの子供

     子供自死年年増える経済成長

          三線ひいて辺野古の海にうたう

                       ゝ  史

 2026年9月


複眼単眼

        改憲と天皇制礼賛を一体で進める高市内閣

 現役自衛官が制服姿で「君が代」をうたった異例な事件で注目された4月の自民党大会で、高市首相は「日本人の手による自主的な憲法改正は党是だ。時は来た」と改憲を強調した。そして「改正の発議にめどが立った状態で来年の党大会を迎えたい」と時期を区切って改憲を強行することを宣言した。
 高市首相は「(私たちは)どのような国を作り上げたいのか、理想の姿を物語るのが憲法だ」と述べた。
 しかし憲法は物語(ナラティヴ)ではない。近代立憲主義が確立してきた考え方によれば憲法は「人民の権利を保障するために、国家権力を制限する」ものだ。高市首相が実現しようとしている「自主憲法の制定」なるものは、これと対極にある憲法論で、「権力者のための物語」だ。
 高市首相は「立党70年」のこの大会で「早急に明文改憲を実現する」という決意を表明した。
 「戦争する国」を軍事同盟強化や飛躍的な軍事力強化と、さまざまな治安立法の制定など社会の軍事化の面で準備しながら、平和憲法の破壊=憲法改悪を実現するつもりで、その「時は来た」と叫んだ。
 強烈な用語法だけに、このことは比較的多くの人びとに知られている。私もこの高市の大会挨拶の改憲宣言については機会あるごとに紹介してきた。

 しかし、私は高市のスピーチのもう一つの重要側面を見逃していたことに気がついた。
 この挨拶には髙市首相の天皇制への異常な入れ込みが表現されている。
 例えばその一節はこうだ。

 立党以来、自由民主党は「保守政党」としての歩みを続けてきました。保守主義における重要な態度は、良き伝統と秩序を保持した上で、進歩・変革を実現させていくことだと考えます。日本の歴史を貫く支柱が天皇です。私たち日本人は、天皇とともに歴史を紡いできました。
 現在も、国民統合の象徴であられる天皇陛下及び皇室は、多くの国民の皆様からの敬慕を受けています。

 そして、特別国会で強行した皇室典範の改定への決意を表明した。
 この天皇制神話に基づく「126代」というたぐいの話は、高市内閣の閣僚から頻発される言辞で、別の場では「皇紀2686年」などの世迷いごと的な発言を木原官房長官もやっているし、大発会では片山財務相もやっている。まさに高市内閣は天皇制神話にとりつかれた極右内閣だ。
 こうした非科学的な神話まで動員して、「日本の歴史を貫く支柱が天皇」であることを強調し、これを戦争神社靖国信仰と結び付け、戦争動員体制をつくりあげようとしている。社会における軍事力強化と天皇制の強化は一体のものだ。
 8月15日の全国戦没者追悼式会場の武道館駐車場から強行した「靖国神社遥拝」という異様な芝居もこれらの延長線上にある。
私は改憲と天皇制礼賛が高市スピーチの2本柱であったことにもっと注目すべきだった。     (T)


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